説明

ポリアミド樹脂膜状体の製造方法

【課題】巻き上がりが抑制されたポリアミド樹脂膜状体を提供する。
【解決手段】下記成分(a)および(b)をドライブレンドし、膜状体に製膜するポリアミド樹脂膜状体の製造方法。
(a)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂Aからなるペレット 100重量部
(b)以下の(イ)を押出機の元込め位置から供給し、(ロ)を(イ)溶融後に供給し、溶融混練して得られるマスターペレット 2〜5重量部
(イ)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂B 100重量部
(ロ)無機粒子 7〜13重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂膜状体の製造方法に関する。更に詳しくは、膜状体切断時の切り口の巻き上がりが抑制されたポリアミド樹脂膜状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、その優れた特性を生かして衣料用繊維、産業用繊維に使われ、さらに、自動車分野、電気・電子分野などにおいて射出成形品として、包装分野などにおいて膜状体として広く使われている。ポリアミド樹脂より得られる膜状体は、ガスバリア性や機械的特性に優れるため、食品などの包装用途、その他工業用途など広範な用途に使用されている。
【0003】
食品などの包装用途に用いられる膜状体は、インフレーション製膜法などの方法により製膜され、必要な大きさに切断して使用される。この切断加工の際、その発生機構はいまだ明確ではないが、切断端がいずれか一方の側に巻き上がる現象が起きる。巻き上がり現象は、一旦発生すると解消することが困難であり、膜状体取り扱い上、非常に問題となる現象である。例えば、膜状体のチューブ状態から袋を製造する、いわゆる製袋工程において、巻き上がりがある膜状体があると製袋機内で位置合わせが困難となり、袋の寸法制度が悪化したり、取り出し不良が発生したりする。また、製袋後の袋を積み上げたとき、開口部側が膨れ上がって嵩が高くなり出荷梱包がやりにくくなる上、梱包を解く際に勝手にロールを巻いてしまうため、その後のハンドリングに支障が出やすい。以上のように、ポリアミド樹脂の膜状体の巻き上がりは、その取り扱いに際し様々な支障をきたすため、これまでに巻き上がりを低減させる方法が種々提案されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されているように、多層の膜状体において、最外層に使用する樹脂を最内層に使用する樹脂より0〜60℃高い結晶化温度を有するものに限定し、空冷多層インフレーション法を用いる方法が知られている。また、特許文献2記載のように、分岐脂肪族ジアミンを共重合したポリアミドを用いる方法が知られている。
【0005】
一方、ポリアミド樹脂からなる膜状体は一般的に滑り性があまり良好でないことから、ポリアミド樹脂からなる膜状体の滑り性を改良するために無機粒子を添加することがしばしば行われている。これまでに特許文献3には、無機粒子の分散性に優れた無機粒子を含有するマスターペレットの製造方法、ならびに、優れた滑り性を持ち、透明性、機械特性、表面外観に優れた膜状体を製造するための方法が記載されており、無機粒子をマスターペレットとして添加する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−175543号公報
【特許文献2】特開2005−88344号公報
【特許文献3】特開2007−297607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、最外層に使用できる樹脂の結晶化温度に制約があり、当該文献では低結晶性である共重合ポリアミドが例示されるのみである上に、製膜方法も空冷インフレーション法に限定される。また特許文献2に記載されている方法では、分岐脂肪族ジアミンを共重合したポリアミドに限定される。特許文献3に記載された方法で得られる膜状態では巻き上がりが発生する。
【0008】
また、食品包装用途においてはナイロン6樹脂が広く用いられており、またポリアミド樹脂膜状体の製造には水冷インフレーション法が広く用いられているが、特許文献1、2の方法では使用できるポリアミド・製法とも限定されてしまう。
【0009】
本発明では、使用できるポリアミドに関する制限を取り除き、より汎用性の高い巻き上がり低減ポリアミド膜状体の製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明に達した。すなわち本発明は以下の通りである。
(1)下記成分(a)および(b)をドライブレンドし、膜状体に製膜するポリアミド樹脂膜状体の製造方法。
(a)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂Aからなるペレット 100重量部
(b)以下の(イ)を押出機の元込め位置から供給し、(ロ)を(イ)溶融後に供給し、溶融混練して得られるマスターペレット 2〜5重量部
(イ)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂B 100重量部
(ロ)無機粒子 7〜13重量部
(2)無機粒子がシリカ粒子であるポリアミド膜状体の製造方法。
(3)製膜方法が、水冷インフレーション製膜法であるポリアミド樹脂膜状体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアミド樹脂膜状体の製造方法を用いることにより、巻き上がりが抑制されたポリアミド樹脂膜状体を提供することができる。本発明によりポリアミド樹脂膜状体は、食品包装用途やガスバリア性が必要な用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例でポリアミド樹脂膜状体を製膜したフローを示す図である。
【図2】実施例で巻き上がり評価を行った評価資料の切り出し形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本特許においては、(a)ポリアミド樹脂からなるペレットと(b)無機粒子とポリアミド樹脂からなるマスターペレットをドライブレンドして膜状体を製造するが、(a)に使用するポリアミド樹脂をポリアミド樹脂A、(b)に使用するポリアミド樹脂をポリアミド樹脂Bとする。
【0014】
本発明で用いられるポリアミド樹脂としては、ポリアミド樹脂A、ポリアミド樹脂Bいずれにも、3員環以上のラクタム、重合可能なアミノ酸、二塩基酸とジアミン、あるいはこれらの混合物の重縮合によって得られるポリアミド樹脂が挙げられる。
【0015】
具体的には、ε−カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタムなどのラクタムから得られるポリアミド樹脂、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸から得られるポリアミド樹脂、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジミノペンタン、3−メチル−1,5−ジミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサンなどのジアミンとコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂、あるいはこれらのポリアミド樹脂の任意の共重合体が挙げられる。
【0016】
これらの中でも製膜性、コスト、得られる膜状体の特性の観点からナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン6/ナイロン66共重合体、ナイロン6・10樹脂、ナイロン11樹脂、ナイロン12樹脂、ナイロン6/ナイロン12共重合体、ナイロン6/6T共重合体(6T:ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなるポリアミド単位)、ナイロン6/6I共重合体(6I:ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなるポリアミド単位)、ナイロン6/6T/6I共重合体、ナイロン6/6I/66共重合体、ナイロンMXD・6(m−キシリレンジアミンとアジピン酸から得られるポリアミド樹脂)、ナイロンMXD・6/66共重合体が好ましく、ナイロン6樹脂、ナイロン6/ナイロン66共重合体、ナイロン6・10樹脂、ナイロン11樹脂、ナイロン12樹脂、ナイロン6/ナイロン12共重合体が特に好ましい。とりわけ好ましくはナイロン6、ナイロン6/ナイロン66共重合体であり、もっとも好ましくはナイロン6樹脂である。
【0017】
本発明において(a)で使用するポリアミド樹脂Aと(b)で使用するポリアミド樹脂Bは同一のポリアミド樹脂を使用しても良いし、異なるポリアミド樹脂を使用しても良い。ポリアミド樹脂Aとポリアミド樹脂Bの相溶性の観点から、同一のポリアミド樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法で得られる膜状体の厚みに特に制限はないが、5〜300μmの範囲が好ましく、7〜250μmの範囲がさらに好ましく、8〜200μmの範囲がより好ましい。
【0019】
本発明で用いられるポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、試料1gを98%硫酸100mLに室温で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定する。
【0020】
本発明で用いられるポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度は、3.0〜5.0の範囲であり、3.1〜4.5の範囲が好ましく、3.2〜3.9の範囲がより好ましく、3.3〜3.5の範囲がさらに好ましい。3.0未満では製膜時の溶融膜形成が不安定となり、得られる膜状体の厚みが著しく不均一となるほか、溶融状態の膜の破れが頻発するなど生産性が著しく低下する。5.0超では溶融押出時のトルクが増大し、製膜が困難となる。
【0021】
本発明で用いられるポリアミド樹脂Bの硫酸相対粘度は、3.0〜5.0の範囲であり、3.1〜4.5の範囲が好ましく、3.2〜3.9の範囲がより好ましく、3.3〜3.5の範囲がさらに好ましい。3.0未満では巻き上がり抑制効果が発現せず、5.0超では膜状体中での無機粒子の分散が不十分となり、滑り性、透明性の低下を招く。
【0022】
本発明のマスターペレットの製造においては、マスターペレット中の無機粒子をある程度均一に分散させることが重要である。無機粒子をマスターペレット中に均一分散させるには、2軸押出機を用いることが好ましい。2軸押出機は、同方向回転式、異方向回転式のいずれでも良いが、一般的には同方向回転式が用いられる。例えば、ワーナー・アンド・フライドラー社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、(株)日本製鋼所製のTEXシリーズ等の2軸押出機を用いることができる。
【0023】
押出機の仕様については、特に制限はないが、生産性と無機粒子のマスターペレット中への分散性の観点から、L/D(L:長さ、D:スクリュー直径)の大きい2軸押出機が適しており、中でもL/Dが25〜80であるものが好ましい。
【0024】
本発明においては、マスターペレット中への無機粒子の分散性を向上させる観点から、ポリアミド樹脂Bの溶融完了後に、無機粒子を供給する方法が適している。このため、ポリアミド樹脂Bは押出機の元込め位置から供給し、無機粒子は押出機のオープンベント、または、サイドフィードから供給し、溶融混練することが好ましく、特にサイドフィード添加することが好ましい。ポリアミド樹脂Bの溶融ゾーン(無機粒子供給位置より前)はL/D=10以上であることが好ましく、無機粒子の混練ゾーン(無機粒子供給位置以降)はL/D=15以上であることが好ましい。
【0025】
また、ポリアミド樹脂Bを押出機に供給する際の形態にも特に制限はなく、ペレット、粉体のいずれの状態でも供給することが出来る。コストの観点からペレットでの供給が好ましい。
【0026】
なお、無機粒子をポリアミド樹脂Bとともに元込め位置から供給した場合、ポリアミド樹脂Bをペレットで供給すると、未溶融状態のポリアミド樹脂Bに無機粒子が圧縮され、凝集体を形成してしまうことから、無機粒子を含有するマスターペレット中の無機粒子の分散性が低下する。ポリアミド樹脂Bのペレットを粉砕し、粉体として供給した場合でも元込め供給した場合は、無機粒子を含有するマスターペレット中の無機粒子の分散性は向上するがまだ不十分であるばかりか、粉砕費用が嵩み、経済性が悪化する。その上、ポリアミド樹脂Bの溶融完了後に無機粒子を供給する方法により得られたマスターペレットを用いたときに比べ、巻き上がりの抑制効果も発現しにくくなる。
【0027】
また、無機粒子を含有するマスターペレットおよびそれを用いて得られる膜状体の色調をより改善するという観点から、不活性ガスを押出機の元込め位置から供給しても良いし、減圧下で溶融混練することが好ましい。不活性ガスには、通常窒素ガスが好ましく用いられる。また、減圧下で溶融混練する場合には、溶融樹脂がベントアップしない程度に減圧することが好ましい。
【0028】
スクリューアレンジについては、ポリアミド樹脂Bの溶融ゾーンならびに無機粒子の混練ゾーンに最低一箇所は混練部を設けることが好ましい。混練部を設けた場合は、得られた無機粒子を含有するマスターペレット中の無機粒子の分散性がより良好となる。尚、混練部のスクリュー構成は、ポリアミド樹脂に配合する無機粒子の種類および使用する押出し機の種類により最適化することが好ましいが、元込め側からRニーディング、Nニーディング、Lニーディングの順番で組み合わせることが好ましい。
【0029】
更に、無機粒子の粗大粒子を除去するために押出機の先端にフィルターを設置することが好ましい。フィルターの網目の大きさは、添加する無機粒子の粒径にもよるが、20〜300meshが好ましい。
【0030】
本発明以外の方法で製造された、無機粒子の分散性が低下したマスターペレットを用いた場合では、膜状体製造時に、押出ダイ出口にメヤニが発生しやすいため、粒状のフィッシュアイや筋状のダイライン等を生じ易くなり、表面外観の良好な膜状体を連続して安定に製造することが困難になるばかりでなく、最終製品である膜状体の外観、透明性、機械特性および滑り性が低下する。
【0031】
また、無機粒子を含有するマスターペレットの水分率には特に制限はないが、ISO15512に準拠して測定した水分率は0.2重量%以下であることが好ましく、特に0.15重量%以下が好ましい。0.2重量%以下であれば、最終製品である膜状体の外観、透明性を得る意味において好ましい。また、例えばT−ダイ法、インフレーション法等で未延伸または延伸の膜状体を製造する際に破れが少なく生産性が向上する。なお水分率はカールフィッシャー式水分量測定器を用いて測定するのが一般的である。
【0032】
本発明におけるマスターペレットの添加量は、ポリアミド樹脂Aからなるペレット100重量部に対し2〜5重量部であり、2.5〜4.5重量部が好ましく、2.8〜4.2重量部が最も好ましい。
【0033】
本発明に使用するマスターペレット中の無機粒子量は、ポリアミド樹脂B100重量部に対し、7〜13重量部であり、8〜12重量部が好ましく、9〜11重量部が最も好ましい。7重量部未満の場合、巻き上がり低減の効果を奏さない。13重量部を超える場合、ヘイズが低下する。
【0034】
本発明において用いられる無機粒子に特に制限はないが、ガラス粉末、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素などがあげられ、これらの無機粒子は中空であってもよい。これら無機粒子を複数種類併用することも可能であるし、同じ種類の無機粒子であって平均粒径の異なる粒子を複数併用してもかまわない。
【0035】
これらの中でも分散性、コスト、得られる膜状体の特性などの観点からタルク、カオリン、シリカが好ましく、シリカが特に好ましい。
【0036】
本発明においてポリアミド樹脂Aからなるペレットとマスターペレットをドライブレンドする方法に特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。またブレンドに用いる装置にも特に制限はなく、公知のものを用いることが出来る。例えばアクリソンブレンダー、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーを用いることができ、中でもヘンシェルミキサーを用いたドライブレンドが好ましい。
【0037】
本発明では得られる膜状体の滑り性、透明性を向上させるため、ビスアミド化合物を添加することができる。
【0038】
具体的には、エチレンジアミンとラウリル酸、n−トリデカン酸、ミリスチン酸、n−ペンタデカン酸、パルミチン酸、n−ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、n−ノナデカン酸、アラキドン酸、メリシン酸などとの縮合物があげられるが、分散性、コスト、得られる膜状体の機械物性、透明性などの観点からエチレンビスステアロアミド、エチレンビスオレイルアミドが好ましく、エチレンビスステアロアミドが特に好ましい。
本発明におけるビスアミド化合物の添加量には、特に制限はないが、ポリアミド樹脂Aからなるペレット100重量部に対して0.01〜1重量部が適当であり、0.015〜0.5重量部の範囲が好ましく、0.02〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
【0039】
ビスアミド化合物の添加方法に関しては特に制限はないが、マスターペレットの混練製造時に元込め供給もしくはサイドフィードを行い、マスターペレット中に添加する方法、および、ポリアミド樹脂Aからなるペレットとマスターペレットとのドライブレンド時に一緒にブレンドする方法が、好ましく採用される。
【0040】
本発明のポリアミド樹脂膜状体の製造方法においては、ポリアミド樹脂Aからなるペレットとマスターペレットをドライブレンドして得られた原料を用い、膜状体の製造を実施する。本発明の目的を損なわない範囲で、要求される特性に応じて他のポリマー類、添加剤、結晶核剤、耐熱剤や紫外線吸収剤などの安定剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、およびカップリング剤などの添加剤を添加することも可能である。
【0041】
これらの添加剤の添加方法に関しては特に制限はないが、マスターペレットの混練製造時に元込め供給もしくはサイドフィードを行い、マスターペレット中に添加する方法、および、ポリアミド樹脂Aからなるペレットとマスターペレットとのドライブレンド時に一緒にブレンドする方法が、好ましく採用される。
【0042】
本発明においてポリアミド樹脂膜状体を製造する方法としては従来公知の方法を採用することができる。例えばT−ダイ法、インフレーション法、射出成形法、プレス成形法などを使用することができる。中でも水冷インフレーション法がもっとも好ましく使用できる。
【0043】
本発明により得られた膜状体は、用途に応じて単層、他の樹脂との多層、同一樹脂との多層、紙や金属などの他の素材との積層などにすることができる。更にガスバリア性および水分バリア性をさらに向上させるために、膜状体の片面に金属および/または金属化合物の蒸着を行っても良い。蒸着層を施す方法としては特に制限はないが、真空蒸着、EB蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVD等の公知の方法を用いることができる。膜状体と蒸着金属および/または金属酸化物等の蒸着皮膜との密着性を向上させるためには、その表面をあらかじめコロナ放電処理やアンカーコート剤を塗布するなどの方法により前処理しておくことが好ましい方法である。膜状体に蒸着させる金属および/または金属酸化物としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられ、アルミニウムが最も好ましい。得られる蒸着層の膜厚には特に制限はない。
【実施例】
【0044】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0045】
[実施例1〜5、比較例1〜6の無機粒子マスターペレットの製造]
東芝機械(株)製TEM50B(φ50mm、バレルC1〜C9、L/D=31.6、
フィルター150メッシュ)を用い、ポリアミド樹脂B(100重量部)を押出機の元込めから供給し、シリカ−1(5〜15重量部)をバレルC4(ポリアミド樹脂の溶融ゾーン:L/D=12.3、無機粒子の混練ゾーン:L/D=19.3)の位置からサイドフィード方式で供給し、シリンダー温度230〜270℃、スクリュー回転数330rpm、吐出量40kg/hrの条件で溶融混練した。得られた溶融混練物をストランドで押出し、ペレタイザーでカットして無機粒子を含有するポリアミド樹脂ペレットとし、更に、真空乾燥(80℃、1Torr、12hr)を実施した。このようにして得られた無機粒子を含有するポリアミド樹脂ペレットを評価に供した。
【0046】
[重合時無機粒子添加ナイロン6製造方法](比較例9、10)
ε−カプロラクタム1kgに、蒸留水10g、無機粒子2〜4gを3Lの小型重合缶中に投入後、内部を窒素置換し、気相部を水封常圧とした。その後、加熱をして原料溶解を確認後、内部を攪拌し、230℃/3h、250℃/10h常圧窒素下で重合し、さらに600Torrの減圧下で5h重合、吐出してペレットとした。得られたペレットは97℃の熱水に24h浸漬し、未反応のカプロラクタムを抽出除去した。さらに80℃/48h減圧乾燥した後に評価に供した。(試作ポリアミド)
【0047】
[膜状体の製造方法]
(1)膜状体の製造方法
表1〜表3に示した処方で原料をドライブレンドした後、以下の条件で未延伸チューブ状膜状体を溶融押出し、水冷インフレーション製膜した。
押出機:30mm単軸押出機、L/D=22、
スクリュー:フルフライトコンスタントピッチ(3ゾーン型)、圧縮比3.1
ダイズ:70mmφリングダイス
シリンダー温度:230〜245℃
冷却水温度:20℃。
【0048】
図1に製膜フローを示す。30mm短軸押出機で溶融されたポリアミド樹脂を、70mmリングダイス下面の円形の口金よりチューブ状に押し出し冷却バスに流下した。さらにチューブ状の膜状体を連続的に水冷し、冷却バス中央の直径64mmの円筒部より、オーバーフローされる冷却水と一緒に流下し、最終的に巻取機により巻き取った。水冷後に得られる膜状体は円周200mmのチューブ状であり、巻取り後は2枚の膜が重なった幅100mmテープ状の膜状体となった。巻取り速度は上記の通り12m/minに固定し、所定の膜厚となるようスクリュー回転数を変えることで押出量を調整した。
【0049】
(2)膜状体特性の評価方法
(A)巻き上がり評価
(1)で得られた膜状体は、チューブ状の膜状体が押しつぶされ2枚重なった状態であるので、膜状体をはがし1枚の単層膜状体を得た。その後、図2に示すとおり幅40mm・長さ80mmの短冊状の切片を、膜状体の巻取り方向及び巻取りと垂直方向にそれぞれ2枚ずつ切り出し、各水準4枚の評価試料を作成した。
得られた評価試料は長さ方向にロールする。片方の端を板の上にセロハンテープで固定した後、ロールした膜状体の曲率(ロールの直径)をノギスにより測定し、4つの試料の曲率の平均値を評価結果とした。
【0050】
(B)ヘイズ
東洋精機製作所製の直読ヘイズメーター、50mm×50mmの試験片を用いてヘイズを測定した。
【0051】
(C)膜厚の測定
前記の膜状体製造法で得られた膜状体の膜厚をマイクロメーターを用いて測定した。
実施例および比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0052】
[ポリアミド樹脂]
ナイロン6樹脂CM1021(東レ(株)製,相対粘度(ηr)=3.4)を用いた。
[エチレンビスステアロアミド](EBS)
日油(株)製を使用した。
【0053】
[シリカ−1]
シリカ−1はカープレックスCS−7(エボニックデグサ)を用いた。
【0054】
実施例1
ポリアミド樹脂Aからなるペレット100重量部に、表1に記載された処方を基に上記無機粒子マスターペレットの製造方法を用いて得られたマスターペレット2重量部、エチレンビスステアロアミド0.04重量部をヘンシェルミキサー内に添加して混合した。得られたポリアミド樹脂組成物を上記した製膜条件で製膜し、80μmの未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の評価結果を表1に示す。
【0055】
各種膜状体特性・外観ともに優れていることがわかる。
【0056】
実施例2〜5
表1に記載された処方にて、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を調製し、未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の特性を表1に示す。いずれも膜状体物性は良好であった。
【0057】
比較例1
ポリアミド樹脂Aからなるペレット100重量部に、表2に記載された処方を基に上記無機粒子マスターペレットの製造方法を用いて得られたマスターペレット1.5重量部、エチレンビスステアロアミド0.04重量部をヘンシェルミキサー内に添加して混合した。得られたポリアミド樹脂組成物を上記した製膜条件で製膜し、80μmの未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の評価結果を表2に示す。
巻き上がり曲率以外の膜状体特性に問題は見られなかったが、巻き上がり曲率が劣るものであった。
【0058】
比較例2
ポリアミド樹脂Aからなるペレット100重量部に、表2に記載された処方を基に上記無機粒子マスターペレットの製造方法を用いて得られたマスターペレット6重量部、エチレンビスステアロアミド0.04重量部をヘンシェルミキサー内に添加して混合した。得られたポリアミド樹脂組成物を上記した製膜条件で製膜し、80μmの未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の評価結果を表2に示す。
【0059】
ヘイズ以外の膜状体特性には問題は見られなかったが、ヘイズは劣るものであった。
【0060】
比較例3〜4
表2に記載された処方にて、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を調製し、未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の特性を表2に示す。ヘイズ以外の膜状体特性には問題は見られなかったが、ヘイズは劣るものであった。
【0061】
比較例5〜6
表2に記載された処方にて、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を調製し、未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の特性を表2に示す。巻き上がり曲率以外の膜状体特性には問題は見られなかったが、巻き上がり曲率は劣るものであった。
【0062】
比較例7
ポリアミド樹脂Aからなるペレット100重量部に、CM1021の代わりにCM1021を冷凍粉砕して得た粉砕品(ナイロンパウダー、平均粒径310μm、水分率0.08重量%)を使用し、押出機の元込めから供給し、かつシリカ−1(10重量部)押出機の元込めから供給する以外は上記無機粒子マスターペレット製造方法と同様にして製造したマスターペレット2重量部、エチレンビスステアロアミド0.04重量部をヘンシェルミキサー内に添加して混合した。得られたポリアミド樹脂組成物を上記した製膜条件で製膜し、80μmの未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の評価結果を表3に示す。巻き上がり曲率以外の膜状体特性には問題は見られなかったが、巻き上がり曲率は劣るものであった。
【0063】
比較例8
ポリアミド樹脂Aからなるペレット100重量部に、CM1021の代わりにCM1021を冷凍粉砕して得た粉砕品(ナイロンパウダー、平均粒径310μm、水分率0.08重量%)を使用し、押出機の元込めから供給し、かつシリカ−1(10重量部)押出機の元込めから供給する以外は上記無機粒子マスターペレット製造方法と同様にして製造したマスターペレット4重量部、エチレンビスステアロアミド0.04重量部をヘンシェルミキサー内に添加して混合した。得られたポリアミド樹脂組成物を上記した製膜条件で製膜し、80μmの未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の評価結果を表3に示す。巻き上がり曲率以外の膜状体特性には問題は見られなかったが、巻き上がり曲率は劣るものであった。
【0064】
比較例9
ε−カプロラクタム1kgに、蒸留水10g、無機粒子2gを原料として、上記した重合方法で重合し、得られた重合時無機添加ナイロン6樹脂ペレットを、上記した製膜条件で製膜し、80μmの未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の評価結果を表3に示す。巻き上がり曲率以外の膜状体特性には問題は見られなかったが、巻き上がり曲率は劣るものであった。
【0065】
比較例10
ε−カプロラクタム1kgに、蒸留水10g、無機粒子4gを原料として、上記した重合方法で重合し、得られた重合時無機添加ナイロン6樹脂ペレットを、上記した製膜条件で製膜し、80μmの未延伸膜状体を得た。得られた膜状体の評価結果を表3に示す。巻き上がり曲率およびヘイズは劣るものであった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【符号の説明】
【0069】
1 30mm短軸押出機
2 70mmφリングダイス
3 冷却バス(水冷)
4 巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)および(b)をドライブレンドし、膜状体に製膜するポリアミド樹脂膜状体の製造方法。
(a)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂Aからなるペレット 100重量部
(b)以下の(イ)を押出機の元込め位置から供給し、(ロ)を(イ)溶融後に供給し、溶融混練して得られるマスターペレット 2〜5重量部
(イ)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂B 100重量部
(ロ)無機粒子 7〜13重量部
【請求項2】
無機粒子がシリカ粒子である請求項1記載のポリアミド膜状体の製造方法。
【請求項3】
製膜方法が、水冷インフレーション製膜法である請求項1または2記載のポリアミド樹脂膜状体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−67237(P2012−67237A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214683(P2010−214683)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】