説明

ポリアセタール樹脂組成物

【課題】耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、かつホルムアルデヒドの発生が著しく低減されたポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A) ポリアセタール樹脂100重量部に、(B) 耐候(光)安定剤0.01〜5重量部、(C) ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマー1〜50重量部及び(D) イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物0.01〜5重量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、かつホルムアルデヒドの発生が著しく低減されたポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、ポリアセタール樹脂は、機械的性質、電気的性質などの物理的特性、或いは耐薬品性、耐熱性などの化学的特性の優れたエンジニアリング樹脂として近年きわめて広汎な分野において利用されている。しかし、ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、その材料としての性質にもさらに特殊性が要求される場合がある。
【0003】
このような特殊性の1つとして、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、かつホルムアルデヒドの発生が低減された材料の開発が要望されている。例えば自動車等の内外装品や光学機械等の分野においては、光の反射による目に対する刺激を抑え、高級感を出すこと、光の反射による機器の誤動作を防止すること等を目的として光沢の少ない、即ち光の反射の少ないものが要求される場合が多い。また、一般の電気機器、建材等の分野においても、その目的に応じて各種材料を組み合わせて使用する機会が増加しているが、ポリアセタール樹脂は他の一般的樹脂材料に比べて表面光沢が良好であるが故に、各種材料が組み込まれた製品においては、他種材料との調和感に乏しく、表面外観を重視する分野で使用するためには、光沢の制御されたものが要求される。
【0004】
また、上記のような分野で使用される樹脂成形品は太陽光に曝されるものも多く、樹脂材料には優れた耐候性が要求される。
【0005】
さらに、これらの分野においては、環境衛生上の観点あるいは精密機器に対する好ましくない作用の防止等の観点から、ホルムアルデヒドの発生が著しく低減された樹脂材料が強く要求される。
【0006】
このような要求に対し、低光沢性と耐候性を付与する技術として、ポリアセタール樹脂に耐候(光)安定剤とコアシェルポリマーを配合することが開示されている(特許文献1)。
【0007】
また、ホルムアルデヒドの発生を低減させるために、ポリアセタール樹脂に各種のホルムアルデヒド捕捉剤を配合することが知られており、例えば、ホルムアルデヒド捕捉剤としてオキサゾリン化合物の配合(特許文献2)、グリオキシジウレイド化合物の配合(特許文献3)、ヒドラジド化合物の配合(特許文献4〜6)、グアナミン化合物の配合(特許文献7)等が知られている。
【特許文献1】特開平5−179104号公報
【特許文献2】特開平5−125255号公報
【特許文献3】特開平10−182928号公報
【特許文献4】特開平10−298201号公報
【特許文献5】特開2005−162909号公報
【特許文献6】特開2005−163019号公報
【特許文献7】国際公開WO2004/058875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された組成物によれば、耐候性と低光沢性が併せて付与される。また、特許文献2〜7に開示された組成物により、ホルムアルデヒドの発生量の低減が期待できる。しかしながら、これらの文献に開示された技術では、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、かつホルムアルデヒドの発生量が著しく低減されたポリアセタール樹脂材料を得ることはできない。
【0009】
また、ポリアセタール樹脂に配合する成分の選択や配合量の調整によってこれらの特性を全て兼備した樹脂材料を得ることは、極めて難しい。
【0010】
すなわち、使用する配合成分或いはその組合せによって効果に拮抗作用が生じ、耐候性、低光沢性、低ホルムアルドヒド発生特性の何れかの特性を向上させようとすると他の特性が損なわれる場合が多い。
【0011】
例えば、上記特許文献1に開示された耐候性と低光沢性の樹脂組成物をもとに、各種安定剤成分を配合してホルムアルデヒド発生量の低減を図ろうとすると低光沢性が損なわれる場合が多く、全ての特性を兼備した樹脂材料を得ることができない。
【0012】
本発明は、このような従来技術を改善し、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、かつホルムアルデヒドの発生量が著しく低減されたポリアセタール樹脂材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成し、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、かつホルムアルデヒドの発生量が著しく低減されたポリアセタール樹脂材料を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、耐候(光)安定剤、コアシェルポリマーと共にイソ(チオ)シアネート化合物を配合することによる意外な作用を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
即ち本発明は、
(A) ポリアセタール樹脂100重量部、
(B) 耐候(光)安定剤0.01〜5重量部、
(C) ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマー1〜50重量部及び
(D) イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物0.01〜5重量部
を含有してなるポリアセタール樹脂組成物、およびその成形品に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐候性に優れ、表面光沢が抑制され、かつホルムアルデヒドの発生量が著しく低減されたポリアセタール樹脂材料が提供される。
【0016】
また、本発明において配合するイソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体は、ホルムアルデヒド発生量の低減に寄与すると共に、表面光沢の一層の低減に寄与する。
【0017】
このため、ホルムアルデヒド発生量の低減には有効であるが低光沢性を阻害するような成分を本発明の樹脂組成物に更に配合した場合でも、光沢を十分に低いレベルに維持したままホルムアルデヒド発生量の一層の低減が可能になる。
【0018】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上記の如き優れた特性を生かし、自動車内装部品(例えばレギュレーターハンドル、内装クリップ、ベンチレーターノブ等)、および光学機械、建材、家庭用品等の用途等に好適に使用し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。まず、本発明において用いられるポリアセタール樹脂(A) はオキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を少量有するコポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマーのいずれにてもよく、又、分子が線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであっても良い。またその重合度等に関しても特に制限はない。
【0020】
次に本発明において用いられる耐候(光)安定剤(B) のうち好ましく用いられるものは、(1) ベンゾトリアゾール系化合物、(2) ベンゾフェノン系化合物、(3) 蓚酸アニリド系化合物、(4) 芳香族ベンゾエート系化合物、(5) シアノアクリレート系化合物及び(6) ヒンダードアミン系化合物よりなる群から選ばれた1種又は2種以上である。これらの化合物の例を示すと次のものが挙げられる。
【0021】
まず、(1) ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5' −ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5 −ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5' −ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。特に好ましくは、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールである。
【0022】
次に、(2) ベンゾフェノン系化合物としては、2,4 −ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキシベンジルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0023】
さらに、(3) 蓚酸アニリド系化合物としては、N−(2−エチル−フェニル)−N'−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)蓚酸ジアミド、N−(2−エチル−フェニル)−N'−(2−エトキシ−フェニル)蓚酸ジアミド等が、(4) 芳香族ベンゾエート系化合物としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等が、(5) シアノアクリレート系化合物としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3 −ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3 −ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0024】
また、(6) ヒンダードアミン系化合物とは、立体障害性基を有するピペリジン誘導体で、その例を示せば、4−アセトキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)オキザレート、ビス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6 −ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,2 −ビス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、ビス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレン−1,6−ジルカバメート、ビス(1−メチル−2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、トリス(2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5 −トリカルボキシレート等である。又、高分子量のピペリジン誘導体重縮合物、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6 −テトラメチルピペリジン重縮合物等も使用可能である。好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートである。また、ヒンダードアミン化合物の滲み出しによる外観不良を抑制するためには、3級窒素の立体障害性アミノ基を有するヒンダードアミン化合物、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物を用いることが有効であり好ましい。
【0025】
本発明において、これらの耐候(光)安定剤は1種もしくは2種以上を配合することができるが、前記(1) 〜(5) の耐候(光)安定剤と(6) ヒンダードアミン系化合物との併用が好ましく、さらには(1) ベンゾトリアゾール系化合物と(6) ヒンダードアミン系化合物の併用が最も好ましい。耐候(光)安定剤(B) の配合量はポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対して0.01〜5重量部が適当であり、特に0.02〜3重量部が好ましい。
【0026】
耐候(光)安定剤(B)の配合量が過少の場合には効果が期待できず、又いたずらに過大に添加しても経済的に不利になるのみならず、機械的性質の低下、金型の汚染等の問題点をもたらす結果となる。また、(6) ヒンダードアミン系化合物と(1) 〜(5) の耐候(光)安定剤を併用する場合、その割合((6) ヒンダードアミン系化合物/(1) 〜(5) の耐候(光)安定剤の合計)は、重量比で9/1〜1/9の範囲とするのが好ましい。
【0027】
次に、本発明において用いるコアシェルポリマー(C) は、ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するものであり、例えば、シード乳化重合法のうち、通常、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法によって得られる。
【0028】
コアシェルポリマーが後述の中間相を有する場合においては、先の段階の重合体の中へ後の段階の重合体が侵入するような多段階乳化重合法によって中間相が形成されることもある。
【0029】
粒子発生重合時には、モノマー、界面活性剤および水を反応器へ添加し、次に重合開始剤を添加することにより、乳化重合反応を開始させることが好ましい。第一段目の重合はゴム状ポリマーを形成する反応である。
【0030】
ゴム状ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば共役ジエンまたはアルキル基の炭素数が2〜8であるアルキルアクリレートあるいはそれらの混合物などが挙げられる。
【0031】
これらのモノマーを重合させてゴム状ポリマーを形成する。
【0032】
このような共役ジエンとして、例えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができるが、特にブタジエンが好ましく用いられる。
【0033】
又、アルキル基の炭素数が2〜8であるアルキルアクリレートとして、例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を挙げることができるが、特にブチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0034】
第一段目の重合には共役ジエンおよびアルキルアクリレートなどと共重合可能なモノマー、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート等を共重合させることもできる。
【0035】
第一段目の重合が共役ジエンを含まない場合あるいは共役ジエンを含んでいても第一段目の全モノマー量の20重量%以下である場合は、架橋性モノマーおよびグラフト化モノマーを少量用いることにより高い耐衝撃性をもつポリマーとすることができる。
【0036】
架橋性モノマーとして、例えばジビニルベンゼン等の芳香族ジビニルモノマー、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアルカンポリオールポリアクリレートまたはアルカンポリオールポリメタクリレート等を挙げることができるが、特にブチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレートが好ましく用いられる。グラフト化モノマーとして、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート等の不飽和カルボン酸アリルエステル等を挙げることができるが、特にアリルメタクリレートが好ましく用いられる。このような架橋性モノマー、グラフト化モノマーは、それぞれ第一段目の全モノマー量の0〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲で用いられる。
【0037】
本発明で用いるコアシェルポリマー(C) は、シェル相が含酸素極性基を有するビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーが形成されているものが好ましい。シェル相が含酸素極性基を有するビニル系共重合体で形成されたコアシェルポリマーにより、艶消し効果(光沢低減効果)は一層優れたものになる。
【0038】
このような含酸素極性基としては、例えば水酸基、エーテル結合(−O−)を有する基(例えばグリシジル基)、アミド基(−CONH−)、
【0039】
【化1】

【0040】
及びニトロ基(−NO2)などが挙げられるが、特に水酸基及びエーテル結合を有する基が好ましい。
【0041】
上記含酸素極性基を有するビニル系共重合体を構成するモノマーとしては、例えば分子内に2個以上の含酸素極性基を有するアルコールの(メタ)アクリレートが用いられる。ここで分子内に2個以上の含酸素極性基を有するアルコールとは、アルコール部分の水酸基以外に少なくとも1個の含酸素極性基を有するアルコールを示す。含酸素極性基を有するアルコールの(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば水酸基および/またはグリシジル基を有するアルコールの(メタ)アクリレートが用いられる。水酸基を有するアルコールの(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができるが、好ましくはヒドロキシエチルメタクリレートが用いられる。グリシジル基を有するアルコールの(メタ)アクリレートとしては、例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどを挙げることができるが、好ましくはグリシジルメタクリレートが用いられる。また、上記の(メタ)アクリレート以外の、例えばアリロキシエタノール、アリルグリシジルエーテル等の含酸素極性基を有するビニル単量体も、含酸素極性基を有するビニル系共重合体の構成成分として用いることができる。含酸素極性基を有する前記モノマー以外のガラス状ポリマーを構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル、芳香族ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、シアン化ビニリデン等のビニル重合性モノマーを挙げることができるが、特に好ましくはメチルメタクリレート、スチレン−アクリロニトリル等が用いられる。このシェル相はコアシェルポリマー全体の10〜50重量%の範囲が好ましい。このシェル相がこの重量範囲よりも少ないときは、耐候性を損なう恐れがあり、又、越えて多いときは、生成するコアシェルポリマーを溶融混合して得られる樹脂組成物の機械的性質が十分でないことがある。
【0042】
また、第一段と最終の重合相の間には中間相が存在していてもよい。例えば、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのような官能基を有する重合モノマー、メチルメタクリレートなどのようなガラス状ポリマーを形成する重合モノマー、ブチルアクリレートなどのゴム状ポリマーを形成する重合モノマーなどをシード乳化重合することによって中間相が形成される。このような中間相は所望のコアシェルポリマーの性質によって種々選択することができる。
【0043】
このような中間相を有するコアシェルポリマーの構造は、例えばコアとシェルの間にもう一つの層が存在している多層系構造をとるものや、中間相がコア中で細かな粒状となって分散しているサラミ構造をとるものが挙げられる。サラミ構造を有するコアシェルポリマーにおいては更に極端な場合は、分散するべき中間相がコアの中心部において新たな芯を形成していることもある。このような構造のコアシェルポリマーはスチレンに代表されるモノマーを中間相構成モノマーとして使用した場合に生じることがある。また、中間相を有するコアシェルポリマーを使用した場合、耐衝撃性の改良、曲げ弾性率の向上、熱変形温度の上昇、外観(表面剥離およびパール光沢の抑制、屈折率変化による色調の変化)が改善されることがある。
【0044】
本発明で用いるコアシェルポリマーのための乳化重合は、例えばノニオン性界面活性剤、オリゴマー型アニオン性またはオリゴマー型ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤や例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤等の重合開始剤を用いて行われる。ここで用いられるノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのエーテル型、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのエステル型、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステル型、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのブロックポリマー型など広く一般に使用されているノニオン性界面活性剤のほとんどが使用可能である。また、オリゴマー型アニオン性またはオリゴマー型ノニオン性界面活性剤とは、従来、特殊用途で乳化重合物に用いられてきたオリゴマー型界面活性剤であり、例えば下記式のオリゴマー型界面活性剤が用いられる。
【0045】
【化2】

【0046】
該オリゴマー型界面活性剤は、既に水溶性であるか、または酸化物、水酸化物またはアルコールと反応させて水溶性塩に転換される。上記水溶性塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第III族重金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩等が挙げられるが、特にアンモニウム塩が好ましい。該オリゴマー型界面活性剤は、例えば特公昭47−34832 号公報等に記載されているように、アルキルメルカプタンの存在下、適切な単量体を、水を含まない溶媒中で付加重合するか、または次いで過酸化水素またはオゾンを用いて、相当するスルホキシドまたはスルホンヘ酸化することにより得られる。上記アルキルメルカプタンとしては、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが用いられる。上記単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、β−メチルアクリル酸、α,β−ジメチルアクリル酸、カプロン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルアルコール、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、エチルアクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、N −イソプロピルアクリルアミド、N −エチルアクリルアミド、N −メチルアクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、N −メチロールアクリルアミド等の分子中に1ケ以上の極性基を有するα,β−エチレン系不飽和単量体が用いられる。付加重合の際に用いられる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルカノールが好ましい。通常、上記付加重合は20〜100℃程度の範囲で行われる。本発明で用いるコアシェルポリマーの製造において、界面活性剤の添加量は、界面活性剤の粒子安定化能力によって適宜選択される。重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2'−アゾビス(2−アミノプロパン)二塩酸塩などのアゾ系重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系重合開始剤が単独または2種以上を組み合わせて用いられる。前記ノニオン性界面活性剤および/またはオリゴマー型界面活性剤と、アゾ系および/または過酸化物系重合開始剤を使用するような反応系で乳化重合を行えば、実質的に硫黄酸化化合物を含まないか、含んでいても極く少量であるコアシェルポリマーが得られる。ここで硫黄酸化化合物(例えば硫酸塩、硫酸エステル塩、過硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩等)の含有量は通常の硫黄酸化化合物の定性試験によって検出されない程度のことを示す。例えば、その測定方法としては、試料(コアシェルポリマー)5gを50ml三角フラスコに秤量し、イオン交換水20mlを加えてマグネチックスターラーで3時間撹拌し、次いで、No.5Cろ紙でろ過したろ液を二分して、一方に1%塩化バリウム水溶液0.5mlを加え、濁りの発生を比較観察する方法(硫酸イオンの定性試験)があげられる。
【0047】
この実質的に硫黄酸化化合物を含まないコアシェルポリマーは、安定にポリアセタール樹脂に溶融ブレンドされ、該ポリアセタール樹脂組成物は艶消し、熱的安定性、耐衝撃性、伸び等に優れたものとなる。
【0048】
本発明で用いるコアシェルポリマーは、例えば、次のような方法により、粒状、フレーク状あるいは粉末状として取り出すことができる。
(1) 前述の界面活性剤および重合開始剤を用いて、公知のシード乳化重合法によりラテックスを製造する。
(2) 次に該ラテックスを凍結融解によりポリマーを分離する。
(3) 続いて、遠心脱水、乾燥する。
【0049】
このような取り出し操作によって、乳化重合中に使用した溶媒や界面活性剤などの多くを除くことができる。あるいは、(2) の段階でラテックスをそのまま乾燥して用いることもできる。また、スプレイ・ドライヤーによる噴霧乾燥方法も、ラテックスからコアシェルポリマーを取り出す方法の一つである。こうして取り出されたコアシェルポリマーはさらに押出機、およびペレタイザーによりペレット状にしてもよいし、あるいはそのままで樹脂に溶融混合することができる。
【0050】
本発明において、ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対するコアシェルポリマー(C) の添加量は1〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。コアシェルポリマーの添加量が少なすぎると表面光沢低下効果が十分発揮されず、またいたずらに過大に添加しても、機械的性質特に剛性の大巾低下が認められ、また、熱安定性に好ましくない影響が生じる。
かかるコアシェルポリマー(C) はポリアセタール樹脂中に耐候(光)安定剤(B) と併用して添加配合することにより、得られた成形品表面の光沢が均一に低下し、落ち着きのある高級感をもたせると同時に耐候性を相乗的に向上させる。更に、ポリアセタール樹脂の持つ優れた機械的性質を保持する。かかる光沢性の低減効果はコアシェルポリマーをポリアセタール樹脂中に添加配合して得られる成形品では、その表面にコアシェルポリマーが0.5〜2μm程度の粒子状で分散し、ポリアセタール樹脂表面を粗くすると同時に含酸素極性基が表面に均一に分散しており、ポリアセタール樹脂成形品の表面を改質し、低光沢になるものと考えられる。表面光沢の度合いは、実用上好ましくは後記測定法(鏡面金型使用)による光沢度が25%以下のもの、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下のものである。
【0051】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上記(A) 〜(C) 成分に加えて更にイソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物(D) を添加配合するところに特徴があり、かかる化合物(D) の配合により、(A) 〜(C) 成分によって達成される優れた耐候性と低光沢性を維持しながら、ホルムアルデヒドの発生量を著しく低減したものである。
【0052】
また、化合物(D) の配合は、光沢を一層低下させる機能を有する。
【0053】
このため、(A) 〜(D) 成分からなる本発明の樹脂組成物に他の成分を配合しても、低光沢性が大きく損なわれることが少ない。
【0054】
例えば、前記(A) 〜(C) 成分からなり優れた耐候性と低光沢性を有する組成物に、ホルムアルデヒド発生量の低減を目的としてグアナミン化合物、ヒドラジド化合物、トリアジン化合物等の各種のホルムアルデヒド捕捉剤を配合すると低光沢性が損なわれるが、(D) 成分をも含む本発明の樹脂組成物にかかるホルムアルデヒド捕捉剤を配合しても低光沢性が損なわれることがなく、低光沢性を維持したままホルムアルデヒドの発生量の一層の低減が可能となり好ましい。化合物(D) の配合による上記のような効果は、予期できないものであった。
【0055】
かかる目的で用いられる化合物(D)としては、一般式O=C=N-R-N=C=O(R;2価の基)で表されるイソシアネート化合物、S=C=N-R-N=C=S (R;2価の基)で表されるイソチオシオネート化合物、及びそれらの変性体が好ましい。
【0056】
例えば、イソシアネート化合物としては4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートが、またイソチオシオネート化合物としては上記イソシアネート化合物に対応するジイソチオネートが、また変性体としてはこれらのイソシアネート化合物或いはイソチオシオネート化合物の二量体、三量体、さらにはイソシアネート基(-NCO) がなんらかの形で保護されている化合物等が挙げられ、これらはいずれも有効であるが、溶融処理等の変色度等の諸性質、あるいは取扱い上の安全性を考慮すると、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,5 −ナフタレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート並びにこれらの二量体、三量体等の変性体(又は誘導体)が特に望ましい。
【0057】
かかるイソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物(D) は、イソシアネート基に直接ホルムアルデヒドが化学的に結合を形成し、ホルムアルデヒド発生を低減させるものと推測される。
【0058】
また、(A) 〜(C) 成分の溶融混練の際に化合物(D) が存在することにより、(D) 成分がポリアセタール樹脂(A) 及びコアシェルポリマー (C)と反応し、場合により一部三次元化構造をとり、(A) 、(C) 両者の親和性、界面の密着性が向上し、コアシェルポリマー(C) がほぼ均一分散することによって低光沢性の保持機能が生じているものと推測される。
【0059】
本発明において、イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれたかかる化合物(D) の配合量は、ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜1重量部である。
【0060】
(D) 成分の量が少なすぎるとホルムアルデヒド低減効果が生じず、また、ポリアセタール樹脂とコアシェルポリマーの界面の密着性が不十分なものとなって、低光沢性の保持機能を発揮しなくなる。逆に(D) 成分を過剰に添加しすぎると、混練操作に支障をきたす原因となる。
【0061】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、さらに各種の安定剤や添加剤を配合することができる。
【0062】
例えば、酸化分解に対する安定性を高めるために、ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対してヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜3重量部配合するのが好ましい。また、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物、トリアジン化合物、ポリアミド等のホルムアルデヒド捕捉機能を有する窒素含有化合物を、ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対して0.01〜3重量部の割合で配合するのも好ましいことである。好ましい窒素含有化合物は、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物、トリアジン化合物である。前述したように、これらの化合物の添加は、ホルムアルデヒド発生量の低減には寄与するものであるが、耐候性及び低光沢性を付与するために耐候(光)安定剤(B) とコアシェルポリマー(C) を配合したポリアセタール樹脂にかかる窒素含有化合物を配合すると、低光沢性や耐候性を損ねるものとなる。これに対し、耐候(光)安安定剤(B) 及びコアシェルポリマー(C) と共に、イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれたかかる化合物(D) を配合した本発明のポリアセタール樹脂組成物においては、上記のような窒素含有化合物を配合しても低光沢性や耐候性が損なわれることなくホルムアルデヒド発生量の低減機能が発揮され、極めて好ましいものである。
【0063】
また、熱安定性を向上させるため、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、無機酸塩、脂肪酸塩を配合するのも好ましい。また、脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、多価アルコール及びポリアルキレングリコールから選ばれた化合物の1種または2種以上を、ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対して0.01〜5重量部配合することにより、本発明の目的物性の1つである耐候性を補助的に向上させることができる。
【0064】
また、本発明の組成物には、ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対して0.1〜10重量部の着色成分を配合するのが好ましい。着色成分としては特に制限はなく、例えばアントラキノン系の染料、アゾ系、フタロシアニン系、ペリレン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インドリン系、チタン系、酸化鉄系およびコバルト系の顔料、カーボンブラック等の使用が可能であるが、特に、着色成分としてカーボンブラックを配合した場合、耐候性を一層向上させる効果がある。
【0065】
本発明の組成物には、更にその目的に応じて所望の特性を付与するため、従来公知の各種の添加剤、例えば滑剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、有機高分子材料や、繊維状、粉粒状及び板状の各種充填剤等を配合することが可能である。
【0066】
本発明の組成物は、樹脂組成物の調製法として公知の設備と方法により調製することができる。例えば、組成物を構成する全ての成分を混合して所定組成の混合物を得る方法、組成物を構成する全ての成分の混合物を1軸又は2軸の押出機に供給し、溶融混練してペレット状の組成物を得る方法、前記において組成物を構成する成分の一部を押出機の途中から供給し、溶融混練してペレット状の組成物を得る方法、組成物を構成する一部の成分を予め溶融混練した組成物(マスターバッチ)を調製しておき、これを残余成分と混合して所定組成の混合物とする方法、前記混合物を押出機で溶融混練してペレット状の組成物を得る方法、組成の異なる2種またはそれ以上の組成物を調製しておき、これを混合して所定組成の混合物とする方法、前記混合物を押出機で溶融混練してペレット状の組成物を得る方法等がいずれも可能である。また、このような組成物の調製方法において、各成分の分散混合を良くするために構成成分の一部又は全部を粉砕して使用するのが有効である。
【0067】
このようにして調製された本発明のポリアセタール樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形等、従来から知られた各種の成形方法によって成形することができる。
【0068】
このようにして成形された本発明のポリアセタール樹脂組成物からなる成形品は、その表面光沢が十分に抑制されたものであり、その表面光沢の度合いは、後記実施例に記載した測定法(鏡面金型使用)による光沢度が25%以下、好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下のものである。
【0069】
また、最近の自動車分野においては、内装に高級感を持たせるため、又、手触りを良くするために、内装部品の大部分に皮シボ・梨地シボと呼ばれるシボ加工が施されており、鏡面での低光沢化をすると同時に、シボ加工面への高い転写性が必要となる。
【0070】
通常のポリアセタール樹脂では結晶性が高いためか、このような要求に応えることができないのに対し、本発明のポリアセタール組成物においては、配合成分の作用によって成形品表面が改質されることにより、シボ加工面への転写性が非常に良くなり、シボ成形表面での光沢は更に一層低下する。
【0071】
本発明の成形品としては、金型内面の一部または全部にシボ加工が施された金型を用いて成形され、表面の一部または全部がシボ形状をしている成形品が好ましい。金型内面のシボ加工は化学エッチングなどの腐蝕加工、放電加工などにより行うことができ、シボ模様の表面粗さは目的とする成形品の外観に応じて選択し得る。
【実施例】
【0072】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」はすべて重量部を表す。また、実施例及び比較例において評価した諸特性及びその評価方法は以下の通りである。
(1)成形品の表面特性(表面光沢度)
鏡面金型を使用し、下記条件で試験片(70mm×50mm×3mm厚さ)を成形した。
【0073】
*成形機 :住友重機械工業(株) SG50 SYCAP-M
*成形条件:
シリンダー温度(℃) ノズル−C1 −C2 −C3
200 200 180 160
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
金型温度 80(℃)
〈表面光沢度〉
鏡面金型で成形した試験片について、JIS K7105 の光沢度測定に準拠し、携帯光沢計(スガ試験機(株)製 HG-246 )にて45度−45度反射における光沢度を測定した。
(2)耐候性
上記において鏡面金型を用いて成形した試験片を使用し、紫外線フェードメータ(スガ試験機(株)製FAL-AU・H ・B ・Em型)を用いて、ブラックパネル温度83℃で紫外線を照射し、下記の基準でクラック発生及び表面状態の変化を評価した。
〈クラックの有無〉
試験片に紫外線を所定の条件で所定時間(400時間、600時間、800時間、1000時間)照射し、試験片表面のクラック発生の有無を50倍の顕微鏡で観察し、クラックの有無を下記の基準で評価した。
○ :未発生
△ :顕微鏡(50倍)観察による極小クラック発生
▲ :顕微鏡(50倍)観察によるクラック発生
× :一部目視クラック発生
××:全面目視クラック発生
〈表面状態の変化〉
試験片に紫外線を所定の条件で所定時間(400時間、600時間、800時間、1000時間)照射し、照射前後における試験片の色相の変化を測定した。数字が小さいほど変化少、即ち変色が少ないことを意味する。
(3)成形品からのホルムアルデヒド発生量
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件で平板状試験片(100mm×40mm×2mm厚さ)を成形した。この平板状試験片2枚(総重量約22gを精秤)を、蒸留水50mlを含むポリエチレン製瓶(容量1L)の蓋に吊下げて密閉し、恒温槽内に温度60℃で3時間放置した後、室温で1時間静置した。平板状試験片から発生してポリエチレン製瓶中の蒸留水に吸収されたホルムアルデヒド量をJIS K0102,29(ホルムアルデヒドの項)に従って定量し、試験片単位重量当たりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
【0074】
*成形機 :(株)日本製鋼所 J75E-P
*成形条件:
シリンダー温度(℃) ノズル−C1 −C2 −C3
190 190 180 160
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
金型温度 50(℃)
実施例1〜8
ポリアセタール樹脂(A) に、耐候安定剤(B) 、コアシェルポリマー(C) 、およびイソシアネート化合物(D) を表1に示す組成で配合し、さらに必要に応じてヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉機能を有する窒素含有化合物、滑剤などを配合し、30mm2軸押出し機を用いて溶融混練しペレット状の組成物を調製した。次いで、このペレットから、射出成形機を用いて前述の成形条件(1)にて試験片を成形し、成形品の表面特性(表面状態および表面光沢度)、耐候性を評価した。また、射出成形機を用いて前述の成形条件(3)にて試験片を成形し、成形品からのホルムアルデヒド量発生を測定した。その結果を表2に示す。
比較例1〜8
表1に示す如く、前記実施例で配合した耐候安定剤(B) 、コアシェルポリマー(C) 、イソシアネート化合物(D) の何れか1成分または複数成分を配合しない以外は実施例と同様にして組成物を調製し、その特性を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
尚、実施例および比較例で使用した化合物は以下の通りである。
・ポリアセタール樹脂(A)
A−1:ポリアセタール共重合体(ポリプラスチックス(株)製)、ヘミホルマール末端基量=0.38mmol/kg、ホルミル末端基量=0.03mmol/kg、メルトインデックス(190℃、荷重2160g)=9g/10分のポリアセタール共重合体
・耐候安定剤(B)
B−1:2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(商品名TINUVIN234)
B−2:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名TINUVIN770DF)
B−3:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物(商品名アデカスタブLA-63P)
・コアシェルポリマー(C)
C−1:アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル共重合物(ガンツ化成(株)製、スタフィロイドPO−0935)
・イソシアネート化合物(D)
D−1:イソホロンジイソシネナート(三量体)(商品名VESTANAT T1890/100)
・窒素含有化合物(E)
E−1:メラミン
E−2:ベンゾグアナミン((株)日本触媒製)
E−3:1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(味の素ファインテクノ(株)製)
・酸化防止剤(F)
F−1:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名IRGANOX1010)
・滑剤(G)
G−1:エチレンビスステアリルアミド、
・その他の安定剤(H)
H−1:12ヒドロキシステアリン酸カルシウム
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) ポリアセタール樹脂100重量部、
(B) 耐候(光)安定剤0.01〜5重量部、
(C) ゴム状ポリマーのコアとビニル系共重合体からなるガラス状ポリマーのシェルとを有するコアシェルポリマー1〜50重量部及び
(D) イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物及びそれらの変性体からなる群から選ばれた化合物0.01〜5重量部
を含有してなるポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
耐候(光)安定剤(B) が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、蓚酸アニリド系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物及びヒンダードアミン系化合物よりなる群から選ばれた化合物の1種または2種以上である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
耐候(光)安定剤(B) が、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、蓚酸アニリド系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物及びシアノアクリレート系化合物よりなる群から選ばれた化合物の1種又は2種以上とヒンダードアミン系化合物とを併用してなるものである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
ヒンダードアミン系化合物が、3級窒素の立体障害性アミノ基を有するものである請求項3記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
コアシェルポリマー(C) のシェルを形成するガラス状ポリマーが含酸素極性基を有するビニル系共重合体からなるものである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
含酸素極性基を有するビニル系共重合体が、含酸素極性基を有するアルコールの(メタ)アクリレートの重合によって形成される単位を有するものである請求項5記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
含酸素極性基が、水酸基および/またはグリシジル基である請求項5又は6記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
含酸素極性基を有するアルコールの(メタ)アクリレートが、ヒドロキシエチルメタクリレート又はグリシジルメタクリレートである請求項5記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項9】
コアシェルポリマー(C) が、ノニオン性界面活性剤またはオリゴマー型界面活性剤を用いた乳化重合により得られるものである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項10】
化合物(D) が、ジイソシアネート化合物、ジイソチオシアネート化合物、それらの二量体および三量体から選ばれたものである請求項1〜9のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項11】
化合物(D) が、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,5 −ナフタレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート、これらの二量体及びこれらの三量体から選ばれたものである請求項1〜9のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項12】
ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対し、更にヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜3重量部含むものである請求項1〜11のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項13】
ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対し、更にグアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びトリアジン化合物から選ばれた化合物の1種または2種以上を0.01〜3重量部含むものである請求項1〜12のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項14】
ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対し、更に脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、多価アルコール及びポリアルキレングリコールから選ばれた化合物の1種または2種以上を0.01〜5重量部含むものである請求項1〜13のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項15】
ポリアセタール樹脂(A) 100重量部に対し、更に着色成分0.1〜10重量部を含むものである請求項1〜14のいずれか1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項記載の組成物を成形してなるポリアセタール樹脂成形品。
【請求項17】
本文記載の方法(鏡面金型使用)により測定した表面光沢度が25%以下である請求項16に記載のポリアセタール樹脂成形品。
【請求項18】
請求項1〜15の何れか1項記載の組成物を成形してなり、表面の一部又は全部にシボ形状を有するポリアセタール樹脂成形品。

【公開番号】特開2008−81530(P2008−81530A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260026(P2006−260026)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】