説明

ボール弁

【課題】下流側への流体の漏れを好適に防止し得る、ブロックおよびブリードのための配管構造を備えるボール弁を提供する。
【解決手段】このボール弁1は、流体60が内部を通過可能に流路50の途中に設けられる弁本体2と、その弁本体2内に設けられて前記流路50を確保する開位置および遮断する閉位置に回動可能な球状の回動体4と、を備えている。そして、回動体4にその閉位置での上流側の外周面に全周に亘って形成されたブリード溝6と、弁本体2に貫通形成されて回動体4の閉位置でのブリード溝6に連通する排出孔7と、を有して、上流側から下流側への流体60の漏れを防止するブリード構造8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックおよびブリードのための配管構造を備えるボール弁に係り、特に、流体が内部を通過可能に流路の途中に設けられる弁本体と、その弁本体内に設けられた球状の回動体とを有し、その回動体で流路を確保する開位置および遮断する閉位置を切り替え可能であり、その回動体が閉位置のときに、流体が上流側から下流側へ漏れることを防止するブリード構造を備えるボール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のボール弁としては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載の技術では、球状の回動体(ボール)に、前記流路を確保する連通路(流通口)が形成されている。そして、この連通路の周縁の一部に小切欠きが設けられており、この小切欠きに対し回動体の閉位置で合致するガス抜き孔が弁本体に貫通形成されたブリード構造が開示されている。
【0003】
このボール弁によれば、閉位置のときに、流路の上流側の流体は、小切欠きを介してガス抜き孔に流れ、ガス抜き孔から外部に排出されて、下流側への流体の漏れを防止することができる。
【特許文献1】実開昭58−169270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ガス抜き用の小切欠きが、連通路の周縁の一部にのみ形成されているので、弁本体と回動体との隙間を流れるガス(流体)は、小切欠きが形成されていない部分をも通過してしまう。そのため、小切欠きが形成されていない部分を通過したガスの一部は下流側へ漏出することになり、下流側への流体の漏れを防止する上では、未だ不十分である。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、下流側への流体の漏れを好適に防止し得る、ブロックおよびブリードのための配管構造を備えるボール弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ボール弁であって、流体が内部を通過可能に流路の途中に設けられる弁本体と、該弁本体内に設けられて前記流路を確保する開位置および遮断する閉位置に回動可能な球状の回動体と、前記回動体にその閉位置での上流側の外周面に全周に亘って形成されたブリード溝、および、前記弁本体に貫通形成されて前記回動体の閉位置での前記ブリード溝に連通する排出孔を有して、上流側から下流側への流体の漏れを防止するブリード構造と、を備えることを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、弁本体内の回動体を開位置からに閉位置に回動させて、流路を遮断できる。そして、その閉位置において、ブリード溝を介して排出孔から流体を外部に排出できるから、ブロックおよびブリードのための配管構造を備えるボール弁を提供することができる。そして、このブリード溝は、回動体の閉位置での上流側の外周面に全周に亘って設けられている。そのため、弁本体と回動体との隙間を流れる流体は、回動体の全周に亘って設けられたブリード溝に捕捉される。したがって、上流側から下流側への流体の漏れを好適に防止することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のボール弁であって、前記弁本体は、その内部に、流路方向両側に流路方向に沿って延びる通路をそれぞれ有し、前記回動体は、その開位置でのみ、前記弁本体内の流路方向両側の各通路を連通させる連通路を有し、前記ブリード溝は、前記連通路の一端と他端とを連通し且つ前記回動体の閉位置で流路方向に直交する方向で相対向する位置にそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、ブリード溝は、連通路の一端と他端とを連通している。さらに、流路方向に直交する方向で相対向する位置にそれぞれ形成されている。つまり、流路方向から見ると、ブリード溝は、回動体の周囲を取り囲んで環状に形成されるから、上流側から下流側への流体の漏れを防止する上でより好適である。
ところで、上記例示した特許文献1に記載の技術では、小切欠きとガス抜き孔との相対位置を精度良く加工しないと、ボール弁の閉位置で正しく合致できず、所望のブリード性能が得られないおそれもある。そのため、高い加工精度が必要となり、ボール弁の製造費が高くなるという問題もある。
【0009】
ここで、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のボール弁であって、前記排出孔は、前記回動体の閉位置での前記連通路両端の開口部に対向する位置の少なくとも一方に形成されていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、排出孔の位置が、口径の大きい連通路の開口部と対向する位置になっているから、ボール弁の閉位置で相互の位置を容易に合致させることができる。また、本発明のブリード溝は、球状の回動体の外周面に形成されているから、その加工が容易である。そのため、高い加工精度を不要とし、ボール弁の構造をより単純にし、その製造費を抑制する上でより好適である。そして、口径の大きい連通路を介して流体を排出できるから、その排出効率を向上させる上でも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下流側への流体の漏れを好適に防止し得る、ブロックおよびブリードのための配管構造を備えるボール弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
本実施形態は、本発明に係るボール弁を、各種の工業用炉等の管路でのガスを遮断するガス遮断弁として用いた例である。
図1および図2は、本発明に係るボール弁の一実施形態の概略構成を示す説明図である。なお、図1は、このボール弁を、流路を確保する開位置の状態で説明する図、また、図2は、このボール弁を、流路を遮断する閉位置の状態で説明する図であり、各図において、(a)は、このボール弁を流路方向の軸線を含む断面で示す正面から見た図、(b)は、その横断面図、(c)は、その平面図である。
【0012】
このボール弁1は、図1(a)に示すように、燃料ガス等の流体60が流れる管路等の流路50の途中に設けられるものである。そして、図1および図2に示すように、弁本体2と、回動体4と、弁の切り替え機構10と、ブリード構造8と、を備えて構成されている。なお、このブリード構造8は、図1(b)に示すように、後述のブリード溝6と排出孔7とを備えて構成されており、ボール弁1が閉位置のときに、流路50の上流側から下流側への流体60の漏れを防止するものである。なお、各図中の矢印は、流体の流れのイメージを表している。
【0013】
詳しくは、弁本体2は、鋳造品であり、図1(b)に示すように、横断面が略矩形状で、その略矩形状が流路50の方向(以下、流路方向という)に連続して形成されている。なお、弁本体2には、流路方向で両側に、不図示のフランジ等がそれぞれ設けられており、燃料ガス等の流体60が流れる流路方向に繋がる管路等に接続可能になっている。
【0014】
この弁本体2には、図1(a)に示すように、その内部中央を流路方向に貫通して流体60が流れる楕円形断面の通路3が形成されている。同図では、流路方向で上流側を通路3A、下流側を通路3Bとして示している。また、この通路3の中央部(通路3Aと通路3Bとの間)には、球状の回動体4を支承する支承面2aが形成されている。この支承面2aは、滑らかな球面に加工されている。ここで、通路3Aと通路3Bは、同図に示すように、流路方向の支承面2a側が、それぞれ流路方向に直交する方向(同図での左右の方向)での断面の径が支承面2aに向かって徐々に小さくなっており、支承面2aが支承する回動体4の流路方向への移動を規制可能になっている。
【0015】
さらに、弁本体2には、図1(b)に示すように、外部に貫通する排出孔7が形成されている。この排出孔7は、上記ブリード構造8を構成しており、その軸線が、上記支承面2aの球形状の中心を通るとともに、流路方向に直交する方向に向けて設けられている。すなわち、この排出孔7は、図2(b)に示すように、回動体4の閉位置での連通路5両端の開口部5b、5aにそれぞれ対向する位置に形成されている。
【0016】
回動体4は、上記弁本体2内に設けられる球状の弁部材であり、その外周面4aの外径寸法は、上記支承面2aの球の内径に対し僅かに小さい。これにより、球状の回動体4の外周面4aが支承面2aに僅かな隙間で摺接してシール機能を奏するとともに、回動体4を回動させつつ支承可能になっている。そして、この回動体4は、図1(a)に示すように、流路を確保する開位置において、その中央に、円形断面の連通路5が、流路方向に貫通して形成されている。
【0017】
ここで、この回動体4には、その外周面4aに、図1(a)ないし(b)に示すように、上記ブリード構造8を構成する、ブリード溝6が外周面4aに沿って形成されている。このブリード溝6は、横断面が略U字状の溝であり、連通路5の一端と他端とを連通している。さらに、このブリード溝6は、図2(a)に示すように、回動体4の閉位置での回動体4の上流側(通路3A側)の外周面4aに流路方向と直交する方向で相対向する位置にそれぞれ形成されている。
【0018】
上記切り替え機構10は、回動体4の上下方向両側で回動体4を弁本体2に対し支持しており、回動体4を、流路50を確保する開位置および遮断する閉位置に回動させるものである。
この切り替え機構10は、図1(b)に示すように、回動体4の下側には、支持軸15と、その支持軸15を弁本体2に固定するナット14と、を備えており、回動体4を下側から軸支している。一方、回動体4の上側には、回動体4を上側から軸支するハンドル軸13を備えている。このハンドル軸13は、その回動体4側に、二面幅が加工されており、この二面幅が、回動体4に形成された長溝に整合して嵌合している。そして、このハンドル軸13に、長尺板状のハンドル11の一端が連結され、このハンドル11がハンドル側ナット12でハンドル軸13に固定されている。これにより、ハンドル軸13を回動させると、その回動角度に応じて回動体4が弁本体2内で回動するようになっている。
【0019】
ここで、図1および図2に示すように、回動体4の開位置は、連通路5の延びる方向と前記流路方向とが一致する位置であり、回動体4の閉位置は、連通路5の延びる方向と前記流路方向に直交する方向とが一致する位置になっている。すなわち、開閉の相対位置を90°にしている。なお、ハンドル軸13および支持軸15と弁本体2との間には、不図示のパッキン等が介装されており、ここからの流体60の漏れは防止されている。
【0020】
次に、このボール弁1の作用・効果について説明する。
上述したように、このボール弁1は、流体60が内部を通過可能に流路50の途中に設けられる弁本体2と、その弁本体2内に設けられて流路50を確保する開位置(図1参照)および遮断する閉位置(図2参照)に回動可能な球状の回動体4と、を備えている。そして、回動体4の閉位置での回動体4の上流側の外周面4aに形成されたブリード溝6と、弁本体4に回動体4の閉位置でのブリード溝6に整合する位置に外部に貫通形成された排出孔7と、を備えて構成されるブリード構造8を有している。
【0021】
これにより、このボール弁1によれば、図1および図3(a)に示すように、回動体4の開位置において、流路50を確保することができる。そして、弁本体2内の回動体4を開位置からに閉位置に回動させることによって、図2および図3(b)に示すように、流路50を遮断することができる。さらに、この閉位置において、流体60をブリード溝6を介して排出孔7から外部に排出できるから、ブロックおよびブリードのための配管構造を備えるボール弁を提供することができる。なお、図3(b)において、流体60が上記ブリード構造8によって排出されるイメージを符号α、β、γを附した矢印にて示した。
ここで、このブリード溝6は、回動体4の閉位置での回動体4の上流側に、回動体4の外周面4aに全周に亘って設けられている。そのため、上流側から下流側(通路3A側から通路3B側)への流体60の漏れを好適に防止することができる。
【0022】
また、このボール弁1によれば、弁本体2は、その内部に、流路方向両側に流路方向に沿って延びる通路3(3A、3B)をそれぞれ有している。そして、回動体4は、その開位置において、弁本体2内の流路方向両側の各通路3A、3Bを連通させる連通路5を有している。そして、ブリード溝6は、連通路5の一端と他端とを連通し且つ回動体4の閉位置で流路方向に直交する方向で相対向する位置にそれぞれ形成されている。換言すれば、ブリード溝6は、図2(b)に示すように、流路方向から見ると、ブリード溝6は、回動体4の周囲を取り囲んでいわば環状に形成されている。そのため、弁本体2の支承面2aと回動体4の外周面4aとの間から漏れてきた上流側の流体60は、この環状に形成されたブリード溝6に捕捉される。そのため、漏れてきた流体60が下流側に流れることがほとんどない。したがって、上流側から下流側への流体60の漏れをより好適に防止することができる。
【0023】
また、このボール弁1によれば、ブリード構造8を構成する排出孔7は、図2(b)に示すように、回動体4の閉位置での連通路5両端の開口部5a、5bにそれぞれ対向する位置に形成されている。すなわち、排出孔7の位置が、回動体4の閉位置で、口径の大きい開口部5a、5bと対向しているから、排出孔7が小径であっても、ボール弁1の閉位置での相互の位置合わせが容易である。そして、上記ブリード構造8を構成するブリード溝6は、球状の回動体4の外周面4aに形成されているので、その加工が容易である。そのため、このボール弁1によれば、高い加工精度を不要とし、ボール弁1の構造をより単純にし、その製造費を抑制することができる。また、口径の大きい連通路5を介して流体60を効率良く排出できるから、排出効率を向上させることができる。
【0024】
また、このボール弁1によれば、回動体4の開位置は、連通路5の延びる方向と前記流路方向とが一致する位置であり、回動体4の閉位置は、連通路5の延びる方向と前記流路方向に直交する方向とが一致する位置になっている。これにより、開閉の機能位置と実際の操作上の位置とを一致させているから、ボール弁の操作、取り扱いが容易である。
以上説明したように、このブロックおよびブリードのための配管構造を備えるボール弁1によれば、下流側への流体の漏れを好適に防止することができる。
【0025】
なお、本発明に係るボール弁は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、本発明に係るボール弁を、各種の工業用炉等の管路でのガスを遮断するガス遮断弁として用いた例で説明したが、これに限定されず、その他種々の用途に適用可能である。また、流体もガスに限定されず、例えば液体であっても適用可能である。
【0026】
また、例えば、上記実施形態では、ブリード溝6は、回動体4の閉位置での上流側の外周面に全周に亘って形成されるとともに、連通路5の一端と他端とを連通し且つ流路方向に直交する方向で相対向する位置にそれぞれ形成されているが、これに限定されず、ブリード溝6は、少なくとも回動体4の閉位置での回動体4の上流側の外周面4aに全周に亘って形成されていればよい。また、ブリード溝6を連通路5の一端と他端とを連通するように形成しているが、これに限定されず、ブリード溝6と連通路5とが連通していなくてもよい。しかし、上流側から下流側への流体の漏れをより好適に防止する上では、例えば上記実施形態のように構成し、流路方向から見ると、ブリード溝6が回動体4の周囲を取り囲むように環状に形成されていることが望ましい。
【0027】
また、上記実施形態では、ブリード溝6を連通路5の一端と他端とを連通するように形成し、ブリード構造8を構成する排出孔7は、回動体4の閉位置での連通路5両端の開口部5a、5bにそれぞれ対向する位置に形成されているが、これに限定されず、例えば対向する位置のうちいずれか一方に形成してもよい。また、流体60をブリード溝6を介して排出孔7から外部に排出できれば、当該対向する位置以外に排出孔を設けてもよい。しかし、口径の大きい連通路5を介して流体60を効率良く排出し、排出効率を向上させるとともに、相対位置の自由度を拡大して、ボール弁1の構造を単純にし、その製造費をより好適に抑制する上では、上記実施形態のように、回動体4の閉位置での連通路5両端の開口部にそれぞれ対向する位置に排出孔7を形成することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るボール弁の一実施形態の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明に係るボール弁の一実施形態の概略構成を示す説明図である。
【図3】本発明に係るボール弁の一実施形態の作用を説明する図であり、同図(a)では、弁の開位置でのイメージを、同図(b)では、弁の閉位置でのイメージをそれぞれ斜視図にて示している。
【符号の説明】
【0029】
1 ボール弁
2 弁本体
3(3A、3B) 通路
4 回動体
5 連通路
6 ブリード溝
7 排出孔
8 ブリード構造
10 切り替え機構
11 ハンドル
12 ハンドル側ナット
13 ハンドル軸
14 ナット
15 支持軸
50 流路
60 流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が内部を通過可能に流路の途中に設けられる弁本体と、該弁本体内に設けられて前記流路を確保する開位置および遮断する閉位置に回動可能な球状の回動体と、前記回動体にその閉位置での上流側の外周面に全周に亘って形成されたブリード溝、および、前記弁本体に貫通形成されて前記回動体の閉位置での前記ブリード溝に連通する排出孔を有して、上流側から下流側への流体の漏れを防止するブリード構造と、を備えることを特徴とするボール弁。
【請求項2】
前記弁本体は、その内部に、流路方向両側に流路方向に沿って延びる通路をそれぞれ有し、前記回動体は、その開位置でのみ、前記弁本体内の流路方向両側の各通路を連通させる連通路を有し、前記ブリード溝は、前記連通路の一端と他端とを連通し且つ前記回動体の閉位置で流路方向に直交する方向で相対向する位置にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボール弁。
【請求項3】
前記排出孔は、前記回動体の閉位置での前記連通路両端の開口部に対向する位置の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のボール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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