説明

ポケットアクセス付きのサイクリング用シェル又はベスト

【課題】ベストやジャケットの様なアウターシェルにおいて、ジャージの背ポケットへのアクセスを容易にするアウターシェルを提供する。
【解決手段】サイクリング用ジャージAの上から着用されるサイクリング用アウターシェル10であり、着用者の正面と背を覆い、背面の下側部分の切抜20が、ジャージのポケットBと整列していて、互いに反対側の側縁部分並びに下端縁部分と上端縁部分とを備える周辺縁22を有している。切抜は、ジャージのポケットの幅及び高さに概ね一致している。胴部分12の背面14の下側部分に位置する透けて見えるパネルが、ジャージのポケットに対面して位置する窓を形成している。また、背面の下側部分に画定されていて、ジャージのポケットより上方に位置しているスリットが、アウターシェルの内部へ開口し、ジャージのポケットへのアクセスを提供している。スリットは、ジャージのポケットの幅に概ね一致する幅を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、サイクリング用品(即ち衣料品)に関連し、より厳密には、サイクリング活動中に着用される、ベスト、ジャケット、及びレインジャケットの様なアウターシェルに関連する。
【背景技術】
【0002】
サイクリングは、健康に良いということに加え、乗り手が概してより長い距離を走行できるようになることから、人気のスポーツである。多くの場合長い距離を走行することと、乗り手が食べ物、用品、工具、及び見回り品を携行する必要性とを考慮して、サイクリング用ジャージ類は一般にジャージの下側部分に背ポケットを装備している。背ポケットは、着用者の臀部より上方のウエスト領域に概ね腎臓区域に対面して位置している。
【0003】
その様なポケットは、自転車の抗力係数を増加させないようにするために大きな鞄を自転車で持ち運びたくない乗り手や、腕を伸ばせば届く範囲にある食べ物、用品、などへアクセスできるようにしておきたい乗り手にとっては、極めて便利である。
【0004】
サイクリング活動の継続時間が長くなると、乗り手は、降雨や温度上昇といった様な環境条件の変化に曝されることになる。その上、サイクリングには、登坂及びそれに続く降坂が含まれる場合も多い。乗り手は、大抵、登るために強い作動力を発揮せねばならず、その結果、汗をかき衣服を湿らせてしまい、すると今度は坂を下りる速さが乗り手を冷やす要因を招くことになる。これらの理由から、サイクリストらは、通常、彼らの後ろポケットに追加のアウターシェルを携行している。例えば、ベストは、下り坂をこいでいる時に乗り手の胴部を保護するウインドブレーカーとして一般的に使用されている。レインジャケットは降雨の場合に使用されることがある。
【0005】
その様なアウターシェルの不都合は、アウターシェルを着用するとジャージの後ろポケットに容易にアクセスできなくなることである。乗り手は、ポケットにアクセスするために停車を余儀なくされるか、さもなくばアウターシェルの裾を引き上げてポケットの内部へ腕を伸ばせるだけの機敏性を備えていなくてはならない。レースや競技での自転車運転中、その様な操作は危険であり、転倒を引き起こすことさえあり得る。
【0006】
また、レース大会では、識別用番号付ゼッケンを背ポケットの上に着用するのが典型的である。アウターシェルを使用すれば、委員らが乗り手の識別番号を見ることができなくなってしまう。乗り手は、ゼッケンをジャージの背ポケットからアウターシェルへ移す必要に迫られることを嫌う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
故に、本開示の目的は、ベストやジャケットの様なアウターシェルにおいて、先行技術に関連する問題の解決を図るアウターシェルを提供することである。
本開示の更なる目的は、ベストやジャケットの様なアウターシェルにおいて、ジャージの背ポケットへのアクセスを容易にするアウターシェルを提供することである。
【0008】
本開示の更に別の目的は、ベストやジャケットの様なアウターシェルにおいて、識別用ゼッケンを乗り手の背に在って見えるようにするアウターシェルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本出願によれば、着用者がサイクリング用ジャージの上から着用するサイクリング用アウターシェルにおいて、少なくとも胴部分であって、少なくとも1種類の材料のパネルで作られていて、着用時に着用者の背部を覆うように適合されている背面と、着用時に着用者の胸部を覆う前面と、を有している胴部分と、胴部分の背面の下側部分に画定されていて、サイクリング用ジャージのポケットと整列して位置している切抜であって、互いに反対側の側縁部分と下端縁部分と上端縁部分とを備える周辺縁を有し、切抜の側縁部分と側縁部分の間の幅寸法はサイクリング用ジャージのポケットの幅に概ね等しく、切抜の下端縁部分と上端縁部分の間の高さ寸法はサイクリング用ジャージのポケットの高さに概ね等しい、切抜と、を備えているサイクリング用アウターシェルが提供されている。
【0010】
更に、本出願によれば、着用者がサイクリング用ジャージの上から着用するサイクリング用アウターシェルにおいて、少なくとも胴部分であって、少なくとも1種類の材料のパネルで作られていて、着用時に着用者の背部を覆うように適合されている背面と、着用時に着用者の胸部を覆う前面と、を有している胴部分と、胴部分の背面の下側部分に位置していて、サイクリング用ジャージのポケットに対面して位置する窓を形成している、透けて見える材料のパネルと、胴部分の背面の下側部分に画定されていて、サイクリング用ジャージのポケットより上方に位置するスリットであって、サイクリング用ジャージのポケットへの直接アクセスを提供するようにアウターシェルの内部へ開口していて、サイクリング用ジャージのポケットの幅と概ね等しい幅寸法を有している、スリットと、を備えているサイクリング用アウターシェルが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】背ポケットを有するサイクリング用ジャージの上に、本開示によるアウターシェルを着用している乗り手の概略図である。
【図2】長袖構成の図1のアウターシェルの後面図である。
【図3】ベスト構成の図1のアウターシェルの後面図である。
【図4】更に別の実施形態による、透けて見えるパネル及びスリットを有するアウターシェルの後面図である。
【図5】スリットの上に被さるフラップを備える、図4のアウターシェルの後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面、特に図1を参照すると、本開示の或る実施形態によるアウターシェル10が描かれている。アウターシェル10は、ジャージAの上から着用されるベストとして描かれている。しかしながら、アウターシェル10は、ウインドブレーカージャケットやレインジャケットの様なジャケットとすることもできるであろう。説明上、ジャージAは後ろポケットBを有するものとして描かれている。ジャージAは、従来のジャージであり、従って、典型的には3つのポケットBを有しているが、それより多い又は少ないポケットを設けることもできるであろう。ジャージAは短袖Cを有しているが、長袖のジャージ又は中間長さの袖のジャージとすることもできるであろうし、或いは袖無しの上半身部とすることさえできるであろう。図1には識別用ゼッケンDも示されており、識別用ゼッケンDは、自転車レースではレース委員らが乗り手を識別するために一般に使用されている。
【0013】
アウターシェル10は、胴部分12を有している。胴部分12は、1枚又は複数枚のパネルで作られており、典型的にはジッパー式締結具が設けられている。胴部分12は、使用者の胴部を覆っており、背面14と前面16とを有し、ファスナーは典型的には前面16側に設けられている。別途指定のない限り、アウターシェル10に使用される材料は、如何なる適切な材料であってもよい。例えば、前面16は、典型的には、ウインドブレーカー材料、防水材料、及び/又は多層断熱材料で作られている。背面14は、前面16用の材料と同じ材料を含んでいてもよい。乗り手の背側には防風性は必要ないため、背面14にはメッシュ材料もよく使用されている。言い換えると、アウターシェル10には如何なる適した材料が使用されていてもよく、典型的に、材料は企図される使用と乗車条件の関数として選定される。
【0014】
引き続き図1を参照して、アウターシェル10は、袖無しであるが、図2に18で示されている様な袖を特徴としていてもよい。
図1及び図2を同時に参照して、アウターシェル10には、背面14の下背領域に切抜20が設けられている。切抜20は、ジャージAのポケットBと整列しており、概ね長円形、スケートリンクの形(即ち少なくとも幾つかの丸いコーナーを有する)、矩形、などとすることができる。切抜20は、幅Wと高さHを有する周辺縁22によって画定されている。高さH(即ち、周辺縁22の上端縁部分と下端縁部分の間の距離)は、典型的には、ポケットBの高さの関数として選定され、一方、幅(即ち、周辺縁22の側縁部分と側縁部分の間の距離)は、ポケットB全部を合わせた幅の関数として選択される。周辺縁22の上端部分はポケットBの上端縁を僅かに覆っているのが望ましい。代わりに、周辺縁22の上端部分は、ポケットBの上端縁より僅かに上方にあってもよい。同様に、周辺縁22の下端縁は、ポケットBの下端より僅かに下方にあってもよいし、それより僅かに上方にあってもよい。或る実施形態によれば、切抜20の高さHは、ジャージのポケットBの高さに概ね等しいか又はそれより大きい値を有している。前述の実施形態又は別の実施形態によれば、切抜20の幅Wは、ジャージのポケットBの幅に概ね等しい(即ち、それより僅かに小さいか又は僅かに大きい)値を有している。概ね等しいということは、切抜20はポケットBの寸法から数インチ以内に収まっている、即ち寸法同士が同様か又は一致していることを意味する。
【0015】
図2では、裾条片24が、切抜20の下端を境界づけ、周辺縁22の一部を形成している。裾条片24は、収縮素材であってもよい。収縮素材は、アウターシェル10が着用された際に僅かに弾性変形するようなサイズとすることができる。従って、アウターシェル10の裾部分は、乗り手の上臀部/下背部分の輪郭をなぞる。その上、裾条片24として使用されている収縮素材は、ポケットBの内容物によって形成される隆起の周りに巻き付くことができるであろう。これにより、着用者の胴部の裾周りでのアウターシェル10の密着性が高まる。
【0016】
従って、図1及び図2に見られる様に、ポケットBの内部は、アウターシェル10が着用されているにもかかわらずアクセス可能である。アウターシェル10は典型的に胴部に密着して、即ち胴部とぴったり合う関係に、着用されているため、材料がだぶついてポケットBへのアクセスを妨げることはない。更に、識別用のゼッケンDも、アウターシェル10が着用されているにもかかわらず視認できる。
【0017】
図3を参照すると、裾条片24は、代わりに、収縮素材とは対照的に単純な材料条片とされている。周辺縁22には縁取り30が縫い付けられるか又は接着されており、縁取りは例えば収縮性の材料であってもよい。図2と図3の両方の実施形態では、裾条片24は、確実に、アウターシェル10の裾がポケットBより下方の位置に留まったままになるように、ゴム又は同様の粘着性の材料の様な、把持用材料を有する内面を有していてもよい。把持用材料は、条片24に接着されるか縫い付けられている追加の材料条片であってもよいし、或いは、他にも候補はあるが中でも特にゴム様フィラメントの縫い目であってもよい。
【0018】
図3を参照すると、取り外しできるカバーが25で示されている。取り外しできるカバー25は、アウターシェル10と併せて提供されていてもよい(例えば一体に販売)。取り外しできるカバー25は、ポケットBを露出させてはならない場合などに切抜20を閉鎖するために使用される。一例として、雨が降っているとか湿気の多い条件のときは、ポケットBに覆いを被せ、ひいてはポケットの内容物を雨から護ることが望まれることであろう。カバー25は、切抜20の周辺に固着させるために、縁取り30として示されている締結具と連携係合するための周辺締結具26を装備している。或る実施形態によれば、周辺締結具26をVelcro(商標)条片の鉤部構成要素とし、縁取り30をVelcro(商標)条片の輪部構成要素の条片としてもよいし、又はその逆としてもよい。また、締結具は全周に廻らす必要はない。他の締結具システムには、ジッパー式閉鎖、など、が含まれる。
【0019】
カバー25は、アウターシェル10の胴部分12と同じ材料から構成されていてもよい。代わりに、カバー25は、カバー25をアウターシェル10に固着しても識別用のゼッケンDが視認できるようにするために、透き通った材料から作られていてもよい。カバー25は、収縮性の裾条片24付きのアウターシェル10の構成で使用することができることを指摘しておく。
【0020】
図4を参照すると、胴部分12の背面14は、ジャージAの背ポケットBを覆うための透けて見えるパネル40を特徴としている。透けて見えるパネル40は、透き通った不浸透性の材料で作られており、胴部分12の下側領域に限定して、即ち背ポケットBに対面して設けられている。透けて見えるパネル40の上側の縁に隣接してスリット42が画定されており、スリットはポケットBへのアクセスのためにポケットの上端縁より僅かに上方に配置されている。スリット42は、透けて見えるパネル40に画定されていてもよいし、背面14の残りの材料部分に画定されていてもよい。スリット42の幅は、ジャージAのポケットBの幅に概ね等しいが、スリット42の方が僅かに幅が広くてもよい。スリット42の互いに反対側の端には裂けを防止するために典型的に補強材(即ち追加の材料)が提供されている。スリット42は、上記理由で、典型的に縁取り44に取り囲まれている。
【0021】
かくして、透けて見えるパネル40がスリット42と組み合わせて設けられているおかげで、乗り手はポケットBの内部へアクセスできるようになると同時に、透けて見えるパネル40が識別用ゼッケンDに対面して窓を画定していることで委員らは透けて見えるパネルを通して識別用ゼッケンDを見ることができる。
【0022】
図5を参照すると、スリット42より上方のフラップ50が示されている。フラップ50は、胴部分の残りに、Velcro(商標)の様な簡易脱着締結具52によって固着されていてもよい。フラップ50は、例えば降雨の場合にスリット42を通って進入する水の量を制限するものである。
【0023】
アウターシェル10は、サイクリング用アウターシェルに一般的に設けられているその他の適切な特徴である、反射材、ジッパー式締結具を覆う防風用フラップ、ウエストゴム、商標物、など、を有していてもよい。
【符号の説明】
【0024】
A ジャージ
B 後ろポケット
C 短袖
D 識別用ゼッケン
10 アウターシェル
12 胴部分
14 背面
16 前面
18 袖
20 切抜
22 周辺縁
W 周辺縁の幅
H 周辺縁の高さ
24 裾条片
25 取り外しできるカバー
26 周辺締結具
30 縁取り
40 透けて見えるパネル
42 スリット
44 縁取り
50 フラップ
52 Velcro(商標)の様な簡易脱着締結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者がサイクリング用ジャージの上から着用するサイクリング用アウターシェルにおいて、
少なくとも胴部分であって、少なくとも1種類の材料のパネルで作られていて、着用時に前記着用者の背部を覆うように適合されている背面と、着用時に前記着用者の胸部を覆う前面と、を有している胴部分と、
前記胴部分の前記背面の下側部分に画定されていて、前記サイクリング用ジャージのポケットと整列して位置している切抜であって、互いに反対側の側縁部分と下端縁部分と上端縁部分とを備える周辺縁を有し、当該切抜の前記側縁部分と側縁部分の間の幅寸法は前記サイクリング用ジャージの前記ポケットの幅に概ね一致し、当該切抜の前記下端縁部分と前記上端縁部分の間の高さ寸法は前記サイクリング用ジャージの前記ポケットの高さに概ね一致している、切抜と、を備えているサイクリング用アウターシェル。
【請求項2】
前記切抜の前記下端縁部分は、収縮性素材である材料の条片によって画定されている、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項3】
前記周辺縁の少なくとも一部分は、前記胴部分の前記背面の前記材料へ縫い付けられている材料の縁取りを備えている、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項4】
前記切抜の上側の角部は丸みが付けられている、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項5】
少なくとも前記切抜の前記下端縁部分を画定している材料の裾条片の内を向いている面は把持用材料を表面に有している、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項6】
前記胴部分の前記前面にジッパー式締結具を更に備えている、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項7】
前記胴部分の裾は、前記着用者のウエストを取り囲むように適合されている収縮性部材を有している、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項8】
前記切抜の前記下端縁部分と前記上端縁部分の間の前記高さ寸法は、前記サイクリング用ジャージの前記ポケットの高さよりも大きい、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項9】
前記切抜は、前記胴部分の前記背面に関し、当該切抜の前記上端縁部分が前記サイクリング用ジャージの前記ポケットの上端より上方になるサイズと配置である、請求項1に記載のアウターシェル。
【請求項10】
取り外しできるカバーパネルと、前記切抜を覆うために前記取り外しできるカバーパネルを前記胴部分に解放可能に固着するための、当該取り外しできるカバーパネルと当該切抜の周辺の間の締結具手段と、を更に備えている、請求項1に記載のアウターシェル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60695(P2013−60695A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−193835(P2012−193835)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【出願人】(512229872)ルイガノ スポーツ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】