説明

ポテンショメータ装置

【課題】 簡単で且つ安価な構成で、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減除去する。
【解決手段】 目標信号源11からの目標信号は、ボルテージフォロワとして構成された第1のオペアンプ12に供給され、第1のオペアンプ12の出力点P11の電圧は、目標信号源11の出力電圧となる。この電圧に対し、ダイアル摘みの操作により設定された並列的な第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15がアッテネータとして働き、出力点P12の信号は、第1のポテンショメータ13によりアッテネートされた信号と第2のポテンショメータ15によりアッテネートされた信号との平均値となる。第2のオペアンプ18は、ボルテージフォロワとして構成されており、出力点P13の電圧は、出力点P12の信号電圧と等しくなる。この出力点P13の信号を、目標信号として制御系に入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度の可変抵抗器であるポテンショメータの信頼性の向上に係り、特に、制御系に用いるのに好適なポテンショメータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、制御系において、制御の目標信号を調整設定したり、制御対象の機械的な変位を電気信号としてフィードバックするために、しばしば高精度の可変抵抗器であるポテンショメータが用いられている。
例えば、制御系の目標信号系の調整設定にポテンショメータを用いる場合には、図5に示すように、目標信号源SSの信号出力をポテンショメータPM1の第1の固定側端子S11と第2の固定側端子S12との間に印加し、信号源SSの信号出力を抵抗体RM1により分圧した出力を可動接触子MC1に接続された可動端子M11から取り出し、直列抵抗RS1を介してオペアンプ(演算増幅器)OP1に供給している。オペアンプOP1は、ボルテージフォロワとして構成されており、入力電圧に対応する電圧を目標信号として加算器ADに供給している。加算器ADの出力は、制御アンプ(制御増幅器)CAにて増幅され、この制御アンプCAの出力により制御対象CTを制御する。制御対象CTの制御状況は、センサSRにより検出して、フィードバックアンプ(帰還増幅器)FBにて増幅し、フィードバック信号として加算器ADに供給する。加算器ADは、オペアンプOP1から供給される目標信号からフィードバックアンプFBから供給されるフィードバック信号を減算している。このようにして、制御系のフィードバック制御を行っている。
【0003】
一方、制御系のフィードバック系のフィードバック信号源として、制御対象のアクチュエータの変位の検出にポテンショメータを用いる場合には、図6に示すように、目標信号源SSの信号出力は、直列抵抗RS2を介してオペアンプ(演算増幅器)OP1に供給している。オペアンプOP1は、ボルテージフォロワとして構成されており、入力電圧に対応する電圧を目標信号として加算器ADに供給している。加算器ADの出力は、制御アンプ(制御増幅器)CAにて増幅され、この制御アンプCAの出力により制御対象CTを制御する。制御対象CTの制御状況は、ポテンショメータPM2により検出される。すなわち、ポテンショメータPM2は、抵抗体RM2の両端の第1の固定端子S21と第2の固定端子S22との間に電源電圧が印加されており、制御対象CTのアクチュエータと連動する可動接触子MC2に接続された可動端子M21から、電源電圧を抵抗体RM2により分圧した出力を取り出している。可動端子M21から取り出した出力は、フィードバックアンプ(帰還増幅器)FBにて増幅し、フィードバック信号として加算器ADに供給する。加算器ADは、オペアンプOP1から供給される目標信号からフィードバックアンプFBから供給されるフィードバック信号を減算している。図7にポテンショメータPM2とフィードバックアンプFB部分の詳細を示すように、フィードバックアンプFBは、直列抵抗RS3とオペアンプOP2で構成しており、オペアンプOP2は、ボルテージフォロワとして構成されている。
【0004】
ポテンショメータPM2の可動端子M21から取り出したフィードバック信号は、直列抵抗RS3を介してオペアンプOP2に供給しており、フィードバック信号電圧に対応する電圧を加算器ADに供給している。このようにして、制御系のフィードバック制御を行っている。
一般に、ポテンショメータは、1回路のみで使用しており、ポテンショメータの抵抗体と可動接触子との摺動部に起因してノイズが発生することがある。このようにポテンショメータの摺動部に起因してノイズが発生すると、制御系や信号系にこのノイズがそのまま混入してしまう。この種の摺動部に発生するノイズは、摺動部の酸化皮膜等の影響に起因する接触不良によるものであるため、摺動部を瞬時的にまたは断続的に高インピーダンスまたはオープンにしてしまうことになり、大きな問題となることがある。例えば、図5に示した制御系における目標信号系に用いているポテンショメータにおいて上述したようなノイズが発生すると制御系はゼロ位置(基準位置)方向へ急激に制御対象のアクチュエータを移動させようとする。また、図6に示した制御系におけるフィードバック信号系に用いているポテンショメータにおいて上述したようなノイズが発生すると制御系は目標信号に応じたいずれかの方向に急激に制御対象のアクチュエータを移動させようとする。これらいずれの場合にも制御系に異常な動きをもたらし、制御対象に損傷を与えるおそれがある。
【0005】
上述した問題に対処する方法として、ポテンショメータを2個設置して、それぞれの出力信号を信号選択処理する技術が、特許文献1(特開昭63−257001号)等に開示されている。すなわち、特許文献1(特開昭63−257001号)には、図6に示した制御系におけるフィードバック信号系のように電源電圧が抵抗体の両端に印加されるポテンショメータを2個設け、それぞれの可動接触子を制御対象のアクチュエータと連動させて、各可動接触子から取り出される信号のいずれか一方、例えば電圧が高いほう、を信号選択回路により選択して、制御対象のアクチュエータの移動量に対応するフィードバック信号として用いることが示されている。この特許文献1(特開昭63−257001号)の構成では、信号選択回路による信号選択が極めて重要であるが、ノイズが発生していないほうのポテンショメータの出力を適確に選択することは極めて困難である。先に述べたように、ポテンショメータのノイズは、瞬時的にインピーダンスが高くなることにより発生することが多いため、回路条件によって、出力電圧が高くなる可能性もあれば出力電圧が低くなる可能性もあり、例えば、単純に出力電圧の高いほうを選択するようにしてもノイズが発生していないほうのポテンショメータの出力が選択されるとは限らない。
【0006】
また、特許文献1(特開昭63−257001号)の技術は、接触不良や断線により適切な使用ができなくなったポテンショメータを排除して、健全なポテンショメータに切り換えるための技術であって、ポテンショメータから取り出される信号の瞬時変動によるノイズの影響を適切に軽減することはできず、特に、ポテンショメータを、制御目標を設定する目標信号系のアッテネーションに用いる場合には適していないと考えられる。
また、多チャンネル化した場合にも、信号選択回路をチャンネル数ぶんだけ設ける必要があり、コストが嵩んでしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−257001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1(特開昭63−257001号)等に示された技術は、構成が複雑化し、コストもかかるが、制御系の目標信号系およびフィードバック系等に用いるポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減しまたは除去することができない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、簡単で且つ安価な構成で、制御系の目標信号系およびフィードバック系等においてもポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減しまたは除去することを可能とするポテンショメータ装置を提供することを目的としている。
本発明の請求項1の目的は、簡単で且つ安価な構成で、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減/除去することを可能とするポテンショメータ装置を提供することにある。
本発明の請求項2の目的は、特に、制御系の目標信号系において、簡単で且つ安価に、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減/除去することを可能とするポテンショメータ装置を提供することにある。
【0009】
本発明の請求項3の目的は、特に、制御系のフィードバック系において、簡単で且つ安価に、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減/除去することを可能とするポテンショメータ装置を提供することにある。
本発明の請求項4の目的は、特に、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を一層効果的に且つ的確に軽減/除去することを可能とするポテンショメータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載した本発明に係るポテンショメータ装置は、上述した目的を達成するために、
両端に第1の固定側端子と第2の固定側端子とを有する抵抗体および一端をこの抵抗体に摺接し且つ他端に可動端子を有する可動接触子を有してなる第1のポテンショメータと、
両端に第1の固定側端子と第2の固定側端子とを有する抵抗体および一端をこの抵抗体に摺接し且つ他端に可動端子を有し前記第1のポテンショメータの可動接触子と連動する可動接触子を有してなり、前記第1の固定側端子、前記第2の固定側端子および前記可動端子を、それぞれ前記第1のポテンショメータの前記第1の固定側端子、前記第2の固定側端子および前記可動端子と実質的に共通に接続して、前記第1のポテンショメータに対して並列的に接続される第2のポテンショメータと、
を具備することを特徴としている。
請求項2に記載した本発明に係るポテンショメータ装置は、請求項1のポテンショメータ装置であって、
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子を調整することによって、制御系の目標信号のアッテネーションを行うことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載した本発明に係るポテンショメータ装置は、請求項1のポテンショメータ装置であって、
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子を制御系のアクチュエータによって駆動するようにして制御系のフィードバック信号を生成することを特徴としている。
請求項4に記載した本発明に係るポテンショメータ装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項のポテンショメータ装置であって、
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子から取り出された電圧をオペアンプによるボルテージフォロワを介して出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単で且つ安価な構成で、制御系の目標信号系およびフィードバック系等においてもポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減しまたは除去することを可能とするポテンショメータ装置を提供することができる。
すなわち、本発明の請求項1のポテンショメータ装置によれば、
両端に第1の固定側端子と第2の固定側端子とを有する抵抗体および一端をこの抵抗体に摺接し且つ他端に可動端子を有する可動接触子を有してなる第1のポテンショメータと、
両端に第1の固定側端子と第2の固定側端子とを有する抵抗体および一端をこの抵抗体に摺接し且つ他端に可動端子を有し前記第1のポテンショメータの可動接触子と連動する可動接触子を有してなり、前記第1の固定側端子、前記第2の固定側端子および前記可動端子を、それぞれ前記第1のポテンショメータの前記第1の固定側端子、前記第2の固定側端子および前記可動端子と実質的に共通に接続して、前記第1のポテンショメータに対して並列的に接続される第2のポテンショメータと、
を具備することにより、
簡単で且つ安価な構成で、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減/除去することが可能となる。
【0013】
本発明の請求項2のポテンショメータ装置によれば、請求項1のポテンショメータ装置において、
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子を調整することによって、制御系の目標信号のアッテネーションを行うことにより、
特に、制御系の目標信号系において、簡単で且つ安価に、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減/除去することが可能となる。
【0014】
本発明の請求項3のポテンショメータ装置によれば、請求項1のポテンショメータ装置において、
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子を制御系のアクチュエータによって駆動するようにして制御系のフィードバック信号を生成することにより、
特に、制御系のフィードバック系において、簡単で且つ安価に、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を効果的に且つ的確に軽減/除去することが可能となる。
【0015】
本発明の請求項4のポテンショメータ装置によれば、請求項1〜請求項3のいずれか1項のポテンショメータ装置において、
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子から取り出された電圧をオペアンプによるボルテージフォロワを介して出力することにより、
特に、ポテンショメータの摺動部に起因するノイズの影響を一層効果的に且つ的確に軽減/除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るポテンショメータ装置を目標信号系に用いた本発明の第1の実施の形態に係る制御系における目標信号系の要部の等価的な回路構成を模式的に示す回路構成図である。
【図2】図1のポテンショメータ装置の要部の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明に係るポテンショメータ装置をフィードバック系に用いた本発明の第2の実施の形態に係る制御系におけるフィードバック系の要部の等価的な回路構成を模式的に示す回路構成図である。
【図4】図3のポテンショメータ装置の要部の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【図5】目標信号系にポテンショメータを用いた一般的な制御系の構成の例を模式的に示す等価的ブロック図である。
【図6】フィードバック系にポテンショメータを用いた一般的な制御系の構成の例を模式的に示す等価的ブロック図である。
【図7】図6の構成の一部の具体的な構成例を詳細に示す等価的回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態に基づき、図面を参照して本発明のポテンショメータ装置を詳細に説明する。
図1および図2は、本発明のポテンショメータ装置を目標信号系に使用した本発明の第1の実施の形態に係る制御系の要部の構成を示しており、このうち、図1は、本発明に係るポテンショメータ装置を適用した制御系の目標信号系の等価的な回路構成を模式的に示す回路構成図、そして図2は、図1のポテンショメータ装置の要部の外観構成を模式的に示す斜視図である。
図1に示す目標信号系は、目標信号源11、第1のオペアンプ(演算増幅器)12、第1のポテンショメータ13、第1の抵抗14、第2のポテンショメータ15、第2の抵抗16、第3の抵抗17、第2のオペアンプ(演算増幅器)18、第1の帰還抵抗19および第2の帰還抵抗20を具備している。
図2に示すポテンショメータ装置は、図1に示した第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15に加えて、ダイアル摘み31およびポテンショメータ軸32を具備している。
【0018】
図1および図2に示す本発明のポテンショメータ装置を目標信号系に使用した本発明の第1の実施の形態に係る制御系においては、図2に示すように、ダイアル摘み31が一端に結合されたポテンショメータ軸32の他端に、第1のポテンショメータ13と第2のポテンショメータ15が共通に設けられている。第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15の各々の可動接触子は、共通のポテンショメータ軸32に一体的に固定されており、ダイアル摘み31の回動操作に応じて、第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15の各可動接触子が連動して回動する。
一方、図1に示すように、目標信号源11は、第1のオペアンプ12の非反転入力端に目標信号を与える。第1のオペアンプ12は、第1の帰還抵抗19を介して第1のオペアンプ12の反転入力にその出力をフィードバックさせて、ボルテージフォロワとして構成している。第1のオペアンプ12の出力端は、共通電位(グラウンドアース)との間に、第1のポテンショメータ13と第2のポテンショメータ15のそれぞれの固定側端子間、すなわちそれぞれの抵抗体、を並列に接続しており、これら第1のポテンショメータ13と第2のポテンショメータ15のそれぞれの抵抗体に第1のオペアンプ12の出力を供給している。第1のポテンショメータ13の可動端は第1の抵抗14を介して、第3の抵抗17の一端に接続し、そして共通のポテンショメータ軸32によって第1のポテンショメータ13の可動端と連動する第2のポテンショメータ15の可動端も第2の抵抗16を介して、第3の抵抗17の一端に接続している。
【0019】
すなわち、第1のポテンショメータ13と第2のポテンショメータ15は、第1のオペアンプ12の出力端と第3の抵抗17との間に並列的に接続されて設けられている。第3の抵抗17の他端は、第2のオペアンプ18の非反転入力端に接続しており、第2のオペアンプ18は、第2の帰還抵抗20を介して第2のオペアンプ18の反転入力にその出力をフィードバックさせて、ボルテージフォロワとして構成している。第2のオペアンプ18の出力を、設定された目標信号として制御系に供給している。
このような構成において、目標信号源11は、サイン(sin〜正弦)波やランダム波等の波形の目標信号を発生し、ダイアル摘み31の操作により、第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15によって、目標信号波形の振幅を調整設定する。目標信号源11からの目標信号波形は、第1の帰還抵抗19によりボルテージフォロワとして構成された第1のオペアンプ12に供給され、第1のオペアンプ12の出力点P11の電圧は、目標信号源11の出力電圧に等しくなる。この電圧に対し、ダイアル摘み31の操作により設定された第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15がアッテネータとして働き、アッテネートされた信号がアッテネート出力点P12にあらわれる。
【0020】
ここで、第1のポテンショメータ13と第2のポテンショメータ15は、同一の定格のものを使用していて、固定端子間の抵抗体の抵抗値が等しく、また、第1の抵抗14と第2の抵抗16の各抵抗値も等しいものとする。このため、アッテネート出力点P12の信号は、第1のポテンショメータ13によりアッテネートされた信号と第2のポテンショメータ15によりアッテネートされた信号との平均値となる。第2のオペアンプ18は、第2の帰還抵抗20によりボルテージフォロワとして構成されており、この第2のオペアンプ18の出力点P13の電圧は、第2のオペアンプ18の非反転入力点、つまりアッテネート出力点P12の信号電圧と等しくなる。この出力点P13の信号を、目標信号として制御系に入力する(図5参照)。
このように、第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15を、2連として、並列的に接続することにより、第1のポテンショメータ13および第2のポテンショメータ15を回動操作していく途中で、酸化皮膜等の接触不良により、瞬時的に発生するノイズの影響は、ほとんど無くなる。すなわち、第1のポテンショメータ13と第2のポテンショメータ15を2連にして、並列的に接続することにより、一方のポテンショメータが、瞬時的にオープンに近い状態になった時にも、信号電圧は、他方のポテンショメータから導出した電圧により補償され、異常な信号電圧が発生することが、効果的に防止される(通常の場合、第1のポテンショメータ13と第2のポテンショメータ15が同時に、瞬時的なオープン状態になる確率は、限りなく低いと考えられる)。
【0021】
図3および図4は、本発明のポテンショメータ装置をフィードバック系に使用した本発明の第2の実施の形態に係る制御系の要部の構成を示している。図3は、本発明に係るポテンショメータ装置を適用した制御系のフィードバック系の等価的な回路構成を模式的に示す回路構成図、そして図4は、図3のポテンショメータ装置の要部の外観構成を模式的に示す斜視図である。
図3に示すフィードバック系は、第1の定電圧供給端41,42(負電圧供給端41と正電圧供給端42)、第2の定電圧供給端41′,42′(負電圧供給端41′と正電圧供給端42′)、第1のポテンショメータ43、第1の抵抗44、第2のポテンショメータ45、第2の抵抗46、第3の抵抗47、オペアンプ(演算増幅器)48および帰還抵抗49を具備している。図4に示すポテンショメータ装置は、図3に示した第1のポテンショメータ43および第2のポテンショメータ45に加えて、アクチュエータ51、第1の作動伝達部材52、第2の作動伝達部材53およびポテンショメータ軸54を具備している。
【0022】
図3および図4に示す本発明のポテンショメータ装置をフィードバック系に使用した本発明の第2の実施の形態に係る制御系においては、図4に示すように、制御系の制御対象のアクチュエータ51には、第1の作動伝達部材52と第2の作動伝達部材53が順次連結され、第2の作動伝達部材53が一端近傍に結合されたポテンショメータ軸54の他端に、第1のポテンショメータ43と第2のポテンショメータ45が共通に設けられている。第1のポテンショメータ43および第2のポテンショメータ45の各々の可動接触子は、共通のポテンショメータ軸54に一体的に固定されており、アクチュエータ51の直進動作が、第1の作動伝達部材52および第2の作動伝達部材53によりポテンショメータ軸54の回転動作に変換されて、第1のポテンショメータ43および第2のポテンショメータ45の各可動接触子が連動して回動する。
一方、図3に示すように、第1の定電圧供給端41−42間(すなわち、負電圧供給端41と正電圧供給端42との間)に、第1のポテンショメータ43の固定側端子間、すなわちその抵抗体、を接続し、第2の定電圧供給端41′−42′間(すなわち、負電圧供給端41′と正電圧供給端42′との間)に、第2のポテンショメータ45の固定側端子間、すなわちその抵抗体、を接続している。この場合、第1の定電圧供給端41,42と第2の定電圧供給端41′,42′は、共通の定電圧源に接続していて、それらの供給電圧は等しく、負電圧供給端41と負電圧供給端41′には、共通の負電圧が与えられ、正電圧供給端42と正電圧供給端42′には、共通の正電圧が与えられる。
【0023】
つまり、第1の定電圧供給端41−42間と第2の定電圧供給端41′−42′間に第1のポテンショメータ43と第2のポテンショメータ45のそれぞれの抵抗体を並列的に接続しており、これら第1のポテンショメータ43と第2のポテンショメータ45のそれぞれの抵抗体に定電圧を供給している。第1のポテンショメータ43の可動端は、第1の抵抗44を介して、第3の抵抗47の一端に接続し、そして共通のポテンショメータ軸54によって第1のポテンショメータ43の可動端と連動する第2のポテンショメータ45の可動端も第2の抵抗46を介して、第3の抵抗47の一端に接続している。すなわち、第1のポテンショメータ43と第2のポテンショメータ45は、定電圧源と第3の抵抗47との間に並列的に接続されて設けられている。第3の抵抗47の他端は、オペアンプ48の非反転入力端に接続しており、オペアンプ48は、帰還抵抗49を介してオペアンプ48の反転入力にその出力をフィードバックさせて、ボルテージフォロワとして構成している。オペアンプ48の出力を、フィードバック信号として制御系に供給している。
このような構成において、制御系の制御対象となるアクチュエータ51は、制御によって直進動作する。このアクチュエータ51の直進動作は、第1の作動伝達部材52および第2の作動伝達部材53によりポテンショメータ軸54の回転動作に変換され、この回転動作により第1のポテンショメータ43および第2のポテンショメータ45の連動して回動する各可動接触子から取り出される信号を当該制御系のフィードバック信号としている。
【0024】
上述したように、第1の定電圧供給端41−42間(すなわち、負電圧供給端41と正電圧供給端42との間)に接続された、第1のポテンショメータ43の固定側端子間、すなわちその抵抗体および第2の定電圧供給端41′−42′間(すなわち、負電圧供給端41′と正電圧供給端42′との間)に接続された、第2のポテンショメータ45の固定側端子間、すなわちその抵抗体には、共通の定電圧源(図示していない)から共通の定電圧が与えられる。すなわち、第1の定電圧供給端41,42と第2の定電圧供給端41′,42′は、共通の定電圧源から、共通の定電圧が供給される。この定電圧に対し、アクチュエータ51の動作に応じた第1のポテンショメータ43と第2のポテンショメータ45の動作により、第1のポテンショメータ43および第2のポテンショメータ45で制御調整された信号が調整出力点P21にあらわれる。ここで、第1のポテンショメータ43と第2のポテンショメータ45は、同一の定格のものを使用していて、固定端子間の抵抗体の抵抗値が等しく、また、第1の抵抗44と第2の抵抗46の各抵抗値も等しいものとする。このため、調整出力点P21の信号は、第1のポテンショメータ43により制御調整された信号と第2のポテンショメータ45により制御調整された信号との平均値となる。オペアンプ48は、帰還抵抗49によりボルテージフォロワとして構成されており、このオペアンプ48の出力点P22の電圧は、オペアンプ48の非反転入力点、つまり調整出力点P21の信号電圧と等しくなる。この出力点P22の信号を、フィードバック信号として制御系に入力する(図6参照)。
【0025】
このように、第1のポテンショメータ43および第2のポテンショメータ45を、2連として、並列的に接続することにより、第1のポテンショメータ43および第2のポテンショメータ45が、アクチュエータ51の動作に従って回動していく途中で、酸化皮膜等の接触不良により、瞬時的に発生するノイズの影響は、ほとんど無くなる。すなわち、第1のポテンショメータ43と第2のポテンショメータ45を2連にして、並列的に接続することにより、一方のポテンショメータが、瞬時的にオープンに近い状態になった時にも、信号電圧は、他方のポテンショメータから導出した電圧により補償され、異常な信号電圧が発生することが、効果的に防止される。
したがって、ポテンショメータを使用している制御系や、アンプ、コンパレータ等を含む信頼性を向上することができる。同様にして、計測関係に、ポテンショメータを使った場合の、計測信号の信頼性をも向上することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
11 目標信号源
12 第1のオペアンプ(演算増幅器)
13 第1のポテンショメータ
14 第1の抵抗
15 第2のポテンショメータ
16 第2の抵抗
17 第3の抵抗
18 第2のオペアンプ(演算増幅器)
19 第1の帰還抵抗
20 第2の帰還抵抗
31 ダイアル摘み
32 ポテンショメータ軸
41、42 第1の定電圧供給端(負電圧供給端、正電圧供給端)
41′、42′ 第2の定電圧供給端(負電圧供給端、正電圧供給端)
43 第1のポテンショメータ
44 第1の抵抗
45 第2のポテンショメータ
46 第2の抵抗
47 第3の抵抗
48 オペアンプ(演算増幅器)
49 帰還抵抗
51 アクチュエータ
52 第1の作動伝達部材
53 第2の作動伝達部材
54 ポテンショメータ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に第1の固定側端子と第2の固定側端子とを有する抵抗体および一端をこの抵抗体に摺接し且つ他端に可動端子を有する可動接触子を有してなる第1のポテンショメータと、
両端に第1の固定側端子と第2の固定側端子とを有する抵抗体および一端をこの抵抗体に摺接し且つ他端に可動端子を有し前記第1のポテンショメータの可動接触子と連動する可動接触子を有してなり、前記第1の固定側端子、前記第2の固定側端子および前記可動端子を、それぞれ前記第1のポテンショメータの前記第1の固定側端子、前記第2の固定側端子および前記可動端子と実質的に共通に接続して、前記第1のポテンショメータに対して並列的に接続される第2のポテンショメータと、
を具備してなることを特徴とするポテンショメータ装置。
【請求項2】
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子を調整することによって、制御系の目標信号のアッテネーションを行うことを特徴とする請求項1に記載のポテンショメータ装置。
【請求項3】
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子を制御系のアクチュエータによって駆動するようにして制御系のフィードバック信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のポテンショメータ装置。
【請求項4】
並列的に接続された前記第1のポテンショメータおよび前記第2のポテンショメータの連動する前記可動接触子から取り出された電圧をオペアンプによるボルテージフォロワを介して出力することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポテンショメータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−15932(P2013−15932A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146909(P2011−146909)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【Fターム(参考)】