説明

ポジ作用性平版印刷版の製造方法

【課題】 簡便な生態学的な方法で現像可能な優れた印刷品質を有するポジ作用性平版印刷版の製造方法を提供することおよび内部ドラムスキャナー上で像形成可能な改良された感度を有するポジ作用性平版印刷版の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明によれば、赤外レーザーへの感熱性像形成要素の像通りの露呈および該像形成要素の現像を含んでなる簡単な湿潤クリーンアウト法でポジ作用性平版印刷版を製造する方法が提供される。像形成要素は内部ドラムまたは平床スキャナー上で0.2μsより短い画素滞在時間を有するレーザーに露呈されて高い感度を有するポジ作用性印刷版を支える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の分野】本発明は感熱性像形成要素の使用を含む平版印刷版の製造方法に関する。より特に、本発明は感熱性像形成要素を0.075μsより短い画素滞在時間(pixeldwell time)を有する赤外レーザーに露光して高い感度を有するポジ作用性印刷版を得る方法に関する。
【0002】
【発明の背景】平版印刷は、一部の領域はインキを受容することができるが他の領域はインキを受容しないであろう特別に製造された表面から印刷する方法である。
【0003】写真平版技術では、インキ−反撥性背景上で露光された領域(ネガ作用性)または露光されなかった領域(ポジ作用性)で油状またはグリース状インキを像通りに受容する写真材料が製造される。
【0004】表面リソ版またはプラノグラフィ印刷版とも称する一般的な平版の製造においては、水に対する親和力を有するかまたはそのような親和力を化学的処理により得る支持体に感光性組成物の薄層をコーテイングする。この目的のためのコーテイングには、ジアゾ化合物、二クロム酸塩で増感される親水性コロイドおよび多種の合成光重合体を含有する感光性重合体層が包含される。特にジアゾで増感される系が広く使用されている。
【0005】そのような感光層の像通りの露光で、露光された像領域は不溶性になりそして露光されなかった領域は可溶性のままである。版を次に適当な液体で現像して露光されなかった領域中のジアゾニウム塩またはジアゾ樹脂を除去する。
【0006】他方では、感光性でなくむしろ感熱性である像形成要素の使用を含む印刷版の製造方法も知られている。例えば、印刷版の製造に関して以上に記載されているような感光性像形成要素の特別な欠点は、昼光から遮断しなければならないことである。さらに、それらは貯蔵時間および条件の点から見て感度の安定性問題も有する。感熱性印刷版工程への傾向が市場で明らかに見える。
【0007】例えば、1992年1月の Research Disclosure no. 33303 は、支持体上に熱可塑性重量体粒子および例えばカーボンブラックの如き赤外吸収性顔料を含有する架橋結合された親水性層を含んでなる感熱性像形成要素を開示している。赤外レーザーへの像通りの露光により、熱可塑性重合体粒子は像通りに凝析し、それにより像形成要素の表面がさらなる現像なしでこれらの領域でインキ受容性になる。この方法の欠点は、非−印刷領域がある圧力がそこに適用される時にはインキ−受容性になるかもしれないために得られる印刷版が容易に損傷されることである。さらに、臨界条件下では、そのような印刷版の平版性能は劣悪になるかもしれず、従ってそのような印刷版は平版印刷寛容度をほとんど有していない。
【0008】US−P−4,708,925は、アルカリ−可溶性のノボラック樹脂およびオニウム−塩を含んでなる感光性組成物を含む像形成要素を開示している。この組成物は場合により赤外−増感剤を含有することもできる。該像形成要素の紫外線−可視光線−または赤外線への像通りの露光およびその後の水性アルカリ液を用いる現像段階後に、ポジまたはネガ作用性印刷版が得られる。
【0009】EP−A−625728は、紫外線および赤外線に感受性がありそしてポジまたはネガ作用性でありうる層を含んでなる像形成要素を開示している。この層はレゾール樹脂、ノボラック樹脂、潜在ブレンステッド酸および赤外−吸収性物質を含んでなる。
【0010】EP−A−738930は、基質並びに(a)紫外線/青色領域における第一の波長で吸収する化合物および(b)第一の波長より長い第二の波長で吸収する染料を含んでなる像−形成媒体を含んでなり、該第二の波長における照射が該第一の波長における該化合物(a)の吸収を漂白し、適当な露光滞在時間が約1μs〜約0.1μsである像−形成要素を開示している。
【0011】GB−1492070は、紫外線に感受性である材料の層および該層を被覆する紫外線に対して不透明であり且つ非−紫外レーザー線により除去できるかまたは紫外線に対して不透明にすることができる第二の層からなるプラノグラフィ印刷版を開示している。
【0012】EP−A−464270は、放射線−感受性部分が付与されたテープまたは版上に文字を筆記する方法であり、そこでは文字がその上にレーザー放射線により筆記され、テープの放射線−感受性部分の現像後に保護層が筆記しようとするテープの少なくとも一部に適用され、配置される文字はレーザー光線を使用して保護層上に筆記され、そして上部に筆記された保護層の部分の下にある放射線−感受性部分の材料は除去される方法を開示している。
【0013】FR−1561957は、結合剤並びに該結合剤中に分散された液体および/または固体材料を含有する感光層を含んでなる像形成要素であって該液体および/または固体材料が結合剤より疎水性が大きいような要素を開示している。
【0014】EP−A−580394は露呈装置としてのレーザーの使用に基づく異なる種類の像形成装置を開示している。
【0015】以上で論議された感熱性像形成系は1つもしくはそれ以上のレーザー光線を使用して回転式ドラム像セッターで像形成することができる(それぞれ内部または外部ドラムスキャナー)。欠点は、特に内部ドラムスキャナーが使用される時に感度が必ずしも満足のいくものでないことである。
【0016】
【発明の要旨】本発明の目的は簡便な生態学的な方法(ecological way)で現像可能な優れた印刷品質を有するポジ作用性平版印刷版の製造方法を提供することである。
【0017】本発明の別の目的は内部ドラムスキャナー上で像形成可能な改良された感度を有するポジ作用性平版印刷版の製造方法を提供することである。
【0018】本発明の別の目的は以下の記述から明白になるであろう。
【0019】本発明によれば、親水性表面を有する平版ベース上に疎水性の赤外線感受性層を含んでなる感熱性像形成要素を像通りに露光し、そして熱処理以外の別の処理をすることなく、該像形成要素をアルカリ性現像水溶液中で現像する段階を含んでなる高感度平版印刷版の製造方法であって、赤外レーザーが0.075μsより短い画素滞在時間を有することを特徴とする方法が提供される。
【0020】さらに、本発明における使用に関しては、平版ベース上に露光により部分的にまたは完全に除去することができる赤外線感受性層を含んでなる感熱性像形成要素が提供される。
【0021】露光後に、感熱性像形成要素はアルカリ性水溶液ですすぐことにより簡単な湿潤クリーンアウト(clean-out)法で現像される。
【0022】
【発明の詳細な記述】上記のような感熱性像形成要素を使用する本発明によれば、該像形成要素を0.075μsより短い、好適には0.05μsより短い画素滞在時間を有する赤外レーザーに露光することにより改良された感度を有する高い品質のポジ作用性平版印刷版が得られる。該印刷版は生態学的に許容できる方法で得られる。
【0023】本発明に関連する像通りの露光は赤外または近赤外、すなわち700〜1500nmの波長で操作されるレーザーの使用を含む像通りの走査露光である。近赤外で発光するレーザーダイオードが最も好適である。
【0024】感熱性像形成要素の像通りのレーザー露呈用の像形成装置としては内部ドラムまたは平床スキャナーが使用され、それにより像形成要素が短い画素滞在時間(0.01μs〜0.07μs)を有する1つのもしくは少数のレーザー光線に露光される。
【0025】赤外線感受性層は赤外吸収性化合物および結合剤樹脂を含んでなる。特に有用な赤外線吸収性化合物は、例えば、赤外染料、金属炭化物、ホウ化物、窒化物、炭窒化物(carbonitrides)、青銅−構造化酸化物および青銅族と構造的に関連しているがA成分を欠いた酸化物、例えばWO2.9である。好適にはカーボンブラックが赤外−吸収性化合物として使用される。結合剤樹脂としてはセルロースおよびその誘導体、セルロースエステル類、例えば酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、塩化ビニリデンおよびアクリロニトリルの共重合体、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリ塩化ビニル、フェノール系樹脂、例えばフェノールホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、ノボラックなど、ポリエステル類(芳香族もしくは脂肪族)、ポリスチレン類、ポリカーボネート類、例えばビスフェノールAを含有するポリカーボネート類並びに上記のものの共重合体または三元共重合体を使用することができる。
【0026】本発明の赤外感受性層および平版ベースの間には、自己硬膜性の疎水性重合体または硬膜剤および疎水性重合体を含んでなり、そして現像水溶液、より好適には好ましくは7.5〜14の間のpHを有するアルカリ性現像水溶液中に可溶性である熱硬膜可能な層を含んでなっていてもよい。この層で使用されるアルカリ可溶性結合剤は好適には一般的なポジまたはネガ作用性PS−版で使用される疎水性結合剤、例えばノボラック、ポリビニルフェノール類、カルボキシ置換された重合体などである。これらの重合体の代表例はDE−A−4007428、DE−A−4027301およびDE−A−4445820に記載されている。本発明に関して使用される疎水性結合剤はさらに、水中での不溶性およびアルカリ性溶液中での部分的な溶解性/膨潤性並びに/または共溶媒と組み合わされた時の水中での部分的な溶解性によっても特徴づけられる。さらに、この水性アルカリ可溶性層は好適には、熱的に硬膜化可能であり且つインキ−受容性である可視光線−または紫外線−非感受性化された層である。この可視光線−または紫外線−非感受性化された層は感光性成分、例えばジアゾ化合物、フォトアシド(photoacids)、光開始剤、キノンジアジド類、250nm〜650nmの波長範囲で吸収する増感剤などを含んでいない。
【0027】本発明の1つの態様によると、平版ベースは陽極酸化されたアルミニウムであることができる。特に好適な平版ベースは電気化学的に砂目かけされそして陽極酸化されたアルミニウム支持体である。本発明によると、陽極酸化されたアルミニウム支持体をその表面の親水性を改良するために処理してもよい。例えば、アルミニウム支持体は、その表面を珪酸ナトリウム溶液で高められた温度、例えば95℃で処理することにより珪酸処理してもよい。或いは、酸化アルミニウム表面を無機弗化物をさらに含有していてもよい燐酸塩溶液で処理することを含む燐酸塩処理を適用してもよい。さらに、酸化アルミニウム表面をクエン酸またはクエン酸塩溶液ですすいでもよい。この処理は室温で行ってもよくまたは約30〜50℃のわずかに高められた温度で行うこともできる。他の有利な処理は炭酸水素塩溶液を用いる酸化アルミニウム表面のすすぎを含む。1つもしくはそれ以上のこれらの後処理を単独でまたは組み合わせて実施してもよいことが証明された。
【0028】本発明に関連する別の態様によると、平版ベースは架橋結合された親水性層が付与された可撓性支持体、例えば紙またはプラスチックフィルムを含んでなる。特に適する架橋結合された親水性層は例えばホルムアルデヒド、グリオキサール、ポリイソシアナートまたは加水分解されたオルト珪酸テトラ−アルキルの如き架橋結合剤で架橋結合された親水性結合剤から得られる。
【0029】親水性結合剤としては、親水性の(共)重合体、例えば、ビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルの単独重合体および共重合体または無水マレイン酸/ビニルメチルエーテル共重合体を使用できる。使用される(共)重合体または(共)重合体混合物の親水性は好適には少なくとも60重量%、好適には80重量%の程度まで加水分解されたポリ酢酸ビニルの親水性と同じかまたはそれより高い。
【0030】架橋結合剤、特にオルト珪酸テトラアルキルの量は好適には1重量部の親水性結合剤当たり少なくとも0.2重量部、好適には0.5〜5重量部の間、より好適には1.0重量部〜3重量部の間である。
【0031】この態様に従い使用される平版ベース中の架橋結合された親水性層は、好適には層の機械的強度および多孔性を増加させる物質も含有する。この目的のために、コロイド状シリカを使用してもよい。使用されるコロイド状シリカは例えば40nmまでの、例えば20nmの平均粒子寸法を有するコロイド状シリカの市販の水−分散液の形態であってよい。さらにコロイド状シリカより大きい寸法の粒子、例えば J. Colloid and Interface Sci., Vol. 26, 1968, pages 62 to 69に記載されたステーバー(Stoeber)法に従い製造されるシリカまたはアルミナ粒子または二酸化チタンもしくは他の重金属酸化物の粒子である少なくとも100nmの平均直径を有する粒子を加えることができる。これらの粒子を加えることにより、架橋結合された親水性層の表面に背景領域中の水のための貯蔵位置として作用する顕微鏡的寸法の凹凸からなる均一な粗いきめが与えられる。
【0032】この態様に従う平版ベース中の架橋結合された親水性層の厚さは0.2〜25μmの範囲で変動することができそして好適には1〜10μmである。
【0033】本発明に従う使用に適する架橋結合された親水性層の特別な例は、EP−A601240、GB−P−1419512、FR−P−2300354、US−P−3971660、US−P−4284705およびEP−A514490に開示されている。
【0034】この態様に関する平版ベースの可撓性支持体としては、プラスチックフィルム、例えば基質状にされたポリエチレンテレフタレートフィルム、酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することが特に好適である。プラスチックフィルム支持体は不透明であってもまたは透明であってもよい。
【0035】接着性改良層が付与されたポリエステルフィルム支持体を使用することが特に好適である。EP−A 619524、EP−A 620502およびEP−A619525に開示されているように、本発明に従う使用に特に適する接着性改良層は親水性結合剤およびコロイド状シリカを含んでなる。好適には、接着性改良層中のシリカの量は1m2当たり200mg〜1m2当たり750mgの間である。さらに、シリカ対親水性結合剤の比は好適には1より大きく、そしてコロイド状シリカの表面積は好適には1グラム当たり少なくとも300m2、より好適には1グラム当たり少なくとも500m2である。
【0036】像通りの露光後に、感熱性像形成要素を、熱処理以外の別の処理をすることなく、それをアルカリ性現像水溶液ですすぐことにより現像する。この現像は、一般的なポジまたはネガ作用性の予備増感された印刷版のために使用される現像溶液のように7.5〜14の間のpHを有する現像溶液が使用される簡単なクリーンアウト法である。例えば予備−ベーキングの如き追加の予備処理段階は行われない。
【0037】アルカリ性水溶液を用いる像通りに露光された像形成要素の湿潤現像および乾燥後に、得られた版をそのまま印刷版として使用することができる。しかしながら、耐性を改良するためにこの版を200℃〜250℃の間の温度で5分間〜1分間にわたりベーキングすることも可能である。
【0038】下記の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明はそれらに制限されるものではない。全ての部数および百分率は断らない限り重量による。
【0039】
【実施例】
実施例1:<0.075μsの画素時間で像形成可能なポジ作用性感熱版平版印刷版の製造オザソル(Ozasol)N61印刷版(アグファ(AGFA)からのネガ作用性印刷版)上に重量部で示されている下記の成分を有するカーボンブラック分散液をベースにした赤外−感受性調合物をコーテイングした。
【0040】
酢酸エチル.........................579.7酢酸ブチル.........................386.5スペシャル・シュワルツ(Special Schwarz)250(デグッサ(Degussa)から入手できるカーボンブラック)................ 16.7ニトロセルロース(Nitrocellulose)E950(ウルフ・ワルスロード(Wolff Walsrode)から入手できる).............. 12.3ゾルスパース(Solsperse)5000(ICIから入手できる湿潤剤).. 0.3ゾルスパース(Solsperse)28000(ICIから入手できる湿潤剤).. 1.7サイメル(Cymel)301(ダイノ・シアナミド(Dyno Cyanamid)から入手できるメラミン硬膜剤)...................... 2.3p−トルエンスルホン酸................... 0.5オザソル(Ozasol)N61印刷版の紫外−感受性層をナイフコーターにより赤外−感受性調合物で20μmのコーテイング厚さにコーテイングした。
【0041】<0.075μsの画素時間での露光赤外−感受性印刷版を内部ドラム配置で1064nmで発光する走査Nd YAG赤外レーザーにあてた(走査速度218m/s、画素時間0.05μs、スポットサイズ14μs、そして像形成層の表面上の電力は2から6Wに変動した)。この露呈後に、赤外−感受性マスクはレーザー光線に露呈された領域では部分的に消失していた。
【0042】さらに像形成要素をオザソル(Ozasol)EN143(アグファ(AGFA)から入手できる現像溶液)を用いる現像工程に付し、これにより赤外−像形成部分を除去しそしてポジ印刷版が生じた。測定された感度は60mJ/cm2であった。処理後に、印刷版をGTO46オフセット印刷機械上に設置した。インキとしてK+E123Wを使用しそして湿し溶液としてロタマティック(Rotamatic)を使用した。印刷を開始しそして赤外−像形成部分におけるインキ吸収のない良好な印刷品質が得られた。
【0043】実施例2:アルカリ−可溶性結合剤を基にしたポジ作用性感熱版短い画素滞在時間(0.05μs)での赤外線レーザー露光平版ベースの製造0.20mmの厚さのアルミニウム箔を5g/lの水酸化ナトリウムを含有する50℃の水溶液中に浸漬することによりこの箔を脱グリース化しそして脱塩水ですすいだ。箔を次に交流を用いて4g/lの塩酸、4g/lの臭化水素酸および5g/塩酸のアルミニウムイオンを含有する水溶液の中で35℃の温度および1200A/m2の電流密度で電気化学的に砂目かけして、0.5μmの平均中心線粗面度Raを有する表面形態を形成した。
【0044】脱塩水ですすいだ後にアルミニウム箔を次に300g/lの硫酸を含有する水溶液で60℃で180秒間エッチングしそして脱塩水で25℃で30秒間すすいだ。
【0045】箔を引き続き200g/lの硫酸を含有する水溶液の中で45℃の温度、約10Vの電圧および150A/m2の電流密度で約300秒間にわたり陽極酸化して3.00g/m2のAl23の陽極酸化フィルムを形成し、次に脱塩水で洗浄し、20g/lの炭酸水素ナトリウムを含有する溶液で40℃において30秒間にわたり後処理し、引き続き脱塩水で20℃で120秒間すすぎそして乾燥した。
【0046】像形成要素の製造平版ベース上に最初にマルカ・リンカー(MARUKA LYNCUR)M H−2(マルゼン・カンパニー(Maruzen CO.)からのポリビニルフェノールの単独重合体)のメチルエチルケトン中5重量%溶液を20μmの湿潤厚さでコーテイングした。この層を40℃で10分間乾燥した。
【0047】この層に次に重量部で示されている下記の成分を有するカーボンブラック分散液を基にした赤外−感受性調合物をコーテイングした。
【0048】
酢酸エチル.........................579.7酢酸ブチル.........................386.5スペシャル・シュワルツ(Special Schwarz)250(デグッサ(Degussa)から入手できるカーボンブラック)................ 16.7ニトロセルロース(Nitrocellulose)E950(ウルフ・ワルスロード(Wolff Walsrode)から入手できる).............. 12.3ゾルスパース(Solsperse)5000(ICIから入手できる湿潤剤).. 0.3ゾルスパース(Solsperse)28000(ICIから入手できる湿潤剤).. 1.7サイメル(Cymel)301(ダイノ・シアナミド(Dyno Cyanamid)から入手できるメラミン硬膜剤)...................... 2.3p−トルエンスルホン酸................... 0.5赤外−感受性コーテイングを120℃で2分間乾燥した。
【0049】像形成要素の像通りの露光および処理赤外−感受性印刷版を内部ドラム配置で1064nmで発光する走査Nd YAG赤外線レーザーにあてた(走査速度218m/s、画素時間0.05μs、スポットサイズ14μs、そして像形成層の表面上の電力は2ワットから6ワットに変動した)。この露光後に、赤外−感受性マスクはレーザー光線に露光された領域では部分的に消失していた。
【0050】さらに像形成要素をオザソル(Ozasol)EP26(アグファ(AGFA)から入手できる現像溶液)を用いる現像工程に付し、これにより赤外−像形成部分を除去しそしてポジ印刷版を生じた。測定された感度は45mJ/cm2であった。
【0051】処理後に、印刷版をGTO46オフセット印刷機械上に設置した。インキとしてK+E123Wを使用しそして湿し溶液としてロタマティック(Rotamatic)を使用した。印刷を開始しそして赤外−像形成部分におけるインキ吸収のない良好な印刷品質が得られた。
【0052】実施例3:アルカリ−可溶性結合剤を基にしたポジ作用性感熱版長い画素滞在時間(0.1μs)での赤外線レーザー露光実施例1の像形成要素を1050nmで発光する走査NdYlfレーザーにあてた(走査速度100m/s、画素時間0.1μs、スポットサイズ15μs、そして像形成層の表面上の電力は75から475mWに変動した)。この露光後に、赤外−感受性マスクはレーザー光線に露呈された領域では部分的に消失していた。
【0053】さらに像形成要素をオザソル(Ozasol)EP26(アグファ(AGFA)から入手できる現像溶液)を用いる現像工程に付し、これにより赤外−像形成部分を除去しそしてポジ印刷版を生じた。測定された感度は110mJ/cm2であった。
【0054】処理後に、印刷版をGTO46オフセット印刷機械上に設置した。インキとしてK+E123Wを使用しそして湿し溶液としてロタマティック(Rotamatic)を使用した。印刷を開始しそして赤外−像形成部分におけるインキ吸収のない良好な印刷品質が得られた。
【0055】そこで、感熱性像形成要素の感度はレーザー露呈が0.075μsより長い滞在時間で実施される時には明らかに低下したことがわかる。
【0056】本発明の主なる特徴および態様は以下のとおりである。
【0057】1.親水性表面を有する平版ベース上に疎水性の赤外線感受性層を含んでなるポジ感熱性像形成要素をレーザーに像通りに露光し、そして熱処理以外の別の処理をすることなく、該像形成要素をアルカリ性現像水溶液中で現像する段階を含んでなる高感度平版印刷版の製造方法であって、赤外レーザーが0.075μsより短い画素滞在時間を有することを特徴とする方法。
【0058】2.該感熱性像形成要素が内部ドラムまたは平床スキャナー上で露光される上記1の方法。
【0059】3.平版ベース上に赤外−吸収剤および結合剤樹脂を含んでなる少なくとも1つの赤外感受性層を含んでなる感熱性像形成要素。
【0060】4.該赤外感受性層が露光により部分的にまたは完全に除去される上記3の感熱性像形成要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 親水性表面を有する平版ベース上に疎水性の赤外線感受性層を含んでなるポジ感熱性像形成要素をレーザーに像通りに露光し、そして熱処理以外の別の処理をすることなく、該像形成要素をアルカリ性現像水溶液中で現像する段階を含んでなる高感度平版印刷版の製造方法であって、赤外レーザーが0.075μsより短い画素滞在時間を有することを特徴とする方法。
【請求項2】 平版ベース上に赤外−吸収剤および結合剤樹脂を含んでなる少なくとも1つの赤外感受性層を含んでなる感熱性像形成要素。