説明

ポリアラミド繊維含有支持材料を備えるセラミック膜及び前記膜の製造方法

本発明は、多数の開口部を備えた平面状柔軟基材と、前記基材上及び前記中に存在する多孔質無機コーティングを含み、前記基材の材料が非電導性の織繊維又は不織繊維から選択されている膜において、前記基材はポリアラミド繊維を有し、前記ポリアラミド繊維はまじりけがないか又は少なくとも1の更なるポリマーからの繊維と結合し、この場合、前記更なるポリマーの1又は少なくとも1の繊維は、前記ポリアラミド繊維の分解点よりも低い融点を有することを特徴とする膜に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面状柔軟基材と、前記基材の上及び中に存在する多孔質無機コーティングを備え、前記基材が、まじりけがない(rein)か又は少なくとも1の更なるポリマーからの繊維と結合しているポリアラミド繊維を有する、膜に関する。
【0002】
膜は、多数の物質に対して高い透過性、良好な機械的強度及びその適用において、例えばバッテリーの電解質において使用される化学薬品及び溶媒に対する長期安定性を有する薄い多孔質系である。
【0003】
現在使用されている膜は、主に多孔質有機ポリマーフィルムもしくは無機不織布材料、例えばガラス材料又はセラミック材料からなる不織布又はセラミックペーパーからなる。セパレーターとして使用される膜は典型的には有機材料、例えばポリプロピレンから、又はポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン複合材からなる。
【0004】
このような膜の欠点は、150℃を顕著に下回る比較的低いその熱負荷能並びにその低い化学的安定性である。この使用されるポリオレフィンは例えばLiバッテリーにおいてセパレーターとリチウム又はリチオ化グラファイトとの接触の際にゆっくりと攻撃される。ポリマー電解質を備える系では、したがって、Liイオンバッテリー中のセパレーターの更なる破壊を妨げる、密な酸化生成物層の形成が生じる。無機系においてはこの層は形成されず、このために全体的な破壊が生じる。
【0005】
無機複合材料をセパレーターとして使用する試みが存在する。そして、DE 198 38 800においては、多数の開口部を備えた平面状柔軟基材と、その上にあるコーティングを含む電気的セパレーターであって、この基材の材料が金属、合金、プラスチック、ガラス及びカーボンファイバー又はこの種の材料の組み合わせから選択され、このコーティングが平面的に連続する、多孔質の非電導性セラミックコーティングであることを特徴とする電気的セパレーターが記載されている。しかしながら、(例えば実施例中に記載されているような)導電性材料からなる支持体を有するセパレーターは、リチウム−イオン−セルのために不適当であることが判明しており、それというのも、このコーティングは記載された厚さでは大面積で無欠陥に製造することができず、したがって極めてショートしやすいためである。
【0006】
先行の研究(DE 101 42 622)において、基材上及び基材中に存在するコーティングを有する、多数の開口を備えた平面状柔軟基材を含む材料を用いて(その際、前記の基材の材料は製織された又は製織されていない非導電性のガラス又はセラミックの繊維又はこのような材料の組み合わせから選択され、かつ前記コーティングは多孔質の電気絶縁性のセラミックコーティングであり、かつその際、生じるセパレーターは100μm未満の厚さを有しかつ、曲げることができる)、電解質との関連で十分に低い抵抗を有するが、にもかかわらず十分に高い長時間安定性を有するセパレーターを製造することができることを我々は示すことができた。しかし、このセパレーターの抵抗はなお多数の適用のために高すぎであり、というのも、担体として、第1に厚すぎ、第2に多孔率が少なすぎるガラス織布が使用されるからである。
【0007】
しかし、このような膜は、強塩基に対しては抵抗性でなく、これは例えばNi−Me水素化物及び銀−亜鉛−及び他の系中で電解質として使用される。この膜がこの種の高出力系のためのセパレーターとして使用される場合には、この膜は強塩基(40%のKOH、温度は一部少なくとも80℃)中で抵抗性でなくてはならない。ここでは原則として、確かにポリオレフィンを基礎とするポリマー膜が使用できる(これは現在でもなされる)が、しかし、熱安定性が少ないという既知の欠点を伴う。これに対して、ガラス状無機材料又はケイ素もしくはアルミニウムをベースとするセラミック材料は、高い熱安定性でもって、電解質中で溶解する。
【0008】
DE 101 42 622に記載のセパレーターの特性の前述の最適化の場合には、ポリマー基板材料を有する膜が実現されている。これによって、多数の開口部を備えた平面状柔軟基材と、前記基材上及び中に存在するコーティングを含む電気的セパレーターが入手可能になり、その際、前記基材の材料は、製織されていない非導電性ポリマー繊維から選択されており、かつ、このコーティングは電気的絶縁性の多孔質のセラミックコーティングである。この膜は80μm未満の厚さを有し、曲げることができ、電解質と結びついて十分少ない抵抗を有し、加えて十分に高い長期安定性を有する。この膜の温度抵抗性は、この多孔質無機コーティングの温度抵抗性に等しい。強塩基に対する化学的抵抗性は、安定なポリマー、例えばポリプロピレン/ポリエチレン又はポリアクリルニトリル不織布及び抵抗性セラミック材料、例えばZrO2及びTiO2の使用により得られる。
【0009】
セラミックでコーティングした膜におけるポリマー不織布、例えば、DE 10 208 277に記載のSEPARIONセパレーターの使用の場合には、しかし、このプロセス温度はこの不織布中のポリマーの融点によって制限されている。これは約200℃である。現在の先行技術によれば、より高温は、膜の機械的特性、例えば屈曲性を不利に損なわずには、可能でない。
【0010】
JP 2006/144158 Aには、より高い融点を有する材料の簡易な使用が開示されるが、セラミック材料を有するコーティングはない。アラミド繊維からは、セパレーターとしてリチウムイオン−バッテリー中で使用される不織布が製造される。しかし、アラミド繊維の相互の凝集(Zusammenhalt)がないために、この機械的な耐久負荷能は、例えば振動により制限されている。
【0011】
WO 2008/018656及びWO 2008/018657は、セラミックが浸透した繊維からなる、担体テキスタイルを基礎とするセパレーターを開示する。
【0012】
JP 2006−188770 A、JP 2004−214066 A及びEP 757 071 B1は、それぞれ、リチウムイオン−バッテリーのためのアラミド繊維からのテキスタイルセパレーターを開示するが、セラミック充填剤はない。
【0013】
JP 2006−225499 Aは、リチウムイオン−バッテリーのためのアラミド繊維からのテキスタイルセパレーターを開示し、これは繊維の特別な三次元複合構造により特徴付けられている。セラミック繊維充填剤の使用は記載されない。
【0014】
プラスチックも無機セラミックも基礎とする膜は例えば水の後処理に使用される。そしてWO 2008/70499には、PTFE膜の使用が記載されている。WO 97/39981は、セラミック膜の使用を記載する。
【0015】
文献中では、セパレーターとしての膜の使用の他に、燃料セル中でのプロトン導体としてのその使用が知られており、例えばUS 3368922に記載されている。
【0016】
さらに、膜はガス分離の際にも使用され、例えばUS 2007/240565及びWO 2002/068092において開示される。
【0017】
今なお切迫した要求が、熱抵抗性であり、かつ同時に機械的に負荷可能である膜に関して存在する。
【0018】
したがって、本発明の課題は、熱的にかつ同時に機械的に、従来知られている材料よりも安定である膜を提供することであった。
【0019】
本発明の主題はしたがって、多数の開口部を備えた平面状柔軟基材と、前記基材上及び前記基材中に存在する多孔質無機コーティングを含み、前記基材の材料が非電導性の織繊維又は不織繊維から選択されている膜において、前記基材はポリアラミド繊維を有し、前記ポリアラミド繊維はまじりけがないか又は少なくとも1の更なるポリマーからの繊維と結合し、その際、前記更なるポリマーの1又は複数の前記更なるポリマーの少なくとも1は、前記ポリアラミド繊維の分解点よりも低い融点を有するか、又は、前記ポリアラミド繊維は少なくとも1のポリマーバインダーと相互に結合することを特徴とする膜である。
【0020】
この膜は、200℃超の範囲までと広範に高い温度抵抗性の利点を有する。さらに、この完成した膜の引張強度及び突刺強度(Durchstichfestigkeit)の顕著な向上がアラミド繊維の使用により達成される。このことは、リチウムイオンバッテリー中のセパレーターとしての膜の使用の場合に本質的な利点であり、というのも、セパレーターの貫通が困難になるからである。
【0021】
同様に本発明の主題は、
1)多数の開口部を備えた平面状柔軟基材を準備する工程、
前記基材はポリアラミド繊維を有し、前記ポリアラミド繊維は少なくとも1の更なるポリマーからの繊維により又は少なくとも1のポリマーバインダーにより結合し、その際、少なくとも1のバインダー又は前記更なるポリマーの1又は複数の前記更なるポリマーの少なくとも1の繊維は、前記ポリアラミド繊維の分解点よりも低い融点を有する、
2)前記基材上に、
少なくとも1の無機成分、第3〜7主族の元素を少なくとも1つ有する少なくとも1の金属、半金属又は混合金属の化合物、
及びゾル
を有する懸濁液を設け、
少なくとも1回加熱して、前記懸濁液を基材上もしくは中で又は基材上及び中で固化させる工程、
を含む本発明の膜の製造方法である。
【0022】
本発明は、例えば刊行物DE 10142622,DE 10208277及びDE 10238941に記載されているようなセラミック膜の利点、すなわち、温度安定性、ショート安全性及びコントロールして調節された高い多孔率と、アラミド繊維により付与されている極端に高い熱抵抗性及び引張強度の利点を結び付け、というのも、アラミドは融点を有さず、かつ、その分解点は250℃を顕著に上回るからである。したがって、本発明の膜は火炎でその完全性(Intergritaet)を失わない。さらに、本発明の膜は、基材が極めて薄くあることができるにも関わらず、高い機械的負荷能の利点を、例えば曲げストレス又は剪断の場合に有する。薄くかつ同時にこのように機械的に負荷可能なアラミド繊維からの基材は、従来実現されておらず、というのも先行技術においてはアラミド繊維からの機械的負荷可能な膜は従来のように製織したか又は編まれた形においてだけ、例えば高品質スピーカー、防弾着の膜として又は器具装入(Geraeteeinschalung)においてだけ見出していたからである。ポリアラミド繊維自体は0.5〜50μmの直径を有するので、編まれたか又は製織した膜は相応して100μm以上のより厚い厚みを有する。これに対して、本発明の膜ではポリアラミド繊維は溶融したポリマーを用いて相互に結合されており、この柔軟基材の機械的凝集はつまり新規の手法により保証される。これによって、極めていっそうより薄い基材ひいては膜が実現され、これは例えば高出力バッテリー、例えばリチウムイオン−バッテリーにおいてセパレーターとして使用可能である。本発明の膜がセパレーターとしてバッテリーにおいて使用される場合には、このバッテリーはこのより高い熱負荷能のために、遙かにより高温範囲において、50〜300℃、特に50〜200℃の高温範囲において使用可能である。
【0023】
請求される膜の更なる利点は、先行技術の膜に比較して収縮を全く示さないことである。
【0024】
したがって、本発明の主題は同様に、バッテリー中のセパレーターとして、壁装材として、器具の保護カバー及び支持カバーとしての本発明の膜の使用である。
【0025】
さらにしたがって、本発明の主題は、セパレーターとして本発明の膜を有するリチウムイオン−バッテリーである。
【0026】
本発明を以下で例示的により詳細に説明する。
【0027】
本発明の膜の柔軟基材は好ましくは直径0.5〜50μm、特に好ましくは0.5〜20μmを有するポリアラミド繊維を有する。
【0028】
膜の質量を可能な限り最小限にするために、この1又は複数の更なるポリマーの繊維の直径を直径0.5〜50μm、特に好ましくは0.5〜20μm、特にとりわけ好ましくは0.5〜10μmでもって選択することが好ましくあることができる。これによって、多岐に利用できる、優れた出力あたりの質量(Leistungsgewicht)を有するバッテリーを構築できる。
【0029】
不織布、編地又は織布であることができる基材は好ましくは厚さ15〜80μm、好ましくは25〜50μm、特にとりわけ好ましくは15〜40μmを有する。バッテリー中でセパレーターとして本発明の膜が使用される場合には、前記基材の厚さはその特性に大きな影響を及ぼし、それというのも、一方では柔軟性が、他方では電解質で含浸されたセパレーターの面積抵抗が、基材の厚さに依存するためである。より薄いセパレーターはバッテリースタック中での高められた充填密度を可能にするため、同じ体積でより大きなエネルギー量を蓄えることができる。更にこれにより、電極表面の拡大により、限界電流密度もまた高められる。
【0030】
本発明の膜の更なるポリマーの繊維は好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、略してPET、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、又は、前記繊維からの混合物、及び/又はポリオレフィンから選択されていることができる。1つのみの更なるポリマーが選択されている場合には、PETが特に好ましく、これは比較的高い融点200℃超を有する。ポリマーバインダーは、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−PTFEコポリマー、ブタジエンゴム、(メタ−)アクリラートラテックス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又は前記バインダーからの混合物から選択されていることができる。
【0031】
好ましくは前記基材の繊維は、ポリアラミド繊維対1つ又は複数の前記更なるポリマーの繊維の混合比10:1〜1:10で存在できる。特に好ましくはこの比は1:1、特にとりわけ好ましくは1:1のポリアラミド繊維対PET繊維である。
【0032】
この基材が2つの更なるポリマーを有する場合には、この更なるポリマーの混合比は互いに1:10〜10:1の範囲にあることができる。基材特性の機械的最適値の他に、最適なコスト−利用比を調達する基材を提供する。
【0033】
本発明の膜の基材は好ましくは50〜97%、特に好ましくは75〜90%の多孔率を有する。前記多孔率は、この場合に、基材の体積(100%)−基材の繊維の体積として定義され、つまり材料により満たされていない基材の体積の割合として定義される。この多孔率は、先行技術の膜に比較してより高温でポリアラミド繊維のより高い融点のために基材を保持する。
【0034】
本発明の膜の基材は200℃を超える融点を有することができる。
【0035】
本発明の膜は、多孔質の電気絶縁性セラミックコーティングを有する。基材の上及び基材の中にあるコーティングが、金属Al、Zr、Si、Sn、Ti及び/又はYの非導電性酸化物を有する場合に好ましくあってよい。好ましくは、この膜は、10%〜70%、好ましくは20%〜60%、特に好ましくは30%〜50%の多孔率を有する。この膜の多孔率はこの場合に連絡可能な細孔、つまり通気孔(offenen Pore)に関する。この多孔率はこの場合に水銀多孔率測定の公知法を用いて測定することができるか、又は通気孔だけが存在することを前提とした場合に、使用した材料の体積及び密度から計算することができる。この基材上及び中に存在するコーティングは特に好ましくは金属Al、Zr及び/又はSiの酸化物を有する。
【0036】
本発明の膜は5N/cm超の引裂強度を有することができる。これは先行技術に対して顕著な改善である。基材中のポリアミド繊維:PET繊維1:1の混合比では、本発明の膜の引裂強度は10N/cmであり、8:2の混合比では12N/cmであることができる。したがって、前記繊維の連続的加工の場合、例えばリチウムイオンバッテリー巻回セルの製造の場合に、より高速を達成できる。
【0037】
本発明の膜の温度抵抗性は先行技術に比較して顕著に改善されている。先行技術からのセラミック複合材膜のようにポリアラミド含有ポリマーフリースの収縮は起こらない。PETの使用の場合には10%までの収縮が測定される。アラミドの混合により、これは回避される。例えば、本発明の膜はポリアラミド繊維50%及びPET50%で1%未満の収縮を示す。
【0038】
本発明の膜は損傷なしに2mmまで半径方向へ曲げられる。膜がバッテリー中でセパレーターとして使用される場合には、この高い引裂強度及び良好な屈曲性は、本発明の膜によって、これらを損なうことなくバッテリーの充電及び放電の際に発生する電極の幾何学の変化が生じることができるという利点を有する。この屈曲性は、更に、この膜を用いて商業的に規格化された巻回型セルを生産できるという利点を有する。このセルでは、電極/セパレータ層は規格化されたサイズで、相互に渦巻状に巻き取られ、接続される。
【0039】
同様に本発明の主題は、
1)多数の開口部を備えた平面状柔軟基材を準備する工程、
前記基材はポリアラミド繊維を有し、前記ポリアラミド繊維は少なくとも1の更なるポリマーからの繊維により又は少なくとも1のポリマーバインダーにより結合し、その際、少なくとも1のバインダー又は前記更なるポリマーの1又は複数の前記更なるポリマーの少なくとも1の繊維は、前記ポリアラミド繊維の分解点よりも低い融点を有する、
2)前記基材上に、
少なくとも1の無機成分、第3〜7主族の元素を少なくとも1つ有する少なくとも1の金属、半金属又は混合金属の化合物、
及びゾル
を有する懸濁液を設け、かつ
少なくとも1回加熱して、前記懸濁液を基材上もしくは中で又は基材上及び中で固化させる工程、
を含む本発明の膜の製造方法である。
【0040】
本発明の方法においては、1又は複数の前記更なるポリマーの繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、又は、前記繊維の混合物、及び/又はポリオレフィンから選択されるか、又は、前記ポリマーバインダーが、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−PTFEコポリマー、ブタジエンゴム、(メタ−)アクリラートラテックス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又は前記バインダーからの混合物から選択されることができ、かつ前記懸濁液が、金属Al、Zr、Si、Ti及び/又はYの少なくとも1の酸化物及び/又はゾルを有する。
【0041】
好ましくは、前記懸濁液は、ロールコート、印刷、プレス、押し込み、ローラ塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、浸漬塗布、吹き付け塗布又は流延塗布により前記基材上及び中に導入される。
【0042】
本発明の方法においては、前記懸濁液は少なくとも1のゾル、少なくとも1の半金属酸化物ゾル又は少なくとも1の混合金属酸化物ゾル又は前記ゾルの混合物を有し、かつ、少なくとも1の無機成分を少なくとも1の前記ゾル中に懸濁することにより製造されることができる。前記基材上及び中に存在する懸濁液は50〜350℃、好ましくは150〜250℃への加熱によって前記基材上及び中で固化させられることができる。この加熱は0.5〜10分間にわたり温度110〜280℃で行われることができる。
【0043】
設けられた懸濁液は、金属Al、Zr、Si、Sn、Ti及び/又はYの少なくとも1の非電導性の又は電導性が極めて劣悪な酸化物、及び/又はゾル、少なくとも1の半金属酸化物ゾル、少なくとも1の混合金属酸化物ゾル、前記ゾルの混合物、及び/又はポリアラミド粒子が使用されることができる。
【0044】
本発明の方法の更なる一実施態様において、前記懸濁液はゾル、及び金属Al、Zr、Si、Ti及び/又はYの少なくとも1の酸化物、及びポリアラミド粒子を有することができる。
【0045】
前記懸濁液がポリアラミド粒子を有する場合には、本発明の方法を用いて得られるセパレーターに比較して再度顕著に高められた耐久性を有するセパレーターが得られる。セラミックコーティング中で酸化物粒子の他に存在するポリアラミド粒子は、不用意な取り扱いにより発生し、かつ、先行技術のセパレーターを使用不能にさえすることがある、セパレーターのセラミックコーティング中の折り曲げ又は引裂の伝播を抑制する。
【0046】
外来物の侵入に対する又は機械的加工の際のセパレーターの誤った圧搾の際の貫通性もがポリアラミド繊維粒子の使用により得られるセパレーターでは従来のセラミックセパレーターに比較してより大きくあることができる。このようなセパレーターの更なる利点は、切断の場合に、従来のセラミックセパレーターの切断の場合と比較してセラミック粉塵が顕著により少ないことにある。本発明の方法においてポリアラミド粒子の割合を、セパレーター中で酸化物粒子対ポリアラミド粒子の体積割合が2:1〜100:1、好ましくは5:1〜50:1、特に好ましくは10:1〜20:1であるように選択することが好ましくあることができる。前記体積割合はセパレーターの製造の際にポリアラミド粒子及び酸化物粒子の使用される質量をもとに、使用される材料の密度及び質量を介して個々の成分の体積を算出することによって、決定されることができる。好ましくは、ポリアラミド粒子の平均粒径は、酸化物粒子の平均粒径の0.1〜30倍、好ましくは0.75〜25倍、好ましくは0.9〜15倍、特に好ましくは1〜10倍でもって選択されることができる。酸化物粒子の平均粒径は好ましくは0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm、特に好ましくは1〜3μmである。
【0047】
酸化物粒子及びポリアラミド粒子の平均粒子は、セパレーターの製造の際にレーザー小角散乱により測定されることができる。完成したセパレーターに対してポリアラミド粒子及び酸化物粒子の粒径は、走査電子顕微鏡を用いた観察により測定されることができる。
【0048】
本発明の方法において懸濁液の製造の際にゾルに対してポリアラミド粒子分画が添加される場合には、連続的な多孔質セラミックコーティングを提供するセパレーターが得られる。このコーティング中ではポリアラミド粒子が統計学的に分布して存在している。
【0049】
本発明の方法の実施は、ポリアラミド粒子の空間的構成態様を実質的に変更しない。請求される方法の実施には、得られるセパレーターの粒径が本発明のセラミックセパレーターの製造の場合と同様にポリマー粒子の使用なしに、懸濁液の無機成分及びゾルの選択、及び固化のための引き続く処理によって制御されることができるという利点を有する。この方法は、つまり、当業者がスラリー中のポリマー割合に基づいて予期しただろう改質なしでも制御可能でもあり、というのも、ポリアラミド粒子の挙動は本発明により設けられた懸濁液の固化の場合に考慮してはならないことが見出されたからである。
【0050】
前記懸濁液は少なくとも1の無機成分の少なくとも1のこれらゾル中への懸濁により製造される。本発明の方法の工程2)において好ましくは、固化した状態で電気的に絶縁性である懸濁液が使用される。このゾルは少なくとも1の化合物、好ましくは少なくとも1の金属化合物、少なくとも1の半金属化合物又は少なくとも1の混合金属化合物の加水分解により得られる。同様に、加水分解すべき化合物を加水分解前にアルコール又は酸又はこれらの液体の組合物中に添加することが好ましくあることができる。加水分解すべき化合物としては好ましくは少なくとも1の金属ニトレート、金属クロライド、金属カーボネート、金属アルコール化合物又は少なくとも1の半金属アルコラート化合物、特に好ましくは少なくとも1の金属アルコラート化合物を加水分解する。金属アルコラート化合物又は半金属アルコラート化合物として好ましくは、元素Zr、Al、Si、Ti及びYのアルコラート化合物又は少なくとも1の金属ニトレート、金属カーボネート又は金属ハロゲン化物であって元素Zr、Al、Si及びTiの金属塩から選択されたものが金属化合物として加水分解される。この加水分解は、好ましくは水、水蒸気、氷又は酸又はこれらの化合物の組合物の存在下で実施する。
【0051】
本発明の方法の一実施態様においては、加水分解すべき化合物の加水分解により粒状のゾルが製造される。この粒状のゾルは、このゾルの中に加水分解により生じた化合物が粒状で存在することを特徴とする。この粒状のゾルは、上記のように又はWO99/15262に記載されているように、製造することができる。このゾルは、通常では極めて高い含水率を有し、この含水率は好ましくは50質量%より大きい。加水分解すべき化合物を加水分解前にアルコール又は酸又はこれらの液体の組み合わせ物に添加することが好ましくあることができる。この加水分解された化合物は、解膠のために、少なくとも1の有機酸又は無機酸を用いて、好ましくは10〜60%の有機酸又は無機酸を用いて、特に好ましくは、硫酸、塩酸、過塩素酸、リン酸及び硝酸又はこれらの酸の混合物から選択される鉱酸を用いて処理することができる。こうして製造された粒状のゾルは、次いで懸濁液の製造に使用することができる。
【0052】
本発明による方法の他の実施態様の場合には、加水分解すべき化合物の加水分解によりポリマーのゾルが製造される。このポリマーのゾルは、ゾル中に、加水分解により発生した化合物がポリマーとして、つまり、大きな空間にわたって鎖状に架橋して、存在することを特徴とする。このポリマーのゾルは、通常では水及び/又は水性酸を50質量%より少なく、好ましくは20質量%よりはるかに少なく有する。好ましい割合の水及び/又は水性酸をもたらすために、加水分解すべき化合物を、加水分解可能な化合物の加水分解可能な基に対して0.5〜10倍のモル比、好ましくは半分のモル比の水、水蒸気又は氷で加水分解するというように加水分解を実施することが好ましい。10倍までの量の水は、極めて緩慢に加水分解する化合物の場合に、例えばテトラエトキシシランの場合に使用することができる。極めて急速に加水分解する化合物、例えばジルコニウムテトラエチラートは、この条件下で既に十分に粒状のゾルを形成することができ、従って、このような化合物の加水分解のために好ましくは0.5倍の量の水を使用する。好ましい量と比べて少ない量の水、水蒸気又は氷を用いた加水分解も、同様に良好な結果をもたらす。その際に、半分のモル比の好ましい量を、50%よりも多く下回ることも可能であるが、極めて有用であるとは言えず、それというのもこの値を下回る場合には加水分解はもはや完全ではなく、このようなゾルをベースとするコーティングは極めて安定とは言えないためである。
【0053】
ゾル中に所望の極めて僅かな割合の水及び/又は酸を有するこのゾルの製造のために、本来の加水分解が行われる前に、加水分解すべき化合物を、有機溶剤、特にエタノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルアセテート及び/又はこれらの化合物の混合物中に溶解させる場合が好ましくあることができる。こうして製造されたゾルは、本発明による懸濁液の製造のために又は前処理工程での付着促進剤として使用することができる。
【0054】
粒状のゾルも、ポリマーのゾルも、本発明による懸濁液の製造方法においてゾルとして使用することができる。前記のように得ることができるゾルの他に、原則として市販のゾル、例えば硝酸ジルコニウムゾル又はシリカゾルを使用することもできる。セパレーターを担体上への懸濁液の施与及び固化により製造する方法自体は、DE 101 42 622及び類似した形でWO 99/15262から知られているが、全てのパラメータ又は使用物質を、本発明の膜の製造に転用できるわけではない。WO 99/15262に記載されたプロセスは、この形で、特に擦り付けること(Abstrich)なしにポリマーの不織布材料に転用することはできない、それというのも、該刊行物に記載された著しい水含有量のゾル系は、しばしば通常の疎水性のポリマー不織布を深部において通り抜けて濡らすことができないためである。著しい水含有量のゾル系はこの大抵のポリマー不織布を湿潤しないか又は劣悪にしか湿潤しない。不織布材料中の極めて小さい非湿潤箇所ですら、欠陥を有し、このために使用不可能である膜もしくはセパレーターが得られてしまいかねないことが確認された。
【0055】
湿潤挙動においてポリマーに適合させたゾル系又は懸濁液が初めて、不織布材料に完全にしみ込み、したがって欠陥のないコーティングが得られることを可能にする。従って、本発明による方法の場合に、好ましくは、ゾル又は懸濁液の湿潤挙動の適合を行う。この適合は、基材の表面エネルギーに狙いを定め、好ましくはポリマーのゾル又はポリマーのゾルからの懸濁液の製造により行われ、その際、このゾルは1種又は数種のアルコール、例えばメタノール、エタノール又はプロパノール、又は1種又は数種のアルコール並びに好ましくは脂肪族炭化水素を有する混合物を含む。しかしながら、使用した基材に湿潤挙動を適合させるために、ゾル又は懸濁液に添加することができる他の溶剤混合物も考慮できる。
【0056】
ゾル系及びそれにより生じた懸濁液の根本的な変更が、ポリマーの不織布材料の上及び中でのセラミック成分の付着特性の明らかな改善をもたらすことが確認された。このような良好な付着強度は、粒状のゾル系を用いた場合には通常では得られない。従って、好ましくは、ポリマー繊維を有する基材は、ポリマーのゾルをベースとする懸濁液でコーティングされるか、又は前の工程で付着促進剤、好ましくはシランを有するポリマーのゾルで処理することによって仕上げられる。同様に、基材を、プラズマ又はコロナ照射に曝露することによって前処理することも好ましい。このような手法は刊行物DE 10 2007 005156に見出されここでは詳細に説明される。
【0057】
懸濁液の製造のために無機成分として、元素Y、Zr、Al、Si、Sn、及びTiの酸化物から選択される酸化物の少なくとも1つをゾル中に懸濁することが好ましくあることができる。好ましくは無機成分、少なくとも1の化合物(酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム及び/又は二酸化ケイ素から選択されるもの)を懸濁する。好ましくは、懸濁された成分の質量割合は、この使用されたゾルの0.1〜500倍、特に好ましくは1〜50倍、特にとりわけ好ましくは5〜25倍である。
【0058】
平均粒度1〜10000nm、好ましくは1〜10nm、10〜100nm、100〜1000nm又は1000〜10000nm、特に好ましくは250〜1750nm、特にとりわけ好ましくは300〜1250nmを有する少なくとも1の無機成分が少なくとも1のゾル中に懸濁されることが好ましくあることができる。平均粒度250〜1250nmを有する無機成分の使用により、特に良好に適した、膜の屈曲性及び多孔率が達成される。
【0059】
基材としてのポリマー繊維に対する無機成分の付着の改善のためには、使用される懸濁液に付着促進剤、例えば有機官能性シラン又は純粋な酸化物、例えばZrO2、TiO2、SiO2又はAl23を添加することが好ましくあることができる。この場合、付着促進剤の添加は、ポリマーのゾルをベースとする懸濁液の場合に好ましい。付着促進剤として特に、オクチルシラン、フッ化オクチルシラン、ビニルシラン、アミン官能化シラン及び/又はグリシジル官能化シラン、例えばDegussa社のDynasilaneから選択される化合物を使用することができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のための特に好ましい付着促進剤は、例えばフッ化オクチルシラン、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)のためにはビニルシラン、メチルシラン及びオクチルシランであり、その際、メチルシランの単独の使用は最適でなく、ポリアミド及びポリアミンのためにはアミン官能性シラン、ポリアクリレート及びポリエステルのためにはグリシジル官能化シラン、ポリアクリロニトリルのためにはグリシジル官能化シランも使用できる。他の付着促進剤も使用可能であるが、それぞれのポリマーに適合させなければならない。ポリマー担体材料のコーティングの場合のWO 99/15262に記載の、ゾル系へのメチルトリエトキシシランの添加は、ポリマー繊維へのセラミックの付着強度の問題の解決の比較的劣悪な解決策である。加えて、記載のゾル系での60〜100℃での乾燥期間30〜120分は、加水分解抵抗性のセラミック材料を得るためには十分でない。すなわち、この材料は水含有媒体中での長期貯蔵の際に溶解し、又は損傷する。他方では、WO 99/15262に記載の350℃を超える温度処理は、ここで使用されるポリマー不織布の燃焼ひいては膜の破壊を生じるものである。この付着促進剤はつまり、固化温度がポリマーの融点、軟化点又は分解点を下回るよう選択されなくてはならない。好ましくは、本発明の懸濁液は、付着促進剤として機能することができる化合物を25質量%よりはるかに少なく、好ましくは10質量%よりも少なく有する。付着促進剤の最適な割合は、付着促進剤の単分子層で繊維及び/又は粒子がコーティングされることから得られる。このために必要な付着促進剤のグラム量は、使用した酸化物、もしくは繊維の量(g)に前記材料の比表面積(m2-1)を乗じて、引き続き付着促進剤の比所要量(Platzbedarf)(m2-1)で除することにより得ることができ、その際、この比所要量はしばしば300〜400m2-1のオーダーである。
【0060】
以下の表は、不織布材料として使用された典型的なポリマーに対する、有機官能性Si化合物をベースとする使用可能な付着促進剤の例示的な概要を含む。
【表1】

式中、
AMEO=3−アミノプロピルトリエトキシシラン
DAMO=2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
GLYMO=3−グリシジルオキシトリメトキシシラン
MEMO=3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
Silfin=ビニルシラン+開始剤+触媒
VTEO=ビニルトリエトキシシラン
VTMO=ビニルトリメトキシシラン
VTMOEO=ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン。
【0061】
本発明により基材上及び中に存在する懸濁液は50〜350℃への加熱により固化され、その際、ポリアラミド繊維は1又は複数の更なるポリマー又はその繊維と結合される。
【0062】
先行技術による膜の固化の際には、選択された温度の高さに応じて先行技術によるポリマー材料は温度の影響下で、化学的構造の変化を生じ、このため、引き続きこのポリマーはもはやその出発状態又は出発変態にない。そして、ポリビニルイミドの部分的な炭素化又はポリアクリルニトリルではいわゆる導電性ポリマーの形成が続く部分的炭素化と共に生じ得る。本発明の膜では、しかし、本発明により選択した条件下ではこの作用は生じない。担体原料の特性の不所望な変化は生じず、というのも、このような場合には、ポリアラミド繊維対バインダー又はその繊維としての少なくとも1の更なるポリマーの相応する混合比を示す基材が提供されるからである。
【0063】
本発明による複合材の加熱は、加熱した空気、熱風、赤外線照射を用いて又は先行技術による他の加熱方法により実施することができる。
【0064】
本発明の方法の特殊な一実施態様において、前述の付着促進剤は前接続した工程において基材、特にポリマー不織布に設けられる。ここでは付着促進剤は適した溶媒、例えばエタノール中に溶解される。この溶液はなお少量の水をも、好ましくは加水分解可能な基のモル量に対して0.5〜10倍の量で、及び、少量の酸、例えばHCl又はHNO3を触媒としてこのSi−OR基の加水分解及び縮合のために含有できる。既知の技術、例えば吹付け塗布、印刷、プレス、押し込み、ロール塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、浸漬塗布、吹き付け塗布又は流延塗布により、この溶液は基材上に設けられ、付着促進剤は50℃〜最大350℃の温度処理で基材上に固定される。付着促進剤を設けた後に初めて、本発明の方法のこの実施変法の場合にはこの懸濁液の施与及び固化が行われる。
【0065】
本発明の方法の他の実施変法においては、付着促進層は前処理工程において設けられ、前記工程でポリマーのゾルが設けられ、固化される。このポリマーのゾルの施与及び固化は、好ましくは懸濁液の施与及び固化と同様に行われる。
【0066】
前処理のための典型的なポリマーのゾルは、金属アルコラート(例えばチタンエチラート又はジルコニウムプロピラート)の約2〜10質量%アルコール溶液であり、これは更に0.5〜10モルの割合の水並びに少量の酸を触媒として含有できる。基材上へこのようなゾルを設けた後に、この基材、好ましくはポリマー不織布は、最高350℃の温度で処理される。この場合に金属酸化物から密なフィルムが基材繊維を取り囲んで発生し、これによって市販の硝酸ジルコニウムゾル又はシリカゾルを基礎とする懸濁液又はスラリーを用いた基材の浸潤が湿潤困難でなく可能である。
【0067】
ポリマーゾルは粒状のゾルよりもむしろ密なフィルムを形成し、加えて、常により大量の水が中間粒体積の細孔構造中に存在するので、粒状のゾルよりも乾燥させるのがより容易なポリマーゾルである。この膜は150℃超の温度で乾燥されるにもかかわらず、これによりセラミック材料は十分に良好な付着強度を基材に対して獲得する。特に良好な付着強度は少なくとも200℃、特にとりわけ良好な強度は少なくとも250℃の温度で達成される。
【0068】
懸濁液の本来の施与前の付着促進剤の施与の両方の実施のやり方により、この基材の付着挙動は特に、水性の粒状のゾルに対して改善されることができ、そのために、特に市販のゾル、例えば硝酸ジルコニウムゾル又はシリカゾルを基礎とする懸濁液でこのように前処理した基材は本発明によりコーティングされることができる。付着促進剤の施与の手法はしかし、本発明の膜の製造方法が中間工程又は前処理工程を拡張しなくてはならないことも意味する。このことは、但し、付着促進剤を添加した適合させたゾルの使用に比較して手間をかけることにもなるが、しかし、市販のゾルを基礎とする懸濁液の使用の場合にもより良好な結果が達成される利点をも有する。
【0069】
本発明の方法は例えば、基材を1m/h〜2m/sの速度で、好ましくは0.5m/min〜20m/minの速度で、極めて特に好ましくは1m/min〜5m/minの速度でロールから巻き出し、懸濁液を担体の上及び中に施与する少なくとも1つの装置、例えばローラ、及び、前記懸濁液を担体の上及び中で加熱により固化させることができる少なくとも1つの他の装置、例えば電気加熱炉を通過させて、こうして製造されたセパレーターを第二のロールに巻き取ることにより実施することができる。この手法で、本発明のセパレーターを連続法で製造することができる。前処理工程も、上記のパラメータを維持しながら連続法で実施することができる。
【0070】
本発明の膜はセパレーターとして、一次及び二次(繰り返し充電可能な)リチウム−バッテリーのために、ニッケル金属水素化物バッテリー、ニッケル−カドミウムバッテリー、銀−亜鉛及び亜鉛−空気バッテリーのために適している。特にこの膜は、系Li/LiAlCl4×SO2/LiCoO2を使用するバッテリー中でセパレーターとして使用することに適している。しかし、ここで挙げていない他の全てのバッテリー系も本発明の膜を使用可能でもある。特に適しているのは、より高温が可能な運転温度を有するバッテリー系における使用のためである。
【0071】
同様に、本発明の膜は、急速充電されるのが望ましいバッテリーにおけるセパレーターとしての使用のために特に好適である。セパレーターとしての本発明の膜の高い温度安定性により、このセパレーターを備えたバッテリーはそれほど温度が敏感でなく、従って、セパレーターを不利に変化させず若しくはバッテリーを損傷させずに、急速充電に基づく温度上昇に耐えることができる。従って、このバッテリーは明らかにより急速に充電することができる。このことは、電気車両においてこのように装備されたバッテリーの使用の際に顕著な利点であり、というのも、これは、12時間超又は更により長期間にわたって充電されてはならず、より短期間内で充電を実施可能であるからである。
【0072】
出発材料の適合により又はセラミック層の後処理により、様々な化学的及び技術的なストレスが考慮されることができる。
【0073】
したがって、例えば、後処理によって又は相応する化学基の反応(当業者に知られているもの)によって、親水性又は疎水性コーティングが生じることができる。このことは例えばケイ素の有機トリアルコキシ化合物で行われることができる。これは、セラミック材料を基材に設けるのと一緒に、しかし又は、セパレーターの製造後に設けられることもできる。
【0074】
特にアルカリ抵抗性の使用材料の選択によって、本発明の膜は、強塩基性電解質を有する系のためのセパレーターとして最適化されることができる。ここで、次に、酸化アルミニウム又は二酸化ケイ素の代わりに酸化ジルコニウム又は二酸化チタンを無機成分として使用する。この基材は改質を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、種々のモデルセルについて進行するサイクルに対するそれぞれの充電容量及び放電容量を示す図である。
【0076】
本発明を次の実施例により詳細に説明する。
【0077】
実施例1:本発明の膜の製造
エタノール160gにまず5質量%のHCl水溶液15g、テトラエトキシシラン10g、メチルトリエトキシシラン2.5g及びDynasilan GLYMO(全てのDynasilann製造元:Degussa AG)7.5gを添加した。まず初めに数時間撹拌したこのゾルの中に、次に酸化アルミニウムMartoxid MZS-1及びMartoxid MZS-3 (両方の酸化アルミニウムの製造元:Martinswerke)それぞれ125gを懸濁させた。このスラリーを少なくとも更に24時間にわたりマグネットスタラーで均質化し、その際、溶剤損失を生じさせないために撹拌容器を密閉しなければならなかった。
【0078】
50%ポリアラミド繊維(Kevlar型、製造者は特にDuPont)と50%PET(製造者Advansa、Dacron型)の混合比を有し、約30μmの厚さ及び約20g/m2の面積あたりの質量を有する、ポリアラミドPET繊維混合物からの不織布を、連続的ローラ塗布法(バンド速度約8m/h、T=200℃)において上記スラリーでコーティングした。このローラ塗布法の際、スラリーを、ベルト方向(不織布の移動方向)と反対に動くローラを用いて不織布にローラ塗布する。この不織布は引き続き、温度200℃を有する炉を通じて進行する。後続の実験において、同様の方法ないし装置を使用した。最後に平均孔径450nmの膜が得られた。
【0079】
実施例2:本発明の膜の製造
エタノール160gにまず5質量%のHCl水溶液15g、テトラエトキシシラン10g、メチルトリエトキシシラン2.5g及びDynasilan GLYMO7.5gを添加した。まず数時間撹拌したこのゾル中に、次に酸化アルミニウムAlcoa CT 1200 SG280gを懸濁した。
【0080】
このスラリーを少なくとも更に24時間にわたりマグネットスタラーで均質化し、その際、溶剤損失を生じさせないために撹拌容器を密閉しなければならなかった。
【0081】
約100μmの厚さ及び22g/m2の面積あたりの質量を有する、ポリアラミド繊維−PET不織布(混合比80%ポリアラミド繊維(製造者例えばDuPont、Kevlar型)及び20%PET(製造者Advansa、Dacron型))を、連続的ローラ塗布法(バンド速度約8m/h、T=250℃)において上記スラリーでコーティングした。最後に平均孔径240nmの膜が得られた。
【0082】
実施例3:セパレーターとして本発明の膜を有するLi−イオン−バッテリー
実施例1により製造した膜をLiイオンセル(陽極材料としてLiCoO2、グラファイトからなる負極材料及び炭酸エチレン/炭酸ジメチル中のLiPF6からなる電解質からなる)中に組み込んだ(LiCoO2(36.3mg)、活性材料86%//S−450−PET_2、EC/DMC1:1、1M LiPF6//グラファイト(17.0mg)、活性材料90%)。
【0083】
4つのモデルセルを構築し、この達成される充電容量を充電サイクル及び放電サイクルの関数として記録した。種々のモデルセルについて進行するサイクルに対するそれぞれの充電容量及び放電容量は、図1中に図式により示してある。図1でCh.Capは充電容量を、Dis.Capは放電容量を意味する。
【0084】
全ての4つのセルについて測定した期間を通じて容量の減少は確認されることができず、この充電容量又は放電容量はほぼ同一であった。26サイクル後にも、バッテリー性能の低下は確認されなかった。
【0085】
実施例4:温度安定性検査
収縮挙動の検査のために、セラミック複合材膜の並びにポリアラミド繊維含有不織布のブランクを高められた温度に曝露した。この場合に、収縮が比較材料(PET不織布)についてだけ確認されることができたことが示された。残りの材料についてはこの収縮は1%未満であり、第1表に示されるとおりである。
【表2】

【0086】
さらに、温度の上昇と共に材料の変色は確認されることができなかった。本発明の膜が火炎に曝された場合ですら、試験片のその完全性は維持されたままであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の開口部を備えた平面状柔軟基材と、前記基材上及び前記基材中に存在する多孔質無機コーティングを含み、前記基材の材料が非電導性の織繊維又は不織繊維から選択されている膜において、
前記基材はポリアラミド繊維を有し、
前記ポリアラミド繊維はまじりけがないか又は少なくとも1の更なるポリマーからの繊維と結合し、その際、1又は少なくとも1の前記更なるポリマーの繊維は、前記ポリアラミド繊維の分解点よりも低い融点を有する、又は
前記ポリアラミド繊維は少なくとも1のポリマーバインダーと相互に結合している
ことを特徴とする膜。
【請求項2】
1又は複数の前記更なるポリマーの繊維が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンの繊維、又は、前記繊維からの混合物、及び/又はポリオレフィンら選択されているか、又は、
前記ポリマーバインダーが、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−PTFEコポリマー、ブタジエンゴム、(メタ−)アクリレートラテックス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又は前記バインダーからの混合物から選択されている
ことを特徴とする、請求項1記載の膜。
【請求項3】
前記基材の繊維が、(ポリアラミド繊維):(1又は複数の前記更なるポリマーの繊維)の混合比10:1〜1:10で存在することを特徴とする、請求項1又は2記載の膜。
【請求項4】
前記基材が50〜97%の多孔率を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の膜。
【請求項5】
前記基材が200℃超の融点を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の膜。
【請求項6】
前記セパレーターが5N/cm超の引裂強度を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の膜。
【請求項7】
1)多数の開口部を備えた平面状柔軟基材を準備する工程、
前記基材はポリアラミド繊維を有し、前記ポリアラミド繊維は少なくとも1の更なるポリマーからの繊維により又は少なくとも1のポリマーバインダーにより結合しており、その際、少なくとも1のバインダー又は1又は少なくとも1の前記更なるポリマーの繊維は、前記ポリアラミド繊維の分解点よりも低い融点を有する、
2)前記基材上に、
少なくとも1の無機成分、第3〜7主族の元素を少なくとも1つ有する少なくとも1の金属、半金属又は混合金属の化合物、
及びゾル
を有する懸濁液を設け、
少なくとも1回加熱して、前記懸濁液を基材上もしくは基材中で又は基材上及び基材中で固化させる工程、
を含む請求項1から6のいずれか1項記載の膜の製造方法。
【請求項8】
1又は複数の前記更なるポリマーの繊維が、
ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、又は、前記繊維からの混合物、及び/又はポリオレフィンから選択されるか、又は、
前記ポリマーバインダーが、
ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン−PTFEコポリマー、ブタジエンゴム、(メタ−)アクリレートラテックス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又は前記バインダーからの混合物から選択され、かつ
前記懸濁液が、
金属Al、Zr、Si、Ti及び/又はYの少なくとも1の酸化物、及び/又は
ゾル、及び/又は
ポリアラミド粒子を有する
ことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記懸濁液がゾル、及び
金属Al、Zr、Si、Ti及び/又はYの少なくとも1の酸化物、及び
ポリアラミド粒子
を有することを特徴とする、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記懸濁液を、ロールコート、印刷、プレス、押し込み、ローラ塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、浸漬塗布、吹き付け塗布又は流延塗布により前記基材の上及び中に設けることを特徴とする、請求項7から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁液が少なくとも1のゾル、少なくとも1の半金属酸化物ゾル又は少なくとも1の混合金属酸化物ゾル又は前記ゾルの混合物を有し、かつ、少なくとも1の無機成分を少なくとも1の前記ゾル中に懸濁することにより製造することを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程2)において、固化した状態で電気絶縁性である懸濁液を使用する、請求項7から11のいずれか1項記載の膜の製造方法。
【請求項13】
バッテリーにおいてセパレーターとして、壁装材として、器具の保護カバー及び支持カバーとしての請求項1から6のいずれか1項記載の膜の使用。
【請求項14】
セパレーターとして請求項1から6のいずれか1項記載の膜を有するリチウムイオンバッテリー。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−501082(P2013−501082A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522062(P2012−522062)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059286
【国際公開番号】WO2011/012396
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】