説明

ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法

【課題】2官能性モノマーなどの副生成物の生成が極めて少ないポリアルキレングリコール系単量体の製造方法を提供する。
【解決手段】グリシジル(メタ)アクリレートと特定のモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1の仕込みモル比でエーテル化反応させて、ポリアルキレングリコール系単量体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法、ポリアルキレングリコール系重合体の製造方法、及び該製造方法で得られたポリアルキレングリコール系重合体を含む分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコール系化合物は、ポリアルキレングリコール系重合体の原料の単量体として用いられ、ポリアルキレングリコール系重合体は分散剤、増粘剤、洗浄剤ビルダー、スケール防止剤など多様な用途に応用されている。
【0003】
ポリアルキレングリコール系重合体として、メタクリル酸又はアクリル酸と、ポリアルキレングリコールがエステル化したポリアルキレングリコールエステル系単量体を用いた重合体が知られている(特許文献1)。エステル化反応は平衡反応であるため、メタクリル酸及びアクリル酸等の不飽和カルボン酸とポリアルキレングリコールのいずれかを過剰に用いることが、反応促進上有利である。具体的には、不飽和カルボン酸をポリアルキレングリコールに対して過剰に用い、エステル化反応の終了後に過剰分の不飽和カルボン酸を留去する、或いは残留する不飽和カルボン酸を次工程の重合体製造の原料とする、等が行われる。特許文献1の実施例では不飽和カルボン酸1モルに対してポリアルキレングリコールを2.1〜8.8モル使用している。
【0004】
また、ポリアルキレングリコールエステル系単量体は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとモノアルコキシポリアルキレングリコールとをエーテル化反応させることで製造できる。また、ポリカルボン酸系重合体を製造するにあたり、ソルビトールエチレンオキシド付加物とグリシジルメタクリレートとを反応させて得たソルビトール/エチレンオキシド付加物単量体(ソルビトールEO付加物マクロマー)を用いることが知られている(特許文献2)。
【0005】
また、不飽和アルコールに特定条件下でアルキレンオキシドを付加反応して不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体を製造する方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−60302号
【特許文献2】特開2004−2175号
【特許文献3】特開2009−46655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリアルキレングリコールエステル系単量体を、グリシジル(メタ)アクリレートとモノアルコキシポリアルキレングリコールとをエーテル化反応させることで製造する場合、反応条件によっては、不飽和結合を2個有する等の2官能性モノマーが副生成物として生成する。当該2官能性モノマーを多量に含む混合物を重合に用いた場合、重合物が架橋構造を形成し、粘度増加やゲル化を引き起こすことになるため、ポリアルキレングリコールエステル系単量体中の2官能性モノマーは少ない方が望ましい。
【0008】
本発明の課題は、2官能性モノマーなどの副生成物の生成が極めて少ないポリアルキレングリコール系単量体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、グリシジル(メタ)アクリレートと下記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1の仕込みモル比でエーテル化反応させるポリアルキレングリコール系単量体の製造方法(以下、方法1という)に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。〕
【0012】
また、本発明は、グリシジル(メタ)アクリレートと下記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1の仕込みモル比でエーテル化反応させることにより、
下記一般式(i−b)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(i−b)と下記一般式(i−c)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(i−c)とを含有し、単量体(i−b)と単量体(i−c)との重量比が、(i−c)/〔(i−b)+(i−c)〕で0.1以下であるポリアルキレングリコール単量体組成物を製造する、
ポリアルキレングリコール系単量体組成物の製造方法(以下、方法1’という)に関する。
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。〕
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nは1〜500の数、Aは炭素数2〜18のアルキレン基である。〕
【0017】
【化4】

【0018】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nは1〜500の数、Aは炭素数2〜18のアルキレン基である。〕
【0019】
また、本発明は、グリシジル(メタ)アクリレートと下記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1の仕込みモル比でエーテル化反応させてポリアルキレングリコール系単量体組成物を製造する工程(A)と、
工程(A)で得られたポリアルキレングリコール系単量体組成物と不飽和カルボン酸系単量体とを共重合してポリアルキレングリコール系重合体を製造する工程(B)と、
を有するポリアルキレングリコール系重合体の製造方法(以下、方法2という)に関する。
【0020】
【化5】

【0021】
〔式中、Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。〕
【0022】
また、本発明は、上記本発明の製造方法で得られたポリアルキレングリコール系重合体からなる分散剤に関する。
【0023】
また、本発明は、上記本発明の分散剤と、水硬性粉体と、水とを混合する、水硬性組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、2官能性モノマーなどの副生成物の生成が極めて少ないポリアルキレングリコール系単量体組成物の製造方法が提供される。本発明により製造されたポリアルキレングリコール系単量体組成物と不飽和カルボン酸系単量体とを共重合して得られたポリアルキレングリコール系重合体は、粘度増加やゲル化が生じず、分散剤等としての性能が適切に発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法(方法1)>
本発明では、グリシジル(メタ)アクリレートと特定のモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1、好ましくは0.9/1〜1.1/1、より好ましくは0.95/1〜1.05/1の範囲の仕込みモル比でエーテル化反応させる。この範囲の仕込みモル比でエーテル化反応させることにより、2官能性モノマーなどの副生成物の生成が極めて少ないポリアルキレングリコール系単量体を製造できる。この仕込みモル比が0.8未満では、得られるエーテル化物の収率が低下し、1.2を超えると2官能モノマーなどの副生成物の量が増加する。ここで、グリシジル(メタ)アクリレートは、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートの意味である。また、モノアルコキシポリアルキレングリコールの分子量は、水酸基価から求める。
【0026】
方法1で用いられるモノアルコキシポリアルキレングリコールは、下記一般式(ii)で表される化合物である。
【0027】
【化6】

【0028】
〔式中、Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。〕
【0029】
グリシジル(メタ)アクリレートと上記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとをエーテル化反応させることで、下記一般式(i)で表されるポリアルキレングリコール系単量体〔以下、単量体(i)という〕が得られる。
【0030】
【化7】

【0031】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基、B1とB2は、一方が水素原子、他方が下記一般式(ii-a)
【0032】
【化8】

【0033】
で表される基(Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。)である。〕
【0034】
一般式(i)中、B1とB2は、一方が水素原子、他方が一般式(ii-a)で表される基である。一般式(ii)又は一般式(ii-a)中、nはAOの平均付加モル数であり、単量体(i)を用いた重合体の粉体の分散性能の観点から1〜500の数、好ましくは2〜300の数、より好ましくは5〜150、より好ましくは5〜75の数である。Aは炭素数2〜18のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基である。R1は水素原子又はメチル基であり、メチル基が好ましく、R2は炭素数1〜18の炭化水素基であり、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜4の炭化水素基がより好ましい。炭化水素基はアルキル基が好ましい。
【0035】
グリシジル(メタ)アクリレートと上記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとをエーテル化反応させる場合、本発明の製造方法では、目的物である前記単量体(i)と、副生成物である下記一般式(i−a)で表されるポリアルキレングリコール系単量体〔以下、単量体(i−a)という〕とを含有する組成物であって、単量体(i)と単量体(i−a)との重量比が、(i−a)/〔(i)+(i−a)〕で0.1以下であるポリアルキレングリコール単量体組成物を得ることができる。
【0036】
【化9】

【0037】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基、B3とB4は、一方が下記一般式(ii-a)
【0038】
【化10】

【0039】
で表される基(Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。)であり、他方が下記一般式(ii-b)
【0040】
【化11】

【0041】
で表される基(R1は水素原子又はメチル基である。)である。〕
【0042】
<ポリアルキレングリコール系単量体組成物の製造方法(方法1’)>
更に、本発明では、グリシジル(メタ)アクリレートと上記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、前記特定の仕込みモル比でエーテル化反応させることで、目的物である下記一般式(i−b)で表される単量体(i−b)と、副生成物である下記一般式(i−c)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(i−c)〔以下、単量体(i−c)という〕とを含有する組成物であって、単量体(i−b)と単量体(i−c)との重量比が、(i−c)/〔(i−b)+(i−c)〕で0.1以下であるポリアルキレングリコール単量体組成物を得ることができる(方法1’)。方法1’における好適な態様は方法1と同じである。
【0043】
【化12】

【0044】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nは1〜500の数、Aは炭素数2〜18のアルキレン基である。〕
【0045】
【化13】

【0046】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nは1〜500の数、Aは炭素数2〜18のアルキレン基である。〕
【0047】
単量体(i−a)や単量体(i−c)は、2官能性モノマーであり、これを多量に含む単量体組成物を重合に用いた場合、重合物が架橋構造を形成し、粘度増加やゲル化を引き起こすものと考えられるが、本発明で製造方法では、単量体(i−a)や単量体(i−c)の生成量は極めて低いものとなる。なお、本発明において、反応生成物中の単量体(i)、単量体(i−a)、単量体(i−b)、単量体(i−c)の含有量は、高速液体クロマトグラフィーにより分離し、それぞれ溶媒を蒸発させ、その重量を測定して求めることができる。
【0048】
方法1及び方法1’のエーテル化反応は溶媒を用いることができる。有効分を高くでき、生産性に優れるため、溶媒を使用せず、バルクで反応させてもよい。溶媒を予め反応容器に仕込んでおきグリシジル(メタ)アクリレートとモノアルコキシポリアルキレングリコールをそれぞれ反応容器内に滴下してもよい。予めモノアルコキシポリアルキレングリコールを反応容器に仕込み、グリシジル(メタ)アクリレートを滴下してもよい。予めグリシジル(メタ)アクリレートを反応容器に仕込み、モノアルコキシポリアルキレングリコールを滴下してもよい。全てを一括で反応容器に仕込んでもよい。反応の温度制御、品質、暴走防止の点から、予めモノアルコキシポリアルキレングリコールを反応容器に仕込み、グリシジル(メタ)アクリレートを滴下する方法が好ましい。
【0049】
また、グリシジル(メタ)アクリレートは溶媒で希釈してもよいし、希釈せずにそのまま使用してもよい。
【0050】
溶媒を用いる場合、グリシジル(メタ)アクリレートと反応するヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基などを有さないものが好ましい。具体的には、トルエン、ヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどが好ましいが、アルコール、水、低級アルコール、グリコール系溶剤も使用できる。
【0051】
方法1及び方法1’では、反応を促進させるために塩基触媒又は酸触媒を用いてもよい。塩基触媒として、トリエチルアミン、N、N−ジメチルベンジルアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン等の三級アミン、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、中でもトリエチルアミン、N、N−ジメチルベンジルアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、炭酸カリウムが好ましい。触媒は、モノアルコキシポリアルキレングリコールに対して、モル比で0.1〜200が好ましく、1〜100がより好ましく、3〜75が更に好ましく、5〜50が最も好ましい。さらに反応を促進させるために塩基触媒と共に、ジオクチル酸すず等の金属化合物を併用してもよい。
【0052】
酸触媒として、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、アルミニウムトリアルコキサイド、チタンテトラアルコキサイド、塩化スズ等が挙げられ、中でも三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、トリフルオロメタンスルホン酸、が好ましい。触媒は、グリシジル(メタ)アクリレートに対して、モル比[触媒/グリシジル(メタ)アクリレート]で0.01〜50が好ましく、0.1〜40がより好ましく、0.5〜30が更に好ましく、1〜20が最も好ましい。酸は水和物や水溶液の形で使用しても良い。
【0053】
触媒は原料と共に反応容器に仕込んでおいてもよい。触媒は反応途中に反応容器に導入してもよい。触媒は原料と共に滴下してもよい。反応終了後、触媒を中和してもよい。反応終了後、触媒を除去してもよい。
【0054】
また、触媒を中和してもしなくても用いることができる。中和する場合は、完全中和、部分中和、何れでもよい。好ましくは中和度0〜1.0、より好ましくは0〜0.5、更に好ましくは0〜0.1である。
【0055】
方法1及び方法1’での反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは25〜150℃、更に好ましくは50〜100℃である。
【0056】
方法1及び方法1’では、エーテル化反応の際、グリシジル(メタ)アクリレートの不飽和結合の反応を抑制する観点から、重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤は、エーテル化反応前に予め反応容器に仕込んでおいてもよく、また、反応途中に反応容器内に導入してもよい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等が挙げられる。
【0057】
方法1及び方法1’でのエーテル化反応は、空気等の酸化性ガス雰囲気下又は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。重合防止の観点から空気が好ましい。目的とするガスは、雰囲気及び/又はバブリングで導入することができる。
【0058】
エーテル反応の終点は、核磁気共鳴(NMR)法によるエポキシ基由来のピークによる分析法で確認することができる。ピークが検出されなくなった時間を反応の終了とすることが好ましい。
【0059】
方法1及び方法1’では、使用目的によって異なるが、目的が方法2による重合体を製造するための原料である場合は、得られた反応生成物中に未反応のグリシジル(メタ)アクリレートが残存していてもよい。残存するグリシジル(メタ)アクリレートは加水分解してグリセリン(メタ)アクリレートとしてもよい。化合物(i)と共に残存するグリシジル(メタ)アクリレートやグリセリン(メタ)アクリレートは、方法2による重合体を製造する際の共重合成分として使用していてもよい。未反応のモノアルコキシポリアルキレングリコールが残存していてもよい。残存する原料を除去する場合は、蒸留による留去や、溶媒抽出を用いることができる。
【0060】
得られた単量体(i)はそのまま貯槽や適当な容器などで保管できる。単量体(i)の融点によっては固体状態で保管してもよいし、加熱して溶融状態でもよい。水などの溶媒で希釈して溶液としてもよい。常温で保管できる事や取り扱いやすさの観点から溶液での保管、中でも水溶液とすることが好ましい。単量体(i)は、方法2による重合体の構成単量体として使用できる。
【0061】
<ポリアルキレングリコール系重合体の製造方法(方法2)>
本発明の方法2は、グリシジル(メタ)アクリレートと特定のモノアルコキシポリアルキレングリコールとを仕込みモル比が0.8/1〜1.2/1の範囲でエーテル化反応させてポリアルキレングリコール系単量体組成物を製造する工程(A)と、工程(A)得られたポリアルキレングリコール系単量体組成物と不飽和カルボン酸系単量体とを共重合してポリアルキレングリコール系重合体を製造する工程(B)と、を有するポリアルキレングリコール系重合体の製造方法である。工程(A)は、方法1又は方法1’であってよい。
【0062】
方法2により製造されるポリアルキレングリコール系重合体としては、下記一般式(I-a)で表される構成単位と、下記一般式(I-b)で表される構成単位とを含むポリアルキレングリコール系重合体が挙げられる。
【0063】
【化14】

【0064】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基、B1とB2は、一方が水素原子、他方が下記一般式(II)
【0065】
【化15】

【0066】
で表される基(Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。)である。〕
【0067】
【化16】

【0068】
〔式中、R3は水素原子又はメチル基、R4は水素原子、メチル基、COOH又はCOOM1、R5は水素原子、メチル基、OH、COOH、COOM、CH2COOH又はCH2COOM1、M、M1は、それぞれ、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。〕
【0069】
一般式(I-b)の構成単位となる単量体としては、不飽和基を有するカルボン酸であり、不飽和基を1個有する1価又は2価のカルボン酸が好ましい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、αヒドロキシアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸等の単量体が挙げられる。これらの中でもアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0070】
方法2により製造されるポリアルキレングリコール系重合体中の構成単位(I-a)の好ましい割合は、1〜99モル%、更に5〜95モル%、水硬性粉体分散性の観点から更に10〜90モル%、更に20〜80モル%である。また、該重合体中の構成単位(I-b)の好ましい割合は、99〜1モル%、更に95〜5モル%、水硬性粉体の分散性の観点から更に90〜10モル%、より更に80〜20モル%である。工程(B)において、工程(A)で得られたポリアルキレングリコール系単量体、すなわち単量体(i)と不飽和カルボン酸系単量体との仕込みモル比は、工程(A)得られたポリアルキレングリコール系単量体/不飽和カルボン酸系単量体で5/95〜95/5、更に10/90〜90/10、より更に20/80〜80/20が好ましい。
【0071】
方法2により製造されるポリアルキレングリコール系重合体が含み得るその他の構成単位を得るための単量体として、以下のものが挙げられる。
(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステル類
(2)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、酢酸ビニル、酢酸アリル、アリルアルコール、メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等の不飽和アルコール類
(3)ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩
(4)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類
(5)リン酸エステル系単量体、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、クロトン酸2−ヒドロキシエチル、αヒドロキシアクリル酸2−ヒドロキシエチル等を、五酸化二リンやリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸、三塩化リン、オキシ塩化リン等のリン酸化剤でリン酸化した単量体が挙げられる。具体的にはリン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)クロトン酸エステル等が挙げられる。これらの中でもリン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステルが好ましい。また、更にリン酸ジ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸ジ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル、リン酸ジ(2−ヒドロキシエチル)クロトン酸エステル等が挙げられる。これらの中でもリン酸ジ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸ジ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステルが好ましい。
【0072】
方法2により製造されるポリアルキレングリコール系重合体の好ましい重量平均分子量は、10000〜200000、更に20000〜150000、より更に30000〜100000である。また、工程(A)で得られるポリアルキレングリコール系単量体組成物は2官能性モノマーの含有量が少ないのでポリアルキレングリコール系重合体は架橋構造の含有割合が少なくなり分子量の分布が狭い重合体が得られる。分子量の分布の指標となる数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)、すなわち(Mw/Mn)は、分散剤としての性能の観点から1.0〜1.5が好ましく、1.1〜1.4がより好ましく、1.2〜1.4が更に好ましい。重量平均分子量及び数平均分子量は、実施例に記載する方法により測定される。
【0073】
工程(B)において、ポリアルキレングリコール系単量体と不飽和カルボン酸系単量体との共重合には、重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキシド等が挙げられる。分解促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸、亜リン酸塩や次亜リン酸塩等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物を併用することもできる。重合開始剤は全単量体の合計に対して0.1〜20モル%、0.5〜15モル%、0.75〜10モル%の割合で用いることが好ましい。重合開始剤は2種以上を併用しても良い。
【0074】
また、ポリアルキレングリコール系単量体と不飽和カルボン酸系単量体との共重合には、連鎖移動剤を使用できる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム);亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム);四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;等が挙げられる。連鎖移動剤は全単量体の合計に対して0.1〜20モル%、1〜10モル%、2.5〜7.5モル%の割合で用いることが好ましい。
【0075】
また、ポリアルキレングリコール系単量体と不飽和カルボン酸系単量体との共重合時には、重合を抑制する観点から、重合禁止剤を使用できる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールなどのフェノール類;フェノチアジン、メチレンブルー等のアミン類;ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、その他ニトロ化合物、ニトロソ化合物、N−オキシル化合物等が挙げられる。重合禁止剤はポリアルキレングリコール系単量体に対して0.005〜0.5重量%、0.01〜0.3重量%、0.15〜0.1重量%の割合で用いることが好ましい。重合禁止剤は、原料に予め加えてあってもよい。また、エーテル化反応前に予め仕込んでおいてもよく、反応中や反応後に仕込んでもよい。
【0076】
ポリアルキレングリコール系単量体と不飽和カルボン酸系単量体との共重合には、必要に応じて、リン酸等のpH調整剤、キレート剤、消泡剤等を使用することができる。
【0077】
上記共重合方法としては、例えば、単量体成分と重合開始剤とを用いて、溶液重合や塊状重合等により行うことができる。
【0078】
ポリアルキレングリコール系単量体と不飽和カルボン酸系単量体との共重合において、反応温度は25〜100℃、更に40〜90℃、更に60〜80℃で行うことができる。重合反応の終了は、高速液体クロマトグラフィーや核磁気共鳴(NMR)法を用いて残存する単量体を定量することにより確認することができる。反応終了後、必要に応じて中和、濃度の調整を行い、ポリアルキレングリコール系重合体を得ることができる。
【0079】
本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコール系重合体は、分散剤、増粘剤、洗浄剤ビルダー、スケール防止剤など多様な用途に用いることができる。
【0080】
本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコール系重合体は、カルボン酸による吸着基とポリアルキレングリコールによる立体反発基を有しており、分散剤、中でも粉体を分散させるための分散剤として有用である。無機粉体又は有機粉体に使用でき、無機粉体により好適に用いることができる。中でも、水硬性粉体の水和反応への阻害が少ない点で、水和反応により硬化する物性を有する水硬性粉体にさらに好適に用いることができる。例えば普通ポルトランドセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、高ビーライト含有セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、シリカフュームセメントなどの水硬性粉体セメントや石膏が挙げられる。また、無機粉体としてフィラーも用いることができ、例えば炭酸カルシウム、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、ベントナイト、クレー(含水珪酸アルミニウムを主成分とする天然鉱物:カオリナイト、ハロサイト等)が挙げられる。これらの粉体は単独でも、混合されたものでもよい。すなわち、本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコール系重合体は、水硬性粉体用分散剤として好適である。
【0081】
本発明により、本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコール系重合体(すなわち本発明に係る分散剤)と、水硬性粉体と、水とを混合することにより、これらを含有する水硬性組成物が提供される。水硬性組成物は、モルタル、コンクリート、グラウト等が挙げられる。水硬性組成物は、セメント、水、細骨材、粗骨材、炭酸カルシウム等フィラー等を含有することができる。また、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、石灰石等の微粉体を添加したものであってもよい。かかる水硬性組成物において、本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコール系重合体は、水硬性粉体100重量部に対して0.01〜10重量部、更に0.05〜8重量部、更に0.1〜5重量部使用することができる。
【0082】
本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコール系重合体を含有する水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が小さい領域で、分散性能と低い粘性の効果を発揮することができる。すなわち、本発明の製造方法により得られたポリアルキレングリコール系重合体は、W/P(%)が重量比で好ましくは10〜60%、より好ましくは10〜45%、より好ましくは10〜30%、さらに好ましくは10〜20%、よりさらに好ましくは10〜15%の水硬性組成物に対して用いると分散性と低い粘性で優れた効果を発揮することができる。
【実施例】
【0083】
実施例1及び比較例1
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)にモノメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)264.6gと、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製、試薬)7.0gを仕込み、空気通気下、攪拌しながら105℃まで昇温した。その後、グリシジルメタクリレート(ダウケミカル社製、以下、GMAと表記する)36.0gを4時間かけて滴下した。その後、105℃で1.5時間熟成した。熟成終了後に酢酸で中和、水で希釈し、65重量%固形分、純度84.0%の化合物水溶液を得た。この化合物水溶液を単量体組成物1とした。同様の方法で、ただしGMAとモノメトキシポリエチレングリコールのモル比を変更して、単量体組成物2〜4及び単量体組成物5(比較例)を製造した。
【0084】
得られた単量体組成物1〜5について、高速液体クロマトグラフィーにより各ピークを分取したものを、核磁気共鳴(NMR)法により構造確認したところ、各ピークそれぞれが単量体(i−b)と単量体(i−c)とを含む反応生成物であることがわかった。表1に各単量体組成物を製造する際のモル比、及び単量体(i−b)と単量体(i−c)の重量比を示す。重量比は、各ピークを分取したものから溶媒を蒸発させ、その重量を測定して求めた。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例2及び比較例2
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水115.0gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。単量体組成物1〔メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23、純度84.0%)の水溶液(65重量%固形分)〕250.0gとメタクリル酸29.7gを混合溶解した単量体溶液と、3−メルカプトプロピオン酸水溶液〔3−メルカプトプロピオン酸(シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製、試薬)1.95gを水27.0gに溶解したもの〕と、過硫酸アンモニウム水溶液(I)〔過硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製、試薬)1.05gを水45.0gに溶解したもの〕の3者を、同時に滴下を開始し、それぞれ1.5時間かけて滴下した。80℃で1.0時間熟成した後、過硫酸アンモニウム水溶液(II)〔過硫酸アンモニウム0.52gを水15.0gに溶解したもの〕を加え、更に2時間熟成した。熟成終了後に20重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、共重合体の水溶液を得た。この共重合体を共重合体1とした。同様の方法で、ただし単量体組成物1に代えて単量体組成物2〜4又は単量体組成物5(比較例)もしくはメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数23)メタクリレート(比較例)を用いて、共重合体2〜4及び共重合体5、6(比較例)を製造した。
【0087】
得られた共重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した。結果を表2に示す。
GPC分子量測定条件
使用カラム:東ソー(株)製
TSKguardcolumn PWxl
TSKgel G4000PWxl+G2500PWxl
溶離液:0.2mol/Lリン酸バッファー(伸陽化学工業(株)製)/高速液体クロマトグラフ用アセトニトリル(和光純薬工業(株)製)=9/1(vol%)
流速:1.0mL/min.
カラム温度:40℃
検出:RI
注入量:10μL(0.5重量%水溶液)
標準物質:ポリエチレンオキシド、重量平均分子量(Mw)875000、540000、235000、145000、107000、24000
検量線次数:三次式
装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
ソフトウエア:EcoSEC-WS(東ソー(株)製)
【0088】
【表2】

【0089】
* 本発明でいうポリアルキレングリコール系単量体混合物に該当しないが、比較し易くするためこの列に記載した。
** 実施例2−1〜2−4、比較例2−1は、単量体組成物1〜5中のポリアルキレングリコール系単量体と不飽和カルボン酸系単量体とのモル比である。
*** 重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)
【0090】
<モルタル試験>
実施例2で得られた共重合体1〜6を用いて調製したモルタルについて、モルタルフローの測定を行った。モルタル配合は表3の通りとした。セメント100重量部に対する共重合体の添加量は表4に示した通りとした。上記条件下に、モルタルミキサーに、細骨材、セメントを投入して15秒間空練りを行い、次いで、脂肪酸エステル系消泡剤0.05gと共重合体1〜6の何れかを配合した水を加えて更に10分間練り混ぜ、モルタルを製造した。モルタル製造直後(0分)、15分後、30分後、60分後及び90分後にそれぞれモルタルフローを測定した。フロー試験はJIS R5201に従って測定を行った。なお、JIS R 5201記載の落下運動は行っていない。より少ない添加量で大きなフローがでるものが分散性に優れ、経時の流動性の変化が少ないものが流動保持性に優れる。
【0091】
【表3】

【0092】
表3中の配合成分は以下のものである。
W:和歌山市水道水
C:普通ポルトランドセメント、太平洋セメント(株)製、密度3.16g/cm3
S:細骨材、城陽産山砂 密度2.55g/cm3
【0093】
【表4】

【0094】
表中、添加量はセメント100重量部に対する重量部である。
【0095】
表4に示すように、共重合体1〜4を用いた実施例2−1〜2−4では、同一の添加量において調製直後に202〜208mmのモルタルフローが得られており、比較の共重合体である共重合体5に比べてモルタルに対する流動性付与効果に優れることがわかる。また、共重合体1〜4を用いた実施例2−1〜2−4では、ポリアルキレングリコール系単量体としてメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数23)メタクリレートを用いた比較の共重合体である共重合体6(従来品)と比べて、流動性付与効果が同等以上であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシジル(メタ)アクリレートと下記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1の仕込みモル比でエーテル化反応させるポリアルキレングリコール系単量体の製造方法。
【化1】


〔式中、Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。〕
【請求項2】
グリシジル(メタ)アクリレートと下記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1の仕込みモル比でエーテル化反応させることにより、
下記一般式(i−b)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(i−b)と下記一般式(i−c)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(i−c)とを含有し、単量体(i−b)と単量体(i−c)との重量比が、(i−c)/〔(i−b)+(i−c)〕で0.1以下であるポリアルキレングリコール単量体組成物を製造する、
ポリアルキレングリコール系単量体組成物の製造方法。
【化2】


〔式中、Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。〕
【化3】


〔式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nは1〜500の数、Aは炭素数2〜18のアルキレン基である。〕
【化4】


〔式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nは1〜500の数、Aは炭素数2〜18のアルキレン基である。〕
【請求項3】
グリシジル(メタ)アクリレートと下記一般式(ii)で表されるモノアルコキシポリアルキレングリコールとを、グリシジル(メタ)アクリレート/モノアルコキシポリアルキレングリコール=0.8/1〜1.2/1の仕込みモル比でエーテル化反応させてポリアルキレングリコール系単量体組成物を製造する工程(A)と、
工程(A)で得られたポリアルキレングリコール系単量体組成物と不飽和カルボン酸系単量体とを共重合してポリアルキレングリコール系重合体を製造する工程(B)と、
を有するポリアルキレングリコール系重合体の製造方法。
【化5】


〔式中、Aは炭素数2〜18のアルキレン基、R2は炭素数1〜18の炭化水素基、nはAOの平均付加モル数を表し、1〜500の数である。〕
【請求項4】
請求項3記載の製造方法で得られたポリアルキレングリコール系重合体からなる分散剤。
【請求項5】
請求項4記載の分散剤と、水硬性粉体と、水とを混合する、水硬性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−57030(P2012−57030A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200811(P2010−200811)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】