説明

ポリアセタールコポリマー

【課題】薬品が存在する環境下で使用でき、また精密成形部品にも好適に使用できるポリアセタールコポリマーを提供する。
【解決手段】オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しからなる重合体中に、下記式(1)のオキシアルキレン単位が挿入された構造を有し、


(R0,R’0:同一または異なって水素、アルキル基より選ばれる。nは1以上の整数で、n=1の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、m=2〜6の範囲である。)射出成形により作成した成形体の動的粘弾性を評価したときの、−100℃における貯蔵弾性率(G’(-100))を、−50℃における貯蔵弾性率(G’(-50)))で除した値が2.4以上であるポリアセタールコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐薬品性及び薬品存在下での耐冷熱サイクル性に優れるとともに、二次収縮率が小さい成形体を提供するポリアセタール樹脂組成物とその成形体に関するものであり、有機薬品、無機薬品、家庭用薬剤、工業用油類、工業用グリース類、自動車燃料、自動車用油類等の薬品存在下で使用される部品、特に自動車燃料廻り部品として有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂はバランスのとれた機械的特性、耐疲労性、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性及び、成形性に優れ、自動車部品、電気・電子機器部品、その他各種機械部品の用途に広く利用されている。しかし、有機薬品、無機薬品、家庭用薬剤、工業用油類、工業用グリース類、自動車燃料、自動車用油類等の薬品が存在する環境下、しかも使用時の温度が変動する過酷な使用条件の用途では、ポリアセタール樹脂は比較的優れた耐薬品性を有しているものの、さらにその向上が求められている。
【0003】
一般にポリアセタール樹脂の薬品による浸食は非晶部から進行するので、結晶化度の高いポリアセタールホモポリマーがポリアセタールコポリマーよりも耐薬品性が優れていると考えられている。しかしながら、ポリアセタールホモポリマーは、例えば塩基性の薬品下では加水分解したり、また高温で使用する場合にポリセタールコポリマーよりも熱分解を起こし易いことから、機械物性が低下したり、分解によって発生したホルムアルデヒドやその酸化物である蟻酸が薬品中に放出される等の問題があるために、使用可能な薬品や使用温度が限定されている。また、成形品の二次収縮率がポリアセタールコポリマーより大きいので、精密部品としての使用が制限される場合もある。
【0004】
かかる技術課題に対して、特許文献1に耐薬品透過性に優れるポリアセタールコポリマーが提案されているが、固相結晶化のピーク温度を一般のコポリマーよりも低めに規定した以外、従来公知のコポリマーと比較して工程上何ら改良がなされておらず、特に、使用時の温度が変動する過酷な使用条件では、主体となるポリアセタールコポリマーが劣化するため、実用的な耐薬品性には改良の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−130935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであってコポリマーの有する優れた熱安定性を維持しながら、優れた耐薬品性、具体的には成形体の薬品による膨潤度及び、有機溶剤ガス透過度が小さい特性を有し、薬品存在下での耐冷熱サイクル性にも優れ、且つ二次収縮率も小さいことによって、今まで以上に広範囲の薬品が存在する環境下で使用でき、また精密成形部品にも好適に使用できるポリアセタール樹脂組成物とその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような問題点を解決するために種々検討を行った結果、成形体が特定の動的粘弾性及び、特定の範囲の結晶化度を有するように調整されたポリアセタールコポリマーが、従来の常識を覆して、単に結晶化度の高いポリアセタールホモポリマーよりもさらに優れた耐薬品性、具体的には成形体の薬品による膨潤度及び、有機溶剤ガス透
過度が小さい特性を示し、薬品存在下での耐冷熱サイクル性にも優れ、且つ二次収縮率も小さく上述の課題を全て解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)射出成形により作成した成形体の動的粘弾性を評価したときの、−100℃における貯蔵弾性率(G’(-100))を、−50℃における貯蔵弾性率(G’(-50)))で除した値が2.4以上であると同時に、結晶化度が58%〜80%の範囲であることを特徴とし、オキシメチレン単位(−CH2 O−)の繰り返しからなる重合体中に下記式(1)のオキシアルキレン単位
【0009】
【化1】

(R0 ,R’0 :同一または異なって水素、アルキル基より選ばれる。nは1以上の整数で、n=1の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、m=2〜6の範囲である。)が挿入された構造を有し、且つ重合体の末端基がアルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、フォルメート基からなる、数平均分子量が10,000から1,000,000の範囲であるポリアセタールコポリマー100重量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸補足剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤の少なくとも1種を0.01〜5重量部配合してなるポリアセタール樹脂組成物、
【0010】
(2)該ポリアセタールコポリマーがトリオキサンと、コモノマー成分として1,4−ジオキサン含有量が200ppm以下である1,3−ジオキソランを、カチオン活性触媒の存在下に、共重合して得られることを特徴とする前記(1)記載のポリアセタール樹脂組成物、
(3)酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤をポリアセタールコポリマー100重量部に対して、0.01〜1重量部配合してなる前記(1)又前記(2)記載のポリアセタール樹脂組成物、
(4)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物としてポリアミド樹脂をポリアセタールコポリマー100重量部に対して、0.01〜1重量部配合してなる前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物、
【0011】
(5)ギ酸補足剤として炭素数12〜22の脂肪酸からなるジ脂肪酸カルシウムの中から選ばれる2種以上をポリアセタールコポリマー100重量部に対して、0.01〜0.2重量部配合してなる前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物、(6)離型剤として炭素数12〜22の脂肪酸からなるエチレングリコールジ脂肪酸エステルの中から選ばれる2種以上をポリアセタールコポリマー100重量部に対して、0.01〜0.9重量部配合してなる前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物、
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形または加圧成形して得た成形体、
(8)有機薬品、無機薬品、家庭用薬剤、工業用油類、工業用グリース類、自動車燃料、自動用油類等の薬品存在下で用いられる前記(7)記載の成形体、
【0012】
(9)レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、メタノール、メタノール含有ガソリン等に代表される自動車燃料と接触する、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタ
ンク、ガソリンタンクフランジ等に代表される自動車燃料廻り部品として使用される前記(8)記載の成形体、
(10)DVD(digital video disk) に代表される光ディスクドライブのピックアップを駆動させるリードスクリュウに嵌合、摺動する部品、リードスクリュウを回転させるギア、ピックアップを駆動させる為のラックギア、ラックギアに嵌合しそれを駆動させるギアからなる群から選ばれた少なくとも1種の部品として使用される前記(7)記載の成形体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリアセタール樹脂組成物及びその成形体は、優れた耐薬品性と薬品存在下での耐冷熱サイクル性を持ちながら、同時に低二次収縮性をも併せ持っている。したがって、薬品存在下で使用される精密部品や自動車燃料廻り部品に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】−130℃から160℃までの貯蔵剛性率(G’)の解析チャートの図である。
【図2】試験片に繰り返し衝撃を与える図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で規定する貯蔵弾性率は、射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、射出圧力60kgf/cm2 、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度70℃にて、寸法130mm×13mm×3mmの短冊状に成形した成形体を、成形完了後23℃、湿度50%の環境下に48時間放置した後、動的粘弾性評価装置(レオメトリックス社製、RDA2)に取り付け、−130℃〜150℃までの温度範囲を3℃/分の速度で昇温しながら、6.28rad/sの周期的なねじり振動を加え、生じた振動ひずみを測定することにより求めた。より詳細な測定方法は実施例で説明する。
【0016】
また、本発明で規定する結晶化度は、上述の貯蔵弾性率評価用の成形体の中心部から、10mgの樹脂を削り出し、示差熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7)を用い、5℃/分の速度にて200℃まで昇温する過程で発生する発熱ピークから融解熱△H(J/g)を求め、これを文献に記載された結晶化度100%の値(△Hf=222J/g)から以下の式により計算して求めた。
結晶化度(%)=△H/△Hf×100%
ポリアセタール樹脂の耐薬品透過性を改善するには(イ)薬品を通過しない結晶部の量を増やすこと(ロ)薬品が透過する非晶部の分子鎖密度を高め、この部分の薬品の拡散を遅らせることが必要と考えられる。従来は(イ)のみが着目されていたが本発明者らは(ロ)も(イ)と同様に重要であることを見出した。
【0017】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上記方法により射出成形により作成した成形体の動的粘弾性を評価したときの、−100℃における貯蔵弾性率(G’(-100))を、−50℃における貯蔵弾性率(G’(-50)))で除した値が2.4以上であることが必要であり、好ましくは2.43以上、さらに好ましくは2.45以上である。この値が2.4より小さい場合、成形体の耐薬品性及び、二次収縮率の改良効果は少ない。
【0018】
本発明の原理は、ポリアセタール樹脂のγ緩和温度が約−70℃である(J.Macromol.Sci.−Phys.,B13(3),323−348(1977)等に記載有り。)ことから、(G’(-50)))の値は非晶部が熱振動している状態での値であるのに対し、(G’(-100))の値は非晶部の熱振動が凍結された状態での値である。これらの
値と成形体の結晶化度から、成形体の非晶部の構造に関する情報が得られる。成形体がある一定の結晶化度を有しているとき、(G’(-100))/(G’(-50)))の値が小さい場合は非晶部の密度が疎であることを示唆する一方、この値が大きい場合は非晶部の密度が緻密であることを示唆すると考えられる。
【0019】
薬品による浸食はポリアセタール樹脂の非晶部から進行すると考えられ、非晶部の密度が緻密な本発明品は、薬品による浸食が起こりにくいものと推測される。また、非晶部が緻密で安定な構造であるために、本発明品は薬品存在下での耐冷熱サイクル性が優れ、且つ二次収縮率も小さいなど、従来のポリアセタールの常識をこえた、優れた性能を発揮しているものと推測される。
【0020】
上記要件に加えてさらに本発明のポリアセタール樹脂組成物は、射出成形により作成した成形体の結晶化度が58%〜80%の範囲であることが必要である。好ましくは60%〜75%の範囲であり、さらに好ましくは62%〜71%の範囲である。結晶化度が58%未満の場合は、成形体の耐薬品性は改良されない。また、結晶化度が80%を越える場合には(G’(-100))/(G’(-50)))の値が2.4以上であることを満足することは困難である。
【0021】
くり返し述べるが、従来のポリアセタール樹脂の耐薬品透過性に関する知見の範囲では結晶化度のみが着目されていた。従ってホモポリマーの耐薬品性はコポリマーに勝ると考えられてきたが、ホモポリマーは成形時に速やかに結晶化が進んで形状が固定され、しかも形状が固定化した後にも結晶化が継続するため非晶部の分子鎖が結晶部に取り込まれ、その結果、非晶部の分子鎖密度が低下する。一方市販のコポリマーでは非晶部の分子鎖密度は高いものの結晶化度そのものが低い。改善策としてアニーリング等の手法で結晶化度を高めても、結晶化度の増加に伴って非晶部が疎に変化するので、耐薬品性を改善することは出来なかった。本発明は、アニーリング等の手法を用いることなく特定の動的粘弾性を有するコポリマーを見出したことによって、市販のホモポリマー、コポリマーいずれよりも優れた耐薬品透過性を得たのである。
【0022】
本発明品は、以下に説明する方法によって得ることが出来る。
本発明に用いるポリアセタールコポリマーはオキシメチレン単位(−CH2 O−)の繰り返しからなる重合体中に、下記式(1)のオキシアルキレン単位
【化2】

(R0 ,R’0 :同一または異なって水素、アルキル基より選ばれる。nは1以上の整数で、n=1の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、m=2〜6の範囲である。)が挿入された構造を有し、且つ重合体の末端基がアルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、フォルメート基からなり、数平均分子量が10,000から1,000,000の範囲であることを特徴とする。
【0023】
重合体中のオキシアルキレン単位のシークエンスを表わすnが1である割合が、オキシアルキレン単位全体の95mol%未満となる場合、ポリアセタールコポリマーの安定性とりわけ熱安定性と、耐薬品性及び、薬品存在下での耐冷熱サイクル性の改良効果が低下するので好ましくない。好ましくは96mol%以上であり、より好ましくは98mol%以上である。
【0024】
また、重合体中のオキシアルキレン単位の挿入量はオキシメチレン単位100mol当たり0.05mol〜0.80molの範囲であることが好ましい。0.05mol未満であると、得られるポリアセタールコポリマーの熱安定性が著しく損なわれるうえ、成形体の非晶部の密度が疎となり、耐薬品性の改良効果が損なわれるので好ましくない。一方、0.80molより多いと成形体の結晶化度が60%よりも低くなるために耐薬品性が改良されない。好ましくは0.20〜0.70molの範囲であり、さらに好ましくは0.30〜0.60molの範囲である。
【0025】
重合体の末端基はアルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、フォルメート基からなり、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基の群から選ばれる1種以上が好ましい。また、ヒドロキシアルコキシ基としては、ヒドロキシエトキシ基及び/又はヒドロキシブチルオキシ基が好ましい。アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、フォルメート基以外の末端基、例えば水酸基(−OH)、アセチル基(−OCOCH3 )等の場合には熱安定性が不良となり好ましくない。
【0026】
重合体の数平均分子量は10,000〜1,000,000であり、10,000未満であると、薬品存在下での耐冷熱サイクル性の改良効果が損なわれるので好ましくない。一方、1,000,000より大きいと、成形体の結晶化度が60%よりも低くなるために、耐薬品性が改良されない。好ましくは20,000〜500,000の範囲であり、より好ましくは40,000〜100,000の範囲である。
本発明に用いるポリアセタールコポリマーを製造する方法としては、周知の方法を用いることが出来るが、カチオン活性触媒を重合触媒とし、トリオキサンと、環状エーテルおよび/または環状ホルマール等のコモノマー成分及び、分子量調節剤を原料として連続塊状重合反応によって製造する方法がもっとも好ましい。
【0027】
コモノマー成分としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。その中でも、エチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。
【0028】
上に掲げたコモノマー成分のなかで最も好ましいのは1,3−ジオキソランであり、とくに最も好ましいのは、1,4−ジオキサンの含有量が200ppm以下の1,3−ジオキソランである。1,4−ジオキサンの含有量が200ppmより大きいと、得られるポリアセタールコポリマーの熱安定性が損なわれ、仮に動的粘弾性と結晶化度の要求を満足したとしても実用的な熱安定性が不十分となる場合がある。詳細は明らかではないが、この結果として耐薬品性及び、薬品存在下での耐冷熱サイクル性の改良効果が十分発揮されない場合がある。1,4−ジオキサンの含有量は、好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。1,3−ジオキソランは、トリオキサンに対して0.1〜2.0重量%の範囲で共重合させる。好ましくは0.3〜1.8重量%の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%の範囲である。
【0029】
分子量調節剤としては、カチオン重合の連鎖移動剤として作用する低分子量の化合物、例えばホルムアルデヒドのメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等の低級脂肪族の群から選ばれるジアルキルアセタールとそのオリゴマー並びに、分子量3000以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の、ポリアルキレングリコール並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルア
ルコール、ブチルアルコール等の低級脂肪族アルコールが用いられる。中でも、ジアルキルアセタールが好ましく、特にメチラールが好ましい。通常、分子量調節剤は、トリオキサン1molに対して1×10-4mol〜1×10-2mol程度を用いることにより数平均分子量10000〜1000000の重合体を得ることができるが、好ましくは3×10-4mol〜5×10-3mol、さらに好ましくは6×10-4mol〜4×10-3molである。
【0030】
カチオン活性触媒としては、ルイス酸、殊にホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモン等のハロゲン化物、例えば三弗化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化リン、五弗化リン、五弗化ヒ素及び五弗化アンチモン、及びその錯化合物等又は塩の如き化合物、プロトン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸、プロトン酸のエステル、殊にパークロル酸と低級脂肪族アルコールとのエステル、プロトン酸の無水物、殊にパークロル酸と低級脂肪族カルボン酸との混合無水物、或いはイソポリ酸、ヘテロポリ酸、トリエチルオキソニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルヘキサフルオロアルゼナート、アセチルヘキサフルオロボラート等があげられる。中でも三フッ化ホウ素ジエチルエーテル又は、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを、重合原料1molに対し0.00001〜0.0001molの範囲で用いることを好適例として挙げることができる。カチオン活性触媒の量が少なすぎると重合収率が低下し経済的でない。また多すぎると、得られるポリアセタールコポリマーの熱安定性が損なわれるので好ましくない。カチオン活性触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテル又は、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを用いる場合、より好ましくは0.00001〜0.00008molの範囲であり、さらに好ましくは0.00001〜0.00005molの範囲である。
【0031】
連続塊状重合反応を行なうのに用いられる重合装置としては、コニーダー、二軸スクリュー式連続押出混練機、二軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混合機その他、これまでに提案されているトリオキサン等の連続重合装置が使用可能である。
【0032】
カチオン活性触媒を用いた連続塊状重合反応によって得られた粗オキシメチレン重合体に含まれる重合触媒の失活は、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、ホウ酸化合物類、或いは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、有機酸塩等の触媒中和失活剤を含む水溶液及び/または有機溶剤中に投入した後濾過乾燥することにより行われる。この場合、触媒中和失活剤として第4級アンモニウム化合物を単独で用いる、あるいは上記触媒失活剤と併用することも可能で、触媒の中和がより効果的に行われるため好ましい方法である。また、アンモニア、トリエチルアミン等の蒸気と粗オキシメチレン重合体を接触させて触媒を失活させる方法や、ヒンダードアミン類、トリフェニルホスフィン、水酸化カルシウム、ホウ酸化合物あるいは第4級アンモニウム化合物等の少なくとも1種と粗オキシメチレン重合体を混合機で接触させて触媒を失活させる方法も実施可能である。
【0033】
重合触媒失活後の粗オキシメチレン重合体には熱的に不安定な末端部分が存在する為、不安定末端部分の分解除去が実施される。不安定末端部分の分解除去方法としては、例えば(1)塩基性物質の存在下にポリマーを溶融混練する工程、及び(2)分解で発生したホルムアルデヒドを開放除去する工程、という少なくとも2段階の工程からなる方法を挙げることができる。装置としては、上記2段階の工程を連続的に実施できるベント付き1軸スクリュー式押出機やベント付き2軸スクリュー押出機等が好ましく使用される。上記の塩基性物質としてはアンモニアやトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物・無機酸塩・有機酸塩、第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。特に下記式(2)で示される第4級アンモニウム化合物を用いることが、ごく少量の添加量でごく短時間に殆ど不安定末端部分の残っていないオキシメチレン共重合体を得ることができる為最も好ましい。また、上記塩基性物質は水やメタノール共に用いても良いし、2種類以上の塩基性物質を併用することも可能である。
【0034】
[R1 2 3 4 + n -n ・・・・(2)
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
【0035】
第4級アンモニウム化合物は、上記式(2)で表わされるものであれば特に制限はないが、上記式(2)におけるR1 、R2 、R3 、及びR4 が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、この内、更に、R1 、R2 、R3 、及びR4 の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH- )、硫酸(HSO4 -、SO42- )、炭酸(HCO3 - 、CO32- )、ホウ酸(B(OH)4 - )、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、アンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用しても何ら差し支えない。
【0036】
第4級アンモニウム化合物の添加量は、ポリオキシメチレン共重合体に対して、下記式(3)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、好ましくは0.05〜50重量ppmである。
P×14/Q・・・・(3)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリオキシメチレン共重合体に対する濃度(重
量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05重量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下し、50重量ppmを超えると不安定末端部の分解除去後のポリオキシメチレン共重合体の色調が悪化する。第4級アンモニウム化合物の添加方法には特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、溶融前のオキシメチレン共重合体に吹きかける方法、溶融後に添加する方法などがあるが、いずれの添加方法を用いても、ポリマーを溶融処理する工程で存在して居れば良い。
【0037】
以上本発明に用いるポリアセタールコポリマーについて説明したが、このポリアセタールコポリマー100重量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸補足剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤の少なくとも1種を0.01〜5重量部配合することにより本発明のポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。これら配合剤は、不安定末端部分解除去後のポリアセタールコポリマーに添加されるが、配合剤によっては不安定末端分解除去処理と同時に添加することも可能である。
【0038】
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えばn‐オクタデシル‐3‐(3’、5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート、n‐オクタデシル‐3‐(3’‐メチル‐5’‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート、n‐テトラデシル‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート、1,6‐ヘキサンジオール‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]、1,4‐ブタンジオール‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール‐ビス‐[3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]、テトラキス[メチレン‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3、9‐ビス[2‐{3‐(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ}‐1,1‐ジメチルエチル]2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’‐ビス‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’‐テトラメチレン‐ビス‐3‐(3’‐メチル‐5’‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’‐ビス‐[3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N‐サリチロイル‐N’‐サリチリデンヒドラジン、3‐(N‐サリチロイル)アミノ‐1,2,4‐トリアゾール、N,N’‐ビス[2‐{3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド等がある。好ましくは、トリエチレングリコール‐ビス‐[3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]及びテトラキス[メチレン‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1 種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。また、ポリアセタールコポリマー100重量部に対して、0.01〜1重量部配合することが好ましい。
【0039】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物の例としては、ナイロン4ー6、ナイロン6、ナイロン6ー6、ナイロン6ー10、ナイロン6ー12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体としては、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ- β- アラニン共重合体を挙げることができる。これらのホルムアルデヒド反応性窒素
原子を含む重合体は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
【0040】
また、アミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物の例としては、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、メレム、メロン、メラム、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾブアナミン、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート、アンメリン、アセトグアナミン等である。これらのトリアジン誘導体は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合せて用いても良い。上記のホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物の内、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部配合される。
【0041】
ギ酸補足剤としては、上記のアミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの重縮合物、例えばメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等を挙げることができる。他のギ酸補足剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩である。カルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグリセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオ−ル酸、ステアロ−ル酸、12−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、10−ヒドキシ−8−オクタデカン酸、dl−エリスロ−9・10−ジヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。
【0042】
中でも、炭素数12〜22の脂肪酸からなるジ脂肪酸カルシウムが好ましく、具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウム等が挙げられ、特に好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。本発明においては、上記炭素数12〜22の脂肪酸からなるジ脂肪酸カルシウムの中から選ばれる2種以上をポリアセタールコポリマー100重量部に対して、0.01〜0.2重量部配合することが特に有効である。
【0043】
本発明で言う耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の中から選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[ 2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル] ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0044】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネイト、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α、α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
中でも好ましい耐候剤は、2−[ 2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル] ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル) ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメ
チル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。
【0046】
離型剤としては、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸からなるエチレングリコールジ脂肪酸エステルが好ましく、特にエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。本発明においては、これら炭素数12〜22の脂肪酸からなるエチレングリコールジ脂肪酸エステルの中から選ばれる2種以上をポリアセタールコポリマー100重量部に対して、0.01〜0.9重量部配合することが特に有効である。
【0047】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリアセタール樹脂組成物に窒化硼素・タルク・マイカ・アルミナ・ホウ酸化合物等に代表される核剤、無機フィラー・ガラス繊維・ガラスビーズ・カーボン繊維等に代表される補強剤、導電性カーボンブラック・金属粉末・繊維等に代表される導電材、ポリオレフィン樹脂・アクリル樹脂・スチレン樹脂・ポリカーボネート樹脂・未硬化のエポキシ樹脂・またはこれらの変性物等に代表される熱可塑性樹脂、ポリウレタン系エラストマー・ポリエステル系エラストマー・ポリスチレン系エラストマー・ポリアミド系エラストマー等に代表される熱可塑性エラストマー、硫化亜鉛・酸化チタン・硫酸バリウム・チタンイエロー・コバルトブルー等に代表される無機顔料、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系等に代表される有機顔料などを配合することができる。
【0048】
本発明は、ここまでに述べてきたように、耐薬品性及び、薬品存在下での耐冷熱サイクル性に優れ、且つ二次収縮率が小さいポリアセタール樹脂組成物を提供する。更に、これらの優れた特性を利用すべくそのポリアセタール樹脂組成物を射出成形して得られる成形体も提供する。また、このポリアセタール樹脂組成物を押出成形、ブロー成形、または加圧成形して得られる成形体も、射出成形体と同じく耐薬品性及び、薬品存在下での耐冷熱サイクル性に優れ、且つ二次収縮率が小さく、有効に利用できる。
かかる成形体は有機薬品、無機薬品、家庭用薬剤、工業用油類、工業用グリース類、自動車燃料、自動車用油等の薬品存在下で使用される部品として特に有用である。
【0049】
有機薬品の代表例としては、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、オレイン酸、イゲパール、亜麻仁油、ひまし油等が挙げられる。無機薬品の代表例としては、塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、過酸化水素水等が挙げられる。家庭用薬剤の代表例としては、台所用洗剤、クレンザー、浴槽・トイレ用洗剤、シャンプー、リンス、ヘアトニック、ヘアリキッド、シェービングクリーム、シェービングフォーム、シェービングローション、浴用石鹸水、クレゾール石鹸液、コールドパーマ液、シンナー等が挙げられる。工業用油類の代表例としては、エンジン油、ギヤー油、作動油、タービン油、時計油、シリコン油、絶縁油、合成油、防錆油、切削油、真空ポンプ油、スピンドル油等が挙げられる。工業用グリース類の代表例としては、リチューム系、カルシウム系、アルミ系、ファイバー系、モリブデン系、シリコン系等が挙げられる。自動車関係薬品の代表例としては、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、芳香族系ガソリン、メタノール、ガソホール・エタノール系、ガソホール・メタノール系、軽油、灯油、LPG、エンジン油、不凍液、ウォッシャー液、バッテリー液、ラジエータークリーナー、防錆剤、ワックス、道路凍結防止剤等が挙げられ
る。
【0050】
本発明のポリアセタール樹脂成形体は、耐薬品性として、特に有機溶剤ガス透過性に優れている為、有機溶剤ガス透過性が低いという材料特性が要求されるような用途、例えばレギュラーガソリン、ハイオクガソリン、メタノール、メタノール含有ガソリン等に代表される自動車燃料と接触する、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンク、ガソリンタンクフランジ等に代表される自動車燃料廻り部品として特に好適に使用できる。
【0051】
さらに本発明のポリアセタール樹脂成形体は耐薬品性及び、薬品存在下での耐冷熱サイクル性及び、二次収縮率が小さいという優れた特性に加えて、クリープ特性、繰り返し衝撃性、ヒンジ特性、耐摩耗性にも、従来のポリアセタール樹脂と比較して改良された性能を有しており、上記の用途に加えてプリンター及び複写機に代表されるOA機器に使用され、VTR(Video Tape Recorder )およびビデオムービーに代表されるビデオ機器に使用され、カセットプレイヤー、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk )、CD(Conpact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD−R、DVD−RAM(Random Acess Memory )、DVD−Audioを含む〕、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像または情報機器に使用され、携帯電話およびファクシミリに代表される通信機器に使用され、自動車内外装部品に使用され、および使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、および住宅設備機器に代表される工業部品などに使用されるギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、関節、軸、軸受け、キーステム、キートップ、などの機構部品、アウトサートシャーシの樹脂部品、シャーシ、トレーおよび側板にも好適に使用される。特に、クリープ特性、繰り返し衝撃性に優れることが要求されるDVD(digital video disk) に代表される光ディスクドライブのピックアップを駆動させるリードスクリュウに嵌合、摺動する部品、リードスクリュウを回転させるギア、ピックアップを駆動させる為のラックギア、ラックギアに嵌合しそれを駆動させるギアなどの部品として好適に使用される。
【0052】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中の用語及び測定法は以下のとおりである。
<動的粘弾性(貯蔵剛性率(G’(-100))、(G’(-50))))>
東芝(株)製IS−80A射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、射出圧力60kgf/cm2 、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度70℃にて、寸法130mm×13mm×3mmの短冊状の成形体を成形した。この成形体を成形完了後、23℃、湿度50%の環境下に48時間放置した後、動的粘弾性評価装置(レオメトリックス社製、RDA2)を用いて以下の条件で測定し、−100℃における貯蔵剛性率(G’(-100))と−50℃における貯蔵弾性率(G’(-50)))を求めた。
Geometry Type:Torsion Rectangular
(試料の長さ20mm、幅13mm、厚み3mm)
Test Type:Dynamic Temperature Ramp
(ねじり周期6.28rad/s、測定温度範囲−130℃〜150℃、昇温速度3℃/分、ひずみ量0.05%)
【0053】
<結晶化度>
上述の貯蔵弾性率評価用の成形体の中心部から、10mgの樹脂を削り出し、示差熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7)を用い、5℃/分の速度にて200℃まで昇温する過程で発生する発熱ピークから融解熱△H(J/g)を求め、これを文献(’61
Journal of Research:Hoffman, Lauritzen)に記載された結晶化度100%の値(△Hf=222J/g)から以下の式により計算して求めた。
結晶化度(%)=△H/△Hf×100%
【0054】
<ポリアセタールコポリマーの主鎖組成の分析>
ポリアセタールコポリマー5gを30mlの1N塩酸水溶液中、120℃で2時間加熱すると、オキシメチレン単位は全てホルムアルデヒドとなり、オキシアルキレン単位はアルキレングリコールとなる。このアルキレングリコールをガスクロマトグラフィーを用いて分析・定量することで、ポリアセタールコポリマー中のオキシアルキレン単位のシークエンスを表わすnと、n=1の割合及び、オキシアルキレン単位の挿入量を決定した。
<数平均分子量>
GPC(ゲルパーメーションクロマトグラフィー)(溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール)装置(東ソー社製HLC−8120)を用い、数平均分子量(Mn)を低角度レーザー光散乱検出器で検出し、ポリオキシメチレン単分子重合体の標準サンプルから得られた検量線を用いて求めた。
【0055】
<1,3−ジオキソラン中の1,4−ジオキサン含有量(ppm)>
プロットカラム(ポラプロットQ)を装着したガスクロマトグラフィーで水素炎イオン検出器により測定した。
<耐薬品性>
上述の貯蔵弾性率評価用の成形体を、有機溶剤(ガソリン、メタノール濃度15vol%のガソリン、メタノールの3種類を使用)が入ったステンレス製の密閉容器に入れて有機溶剤に浸漬し、60℃で750時間放置した後、試験片の重量増加率(%)を評価した。値が小さい程耐薬品性に優れる。
【0056】
<ガス透過度(g・mm/day/m2 )>
上述の貯蔵弾性率評価用の成形体と同じ射出成形機、射出条件で厚み2mmの試験片を作成した。この試験片で有機溶剤(ガソリン、メタノール濃度15vol%のガソリン、メタノールの3種類を使用)が入ったステンレス製の直径38mmの円筒容器に蓋をする。試験片と円筒容器の間には、有機溶剤ガスが試験片透過以外で減少しないようにパッキンを挿入した。以上のように準備したものを60℃で750時間放置した後、有機溶剤の減少量(g)を測定し、面積1m2、厚さ1mmの試験片を一日当りに透過するガス量を計算で求めてガス透過度(g・mm/day/m2 )とした。値が小さい程ガス透過性に優れる。
<薬品存在下での耐冷熱サイクル性>
上述の貯蔵弾性率評価用の成形体を、有機溶剤(ガソリン、メタノール濃度15vol%のガソリン、メタノールの3種類を使用)が入ったステンレス製の密閉容器に入れて有機溶剤に浸漬し、100℃で20時間放置した後、引き続き20℃で4時間放置するという一連の操作を30回繰り返した後、成形体表面に発生するクラック有無を観察した。クラックの発生が無ければ薬品存在下での耐冷熱サイクル性に優れている。
【0057】
<ESCR:耐ストレスクラッキング性(秒)>
上述の貯蔵弾性率評価用の成形体を、長さが111mmの治具に曲げながら装着し、23℃の2N塩酸水溶液に浸漬後、亀裂が発生して破壊するまでの時間を測定した。破壊するまでの時間が長いほど耐薬品性に優れる。
<二次収縮率(%)>
上述の貯蔵弾性率評価用の成形体と全く同じ条件で試験片を作成した。成形完了後、23℃、湿度50%の環境下に48時間放置した後の流動方向の寸法をD1 (mm)とし、成形完了後、23℃、湿度50%の環境下に72時間放置した後、120℃で5時間加熱
し、その後23℃で48時間放置した後の流動方向の寸法をD2 (mm)として、次式に従い二次収縮率(%)を求めた。
二次収縮率(%)=(D1 −D2 )/金型寸法×100
値が小さい程二次収縮性に優れる。
<%、ppm>
特に断らない限り、全て重量基準である。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整し、12kg/Hrのトリオキサンと、コモノマーとしてメタノール含有率を10ppmに調整した1,3−ジオキソラン150g/Hr(トリオキサン1モルに対して0.015モル)と、分子量調節剤としてメチラール7.0g/Hr(トリオキサン1モルに対して0.7×10-3モル)とを連続的に添加した。さらに、重合触媒として、三フッ化ホウ素が、トリオキサン1モルに対して1.5×10-5モルになるように、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラート1重量%のシクロヘキサン溶液39.6g/Hrを連続的に添加し重合を行った。混合機から排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した。ろ過後のポリアセタールコポリマー100重量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1重量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は窒素の量に換算して20ppmとした。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。この乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100重量部に対して水を0.5重量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間5分で不安定末端部の分解を行った。不安定末端部の分解されたオキシメチレン共重合体はベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出されペレタイズされた。このペレットにさらに表2のNo.1に示した様に配合剤を添加混合し、ベント付き単軸押出機で溶融混錬することにより、最終のポリアセタール樹脂ペレットを得た。このペレットを80℃で3時間乾燥した後、所定の評価を実施した。
【0059】
表1に得られたポリアセタールコポリマー樹脂組成物の特性及びその評価結果をまとめて示した。また、−130℃から160℃までの貯蔵剛性率(G’)の解析チャートを図1に示した。
(実施例2〜11 比較例1〜5)
実施例2〜11及び比較例1〜5は重合に用いる1,3−ジオキソランの量と1,3−ジオキソラン中の1,4−ジオキサン含有量及び、分子量調節剤の量を変えて実施例1と同様の実験を行なった。結果を表1にまとめて示した。
(比較例6)
数平均分子量が61000の市販のポリアセタールホモポリマー(テナック4010)を評価した。結果を表1にまとめて示した。また、−130℃から160℃までの貯蔵剛性率(G’)の解析チャートを図1に示した。
(比較例7)
数平均分子量が63000の市販のオキシメチレン共重合体樹脂(テナック4520)を評価した。結果を表1にまとめて示した。また、−130℃から160℃までの貯蔵剛性率(G’)の解析チャートを図1に示した。
【0060】
また、表3に実施例1及び比較例2で得られたポリアセタールコポリマー樹脂組成物の
繰り返し衝撃性及びクリープ特性を評価した結果を示す。尚、測定は以下の方法により行なった。
〈繰り返し衝撃性〉
貯蔵弾性率特性と全く同じ試験片を図2に示すようにセットし、1.5kgの重りを8cmの高さから落下させることによって試験片に繰り返し衝撃を与え、試験片が破壊されるまでの衝撃回数を測定した。破壊までの衝撃回数が多いほど繰り返し衝撃性に優れる。〈クリープ特性〉
東芝(株)製IS−80A射出成形機を用い、シリンダー温度200°C、射出圧力60kgf/cm2 、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度70°Cにて、寸法110mm×6.5mm×3mmの短冊状の試験片を成形した。この試験片に18MPaの引張応力をかけて80°Cの空気中に放置し、試験片が破壊されるまでの時間を測定した。破壊されるまでの時間が長いほどクリープ特性に優れる。
本発明のポリアセタール樹脂組成物及びその成形体は、耐薬品性、薬品存在下での耐冷熱サイクル性、低二次収縮性に優れると同時に、繰り返し衝撃性及びクリープ特性にも優れていることがわかる。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシメチレン単位(−CH2 O−)の繰り返しからなる重合体中に、下記式(1)のオキシアルキレン単位が挿入された構造を有し、
【化1】

(R0 ,R’0 :同一または異なって水素、アルキル基より選ばれる。nは1以上の整数で、n=1の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上であり、m=2〜6の範囲である。)
射出成形により作成した成形体の動的粘弾性を評価したときの、−100℃における貯蔵弾性率(G’(-100))を、−50℃における貯蔵弾性率(G’(-50)))で除した値が2.4以上であるポリアセタールコポリマー。
【請求項2】
結晶化度が58〜80%の範囲であることを特徴とする請求項1記載のポリアセタールコポリマー。
【請求項3】
重合体中の上記式(1)のオキシアルキレン単位の挿入量が、オキシメチレン単位100mol当たり、0.05mol〜0.80molの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリアセタールコポリマー。
【請求項4】
重合体中の末端基が、アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、フォルメート基からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタールコポリマー。
【請求項5】
数平均分子量が、10,000〜1,000,000の範囲である事を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタールコポリマー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280890(P2010−280890A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157585(P2010−157585)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願平11−258480の分割
【原出願日】平成11年9月13日(1999.9.13)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】