説明

ポリアミノ酸を形成または分解するバシラス・リケニホルミス由来の新規遺伝子産物およびそれに基づく改良された生物工学的生産方法

本発明は、ポリアミノ酸の形成にin vivoで関与するバシラス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)由来の5種または4種の新規遺伝子およびその遺伝子産物、ならびに十分に類似した遺伝子およびタンパク質に関する。当該遺伝子は、ywsC、ywsC’、ywtA、ywtBおよびywtDであり、また当該タンパク質はそれによってコードされたタンパク質である。遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBを使用して、機能的に不活性化された微生物による生物工学的生産方法を改良することができる;反対に、ポリ−γ−グルタミン酸を分解するペプチドをコードする遺伝子ywtDは、発現増強により生物工学的生産方法の改良に寄与し得る。前記遺伝子を積極的に使用して、好ましくはポリγ−グルタミン酸を修飾または分解することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バシラス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)由来の5種または4種の新規遺伝子およびその遺伝子産物、ならびに十分に類似した遺伝子およびタンパク質に関するもので、それらはポリアミノ酸の形成、修飾および/または分解にin vivoで関与し、この目的のために、かつそれに基づいて、これらの遺伝子の不活性化または活性化を特徴とする微生物により改良された生物工学的生産方法にそれらを使用することができる。
【0002】
本発明は、生物工学の分野、具体的には対象とする生製品を形成することができる微生物の発酵による生製品の製造におけるものである。これには、例えば、低分子量化合物、例えば栄養補助食品または医薬関連化合物の製造、あるいはその多様性のために産業的用途に関する広範な分野が存在するタンパク質の製造が含まれる。第1の場合では生製品を製造するために該当する微生物の代謝特性を利用および/または修飾し、第2の場合では、目的とするタンパク質の遺伝子を発現する細胞を使用する。したがって、どちらの場合も、遺伝子組換え生物(GMO)が主として関係する。
【背景技術】
【0003】
微生物の発酵についての、特に産業規模でも広範な従来技術が存在し、それは、発酵槽の技術設計を介して生成速度および栄養利用に関しての該当する株の最適化から、該当する細胞自体および/または発酵培地からの価値のある生成物の単離にまで及ぶ。遺伝学と微生物学の両方、ならびにプロセス工学および生化学の手法がそれに適用される。本発明の目的は、使用する微生物の共通の特性に関して、特に使用する株の遺伝的特性のレベルで実際の発酵工程の障害となるこの方法を改良することである。
【0004】
工業的な生物工学的生産では、該当する微生物を、その代謝特性に適するように設計された発酵槽中で培養する。培養の間、その微生物は提供された基質を代謝し、実際の生成物に加えて、通常は対象とならず、かつ/または、下記で説明するように、通常、発酵または後処理における問題につながる可能性がある多数の他の物質を形成する。
【0005】
発酵は、通常非常に複雑な方法であり、多数の異なるパラメーターを調整し、モニターしなければならない。したがって、例えば使用する微生物に発酵の間中酸素を十分に供給しなければならない(通気速度の調節)ことを意味する好気的方法が非常にしばしば使用される。そのようなパラメーターのさらなる例は、反応装置の外形、栄養培地の連続して変化する組成、pHまたはCO形成速度である。経済性の点からも、方法管理自体に関しても特に重要なパラメーターは、例えば、確実に反応装置の内容物ができるだけ完全に混合されるようにする撹拌システムを通して必要なエネルギー導入量である。さらに、基質の分配に加えて、生物への酸素の十分な供給も確実になされる。
【0006】
発酵終了後、生成用生物の除去に加えて、いわゆる発酵槽スラリーから価値のある対象生成物を精製および/または濃縮することが通常必要である。後処理方法は、例えば、様々なクロマトグラフィーおよび/または濾過の工程を含み得る。したがって、価値のある生成物の含有量に加えて、発酵槽スラリーの生物物理学的特性、特に発酵終了直後のその粘性も全体的な後処理方法の成功に決定的に重要である。
【0007】
望ましくない効果も起こり得るので、その特性はまた、選択した微生物の代謝活性によっても影響を受ける。これには、例えば、発酵中における栄養培地の粘性の頻繁な増大がある。これは混合の妨害となり、それによって物質の輸送および反応装置内の酸素供給が損なわれる。粘性の増大が例えば濾過工程の効率を大幅に損なうので、大部分の問題が続く後処理の間で生じる。
【0008】
バシラス属の種が、本質的に、該当するγペプチド結合を介して連結されたポリアミノ酸を意味するポリγ−グルタミン酸(PGA)および/またはポリγ−アスパラギン酸を含む粘液を産生することが特に知られている。枯草菌(Bacillus subtilis)に対する科学的研究では、それは主に3種の遺伝子ywsC、ywtAおよびywtBならびにそれに由来する遺伝子産物であり、それらはポリγ−グルタミン酸の産生に関係し、ywtDの遺伝子産物は分解に関与する。遺伝子の一般表記「ywt」は、同じ機能について通常使用される略語「cap」および「pgs」とこの関係において同義である。これは下記で説明する。
【0009】
M.Ashiuchiらによる、Eur.J.Biochem.、第268巻、5321〜5328ページにある文献「Physiological and biochemical characteristics of poly gamma−glutamate synthetase complex of Bacillus subtilis」(2001)では、枯草菌由来の3種のサブユニットPgsB、PgsCおよびPgsAからなるPgsBCA(ポリγ−グルタミン酸合成酵素複合体BCA)酵素複合体について記載されている。この複合体は、文献によれば、非定型アミドリガーゼであり、グルタミン酸のDとLの光学異性体をどちらも対応するポリマーに転換する。この文献によれば、それに記載されている遺伝子破壊実験は、この複合体が枯草菌中のこの反応を触媒する唯一のものであるという証拠としてみなされる。
【0010】
Y.Urushibataらは、J.Bacteriol.、第184巻、337〜343ページにある文献「Characterization of the Bacillus subtilis ywsC gene,involved in gamma−polyglutamic acid production」(2002)中で、とりわけ3種の遺伝子ywsC、ywtAおよびywtBの欠失突然変異により、枯草菌におけるPGAの産生に関与する3種の遺伝子産物は、これら3種の遺伝子によってコードされることを示している。それらは、この順序で、それに続く遺伝子ywtCとともに、この微生物中で可干渉性オペロンを形成する。
【0011】
PGAの代謝に関連するさらなる遺伝子が、それ自体のオペロンにおけるywtCの下流にある枯草菌のゲノムに位置することは、文献「Characterization of the Bacillus subtilis ywtD gene,whose product is involved in gamma−polyglutamic acid degradation」(2003)、J.Bacteriol.、第185巻、2379〜2382ページ中で、T.SuzukiおよびY.Taharaによって示されている。この遺伝子は、PGAを加水分解することができるDL−エンドペプチダーゼをコードしており、そのためγ−DL−グルタミルヒドロラーゼと呼ぶことができる。
【0012】
これらの酵素の最新の概説は、M.AshiuchiおよびH.Misonoによる、Appl.Microbiol.Biotechnol.、第59巻、9〜14ページ、2002にある論文「Biochemistry and molecular genetics of poly−gamma−glutamate synthesis」によってさらに提供されている。pgsB、pgsCおよびpgsAと相同であり、炭疽菌(B.anthracis)におけるPGA合成酵素複合体をコードする遺伝子は、その中でcapB、capCおよびcapAと呼ばれている。下流に位置する遺伝子は、この論文によれば、炭疽菌では(「D−PGA脱重合酵素」の)dep、枯草菌では(「PGA脱重合酵素」の)pgdSと呼ばれる。
【0013】
その当技術分野の現在の状況では、これらの酵素活性は、主として、ポリγ−グルタミン酸を、例えば化粧品で使用する原材料として製造するためにすでに積極的に使用されているが、その正確なDNA配列およびアミノ酸配列は、特にバシラス・リケニホルミス由来のものは今まで知られていない。したがって、例えば、出願JP08308590Aは、PGA産生株自体の、すなわち枯草菌やバシラス・リケニホルミスなどのバシラス種の発酵によるPGAの製造について開示しており、培地からのこの原材料の単離についても記載されている。枯草菌変種chunkookjangは、出願WO02/055671A1によれば、それに特に適した微生物である。
【0014】
このように、一部の発酵では、発酵によって生成される価値のある生成物としてGLAに関心がもたれている。
【0015】
しかし、他のすべての発酵における関心事は、価値のある他の生成物の製造にあり、この関係から、ポリアミノ酸の形成は、上記した理由で、否定的な副作用を意味する。その形成に起因する発酵培地の粘性の増大を克服する通常の手順は、撹拌器の速度を上げることである。しかし、これはエネルギー導入量に影響を及ぼす。さらにその結果、発酵微生物は、微生物にとってはかなり大きなストレス要因となる剪断力の増大にさらされる。結局、非常に高い粘性は、それによっても克服することはできないので、結果として粘性が高くなければ産生を継続できるとはいえ、発酵の成熟前に終了が必要となり得る。
【0016】
したがって、多数の発酵方法の否定的な副作用としての粘液形成は、様々な理由で、発酵の全体的な結果に対して否定的な作用を及ぼす可能性がある。栄養培地の粘性の増大に関わらず連続発酵の継続に成功するための従来の方法は、特にそれでは原因の制御とならないため、不十分であるとしかいえない。
【0017】
したがって、より差し迫った問題は、微生物の発酵中に、粘液、特にポリγ−グルタミン酸などのポリγ−アミノ酸に起因する粘液の望ましくない形成をできる限り抑制することであった。それは特に、原因の制御を示す解決策を見出すことを意図するものであった。この問題のさらなる側面は、GLA合成遺伝子産物の積極的利用、ならびにその分解および/または修飾のための該当する遺伝子の供給である。
【0018】
ポリアミノ酸の形成または分解に関与する下記の各タンパク質は、各場合で、この問題に対して基本的に等価な部分的な解決策となる:
−配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を示すヌクレオチド配列ywsCによってコードされるYwsC(CapB、PgsB);
−配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも83%の同一性を示すヌクレオチド配列ywsC’によってコードされるYwsC’(YwsCの切断型変異体);
−配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも82%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtAによってコードされるYwtA(CapC、PgsC);
−配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも72%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtBによってコードされるYwtB(CapA、PgdA);および
−配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも67%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtDによってコードされるYwtD(Dep、PgdS)。
【0019】
例えば、言及したUrushibataらによる文献から明らかなように、GLA形成に関与する4種または3種の遺伝子は、枯草菌において、同じオペロン上に連続して存在する。ywtDは、その直接下流に位置する。in vivoで複合体として一緒に作用するこれらの構成成分、およびそれによって形成されたポリアミノ酸に対して作用する下流の構成成分からなるこの機構が、特にバシラス属の多数の別の微生物でも見出されることが考えられる。したがって、共通の生化学的機能に加えて、本発明の統一性をもたらす局面が遺伝子レベルでも存在する。
【0020】
さらなる部分的な解決策は、該当する核酸ywsC、ywsC’、ywtA、ywtBおよびywtD、ならびに、それに基づく、微生物の発酵中にポリアミノ酸に起因する粘液の形成を低下させるための該当する核酸の使用、ならびに対応する微生物の発酵方法によって示される。本発明に従った、遺伝子レベルでの粘液形成の低下では、遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBの少なくとも1つを機能的に不活性化し、かつ/あるいはywtDの活性を亢進する。さらに、ポリγ−グルタミン酸の製造、修飾または分解のためにこれらの遺伝子または誘導遺伝子産物が積極的に使用されている。
【0021】
原則として、発酵性微生物すべてに対し、特にバシラス属の微生物に対して適用可能な本発明により、ポリアミノ酸、特にGLAの形成を遺伝子レベルで防止するか、または直ちにそれをまた分解させて、ポリアミノ酸以外の価値のある生成物、特に薬学上重要な低分子量化合物またはタンパク質の発酵生産に使用される微生物をもたらす。一方では、これは培養培地の粘性、さらには混合性、酸素導入量および費やされるエネルギーに対して有利な効果を有し、他方では、対象とする生成物の後処理が大幅に促進される。さらに、使用する原材料、例えばN源の大部分は、目的としない生成物には転換されないため、その結果、全体的に高い発酵収率が期待される。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、前記遺伝子は、具体的には生物工学的に生産され、産生細胞中に、またはそれとは無関係に触媒として適当な反応混合物中に導入され、得られた誘導タンパク質のYwsC、YwsC’、YwtA、YwtBおよび/またはYwtDにより、GLA合成遺伝子産物の積極的使用に、あるいはその分解および/または修飾に現在利用可能である。
【0023】
第1の部分的な解決策は、タンパク質YwsC(CapB、PgsB)であって、それはポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を示すヌクレオチド配列ywsCによってコードされる。
【0024】
この特定の酵素は、バシラス・リケニホルミス DSM13のゲノムの分析から得られた(実施例1を参照)。このタンパク質は、本出願の配列番号1および2で示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列により再現性よく利用可能できる(実施例1を参照)。
【0025】
これは、緒言で言及した文献情報に一致して、ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体のサブユニットの形態をとる。当技術分野の現段階で知られ、それに最も類似したタンパク質は、枯草菌由来の相同体YwsCであることが判明しており、それはGenBankデータベース(米国国立衛生研究所の国立生物工学情報センターNCBI、米国メリーランド州Bethesda)に受入番号AB046355.1で示され、核酸レベルで同一性75.4%の相同性を有するが、その一致はアミノ酸レベルで同一性86.1%である(実施例2を参照)。これらの有意な一致から、同じ生化学的機能だけでなく、特許請求の範囲内にある、同じ機能を有する多数の関連タンパク質の存在も示唆され、それもまた、本出願によって付与される保護の中に含まれる。
【0026】
下記の実施態様は、この第1の部分的な解決策に割り当てられる:
−配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされる任意の対応するタンパク質YwsC。これは、配列の一致が高いことから導き出される結論は、機能、および遺伝子レベルでの相互の置換性における一致が大きいためである。
−ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも91%の同一性を示し、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を有する任意のタンパク質YwsC(CapB、PgsB)。
【0027】
本出願に関して、「少なくともX%」という形式の表現は、「極端な値Xおよび100、ならびにその間にあるすべての整数および非整数の百分率を含めたX%〜100%」を意味する。
【0028】
バシラス・リケニホルミス DSM13から得られた特定のタンパク質が各場合で最も好ましい。この理由は、本出願で具体的に記載されており、100%の再現性で利用できるためである。
【0029】
第2の部分的な解決策は、タンパク質YwsC’(YwsCの切断型変異体である)であって、該タンパク質は、ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも83%の同一性を示すヌクレオチド配列ywsC’によってコードされる。
【0030】
この特定の酵素は、バシラス・リケニホルミス DSM13のゲノムの分析から得られた(実施例1を参照)。このタンパク質は、本出願において配列番号3および4で示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列により再現性よく利用可能である(実施例1を参照)。
【0031】
実施例1でさらに説明するように、図6に示すバシラス・リケニホルミスと枯草菌に由来するYwsC間の配列比較から、バシラス・リケニホルミスに由来するYwsCの最初の16個のアミノ酸が、ポリγ−グルタミン酸合成酵素複合体のサブユニットCとしてのその機能にとって重要でないことが示唆される。したがって、本発明は、この切断型変異体でも実施される。
【0032】
本出願に関して言及される、「5種または4種の遺伝子」とは、本発明に従って、ywsCおよびywsC’を2種の遺伝子として扱い、その得られるタンパク質を2種のタンパク質として扱うことを意味する。その一方で、おそらく、これらの「遺伝子」の両方が、各場合で該当する生物中にin vivoで存在するのではなく、各場合でその1つだけが存在し、その結果、対応する遺伝子産物YwsCまたはYwsC’の1つだけがやはり存在する可能性が高いことが想定される。したがって、第1および第2の部分的な解決策は、ある程度は、同じ対象の2つの側面を表すものである。しかし、2つの部分的な解決策に分けることは、アミノ酸レベルでは違いがあるため妥当であると思われる。
【0033】
当技術分野の現段階で知られ、それに最も類似したタンパク質はまた、枯草菌由来の相同体YwsCであることが判明しており、それはGenBankデータベースに受入番号AB046355.1で示され、核酸レベルで同一性78.5%の相同性を有し、アミノ酸レベルでの一致は、同一性89.6%である(実施例2を参照)。
【0034】
上記の記載に従って、下記の実施態様は、この第2の部分的な解決策に割り当てられる:
−配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされる任意の対応するタンパク質YwsC’。
−ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を示し、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を有する任意のタンパク質YwsC’(YwsCの切断型変異体である)。
【0035】
本出願で具体的に記載されており、100%の再現性で利用できるため、バシラス・リケニホルミス DSM13から得られた特定のタンパク質が各場合で最も好ましい。
【0036】
第3の部分的な解決策は、タンパク質YwtA(CapC、PgsC)であり、それはポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも82%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtAによってコードされる。
【0037】
この特定の酵素は、バシラス・リケニホルミス DSM13のゲノムの分析から得られた(実施例1を参照)。このタンパク質は、本出願において配列番号5および6で示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列により再現性よく利用できる(実施例1を参照)。
【0038】
これは、緒言で言及した文献情報と一致して、ポリγ−グルタミン酸合成酵素複合体の別のサブユニットの形態をとる。当技術分野の現段階で知られ、それに最も類似したタンパク質は、枯草菌由来の相同体YwsAであることが判明しており、それはGenBankデータベースに受入番号AB046355.1で示され、核酸レベルで同一性77.8%の相同性を有するが、その一致は、アミノ酸レベルで同一性89.9%である(実施例2を参照)。これらの有意な一致から、同じ生化学的機能だけでなく、特許請求の範囲内にある、同じ機能を有する多数の関連タンパク質の存在も示唆され、それもまた、本出願によって付与される保護の中に含まれる。
【0039】
下記の実施態様は、この第3の部分的な解決策に割り当てられる:
−配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされる任意の対応するタンパク質YwtA。
−ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を示し、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を有する任意のタンパク質YwtA(CapC、PgsC)。
【0040】
本出願で具体的に記載され、100%の再現性で利用できるので、バシラス・リケニホルミス DSM13から得られた特定のタンパク質が各場合で最も好ましい。
【0041】
第4の部分的な解決策は、タンパク質YwtB(CapA、PgsA)であり、それはポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも72%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtBによってコードされる。
【0042】
この特定の酵素は、バシラス・リケニホルミス DSM13のゲノムの分析から得られた(実施例1を参照)。このタンパク質は、本出願において配列番号7および8で示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列により再現性よく利用できる(実施例1を参照)。
【0043】
これは、緒言で言及した文献情報に一致して、ポリγ−グルタミン酸合成酵素複合体の第3のサブユニットの形態をとる。当技術分野の現段階で知られ、それに最も類似したタンパク質は、枯草菌由来の相同体YwsAであることが判明しており、それはGenBankデータベースに受入番号AB046355.1で示され、核酸レベルで同一性67.1%の相同性を有するが、その一致は、アミノ酸レベルで同一性65.8%である(実施例2を参照)。これらの有意な一致から、同じ生化学的機能だけでなく、特許請求の範囲内にある、同じ機能を有する多数の関連タンパク質の存在も示唆され、それもまた、本出願によって付与される保護の中に含まれる。
【0044】
下記の実施態様は、この第4の部分的な解決策に割り当てられる:
−配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされる任意の対応するタンパク質YwtB。
−ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を示し、少なくとも75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を有する任意のタンパク質YwtB(CapA、PgsA)。
【0045】
本出願で具体的に記載され、100%の再現性で利用できるので、バシラス・リケニホルミス DSM13から得られた特定のタンパク質が各場合で最も好ましい。
【0046】
第5の部分的な解決策は、タンパク質YwtD(Dep、PgdS)であって、それはポリアミノ酸の分解に関与し、配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも67%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtDによってコードされる。
【0047】
この特定の酵素は、バシラス・リケニホルミス DSM13のゲノムの分析から得られた(実施例1を参照)。このタンパク質は、本出願において配列番号9および10で示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列により再現性よく利用できる(実施例1を参照)。
【0048】
これは、緒言で言及した文献情報に一致して、γ−DL−グルタミルヒドロラーゼ、D−PGA脱重合酵素またはPGA脱重合酵素の形態をとる。当技術分野の現段階で知られ、それに最も類似したタンパク質は、枯草菌由来の相同体YwtDであることが判明しており、それはGenBankデータベースに受入番号AB080748で示され、核酸レベルで同一性62.3%の相同性を有し、アミノ酸レベルでの一致は、同一性57.3%である(実施例2を参照)。これらの有意な一致から、同じ生化学的機能だけでなく、特許請求の範囲内にある、同じ機能を有する多数の関連タンパク質の存在も示唆され、それもまた、本出願によって付与される保護の中に含まれる。
【0049】
下記の実施態様は、この第5の部分的な解決策に割り当てられる:
−配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされる任意の対応するタンパク質YwtD。
−ポリアミノ酸の分解に関与し、配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも62%の同一性を示し、少なくとも65%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を有する任意のタンパク質YwtD(Dep、PgdS)。
【0050】
本出願で具体的に記載され、100%の再現性で利用できるので、バシラス・リケニホルミス DSM13から得られた特定のタンパク質が各場合で最も好ましい。
【0051】
各場合において、これらの中で、ポリアミノ酸の形成または分解に関与し、微生物によって、好ましくは細菌によって、特に好ましくはグラム陽性細菌によって、これらの中で好ましくはバシラス属の1つによって、それらの中で特に好ましくはバシラス・リケニホルミス種の1つによって、その中で極めて特に好ましくはバシラス・リケニホルミス DSM13によって天然に産生される前記した本発明のタンパク質が各場合に優先される。
【0052】
これは、この問題に従って、これらの中で特にグラム陽性細菌に由来する細菌を、特に、バシラスのような、産生した価値のある産物およびタンパク質を分泌することができるものを頻繁に使用する、微生物の発酵の改良に関心があったからである。さらに、これに関して豊富な臨床経験が存在する。さらに、言及した通り、バシラス・リケニホルミスの、具体的にはバシラス・リケニホルミス DSM13の配列表で示されるタンパク質を検出することが可能であった。該当する生物の関係の程度が大きくなることが、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の一致の程度が大きくなること、即ちその交換可能性に結びつくことが予想される。
【0053】
これまでの記載に従って、各場合で該当する下記の核酸は、記載した部分的な解決策に対する本発明の別の表現として割り当てられる:
−ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywsC(capB、pgsB);
−配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、対応する核酸ywsC;
−ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも83%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywsC’ (ywsCの切断型変異体である);
−配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、対応する核酸ywsC’;
−ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも82%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywtA(capC、pgsC);
−配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、対応する核酸ywtA;
−ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも72%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywtB(capA、pgsA);
−配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、対応する核酸ywtB;および
−ポリアミノ酸の分解に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも67%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywtD(dep、pgdS);および
−配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくは100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、対応する核酸ywtD。
【0054】
本明細書とともに提供される核酸は、該当するタンパク質の活性の不活性化または亢進についてそれ自体知られている分子生物学の方法により使用することができる。したがって、不活性化は、例えば、適当な欠失ベクターを介して可能であり(下記を参照)、活性の亢進は、有利には過剰発現によって起こり、それは発現ベクターの助けを借りて実現することができる(下記を参照)。したがって、提起された問題は、ywsC、ywsC’、ywtAおよび/またはywtBの不活性化、ならびに/あるいはywtD遺伝子活性の亢進により、これらの核酸を介して果たされる。
【0055】
各場合で示される相同性の範囲内にある対応する遺伝子は、対象とする生物から、例えば、プローブの助けを借りて得ることができ、そのプローブは、配列1、3、5、7、または9に基づいて調製することができる。これらの完全な遺伝子は、PCRプライマーを作製するためのモデルとして使用することもでき、そのプライマーを介して、該当する遺伝子を、対応する全DNA調製物から利用することもできる;これらの遺伝子は、前記のタンパク質を提供することができる。これに関する成功率は、該当する株とプローブまたはPCRプライマーの構築に使用した株、したがってこの場合ではバシラス・リケニホルミスの関係が近くなるとともに通常大きくなる。
【0056】
各場合において、これらの中で、微生物中に、好ましくは細菌中に、特に好ましくはグラム陽性細菌中に、これらの中で好ましくはバシラス属の1つの中に、それらの中で特に好ましくはバシラス・リケニホルミス種の1つの中に、その中で極めて特に好ましくはバシラス・リケニホルミス DSM13中に天然に存在する本発明の核酸が各場合で優先される。
【0057】
上記した通り、かかる微生物の発酵にこれらの遺伝子を利用することに特定の関心がもたれている。その一方で、本発明は、本明細書に記載した遺伝子および/またはタンパク質を介して、ポリアミノ酸の、特にγグルタミン酸の代謝を、少なくとも一部分で、それが合成、修飾および/または分解されるときに調整することができる可能性にも関連する。これについての成功率は一般的に、特に適当なトランスジェニック宿主細胞において、該当する遺伝子と天然の細胞の遺伝子との一致の程度に従い高くなる。
【0058】
さらに、原則として全ての天然の生物から容易に別の実施態様の遺伝子およびタンパク質を単離することが可能である。
【0059】
本発明のさらなる実施態様は、上記した本発明のタンパク質をコードするすべての核酸である。
【0060】
したがって、特に関連性が薄い種間では、それぞれのアミノ酸をコードする同義コドン頻度に違いがあり、タンパク質生合成装置も例えば利用可能な数の適当な担持tRNAを介してそれに適合する。関連性が低い種への前記遺伝子の1つの移入は、それがコドンに関して適切に最適化されている場合、例えば、該当するタンパク質の欠失突然変異または合成に特にうまく使用することができる。DNAレベルでは高い割合であるが、アミノ酸レベルでの結果に影響しない違いを導入することが可能である。この理由から、そのような核酸も本発明の実施態様に相当する。
【0061】
本発明はさらに、前記に示した本発明の核酸領域を含むベクターに関する。
【0062】
これは、本発明に関連する核酸を取り扱うため、即ち具体的には本発明のタンパク質生成用に調製するために、それらがベクター中に適切に連結されるからである。そのようなベクターおよび関連する操作方法は、従来技術において詳細に記載されている。ベクターは、クローニング用でも発現用でも様々な範囲で多数市販されている。これには、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージまたはウイルスに由来するベクター、あるいは殆どの合成ベクターが含まれる。それらのベクターはまた、細胞型の性質に従って区別され、その細胞型の中でそれらは、例えば、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、酵母または高等真核生物用のベクターへとそれら自体を確立することができる。それらは、例えば分子生物学的検討および生化学的検討、ならびに該当する遺伝子または関連するタンパク質の発現に適した開始点を形成する。これらは、関連の従来技術から明らかであるように、特に欠失または発現亢進用の構築物の調製には事実上不可欠である。
【0063】
これらの中で好ましいベクターは、上記した本発明の核酸を2つ以上含むものである。
【0064】
これは、さらに一方では該当する遺伝子を同時に保存できるか、または同じプロモーターの制御下で発現させることができるからである。他の適用によれば、本発明の遺伝子の完全なコピーを2つ以上同時に含むベクターは、複数のこれらの遺伝子で同時に欠失した欠失突然変異体を生かしておく(救済する)ように機能できる。次いで、このベクターの標的を定めた除去により、この複数の遺伝子が同時に停止する。
【0065】
他の実施態様では、本発明のベクターはクローニングベクターである。
【0066】
これは、クローニングベクターが、対象とする遺伝子の貯蔵、生物学的増幅または選択のほかに、その分子生物学的特徴付けに適しているからである。同時に、それらは輸送可能かつ貯蔵可能な形の特許請求の範囲に係る核酸であり、細胞に関連しない、例えばPCRやin vitro突然変異生成法などの分子生物学的技術の開始点でもある。
【0067】
本発明のベクターは、好ましくは発現ベクターである。
【0068】
これは、そのような発現ベクターが、生物学的生成系において対応する核酸を提供することで、該当するタンパク質を生成する基礎となるからである。本発明のこの対象の好ましい実施態様は、発現に必要な遺伝エレメント、例えば最初からこの遺伝子の前に位置する天然のプロモーター、または異なる生物由来のプロモーターによる発現ベクターである。これらのエレメントは、例えばいわゆる発現カセットの形で配置することができる。別の可能性は、1つまたはすべての制御エレメントがそれぞれの宿主細胞によっても提供されるべきであることである。発現ベクターは、例えば、選択した発現系、特に宿主細胞に整合する最適なコピー数などのさらなる特性に関して特に好ましい(下記を参照)。
【0069】
レプリコンとして存在するベクターに基づいて完全な遺伝子産物を形成する可能性は、上記した救済および特定の遺伝子の停止に特に重要である。逆に、発現ベクターを提供することは、本発明のタンパク質の形成を亢進させ、それによって該当する活性を上昇させる最良の可能性である。
【0070】
遺伝子修飾後、上記に示した本発明の核酸を1つ含む細胞は、本発明の別個の対象となる。
【0071】
これは、本発明のタンパク質を合成するための遺伝情報をこれらの細胞が含むためである。これらは、具体的には、自体既知の方法によって本発明の核酸を用いてもたらされた細胞、またはそのような細胞から誘導された細胞を意味する。この目的に適するように選択された宿主細胞は、比較的簡単に培養し得る、かつ/または高い産生収率を提供できるものである。
【0072】
ヒト胚性幹細胞を特許の保護下に置くことができない国では、原則として、本発明のそのようなヒト胚性幹細胞を、付与される保護から除外することが必要である。
【0073】
本発明の細胞により、例えば、対応する遺伝子の増幅が可能となるが、それらに突然変異を誘発させ、またはそれらを転写かつ翻訳し、該当するタンパク質を最終的に生物工学的に生産することも可能となる。この遺伝情報は、細菌の場合ではプラスミド中に位置するという意味で別個の遺伝エレメントとして染色体外で存在することもでき、あるいは、染色体中に組み込むこともできる。適切な系の選択は、例えば、遺伝子または生物の性質および貯蔵期間や、突然変異生成または選択の性質などの問題に依存する。
【0074】
これらには、特にYwtDを過剰発現する細胞のほかに、特に、トランス位にあるベクターを介して遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBの1つを含み、それによって対応する欠失に使用することができるものである(下記を参照)。
【0075】
これは、前記核酸が、そのような細胞中のベクターの、具体的には前記したベクターの一部である好ましい実施態様を説明するものである。
【0076】
細菌である宿主細胞がこれらの中では好ましい。
【0077】
これは、細菌が、世代時間が短く、培養条件に対する要求が低いことを特徴とするからである。費用効率の高い方法を確立することがそれによって可能である。さらに、細菌の発酵においての豊富な経験が存在する。グラム陰性またはグラム陽性の細菌は、個々の場合で実験的に確認されるべきである多様な理由で、例えば栄養源、生成物形成速度、必要とする時間などの特定の生成に適する可能性がある。
【0078】
好ましい実施態様は、グラム陰性細菌、特に大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)またはザントモナス(Xanthomonas)属の1つ、特に大腸菌(E.coli)K12、大腸菌Bまたはクレブシエラ・プランチコラ(Klebsiella planticola)株、特に好ましいものは大腸菌BL21(DE3)、大腸菌RV308、大腸菌DH5α、大腸菌JM109、大腸菌XL−1またはクレブシエラ・プランチコラ(Rf)株の派生株を含む。
【0079】
これは、多数のタンパク質が、例えば大腸菌などのグラム陰性細菌の細胞周辺腔中に分泌されるからである。これは、特定の適用に有利となる可能性がある。出願WO01/81597A1も、グラム陰性細菌による発現タンパク質の排出を実現する方法を開示している。好ましいものとして言及したグラム陰性細菌は、商業的にまたは菌株の公的収集機関を通じてという意味で通常容易に入手可能であり、例えば、多数入手可能であるようなベクターなどの他の構成成分と関連して特定の調製条件に対して最適化することができる。
【0080】
別の同様に好ましい実施態様は、グラム陽性細菌、特にバシラス、ブドウ球菌(Staphylococcus)またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属の1つ、特に好ましいものはバシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニホルミス、バシラス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、枯草菌、バシラス・グロビジイ(B.globigii)またはバシラス・アルカロフィラス(B. alcalophilus)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)あるいはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)種の1つ、これらの中で極めて特に好ましくはバシラス・リケニホルミス DSM13の派生株を含む。
【0081】
これは、グラム陽性細菌が、細胞の周囲にある栄養培地中に分泌タンパク質を直ちに放出し、必要に応じて本発明の発現タンパク質を栄養培地から直接精製することができるグラム陰性細菌との基本的な違いを有するからである。さらに、それらは、産業上重要な酵素の起源である殆どの生物と関連しているか、またはそれと同一であり、殆どそれら自身で同等の酵素を産生し、その結果それらは類似したコドン頻度を示し、そのタンパク質合成装置は自然と適切に形成される。バシラス・リケニホルミス DSM13の派生株は極めて特に好ましい、これは、一方ではその派生株は当技術分野の現段階で生物工学生産株としても広く使用されており、そして他方では本出願は本発明の当該遺伝子およびタンパク質をバシラス・リケニホルミス DSM13から入手可能することができ、その結果本発明の実施態様がかかる株において成功する可能性が最も高いことを理由とする。
【0082】
本発明のさらなる実施態様は、上記した1つまたは複数の遺伝子産物YwsC、YwsC’、YwtA、YwtBおよびYwtDを調製する方法によって形成される。
【0083】
これには、上記した本発明のタンパク質を調製する任意の方法、例えば化学合成法が含まれる。しかし、方法に関しては、個々の態様において上記で論じ、当技術分野の現段階で確立されている、分子生物学、微生物学および生物工学の調製法すべてが好ましい。その目的としては、主に、例えばポリ−γ−グルタミン酸の合成、修飾または分解のための適切な用途に利用できるようにするために、本発明のタンパク質を得ることである。
【0084】
これに関して好ましい方法は、上記に示した本発明の核酸を使用して行い、好ましくは上記に示した本発明のベクターを使用して行い、特に好ましくは上記に示した本発明の細胞を使用して行うものである。
【0085】
これは、前記核酸、特に配列番号1、3、5、7および9として配列表中に示した核酸が、それに対応する好ましい遺伝情報を、微生物学的に利用可能な形態において、すなわち遺伝子的産生方法において利用できるように為すためである。宿主細胞によって特にうまく利用することができるベクターに、またはそのような細胞自体にそれを提供することがより好ましい。該当する生成方法は、当業者にそれ自体知られている。
【0086】
本発明の実施態様は、該当する核酸配列に基づいて、タンパク質生合成がin vitroで再現される無細胞発現系でもよい。本発明のタンパク質を調製するために、すでに言及した全てのエレメントと新規な方法とを組み合わせることもできる。方法工程の可能な多数の組合せが本発明の各タンパク質についてさらに考えられる、その結果特定の個々の場合について最適な方法を実験的に確認することが必要となる。
【0087】
そのようなタイプの本発明の方法は、ヌクレオチド配列が1つまたは、好ましくは、複数のコドンにおいて宿主株のコドン頻度に適合しているときにさらに好ましい。
【0088】
これは、上記内容に従って、関連性が低い種への前記遺伝子の1つの移入が、コドン頻度に関してそれが適当に最適化されている場合、該当するタンパク質を合成するために特にうまく使用することができるためである。
【0089】
本発明のさらなる表現は、微生物中でそれぞれ該当する遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBを機能的不活性化のための、上記した本発明の核酸ywsC、上記した本発明の核酸ywsC’、上記した本発明の核酸ywtA、上記した本発明の核酸ywtB、または上記した本発明のタンパク質の1つをコードする対応する核酸、あるいは各場合におけるそれらの一部の使用である。
【0090】
本出願に関して、機能的不活性化とは、ポリアミノ酸の形成に関与する酵素、またはそのような酵素のサブユニットである該当するタンパク質の機能が抑制される任意の型の修飾または突然変異を意味する。これには、事実上完全であるが不活性なタンパク質が形成される実施態様、そのようなタンパク質の不活性な部分が細胞中に存在する実施態様、該当する遺伝子がもはや翻訳されず、またはそれがまさに完全に欠失した場合の可能性までが含まれる。したがって、この実施態様におけるこれらの因子または遺伝子の特定の「使用」は、該当する細胞中でその自然な形でもはや正確には作用しないものからなる。これは、本発明の対象に従って、該当する遺伝子を停止することによって遺伝子レベルで実現される。
【0091】
遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBを不活性化する別の実施態様は、微生物中で該当する遺伝子ywtDの活性を上昇させるための、上記した本発明の核酸ywtDまたは上記した本発明のタンパク質の1つをコードする対応する核酸の使用である。
【0092】
これは、緒言に記載したように、この酵素のin vivoでの機能がGLAを分解するためである。したがって、この活性の亢進は、培養培地中のポリアミノ酸の濃度低下につながり、本発明に従って、該当する微生物の産業的発酵に対するプラスの効果を示す。この活性の亢進は、有利には遺伝子レベルで行われる。これに関する方法はそれ自体知られている。例えば、発現ベクターへのこの遺伝子の移入について言及することができる。そのようなベクターは、発酵に使用する細胞に形質転換により導入し、適当な場合に特定条件下で活性化することができ、その結果、次いで誘導タンパク質が内因的に形成されたYwtDに加えて作用する。
【0093】
好ましい実施態様では、どちらの使用も、活性の機能的な不活性化または上昇が、微生物の発酵中に行われるものであり、好ましくはポリアミノ酸に起因する粘液が50%に、特に好ましくは20%未満に、極めて特に好ましくは5%未満に低下し、また中間にある整数または端数の百分率はすべて、適当に好ましい程度で理解されるものである。
【0094】
これらの値を決定するために、処理していない株の細胞および処理した株の細胞を、それ以外は同一の条件下で発酵させ、それぞれの培地の粘度を発酵期間中に適切に決定する。株以外は同一であるので、粘度の違いは、ポリアミノ酸の含量が異なることに起因する。粘性のあらゆる低下が本発明に従って所望される。両方の発酵物から試料を採取し、自体既知の方法によってポリアミノ酸を含む粘液の含量を決定することにより、百分率として比較可能な値が得られる。本発明の試料中で決定することができる値が、定常増殖期への移行期で、比較する発酵物に対応する値の50%、40%、30%、20%、10%、5%未満であり、特に好ましいものは1%未満であることがより好ましい。
【0095】
これは、この問題に関する意図が、生物工学的生産に使用する微生物の発酵を改良することであったからである。したがって、研究室規模で、適当な場合には単に中間段階に相当する宿主細胞上での該当する分子生物学的構築物、例えば大腸菌における欠失ベクターの構築を実施することは価値があり、また、特に複数の遺伝子が影響を受ける場合にそれは通常必要である。しかし、本発明によれば、遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBの不活性化が、特に発酵の間に期待される効果を示すことが所望される。ywtD遺伝子の活性の上昇は、例えば該当する導入遺伝子に関するものであり、例えば誘導性プロモーターを介して調節することができる。したがって、発酵の間に適切と思われる時点で誘導因子を加えることによって、この遺伝子の活性を意図的に誘導することができる。それに対する別法として、ストレスシグナルに、例えば粘液によって遮断された発酵槽中で混合が不十分であるときにも起こる過度に低い酸素含量に反応するプロモーターにこの遺伝子を結合することもできる。
【0096】
さらに好ましい実施態様では、本発明のこれらの使用は、遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBの2、3または4つが不活性化され、それに従い好ましさも大きくなるが、好ましくはywtD遺伝子によって媒介される活性の亢進と組合せて、不活性化されるように行われる。
【0097】
該当する生物のin vivoでは、おそらくywsCとywsC’の両方の遺伝子が同時に存在できないが、各場合にその1つだけは存在し得ることが、この点で想起できる。これらの場合では、最大で前記遺伝子の3つを不活性化することが可能であり、結果としてこの点で最も好ましい実施態様となる。
【0098】
この実施態様は、万が一これらの遺伝子の1つの不活性化に選択した分子生物学的な形の不活性化が不完全であり、細胞が依然として対応する残存活性を有する場合に保護的手段として役立つ。これは、特に枯草菌以外の宿主細胞に適用し、Ashiuchiらによれば(上記を参照)、これらの遺伝子が各場合で1コピーしか存在しないことが示されている。原則として作用が異なる2つの系がこうして一緒に組み合わせられるために、欠失の手法をywtDによって媒介される活性の亢進の手法と組み合わせることは特に価値があるように思われる。
【0099】
1つまたは複数の遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBの機能的不活性化のための使用に関する一実施態様では、不活性タンパク質をコードし、点突然変異を有する核酸が使用される。
【0100】
この型の核酸は、それ自体知られている点突然変異生成の方法によって作製することができる。そのような方法は、例えば、Fritsch、SambrookおよびManiatisの「Molecular cloning:a laboratory manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press、New York、1989のものなど、該当する手引書の中に記載されている。さらに、市販されている多数の構築キット、例えば、Stratagene、米国La JollaのQuickChange(登録商標)キットが現在その方法に利用できる。その原理は、一交換を有するオリゴヌクレオチド(ミスマッチプライマー)を合成し、一本鎖型の遺伝子とそれをハイブリダイズさせるものであり、続くDNA重合により、対応する点突然変異体がもたらされる。この目的のために、それぞれの種特異的なこれらの遺伝子の配列を使用することが可能である。相同性が高いので、本発明に従って、配列番号1、3、5および7によって提供される配列に基づいてこの反応を実施することが可能であり、特に有利である。これらの配列は、図6〜10および1〜5のアラインメント中で特に同定し得る可能な保存領域に特に基づいて、関連する種に適したミスマッチプライマーの設計に使用することもできる。
【0101】
この使用の一実施態様では、各場合において、好ましくは各場合でタンパク質をコードする領域の少なくとも70〜150個の核酸の位置を含む境界配列を含む、欠失突然変異または挿入突然変異を有する核酸を、機能的不活性化に使用する。
【0102】
これらの方法はまた、当業者にそれ自体よく知られている。したがって、制限エンドヌクレアーゼを介して適当な形質転換ベクター上の該当する遺伝子の一部を切り取り、その後そのベクターで対象とする宿主を形質転換することによって、1つまたは複数の因子YwsC、YwsC’、YwtAおよびYwtBの形成を防止することが可能であり、その宿主では、その時までに依然起こり得る相同組換えを介して活性のある遺伝子が活性のないコピーに置換される。挿入突然変異に関する実施態様では、遮断するように完全な遺伝子を、または遺伝子部分の代わりに他の遺伝子、例えば選択マーカーを単に導入することも可能である。突然変異事象の表現型の確認は、こうしてそれ自体知られている方法において行い得る。
【0103】
各場合に、細胞中に導入された欠陥遺伝子と、内因的に存在する例えば染色体上に存在する完全な遺伝子のコピーとの間で必要であるこれらの組換え事象を可能にするには、現状の知識によれば、各場合で、間にある重要でない部分と一致しない部分に対して、各場合で2つの境界配列において、少なくとも70〜150個の連結した核酸位置の一致があることが必要である。したがって、好ましい実施態様は、これらのサイズの少なくとも1つを有する2つのフランキング領域しか含まないものである。
【0104】
この使用に関する別の実施態様では、各場合で少なくとも70〜150の核酸位置を含んでいる、したがって少なくとも部分的に、好ましくは完全に、タンパク質をコードする領域の両側にある合計で2つの核酸セグメントを有する核酸を使用する。それ自体知られている方法により、例えば外向きのPCRプライマーおよび鋳型であるゲノムDNAの調製物の助力により(アンカーPCR)、これに関連して、既知の配列から開始してフランキング領域を確認することができる。これは、相同組換えにより2つの遺伝子コピーを交換することを可能にするために、タンパク質をコードするそのセグメントが必須でないからである。本発明に従って、配列番号1、3、5および7に基づいて、これに必要なプライマーを設計することが可能であり、またグラム陽性細菌の他の種用に、それらの中でも特にバシラス属の種用に設計することも可能である。この実験的手法の代替として、少なくとも部分的には多数のこれらの遺伝子をコードしていないそのような領域を、関連する種から、例えば枯草菌のデータベース・エントリーから、例えばパスツール研究所(the Institute Pasteur)、フランスParisのSubtiListデータベース(http://genolist.pasteur.fr/SubtiList/genome.cgi)から選ぶことが可能である。
【0105】
さらなる好ましい実施態様は、本発明に従って記載した使用の1つを含み、ywtD遺伝子によって媒介される活性の前記亢進のために発現ベクターを、好ましくはこの遺伝子を制御する核酸セグメントとともにこの遺伝子を含むベクターを使用する。
【0106】
すでに上記で記載したように、この遺伝子の活性の上昇、したがってその誘導タンパク質の活性の上昇は、こうして外部から意図的に制御することができ、または発酵培地中で優勢である条件を介してポリアミノ酸濃度低下に対する必要性を自動的に適合させる。ywtDをコードする記載した本発明の核酸を、特に好ましくは配列番号9に従ったものをここで使用すると特に有利である。
【0107】
本発明はまた、遺伝子修飾された微生物の形でも実施され、上記したようなものにも相応じであてはまる。
【0108】
これらは、極めて一般的には、遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBの少なくとも1つが機能的に不活性化され、またはywtDの活性が亢進した微生物である。
【0109】
これらは、好ましくは、遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBの2、3または4つが不活性化され、この順に好ましさも大きくなるが、好ましくはywtD遺伝子によって媒介される活性の亢進と組合せて不活性化される微生物である。
【0110】
これらは、好ましくは、細菌の形態での微生物である。
【0111】
これらの中で、これまでの記載に従って好ましい微生物は、グラム陰性細菌、特に大腸菌、クレブシエラ、シュードモナスまたはザントモナス属のもの、特に大腸菌K12、大腸菌Bまたはクレブシエラ・プランチコラ株、特に好ましいものは大腸菌BL21(DE3)、大腸菌RV308、大腸菌DH5α、大腸菌JM109、大腸菌XL−1またはクレブシエラ・プランチコラ(Rf)株の派生株である。
【0112】
これまでの記載に従って同様に好ましい微生物は、グラム陽性細菌、特にバシラス、ブドウ球菌またはコリネバクテリウム属のもの、特に好ましいものはバシラス・レンタス、バシラス・リケニホルミス、バシラス・アミロリケファシエンス、枯草菌、バシラス・グロビジイまたはバシラス・アルカロフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスあるいはコリネバクテリウム・グルタミカム種のもの、これらの中で特に好ましいものはバシラス・リケニホルミス DSM13である。
【0113】
本出願が基礎とする課題によれば、この目的は、主に工業的発酵方法を改良することであった。したがって、本発明は、特に本発明の対応する発酵方法において実施される。
【0114】
これらは、極めて一般には、上記した本発明の微生物の発酵のための方法である。
【0115】
これまでの記載に従って、こうして特徴付けられた方法が相応に好ましい。これには、特に1つまたは複数の遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAもしくはywtBが機能的に不活性化され、またはywtDの活性が亢進した実施態様、特にその2つの手法の組合せた実施態様が含まれる。この目的のために、特に好ましくは上記した本発明の核酸、特に配列番号1、3、5、7、または9で示されたものを手段として用いる。これは、それぞれの発酵に適するように選択された種に相応じて適用される。上記に従って、これらの中でより好ましいものは、バシラス・リケニホルミス DSM13との関係性の程度が高いものであるが、これは記載した核酸の使用に対する成功の見込みがその関係性の程度によって高くなるからである。
【0116】
本発明の発酵方法の中で、価値のある生成物を製造する方法、特に低分子量化合物またはタンパク質を製造する方法が好ましい。
【0117】
これは、これが産業的発酵の適用に関して最も重要な分野であることを理由とする。
【0118】
これらは、低分子量化合物が天然物、栄養補助食品または医薬関連化合物である場合に好ましい方法である。
【0119】
このように、例えば特に栄養補助食品として使用されるアミノ酸またはビタミンが生産される。医薬関連化合物は、医薬物の前駆体または中間体であっても、あるいはその後者自体でもよい。これらのすべての場合で、微生物の代謝特性を全体的または少なくとも個々の工程において、精巧な化学合成に代えて利用できることから、生体内変換という用語も使用される。
【0120】
このように生産されたタンパク質は酵素であって、特にα−アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、オキシドレダクターゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、オキシダーゼおよびヘミセルラーゼの群の酵素である対応する方法も同様に好ましい。
【0121】
かかる方法によって製造される工業用酵素は、例えば食品産業で使用される。したがって、α−アミラーゼは、例えばパンが固くなるのを防ぎ、または果汁を清澄化するのに使用される。プロテアーゼは、タンパク質の分解に使用される。これらすべての酵素は、界面活性剤および洗浄剤組成物での使用について記載されているが、特にグラム陽性細菌によって天然に産生されるサブチリシンプロテアーゼはその突出した位置を占める。それらは、特に繊維産業および皮革産業で、天然原材料の加工に使用される。さらに、これらすべての酵素が、化学反応の触媒として、生体内変化に関して使用されることも可能である。
【0122】
これらの酵素の多くは、本来バシラス種から得られ、そのためグラム陽性生物、特に多くの場合でバシラス・リケニホルミス DSM13の派生株も含むバシラス属の生物において、特にうまく産生される。特に、配列番号1、3、5、7および9で示される配列がまさにこの生物から得られるので、特にこれらの微生物系に基づく生産方法を本発明の助力に従って改良することができる。
【0123】
最後に、本出願で利用できる因子を、その天然の機能についてという意味で、ポリγ−グルタミン酸の標的化した製造、修飾または分解に関するという意味で積極的に使用することもできる。
【0124】
したがって、一実施態様が、ポリγ−グルタミン酸の製造、修飾または分解のための微生物による方法によって形成され、本発明の核酸ywsC、ywsC’、ywtA、ywtBおよび/またはywtD、あるいは上記した本発明のタンパク質をコードする対応する核酸の1つを導入遺伝子として使用して、好ましくは上記した本発明の対応するタンパク質を形成する。
【0125】
これらの中で好ましい方法は、バシラス属由来の微生物、特に枯草菌またはバシラス・リケニホルミスを使用する方法である。
【0126】
したがって、例えば出願JP08308590AまたはWO02/055671A1に記載のように、GLAを微生物により、具体的には枯草菌およびバシラス・リケニホルミス中で生産することが可能である。本出願で利用可能となったDNA配列を利用して、例えば適当な細胞中でのそれぞれの遺伝子の活性を上昇させ、それによってその収率を高めることができる。
【0127】
それに対する別法として、ポリアミノ酸の形成に関与する上記した本発明の遺伝子産物YwsC、YwsC’、YwtA、YwtBおよび/またはYwtDを含む、好ましくは上記した本発明の対応する核酸を使用した、ポリ−γ−グルタミン酸の製造、修飾または分解のための無細胞法も現在可能である。
【0128】
したがって、これらの因子を、例えばバイオリアクター中で反応させることができる。そのような酵素のバイオリアクターに関する設計は、従来技術から既知である。
【0129】
これらの中で特に好ましいこの型に対応する方法は、前記遺伝子産物または核酸のうち2種、好ましくは3種、特に好ましくは4種の異なるものを使用する方法である。
【0130】
これは、特に因子YwsC、YwtAおよびYwtBが、緒言で記載したように、凝集複合体を通常形成し、その結果、結合活性について言及する必要があるからである。同時またはその後のYwtD活性は、例えば、形成されたポリアミノ酸の生物物理学的特性に影響を及ぼすように機能し、例えば化粧品での使用に適合させることができる。
【0131】
下記の実施例は、本発明をさらに説明するものである。
【実施例】
【0132】
分子生物学的作業工程はすべて、例えば、Fritsch、SambrookおよびManiatisによる手引書「Molecular cloning:a laboratory manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press、New York、1989の中で示される標準的な方法、または同等の該当作業に従っている。酵素、構築キットおよび機器は、それぞれの製造業者の説明書に従って使用した。
【0133】
実施例1
バシラス・リケニホルミス DSM13からの遺伝子ywsC、ywsC’、ywtA、ywtBおよびywtDの同定
Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH,Mascheroder Weg 1b,38124 Braunschweig(http://www.dsmz.de)から誰でも入手可能である株バシラス・リケニホルミス DSM13から、標準的な方法によってゲノムDNAを調製し、それを機械的に分画化し、0.8%アガロースゲルでの電気泳動により分画化した。小さな断片のショットガンクローニングでは、サイズが2〜2.5kbの断片をアガロースゲルから溶出させ、それを脱リン酸化し、平滑末端断片としてベクターpTZ19R−CmのSmaI制限切断部位へと連結した。これは、プラスミドpTZ19Rのクロラムフェニコール耐性を付与する誘導体であり、それはFermentas(St.Leon−Rot)から入手可能である。小さな断片の遺伝子ライブラリーをこうして得た。第2のショットガンクローニングとして、酵素SauIIIaIによる部分制限消化によって得られたゲノム断片を、Stratagene、米国La JollaのSuperCos1ベクター系(「コスミドベクターキット」)中に連結し、圧倒的に大きな断片に対する遺伝子ライブラリーが得られた。
【0134】
該当する遺伝子ライブラリーでの形質転換により入手可能な細菌である大腸菌DH5α(D.Hannahan(1983):「Studies on transformation on Escherichia coli」;J.Mol.Microbiol.、第166巻、557〜580ページ)から、該当する組換えプラスミドを単離し、その配列を決定した。ダイターミネーション法(ダイターミネーター化学)をこの場合に使用し、自動配列決定機MegaBACE1000/4000(Amersham Bioscience、米国Piscataway)およびABI Prism377(Applied Biosystems、米国Foster City)によってそれを実施した。
【0135】
このように、とりわけ本出願の配列表中に示される配列番号1、3、5、7および9の配列が得られ、それらは、この配列において、遺伝子ywsC、ywsC’(ywsCの切断型変異体である)、ywtA、ywtBおよびywtDを表すものであった。それから得られたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2、4、6、8および10における対応する配列中に示される。切断型変異体ywsC’(またはYwsC’)は、遺伝子またはタンパク質のywsC(またはYwsC)を表しており、これは図6で示すような枯草菌中の相同なタンパク質についてのアミノ酸配列の比較から、N末端で16アミノ酸短いがそれ以外は非常に高い相同性を有し、従って同等の活性を有するポリペプチドであることを示しているからである。
【0136】
再現性
これらの遺伝子および遺伝子産物は、現在では、記載した配列決定を再現することを必要とせずに、これらの配列に基づいて標的を定めた方法で、それ自体既知の方法により人工的に合成することができる。それに対するさらなる別の方法として、バシラス株、特にDSMZから入手可能な株バシラス・リケニホルミス DSM13から、PCRを介して該当する遺伝子を単離することが可能であり、プライマーの合成には配列表中に示されるそれぞれの境界配列を使用することが可能である。さらなる株を使用する場合、各場合においてその株に対する遺伝子相同物が得られ、PCRの成功率は、選択した株とバシラス・リケニホルミス DSM13の関係が近くなるに従って高くなるが、理由として、これはプライマー結合領域内でも配列の一致が大きいことと関連している傾向が高いためである。
【0137】
実施例2
配列相同性
実施例1と同様にしてDNAおよびアミノ酸の配列を確認した後、各場合で今までに開示されている最も類似した相同体を、データベースGenbank(米国国立衛生研究所の国立生物工学情報センターNCBI、米国メリーランド州Bethesda;http://www.ncbi.nlm.nih.gov)およびパスツール研究所、フランスParisのSubtilistデータベース(http://genolist.pasteur.fr/Subtilist/genome.cgi)の検索によって確認した。
【0138】
図1〜10に示したアラインメントを介して、確認したDNAおよびアミノ酸配列を互いに比較し、これに使用したコンピュータプログラムは、Infomax Inc、米国Bethesdaから入手可能なVector NTI(登録商標)セット第7版であった。この場合、DNA配列の比較用という意味で、このプログラムの標準的なパラメーターを使用した:K−タプルサイズ:2;最良のダイアゴナル数:4;ウィンドウサイズ:4;ギャップペナルティー:5;ギャップ開始ペナルティー:15およびギャップ伸長ペナルティー:6.66。下記の標準的なパラメーターは、アミノ酸配列の比較に用いた:K−タプルサイズ:1;最良のダイアゴナル数:5;ウィンドウサイズ:5;ギャップペナルティー:3;ギャップ開始ペナルティー:10およびギャップ伸長ペナルティー:0.1。これらの配列比較の結果を下記の表1でまとめるが、示した受入番号はNCBIデータベースからのものである。
【0139】
【表1】

【0140】
見出された遺伝子およびそれらから得られた遺伝子産物が新規の遺伝子およびタンパク質であり、これまでに開示された従来技術とは明確な違いを有することが明らかである。
【0141】
実施例3
バシラス・リケニホルミス中での1つまたは複数の遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBの機能的不活性化
欠失ベクターの調製の原理
これらの各遺伝子は、例えばいわゆる欠失ベクターによって機能的に不活性化することができる。この手順は、例えば、J.Vehmaanperaら(1991)により、刊行物「Genetic manipulation of Bacillus amyloliquefaciens」;J.Biotechnol.、第19巻、221〜240ページにそれ自体記載されている。
【0142】
これに適したベクターはpE194であり、それはT.J.Gryczanらによる刊行物「Replication and incompatibility properties of plasmid pE194 in Bacillus subtilis」(1982)、J.Bacteriol.、第152巻、722〜735ページの中で特徴付けられている。この欠失ベクターの利点は、それが温度依存的な複製起点を有することである。pE194は、33℃で、形質転換細胞中で複製することができ、その結果、形質転換の成功のための最初の選択がこの温度で行われる。その後、ベクターを含む細胞を42℃でインキュベートする。欠失ベクターは、この温度ではもはや複製せず、選択圧は、予め選択した相同領域を介した染色体へのプラスミドの組み込みに対して発揮される。次いで、第2の相同領域を介した第2の相同組換えにより、ベクターが完全な遺伝子コピーと一緒に染色体から切除され、それによって染色体中に位置する遺伝子をin vivoで欠失させる。第2の組換えとしての他の可能性は、染色体外のベクターの組換えを意味する、組み込みと逆の反応であり、結果として染色体の遺伝子は完全なままである。したがって、それ自体知られている方法によって、例えば適切な酵素を用いた染色体DNAの制限後のサザンブロットにおいて、または増幅した領域のサイズに基づくPCR技術の助力によって遺伝子欠失を検出しなければならない。
【0143】
即ち、それぞれが各場合で70塩基対を含む、欠失させる遺伝子の2つの相同領域、例えば選択した遺伝子の5’領域および3’領域を選択することが必要である。これらが不活性なタンパク質をコードする部分の両側にあるように、または中間にある領域を省略して直接連続するように、これらをベクター中にクローニングする。欠失ベクターは、こうして得られる。
【0144】
本明細書で考慮される遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBの欠失
本発明の欠失ベクターは、これらの遺伝子4種または3種のうち1種の5’領域および3’領域をPCR増幅することによって構築される。配列表中に示される配列番号1、3、5および7の配列は、適切なプライマーの設計に利用可能であって、バシラス・リケニホルミスに由来する、しかし予想される相同性から、他の種、特にバシラス属の種にも適するのが当然である。
【0145】
その2つの増幅領域は、これらの後処理に有用なベクター上で、例えば大腸菌におけるクローニング工程に適しているベクターpUC18上で、直接連続する形で適切に中間クローニングを受ける。
【0146】
次の工程は、欠失用に選択したベクターpE194へのサブクローニング、および例えばChangおよびCohen(1979;「High Frequency Transformation of Bacillus subtilis Protoplasts by Plasmid DNA」;Molec.Gen.Genet.(1979)、第168巻、111〜115ページ)に従った原形質体形質転換の方法による枯草菌DB104への形質転換である。すべての作業工程は、確実にベクターの複製が行われるために、33℃で実施しなければならない。
【0147】
次の工程では、中間クローニングを受けたベクターで、原形質体形質転換の方法によって、所望の宿主株、この場合ではバシラス・リケニホルミスを同様に形質転換する。このようにして得られ、従来の方法(プラスミドの耐性マーカーによる選択;プラスミドの調製による確認および挿入物についてのPCR)により陽性と確認された形質転換体を、その後、エリスロマイシンの添加によるプラスミドの存在についての選択圧下で、42℃で培養した。欠失ベクターは、この温度では複製することができず、残存する細胞は、ベクターが染色体中に組み込まれたものだけであり、この組み込みは、最もおそらくは相同なまたは同一の領域で起こる。次いでエリスロマイシンの選択圧がない状態のもとに33℃で培養することにより、欠失ベクターの切除をその後に誘導することができ、染色体によりコードされた遺伝子が染色体から完全に欠失する。その後、適切な酵素を用いた染色体DNAの制限後のサザンブロット法により、またはPCR技術の助けを借りて欠失の成功を確認する。
【0148】
該当する遺伝子が欠失したそのような形質転換体は、GLA形成が制限されることによって、またはGLA形成が完全にできないことによってもさらに区別される。
【0149】
(図面の簡単な記載)
図1:バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywsC(配列番号1)(B.l.ywsC)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywsC(B.s.ywsC)のアラインメント。
図2:バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywsC’(配列番号3)(B.l.ywsC’)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywsC(B.s.ywsC)のアラインメント。
図3:バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywtA(配列番号5)(B.l.ywtA)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywtA(B.s.ywtA)のアラインメント。
図4:バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywtB(配列番号7)(B.l.ywtB)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywtB(B.s.ywtB)のアラインメント。
図5:バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywtD(配列番号9)(B.l.ywtD)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywtD(B.s.ywtD)のアラインメント。
図6:バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwsC(配列番号2)(B.l.YwsC)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwsC(B.s.YwsC)のアラインメント。
図7:バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwsC’(配列番号4)(B.l.YwsC’)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwsC(B.s.YwsC)のアラインメント。
図8:バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwtA(配列番号6)(B.l.YwtA)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwtA(B.s.YwtA)のアラインメント。
図9:バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwtB(配列番号8)(B.l.YwtB)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwtB(B.s.YwtB)のアラインメント。
図10:バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwtD(配列番号10)(B.l.YwtD)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwtD(B.s.YwtD)のアラインメント。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywsC(配列番号1)(B.l.ywsC)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywsC(B.s.ywsC)のアラインメントを示す図である。
【図2】バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywsC’(配列番号3)(B.l.ywsC’)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywsC(B.s.ywsC)のアラインメントを示す図である。
【図3】バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywtA(配列番号5)(B.l.ywtA)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywtA(B.s.ywtA)のアラインメントを示す図である。
【図4】バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywtB(配列番号7)(B.l.ywtB)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywtB(B.s.ywtB)のアラインメントを示す図である。
【図5】バシラス・リケニホルミス DSM13由来の遺伝子ywtD(配列番号9)(B.l.ywtD)と枯草菌由来の相同な遺伝子ywtD(B.s.ywtD)のアラインメントを示す図である。
【図6】バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwsC(配列番号2)(B.l.YwsC)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwsC(B.s.YwsC)のアラインメントを示す図である。
【図7】バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwsC’(配列番号4)(B.l.YwsC’)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwsC(B.s.YwsC)のアラインメントを示す図である。
【図8】バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwtA(配列番号6)(B.l.YwtA)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwtA(B.s.YwtA)のアラインメントを示す図である。
【図9】バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwtB(配列番号8)(B.l.YwtB)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwtB(B.s.YwtB)のアラインメントを示す図である。
【図10】バシラス・リケニホルミス DSM13由来のタンパク質YwtD(配列番号10)(B.l.YwtD)と枯草菌由来の相同なタンパク質YwtD(B.s.YwtD)のアラインメントを示す図である。
【図1−1】

【図1−2】

【図2−1】

【図2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を示すヌクレオチド配列ywsCによってコードされているタンパク質YwsC(CapB、PgsB)。
【請求項2】
配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされている、請求項1に記載のタンパク質YwsC。
【請求項3】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも91%の同一性を示し、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質YwsC(CapB、PgsB)。
【請求項4】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも83%の同一性を示すヌクレオチド配列ywsC’によってコードされているタンパク質YwsC’(YwsCの切断型変異体である)。
【請求項5】
配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされている、請求項4に記載のタンパク質YwsC’。
【請求項6】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を示し、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質YwsC’(YwsCの切断型変異体である)。
【請求項7】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも82%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtAによってコードされているタンパク質YwtA(CapC、PgsC)。
【請求項8】
配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされている、請求項7に記載のタンパク質YwtA。
【請求項9】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を示し、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質YwtA(CapC、PgsC)。
【請求項10】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも72%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtBによってコードされているタンパク質YwtB(CapA、PgsA)。
【請求項11】
配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされている、請求項10に記載のタンパク質YwtB。
【請求項12】
ポリアミノ酸の形成に関与し、配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を示し、少なくとも75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質YwtB(CapA、PgsA)。
【請求項13】
ポリアミノ酸の分解に関与し、配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも67%の同一性を示すヌクレオチド配列ywtDによってコードされているタンパク質YwtD(Dep、PgdS)。
【請求項14】
配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされている、請求項13に記載のタンパク質YwtD。
【請求項15】
ポリアミノ酸の分解に関与し、配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも62%の同一性を示し、少なくとも65%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すアミノ酸配列を有するタンパク質YwtD(Dep、PgdS)。
【請求項16】
微生物によって、好ましくは細菌によって、特に好ましくはグラム陽性細菌によって、これらの中で好ましくはバシラス属の1つによって、それらの中で特に好ましくはバシラス・リケニホルミス種の1つによって、その中で極めて特に好ましくはバシラス・リケニホルミス DSM13によって天然に産生される、請求項1から3、4から6、7から9、10から12または13から15のいずれか一項に記載のポリアミノ酸の形成または分解に関与するタンパク質。
【請求項17】
ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywsC(capB、pgsB)。
【請求項18】
配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、請求項17に記載の核酸ywsC。
【請求項19】
ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも83%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywsC’ (ywsCの切断型変異体である)。
【請求項20】
配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、請求項19に記載の核酸ywsC’。
【請求項21】
ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも82%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywtA(capC、pgsC)。
【請求項22】
配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、請求項21に記載の核酸ywtA。
【請求項23】
ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも72%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywtB(capA、pgsA)。
【請求項24】
配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、請求項23に記載の核酸ywtB。
【請求項25】
ポリアミノ酸の分解に関与する遺伝子産物をコードし、配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも67%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する核酸ywtD(dep、pgdS)。
【請求項26】
配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、97%、98%、99%の同一性を示しその順に好ましさも大きくなるが、特に好ましくはそれと100%の同一性を示すヌクレオチド配列を有する、請求項25に記載の核酸ywtD。
【請求項27】
微生物中に、好ましくは細菌中に、特に好ましくはグラム陽性細菌中に、これらの中で好ましくはバシラス属の1つの中に、それらの中で特に好ましくはバシラス・リケニホルミス種の1つの中に、その中で極めて特に好ましくはバシラス・リケニホルミス DSM13中に天然に存在する、請求項17および/または18、19および/または20、21および/または22、23および/または24あるいは25および/または26のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項28】
請求項1から16のいずれか一項に記載のタンパク質をコードしている核酸。
【請求項29】
請求項17から28で特定される核酸の1つを含むベクター。
【請求項30】
請求項17から28で特定される核酸を2つ以上含む、請求項29に記載のベクター。
【請求項31】
請求項29または30に記載のクローニングベクター。
【請求項32】
請求項29または30に記載の発現ベクター。
【請求項33】
遺伝子修飾後、請求項17から28で特定される核酸を1つ含む細胞。
【請求項34】
核酸が、ベクターの、具体的には請求項29から32のいずれか一項に記載のベクターの一部である、請求項33に記載の細胞。
【請求項35】
細菌である、請求項33または34のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項36】
グラム陰性細菌、特に大腸菌、クレブシエラ、シュードモナスまたはザントモナス属の1つ、特に大腸菌K12、大腸菌Bまたはクレブシエラ・プランチコラ株、特に好ましいものは大腸菌BL21(DE3)、大腸菌RV308、大腸菌DH5α、大腸菌JM109、大腸菌XL−1またはクレブシエラ・プランチコラ(Rf)株の派生株である、請求項35に記載の細胞。
【請求項37】
グラム陽性細菌、特にバシラス、ブドウ球菌またはコリネバクテリウム属の1つ、特に好ましいものはバシラス・レンタス、バシラス・リケニホルミス、B.アミロリケファシエンス、枯草菌、B.グロビジイまたはB.アルカロフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスあるいはコリネバクテリウム・グルタミカム種の1つ、これらの中で極めて特に好ましくはバシラス・リケニホルミス DSM13の派生株である、請求項35に記載の細胞。
【請求項38】
請求項1から16のいずれか一項に記載の遺伝子産物YwsC、YwsC’、YwtA、YwtBおよびYwtDを調製する方法。
【請求項39】
請求項17から28のいずれか一項に記載の核酸を使用し、好ましくは請求項29から32のいずれか一項に記載のベクターを使用し、特に好ましくは請求項33から37のいずれか一項に記載の細胞を使用する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ヌクレオチド配列が1つまたは、好ましくは複数のコドンにおいて宿主株のコドン頻度に適合している、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
微生物中で、各場合でそれぞれ該当する遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBを機能的に不活性化するための、請求項17および/または18に記載の核酸ywsC、請求項19および/または20に記載の核酸ywsC’、請求項21および/または22に記載の核酸ywtA、請求項23および/または24に記載の核酸ywtB、請求項28に記載の対応する核酸、あるいは各場合におけるその一部の使用。
【請求項42】
微生物中で該当する遺伝子ywtDの活性を上昇させるための、請求項25および/または26に記載の核酸ywtD、あるいは請求項28に記載の対応する核酸の使用。
【請求項43】
活性の機能的な不活性化または上昇が、微生物の発酵の間に行われ、ポリアミノ酸に起因する粘液が好ましくは50%に、特に好ましくは20%未満に、極めて特に好ましくは5%未満に低下する、請求項41または42に記載の使用。
【請求項44】
遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAおよびywtBの2、3または4つの順で不活性化されるのが好ましいが、好ましくはywtD遺伝子によって媒介される活性の亢進と組合せて不活性化される、請求項41から43のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
各場合で、不活性タンパク質をコードし、点突然変異を有する核酸を機能的不活性化に使用する、請求項41から44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
各場合で、好ましくは各場合でタンパク質をコードする領域の少なくとも70〜150の核酸位置を含む境界配列を含む、欠失突然変異または挿入突然変異を有する核酸を機能的不活性化に使用する、請求項41から45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
ywtD遺伝子によって媒介される活性の前記亢進に発現ベクターを、好ましくは該遺伝子を制御する核酸セグメントとともにこの遺伝子を含むベクターを使用する、請求項41から46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBの少なくとも1つが機能的に不活性化されるか、またはywtDの活性が亢進された微生物。
【請求項49】
遺伝子ywsC、ywsC’、ywtAまたはywtBの2、3または4つの順で不活性化されるのが好ましいが、好ましくはywtD遺伝子によって媒介される活性の亢進と組合せて不活性化される、請求項48に記載の微生物。
【請求項50】
細菌である、請求項48または49に記載の微生物。
【請求項51】
グラム陰性細菌、特に大腸菌、クレブシエラ、シュードモナスまたはザントモナス属の1つ、特に大腸菌K12、大腸菌Bまたはクレブシエラ・プランチコラ株、特に好ましいものは大腸菌BL21(DE3)、大腸菌RV308、大腸菌DH5α、大腸菌JM109、大腸菌XL−1またはクレブシエラ・プランチコラ(Rf)株の派生株である、請求項50に記載の微生物。
【請求項52】
グラム陽性細菌、特にバシラス、ブドウ球菌またはコリネバクテリウム属の1つ、特に好ましいものはバシラス・レンタス、バシラス・リケニホルミス、B.アミロリケファシエンス、枯草菌、B.グロビジイまたはB.アルカロフィラス、スタフィロコッカス・カルノサスあるいはコリネバクテリウム・グルタミカム種の1つ、これらの中で極めて特に好ましくはバシラス・リケニホルミス DSM13である、請求項50に記載の微生物。
【請求項53】
請求項48から52のいずれか一項に記載の微生物を発酵させる方法。
【請求項54】
価値のある生成物、特に低分子量化合物またはタンパク質を製造するための、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
低分子量化合物が天然物、栄養補助食品または医薬関連化合物である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
タンパク質が酵素、特にα−アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、オキシドレダクターゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、オキシダーゼおよびヘミセルラーゼの群の1つである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
請求項17および/または18、19および/または20、21および/または22、23および/または24あるいは25および/または26のいずれか一項に記載の核酸、あるいは請求項28に記載の対応する核酸の1つを導入遺伝子として使用し、好ましくは請求項1から16のいずれか一項に記載の対応するタンパク質を形成する、ポリγ−グルタメートの製造、修飾または分解のための微生物による方法。
【請求項58】
バシラス属の微生物、特に枯草菌またはバシラス・リケニホルミスを使用する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項1から3、4から6、7から9、10から12または13から15のいずれか一項に記載の、ポリアミノ酸の形成に関与する遺伝子産物を含む、好ましくは請求項17から28のいずれか一項に記載の対応する核酸を使用したポリγ−グルタメートの製造、修飾または分解のための無細胞方法。
【請求項60】
前記遺伝子産物および核酸のうち2種、好ましくは3種、特に好ましくは4種の異なるものを使用する、請求項57から59のいずれか一項に記載の方法。

【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−504021(P2008−504021A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517133(P2007−517133)
【出願日】平成17年6月11日(2005.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006289
【国際公開番号】WO2006/000308
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(391008825)ヘンケル コマンディットゲゼルシャフト アウフ アクチエン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】