説明

ポリアミド樹脂組成物ペレットブレンド物、成形品およびペレットブレンド物の製造方法

【課題】表面意匠性とハイサイクル性の両方に優れたペレットブレンド物を提供する。
【解決手段】少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)30〜100重量%および無機充填材(b)70〜0重量%を含有してなるポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、
ポリアミド樹脂(a−3)に滑剤(c)を1〜30重量%(滑剤ペレット中)含む滑剤ペレット(B)とを、
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80〜99.5/20〜0.5の重量比で含むペレットブレンド物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なペレットブレンド物に関する。詳しくは、剛性および強度を維持しつつ、表面意匠性に優れ、かつ良好な成形サイクル性を併せ持つペレットブレンド物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリアミド樹脂は、その優れた機械特性、耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性等の特徴から自動車部品、電気・電子部品、建材用途、家庭雑貨等に広く利用されている。なかでもガラス繊維を代表とする無機充填材を配合して得られたポリアミド樹脂は、強度、剛性、耐熱性が大幅に向上することが知られている。
しかしながら、これら無機充填材、特にガラス繊維含有量が高いポリアミド樹脂を射出成形した場合に、その表面にガラス繊維が露出し、表面の意匠性を大きく損なう等の問題が生じるため、その用途が限定される等の問題があった。
これらの問題点を解決するため、結晶性ポリアミド樹脂に非晶性ポリアミド樹脂を添加し、さらにガラス繊維等の無機充填材を配合する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
またアジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミンを共重合してなるポリアミド樹脂(以下ポリアミド66/6I共重合体)等の比較的降温結晶化温度の低いポリアミド樹脂にガラス繊維等の無機充填材を配合する方法も提案されている(特許文献3、4)。
しかし、これらの方法では比較的良好な成形品外観が得られるものの、非晶性ポリアミド樹脂や降温結晶化温度の低いポリアミド樹脂の影響で、成形サイクルが長くなり、生産性に支障をきたす場合があった。また熱間強度やクリープ特性が低下し、製品に支障をきたす場合があった。
【0003】
【特許文献1】特開2000−154316号公報
【特許文献2】特開2000−345032号公報
【特許文献3】特開平11−71518号公報
【特許文献4】特開2000−178441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述のごとき従来のポリアミド樹脂の欠点を解消し、表面意匠性とハイサイクル性の両方に優れたペレットブレンド物を提供すること、特に、曲げ強度や曲げ弾性率を損なわずに表面意匠性とハイサイクル性の両方に優れたペレットブレンド物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、ポリアミド樹脂を構成する成分や製造方法を詳しく検討した結果、ある特定の製造方法にて無機充填材により補強されたポリアミド樹脂を製造することにより、上記課題を達成し得ることを見出した。
具体的には、下記手段により上記課題を解決しうることを見出した。
(1)少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)30〜100重量%および無機充填材(b)70〜0重量%を含有してなるポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、
ポリアミド樹脂(a−3)に滑剤(c)を1〜30重量%(滑剤ペレット中)含む滑剤ペレット(B)とを、
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80〜99.5/20〜0.5の重量比で含むペレットブレンド物。
(2)ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)中の、無機充填材(b)の含有量が15〜60重量%である、(1)に記載のペレットブレンド物。
(3)滑剤ペレット(B)が、さらに無機充填材(d)を、該滑剤ペレット(B)中5〜50重量%含む、(1)または(2)に記載のペレットブレンド物。
(4)前記ポリアミド樹脂(a−1)が、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるポリアミド樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6I/6T共重合体およびポリアミド66/6I共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド樹脂である、(1)〜(3)のいずれかに記載のペレットブレンド物。
(5)前記ポリアミド樹脂(a−1)が、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるポリアミド樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6I/6T共重合体およびポリアミド66/6I共重合体からなる群より選ばれる少なくとも2種のポリアミド樹脂である、(1)〜(3)のいずれかに記載のペレットブレンド物。
(6)前記ポリアミド樹脂(a−1)が、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるポリアミド樹脂を少なくとも含む、(1)〜(3)のいずれかに記載のペレットブレンド物。
(7)前記ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド樹脂(a−1)以外のポリアミド樹脂(a−2)として、ポリアミド66を少なくとも含む、(1)〜(6)のいずれかに記載のペレットブレンド物。
(8)無機充填材(b)が、ガラス繊維、マイカ、タルクおよびウォラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(7)のいずれかに記載のペレットブレンド物。
(9)滑剤(c)が、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、炭化水素系化合物およびケトン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(8)のいずれかに記載のペレットブレンド物。
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載のペレットブレンド物を用いてなる成形品。
(11)車両または建材の部品である、(10)に記載の成形品。
(12)少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)30〜100重量%および無機充填材(b)70〜0重量%を含有してなるポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、ポリアミド樹脂(a−3)に滑剤(c)を1〜30重量%(ペレット中)含む滑剤ペレット(B)とを、
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80〜99.5/20〜0.5の重量比で混合することを特徴とする、ペレットブレンド物の製造方法。
(13)少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)30〜100重量%および無機充填材(b)70〜0重量%含有してなるポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、
ポリアミド樹脂(a−3)に滑剤(c)を1〜30重量%(ペレット中)含む滑剤ペレット(B)とを、
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80〜99.5/20〜0.5〜の重量比で混合することを含む、樹脂組成物ペレットの成形サイクル性の改善方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、表面意匠性とハイサイクル性の両方に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることが可能になった。特に、金属代替を可能とした高い機械的強度を有するポリアミド樹脂組成物を得ることが可能になった。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、滑剤成分を含む滑剤ペレット(B)を別々に製造した後、それらをペレットブレンドすることにより、直接滑剤成分を混練した場合と比較して、少量の滑剤量でハイサイクル化と優れた表面意匠性が両立でき、工業的に有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0008】
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)
本発明における、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)とは、少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)を30〜100重量%および無機充填材(b)を70〜0重量%含有してなるものである。
【0009】
ポリアミド樹脂(a)
本発明で用いるポリアミド樹脂(a)とは、少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含む樹脂である。
【0010】
本発明における降温結晶化温度とは、示差走査熱量測定(DSC)法により観測される発熱ピークのピークトップの温度である。発熱ピークとは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による影響をできるだけなくした後、降温した時に観測されるピークとする。具体的には次の要領で求めることができる。30〜300℃まで10℃/minの速度で昇温し、300℃で2分間保持する。その後、30℃まで20℃/minの速度で降温する際に観測される発熱ピークのピークトップから降温結晶化温度を求める。なお、本発明において、降温結晶化温度が210℃以下とは、DSCで測定された降温結晶化温度が、後記する相対粘度2.0〜3.5の範囲において常に210℃以下であることを言う。
ポリアミド樹脂(a−1)としては、Tcが205℃以下の要件を満たすものが好ましい。ポリアミド樹脂(a−1)の結晶化温度が210℃を超えると、得られる成形品の表面ガラス浮きが大きく優れた外観を有する成形品が得られない。
また、ポリアミド樹脂(a−1)は、好ましくは、96%硫酸中、樹脂濃度1g/100ml、温度25℃で測定した相対粘度が2.0〜3.5の要件を満たすものである。相対粘度が2.0未満であると、機械的強度が低下し、3.5を超えると成形性が低下する場合がある。
【0011】
ポリアミド樹脂(a−1)としては、例えば、ε−カプロラクタム、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン等のポリアミド形成性モノマ−を適宜組み合わせて得られるホモポリマ−単独、共重合体単独、ホモポリマー同士の混合物、共重合体同士の混合物、共重合体とホモポリマーの混合物等を用いることができる。
Tcが210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド6、ナイロン610、ポリアミド612、ポリアミド12、キシリレンジアミンとアジピン酸を重合してなるポリアミド樹脂(ポリアミドMXD6)、メタキシリレンジアミンとパラキシレンジアミンとアジピン酸を重合してなるポリアミド樹脂(ポリアミドMP6)、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸を重合してなるポリアミド6I、イソフタル酸とビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンを重合してなるポリアミドPACMなどのホモポリマー、アジピン酸とイソフタル酸、ヘキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド66/6I共重合体が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。好ましくは、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミド66/6I共重合体、ポリアミド66/6I共重合体、ポリアミドMP6である。
これらのポリアミド樹脂は、1種類のみでも、2種類以上を併せて用いてもよい。
【0012】
非晶性ポリアミド樹脂の具体例としては、テレフタル酸と2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミドTMDT、イソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを重合してなるポリアミド6I/6T共重合体、メタキシリレンジアミンのテレフタル酸塩および/またはイソフタル酸塩とε−カプロラクタムを重合してなる共重合体、ヘキサメチレンジアミンのテレフタル酸塩および/またはイソフタル酸塩にε−カプロラクタムを重合してなる共重合体等が挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、ポリアミド6I/6T共重合体である。
【0013】
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)には、上記ポリアミド樹脂(a−1)以外のポリアミド樹脂(a−2)を含んでいても良い。このようなポリアミド樹脂(a−2)は、Tcが220℃以上の条件を満たすことが好ましく、例えば、1,4−ジアミノブタンとアジピン酸を共重合してなるポリアミド46、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とを重合してなるポリアミド66や、これらのブレンド物等が挙げられる。Tcが220℃以上のポリアミド樹脂を少量使用することにより、結晶化速度が向上し、離型性や成形サイクルを改善することができる。
ポリアミド樹脂(a−2)を使用する場合には、ポリアミド樹脂(a−1)とポリアミド樹脂(a−2)の比が、好ましくは(a−1)/(a−2)=50〜95/50〜5(重量比)、より好ましくは、75〜92.5/25〜7.5(重量比)である。この様な配合比とすることにより、離型性や成形サイクルが効果的に改善され、外観もより良好となる傾向にある。
【0014】
(b)無機充填材
本発明における無機充填材(b)としては、周知の無機充填材を使用することができ、形状は特に制限されず、繊維状、板状、針状、球状、粉末等いずれの形状であってもよい。無機充填材の種類としては、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ガラスフレ−ク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ガラスビ−ズ、バル−ン、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、クレ−、カーボンブラック、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、単独または二種以上の混合物として用いることができる。無機充填材としては、機械的強度、剛性、表面外観のバランスに優れ、入手もしやすい点から、好ましくはガラス繊維、マイカ、タルク、ウォラストナイトである。
【0015】
ガラス繊維は、一般に樹脂強化用に使用されるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプ(ロービング)や短繊維タイプ(チョップドストランド)等から選択して用いることができ、その平均繊維径は6〜15μmが一般的である。また、平均繊維長は、特に制限されないが、0.1〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましい。マイカ、タルク、ウォラストナイトとしては、粒子径に制限はなく任意のものが使用できるが、例えば、粒子径が1〜80μmのものが好ましく、5〜50μmのものがより好ましい。このような無機充填材を使用することにより、無機充填材による補強効果がより効果的に発現され、表面意匠性、寸法安定性に優れた成形品を得ることができる。
【0016】
これらの無機充填材は、その取扱いおよび樹脂との密着性の見地から、使用にあたって必要ならば集束剤および/または表面処理剤で表面処理されていてもよい。集束剤および/または表面処理剤としては、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシラン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物等、公知の集束剤、表面処理剤を使用することが可能である。これらの集束剤および/または表面処理剤の付着量は、無機充填材(b)の重量の0.01重量%以上とすることが好ましく、0.05重量%以上とすることがより好ましい。上限値としては特に定めるものではないが、例えば、1重量%以下とすることができる。
さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等を併用したもの等によって表面処理されたものを用いることもできる。
本発明で採用する無機充填材(b)は上記集束剤および/または表面処理剤により、あらかじめ集束処理または表面処理を施して用いてもよいし、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)製造の際に未処理の無機充填材とともに同時に添加してもよい。
【0017】
本発明のポリアミド樹脂組成物ペレット(A)中のポリアミド樹脂(a)と、無機充填材(b)の配合比は、ポリアミド樹脂(a)/無機充填材(b)=30〜100/70〜0(重量比)である。無機充填材の配合量が上限越えると、加工性が劣る。より好ましい配合比は、ポリアミド樹脂(a)/無機充填材(b)=40〜85/60〜15(重量比)であり、さらに好ましくは、ポリアミド樹脂(a)/無機充填材(b)=35〜80/65〜20(重量比)である。
【0018】
(B)滑剤ペレット
本発明においては、滑剤ペレット(B)は、本発明を成し得るための必要成分である。すなわち、滑剤ペレット(B)は、ポリアミド樹脂(a−3)および少なくとも1種類以上の滑剤(c)をペレット中に1〜30重量%含む滑剤マスターバッチである。滑剤をマスターバッチペレットとして使用することにより、成形時の離型性が向上し、得られる成形品の表面意匠性も優れたものとなる。また、成形時の冷却時間の短縮も可能であり、成形サイクル性が向上する。
通常、ベント式押出機を用いて樹脂組成物ペレットを製造する場合には、溶融混練中にベントやストランドから滑剤が蒸散し、成形に用いる樹脂組成物ペレット中の滑剤含有量が低下したり、樹脂組成物ペレット製造中にガス発生等の不具合が起こる場合があるが、本発明のように、滑剤を滑剤ペレットとして成形に用いることにより、前記のような滑剤成分の蒸散や樹脂組成物ペレット製造中の不具合の発生を回避することができ、樹脂組成物中の滑剤を所望の濃度に保つことができる。また、滑剤を滑剤ペレットで添加することにより、成形時に滑剤成分が成形品表面に偏在化しやすくなるため、成形品表面における滑剤濃度が高くなり、添加量のわりに離型性および成形サイクル性の向上効果が高くなると考えられる。
滑剤ペレット(B)に使用するポリアミド樹脂(a−3)としては、特にその種類を定めるものではなく、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)で用いるポリアミド樹脂(a)と種類が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明においては、滑剤ペレット(B)に使用するポリアミド樹脂(a−3)は、ポリアミド樹脂(a)から選ばれる樹脂を含むものが好ましく、相溶性の面から、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)に含まれるポリアミド樹脂(a)と同じポリアミド樹脂を含むことがより好ましく、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)に含まれるポリアミド樹脂(a)と同じポリアミド樹脂を10重量%以上含むことがさらに好ましく、ポリアミド樹脂ペレット(A)に含まれるポリアミド樹脂(a)と同一であることが特に好ましい。
【0019】
(c)滑剤
本発明で用いられる滑剤(c)としては、例えば、脂肪族カルボン酸金属塩、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸、炭化水素系化合物、パラフィンワックス、ケトン化合物、カルボン酸アミド、ビスアミド化合物等が挙げられ、これらの中でも、脂肪族カルボン酸金属塩、脂肪族カルボン酸エステル、炭化水素系化合物、ケトン化合物が好ましく、脂肪族カルボン酸金属塩、脂肪族カルボン酸エステルがより好ましい。
脂肪族カルボン酸金属塩とは、好ましくは炭素数16〜36の高級脂肪酸の金属塩で、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステルとは、脂肪族カルボン酸とアルコールとからなる化合物であり、例えば、蜜ロウ、ラノリン、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ステアリルベヘネート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートが挙げられる。
滑剤ペレット(B)中の滑剤(c)の含有量は1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%である。1重量%未満では、ブレンドした時の成形サイクル向上への効果が小さく、また30重量%を超えると滑剤ペレット(B)の製造が困難となったり、ブレンドして成形した時にガスが多くなる等の不具合を生じる。
【0020】
(d)無機充填材
また、滑剤ペレット(B)には、滑剤(c)以外に、成形品の強度および生産性を低下させない目的で、無機充填材(d)を予め加えておいてもよい。無機充填材(d)としては、例えば上記ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)に用いる無機充填材(b)で挙げたものが挙げられ、2種以上併用してもよい。この中でも、機械的強度、剛性、表面外観のバランスに優れ、入手もしやすい点から、ガラス繊維およびタルクが好ましく、機械的強度、成形サイクル性、表面外観、耐候性がより優れる点から、ガラス繊維とタルクを併用することがより好ましい。
無機充填材(d)の含有量は、滑剤ペレット(B)中の5〜50重量%であることが好ましく、15〜45重量%であることがより好ましい。このような含有量とすることにより、表面外観がより良好となり好ましい。
【0021】
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)および滑剤ペレット(B)の製造方法としては、通常の方法が採用でき、特に制限はされない。慣用の装置、例えば単軸または多軸の押出機、好ましくはベント式押出機またはこれに類似した装置を用いて溶融混練する方法が挙げられる。ベント式押出機には、樹脂組成物中に含まれるガス(空気や水分)を除去し、ガラス繊維やマイカ等の無機充填材と樹脂との密着性を向上させる効果と、オリゴマー等の成形時の不具合発生の原因となる成分を除去する効果がある。本発明においては、ベント式押出機を用いて、樹脂組成物ペレット中の水分率を0.2重量%以下とすることが好ましい。このような水分率とすることにより、成形時のガス発生による金型汚染を抑制しやすい傾向になり、優れた外観の成形品を得ることがより容易になる。
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と滑剤ペレット(B)のブレンド量は、重量比で(A)/(B)=80〜99.5/20〜0.5であり、好ましくは85〜99/15〜1であり、より好ましくは90〜98.8/10〜1.2である。本発明のペレットブレンド物中の滑剤ペレット(B)のブレンド量が0.5重量%未満では成形サイクル改善への効果が小さく、20重量%を超えると成形時のガスが多くなり、好ましくない。
【0022】
本発明のペレットブレンド物では、該ペレットブレンド物中の滑剤(c)の含有量が0.01〜2重量%であることが好ましく、0.05〜1重量%であることがより好ましい。滑剤(c)の含有量を上記範囲内とすることにより、成形時のガス発生や、成形品の転写ムラおよびシルバーの発生をより抑制しやすい傾向にある。
また、本発明においては、該ペレットブレンド物中の無機充填材((b)と(d)の合計量)の含有量が20〜70重量%であることが好ましく、30〜65重量%であることがより好ましい。無機充填材の全含有量を20重量%以上とすることにより機械的強度がより高くなる傾向にあり、70重量%以下とすることにより、ペレットの製造がより容易になる傾向にあり、成形品表面意匠性も向上する傾向にある。例えば、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)中の無機充填材(b)の含有量が、15〜60重量%の場合は、滑剤ペレット(B)中の無機充填材(d)の含有量は、該ペレット(B)中の15〜45重量%であることが好ましく、中でも、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)中の無機充填材(b)の含有量が40〜60重量%であり、滑剤ペレット(B)中の無機充填材(d)の含有量が該ペレット(B)中の20〜40重量%であることがより好ましい。
【0023】
本発明で用いる樹脂組成物ペレット(A)および滑剤ペレット(B)には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、上記成分のほか必要に応じて公知の樹脂添加剤等を配合することもできる。添加剤としては、例えば、染顔料、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色調改良剤、発泡剤、可塑剤、核剤、耐衝撃改良剤等が挙げられる。これら他の添加剤は、1種または2種以上配合することができる。
さらに、本発明で用いる樹脂組成物ペレット(A)および滑剤ペレット(B)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、樹脂成分の一部としてポリアミド樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。配合できる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。配合できる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などがあげられる。この様なポリアミド樹脂以外の樹脂を含む場合の他樹脂の配合量は、好ましくは、本発明のペレットブレンド物中のポリアミド樹脂(a)およびポリアミド樹脂(a−3)の合計重量中の50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0024】
本発明のポリアミド樹脂組成物ペレット(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、通常、ポリアミド樹脂(a)と無機充填材(b)および必要に応じて配合されるその他の成分を所定量配合後溶融混練し、ペレット状にカットすることにより製造される。
溶融混練の方法は、公知の如何なる方法であってもよい。例えば、単軸や2軸の押出機、バンバリーミキサーまたはこれに類似した装置を用いて、一括で押出機の根元から全ての材料を投入し溶融混練してもよいし、まず、ポリアミド樹脂(a)および必要に応じて添加されるその他の成分を投入して溶融しながら、無機充填材(b)をサイドフィードして混練する方法等を使用してもよい。滑剤ペレット(B)もポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と同様の方法を用いて製造することができる。例えば、ポリアミド樹脂(a−3)、滑剤(b)および必要に応じて配合されるその他の成分を一括で押出機に投入し溶融混練してもよいし、無機充填材(d)を配合する場合は、無機充填材(d)をサイドフィードして溶融混練してもよい。
押出機を用いて溶融混練する場合、押出機中で溶融状態の樹脂組成物をダイスから1〜数十本のストランドとして押し出し、これを冷却水槽中または空気中で冷却固化し、ストランドカッターでカットしてペレットとする。このように製造されたペレットは、その形状が通常楕円柱状または円柱状ある。該ペレットは、ペレット長さが好ましくは1〜5mm、より好ましくは2〜4mmのものであり、断面が楕円形の場合は長径が2〜3.5mm、短径が1〜2.5mm、断面が円形の場合は直径2〜3mmのものが好ましい。ペレットの長さや断面形状は、ストランドカッターの刃の回転数、巻き取り速度、押出機の吐出量により調整することができる。また、ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と滑剤ペレット(B)の形状や大きさは、できるだけ近似させることが好ましい。上記のようなペレットとすることにより、ポリアミド樹脂組成物(A)および滑剤ペレット(B)のブレンド物を成形に用いた場合に、成形過程における分級を防ぎ、未溶融物の発生や空気の巻き込みを抑制した可塑化が可能となり、機械的強度や表面意匠性に優れた成形品を得ることができる。
【0025】
本発明のペレットブレンド物を製造する方法としては、通常の方法が採用でき、特に制限はされない。例えば、上記の方法で得られたポリアミド樹脂組成物ペレット(A)に、重量フィーダーを用いて上記の方法で得られた滑剤ペレット(B)をポストブレンドする方法や、タンブラー等の攪拌装置を用いてポリアミド樹脂組成物ペレット(A)および滑剤ペレット(B)をブレンドする方法等が挙げられる。
このようにして得られた本発明のペレットブレンド物は、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法によって成形することができるが、流動性の観点から射出成形が好ましい。
【0026】
本発明のペレットブレンド物を用いて得られた成形品は、優れた機械的強度および良好な成形サイクル性を有し、それからなる成形品は表面意匠性に優れているため、特に、車両および建材の部品として有用である。車両としては、ドアミラーステイ、インナーミラーステイ、ドアハンドル、ドアミラーブラケット、ルーフレール、ワイパーアーム等の車両外装および内装部品に好適である。また、建材としては、クレセント、ドアハンドルノブ、フランス落とし等に好適である。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0028】
実施例および比較例において用いた原料は次のとおりである。
(1)ポリアミド樹脂1:ポリ(メタキシリレンアジパミド)(以下、「ポリアミドMXD6」と記す)、三菱ガス化学(株)製、相対粘度(98%硫酸を溶媒とし温度25℃で測定)2.14、降温結晶化温度205℃
(2)ポリアミド樹脂2:ポリアミド66、東レ社製、商品名アミランCM3001−N、相対粘度2.95(前記(1)と同様の方法で測定した。)、降温結晶化温度225℃
(3)ポリアミド樹脂3:ポリアミド6、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名ノバミッド(登録商標)1007J、相対粘度2.20(前記(1)と同様の方法で測定した。)、降温結晶化温度180℃
(4)ポリアミド樹脂4:ポリアミド6I/6T共重合体、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ノバミッド(登録商標)X21、相対粘度2.80(前記(1)と同様の方法で測定した。)
(5)ポリアミド樹脂5:ポリアミド66/6I共重合体、相対粘度2.30(前記(1)と同様の方法で測定した。)、降温結晶化温度198℃
[ポリアミド樹脂5の製造方法]
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩2.0kgとイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩0.5kgおよび純水2.5kgを5リットルのオートクレープに仕込み、窒素置換をしながら良く攪拌した。次に攪拌しながら温度を室温付近から220℃で約1時間昇温した。その後、オートクレープの内圧が18kg/cm2−Gになるように、水を反応系外に除去しながら約2時間を要して温度を260℃に昇温した。その後加熱をやめ、オートクレープを密閉し、約8時間を要して室温付近まで冷却し、ポリアミド66/6I(組成重量比:78.5/21.5)ポリマーを約2kg得た。得られたポリマーを粉砕し、10リットルのエバポレーターを用い、窒素雰囲気下200℃で10時間固相重合にて分子量を上げ、相対粘度2.30のポリマーを得た。
(6)ガラス繊維:チョップドストランド、旭ファイバ−グラス(株)製、商品名CS03−JAFT2、平均繊維長3mm、平均繊維径10μm
(7)マイカ:スゾライトマイカ、クラレトレーディング社製、商品名325HK、重量平均粒子径20μm
(8)タルク1:林化成社製、商品名ミクロンホワイト5000A、重量平均粒子径4.7μm
(9)タルク2:富士タルク社製、商品名TM−2、重量平均粒子径14.3μm
(10)ウォラストナイト:ナイコ社製、商品名ナイグロス8、重量平均粒子径8μm
(11)カーボンブラック1:三菱化学社製、#45、重量平均粒子径24μm
(12)カーボンブラック2:三菱化学社製、#960、重量平均粒子径16μm
(13)滑剤1:ステアリン酸バリウム、堺化学社製
(14)滑剤2:モンタン酸エステル、クラリアント社製、商品名リコワックスE
(15)滑剤3:モンタン酸ナトリウム、クラリアント社製、商品名リコモントNAV101
(16)滑剤4:カルボン酸アミド系ワックス、共同油脂社製、商品名ライトアマイドWH255
(17)滑剤5:ステアリルステアレート、理研ビタミン社製、商品名SL−900A
(18)滑剤6:ケトンワックス、コグニスジャパン社製、商品名ロキシオールEP2036−18
(19)滑剤7:ポリエチレンワックス、三井化学社製、商品名ハイワックス405MP
(20)滑剤ペレット1:ポリアミド樹脂1/ポリアミド樹脂2/タルク1/滑剤1=60/10/20/10の配合量(重量比)にて拝量し、タンブラ−で20分混合後、ベント式押出機(東芝機械社製、TEM37BS)を用いて270℃で溶融混練した後、ひも状に押出し、水槽で冷却後、切断、乾燥して楕円柱状、長さ3〜3.5mmのペレットを製造した。
(21)滑剤ペレット2:ポリアミド樹脂1/ポリアミド樹脂2/タルク1/ガラス繊維/滑剤1=40/10/20/20/10の配合量(重量比)にて拝量し、ガラス繊維以外の各成分をタンブラーで20分混合後、ポッパへ一括投入しガラス繊維はサイドフィード方式で供給して、ベント式押出機(東芝機械社製、TEM37BS)を用いて270℃で溶融混練した後、ひも状に押出し、水槽で冷却後切断、乾燥して、楕円柱状、長さ3〜3.5mmのペレットを製造した。
(22)滑剤ペレット3:ポリアミド樹脂1/ポリアミド樹脂2/タルク1/ガラス繊維/滑剤2/滑剤3=50/5/10/30/2.5/2.5の配合量(重量比)にて、前記(21)滑剤ペレット2と同様の方法でペレットを製造した。
(23)滑剤ペレット4:ポリアミド樹脂1/ポリアミド樹脂2/タルク1/ガラス繊維/滑剤6=50/5/10/30/5の配合量(重量比)にて、前記(21)滑剤ペレット2と同様の方法でペレットを製造した。
(24)滑剤ペレット5:ポリアミド樹脂1/ポリアミド樹脂2/タルク1/ガラス繊維/滑剤7=50/5/10/30/5の配合量(重量比)にて、前記(21)滑剤ペレット2と同様の方法でペレットを製造した。
【0029】
実施例および比較例において、曲げ特性、表面意匠性、ハイサイクル性試験は以下の様にして行った。
(25)曲げ特性
射出成形機(ファナック社製、α100iA)を用い、射出一次圧700kgf/cm2、射出速度50mm/s、保圧500kgf/cm2、射出時間1秒、成形温度270℃、金型温度は組成物のガラス転移温度に応じて表1、表2に記載の温度に設定し、試験片を作製した。ISO−178規格に準じて、曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。
【0030】
(26)表面意匠性
射出成形機(ファナック社製、α100iA)を用い、射出一次圧800kgf/cm2、射出速度50mm/s、保圧500kgf/cm2、射出時間2秒、成形温度270℃、金型温度は組成物のガラス転移温度に応じて表1、表2に記載の温度に設定し、冷却時間15秒とし、180mm×120mm×2mmtの平板を成形した。成形後の表面意匠性を肉眼で観察した。目視による無機充填材の浮き具合や成形品表面のうねりの状態、および離型不具合によるムラを、
◎:無機充填材の浮きや成形品表面のうねり、離型ムラが全面に渡り認められない
○:無機充填材の浮きや成形品表面のうねり、離型ムラが全面に渡り極僅かに認められるが実成形品として問題ないレベルである
×:無機充填材の浮きや成形品表面のうねり、または離型ムラが全面に渡り認められる
以上の3種類で評価した。
【0031】
(27)ハイサイクル性
射出成形機(ファナック社製、α100iA)を用い、射出一次圧600kgf/cm2、射出速度50mm/s、保圧450kgf/cm2、射出時間0.5秒、成形温度270℃、金型温度は組成物のガラス転移温度に応じて表1、表2に記載の温度に設定し、長さ50mm、厚み12.8mmの圧縮試験用ASTM試験片を成形した。
ハイサイクル性の評価は、ある冷却時間で連続5回成形を行い、冷却時間を1秒づつ短縮していった時の連続成形が可能な最短の冷却時間(必要冷却時間)を測定した。また、その必要冷却時間での連続成形時の離型性について、下記の基準にて判断した。
◎:試験片に突き出しピンの跡が全く認められず、離型性が良好
○:試験片に突き出しピンの跡がわずかに残るが、離型に支障がない
△:試験片に突き出しピンの跡が明確に残ったり、固定側の金型に試験片が残りやすくなる
×:突き出しピンにより試験片が突き破られるか大きく変形したり、試験片が離型せず、可動側または固定側の金型に試験片が残る
【0032】
[実施例1〜13]
ポリアミド樹脂1〜5、ガラス繊維以外の無機充填材を表1、表2に示す量を秤量し、タンブラ−で混合後ホッパーに一括投入し、ガラス繊維はサイドフィード方式で供給して、ベント式押出機(東芝機械社製、TEM37BS)を用いて280℃で溶融混練した後、ひも状に押出し、水槽で冷却後、切断し、楕円柱状、長さ3〜3.5mmのポリアミド樹脂組成物ペレット(A)を得た。
その後の工程にて滑剤ペレット1〜3のいずれかを、先に得られたペレット(A)に別フィーダーでポストブレンドし、乾燥後、ペレットブレンド物を得た。得られたペレットブレンド物を用い、上記記載の方法で試験片を作製し、評価を行った。評価結果を表1、表2に示す。
いずれのペレットブレンド物の場合も、高い強度を維持しながら無機充填材の表面浮きや離型時のムラが全くないかほとんどなく、表面意匠性に優れていた。また、必要冷却時間も短く、離型性も良好で、ハイサイクル性にも優れていた。
【0033】
[比較例1〜8]
ポリアミド樹脂1〜5、ガラス繊維以外の無機充填材、滑剤1、4または5を秤量し、タンブラ−で混合後ホッパーに一括投入し、ガラス繊維はサイドフィード方式で供給して、ベント式押出機(東芝機械社製、TEM37BS)を用いて280℃で溶融混練した後、ひも状に押出し、水槽で冷却後、切断、乾燥して楕円柱状、長さ3〜3.5mmのペレットを得た。得られたペレットを用い上記記載の方法で試験片を作成し評価を行った。評価結果を表1、表2に示す。
滑剤ペレットをポストブレンドした実施例と比較して、必要冷却時間が長く成形サイクルが長くなる傾向にあり、離型性も劣るものであった。
特に比較例5〜8では表面の固化が遅いために離型性が大きく低下し、工業製品としては使用に耐えなかった。また離型性が不十分であるために表面の転写ムラが生じ、意匠性に問題が認められる場合があった。
さらに、実施例1と比較例1、実施例6と比較例5を比べても明らかなとおり、滑剤の含有量が同じでも、本発明のペレットブレンド物を採用することによりハイサイクル性が著しく向上することが確認された。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、機械的強度、表面意匠性およびハイサイクル性の全てに優れたポリアミド樹脂組成物を得ることが可能になった。本発明のポリアミド樹脂組成物からなる成形品は表面意匠性に優れているため、特に、車両外装および内装部品、および建材の部品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)30〜100重量%および無機充填材(b)70〜0重量%を含有してなるポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、
ポリアミド樹脂(a−3)に滑剤(c)を1〜30重量%(滑剤ペレット中)含む滑剤ペレット(B)とを、
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80〜99.5/20〜0.5の重量比で含むペレットブレンド物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)中の、無機充填材(b)の含有量が15〜60重量%である、請求項1に記載のペレットブレンド物。
【請求項3】
滑剤ペレット(B)が、さらに無機充填材(d)を、該滑剤ペレット(B)中5〜50重量%含む、請求項1または2に記載のペレットブレンド物。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂(a−1)が、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるポリアミド樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6I/6T共重合体およびポリアミド66/6I共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペレットブレンド物。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂(a−1)が、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるポリアミド樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6I/6T共重合体およびポリアミド66/6I共重合体からなる群より選ばれる少なくとも2種のポリアミド樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペレットブレンド物。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂(a−1)が、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸とから得られるポリアミド樹脂を少なくとも含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペレットブレンド物。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド樹脂(a−1)以外のポリアミド樹脂(a−2)として、ポリアミド66を少なくとも含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のペレットブレンド物。
【請求項8】
無機充填材(b)が、ガラス繊維、マイカ、タルクおよびウォラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペレットブレンド物。
【請求項9】
滑剤(c)が、脂肪族カルボン酸金属塩、脂肪族カルボン酸エステル、炭化水素系化合物およびケトン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のペレットブレンド物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のペレットブレンド物を用いてなる成形品。
【請求項11】
車両または建材の部品である、請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結晶性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)30〜100重量%および無機充填材(b)70〜0重量%を含有してなるポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、
ポリアミド樹脂(a−3)に滑剤(c)を1〜30重量%(ペレット中)含む滑剤ペレット(B)とを、
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80〜99.5/20〜0.5の重量比で混合することを特徴とする、ペレットブレンド物の製造方法。
【請求項13】
少なくとも、示差走査熱量計で測定した降温結晶化温度(Tc)が210℃以下である結性ポリアミド樹脂および/または非晶性ポリアミド樹脂(a−1)を含むポリアミド樹脂(a)30〜100重量%および無機充填材(b)70〜0重量%含有してなるポリアミド樹脂組成物ペレット(A)と、
ポリアミド樹脂(a−3)に滑剤(c)を1〜30重量%(ペレット中)含む滑剤ペレット(B)とを、
ポリアミド樹脂組成物ペレット(A)/滑剤ペレット(B)=80〜99.5/20〜0.5の重量比で混合することを含む、樹脂組成物ペレットの成形サイクル性の改善方法。

【公開番号】特開2008−133465(P2008−133465A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280938(P2007−280938)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】