説明

ポリアセタール樹脂組成物

【課題】ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるポリアセタール樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)が0.01〜3質量部の割合で配合されているポリアセタール樹脂組成物。
【化1】


(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックスのポリアセタール樹脂は、優れた機械的性質、摺動特性、摩擦・磨耗特性、耐熱性、成形加工性などを有している。このため、ポリアセタール樹脂を含むポリアセタール樹脂組成物は、自動車、OA機器などの各種機械部品や電気部品等に広く用いられている。
【0003】
ところが、ポリアセタール樹脂は、その主原料にホルムアルデヒドを使用するため、加工成形時等における熱履歴によって僅かながら熱分解反応を起こし、極めて微量ながらもホルムアルデヒドを発生させる。ここで、ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群等を引き起こす可能性があるとされているため、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができるポリアセタール樹脂組成物が求められていた。
【0004】
このようなポリアセタール樹脂組成物として、下記特許文献1に開示されるものが知られている。下記特許文献1には、ポリアセタール樹脂に、着色剤、ポリアミド樹脂、ジヒドラジド化合物及び立体障害性フェノール化合物をそれぞれ所定の割合で配合してなるポリアセタール樹脂組成物により、ホルムアルデヒドの発生を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−84140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポリアセタール樹脂組成物を成形加工する際には金型が使用される。このとき、金型は、成形加工時の熱分解反応によって生成される化合物の付着により汚染されることがある。この汚染された金型を用いて繰り返し成形品を製造すると、金型に付着した付着物が、後に成形される成形品に異物として転写され、最悪の場合、成形品を廃棄することが必要となる。成形品の廃棄は成形品の歩留まり低下につながるため、金型の汚染を抑制できるポリアセタール樹脂組成物が望ましい。
【0007】
しかし、特許文献1記載のポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒド発生の抑制、または、成形加工時の金型汚染の抑制の点で未だ改善の余地があった。このため、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるポリアセタール樹脂組成物が求められていた。
【0008】
本発明は、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるポリアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリアセタール樹脂に対してインダンジオン化合物を特定の配合割合で配合させることにより、ホルムアルデヒドの発生と、成形加工時の金型汚染とを同時に且つ効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)が0.01〜3質量部の割合で配合されているポリアセタール樹脂組成物である。
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0011】
このポリアセタール樹脂組成物によれば、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できる。
【0012】
上記ポリアセタール樹脂組成物において、前記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)が0.01〜1質量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0013】
この場合、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染をより効果的に抑制できる。
【0014】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、立体障害性フェノール化合物(C)が0.01〜1質量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0015】
立体障害性フェノール化合物(C)の配合量が上記範囲内にあると、配合量が0.01質量部未満である場合に比べて熱分解抑制効果がより高くなり、その結果、成形品からのホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制することができる。また立体障害性フェノール化合物(C)の配合量が上記範囲内にあると、配合量が1質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物からなる成形品表面からのブリードがより十分に抑制される。
【0016】
上記ポリアセタール樹脂組成物においては、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、アミノ置換トリアジン化合物(D)が0.01〜7質量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0017】
この場合、アミノ置換トリアジン化合物(D)の配合割合が上記範囲を外れる場合に比べて、熱分解抑制効果がより向上し、ホルムアルデヒドの発生がより十分に抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できるポリアセタール樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)が0.01〜3質量部の割合で配合されているポリアセタール樹脂組成物である。
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0021】
このポリアセタール樹脂組成物によれば、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できる。
【0022】
以下、上記ポリアセタール樹脂(A)および上記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)について詳細に説明する。
【0023】
(A)ポリアセタール樹脂
ポリアセタール樹脂(A)は、2価のオキシメチレン基を構成単位として含むものである。本発明に用いるポリアセタール樹脂(A)は、この構成単位のみからなるアセタールホモポリマー以外に、オキシメチレン基以外の繰り返し構成単位を1種以上含むコポリマー(ブロックコポリマー)やターポリマー等も含む。
【0024】
上記ポリアセタール樹脂(A)を製造するためには通常、トリオキサンを含む主原料が用いられる。主原料は、上記アセタールホモポリマーを製造する場合には、トリオキサンのみで構成される。上記コポリマーやターポリマーを製造する場合には、主原料は、トリオキサンのほか、コモノマーをも含む。
【0025】
コポリマーやターポリマーの製造に用いるコモノマーとしては、環状ホルマールやエーテルが挙げられる。具体例としては、1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、2−プロピル−1,3−ジオキソラン、2−ブチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−フェニル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−ブチルオキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−フェノキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−クロルメチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキカビシクロ[3,4.0]ノナン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、プチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキシタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、およびオキセパン等が挙げられる。これらの中でも1,3一ジオキソランが特に好ましい。
【0026】
コモノマーの添加量は、トリオキサン100質量部に対して0.2〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20質量部である。コモノマーの添加量が上記範囲内であると、30質量部より多い場合に比べて重合収率がより高くなり、0.2質量部より少ない場合に比べて、熱安定性がより向上する。
【0027】
(B)インダンジオン化合物
インダンジオン化合物(B)を示す上記一般式(1)において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの1〜10個の炭素原子数を有するものが挙げられる。
【0028】
インダンジオン化合物(B)を示す上記一般式(1)において、アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基及びナフチル基などが挙げられる。
【0029】
インダンジオン化合物(B)としては、例えば1,3−インダンジオンなどが挙げられる。
【0030】
上記インダンジオン化合物(B)は1種類を単独で使用しても、2種以上混合して用いても良い。本発明のポリアセタール樹脂組成物において、インダンジオン化合物(B)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜3質量部である。
【0031】
インダンジオン化合物(B)の配合量が0.01質量部未満であると、ホルムアルデヒドを十分に抑制することができなくなる。一方、インダンジオン化合物(B)の配合量が3質量部を超えると、金型付着物が増加し、金型の汚染を十分に抑制することができない。その結果、樹脂成形品の歩留まりが低下する。
【0032】
上記ポリアセタール樹脂組成物において、前記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)が0.01〜1質量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0033】
この場合、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染をより効果的に抑制できる。
【0034】
本発明のポリアセタール樹脂組成物においては、上記(A)及び(B)成分が必須成分として配合されているが、さらにポリアセタール樹脂100質量部に対して立体障害性フェノール化合物(C)及びアミノ置換トリアジン化合物(D)の少なくとも一方がさらに配合されてもよい。
【0035】
(C)立体障害性フェノール化合物
立体障害性フェノール(ヒンダードフェノール)化合物(C)とは、下記一般式(2)で示されるフェノール性水酸基に対するオルト位に置換基を有する構造を分子内に少なくとも一個有する化合物をいう。
【化3】

【0036】
一般式(2)において、R及びRは、各々独立して、置換又は非置換のアルキル基を示す。
【0037】
、Rが示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基等炭素数1〜6のものが挙げられる。なかでもt−ブチル基のような嵩高い分岐アルキル基が好ましく、R、Rのうちの少なくとも一つはこのような分岐アルキル基であることが好ましい。置換アルキル基としては、非置換アルキル基の水素原子を塩素等のハロゲン原子で置換したものを用いることができる。
【0038】
本発明に用いる立体障害性フェノール化合物(C)としては、例えば2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミン、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファ−ビシクロ〔2,2,2〕−オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリト−ル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2'−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0039】
これらのなかでも好ましいのは,N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)のような下記一般式(3)で示される構造を有する化合物である。
【化4】

【0040】
一般式(3)において、R及びRは、それぞれ、一般式(2)のR及びRと同義である。
【0041】
また、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2'−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のような、3−位に3,5−ジアルキルー4−ヒドロキシフェニル基を有するプロピオン酸と多価アルコールのエステルも好ましい。
【0042】
立体障害性フェノール化合物(C)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し0.01〜1質量部であることが好ましい。
【0043】
立体障害性フェノール化合物(C)の配合量が上記範囲内にあると、配合量が0.01質量部未満である場合に比べて熱分解抑制効果がより高くなり、その結果、成形品からのホルムアルデヒドの発生をより十分に抑制することができる。また立体障害性フェノール化合物(C)の配合量が上記範囲内にあると、配合量が1質量部を超える場合に比べて、ポリアセタール樹脂組成物からなる成形品表面からのブリードをより十分に抑制することができる。立体障害性フェノール化合物(C)の配合量は、好ましくはポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し0.1〜0.5質量部である。
【0044】
(D)アミノ置換トリアジン化合物
本発明のポリアセタール樹脂組成物に使用されるアミノ置換トリアジン化合物(D)とは、基本的には、下記一般式(4)で示される構造を有する置換トリアジン類、または該置換トリアジン類とホルムアルデヒドとの初期重縮合物である。
【化5】

(上記一般式(4)において、R11、R12、R13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アミノ基または置換アミノ基を示し、その少なくとも一つは、アミノ基、または置換アミノ基を表す。)
【0045】
アミノ置換トリアジン化合物、または、アミン置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの初期重縮合物の具体例としては、例えばグアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)、または、それらとホルムアルデヒドとの初期重縮合物等が挙げられる。中でも、メラミン、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
【0046】
アミノ置換トリアジン化合物は単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。本発明のポリアセタール樹脂組成物において、アミノ置換トリアジン化合物(D)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、好ましくは0.01〜7質量部である。この場合、アミノ置換トリアジン化合物(D)の配合割合が上記範囲を外れる場合に比べて、熱分解抑制効果がより向上し、ホルムアルデヒドの発生がより十分に抑制される。アミノ置換トリアジン化合物(D)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0047】
ポリアセタール樹脂組成物には、上記(A)〜(D)成分のほか、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、着色剤、核剤、可塑剤、蛍光増白剤、摺動剤、ポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、高級脂肪酸塩、ペンゾトリアゾール系若しくはペンゾフェノン系化合物のような紫外線吸収剤、又はヒンダードアミン系のような光安定剤等の添加剤をさらに添加してもよい。
【0048】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、例えばホルムアルデヒドの発生が十分に抑制されていることから、いわゆるシックハウス症候群対策として、自動車内装部品、家屋等の内装部品(熱水混合栓等)、衣料部品(ファスナー、ベルトバックル等)や建材用途(配管、ポンプ部品等)、機械部品(歯車等)などに有用である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例および比較例で使用した材料は下記の通りである。
(A)ポリアセタール樹脂(POM)
トリオキサンと1,3−ジオキソランとを、POM中の1,3−ジオキソランの含有率が4.2質量%となるように共重合して得られたアセタールコポリマーであって、メルトインデックス(ASTM−D1238規格:190℃、2.16Kg)が10.5g/10分であるアセタールコポリマー
(B)インダンジオン化合物
1,3−インダンジオン
(C)立体障害性フェノール化合物
イルガノックス245:トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、BASF社製
(D)アミノ置換トリアジン化合物
メラミン
【0051】
(実施例1〜8及び比較例1〜3)
ポリアセタール樹脂(A)、インダンジオン化合物(B)、立体障害性フェノール化合物(C)及びアミノ置換トリアジン化合物(D)を表1及び表2に示す配合割合で、川田製作所社製スーパーミキサーを用いて均一に混合したのち、常法に従って2軸押出機(池貝鉄工社製PCM−30、スクリュー径30mm)を用いて、スクリュー回転数120rpm、シリンダー設定温度190℃の条件下で溶融混練したのち、ストランドに押出し、ペレタイザーにてカットすることでポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。なお、表1及び表2において、配合量の単位は質量部である。
【0052】
[特性評価]
(1)ホルムアルデヒド発生の抑制効果
ホルムアルデヒド発生の抑制効果については、ホルムアルデヒド発生量を測定し、そのホルムアルデヒド発生量に基づいて評価した。
【0053】
ホルムアルデヒド発生量については以下にようにして求めた。
<平板試験片の作製>
まず日精樹脂工業社製射出成形機PS−40を用い、シリンダー温度215℃、金型温度80℃にて、実施例1〜8及び比較例1〜3で得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを射出成形し、100mm×40mm×2mmの平板試験片を作製した。
<ホルムアルデヒド発生量の測定>
この平板試験片を作製した日の翌日に、この平板試験片につき、ドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して、下記の方法によりホルムアルデヒド発生量を測定した。
(i)まずポリエチレン容器中に蒸留水50mlを入れ、上記平板試験片を空中に吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃にて3時間加熱した。
(ii)続いて室温で60分間放置した後、平板試験片を取り出した。
(iii)ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド量を、UVスペクトロメーターにより、アセチルアセトン比色法で測定し、このホルムアルデヒド量を平板試験片中のPOMの質量で除した値をホルムアルデヒド発生量とした。結果を表1及び表2に示す。
【0054】
なお、表1及び表2において、ホルムアルデヒド発生抑制効果に関する合否の基準は下記の通りとした。

ホルムアルデヒド発生量が10μg/g−POM以下 :合格
ホルムアルデヒド発生量が10μg/g−POM超 :不合格

【0055】
(2)金型汚染抑制効果
金型汚染抑制効果については以下のようにして評価した。まず住友重機械工業社製ミニマットM8/7A成形機を用い、いわゆるしずく型金型を用いて、実施例1〜8及び比較例1〜3で得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを、成形温度230℃、金型温度35℃で3000ショット連続成形した。成形終了後、金型の内壁面の状態を肉眼で観察した。ここで、金型汚染抑制効果に関する合否基準は以下の通りとした。

A:金型付着物が殆ど少なく、金型汚染抑制効果は極めて良好
B:金型付着物が少しあるものの、金型汚染抑制効果は良好
C:金型付着物が多く、金型汚染抑制効果は不良

ここで、A及びBについては合格とし、Cについては不合格とした。結果を表1及び表2に示す。

【表1】

【表2】

【0056】
表1及び表2に示すように、実施例1〜8はすべて、ホルムアルデヒド発生抑制及び金型汚染抑制の点で合格基準を満たすことが分かった。これに対し、比較例1〜3は、ホルムアルデヒド発生量又は金型汚染抑制の点で合格基準を満たさないことが分かった。
【0057】
従って、本発明のポリアセタール樹脂組成物によれば、ホルムアルデヒドの発生及び成形加工時の金型の汚染を十分に抑制できることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、
下記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)が0.01〜3質量部の割合で配合されているポリアセタール樹脂組成物。
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるインダンジオン化合物(B)が0.01〜1質量部の割合で配合されている、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、立体障害性フェノール化合物(C)が0.01〜1質量部の割合で配合されている、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し、アミノ置換トリアジン化合物(D)が0.01〜7質量部の割合で配合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−103958(P2013−103958A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247005(P2011−247005)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】