説明

ポジトロン放射断層画像法

本明細書に記載されるものは、ポジトロン放射断層画像法を用いて病理的状態を診断および/または監視するための組成物および方法であり、ここで、病原細胞は、ビタミン受容体を一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する。さらに本明細書に記載されるものは、ビタミン、およびビタミン受容体結合性類縁体および誘導体の18F結合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジトロン放射断層画像法を用いて、病理的状態を診断および/または監視するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、ビタミン受容体を一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する病原細胞に関する。ポジトロン放射断層画像法において有用な放射性担体に結合される、ビタミン受容体結合性化合物が、体外デバイスによる病態の診断および/または監視に関して記載される。
【背景技術】
【0002】
ビタミン受容体は、癌細胞において過剰発現される。例えば、高い親和度(<1 nM)においてビタミン、葉酸に結合する38KD GPIアンカー型タンパクは、多くの悪性組織、例えば、卵巣、乳房、気管支、および脳の癌などにおいて過剰発現される。特に、卵巣癌全体の95%が、葉酸受容体を過剰発現すると推定されている。一方、腎臓、脈絡叢、および胎盤を除いては、正常組織の葉酸受容体の発現レベルは、低いか、または非検出レベルである。さらに、大抵の細胞は、必要な葉酸を獲得するのに、無関係の還元型葉酸担体も使用する。
【0003】
ビタミン、例えば葉酸塩の、ビタミン受容体に対する受容体結合に続いて、速やかにエンドサイトーシスが起こり、それによって該ビタミンは細胞内に輸送され、そこで、比較的低いpHにおいてエンドソーム区画に納められる。重要な所見として、ビタミン、および、他のビタミン受容体結合性リガンドに対し、小型分子、タンパク、場合によってはリポソームを共有結合させても、該リガンドの、その受容体に対する結合能力は阻止されないことであり、したがって、このようなリガンド結合体は、簡単に細胞に輸送され、受容体介在エンドサイトーシスによって細胞内に侵入することが可能である。
【0004】
さらに、活性化単球は、葉酸受容体を過剰に発現することが示されている。活性化マクロファージ、および活性化単球における葉酸受容体の過剰発現は、特許文献1および2に記載される。なお、これらの特許文献それぞれの全体を引用により本明細書に含める。さらに、葉酸受容体の非上皮性異性形である葉酸受容体βは、活性化滑膜マクロファージでは発現されるが、安静マクロファージでは発現されないことが報告されている。活性化マクロファージは、外来病原体を非特異的に貪食し、それらを該マクロファージ内部で殺し、外来タンパク由来の分解ペプチドを、他の免疫細胞によって認識可能となるように、該マクロファージ細胞表面に提示し、かつ、TおよびBリンパ球の機能を変調するサイトカインやその他の因子を分泌し、このようにしてさらに免疫反応を刺激することによって、免疫反応に参加することが可能である。しかしながら、ある場合、活性化マクロファージはまた、病気の病理生理的機序の原因ともなり得る。例えば、活性化マクロファージは、特に、アテローム性硬化症、慢性関節リュウマーチ、自己免疫疾患、および対宿主性移植片病を招く可能性がある。
【0005】
活性化マクロファージが病態を引き起こす一つの例は、アテローム性硬化症の進行における活性化マクロファージの関与である。アテローム性硬化症は、血管壁内部に脂肪線条が形成されると起動される病態である。脂肪線条の形成は、血管壁の最内層、すなわち、腔状内皮細胞層下の血管壁層におけるリポタンパク粒子の蓄積に起因すると考えられている。リポタンパク粒子は、最内層における細胞外基質成分と会合し、血漿抗酸化因子に対し暴露されなくなり、そのためリポタンパク粒子の酸化的修飾がもたらされる。この酸化的修飾は、局所的炎症反応を起動する場合があり、これが、活性化マクロファージおよびTリンパ球の、腔内皮細胞に対する接着、それに続く最内層への移動をもたらす。酸化されたリポタンパク粒子そのものが、免疫系細胞、例えば、マクロファージおよびT細胞に対し化学的誘引因子として作動することが可能であり、あるいは、血管壁の細胞に化学的誘引因子を生産するように誘発することが可能である。次に、このアテローム硬化病変は、活性化マクロファージで充満した脂質富裕コアを持つ線維性キャップを形成する場合がある。不安定なアテローム硬化病変は、局所的炎症によって特徴づけられ、破断されて、致命的心筋梗塞を引き起こしてしまった病変は、活性化マクロファージおよびTリンパ球の浸潤によって特徴づけられる。
【0006】
特許文献3、4、および5(これらの文献の全体を引用により本明細書に含める)は、血管病の可能な発生起源を論じている。これらの参考文献は、血管または他の体腔において活性化マクロファージに結合する、放射性標識結合体検出のための、カテーテル使用システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第60/696,740号
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0192157号
【特許文献3】米国特許第6,782,289号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0244336号
【特許文献5】PCT国際公開第WO 2004/110250号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されるものは、ポジトロン放射断層画像法を用いて、病理的状態を診断および/または監視するための組成物および方法である。例示の病理的状態としては、癌、活性化マクロファージまたは活性化単球を含む病態、活性化プラークを含む病態などが挙げられる。本組成物および方法は、ビタミン受容体を一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰発現する病的細胞に関する。一実施態様では、放射性担体に結合されるビタミン、またはその類縁体が、ポジトロン放射断層画像法を用いて体外的にこれらの病態を診断および/または監視するために用いられる。
【0009】
別の実施態様では、ビタミン受容体を一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する癌細胞を有する癌を、診断および/または監視するための方法が記載される。この方法は、該癌について評価される患者に対し、有効量の、一般式B-L-Xの結合体を投与する工程を含み、上式において、Bは、ビタミン、またはその類縁体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用される二価のリンカーである。本方法は、このビタミン結合体を、癌細胞に対して、十分な時間をかけて結合させること、および、ポジトロン放射断層画像法を用いて癌を体外的に診断および/または監視することを含む。
【0010】
別の実施態様では、ビタミンに対し接触可能な結合部位を持つ、活性化単球または活性化マクロファージによって仲介される病態を、診断および/または監視するための方法が記載される。この方法は、該病態について評価される患者に対し、有効量の、一般式B-L-Xの結合体を投与する工程を含み、上式において、Bは、ビタミン、またはその類縁体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用される二価のリンカーである。本方法は、このビタミン結合体を、活性化単球または活性化マクロファージに対して、十分な時間をかけて結合させること、および、ポジトロン放射断層画像法を用いて該病態を体外的に診断および/または監視することを含む。
【0011】
別の実施態様では、血管に付随する活動的アテローム硬化プラークであって、ビタミンに対し接触可能な結合部位を持つ、活性化マクロファージを含むプラークを、診断および/または監視するための方法が記載される。この方法は、アテローム硬化症について評価される患者に対し、有効量の、一般式B-L-Xの結合体を投与する工程を含み、上式において、Bは、ビタミン、またはその類縁体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用される二価のリンカーである。本方法は、このビタミン結合体を、活動的プラークに付随する活性化マクロファージに対して、十分な時間をかけて結合させること、および、ポジトロン放射断層画像法を用いて該活動的プラークを体外的に診断および/または監視することを含む。
【0012】
別の実施態様では、一般式B-L-Xを有する化合物が記載されるが、上式において、Bはビタミン、またはその類縁体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用される二価のリンカーである。一態様では、放射性担体はポジトロン放射性同位元素であり、この放射性同位元素は、電子によるポジトロン消滅に起因する、反対方向に移動する一対の消滅フォトンを放射する。別態様では、放射性担体は、ポジトロンを放射することによって約80分から約8時間の半減期をもって崩壊する。
【0013】
別の実施態様では、式B-L-Xを有する化合物を含む組成物が記載されるが、上式において、Bは、ビタミン、またはその類縁体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用される二価のリンカーである。一態様では、放射性担体は、ポジトロン放射性同位元素であり、この放射性同位元素は、電子によるポジトロン消滅に起因する、反対方向に移動する一対の消滅フォトンを放射する。別態様では、放射性担体は、約80分から約8時間の半減期を有する。
【0014】
本明細書に記載する化合物および組成物は、本明細書に記載する方法のいずれと共に使用してもよい。
【0015】
本明細書に記載される化合物の一実施態様では、結合体B-L-Xは、下式:
【化1】

を有し、式中、Vは、ビタミン受容体結合性成分、またはその類縁体若しくは誘導体であり;Lは必要に応じて用いられる二価リンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Arは、ヘテロアリール基を含むアリール基であって、放射性担体、または放射性担体の前駆体を含む、一つ以上の置換基(Rf)mを含む。一態様では、Rfは、一つ以上の置換基を含み、前記置換基の内少なくとも一つはニトロまたはフルオロであり;mは約1から約3までから選ばれる整数である。別の態様では、Arは、18Fフルオロアリール放射性担体を調製するための前駆体であり、したがって、Rfは、一つ以上のニトロ基を含む。別の態様では、Arは、Rfが一つ以上のフルオロ基を含む、18Fフルオロアリール放射性担体である。したがって、整数mが1より大きい態様では、Rfは、1を超えるニトロ基を含むか、あるいは、Rfは、フルオロとニトロの両方を含むか、あるいは、Rfは、1を超えるフルオロ基を含んでもよいことを理解しなければならない。さらに、本明細書に記載される各種実施態様および態様、および変異態様に認められるフッ素同位元素は、18Fおよび19F、またはそれらの組み合わせから選ばれてもよいことを理解しなければならない。
【0016】
本明細書に記載される化合物の別の実施態様では、結合体B-L-Xは、下式:
【化2】

を有し、式中、Vは、ビタミン受容体結合性成分、またはその類縁体若しくは誘導体であり;Lは必要に応じて用いられる二価リンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Rfは、本明細書の各種実施態様において定義される通りであり;mは1から約3までから選ばれる整数である。
【0017】
本明細書に記載される化合物の別の実施態様では、結合体B-L-Xは、下式:
【化3】

を有し、式中、Lは必要に応じて用いられる二価リンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Rfは、本明細書の各種実施態様において定義される通りであり;mは1から約3までから選ばれる整数である。
【0018】
本明細書に記載される化合物B-L-Xの、前記例示の実施態様では、一つ以上の不斉炭素が存在してもよいことを理解しなければならない。したがって、本明細書では、それらの不斉炭素による、各種立体化学的変異体がそれぞれ記載される。特異的エナンチオマーおよびジアステレオマー、特異的ラセミ混合物、および、前記のものそれぞれの、各種の混合物および組み合わせが本明細書において記載される。
【0019】
別の実施態様では、式B-L-Xの結合体(Bはビタミン、またはその類縁体を含み、Lは必要に応じて使用される二価のリンカーであり、基Xは放射性担体を含む)を調製するための方法が記載される。一態様では、放射性担体は、ポジトロンを放射することによって約80分から約8時間の半減期をもって崩壊し、この放射性同位元素は、電子によるポジトロン消滅に起因する、反対方向に移動する一対の消滅フォトンを放射する。本方法は、反応形の放射性担体と反応することが可能な、反応形のビタミンを準備する工程、反応形の該ビタミンと反応することが可能な、反応形の放射性担体を準備する工程、および、該反応形のビタミンを、該反応形の放射性担体に接触させる工程を含む。一変異態様では、反応形のビタミンおよびその類縁体または誘導体、および反応形の放射性担体は、それぞれ、反応形の二価リンカーと反応させられる。これらの化学工程は、種々の順序で実行してよく、かつ、必要に応じて保護基を含んでもよいことが認識される。
【0020】
別の実施態様では、18F放射性標識および/または19F化合物を、対応するニトロ化合物から調製するための方法が記載される。本方法は、ニトロアリール前駆体を、18Fおよび/または19Fフッ化剤と反応させる工程を含む。
【0021】
別の実施態様では、本明細書において、PET画像法に使用される、18Fおよび/または19Fフッ化剤を調製するためのキットが記載される。本キットは、アリールニトロ前駆体の結合体、18Fおよび/または19Fフッ化剤、必要に応じて使用される溶媒、および、該アリールニトロ前駆体を該フッ化剤と反応させるための反応容器を含む。一変異態様では、本キットは精製システムも含む。一変異態様では、キットそのものは、フッ化剤を含まず、むしろ、フッ化剤は、キットの使用前に、例えば、サイクロトロンまたは他のジェネレーターを使用することによって生成される。
【0022】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は、2007年2月7日出願の米国特許仮出願第60/899,921号、および、2007年3月21日出願の米国特許仮出願第60/896,018号の利益を主張する。この参照により、これら両方の全体を本出願に含める。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本明細書に記載される、葉酸の18F結合体の、例示的実施例を示す。
【図2】KB細胞上の葉酸受容体に対する、図1の化合物の、葉酸と比較した場合の競合的結合を示す:(a)図1の化合物、Kd = 23.8 mM;(b)葉酸、Kd = 32.7 nM。葉酸と比較した場合の、図1の化合物の相対的親和度は、1.37である。図1の化合物は、12.2%の血清結合度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ポジトロン放射断層画像法(PET)を用いて、病原細胞が、ビタミン受容体または他の受容体を一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する病原状態を、診断および/または監視するための組成物および方法に関する。本発明は、癌などの、種々の病理的状態、活性化マクロファージまたは活性化単球を含む病態、活性化プラークを含む病態などを引き起こす、病原細胞集団に対して適用することが可能である。癌の場合、病原細胞の集団は、良性腫瘍および悪性腫瘍を含む腫瘍発生源となる癌細胞集団であってもよいし、または非腫瘍発生性であってもよい。癌細胞集団は、自発的に生じてもよいし、または、患者の生殖系に存在する突然変異、または体性突然変異などの過程によって生じてもよいし、または、化学的に、ウィルス的に、または放射線によって誘発されてもよい。本発明は、癌、例えば、上皮癌、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、メラノーマ、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、白血病、骨髄腫などの癌を、診断および/または監視するために利用することが可能である。癌細胞集団としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、口内、甲状腺、内分泌腺、皮膚、胃、食道、喉頭、すい臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、子宮頸部、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎臓、肝臓、肺、およびその他の癌を挙げることが可能である。
【0025】
さらに、病原細胞は、病態、例えば、線維筋痛症、慢性関節リューマチ、変形性関節症、潰瘍性結腸炎、クローン病、乾癬、骨髄炎、多発性硬化症、アテローム硬化症、肺線維症、サルコイドーシス、全身性硬化症、臓器移植拒絶(GVHD)、エリテマトーデス、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、皮膚の炎症、例えば、乾癬など、慢性的炎症、傷害、例えば、頭部または脊髄傷害による炎症、塞栓症などの病態に付随する、活性化単球またはマクロファージであってもよい。
【0026】
一実施態様では、ビタミンに対し接触可能な結合部位を有する活性化マクロファージまたは活性化単球によって仲介される病態を、診断および/または監視するための方法が記載される。この方法は、該病態について評価される患者に対し、一般式B-L-Xの結合体の有効量を投与する工程を含み、上式において、Bは、ビタミン受容体に結合することが可能なビタミン、またはその類縁体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用されるリンカーである。本方法は、この結合体を、活性化単球または活性化マクロファージに対して、十分な時間をかけて結合させること、および、ポジトロン放射断層画像法を用いて該病態を体外的に診断および/または監視することを含む。一態様では、放射性担体は、約80分から約8時間の半減期を有する。
【0027】
別の実施態様では、ビタミン受容体を一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する癌細胞を有する癌を、診断および/または監視するための方法が記載される。この方法は、該癌について評価される患者に対し、有効量の一般式B-L-Xの結合体を投与する工程を含み、上式において、Bは、ビタミン、またはその類縁体若しくは誘導体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用されるリンカーである。一態様では、放射性担体は、約80分から約8時間の半減期を有し、本方法は、この結合体を、癌細胞に対して、十分な時間をかけて結合させること、および、ポジトロン放射断層画像法を用いて癌を体外的に診断および/または監視することを含む。
【0028】
別の実施態様では、血管に付随する活動的アテローム硬化プラークであって、ビタミンに対し接触可能な結合部位を持つ活性化マクロファージを含むプラークを、診断および/または監視するための方法が記載される。この方法は、アテローム硬化症について評価される患者に対し、有効量の、一般式B-L-Xの結合体投与する工程を含み、上式において、Bは、ビタミン、またはその類縁体若しくは誘導体を含み、基Xは放射性担体を含み、Lは必要に応じて使用されるリンカーである。一態様では、放射性担体は、ポジトロンを放射することによって崩壊することが可能であり、本方法は、このビタミン結合体を、活動的プラークに付随する活性化マクロファージに対して、十分な時間放をかけて結合させること、および、ポジトロン放射断層画像法を用いて該活動的プラークを体外的に診断および/または監視することを含む。別態様では、放射性担体は、約80分から約8時間の半減期を有する。
【0029】
この実施態様では、本方法は、血管壁における活動的アテローム硬化プラークを診断および/または監視することに関する。一態様では、リガンド、例えば、ビタミン、またはその類縁体若しくは誘導体は、安静マクロファージに比べ、活性化マクロファージの表面に優先的に発現されるか、一意に発現されるか、または過剰に発現される受容体に結合するが、このリガンドは、放射性担体に結合される。この結合体は、アテローム硬化症について評価される患者に投与される。結合体は、活動的アテローム硬化プラークに付随する活性化マクロファージに結合する。放射性担体によって放射される放射線は、ポジトロン放射断層画像法によって体外的に検出される。したがって、本結合体は、アテローム硬化症について評価される患者の動脈または静脈に存在するプラークについて、不活性プラークから、活性化マクロファージを含む活動的アテローム硬化プラークを区別するために使用することが可能である。
【0030】
不安定な、すなわち、活動的なアテローム硬化プラークの多くが、破裂して、急性のアテローム硬化症候群を引き起こす可能性を持つことを理解しなければならない。そうは言っても、このようなアテローム硬化プラークが、全ての場合において、血管腔を狭めるわけではなく、特に冠状循環において血管腔の狭隘を生ずるわけではない。したがって、本発明の方法は、動脈硬化症を患う患者における心筋梗塞のリスクの診断および/または監視、および、臨床的介入の必要の評価において重大な進歩を代表する。
【0031】
化合物を参照して本明細書で用いる場合、「ポジトロン放射断層画像法において有用な」という用語は、電子によるポジトロン消滅に起因する、反対方向に移動する一対の消滅フォトンを発生することが可能なポジトロン放射を放射する化合物を意味する。これらのフォトンは、適切な体外デバイスを使用するポジトロン放射断層画像法(PET)によって検出することが可能である。
【0032】
本明細書に記載される化合物に関する一実施態様では、結合体B-L-Xは、下式:
【化4】

を有し、式中、Vは、ビタミン受容体結合性成分、またはその類縁体若しくは誘導体であり;Lは必要に応じて用いられる二価リンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Arは、ニトロ基などのヘテロアリール基を含むアリール基であって、放射性担体、または放射性担体の前駆体を含む、一つ以上の置換基(Rf)mを含む。一変異態様では、整数nは、1から約20の範囲、または、3から約8の範囲にある。
【0033】
一態様では、Rfは、一つ以上の置換基を含み、前記置換基の内少なくとも一つはニトロまたはフルオロであり;mは1から約3までから選ばれる整数である。別の態様では、Arは、18Fフルオロアリール放射性担体を調製するための前駆体であり、したがって、Rfは、一つ以上のニトロ基を含む。別の態様では、Arは、Rfが一つ以上のフルオロ基を含む、18Fフルオロアリール放射性担体である。したがって、整数mが1より大きい態様では、Rfは、1を超えるニトロ基を含むか、あるいは、Rfは、フルオロとニトロの両方を含むか、あるいは、Rfは、1を超えるフルオロ基を含んでもよいことを理解しなければならない。さらに、本明細書に記載される各種実施態様および態様、および変異態様に認められるフッ素同位元素は、18Fおよび19F、またはそれら同位元素同士の組み合わせから選ばれてもよい。
【0034】
PETにおいて有用な放射性担体に結合される、ビタミン、またはその類縁体若しくは誘導体、または他のリガンドは、体外デバイスによる病態の診断および/または監視のために使用される。体外デバイスによるPET検出は、「PETスキャン」とも呼ばれ、PETによる体外検出のためのデバイスは、当該技術分野において周知である。
【0035】
結合体が活性化単球またはマクロファージに結合する実施態様によれば、該結合体は、多種類のリガンドおよび放射性担体から形成することが可能であるが、そのようなリガンドとしては、安静単球またはマクロファージの表面には発現されないか、または存在しないか、または目立った量として存在しないが、活性化単球または活性化マクロファージの表面では過剰に、一意に、または優先的に発現されるような受容体に結合するものであれば、いずれのものでもよい。活性化マクロファージに関しては、そのようなリガンドとして、N-フォルミルペプチド、例えば、フォルミル-Met-Leu-Phe、高移動度タンパク因子1(HMGB1)、ヒアルロナン(ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩とも呼ばれる)、およびその断片、熱ショックタンパク質、例えば、HSP-70など、トール様受容体のリガンド、スカベンジャー受容体のリガンド、抗原提示のための共受容体、活性化マクロファージにおける、CD68、BER-MAC3、RFD7、CD4、CD14、およびHLA-Dマーカーに結合するリガンド、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化受容体に結合するリガンド、例えば、WX-360ペプチド、活性化マクロファージに優先的に結合する抗体またはその断片、および、ビタミン、または受容体結合性ビタミン類縁体および誘導体が挙げられる。
【0036】
単球に関しては、単球結合性リガンドは、活性化単球において発現されるか、または過剰発現される受容体に結合するものであればいずれのリガンドであってもよく、例えば、CD40、CD16、CD14、CD11b、およびCD62結合性リガンド、5-ヒドロキシトリプタミン、マクロファージ炎症タンパク1-α、MIP-2、核因子κBリガンド拮抗剤の受容体活性化因子、単球走化性タンパク1-結合リガンド、ケモカイン受容体5結合リガンド、RANTES結合リガンド、ケモカイン受容体結合リガンド、および、ビタミン、または受容体結合性ビタミン類縁体および誘導体などが挙げられる。これらの結合体は、安静単球またはマクロファージに比べ、活性化単球またはマクロファージにおいては上記リガンドに対する受容体が優先的に発現されるため、活性化単球または活性化マクロファージに対し優先的に結合することが可能である。
【0037】
前述の実施態様では、リガンド、例えば、ビタミン、またはその類縁体若しくは誘導体は、癌細胞の表面において、または、安静単球またはマクロファージに比べ、活性化単球または活性化マクロファージにおいて、優先的に発現されるか、一意に発現されるか、または過剰に発現される受容体に結合するものであれば、いずれのリガンドであってもよい。このようなリガンドの例は、葉酸受容体結合性リガンド、ビオチン受容体結合性リガンド、ビタミンB12受容体結合性リガンド、リボフラビン受容体結合性リガンド、チアミン受容体結合性リガンド、および、その他のビタミン受容体結合性リガンド、またはそれらの類縁体若しくは誘導体から成る群から選ばれるビタミンである。
【0038】
本発明にしたがって使用することが可能な受容可能なビタミン成分としては、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12、および脂溶性ビタミンA、D、E、およびKが挙げられる。一態様では、これらのビタミン、およびその受容体結合性類縁体および誘導体は、標的化実体を構成し、このものは、放射線を放射することが可能な放射性担体と結合されると、本発明にしたがって使用される結合体を形成することが可能である。ビタミン成分の、一つの例示群は、葉酸、ビオチン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、および、これらのビタミン分子の、受容体結合性類縁体および誘導体、および、その他の、ビタミン受容体結合性の関連分子を含む。さらに別の、例示のビタミン、およびその類縁体および誘導体が、米国特許第5,688,488号に記載される。なお、この特許の全体を引用により本明細書に含める。
【0039】
別の実施態様では、ビタミン受容体結合性リガンドは、葉酸、葉酸類縁体、または、別の、葉酸受容体結合性分子であってもよい。ビタミン類縁体の例は、D形のグルタミン酸残基を含む葉酸類縁体であるが、通常は葉酸は、プテロイン酸に連結される一個の、L形のグルタミン酸を含むことが理解される。使用が可能な葉酸塩の他の類縁体としては、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、および、葉酸受容体結合性プテリジン、例えば、テトラヒドロプテリン、ジヒドロ葉酸塩、テトラヒドロ葉酸塩、およびそのデアザおよびジデアザ類縁体が挙げられる。この「デアザ」および「ジデアザ」類縁体という用語は、天然の葉酸構造において、炭素原子が、一つまたは二つの窒素原子によって置換される、当該技術分野で公認の類縁体を指す。例えば、デアザ類縁体として、1-デアザ、3-デアザ、5-デアザ、8-デアザ、および10-デアザ類縁体が挙げられる。ジデアザ類縁体としては、例えば、1,5ジデアザ、5,10-ジデアザ、8,10-ジデアザ、および5,8-ジデアザ類縁体が挙げられる。以上の葉酸類縁体は、一般的には、葉酸受容体に結合することが可能なその能力を反映して「葉酸塩(フォレート、folate)」と呼ばれる。他の葉酸受容体結合性類縁体としては、アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキセート)、N10-メチル葉酸塩、2-デアミノ-ヒドロキシ葉酸塩、デアザ類縁体、例えば、1-デアザメトプテリン、または3-デアザメトプテリン、および3’,5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)が挙げられる。
【0040】
別の態様では、本明細書に記載される化合物は、放射性担体であり、ポジトロン放射断層画像法を用いる診断および/または監視法において有用な放射線を放射する。この化合物は、電子によるポジトロン消滅に起因する、反対方向に移動する一対の消滅フォトンを放射する。一態様では、放射性担体は、一般に、別の化学的構造、例えば、ヘテロアリール環を含むアリール環に連結される、放射性同位元素である。別の態様では、放射性担体は、放射性同位元素だけを含むことが可能である。
【0041】
上記実施態様のいずれか、またはその全てにおいて、放射性担体は、適切な半減期および毒性プロフィールを持つポジトロン放射同位元素を含んでもよい。各種実施態様において、放射性同位元素は、30分よりも長い、70分よりも長い、80分よりも長い、90分よりも長い、100分よりも長い、8時間よりも短い、6時間よりも短い、4時間よりも短い、または、3時間よりも短い半減期を持つ。他の実施態様では、放射性同位元素は、約30分から約4時間、約70分から約4時間、約80分から約4時間、約90分から約4時間、約100分から約4時間、約30分から約6時間、約70分から約6時間、約80分から約6時間、約90分から約6時間、約100分から約6時間、約30分から約8時間、約70分から約8時間、約80分から約8時間、約90分から約8時間、または、約100分から約8時間の半減期を持つ。
【0042】
本化合物は、有用なポジトロン放射性同位元素を含む。適切な放射性担体は、フッ素同位元素18Fを用いて調製してもよい。さらに、他の有用なポジトロン放射性同位元素、例えば、34Cl、45Ti、51Mn、61Cu、63Zn、82Rb、68Ga、66Ga、11C、13N、15O、および18Fを用いてもよい。一つの例示実施態様では、放射性同位元素は、64Cu、68Ga、66Ga、および18Fから選ばれる。適切な同位元素を選択する際考慮に入れてもよい因子としては、患者への投与前に、薬学的に受容可能な担体に溶解する診断組成物の調製を可能とするのに十分な、該ポジトロン放射同位元素の半減期、および、PETスキャンによる体外測定を可能とするのに十分な活性を生じるのに十分な残留半減期が挙げられる。さらに、適切な同位元素は、患者の、不要な放射線に対する暴露を制限するほど十分に短い半減期を持っていなければならない。例示の実施態様では、110分の半減期を持つ18Fは、診断組成物の調製のために十分な時間を提供するだけでなく、受容可能な崩壊速度を与える。さらに、崩壊すると、18Fは18Oに変換される。
【0043】
例示の一実施態様では、同位元素は、リンカーを使用する、しないを問わず、化学的化合物に、次いでリガンドに結合することを可能とするほどの、十分な化学的活性を持っていなければならない。毒性を有する同位元素は、回避することが可能である。適切な半減期を有する、ポジトロン放出崩壊同位元素としては:34Cl、半減期約32分;45Ti、半減期約3時間;51Mn、半減期約45分;61Cu、半減期約3.4時間;63Zn、半減期約38分;82Rb、半減期約2分;68Ga、半減期約68分、66Ga、半減期約9.5時間、11C、半減期約20分、15O、半減期約2分、13N、半減期約10分、または、18F、半減期約110分、が挙げられる。
【0044】
例示実施態様では、放射性同位元素は、芳香族基、例えば、アリールまたはヘテロアリール基に共有結合される。例示のアリールおよびヘテロアリール基としては、ベンザミジル、ベンジル、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、および同様の基、他の芳香族基、例えば、多環アリール基、例えば、ナフチル、ベンゾチアゾリル、ベンジミゾリル、ベンゾキサゾリルなどの基が挙げられる。例示の一実施態様では、放射性同位元素は、18Fであり、放射性担体は、該放射性同位元素が共有結合されるアリール基を含む。
【0045】
本結合体は、高い親和度をもって、癌細胞、または活性化単球または活性化マクロファージ上の受容体に結合することが可能である。高親和性結合は、リガンドに本来備わっているものであってもよいが、化学的に修飾されたリガンド(すなわち、類縁体または誘導体)を用いるか、または、該結合体において、リガンドと放射性担体の間に特定の化学的連結を設けることによって、結合親和度は強化することが可能であることが理解される。
【0046】
結合体におけるリガンドと放射性担体の間の化学的連結は、直接的連結であってもよいし、介在リンカーを介するものであってもよい。介在リンカーは、存在する場合は、生体適合性である限り、当該技術分野で公知のいずれのリンカーであってもよい。例示的には、リンカーは、炭素、窒素、酸素、および硫黄原子から選ばれる、約1から約50原子から成る鎖を含む。一変異態様では、リンカーは、約5から約25原子の鎖を含む。別の実施態様では、本明細書に記載されるリンカーはさらに、リン原子を含んでもよい。別の例示の変異態様では、リンカーは、低分子量リンカー、例えば、約1000未満の分子量、または、例示として、約30から約500の範囲の分子量を持つリンカーである。本明細書に記載される化合物および方法において有用な、他の例示的リンカーおよび連結方法は、その合成調製法を含め、米国特許出願第10/765,336および60/590,580号に記載される。なお、これらの特許文書それぞれの全体を、引用により本明細書に含める。当該技術分野で公知の、他のリンカーまたは連結方法も、それがいずれのものであれ、使用することが可能である。
【0047】
一般に、リガンドと放射性担体の間に、またはそれとは別に、任意に用いられるリンカーとリガンドの間に、または、任意に用いられるリンカーと放射性担体の間に、結合体を形成するやり方は、いずれのものであれ、本明細書に記載される化合物および方法において使用することが可能である。それとは別に、リンカーの有る無しを問わず、結合体は、該結合体の成分同士を、例えば、水素、イオン、または共有結合を介して結合することによって形成することが可能である。例として挙げると、結合体の成分同士の共有結合は、適切な官能基を担持する炭素断片の間、例えば、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル、ヒドロキシルアミン、および/またはヒドラジン基の間に、例えば、エーテル、アミノ、アミド、エステル、ジスルフィド、チオール、ヒドラジノ、ヒドラゾノ、イミノ、および/またはヒドロキシルイミノ結合を形成するのに使用される。さらに、リンカーは、リガンドを放射性担体に会合するための間接的手段を含むことが可能であり、その例としては、スペーサーアームまたは架橋分子による接続、または、結合体の中に取り込まれる複合体化剤の使用が挙げられる。本明細書に記載される結合体の形成において、放射性担体を受容体結合性リガンドに会合するための手段は、直接的であれ間接的であれ、本発明の方法の所望の動作のために、リガンドの、癌細胞、または活性化単球または活性化マクロファージ対する結合を阻止してはならないことが理解される。
【0048】
別の例示態様では、リンカーは、結合体の水溶性を向上させるのに貢献するか、または、少なくとも、水溶性を実質的に損なうことをしない。水溶性の点で有利なリンカーとしては、水溶性ポリマー、例えば、デキストラン、セルロースエーテル、アミノ酸、種々の長さのオリゴペプチドおよびポリペプチドリンカー、および、ポリアルキレングリコール、例えば、種々の長さのポリエチレングリコールなどが挙げられる。別の実施態様では、このようなポリマーは、約1000未満の分子量を持つか、または、約30から約500の範囲の分子量を持つ。さらに、カルボン酸担持アミノ酸、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含むリンカー、およびアミノ基、例えば、オルニチン、リシン、およびアルギニンを含むリンカーも本明細書において記載される。さらに、水溶性の高いリンカー、例えば、炭水化物リンカー、および炭水化物類縁体および誘導体のリンカー、例えば、米国特許出願第60/946,092号に記載されるものも、必要に応じて用いられるリンカーLの中に含まれてよい。なお、この特許文書の全体を引用により本明細書に含める。
【0049】
別の実施態様では、本明細書に記載される親水性スペーサーリンカーは、ポリエーテル、例えば、下式:
【化5】

のリンカーを含む。式中、mは、各場合において、1から約8までから独立に選ばれる整数であり;pは、1から約10までから選ばれる整数であり;nは、各場合において、1から約3までから独立に選ばれる整数である。一態様では、mは、各場合において、独立に1から約3までである。別の態様では、nは各場合において1である。別の態様では、pは、各場合において、独立に約4から約6までである。例示的には、上記に対応する、対応ポリプロピレンポリエーテルは、本発明において考慮の対象とされ、親水性スペーサーリンカーとして結合体の中に含まれてもよい。さらに、ポリエチレンおよびポリプロピレンポリエーテル混合物も、親水性スペーサーリンカーとして本結合体の中に含まれてもよいことが理解される。さらに、上記ポリエーテル化合物の環状変異体、例えば、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサンなどを含むものも本発明において考慮の対象とされる。
【0050】
別の例示の実施態様では、本明細書に記載される親水性スペーサーリンカーは、複数のヒドロキシル官能基、例えば、モノサッカリド、オリゴサッカリド、ポリサッカリドなどを含むリンカーを含む。ポリヒドロキシル含有スペーサーリンカーは、Rが水素またはアルキルである、複数の-(CROH)-基を含むことを理解しなければならない。
【0051】
別の例示の実施態様ではさらに、結合体が、肝臓から胆汁中に、または尿中に排泄される前に、リガンドが、対象部位、例えば、癌細胞、または活性化単球または活性化マクロファージと会合することを可能とすることによって、結合体の、患者からの排泄速度を制限してもよいリンカーが記載される。リンカーは、結合体の代謝的消費を速めてもよいし、あるいは、細網内皮系、特に肝臓による取り込みを遅らせることによって、代謝的消費を遅らせてもよい。リンカーはさらに、結合体の、非標的器官、細胞、体液、またはタンパク質との会合からの回避を助けてもよい。例えば、結合体が血清タンパクと会合するとしたならば、PETスキャンは、追跡される癌細胞、または活性化単球または活性化マクロファージの特異的位置とは対照的に、患者の血管全体のスキャンを提示してしまうであろう。さらに、リンカーは、結合体の好ましい排泄ルート、例えば、尿によるルートを、例えば、結合体の投与後、患者に大量の液体を飲ませることによって、促進または加速してもよい。さらに、リンカーに、一つ、または複数の親水性基を含めることによって、結合体を、肝臓経由ではなく、腎臓による優先的なクリアランスの方に向けることが可能であることが理解される。
【0052】
本明細書に記載される化合物の別実施態様では、結合体B-L-Xは、下式:
【化6】

を有する。式中、Vは、ビタミン受容体結合性成分、またはその類縁体若しくは誘導体であり;Lは必要に応じて用いられる二価のリンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Rfは、本明細書の各種実施態様に定義される通りであり;mは1から約3までから選択される整数である。一変異態様では、整数nは、1から約20、または3から約8の範囲にある。
【0053】
本明細書に記載される化合物の別実施態様では、結合体B-L-Xは、下式:
【化7】

を有する。式中、Lは必要に応じて用いられる二価のリンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Rfは、本明細書の各種実施態様に定義される通りであり;mは1から約3までから選択される整数である。一変異態様では、整数nは、1から約20、または3から約8の範囲にある。
【0054】
リガンドが葉酸である実施態様では、葉酸の類縁体/誘導体、または、他の任意の葉酸受容体結合分子、葉酸塩、またはその類縁体/誘導体は、プテロイルアジド中間体を介して葉酸のγ-エステルを調製するために無水トリフルオロ酢酸を利用する、当該技術分野で公認の手順を用いて、リンカーに結合させることが可能である。この手順により、葉酸塩のグルタミン酸基のγ-カルボン酸基を介して選択的にリンカーに結合される葉酸塩の合成が実現される。それとは別に、葉酸類縁体は、当該技術分野で公認の手順を用いて、グルタミン酸基のα-カルボン酸成分、またはαおよびγの両カルボン酸成分を介して結合させることが可能である。
【0055】
リンカーが、天然または非天然アミノ酸のいずれか、または両方を含む、一つ以上のアミノ酸を含む実施態様では、葉酸を、これらのアミノ酸、またはペプチド中間体に結合して、葉酸リンカー、葉酸類縁体および誘導体を調製してよく、これらを、放射性担体に結合してもよい。さらに、このようなアミノ酸結合反応は、樹脂、例えば、Merrifield樹脂、Wang樹脂、ユニバーサル樹脂などの上で実行してもよい。プテロイン酸および葉酸、およびそれぞれの類縁体および誘導体から成るペプチドリンカー中間体の加工法に関しては、さらに詳細が、PCT国際公開第WO 2006/071754号に記載される。なお、この特許文書の全体を引用により本明細書に含める。
【0056】
具体的に述べると、プテロイン酸、またはその類縁体若しくは誘導体は、葉酸、またはその対応する類縁体若しくは誘導体の、アミダーゼまたはプロテアーゼ分解によって調製される。例えば、カルボキシペプチダーゼG、および同様のプロテアーゼを使用してもよい。得られたプテロイン酸は、アルファまたはガンマ・カルボン酸塩の選択的官能基形成を可能とするために、例えば、N(10)アミン保護によって保護してもよい。例示の合成を、下記のスキームに示す:
【化8】

(a)カルボキシペプチダーゼG、0.1M Tris基剤/ZnCl2
(b)(i)(F3CCO)2O (ii)3% TFA。
【0057】
葉酸の類縁体および誘導体も同様に、プテロイン酸の対応する類縁体または誘導体に変換することが可能であることが認識される。これらのプロセスのさらに詳細が、PCT国際公開第WO 2006/009153号に記載される。なお、この特許文書の全体を引用により本明細書に含める。
【0058】
本発明に記載される化合物の、別の例示の実施態様では、プテロイン酸、またはその類縁体若しくは誘導体は次に、例示として、必要に応じて用いられるリンカー、例えば、ペプチドリンカー、糖または炭水化物リンカー、ポリアルキレングリコールリンカー、または他のリンカーに結合される。一つの例示実施態様では、プテロイン酸化合物、またはその類縁体若しくは誘導体は、先ず、下記のスキームに示すようにその後の固相合成のために適切な樹脂に付着される。このスキームは、ユニバーサル樹脂のために描かれており、図において、葉酸塩=N(10)-TFAプテロイン-Glu(O-tBu)である:
【化9】

(a) 1) 20%のピペリジンDMF液, 2) Fmoc-Glu-OtBu, HATU, DIPEA/ DMF; (b) 1) 20%のピペリジンDMF液, 2) NlO TFA-プテロイン酸, HATU, DIPEA/DMF; (c) IM HOBtのDCM/TFE (1 : 1)液をDCMで膨潤した樹脂に加える。
本明細書における記載の通りに、他の固相支持体の使用も可能であること、および、他のプテロイン酸および葉酸類縁体および誘導体の使用も可能であることが認識される。
【0059】
本明細書に記載される化合物の、別の例示の実施態様では、固相支持プテロイン酸または葉酸、またはその類縁体若しくは誘導体は、下記のスキームに示すように、必要に応じて用いられるリンカー、例えば、PEGリンカーに付着される。式中、nは、1から約100まで、1から約20までの整数であるか、または、例示として、約3から約8の範囲にある:
【化10】

例えば、3または4個の反復単位を持つ比較的短い長さ、または、6、7、または8反復単位を持つ比較的長い長さ、または、10、20、または30反復単位を持つ著明に長い長さを持つものまで、様々な長さのPEGリンカーが、この合成手順によって調製可能であることが認識される。
【0060】
必要に応じて用いられるリンカーがポリアルキレングリコールである、本発明に記載される化合物の、別の例示の実施態様では、固相支持中間体は、放射性担体前駆体、例えば、ニトロアリール基Arlに接続され、ここで、Arlはフェニル、ナフチルなど、およびヘテロアリール、例えば、ピリジニル、ピペリジニル、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾールなどを含み、これらはそれぞれ、下記のスキームに示すように、少なくとも一つのニトロ基によって置換され、式中、nは、1から約100、1から約20の整数であるか、例示として、約3から約8の範囲にある:
【化11】

(a) (i) 20%のピペリジンDMF液, (ii) HOBt, HBTU, DIPEA, DMF, 4-ニトロベンゾイン酸または2,5-ジニトロベンゾイン酸; (b) (i) 2%のNH2NH2 DMF液, (ii) TFA/TIPS/H2O (95:2.5:2.5)。
上記スキームは、カルボン酸を含むニトロアリールのために例示されている。しかしながら、さらに別の、ニトロアリール含有化合物、例えば、ニトロヘテロアリール含有化合物なども、付着原子の適切な選択によって使用が可能であることを理解しなければならない。例えば、逆転アミドが本明細書に記載されるが、この場合、上記スキームにおいて、PEG中間体はカルボン酸で終止し、ニトロアリール含有基は、アニリン、または、その、対応アリールまたはヘテロアリール変異体、例えば、3-ニトロ-5-アミノピリジンなどである。さらに、ニトロアリール基を付着させるための、チオアミド、尿素、エーテル、エステル、および他の化学的リンカーも、本明細書において記載される。
【0061】
必要に応じて用いられるリンカーがポリアルキレングリコールである、本発明に記載される化合物の別の例示の実施態様では、下記のスキームに示すように、ニトロアリール基Arlは対応するフルオロアリール基Ar2に変換され、式中、nは、1から約100、1から約20の整数であるか、例示として、約3から約8の範囲にある:
【化12】

(a) TBA19FまたはTBA18F, DMSO; RT, 5-30分; または、K19F またはK18F, 18-Crown-6, DMSO,比較的高温;または、TBA19FまたはTBA18F, NaHCO3, DMSO,低温;または、K19FまたはK18F, Kryptofix-222, NaHCO3, DMSO, 比較的高温。
上記スキームは、カルボン酸を含むフルオロアリールのために例示されている。しかしながら、さらに別の、フルオロアリール含有化合物、例えば、フルオロヘテロアリール含有化合物なども、付着原子の適切な選択によって使用が可能であることを理解しなければならない。例えば、逆転アミドが本明細書に記載されるが、この場合、上記スキームにおいて、PEG中間体はカルボン酸で終止し、フルオロアリール含有基は、アニリン、または、その、対応アリールまたはヘテロアリール変異体、例えば、3-フルオロ-5-アミノピリジンなどである。さらに、フルオロアリール基を付着させるための、チオアミド、尿素、エーテル、エステル、および他の化学的リンカーも、本明細書において記載される。本明細書に記載される化合物は、対応するフルオロ基に変換されてもよい、一つを超えるニトロ基を含んでもよいことを理解しなければならない。さらに、上記例示の合成は、19Fと18F両フルオロアリール化合物の調製のために適用することが可能であることを理解しなければならない。ただし、18Fフルオロアリール化合物は、本明細書に記載のPETを用いる画像法に使用されるように適応されることが認識される。
【0062】
別の例示実施態様では、ニトロアリールおよびフルオロアリール基は、下記のスキームに示すように、対応フェニル基であり、式中、Rfはニトロおよびフルオロから選ばれ、ただし、Rfの少なくとも一つはフルオロであり、mは、1、2、または3であり、nは、1から約20までの整数であり、例示として3または5である:
【化13】

(a) TBA19F, DMSO; RT, 5-30分; または、K18F, 18-Crown-6, DMSO, 比較的高温; または(c) TBAF, NaHCO3, DMSO,低温; またはKF, Kryptofix-222, NaHCO3, DMSO, 比較的高温。
【0063】
一態様では、ニトロアリールは、4-ニトロフェニルである。別態様では、ニトロアリールは、2,5-ジニトロアリールである。別態様では、フルオロアリールは、4-フルオロフェニルである。別態様では、フルオロアリールは、5-フルオロフェニルである。別態様では、フルオロアリールは、2,5-ジフルオロフェニルである。
【0064】
例えば、3、4、5、または6個の反復単位を持つ、様々な長さのPEGリンカーが、この合成手順によって調製可能であることが理解される。さらに、フッ化剤は、19Fまたは18Fフッ化剤、またはその放射性同位元素混合物であることを理解しなければならない。
【0065】
下記のスキームに示されるように、放射性条件下、例えば、TBA18F/DMSO、またはK18F/DMSOによる、さらに別のフルオロ脱ニトロ化プロセスが本明細書において記載される。これらのプロセスは、19Fを含む、非放射性同位元素、またはそれらの同位元素混合物を含むように適応されてもよいことが認識される。
【化14】

(a) 1.3当量無水TBA 18F, 無水DMSO, 30分;収率> 95%; (b) 1.3当量無水TBA 18F, 無水DMSO, < 5分; 収率> 95%。
【0066】
下記のスキームに示されるように、放射性条件下、例えば、TBA18F/DMSO、またはK18F/DMSOによる、さらに別のフルオロ脱ニトロ化プロセスが本明細書において記載される。
【化15】

(a) TBA 18F, 無水DMSO, 60-80%; (b) K-2.2.2/18F/K2CO3, DMSO, 120 ℃, 3 分, 85%;
(c) 18F-, DMF, Kryptofix-222, K2CO3, 熱, hν(電子レンジ)。
合成に関するさらに詳細が、J. Am. Chem. Soc, 2005, 127, 2050-2051;Angew. Chem. Int. Ed. 2004. 43, 3588-3590;J. Org. Chem. 1984, 49, 3216-3219;J. Am. Chem. Soc. 1974, 96, 2250-2252;J. Chem. Soc, Chem. Commun. 1993, 921-922;J. Fluorine Chem., 1993, 63, 25-30;Applied Radiation and Isotopes 2006, 64, 989-994;Applied Radiation and Isotopes 1999, 50, 923-927;J. Nuc. Med. 1991, 32, 2266-2272;およびAngew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 2720-2725に記載される。なお、これらの文献全体を引用により本明細書に含める。
【0067】
別プロセスでは、放射性同位元素は、最終化合物ではなく、中間化合物の中に導入されてもよい。具体的に挙げると、本明細書に記載される化合物は、下記のように調製されてもよい、ただし、式中、LGは脱離基である。
【化16】

式中、nは、1から約100までから選ばれる整数であるか;1から約20の範囲、または3から約8の範囲の整数である。18Fおよび19Fのいずれか、またはその両方、およびそれらの混合物を、上記プロセスにしたがって調製してもよいことが理解される。
【0068】
別のプロセスでは、本明細書に記載される化合物は、下記のように調製されてもよい:
【化17】

式中、nは、1から約100までから選ばれる整数であるか;1から約20の範囲、または3から約8の範囲の整数である。18Fおよび19Fのいずれか、またはその両方、およびそれらの混合物を、上記プロセスにしたがって調製してもよいことが理解される。
【0069】
別のプロセスでは、本明細書に記載される化合物は、下記のように調製されてもよい:
【化18】

(a) HATU/DIPEA, 3分, >95%; (b) TFA/フェノール/H2O/TIPS 90:4:5: 1, 37 ℃, 10分。>95%、または、周囲温, 20分, 65%。
式中、nは、1から約100までから選ばれる整数であるか;1から約20の範囲、または3から約8の範囲の整数である。18Fおよび19Fのいずれか、またはその両方、およびそれらの混合物を、上記プロセスにしたがって調製してもよいことが理解される。合成に関するさらに詳細が、Bioorg Med Chem Lett. 10:1501-1503 (2000)に記載される。なお、この文献の全体を引用により本明細書に含める。
【0070】
別のプロセスでは、本明細書に記載される化合物は、下記のように調製されてもよい:
【化19】

式中、nは、1から約100までから選ばれる整数であるか;1から約20の範囲、または3から約8の範囲の整数である。18Fおよび19Fのいずれか、またはその両方、およびそれらの混合物を、上記プロセスにしたがって調製してもよいことが理解される。
【0071】
様々なプロセスの実施態様に記載される、フルオロ脱ニトロ化工程は、該プロセスにおける種々の工程で行われてもよいことを理解しなければならない。しかしながら、合成の遅い段階での変換は、造影剤調製の際の放射性同位元素の崩壊時間を最短にするという利点を担うことが認識される。一方、フルオロ脱ニトロ化工程が中間体において行われても、変換完了に要する経過時間は下記の通りである:放射性標識のために約3分、樹脂からの切り離しのために約7分、精製を含む全体時間は約25-30分で、放射性標識化合物の収率は約70-80%。
【0072】
本明細書に記載される方法にしたがって使用するのに有効な結合体の量は、多くのパラメータ、例えば、該結合体の分子量、その投与ルート、およびその組織分布などに依存する。具体的に述べると、結合体の「有効量」とは、癌細胞、または活性化単球または活性化マクロファージに結合するのに十分であり、かつ、癌、または、活性化単球または活性化マクロファージに関わる病態の診断および/または監視に有用な量である。癌、または、活性化単球または活性化マクロファージに関わる病態に関して評価される患者に、投与されるべき結合体の有効量は、約1 pg/kgから10 mg/kg、1 ng/kgから約10 mg/kg、約10 μg/kgから約1 mg/kg、約100 μg/kgから500 μg/kgの範囲にあってもよい。
【0073】
本結合体は、体外PET画像化デバイスによる検出の前に、1回以上の投与量として、例えば、約1から約3回投与量として投与することが可能である。投与の回数は、種々の要因がある中でも特に、本結合体の分子量、その投与ルート、およびその組織分布に依存する。癌、または、活性化単球または活性化マクロファージに関わる病態の診断および/または監視のために使用される場合、体外的検出の操作は、通常、本結合体投与の約1分乃至約6時間後に行われるが、ただし、癌細胞、または、活性化単球または活性化マクロファージに対する、本結合体の結合が検出可能であり、かつ、未結合結合体の実質部分が体内から排除されるのに十分な時間が許容される限りにおいて、体外的検出の操作は、本結合体投与後の任意の時点で実行することが可能である。
【0074】
本明細書に記載される方法にしたがって投与される結合体は、患者に対し、薬学的に受容可能な担体と組み合わせて、好ましくは、非経口的に、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内に、投与される。それとは別に、本結合体は、患者に対し、他の医学的に有用な手順によって、例えば、経口的に利用可能な処方として、投与することが可能である。症状の有無に拘わらず、癌、または、活性化単球または活性化マクロファージに関わる病態を疑われる患者において、本発明の方法による評価から利益を受けると考えられる人については、それが誰であれ、評価することが可能であることが理解される。
【0075】
本方法にしたがって使用される結合体は、本発明の一態様では、有効量の結合体と、該結合体用の受容可能な担体とを含む、診断組成物を処方するために使用される。非経口剤形の例としては、本結合体の水溶液、例えば、等張生理的食塩水、5%グルコース、または他の周知の薬学的に受容可能な液体担体、例えば、アルコール、グリコール、エステル、およびアミドに溶解した溶液が挙げられる。当該技術分野で公知の経口的に利用可能な剤形は、いずれのものも使用が可能である。
【0076】
本明細書に記載される方法において使用される結合体は、腫瘍部位、または、活性化単球または活性化マクロファージの集積部位、例えば、患者のプラークの腔・内皮層に付着する活性化マクロファージ、またはプラークの脂質充満コアに存在する活性化マクロファージなどの集積部位に向けて、該結合体を標的化し、そして濃縮するように形成される。
【0077】
本明細書に記載される方法のいくつかの態様は、癌細胞、または活性化単球または活性化マクロファージの検出に有利である場合がある。一実施態様では、放射性担体は、ポジトロンエミッターである同位元素を含む。ポジトロンエミッターは、発生源原子から三次元方向に放射を行うが、この放射は、正確に反対方向に向かう二つの部分として進行する。崩壊同位元素からのポジトロンは、電子の反粒子として、近傍物質中の電子に接触すると消滅するが、該消滅からのエネルギーをガンマ線として放射する。モーメントを保存するために、ガンマ線フォトンは反対方向に移動する。ポジトロンは、検出のために利用することが可能な2本の放射線を持つために、患者において本結合体が集積する場所を、患者診断用として常識的な時間枠内でより素早く、したがってより正確に検出することが可能である。ポジトロン消滅の信号対雑音比は、一方向ガンマ線に比べ著しく改善される。さらに、共入力放射線を逆投影することによって、放射源の位置が決められる。
【0078】
PETは、現在、癌検出のための診断ツールとして医学センターにおいて使用される。癌の診断では、患者に対し、ポジトロンエミッター、例えば、18Fフルオロデオキシグルコースによって標識されたグルコースが投与される場合がある。なぜなら、グルコースは、急速に増殖する癌細胞に集中するからである。癌の存在は、PET画像剤の濃縮によって検出されてもよい。さらに、生体における癌の場所は、PETスキャナーによる、共入力放射線の逆投影によって決定される。したがって、本明細書に記載される方法は、癌細胞を検出するために、18Fフルオロデオキシグルコースと組み合わせて使用してもよい。本発明はさらに、既に開発され、当該技術分野において既知の、他の任意の癌の診断法、例えば、既に開発された他の診断剤を使用し、X線断層画像法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、超音波、およびシングルフォトンエミッションCT(SPECT)などを利用する方法と、組み合わせて使用してもよい。
【0079】
他の実施態様では、本明細書に記載される方法は、アテローム硬化プラークの検出、分析、および/または剥離のために、単独で使用することも可能であるし、または、当該技術分野で既知の任意の方法(単数または複数)と組み合わせて使用することも可能である。例えば、活動的プラークが血管の狭隘を引き起こしている症例では、本方法は、アテローム硬化プラークの剥離法と組み合わせて使用することが可能である。そのような場合、本明細書に記載される結合体は、不活性プラークと比べた場合の、活動的アテローム硬化プラークの特定に使用することが可能であるばかりでなく、剥離操作を助けるため、アテローム硬化組織と正常組織との区別のために使用することが可能である。したがって、本方法および組成物は、アテローム硬化プラークの生理的および形態的状態の両方を分析するのに使用することが可能である。例えば、血管形成術は、プラーク沈着によって狭められた血管の、非外科的拡大を含むが、例えば、カテーテル使用デバイス中の光ファイバーを通して導かれるレーザーエネルギーを、該プラーク沈着の剥離、または部分的除去に用いることができる。レーザーエネルギーによるプラーク剥離のための、カテーテル使用デバイスは、米国特許第4,817,601、4,850,351、および4,950,266号に記載される。なお、これらの特許それぞれの全体を引用により本明細書に含める。
【0080】
本明細書に記載される方法、本明細書に記載される各プロセスおよび合成法の、ある種の応用では、事実上完全なフッ化が望ましい場合もあるし、それとは別に、部分的なフッ化だけが望ましい場合のあることが理解される。したがって、本明細書に記載されるプロセスおよび合成法は、種々の別実施態様として実行してよい。したがって、部分的フッ化だけが望まれる態様では、本明細書に記載されるプロセスおよび合成は、化学量数未満の量のフッ化剤を用いて実行してもよいことが理解される。同様に、本明細書に記載される方法のある種の応用では、本明細書に記載される各プロセスおよび合成法は、事実上完全な放射性フッ素化が望ましい場合もあるし、それとは別に、部分的な放射性フッ素化だけが望ましい場合もあることが理解される。したがって、本明細書に記載されるプロセスおよび合成法は、種々の別実施態様として実行してよい。したがって、部分的放射性フッ素化だけが望まれる態様では、本明細書に記載されるプロセスおよび合成は、必要に応じて19Fを優位にして、化学量数未満の量の放射性フッ化剤を用いて実行してもよいことが理解される。
【0081】
さらに、一つを超えるニトロ基が存在する、本明細書に記載される方法と、本明細書に記載される各プロセスおよび合成法のある種の応用では、反応は、種々の別態様として選択されてもよいことが理解される。一別態様では、事実上各ニトロ基全てを対応フルオロ基に変換するために、化学量数に等しい量のフッ化剤が含まれる。もう一つの別態様では、フッ化剤の量は、ニトロ基の内の一サブセットだけ事実上変換するように選ばれ、例えば、存在する可能性のある3つのニトロ基の内1つまたは2つだけを、または、一変異態様では、存在する可能性のある2つのニトロ基の内1つだけを変換するように選ばれる。もう一つの変異態様では、少なくとも1ニトロ基を対応フルオロ基に部分的にだけ変換するように、1当量未満のフッ化剤がプロセスの中に含まれる。様々の実施態様が、本明細書に記載される方法のために適した標識強度の必要性と合致するように選ばれることが認識される。存在する全てのニトロ基の事実上の変換が行われない態様では、付加的ニトロ基の存在は、反応時間を短縮するための、または、全体変換を、所望の部分的フッ素化レベルまで上昇させるための、活性基として作用してもよいことが認識される。したがって、本発明においてさらに考慮の対象とされるものは、反応時間を短縮するか、または、全体変換を所望の部分的フッ素化レベルまで上昇させる、追加の電子抽出基、または、ニトロ以外の代わりの電子抽出基を含んでもよい化合物である。
【0082】
下記の実施例は、本明細書に記載される本発明の選ばれた実施態様を記載し、さらに具体的に明らかにすることが意図される。下記の実施例は、いかなる意味でも本発明を限定するものと考えてはならない。
【実施例】
【0083】
18F N-ヒドロキシスクシニミド4-フルオロベンゾエート
【化20】

(a)メチルトリフレート; (b) 18F/K2CO3/Kryptofix (K2.2.2, Aldrichカタログ番号29,111-0), ジメチルスルフォキシド(DMSO), 90 ℃, 10分; (c) NaOH, 90 ℃, 5分;
(d) N-ヒドロキシスクシニミドテトラメチルウレア (TSTU), CH3CN, 120 ℃, 5分。
p-フルオロベンゾイン酸は、完全にプロトン化するために、十分なHClを加えることによって精製し、濃縮してもよく、これらは、逆相C18カラムにおいて、例えば、Waters Corp. Milford Masachusettsによって販売されるC18 SepPak Plusにおいて単離される。カラムは、水溶性夾雑物を完全に除去するために、HCl酸性化水によって洗浄してもよい。p-フルオロベンゾイン酸は、メタノールによってカラムから溶出し、次いで、陽イオンイオン交換カラム(例えば、Dowexカラム)においてさらに夾雑物を除去し、メタノールの蒸発によって濃縮する。上記合成は、18F および19F を含む同位元素混合物を作製するためにも使用されることを理解しなければならない。
【0084】
p-フルオロベンゾイン酸のN-ヒドロキシスクシニミドエステルは、水/アセトニトリル/酸性pHを維持するのに十分なトリフルオロ酢酸の混合液において、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製した後、濃縮、単離してもよい。このエステルの水希釈液は、C18 SepPakカラムにおいて濃縮し、次いで、ジエチルエーテルによって溶出してもよい。残留水は、無水Mg2SO4カラムを用いて除去してもよい。エーテルを蒸発し乾燥させた後、エステルをCH3CNに再溶解してもよい。
【0085】
18F-SFBの別の合成を、Eur. J. Med. MoI. Imaging, vol. 31 : 469-474 (2004)に記載される手順を改変したものを用いて行った。なお、この文献の全体を引用により本明細書に含める。本明細書に記載されるプロセスに記載される通りに調製された18F-フルオロベンゾイン酸から始めて、油浴を90℃に設定した。45%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の水溶液を調製した。別のバイアルに、10.0 mgの4-フルオロベンゾイン酸を加えた(溶液1)。別のバイアルに、40 μlの45% TMAHを加えた(溶液2)。次に、0.2 mlの水、および1.0 mlのアセトニトリルを加え、溶液2を溶液1に加えた(溶液3)。この溶液を蒸発させて乾燥した。もう一つのバイアルにおいて、14 mgのTSTUを、1.2 mlのアセトニトリルに加えた(溶液4)。溶液4を溶液3に加えた。この混合物を、油浴において摂氏90度で2分間加熱した。放射性18Fは、サイクロトロンにおいて、当該技術分野で周知の手順によって合成され、実施例1に示すように、(18F)-パラ-フルオロベンゾイン酸を調製するのに用いられ、次に、前述のように18F-SFBに変換される。
【0086】
前述のプロセスは、ジメチルアミノ基を有する他の芳香族カルボン酸について、本明細書の記載の通りに結合される、対応18F標識放射性担体を調製するために使用してもよいことが認識される。さらに、前述の例示プロセスでは、中間体(18F)SFBは、本明細書に記載される、必要に応じて用いられるリンカーを通じて、任意の他の葉酸、またはその類縁体若しくは誘導体に結合されて、結合体を形成してもよいことを理解しなければならない。さらに、このアリール環は、必要に応じて置換されてもよいことが認識される。
【0087】
N(10)-TFAプテロイン酸 合成は、WO 2006/009153の記載の通りに行った。簡単に言うと、0.1Mトリス基剤に溶解した葉酸液に塩化亜鉛を加えた。この反応物に、攪拌しながら、カルボキシペプチダーゼCを加えた。1N HClを用いてpHを約7.3に調整し、温度を30℃に上げた。反応容器をアルミニウムフォイルで覆い、7日間攪拌した。pHを必要に応じて約7.3に調整した。6N HClを用いてpHを約pH3.0に下げた。得られた沈殿を、4000 rpmで10分遠心した。上清を傾瀉除去し、48時間凍結乾燥した。プテロイン酸は、イオン交換カラムを用いて精製し、分画を48時間凍結乾燥した。プテロイン酸を24時間減圧乾燥し、次いで、アルゴン下に30分維持した。無水トリフルオロ酢酸を加え、アルゴン下に室温で4日間攪拌した(反応容器は、アルミニウムフォイルで包んだ)。反応の進行は、HPLC分析(Waters, X-Bridge C18; 3.0x50 mm、1%Bから50%Bへ30分、80%B洗浄、35分稼動)によって監視し、最終的に単一ピークが観察された(λ=280 nm, 320 nm)。溶媒を蒸発させ、3%のTFA水溶液を加え、次いで、2日間攪拌した。3000 rpmで20分遠心した後、溶媒を傾瀉除去し、固形物を水で洗浄し、3回遠心した。このTFA保護プテロイン酸を48時間凍結乾燥した。
【0088】
ユニバーサル葉酸塩樹脂。 ユニバーサルNovabiochem NovaTagTM樹脂(Novabiochemカタログ番号#04-12-3910)を、Novabiochem Letters 1-4 (2004); Bioorg. Med. Chem. Lett. 15:5442-5445 (2005)に記載される通りに用いて、ユニバーサル葉酸塩樹脂を合成した。なお、これらの開示を、引用により本明細書に含める。この樹脂を、ジクロロメタン(DCM)、次いでDMFによって膨潤させた後、DMFに溶解した20%ピペリジンによってFmocを除去した。得られたFmoc-Glu-OtBuは、DMFに溶解した、HATU [2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート]およびDIPEA (N,N-ジイソプロピルエチルアミン)を用いて結合した。同様に、N10-TFAプテロイン酸は、標準的Fmoc固相ペプチド合成法(SPPS)を用いて結合した。ペンダントMmt(4-メトキシトリチル)は、DCM/トリフルオロエタノールに溶解した、1M HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)によって除去した。この樹脂は、DMFで洗浄し、直後に再び用いてもよいし、あるいは、DCM/DMFで、次いでMeOHで洗浄し、乾燥し、その後の使用に備えてもよい。
【0089】
【化21】

【0090】
放射性担体前駆体の葉酸塩PEG結合体 DMFに溶解したHOBt/HBTU(O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチル-ウロニウム-ヘキサフルオロ-フォスフェート)/DIPEAを用いて、Fmoc-(PEG)6-CO2Hをユニバーサル葉酸塩樹脂に結合させた。このFmoc基を20%ピペリジンを用いて除去し、次いで、4-ニトロベンゾイン酸、または2,5-ジニトロベンゾイン酸のいずれかを、HOBt/HBTU/DIPEAのDMF液を用いて導入した。ヒドラジン液(2%)を用いて、N10-TFA基を脱保護し、次いで、TFA/トリイソプロピルシラン/水で処理して、化合物を樹脂から切り離し、三次ブチル基を脱保護した。溶媒を減圧濃縮し、化合物を、ジエチルエーテルによって沈殿させた。
【0091】
両方の葉酸塩-ニトロ-フェニル結合体を、逆相分取用HPLCを用いて精製した(Waters, NovaPak C18; 19x300 mm)、A= 10 mM NH4OAc (pH=7.0)、B=アセトニトリル、λ=320nm;溶媒勾配: 1%Bから50%Bへ20分、80%B洗浄、40分稼動。精製化合物は、逆相分析用HPLC(Waters, X-Bridge C18; 3.0x50 mm)を用いて分析した(λ=280 nm, 320 nmにおいて単一ピークを表示、1%Bから50%Bへ10分、80%B洗浄、15分稼動)。
【0092】
葉酸塩-4-ニトロフェニル結合体:黄色固体、Rt〜8.58分(分析的HPLC);ESI-MS (M + H)+ = 968; ESI-MS (M-H) = 966; 1H NMR (Bruker 500 MHzクライオプローブ, DMSO-d6/D2O, 交換可能なプロトンを除去するため) δ 1.88 (m, IH, GIu-H); 2.03 (m, IH, GIu-H); 2.15 (t, J = 7.4, 2H, GIu-H); 2.28 (t, J = 6.4, 2H, リンカー-H); 3.05 (m, 4H, リンカー-H); 3.20- 3.60 (リンカー-H ); 4.23 (m, IH, Glu-αH); 4.48 (s, 2H, Ptc-H); 6.64 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ptc-Ar-H); 7.64 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ptc-Ar-H); 8.08 (d, J = 8.8, 2H, Ar-H); 8.31 (d, J = 8.8, 2H, Ar-H); 8.63 (s, IH, Ptc-Ar-H)。
【0093】
葉酸塩-2,5-ジニトロフェニル結合体:黄色固体、Rt〜8.4分(分析的HPLC);ESI-MS 1013 (M + H)+;1011 (M-H) = 966; 1H NMR (Bruker 500 MHzクライオプローブ, DMSO-d6/D2O, 交換可能なプロトンを除去するため) δ 1.88 (m, IH, GIu-H); 2.03 (m, IH, GIu-H); 2.15 (t, J = 7.4, 2H, GIu-H); 2.28 (t, J = 6.4, 2H,リンカー-H); 3.05 (m, 4H, リンカー-H); 3.20- 3.60 (リンカー-H ); 4.23 (m, IH, Glu-αH); 4.48 (s, 2H, Ptc-H); 6.64 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ptc-Ar-H); 7.64 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ptc-Ar-H); 8.34 (d, J = 8.6, 1H, Ar-H); 8.54 (d, J = 8.6, 1H, Ar-H); 8.63 (s, IH, Ptc-Ar-H); 8.90 (s, 1H, Ar-H)。
【0094】
【化22】

【0095】
葉酸塩・フルオロ放射性結合体。 葉酸塩-ニトロフェニル結合体を、減圧下、P2O5を用いて24時間乾燥した。乾燥した葉酸塩・ニトロ結合体を、DMSO-d6に溶解した。葉酸塩-フルオロ-フェニル結合体を変換するために、無水TBAF(テトラブチルアンモニウムフロリド)を加えた。反応の進行は、1H-NMRによって監視した。両方の葉酸塩-ニトロ-フェニル結合体を、逆相分取用HPLCを用いて精製した(Waters, NovaPak C18; 19x300 mm)、A= 10 mM NH4OAc (pH=7.0)、B=アセトニトリル、λ=320nm;溶媒勾配: 1%Bから50%Bへ25分、80%B洗浄、40分稼動。精製化合物は、逆相分析用HPLC(Waters, X-Bridge C18; 3.0x50 mm)を用いて分析した、両化合物は、λ=280 nm, 320 nmにおいて単一ピークを示した;1%Bから50%Bへ10分、80%B洗浄、15分稼動。合成に関するさらに詳細は、Angew. Chem. Int. Ed. 45:2720-2725 (2006)に記載される。なお、この開示を、引用により本明細書に含める。
【0096】
葉酸塩-4-フルオロフェニル結合体:黄色固体、Rt〜8.46分(分析用HPLC);ESI-MS (M + H)+ = 941; ESI-MS (M-H) = 939; 1H NMR (Bruker 500 MHzクライオプローブ, DMSO-d6/D2O, 交換可能なプロトンを除去するため) δ 1.88 (m, IH, GIu-H); 2.03 (m, IH, GIu-H); 2.15 (t, J = 7.4, 2H, GIu-H); 2.28 (t, J = 6.4, 2H, リンカー-H); 3.05 (m, 4H, リンカー-H); 3.20- 3.60 (リンカー-H ); 4.23 (m, IH, Glu-αH); 4.48 (s, 2H, Ptc-H); 6.64 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ptc-Ar-H); 7.28 (d, J = 8.9 Hz, 2H, Ar-H); 7.64 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ptc-Ar-H); 7.90 (t, J = 8.9 Hz, 2H, Ar-H); 8.63 (s, IH, Ptc-Ar-H)。
【0097】
【化23】

上記手順にしたがって、さらに別のフルオロフェニル結合体を調製した。19Fおよび18F類縁体も、適切な同位元素試薬を選択することによって同様の方法で調製されることを理解しなければならない。具体的に言うと、本発明に記載される18F化合物は、Bioconjugate Chem. 2:44-49 (1991); Applied Radiation and Isotopes 64:989-994 (2006); J Label Compd Radiopharm 49:1037-1050 (2006); Applied Radiation and Isotopes 50:923-927 (1999); J. Nuc. Med. 32:2266-2272 (1991)に記載されるように、DMSOに溶解したTBA18Fを室温で10-20分、または、DMSOに溶解した[K/2.2.2.] 18F/K2CO3を高温で用いることによって調製される。
【0098】
HPLCによる分析。 SFBの葉酸結合体、および他の放射性担体の不純および精製サンプルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、Clinical Science, vol. 103: pp. 4S-8S (2002)に記載されるものと同様の条件を下記のように改変して分析することが可能である。逆相HPLCを、C18カラムを用いて、下記の勾配で行った、すなわち、CH3CNに溶解した水/0.1% TFAにおいて、77:23で10分、60:40で10分、50:50で10分、40:60で10分、流速1.0 ml/分。
【0099】
ESI-MSによる分析。 SFBの葉酸塩結合体、他の放射性担体の不純および精製サンプルは、ESI質量分析によって分析することが可能である。
【0100】
KB細胞使用による競合アッセイ。 葉酸塩-フルオロ-フェニル結合体の相対的結合親和度は、Westerhof et. al. (Mol Pharmacol, 1995, 48, 459-471) およびC. P. Leamon et. al. (Bioconjugate Chem., 2006,17 (5), 1226 - 1232)による標準的参考文献プロトコールにしたがい、ただし若干の改変を加えて行った。相対的親和度は、細胞上の葉酸受容体(FR)に結合した3H-葉酸の50%を置換するのに必要な化合物のモル比の逆数と定義され、葉酸の相対的親和度=1である。したがって、比較リガンドの相対的親和度=1は、リガンドは、葉酸と比べ、FRに対し等しい親和度を持つリガンドであることを示唆し、相対的親和度>1は、葉酸に対し、より強い親和度を持つことを示唆する。
【0101】
KB細胞(FRの過剰発現を示す、ヒトの子宮頸癌細胞系統)を、48ウェル・ファルコンプレートに撒き、10% FBS(ウシ胎児血清)および1% PS(ペニシリン・ストレプトマイシン)を含む葉酸欠乏RPMI(Gibco RPMI培地1640、カタログ番号27016)中で一晩接着性単層として増殖させた。次に、細胞を、漸増濃度(0.1 nM - 1 μM)の、冷却葉酸(非放射性)、または葉酸塩-フルオロ-フェニル結合体の存在下に、10 nM 3H-葉酸と共に37℃で1時間インキュベートした。次に、細胞を、250 μlのPBS(リン酸バッファー生理的食塩水)で3回、トリクロロ酢酸で1回濯いだ。PBSに溶解した、1%のドデシル硫酸ナトリウム(250 μL)を各ウェルに加え、10分後、細胞溶解物を、3 mLのシンチレーション・カクテルを含む個別のバイアルに移し、放射能をカウントした。結合放射能・対・未標識葉酸塩-ニトロ-フェノール結合体の濃度のプロットを用いて、IC50値(3H-葉酸結合の50%を阻止するのに必要なリガンドの濃度)を計算した。結果から、葉酸塩-4-F-フェニル結合体は、葉酸と比較した場合、FRに対し、等しいか、より高い親和度を有することが示される。6個のポリエチレングリコール単位を有することによって、葉酸塩-4-F-フェニル結合体は、より水溶性になるが、これが、FRに対する比較的高い親和度の理由の一つであると考えられる。
【0102】
血清結合アッセイは、Endocyteの遵守する標準的プロトコールにしたがって行った。簡単に述べると、PBSに溶解した1 mMの葉酸塩-フルオロ-フェニル結合体(pH=7.4)を準備した。次に、190 μLのヒト血清を、3本の、別々のマイクロ遠心管(マイクロコンYM-30 NMWL遠心フィルター、0.5 mL)に加え、190 μLのPBS(pH=7.4)を、別のマイクロ遠心管に加えた。次に、10 μLの1 mM葉酸塩-フルオロ-フェニル結合体を各管に加え、200 μL最終容量とした。さらに、190 μLのヒト血清および10 μLのPBSを、ブランク試験として、別のマイクロ遠心管に加えた。全てのサンプルを、別々のマイクロン30スピンフィルターに移し、室温にて10,000 x gで30分遠心した。回収したろ過残留物を分析用HPLC(Waters, X-Bridge C18; 3.0x50 mm、サンプルは、λ=280 nm, 320 nmにおいて単一ピークを示した;1%Bから50%Bへ10分、80%B洗浄、15分稼動)によって分析し、%血清結合を計算した。葉酸塩-4-F-フェニル結合体は、比較的低いパーセント血清結合を有するので(12.2%)、この化合物は、肝臓および腎臓における取り込みがより低いと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
【化1】

を有する化合物であって、式中、Vは、ビタミン受容体結合性成分、またはその類縁体若しくは誘導体であり;Lは必要に応じて用いられる二価リンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Arは、ヘテロアリール基を含むアリール基であって、放射性担体、または、放射性担体の前駆体を含む、一つ以上の置換基(Rfmを含むことを特徴とする、化合物。
【請求項2】
前記結合体が、下式:
【化2】

を有し、式中、Vは、ビタミン受容体結合性成分、またはその類縁体若しくは誘導体であり;Lは必要に応じて用いられる二価リンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Rfは、放射性担体、または、放射性担体の前駆体を含み;mは1から約3までから選ばれる整数であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ビタミンが、葉酸塩、ビオチン、ビタミンB12、リボフラビン、およびチアミン、並びに、それらの、ビタミン受容体結合性類縁体および誘導体から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記結合体が、下式:
【化3】

を有し、式中、Lは必要に応じて用いられる二価リンカーであり;nは1から約100までから選ばれる整数であり;Rfは、放射性担体、または、放射性担体の前駆体を含み;mは1から約3までから選ばれる整数であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
mが1または2であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Rfが、一つ、または二つのニトロ基を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
Rfが、一つ、または二つの18Fフルオロ基を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Rfが、少なくとも一つのニトロ基、および少なくとも一つの18Fフルオロ基を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記結合体が、複数の親水性基を含むリンカーを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
前記複数の親水性基が、独立に選ばれる炭水化物、またはその類縁体若しくは誘導体であることを特徴とする、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記結合体が、細網内皮系による該結合体の取り込みを遅延させる一つ以上の基を含む、リンカーを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記結合体が、肝臓による該結合体の取り込みを遅延させる一つ以上の基を含む、リンカーを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物、および、該化合物のための担体を含む組成物であって、該化合物が、ポジトロン放射断層画像法において使用するのに十分な量として存在することを特徴とする、組成物。
【請求項14】
ビタミンに対し接触可能な結合部位を有する活性化単球または活性化マクロファージによって仲介される病態を、患者において診断または監視するための方法であって:
a. 有効量の、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物、または請求項13に記載の組成物を、該患者に投与する工程;
b. 活性化単球または活性化マクロファージに対し、該ビタミン結合体を、十分な時間をかけて結合させる工程;および、
c. ポジトロン放射断層画像法を用いて体外的に、該病態を診断または監視する工程、
を含む、方法。
【請求項15】
ビタミン受容体を一意に発現するか、優先的に発現するか、または過剰に発現する癌細胞を有する癌を、診断または監視するための方法であって:
a. 有効量の、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物、または請求項13に記載の組成物を、患者に投与する工程;
b. 該癌細胞に対し、該ビタミン結合体を、十分な時間をかけて結合させる工程;および、
c. ポジトロン放射断層画像法を用いて体外的に、該癌を診断または監視する工程、
を含む、方法。
【請求項16】
血管に付随する活動的アテローム硬化プラークを診断または監視するための方法であって、該プラークが、ビタミンに対し接触可能な結合部位を有する活性化マクロファージを含み:
a. 有効量の、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物、または請求項13に記載の組成物を、患者に投与する工程;
b. 活動的プラークに付随する活性化マクロファージに対し、該ビタミン結合体を、十分な時間をかけて結合させる工程;および、
c. ポジトロン放射断層画像法を用いて体外的に、該活動的プラークを診断または監視する工程、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−518112(P2010−518112A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549234(P2009−549234)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/053293
【国際公開番号】WO2008/098112
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】