説明

ポリアニリン塩の調製方法

本発明は、有機溶媒および混合溶媒に可溶である溶液および固体形態双方のポリアニリン塩を得るために、水と有機溶媒との混合物の存在下アニオン界面活性剤およびラジカル開始剤を用いて、芳香族アミンを5〜55℃の温度範囲で4〜24時間重合し、分離することによる、有機酸を使用するポリアニリン塩の調製方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアニリン塩の調製方法に関する。本発明は、特に有機溶媒および混合溶媒に可溶であるポリアニリン塩の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリンは、ドープまたはプロトン付加物質の相当な電気伝導度レベルと組み合わさった優れた化学安定性のため、最も有望な導電性ポリマーの一つであることが明らかとなっている。ポリアニリンの電気的性質は、酸化およびプロトン化の双方によって可逆的に制御可能であるために、ポリアニリンは、特に興味をもたれている。このように、優れた環境安定性と対になった電気的、電気化学的および光学的性質の広範囲な組み合わせのため、広い種類の重要な技術的応用において、ポリアニリンは有用な物質となっている。
【0003】
近年の研究は、電極物質、バッテリー、例えば、塗料、接着剤、フィルムのような静電防止物質、電磁遮蔽物質、例えば、光電変換素子、光学的メモリーおよび種々のセンサーなどの機能性デバイス、表示素子、種々の混成物質、透明電気伝導体、LED、電気光学デバイス光電池、回路板等、電子ビーム光抵抗性試薬、および種々の端局装置のような広範囲の様々な応用においてポリアニリン物質を適用する方向の観点で実施されている。
【0004】
ポリアニリンは、電気化学的および化学的酸化重合方法の両方によってモノマーから合成できる。電気化学的酸化は、電気化学的電荷移動反応を利用するのに対して、化学的酸化は、適切な酸化剤との化学的反応によって起こる。
【0005】
前記アニリンの化学的酸化重合はポリアニリンのラージスケールでの製造に最も適しているため、この合成方式は特に重要である。前記アニリンの化学的酸化重合は、一般的に酸性の水溶液中で行われる。
【0006】
ポリアニリン塩(鮮緑色塩)の合成は、一般に、水溶液重合系に基づく化学的酸化重合法によって行われる(Cao等, Polymer,30:2305,1989(非特許文献1); Palaniappan, Polymers for Advanced Technologies,5:295,1994(非特許文献2) 参照)。この方法は、水、プロトン性酸、アニリンおよび酸化剤を組み合わせ、反応混合物を一定の温度で保持しながら前記混合物を反応させる工程を含む。数時間後、沈殿したポリアニリンは、濾過によって前記反応混合物から分離され、洗浄される。このような方法で得られたポリアニリンは、通常は不溶であり、ポリアニリンの応用を妨げる。
【0007】
Harlev等(米国特許第5,618,469号:特許文献1)は、電気伝導性および光学的透明コーティングの調製や、液晶デバイスおよび他の電気光学デバイスのような商品に使用する加工可能な鮮緑色塩溶液の調製方法を開示している。このような方法は、固体鮮緑色塩を得るために、例えばピルビン酸のようなプロトン性酸存在下でアニリンモノマーを酸化的に重合させる工程、固体鮮緑色塩基を形成するために前記固体鮮緑色塩をアンモニア水溶液と反応させる工程、および、ポリアニリン溶液を形成するために前記鮮緑色塩基を追加量のピルビン酸に溶解させる工程を含む。Abe等(米国特許第5,728,321号:特許文献2)は、ドープ状態のポリアニリン溶液(1-メチル-2-ピロリドンのような非プロトン性極性溶媒に溶解)が、アニリンモノマーの酸化重合のドープ剤として、ヒドロフルオロホウ酸、ヒドロフルオロリン酸、過塩素酸、または、4.8以下の酸解離定数(pKa値)を有する他の有機酸のような特定のプロトン性酸を用いる方法によって得られることを開示している。これら方法の欠点は、酸化重合の間に反応混合物中で形成される前記鮮緑色塩が不溶であり沈殿するため、加工可能なポリアニリン溶液を形成するために前記塩を酸に溶解して固体鮮緑色塩基へ変換するための複合過程が必要となることである。前記ポリアニリンが有機溶媒に可溶となることを可能にするためのドープポリアニリンの脱ドーピングは、負担となり、製造費用を増加させる。
【0008】
可溶ポリアニリンの手順は、ポリアニリン誘導体およびコポリマーの調製を含む(Mav等Journal of Polymer Science, Part-A, Polymer Chemistry,38:3390,2000(非特許文献3); Norris等Macromolecules,33:3237,2000(非特許文献4); Xin-Gui Journal of Polymer Science, Part-A, Polymer Chemistry,38:4407,2000(非特許文献5))。残念ながら、これらの種は、常に(非改良の)ホモポリマーと比較して、かなりの導電性の減少を示す。
【0009】
Smith等(米国特許第5,470,505号:特許文献3)は、プロトン性酸存在下でアニリンモノマーの酸化重合の標準法によって調製された鮮緑色塩が、酸、特に濃H2SO4、CH3SO3H、ClSO3H、CF3SO3HおよびHNO3(70%または発煙)のような強酸に溶解できることを開示している。これら酸溶液の一つに溶解した前記鮮緑色塩(ポリアニリン)は、応用において、所望の商品へと加工される。
【0010】
処理性の改良のために、ドデシルベンゼンスルホン酸、ショウノウスルホン酸のようなプロトン性酸ポリアニリン塩の調製のためのエマルジョン重合法が報告されている(Cao等,米国特許第5,232,631号 実施例6B,1993(特許文献4)、Smith等Polymer 35,2902,1994(非特許文献6)、Terhi Vikki等, Macromolecules,29,2945,1996(非特許文献7)、Kinlen等, Macromolecules,31,1735,1998(非特許文献8)、および、Olinga等, Macromolecules,33,2107,2000(非特許文献9))。これら開示におけるアニリン、官能基性プロトン性酸および酸化剤は、極性液体、一般的に水と非極性または弱極性液体、例えば、キシレン、クロロホルム、トルエン、レゾルシノール、デカヒドロナフタレンおよび1,2,4-トリクロロベンゼンとの混合物が組み合わされており、全てに完全に可溶ではない。
【0011】
出願人は、以前に特許出願を提出し、有機溶媒中のポリアニリン塩の調製方法を報告している(係属中のインド特許出願第74/DEL/2002号(特許文献5)および2002/3/13提出の米国特許出願第10/098,188号(特許文献6))。前記ポリアニリン塩は、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレンのような担体溶媒中に存在し、および、前記溶液は光学的に透明である。
【0012】
ポリアニリン塩は、一般的な条件下で可溶性または可融性のどちらでもない、処理し難い(inter-actable)物質として分類されている。ポリアニリンの溶解性および処理性を導入するために、様々な戦略が立てられた。それらは、
・ポリアニリン塩のポリアニリン塩基への脱ドーピング、ポリアニリン塩基を非プロトン性溶媒へ溶解し、ポリアニリン塩へと再ドーピングする。この処理は、負担となり、製造費用を増加させる。
・置換ポリアニリンの調製、ポリアニリン塩のホモポリマーではないポリアニリンコポリマーの調製。前記置換ポリアニリンおよびコポリマーの導電率は、ポリアニリンよりもかなり低い。
・前記ポリアニリン塩の濃縮酸への溶解。しかし、濃縮酸を用いるため、それらは高い腐食性を有する。
・エマルジョン重合法による官能基性プロトン性酸を用いるポリアニリン塩の調製。
【特許文献1】米国特許第5,618,469号
【特許文献2】米国特許第5,728,321号
【特許文献3】米国特許第5,470,505号
【特許文献4】米国特許第5,232,631号
【特許文献5】インド特許出願第74/DEL/2002号
【特許文献6】米国特許出願第10/098,188号
【非特許文献1】Cao等, Polymer,30:2305,1989
【非特許文献2】Palaniappan, Polymers for Advanced Technologies,5:295,1994
【非特許文献3】Mav等, Journal of Polymer Science, Part-A, Polymer Chemistry,38:3390,2000
【非特許文献4】Norris等, Macromolecules,33:3237,2000
【非特許文献5】Xin-Gui, Journal of Polymer Science, Part-A, Polymer Chemistry,38:4407,2000
【非特許文献6】Smith等, Polymer 35,2902,1994
【非特許文献7】Terhi Vikki等, Macromolecules,29,2945,1996
【非特許文献8】Kinlen等, Macromolecules,31,1735,1998
【非特許文献9】Olinga等, Macromolecules,33,2107,2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ポリアニリン塩の調製方法を報告する。調製された前記ポリアニリン塩は、担体溶媒中に存在し、溶媒および混合溶媒に可溶である。ポリアニリン塩は、また、粉末形態でも調製され、溶媒および混合溶媒に可溶である。
【0014】
本発明の目的
本発明の主な目的は、有機酸および芳香族アミンを用いるポリアニリン塩の調製方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、前記ポリアニリン塩が担体溶媒中および混合溶媒中に存在する、ポリアニリン塩の調製方法を提供することである。
【0016】
さらに、本発明の他の目的は、有機溶媒および混合溶媒に可溶な、粉末形態のポリアニリン塩の調製方法を提供することである。
【0017】
本発明の概要
従って、本発明は、ポリアニリン塩が、有機溶媒および混合溶媒に可溶な溶液ならびに固体の両形態である、アニリンのポリアニリン塩への重合方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の詳細な説明
従って、本発明は、以下の工程を含む、ポリアニリン塩の改良された調製方法を提供する。
(a) アニオン界面活性剤を蒸留水に溶解し、ラジカル開始剤の有機溶媒溶液と混合することで、30℃-50℃の温度範囲で乳白色エマルジョンを得る工程、
(b) 芳香族アミンおよび有機酸の水溶性混合物を(a)工程のエマルジョンに滴下し、前記混合物を30℃-50℃の温度範囲で4〜24時間撹拌し、緑色エマルジョンを得る工程、
(c) (b)工程の前記緑色エマルジョンを静置し、そして、上部の水相と下部のポリアニリン塩を含む緑色油相とを分離する工程、
(d) (c)工程の前記緑色油相を水で数回洗浄し、それを過剰の無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過を行い、有機溶媒中のポリアニリン塩を得る工程、
(e) アセトンまたはギ酸に(d)工程の溶液を加えることによって、任意にポリアニリン塩を沈殿させる工程、および
(f) 前記沈殿した固体を分離し、約100℃で乾燥させ、固体ポリアニリン塩を得る工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、非水性有機担体溶媒および/または混合溶媒における電気伝導性ポリアニリン塩の調製方法に関する。
【0020】
本発明は、また、粉末形態の電気伝導性ポリアニリン塩の調製方法に関し、これは有機溶媒および混合溶媒に可溶である。
【0021】
本発明の形態において、使用される前記芳香族アミンは、アニリンである。
【0022】
本発明の他の形態において、(b)工程で使用される前記有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゾール、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される。
【0023】
さらなる他の形態において、(b)工程で使用される前記有機酸は、マレイン酸、無水マレイン酸およびシュウ酸からなる群から選択される。
【0024】
本発明のさらなる他の形態において、前記ポリアニリン塩は、担体有機溶媒中で得られる。
【0025】
さらなる他の形態において、担体有機溶媒中の前記ポリアニリン塩は、優れた電気伝導度を有する。
【0026】
さらなる他の形態において、得られる前記ポリアニリン塩は、優れた電気伝導度を有する粉末形態である。
【0027】
さらなる他の形態において、得られる前記ポリアニリン塩は、有機溶媒または有機混合溶媒に可溶である。
【0028】
本発明の他の形態において、使用される前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリドン、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブタノール、デカノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサン、ジオクチルフタレートおよび/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
方法に関する本発明のさらなる他の形態において、(a)工程で使用される前記アニオン界面活性剤は、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレスエーテル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムスルホスクシニメイト(sulfosuccinimate)およびトリデシルエーテル硫酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0030】
本発明のさらなる他の形態において、使用される前記アニオン界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0031】
本発明のさらなる他の形態において、使用される前記ラジカル開始剤は、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシドおよびクメンヒドロペルオキシドからなる群から選択される。
【0032】
本発明の特徴において、前記有機溶媒中のポリアニリン塩の分離は、前記反応混合物を酸、続いて水へ滴下することで処理してもよい。
【0033】
本発明の他の特徴において、前記反応混合物からの前記ポリアニリン塩の分離は、前記反応混合物をアセトンへ滴下し、続いて濾過を行うことで処理してもよい。
【0034】
本発明の新規性は、(i)マレイン酸または他の有機酸を用いるポリアニリン塩の調製、(ii)ポリアニリン塩が担体溶媒中に存在し、他の溶媒および混合溶媒へ移すことが可能であること、(iii)粉末形態のポリアニリンが溶媒および混合溶媒に可溶なことである。
【0035】
以下の実施例は、説明として与えられており、従って、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。
【実施例1】
【0036】
以下の実施例は、異なる反応時間でのエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0037】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム1.0 gを含む溶液を、クロロホルム30 mlにベンゾイルペルオキシド2.5 gを含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを40℃で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸2.9 gを含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は特定の時間(4, 6, 8, 12, 16, 24 時間)で行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0038】
乾燥粉末形態のポリアニリン塩を、直径16mmのMacro-Microダイおよび12-トンの水圧プレスを用いてペレットへと圧縮した。前記粉末をダイへ置き、950 Kg/cm2の圧力を加えた。このように形成されたいずれのペレットも、その直径および厚さを決定するための測定を行った。前記ペレットは円盤状である。導電率の測定において、ペレットは、同一の断面積を有する両サイドを銀ペイントでコーティングし、その抵抗値を電気抵抗計により測定した。導電率は下記式を用いて計算した:
導電率 = (厚さ)/(抵抗値 x 面積) = d/(RA)
【0039】
【表1】

【実施例2】
【0040】
以下の実施例は、異なる量のベンゾイルペルオキシドを用いたエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0041】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム1.0 gを含む溶液を、クロロホルム30 mlにベンゾイルペルオキシド(1.2, 2.5, 3.7 gm.)を含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを40℃で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸2.9 gを含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は6時間行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0042】
【表2】

【実施例3】
【0043】
以下の実施例は、異なる量のラウリル硫酸ナトリウムを用いたエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0044】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム(0.5, 1.0, 1.5)を含む溶液を、クロロホルム30 mlにベンゾイルペルオキシド2.5 gを含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを40℃で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸2.9 gを含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は6時間行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0045】
【表3】

【実施例4】
【0046】
以下の実施例は、異なる量のマレイン酸を用いたエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0047】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム1.0 gを含む溶液を、クロロホルム30 mlにベンゾイルペルオキシド2.5 gを含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを40℃で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸(1.16, 2.32, 2.90, 3.48 gm.)を含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は6時間行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0048】
【表4】

【実施例5】
【0049】
以下の実施例は、異なる温度を用いたエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0050】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム1.0 gを含む溶液を、クロロホルム30 mlにベンゾイルペルオキシド2.5 gを含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを特定の温度(5℃, 40℃, 50℃)で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸2.9 gを含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は6時間行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0051】
【表5】

【実施例6】
【0052】
以下の実施例は、異なる溶媒を用いたエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0053】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム1.0 gを含む溶液を、溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン)30 mlにベンゾイルペルオキシド2.5 gを含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを40℃で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸2.9 gを含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は6時間行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0054】
【表6】

【実施例7】
【0055】
以下の実施例は、無水マレイン酸およびシュウ酸を用いたエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0056】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム1.0 gを含む溶液を、クロロホルム30 mlにベンゾイルペルオキシド2.5 gおよび無水マレイン酸2.45 gmまたはシュウ酸3.15 gmを含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを40℃で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸2.9 gを含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は6時間行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0057】
【表7】

【実施例8】
【0058】
以下の実施例は、溶媒および異なる混合溶媒における前記ポリアニリン塩の調製を示している。
【0059】
実施例1により調製された粉末形態のポリアニリン塩を、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドに溶解した。ポリアニリン塩は、溶媒に可溶であった。6-7 gmの前記粉末形態のポリアニリン塩は、溶媒100 mlに完全に可溶であった。
【0060】
1-メチル-2-ピロリドン溶液(2ml)中のポリアニリン塩の溶解度を、異なる既知量の種々の溶媒において検査した。試された溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブタノール、デカノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサン、ジオクチルフタレート等であった。前記ポリアニリン塩は混合溶媒に可溶であった。
【実施例9】
【0061】
以下の実施例は、異なる溶媒および混合溶媒を用いたエマルジョン重合経路によるポリアニリン塩の調製を示している。
【0062】
蒸留水20 mlにラウリル硫酸ナトリウム1.0 gを含む溶液を、クロロホルム30 mlにベンゾイルペルオキシド2.5 gを含む他の溶液と混合した。このように形成された乳白色エマルジョンを40℃で撹拌した。水50 mlにアニリン1.0 mlおよびマレイン酸2.9 gを含む水溶液を約20分以上かけて前記エマルジョンに滴下した。反応は特定の時間(4, 6, 8, 12, 16, 24 時間)行った。前記エマルジョンの色は緑色となった。前記ポリアニリン塩を含む下部の油状緑色相と上部の水相とを分液漏斗によって分離した。有機相を200 mlの水で数回洗浄した(4回)。最後に、前記緑色ポリアニリン相を硫酸ナトリウム(5 g)で処理し、濾紙を通して濾過を行った。このように得られた前記ポリアニリンは、肉眼で均一に見え、前記ポリアニリン塩は、前記有機相に可溶性のままで残っていた。前記ポリアニリン塩を300 mlのアセトン中で沈殿させた。沈殿したポリアニリン塩を濾過し、1500 mlの水、続いて300 mlのアセトンで洗浄した。最後に、前記ポリアニリン塩を100℃で一定の重量まで乾燥させた。
【0063】
類似の処理をジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレンのような異なる溶媒を用いて繰り返した。
【0064】
ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンまたはキシレン溶液(1 ml)のような担体溶媒中のポリアニリン塩をジクロロメタン9 mlに加え、この溶液を試験溶媒10 mlと混合した。前記ジクロロメタン溶媒をロータベーパー(Rota vapour)を用いてエバポレイトし、ポリアニリン塩を試験溶媒へと移した。前記ポリアニリン塩の前記試験溶媒への溶解性を検査した。
【0065】
【表8】

【実施例10】
【0066】
以下の実施例は、異なる溶媒における前記ポリアニリン塩の調製を示している。
【0067】
ジクロロメタン溶液(既知量)中のポリアニリン塩を既知量のジクロロメタン(総体積10 ml)へ加え、この溶液を1-メチル-2-ピロリドン10 mlと混合した。前記ジクロロメタン溶媒をロータベーパー(Rota vapour)を用いてエバポレイトし、ポリアニリン塩を1-メチル-2-ピロリドンへと移した。前記ポリアニリン塩の1-メチル-2-ピロリドンへの溶解性を検査した。類似の処理を他の試験溶媒を用いて行った。
【0068】
【表9】

【実施例11】
【0069】
以下の実施例は、異なる混合溶媒における前記ポリアニリン塩の調製を示している。
【0070】
ジクロロメタン溶液中のポリアニリン塩(既知量)を既知量のジクロロメタン(総体積 10 ml)に加え、この溶液を1-メチル-2-ピロリドン10 mlと混合した。前記ポリアニリン塩の混合溶媒への溶解性を検査した。類似の処理を他の試験溶媒を用いて行った。
【実施例12】
【0071】
溶液形態として調製された前記ポリアニリン塩試料および溶媒へ溶解させたポリアニリン塩(上記実施例を用いて調製された)を、Hitachi U 2000 分光光度計を用いた電子吸収スペクトル技法によって分析した。有機溶媒中のポリアニリン塩を記録し、約350-385、510-560(s)および750-850 nmでポリアニリン塩系と一致する3つのピークが観測された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の利点
本発明の主な長所は、(i)ポリアニリン塩が電気伝導性であり、前記ポリアニリン塩が他の溶媒および混合溶媒へ移転可能な担体有機溶媒中に存在する、マレイン酸を用いる前記ポリアニリン塩の調製、(2)粉末形態の前記ポリアニリン塩が溶媒および混合溶媒に可溶である。
【0073】
上記を考慮すると、本発明の様々な利点が得られ、他の有利な結果が成し遂げられたことが判るであろう。種々の変更が発明の範囲から逸れない上記方法および構成において成すことができる場合、上記明細書に含まれる全ての内容は、実例として解釈されるべきであり、趣旨を限定するべきではないことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、重合によるポリアニリン塩の改良された調製方法。
(a) アニオン界面活性剤を蒸留水に溶解し、ラジカル開始剤の有機溶媒溶液と混合することで、30℃-50℃の温度範囲で乳白色エマルジョンを得る工程、
(b) 芳香族アミンおよびマレイン酸または無水マレイン酸の水溶性混合物を(a)工程のエマルジョンに滴下し、前記混合物を30℃-50℃の温度範囲で4〜24時間撹拌し、緑色エマルジョンを得る工程、
(c) (b)工程の前記緑色エマルジョンを静置し、そして、上部の水相と下部のポリアニリン塩を含む緑色油相とを分離する工程、
(d) (c)工程の前記緑色油相を水で数回洗浄し、それを過剰の無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過を行い、有機溶媒中のポリアニリン塩を得る工程、
(e) アセトンまたはギ酸に(d)工程の溶液を加えることによって、任意にポリアニリン塩を沈殿させる工程、および
(f) 前記沈殿した固体を分離し、約100℃で乾燥させ、固体ポリアニリン塩を得る工程。
【請求項2】
(a)工程において使用される前記アニオン界面活性剤が、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレスエーテル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムスルホスクシニメイト(sulfosuccinimate)およびトリデシルエーテル硫酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)工程において使用される前記アニオン界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウムである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
(a)工程において使用される前記ラジカル開始剤が、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシドおよびクメンヒドロペルオキシドからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
使用される前記ラジカル開始剤が、好ましくはベンゾイルペルオキシドである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
(b)工程において使用される前記有機溶媒が、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゾール、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
(b)工程において使用される前記芳香族アミンが、アニリンである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
(d)工程において前記ポリアニリン塩が、担体有機溶媒中で得られる、請求項1記載の方法。
【請求項9】
(d)工程において担体有機溶媒中の前記ポリアニリン塩が、電気伝導性である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
(f)工程において粉末形態として得られる前記ポリアニリン塩が、電気伝導性である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
(f)工程において得られる前記ポリアニリン塩が、有機溶媒または有機混合溶媒に可溶である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
使用される前記有機溶媒が、1-メチル-2-ピノリデン(pynolidene)、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキサイド、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンジン、トルエン、キシレン、ブタノール、デカノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサン、ジオクチルフタレートまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
(b)工程において行われるエマルジョン重合の温度が、約40℃である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
(b)工程において行われる重合の持続時間が、約6時間である、請求項1記載の方法。


【公表番号】特表2006−505649(P2006−505649A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549395(P2004−549395)
【出願日】平成14年11月6日(2002.11.6)
【国際出願番号】PCT/IB2002/004704
【国際公開番号】WO2004/041911
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】