説明

ポジショナ

【課題】変位検出部(角度センサ)の電気部品の腐食損傷や回転軸の固着などを防止する。
【解決手段】角度センサ4が調節弁200に固定設置され、制御演算部1,電空変換部2および空気圧信号増幅器(パイロットリレー)3がケース5に収納されたポジショナ100において、角度センサ4からの電気信号を制御演算部1に導くケーブル6に、電空変換部2への空気圧Psを分岐して角度センサ4の検出部内へ導くエアチューブ62を設ける。これにより、角度センサ4の検出部内がエアパージされ、雨水や湿気などのない状態に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気信号を空気圧信号に変換して調節弁の弁開度を制御するポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学プラント等においては、その流量プロセスに用いられる調節弁に対してポジショナを設け、このポジショナによって調節弁の開度を制御するようにしている。このポジショナは、上位装置から送られてくる設定開度と調節弁からフィードバックされてくる実開度との偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御信号として生成する制御演算部と、この制御演算部が生成した制御信号を空気圧信号に変換する電空変換部と、この電空変換部からの空気圧信号を増幅し出力空気圧として調節弁の操作器に供給する空気圧信号増幅部(パイロットリレー)とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このポジショナでは、調節弁の実開度を弁軸の変位量として検出する変位検出部として角度センサが用いられており、この角度センサはフィードバックレバーを介して弁軸の変位量に応じて回転する回転軸を有している。この角度センサの回転軸の回転角度に応じた電気信号が実開度を示す信号として制御演算部にフィードバックされる。
【0004】
このようなポジショナでは、電気部品である変位検出部(角度センサ)、制御演算部、電空変換部等をケース内に収容したうえで、調節弁のヨークにブラケット等を介して固定されて使用されるのが一般的である。しかし、調節弁は流量制御に伴って振動を発生する振動源を構成しているので、その調節弁に固定されているポジショナもその振動の影響を受けて、弁開度制御の精度が悪化する虞がある。
【0005】
そこで、このようなポジショナの振動による制御性の悪化を解決することを目的としたポジショナが特許文献2に示されている。この特許文献2に示されたポジショナでは、従来防爆ケース内に収容されていた角度センサを外に出し別体とし、この別体とした角度センサを調節弁のヨークにブラケットを介して固定する一方、ポジショナ本体は調節弁の振動を受けない調節弁から離れたところに設置したうえで、角度センサとポジショナ本体間をケーブルで接続するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−28118号公報
【特許文献2】実開平04−8801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に示されたポジショナでは、角度センサをポジショナのヨークに固定しているので、調節弁の弁軸の変位量に応じて回転する角度センサの回転軸の隙間から、角度センサの内部に雨水が侵入したり、湿気が入り込んだりするなどして、角度センサの電気部品を腐食損傷させたり、回転軸が摩耗して、その摩耗粉が軸受との隙間に入り込み、回転軸が固着するなどという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、変位検出部の電気部品の腐食損傷や回転軸の固着などを防止することが可能なポジショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために本発明は、空気圧によって動作する調節弁の作動軸の変位量を検出しその変位量に応じた電気信号を出力する変位検出部と、変位検出部からの電気信号より得られる調節弁の実開度と設定開度との偏差を求め、この偏差に応じた制御信号を出力する制御演算部と、制御演算部からの制御信号を空気圧信号に変換する電空変換部と、電空変換部からの空気圧信号を増幅し出力空気圧として調節弁の操作器に供給する空気圧信号増幅部とを備えたポジショナにおいて、変位検出部は、調節弁に固定設置され、制御演算部、電空変換部および空気圧信号増幅部はケース内に収容され、変位検出部からの電気信号を制御演算部に導くケーブルを有し、ケーブルには、変位検出部にその検出部内をパージする空気を導く通路が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、変位検出部からの電気信号を制御演算部に導くケーブルに設けられた通路を通して変位検出部の検出部内に空気が導かれ、変位検出部の検出部内がエアパージされる。これにより、変位検出部の検出部内に雨水や湿気などが侵入したとしても、その侵入した雨水や湿気などが吹き飛ばされ、変位検出部の検出部内が雨水や湿気などのない状態に保たれる。
【0011】
本発明において、変位検出部に導く空気は、ポジショナへの空気の供給源とは別の供給源から送るようにしてもよいが、ポジショナへの空気の供給源を利用すれば、空気の供給源を別途設ける必要がない。また、ポジショナのケース内から変位検出部に空気を送るようにすれば、ポジショナ内で利用される空気が有効に活用されるものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、変位検出部からの電気信号を制御演算部に導くケーブルに、変位検出部の検出部内をパージする空気を導く通路を設けるようにしたので、変位検出部の検出部内がエアパージされるものとなり、変位検出部の検出部内が雨水や湿気などのない状態に保たれ、変位検出部の電気部品の腐食損傷や回転軸の固着などを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るポジショナの一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】このポジショナの調節弁との接続状況を示す正面図である。
【図3】このポジショナの角度センサの調節弁における取り付け状況を示す平面断面図である。
【図4】角度センサからの電気信号をポジショナのケース内に導くケーブルの一例を示す断面図である。
【図5】角度センサからの電気信号をポジショナのケース内に導くケーブルの他の例を示す断面図である。
【図6】角度センサへのケーブルの引き込み部の断面図である。
【図7】角度センサの内部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はこの発明に係るポジショナの一実施の形態を示すブロック図である。同図において、100は本発明に係るポジショナ、200はこのポジショナ100によってその弁開度が制御される調節弁である。
【0015】
調節弁200は、弁軸(作動軸)20を駆動する操作器21を有しており、弁軸20には連結ピン22が設けられ、この連結ピン22にその長孔23aを摺動自在に挿通させてフィードバックレバー23が設けられている。フィードバックレバー23は、弁軸20の上下動に応じて、すなわち連結ピン22の上下動に応じて、支点P1を中心として回動する。
【0016】
ポジショナ100は、上位装置(図示せず)から送られてくる設定開度θspと調節弁200からフィードバックされてくる実開度θpvとの偏差を求め、この偏差に応じた電気信号を制御信号として生成する制御演算部1と、空気圧の供給源300から供給される空気圧Psを受けて、制御演算部1が生成した制御信号を空気圧信号(ノズル背圧)Pnに変換する電空変換部2と、電空変換部2が変換した空気圧信号Pnを増幅し出力空気圧Poutとして調節弁200の操作器21へ出力する空気圧信号増幅部(パイロットリレー)3と、角度センサ(変位検出部)4とを備えている。
【0017】
このポジショナ100において、角度センサ4は、調節弁200のヨーク24(図2参照)にブラケット25を介して固定され、その回転軸41(図3参照)がフィードバックレバー23と連結されている。これにより、支点P1を中心とするフィードバックレバー23の回動に伴って角度センサ4の回転軸41が回転し、弁軸20の変位量に応じた電気信号が調節弁200の実開度θpvとして制御演算部1へフィードバックされる。なお、フィードバックレバー23には、連結ピン22を長孔23aの長手方向に延びる一側壁(この例では、上側の側壁)23a1に圧接するピン押圧用ばね26が、その両端部をフィードバックレバー23の壁面部に掛止させて装着されている。
【0018】
また、このポジショナ100において、制御演算部1、電空変換部2および空気圧信号増幅部3はケース5内に収容されている。このケース5内において、制御演算部1および電空変換部2は、防爆構造とされた容器(図示せず)にさらに収納されている。また、ケース5と角度センサ4との間には、角度センサ4からの電気信号を制御演算部1に導くケーブル6が設けられている。このケーブル6には、本実施の形態特有の構成として、角度センサ4からの電気信号を制御演算部1に導くリード線群61に加え、電空変換部2への空気圧Psを分岐して角度センサ4の検出部内へ導くエアチューブ62が設けられている。
【0019】
図4にケーブル6の断面図を示す。この例では、ケーブル6の中心部にエアチューブ62が設けられ、このエアチューブ62の周囲にリード線群61が設けられている。なお、図5に示すように、断面ダルマ状のケーブル6とし、リード線群61とエアチューブ62とを1つのケーブル6内で2つに分けるようにしてもよい。
【0020】
図6に角度センサ4へのケーブル6の引き込み部の断面図を示す。ケーブル6は角度センサ4が収容されたケース7内にブッシング8を介して引き込まれている。ブッシング8はナット9によってケース7に締め付け付けられている。ケース7内において、ケーブル6から引き出されたリード線群61は、絶縁スリーブ10によって、角度センサ4からのリード線と圧着接続されている。また、ケーブル6から引き出されるエアチューブ62の端面は、ケース7内のリード線群61の収容空間7aに臨み、このリード線群61の収容空間7aにエアチューブ62からの空気が吹き出される。
【0021】
図7は角度センサ4の内部の構成を示す断面図である。角度センサ4は、円筒状の軸受用シリンダ42を収納固定したケース43内に、ヨーク44をその下端に固定した回転軸41を下方から挿入して、回転軸41の上端をケース43上面の挿通孔45から突出させ、さらに磁気センサ46を取り付けた蓋47によってケース43の下面の開口48を塞いで構成されている。回転軸41に固定されたヨーク44内には2つの永久磁石49,50が収納されており、磁気センサ46は支持台51の上面に固定されている。
【0022】
なお、52はケース43の上面に突出した回転軸41のリング溝に取り付けられた係止リング、53はヨーク44と軸受用シリンダ42との間に挿入されたリング、54,55はパッキン、56はフランジ、57はキャップ、58はフィードバックレバー23を回転軸41に連結するボルト、59は磁気センサ46からの電気信号を取り出す基板であり、蓋47にはケース43の内部空間と連通する連通孔47aが設けられている。
【0023】
この角度センサ4において、回転軸41は、軸受用シリンダ42の内周面42aを軸受面として、ヨーク44と一体となって回転する。これにより、磁気センサ46の表面における磁石49,50が作る磁力線の方向が変化し、磁気センサ46の出力抵抗値が変化して、回転軸41の回転角度に応じた電気信号が生成される。
【0024】
このように構成されたポジショナ100では、角度センサ4からの電気信号を制御演算部1に導くケーブル6に設けられたエアチューブ62を通して、空気圧の供給源300からの電空変換部2への空気圧Psが分岐して、角度センサ4が収容されたケース7内のリード線群61の収容空間7aに導かれる。
【0025】
これにより、エアチューブ62の端面からケース7内のリード線群61の収容空間7aに空気が吹き出され、この吹き出された空気が連通孔47aを通して、角度センサ4のケース43の内部空間に導かれ、角度センサ4の検出部内がエアパージされる。
【0026】
これにより、角度センサ4の検出部内に雨水や湿気などが侵入したとしても、その侵入した雨水や湿気などが吹き飛ばされ、角度センサ4の検出部内が雨水や湿気などのない状態に保たれ、角度センサ4の電気部品の腐食損傷や回転軸51の固着などが防止されるものとなる。
【0027】
なお、この実施の形態では、空気圧の供給源300からの電空変換部2への空気圧Psを分岐して角度センサ4に導くようにしたが、電空変換部2からの空気圧信号(ノズル背圧)Pnを分岐して角度センサ4に導くようにしてもよく、空気圧信号増幅部3からの出力空気圧Poutを分岐して角度センサ4に導くようにしてもよい。また、図示はしていないが、ポジショナ100から外部へ排出される空気を角度センサ4に導くようにしてもよい。
【0028】
また、ポジショナ100への空気圧の供給源300とは別の空気圧の供給源を設け、この別の空気圧の供給源からの空気をポジショナ100を通さずにケーブル6の途中から中に入り込ませ、このケーブル6の中に入り込ませた空気を角度センサ4に送るようにしてもよい。
【0029】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術的範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1…制御演算部、2…電空変換部、3…空気圧信号増幅部(パイロットリレー)、4…角度センサ(変位検出部)、41…回転軸、47a…連通孔、5…ケース、6…ケーブル、61…リード線群、62…エアチューブ、20…弁軸(作動軸)、21…操作器、23…フィードバックレバー、100…ポジショナ、200…調節弁、300…空気圧の供給源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧によって動作する調節弁の作動軸の変位量を検出しその変位量に応じた電気信号を出力する変位検出部と、
前記変位検出部からの電気信号より得られる前記調節弁の実開度と設定開度との偏差を求め、この偏差に応じた制御信号を出力する制御演算部と、
前記制御演算部からの制御信号を空気圧信号に変換する電空変換部と、
前記電空変換部からの空気圧信号を増幅し出力空気圧として前記調節弁の操作器に供給する空気圧信号増幅部とを備えたポジショナにおいて、
前記変位検出部は、前記調節弁に固定設置され、
前記制御演算部、前記電空変換部および前記空気圧信号増幅部はケース内に収容され、
前記変位検出部からの電気信号を前記制御演算部に導くケーブルを有し、
前記ケーブルには、前記変位検出部にその検出部内をパージする空気を導く通路が設けられている
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項2】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記変位検出部に導かれる空気は前記ケース内から送られるものである
ことを特徴とするポジショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104454(P2013−104454A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247197(P2011−247197)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】