説明

ポット苗用移植機

【課題】横一列のポット苗をポット苗箱から受け入れ、これを下方に搬送すると同時に前後方向の向きを反転させるポット苗の反転供給装置を有するポット苗用移植機において、苗受けの下方への回転移動及び反転に際してポット苗の根鉢が苗受けから抜け出すのを防止する。
【解決手段】間欠回転する駆動軸22に送りアーム23が回転対称的に固定され、各送りアーム23に苗受けアーム9を介して苗受け1A,1Bが取り付けられる。駆動軸22が間欠回転すると、苗受け1A,1Bは上方停止位置(苗受入位置)とそこから180°回転した下方停止位置で停止しながら間欠回転し、苗受入位置で横一列のポット苗を順次受け入れる。受け入れられたポット苗は、下方の苗取出位置において取り出される。カムローラ26がカム27に沿って転動することにより、苗受けアーム9が所定のタイミングで所定角度揺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲や野菜等の根鉢の付いたポット苗を圃場に移植するポット苗用移植機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、横一列のポット苗をポット苗箱から受け入れ、これを下方に搬送すると同時に前後方向の向きを反転させるポット苗の反転供給装置と、この反転供給装置により供給されたポット苗を載置して水平面内で搬送する無端状横搬送ベルトと、前記無端状横搬送ベルトの端縁から送り出されるポット苗を圃場に植え付ける植付装置を備えたポット苗用移植機が記載されている。
特許文献1及び図8,9を参照して、従来のポット苗用移植機について説明する。
【0003】
ポット苗用移植機においては、多数のポット苗室を連設した可撓性のポット苗箱が苗載台内を湾曲して一列分づつ間欠送りされ、所定位置で苗載台の後方に設けられた押出杆がポット苗箱の横一列のポット苗室に底面側から突入し、ポット苗を前方に押し出す(以上は特許文献1参照)。押し出されたポット苗の根部は、前方の苗受入位置に停止した苗受け1の断面凹状の苗ホールド部1a内に押し込まれる。
続いて、ポット苗(図示せず)を受け取った苗受け1は、下方に回転移動しながら反転し、ポット苗を下方に搬送すると共にポット苗の前後方向の向きを180度反転させ、このとき苗受け1の苗ホールド部1aがポット苗の根部側を先にして跳ね出し部材2の位置を通過し、停止する(図8の仮想線参照)。
【0004】
苗受け1の苗ホールド部1aが跳ね出し部材2の位置を通過するとき(この位置が苗受け1にとっての苗取出位置である)、ポット苗は苗ホールド部1aから押し出され、跳ね出し部材2はポット苗が苗ホールド部1aから抜け切ると同時に下方に(矢印Xで示す)素早く回動し、ポット苗を下方の無端状横搬送ベルト3上に落下させる。なお、ポット苗を自然落下に任せず強制的に落下させるのは、動いている無端状横搬送ベルト3の所定位置に素早く確実にポット苗を供給するためである。
無端状横搬送ベルト3は落下したポット苗を載置して機体の横方向に搬送し、端縁から順次送り出し、送り出されるポット苗は図示しない植付装置により圃場に植え付けられる。
【0005】
前記苗受け1は前記反転供給装置の一部である。この反転供給装置は、一定速度で連続回転するクランク軸4aを有する駆動クランク4と、前記苗受け1と、前記駆動クランク4と苗受け1の間に配置された伝動機構5及び反転機構6からなる。クランク軸4aはポット苗用移植機の駆動源(エンジン)の動力の一部により回転する。
この伝動機構5は、機体7に上下揺動自在に軸支(支持軸8)された支持アーム9と、苗受け1の下端に固定され支持アーム9の先端に軸支(支持軸10)された一対の苗受けアーム11と、機体7に揺動自在に軸支(支持軸8)された揺動アーム13と、揺動アーム13と支持アーム9の間を連結するスプリング機構14(詳細は特許文献1参照)と、駆動クランク4のクランクピン4bと揺動アーム13の間を連結する上下送りロッド15からなる。また、機体7に支持アーム8のストッパー16が設置されている。
【0006】
この伝動機構において、上下送りロッド15、揺動アーム13、スプリング機構14、支持アーム9、苗受けアーム11が駆動クランク4から苗受け1への動力の伝動経路となる。具体的には、駆動クランク4が回転すると上下送りロッド15が作動して揺動アーム13が揺動し、揺動アーム13の揺動はスプリング機構14を介して支持アーム9に伝達されて支持アーム9を上下揺動させ、これにより苗受けアーム11及び苗受け1が上下に往復回動する(図8の実線と仮想線参照)。特許文献1に記載されたように、揺動アーム13の揺動に伴って上方に揺動する支持アーム9がストッパー16に当接してからも、揺動アーム13はさらにスプリング機構14のスプリング14aを圧縮しつつその上限まで揺動し、次いで揺動アーム13は反対方向への揺動を開始する。従って、スプリング機構14のスプリング14aが圧縮されている間、支持アーム9はストッパー16に当接して静止し、この間、苗受け1は上端位置(苗受入位置)にある。
【0007】
反転機構6は、一方の苗受けアーム11に設置されたカムローラ17と、カムローラ17が従動回転するカム面を有するカム18からなる。カム18は機体7に固定されている。駆動クランク4が回転して支持アーム9及び苗受けアーム11が上下に揺動するとき、カムローラ17がカム18のカム面に沿って回転移動し、これにより、苗受けアーム11が支持軸10を中心として回動する。これにより苗受け1は、図8に示す実線位置(上端位置)から仮想線位置(下端位置)に向けて下方へ回転移動する間、180度反転し、逆に仮想線位置から実線位置へ向けて上方へ回転移動する間、逆方向に180度反転して元の姿勢に戻る。
なお、特許文献1では、この反転機構6に相当するものは、機体に設置された苗受けロッド(特許文献1では番号9が付与されている)である。図8,9に示すポット苗移植機と特許文献1に記載されたポット苗移植機は、実質的にこの反転機構の構成のみが異なる。
【0008】
なお、上記の例では、苗受け1がストッパー16に当接して上端位置(苗受入位置)に所定時間停止するが、この時間は、押出杆によりポット苗箱のポット苗室からポット苗の根部を押し出し、続いて苗受け1の苗ホールド部1a内に押し込む際に必要とされる時間を勘案して適宜調整される。この押し出し及び押し込み作業に掛かる時間がごく短時間であれば、この停止時間自体が不要となる場合があり得る。その場合、ストッパー16及びスプリング機構14は必須とはいえず、揺動アーム13の揺動がスプリング機構14を介することなく、直接支持アーム9に伝達されるようにしてもよい。
【0009】
この種のポット苗用移植機において、ポット苗の根鉢が崩れやすい場合、苗受け1が下方に回転移動する際、苗ホールド部1aに押し込まれたポット苗の根鉢が苗ホールド部1aから抜け出して、無端状横搬送ベルト3上に整列して落下させることができず、移植装置による移植が正常に行えない場合がある。あるいは、ポット苗の根鉢部が崩れなくても、移植速度を上げた場合に、同様の問題が生じることがある。
これは、この種のポット苗用移植機では、苗受け1を下端位置から上端位置まで必ず戻す必要があり、この上方への回転移動に要する時間がロス時間となって、実際に苗受け1がポット苗を搬送する時間が圧迫されて短くなり、下方への急速な回転移動を強いられるためである。
また、このロス時間があることにより、移植速度の向上が妨げられる。
さらに、苗受けを上下に往復回転移動させることから、移植速度を上げるに伴い、ポット苗の反転供給装置の振動が大幅に増加するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭55−38082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、図8,9に示すような供給方式をとる(ポット苗箱から押し出された横一列のポット苗を受け入れ、これを下方に搬送すると同時に前後方向の向きを反転させるポット苗の反転供給装置を有する)ポット苗用移植機において、苗受けの下方への回転移動及び反転に際してポット苗の根鉢が苗受けから抜け出すのを防止することを主たる目的とする。また、苗受けの移動のロス時間を減らして移植速度の向上を可能とすること、移植速度を上げることに伴う反転供給装置の振動の増大を抑えることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、苗載台上のポット苗箱から押し出された横一列のポット苗の各根鉢部を受け入れる断面凹状の苗ホールド部を有し、苗載台の近傍の苗受入位置で横一列のポット苗の各根鉢部を苗ホールド部に受け入れ、下方の苗取出位置に向けて回転移動するとき反転して前記ポット苗を下方に搬送すると共に前後方向の向きを反転させる苗受けと、前記苗取出位置の下方に水平支持され、前記苗取出位置にきた苗受けから取り出されたポット苗を載置し搬送する無端状横搬送ベルトと、無端状横搬送ベルトの端縁から送り出されるポット苗を圃場に植え付ける植付装置を備えたポット苗用移植機の改良に係り、一方向に回転する駆動軸に複数個の送りアームが回転対称的に固定され、各送りアームにそれぞれ苗受けが設置されている。各苗受けは、前記駆動軸の回転に伴い、前記駆動軸の周囲を同方向に回転移動し、その回転移動の過程で前記苗受入位置で横一列のポット苗を順次受け入れ、続いて下方の苗取出位置において前記ポット苗を取り出される。
【0013】
前記ポット苗用移植機において、前記駆動軸を間欠回転させ、苗受けを前記苗受入位置において一時停止させることが望ましい。一時停止させる時間は、ポット苗箱のポット苗室から押し出したポット苗の根部を、苗受けの苗ホールド部内に押し込むのに要する時間を勘案して適宜設定される。
前記ポット苗用移植機において、例えば各苗受けに苗受けアームが設置され、各苗受けは苗受けアームを介して送りアームに設置されている。この場合、望ましくは、前記苗受けアームが前記送りアームに回動自在に軸支され、前記駆動軸の回転に伴って所定角度往復回動し、それにより前記苗受けが前記苗受入位置から回転移動する際に、前記駆動軸側に回動するようになっている。前記苗受けアームを所定角度往復回動させる機構として、機体に設置されたカムと、前記苗受けアームに設置され前記カムに沿って転動するカムローラからなるカム機構が考えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のポット苗用移植機のように、苗受け1を下端位置から上端位置まで戻すためのロス時間がなく、そのため、同じ移植速度でも、苗受けがポット苗を搬送する時間を従来機より長く設定(苗受けの移動速度を従来より遅く設定)することができ、ポット苗が苗受けの苗ホールド部から抜け落ちにくくなる。また、ポット苗が抜け落ちにくく、上記ロス時間もないことから、移植速度を向上させることができる。
また、苗受けは一方向に回転するから、上端位置と下端位置の間を往復回転移動させる従来機と異なり、ポット苗の反転供給装置の振動が軽減される。
【0015】
なお、本発明に係るポット苗用移植機において、駆動軸の回転に伴って苗受けが支持軸を中心として所定角度往復回動するようにし、それにより苗受けが苗受入位置から回転移動する際に駆動軸側に回動するようにした場合、苗受けと他部材の干渉を防止する効果がある。具体的にいえば、前記苗受入位置において苗受けと苗載台が近接している場合に、前記苗受入位置から下方に回転する苗受けと苗載台や苗箱との相互干渉が防止できる。あるいは前記苗取出位置において苗受けと無端状横搬送ベルトが近接している場合に、苗受けと無端状横搬送ベルトとの相互干渉が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るポット苗用移植機の要部(主としてポット苗の反転供給装置の部分)側面図である。
【図2】図1に示す反転供給装置において苗受けが180°回転移動する間の該苗受けの軌跡を経時的に示す側面図である。
【図3】図1に示す反転供給装置において苗受けが180°回転移動する間の苗受け及びポット苗の位置及び姿勢を順次説明する側面図である。
【図4】同じく図1に示す反転供給装置において苗受けが180°回転移動する間の苗受け及びポット苗の位置及び姿勢を順次説明する側面図である。
【図5】本発明に係る別のポット苗用移植機の要部(主としてポット苗の反転供給装置の部分)側面図である。
【図6】図5に示す反転供給装置において苗受けが120°回転移動する間の苗受け及びポット苗の位置及び姿勢を順次説明する側面図である。
【図7】同じく図5に示す反転供給装置において苗受けが120°回転移動する間の苗受け及びポット苗の位置及び姿勢を順次説明する側面図である。
【図8】従来のポット苗用移植機の要部(主としてポット苗反転供給装置の部分)側面図である。
【図9】従来のポット苗用移植機の要部(主としてポット苗反転供給装置の部分)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜7を参照して、本発明に係るポット苗用移植機について説明する。本発明に係るポット苗用移植機は、図8,9に示す従来のポット苗用移植機とは、ポット苗の反転供給装置のみが異なる。図1〜7において、図8,9に示すポット苗用移植機と実質的に同じ部位には同じ番号を付与している。
【0018】
図1に示すポット苗用移植機において、ポット苗の反転供給装置21は、ポット苗用移植機の駆動源(エンジン)の動力の一部により、例えばインデックスユニット(間欠割り出し装置)を介して間欠回転する駆動軸22と、駆動軸22に回転対称(2回対称)に固定された2本の送りアーム23と、各送りアーム23の先端に軸支(駆動軸22と平行な支持軸24)された略くの字形の苗受けアーム9と、各苗受けアーム9の一端に固定された苗受け1(1A,1B)と、各苗受けアーム9の他端に回転自在(支持軸24と平行な回転軸25)に設置されたカムローラ26と、機体7に対し固定されたカム27と、図示していないが、カムローラ26をカム27の周面(カム面27a)に常時押し付けるバネ(例えば送りアーム23と苗受けアーム9の間に張架)等の付勢手段を有する。なお、カム面27aも駆動軸22と同軸に回転対称(2回対称)である。
【0019】
図1において、苗受け1Aは上方停止位置(苗受入位置)にあり、苗受け1Bはその苗受入位置から180°回転した下方停止位置にある。駆動軸22の間欠回転に伴い、送りアーム23,23が間欠回転し、苗受けアーム9,9及び苗受け1(1A,1B)が駆動軸22を中心として間欠回転し、その回転移動の過程で、苗受け1(1A,1B)は前記両位置に一時停止を繰り返す。
図8,9に示す従来のポット苗用移植機と全く同様に、苗受け1Aが前記苗受入位置に停止すると、横一列のポット苗がポット苗箱から前方に押し出されて、その根部が苗受け1Aの苗ホールド部1a内に押し込まれ、続いて苗受け1Aが下方に回転移動して苗取出位置を通過するとき(この回転移動に伴い、苗受け1Aの向きは反転して、ポット苗の前後方向の向きを反転させる)、跳ね出し部材2によりポット苗は苗ホールド部1aから取り出される。苗受け1Aが苗取出位置を通過直後、該苗受け1Aは停止する(この下方停止位置は、苗受入位置から180°回転移動した位置であり、図1において苗受け1Bが停止している位置である)。
【0020】
上記のように苗受け1Aが苗受入位置から180回転移動する間、すでに苗取出位置を通過してポット苗の取り出しを終えていた苗受け1Bは、下方停止位置から上方に180°回転移動し、苗受入位置に停止する。この回転移動に伴い、苗受け1Bの向きは反転して、再び横一列のポット苗を受け入れることができるようになる。
このように、一方の苗受け1Aが苗の取り出しを終えて下方停止位置に停止すると同時に、他方の苗受け1Bは苗受入位置に停止し、ポット苗の受け入れ準備ができている。従って、本発明に係るポット苗用移植機では、図8,9に示す従来のポット苗用移植機のように、苗受け1を下端位置から上端位置まで戻すためのロス時間がない。
【0021】
一方、この反転供給装置は、苗受けアーム9を支持軸24を中心に所定角度往復回動させるためのカム機構を有する。このカム機構は、カムローラ26とカム27を備え、苗受け1(1A,1B)が間欠的に回転移動するとき、カムローラ26がカム27の周面(カム面27a)に沿って転動し、これにより、苗受けアーム9が支持軸24を中心に所定角度往復回動する。図1に示すように、カム27のカム面27aは周囲の2箇所で最も径が小さく(駆動軸22からの距離が小さい)、カムローラ26がこの箇所にきたとき、苗受け1(1A,1B)が上方停止位置(苗受入位置)又は下方停止位置にくるように、カム27とカムローラ26の相対位置が設定されている。
【0022】
このため、苗受け1(1A,1B)が上方停止位置(苗受入位置)又は下方停止位置から回転移動を開始し、次に回転移動を停止するまでの間に、苗受けアーム9は支持軸24を中心として、苗受け1(1A,1B)が駆動軸22に近づく方向及びその逆方向に所定角度往復回動する。
図2は、苗受け1(1A,1B)が180°回転移動する間の該苗受け1(1A,1B)の位置を経時的に示すものである。苗受け1Aが実線で示す上方停止位置(苗受入位置)から回転移動を開始すると同時に、苗受け1Aは駆動軸22側に急速に回動し、下方停止位置に達する直前に反対方向に急速に回動して、下方停止位置に停止したときは元の位置に戻っている。苗受け1Bは苗受け1Aとは回転対称的に回転移動及び回動する。
これにより、苗受け1Aが上方停止位置(苗受入位置)から下方に回転移動するとき、近接して設置されている苗載台や苗箱との相互干渉が防止でき、また、下方停止位置直前の苗取出位置近傍において無端状横搬送ベルト3との相互干渉が防止できる。
【0023】
図3,4に、苗受け1(1A,1B)が180°回転移動する間の該苗受け1(1A,1B)の回転移動と回動及びポット苗の搬送の状態が、苗載台、苗箱、無端状横搬送ベルト3等と共に、順次示されている。図3,4に示す苗受け1(1A,1B)の位置は、図2に経時的に示す苗受け1(1A,1B)の位置に対応する。なお、図3,4において、28はポット苗、29はポット苗箱、29aはポット苗室、31は苗載台、32は押出杆、33は植付装置、34は植付装置のうち植付爪であり、これらは図8,9に示す従来のポット苗用移植機でも同じである。
【0024】
図3,4について簡単に説明する。
(図3(a));苗受け1Aが上方停止位置(苗受入位置)に停止し、押出杆32がポット苗箱29の後方側(底面側)から横一列のポット苗室29aに突入し、ポット苗28を前方に押し出し、押し出されたポット苗28の根部が、前方に停止した苗受け1Aの苗ホールド部1a(図1参照)内に押し込まれる。この間、苗受け1B(ポット苗28を取出済み)は、下方停止位置に停止している。
(図3(a)〜図3(b));駆動軸22が回転して、苗受け1Aが下方に回転移動し、同時に支持軸24を中心として駆動軸22に近づく方向(苗載台31やポット苗箱29から離れる方向)に回動する。苗受け1Aと苗載台31やポット苗箱29が近接配置されていると、この回動がなければ、回転移動する苗受け1Aが苗載台31やポット苗箱29と相互に干渉するおそれがあるが、この回動により相互干渉を免れることができる。
【0025】
(図3(b)〜図4(a));苗受け1Aが下方に回転移動する間、苗受け1Aが支持軸24を中心として駆動軸22に近づく方向(苗載台31やポット苗箱29から離れる方向)に回動した状態であるので、苗受け1Aの回転移動とともに反転を開始したポット苗28と苗載台31やポット苗箱29との相互干渉も防止できる。
(図4(a)〜図4(c));苗受け1Aが下方に回転移動する間、苗受け1Aが支持軸24を中心として駆動軸22に近づく方向(苗載台31やポット苗箱29から離れる方向)に回動した状態であるので、苗受け1Aと無端状横搬送ベルト3との相互干渉も防止できる。苗受け1(1A,1B)が図4(c)の状態からさらに回転移動し、苗受け1Aが苗取出位置を通過するときポット苗28が取り出され、続いて苗受け1Aが下方停止位置に停止し、苗受け1Bが上方停止位置(苗受入位置)に停止する。
【0026】
図5は、別の反転供給装置21を示す。この反転供給装置21では、駆動軸22に回転対称(3回対称)に3本の送りアーム23が固定され、各送りアーム23に苗受けアーム9が軸支され、各苗受けアーム9の一端に苗受け1(1A,1B,1C)が固定され、他端にカムローラ26が軸支されている。駆動軸22の回転は、120°回転毎に一時停止する間欠回転である。他の点は、カム27の形状を含めて、図1に示す反転供給装置21と同じである。
【0027】
図5において、苗受け1Aは上方停止位置(苗受入位置)にあり、苗受け1Bはその苗受入位置から120°回転した第2停止位置、苗受け1Cはさらに120°回転した第3停止位置にある。駆動軸22の間欠回転に伴い、送りアーム23が間欠回転し、苗受けアーム9及び苗受け1(1A,1B,1C)が駆動軸22を中心として間欠回転し、その回転移動の過程で、苗受け1(1A,1B,1C)は前記3つの位置に一時停止を繰り返す。また、駆動軸22の間欠回転に伴い、カムローラ26がカム27のカム面27a上を転動し、各苗受け1(1A,1B,1C)は、図1に示す反転供給装置21の苗受け1(1A,1B)と全く同様の形態で、支持軸24を中心として、駆動軸22に近づく方向及びその逆方向に所定角度往復回動する。駆動軸22の回転に伴う苗受け1(1A,1B,1C)の支持軸24を中心とした往復回動のタイミングは、図1に示す反転供給装置21と同じである。
【0028】
図6,7に、苗受け1(1A,1B,1C)が120°回転移動する間の該苗受け1(1A,1B,1C)の回転移動と回動及びポット苗の搬送の状態が、苗載台、苗箱、無端状横搬送ベルト3等と共に、順次示されている。
図6,7についてごく簡単に説明する。
(図6(a));苗受け1Aが上方停止位置(苗受入位置)に停止し、押出杆32がポット苗箱29の後方側(底面側)から横一列のポット苗室29aに突入し、ポット苗28を前方に押し出し、押し出されたポット苗28の根部が、前方に停止した苗受け1の苗ホールド部1a(図5参照)内に押し込まれる。この間、ポット苗28を保持した苗受け1Bは第1停止位置、苗受け1Cは第2停止位置に停止している。
【0029】
(図6(a)〜図7(b));駆動軸22が回転すると、苗受け1Aは下方に回転移動し、苗受け1Bは苗取出位置を通過する際にポット苗が取り出され、苗受け1Cは上方に回転移動する。苗受け1(1A,1B,1C)が図7(b)の状態からさらに少し回転移動すると、ポット苗28を受け入れた苗受け1Aは第2停止位置に停止し、苗受け1Bは第3停止位置に停止し、苗受け1Cは上方停止位置(苗受入位置)に停止する。なお、苗受け1(1A,1B,1C)が回転移動する間、該苗受け1(1A,1B,1C)が支持軸24を中心として所定のタイミングで回動する点及びそれによる作用効果は、図1に示す反転供給装置21と同じである。
【0030】
この反転供給装置21においても、苗受け1Aが苗受入位置から120回転移動する間、すでに苗取出位置を通過してポット苗の取り出しを終えていた苗受け1Cは、第2停止位置から上方に120°回転移動し、苗受入位置に停止する。苗受入位置に停止した苗受け1Cの向きは、これが苗取出位置にあったときと比べると180°反転して、再び横一列のポット苗を受け入れることができるようになる。
このように、一つの苗受け1Aが苗の受け入れを終えて第2停止位置に停止すると同時に、別の苗受け1Cが苗受入位置に停止し、ポット苗の受け入れ準備ができている。従って、本発明に係るポット苗用移植機では、図8,9に示す従来のポット苗用移植機のように、苗受け1を下端位置から上端位置まで戻すためのロス時間がない。
また、苗受け1(1A,1B,1C)と苗載台や苗箱との相互干渉が防止でき、苗取出位置近傍において無端状横搬送ベルト3との相互干渉の防止もできる。
【0031】
なお、上記の例においてはいずれも、駆動軸22を間欠回転させたが、ポット苗のポット苗室からの押し出し及び苗受け1の苗ホールド部1aへの押し込み作業に掛かる時間がごく短時間であれば、苗受け1を苗受入位置に停止させる必要がない場合もあり得る。この場合、駆動軸は連続回転でもよい。
また、上記の例において、苗受け1に固定した苗受けアーム9を送りアーム23に回動自在に軸支させ(支持軸24)、カム27及びカムローラ26の作用により、駆動軸22の回転に伴って苗受け1を支持軸24を中心に所定のタイミングで往復回動させたが、回転移動する苗受け1及び苗受け1に保持されたポット苗28が、ポット苗用移植機の苗載台、その他の部位と相互干渉しないのであれば、苗受け1を上記のように往復回動させる必要はない。
【符号の説明】
【0032】
1 苗受け
9 支持アーム
11 苗受けアーム
22 駆動軸
23 送りアーム
24 支持軸
26 カムローラ
27 カム
27a カム面
28 ポット苗
29 ポット苗箱
29a ポット苗室
31 苗載台
32 押出杆
33 植付装置
34 植付爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台上のポット苗箱から押し出された横一列のポット苗の各根鉢部を受け入れる断面凹状の苗ホールド部を有し、前記苗載台の近傍の苗受入位置で前記横一列のポット苗の各根鉢部を前記苗ホールド部に受け入れ、下方の苗取出位置に向けて回転移動するとき反転して前記ポット苗を下方に搬送すると共に前後方向の向きを反転させる苗受けと、前記苗取出位置の下方に水平支持され、前記苗取出位置にきた前記苗受けから取り出されたポット苗を載置し搬送する無端状横搬送ベルトと、前記無端状横搬送ベルトの端縁から送り出されるポット苗を圃場に植え付ける植付装置を備えたポット苗用移植機において、一方向に回転する駆動軸に複数個の送りアームが回転対称的に固定され、各送りアームにそれぞれ苗受けが設置され、各苗受けは、前記駆動軸の回転に伴い、前記駆動軸の周囲を同方向に回転移動し、その回転移動の過程で前記苗受入位置で横一列のポット苗を順次受け入れ、続いて下方の苗取出位置において前記ポット苗を取り出されることを特徴とするポット苗用移植機。
【請求項2】
前記駆動軸が間欠回転し、前記苗受けが前記苗受入位置において一時停止することを特徴とする請求項1に記載されたポット苗用移植機。
【請求項3】
各苗受けに苗受けアームが設置され、各苗受けは前記苗受けアームを介して前記送りアームに設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載されたポット苗用移植機。
【請求項4】
前記苗受けアームが前記送りアームに回動自在に軸支され、前記苗受けアームは前記駆動軸の回転に伴って所定角度往復回動し、前記苗受けが前記苗受入位置から回転移動する際に、前記駆動軸側に回動することを特徴とする請求項3に記載されたポット苗用移植機。
【請求項5】
前記苗受けアームを所定角度往復回動させる機構として、機体に設置されたカムと、前記苗受けアームに設置され前記カムに沿って転動するカムローラからなるカム機構を有することを特徴とする請求項4に記載されたポット苗用移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19410(P2011−19410A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165191(P2009−165191)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】