説明

ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液及びそれを用いたポリアルキレングリコールの製造方法

【課題】 有機塩基として有用な塩基性イミノホスファゼニウム塩を長期間安定に保存することが可能な塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液からなるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液及びそのポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法を提供する。
【解決手段】 塩基性イミノホスファゼニウム塩及び溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒からなるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液及びそれを用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機塩基として有用な塩基性イミノホスファゼニウム塩を長期間安定に保存することが可能な塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液からなるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液及びそのポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩基性イミノホスファゼニウム塩は、有用な有機塩基として知られており、例えば2級アミンのアルキル化、フェニルアセトニトリルのアルキル化、アルデヒドとα−ハロエステルとの縮合反応によるα,β−エポキシエステルの生成反応(ダーゼン反応)用の触媒としての使用が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
この塩基性イミノホスファゼニウム塩は、対アニオンとしてテトラフルオロホウ酸イオンを有する中性のイミノホスファゼニウム塩を、メタノールとジエチルエーテルの混合溶媒中水酸化カリウムと反応させ、得られる塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液を減圧下溶媒除去する方法によって製造することができ、最終的に塩基性イミノホスファゼニウム塩は固体として得られる。
【0004】
一方、塩基性ホスファゼニウム塩は、その求核特性及び塩基性の点から、前記塩基性イミノホスファゼニウム塩同様、工業的に有用性が期待される化合物であり、例えばポリアルキレングリコール製造用触媒としての利用が提案されている(例えば特許文献2参照。)。そして、この塩基性ホスファゼニウム塩は、中性のホスファゼニウム塩をイオン交換樹脂又は塩基性化合物で処理後、溶媒を除去することによって、固体として単離することができる(例えば特許文献3、4参照。)。
【0005】
単離したホスファゼニウム塩は、固体状態のまま、あるいは水溶液として、ポリアルキレングリコールの製造に使用することが提案されている(例えば特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102006010034号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第3497054号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−031689号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2001−089487号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2000−038443号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案の方法により得られる塩基性イミノホスファゼニウム塩は不安定であり、固体状態で保存しておくと、時間の経過とともに分解が進行するために合成後に保存をしておくことが困難であり、ポリアルキレングリコールの工業的触媒としては課題を有するものであった。また、特許文献2〜4のいずれにも塩基性イミノホスファゼニウム塩はおろか塩基性ホスファゼニウム塩の保存安定性について言及した記載は何ら見当たらない。
【0008】
そして、工業プロセスにおいては効率を重視することから原材料の作り置きは常識であり、保存安定性に劣るものは工業プロセスに適用することが著しく困難なものとなる。塩基性イミノホスファゼニウム塩および塩基性ホスファゼニウム塩溶液の保存安定性に関しては、何ら検討もなされていないのが現状である。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、有機塩基として有用性が期待される塩基性イミノホスファゼニウム塩を長期間安定に保存することが可能となる塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液よりなるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液およびそれを用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、塩基性イミノホスファゼニウム塩を特定の溶媒を含有する溶媒に溶解した溶液が、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液として優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩を、溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒に溶解してなるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液及び該ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法に関するものである。
【0012】
【化1】

(上記一般式(1)中、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。なお、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。Xはヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜4のアルキルカルボキシアニオン、または炭酸水素アニオンを表す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本願発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液は、上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩を、溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒に溶解してなる溶液である。
【0014】
本願発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を構成する塩基性イミノホスファゼニウム塩は、上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩である。
【0015】
ここで、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。なお、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。そして、炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、へプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基等を挙げることができる。
【0016】
また、RとRが互いに結合した環構造としては、ピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジニル基、インドリル基、イソインドリル基等を挙げることができ、R同士又はR同士が互いに結合した環構造としては、例えば一方の置換基がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基となって、他方の置換基と互いに結合し環構造を形成している構造を挙げることができる。
【0017】
そして、特に有機強塩基性を示し、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液として適した塩基性イミノホスファゼニウム塩が容易に得られることから、R、Rとしては、メチル基、エチル基、イソプロピル基であることが好ましい。
【0018】
上記一般式(1)におけるXとしては、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、または炭酸水素アニオンを表す。ここで、炭素数1〜4のアルコキシアニオンとしては、例えばメトキシアニオン、エトキシアニオン、n−プロポキシアニオン、イソプロポキシアニオン、n−ブトキシアニオン、イソブトキシアニオン、t−ブトキシアニオン等が挙げられ、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオンとしては、例えばアセトキシアニオン、エチルカルボキシアニオン、n−プロピルカルボキシアニオン、イソプロピルカルボキシアニオン、n−ブチルカルボキシアニオン、イソブチルカルボキシアニオン、t−ブチルカルボキシアニオン等が挙げられる。
【0019】
そして、特に有機強塩基性を示し、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液として適した塩基性イミノホスファゼニウム塩となることからXとしては、ヒドロキシアニオンであることが好ましい。
【0020】
本発明における上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩の入手方法としては、該塩基性イミノホスファゼニウム塩の入手が可能である限りにおいて如何なる方法により入手することも可能であり、例えば下記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩を塩基性化合物又はイオン交換樹脂を用いてイオン交換する方法を挙げることができる。
【0021】
【化2】

(上記一般式(2)中、R及びRは、上記一般式(1)中のR及びRと同じ定義である。Aは、塩素アニオン、臭素アニオン、よう素アニオンを表す。)
そして、塩基性化合物を用いて上記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩を上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩へイオン交換する方法としては、例えば上記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩を有機溶媒中、塩基性化合物で処理し、上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩へイオン交換する方法が挙げられる。ここで、塩基性化合物としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素化物等を挙げることができ、その中でも、入手が容易で塩基性が強くイオン交換が容易に進行することから、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、ネオペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール等のアルコールを挙げることができ、その中でも、目的とするイオン交換反応の反応率が高くなることから、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノールが好ましい。
【0022】
また、イオン交換樹脂を用いて上記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩を上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩へイオン交換する方法としては、例えば上記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩を水、又は水と相溶性のある有機溶媒と水との混合溶媒に溶解した後、水酸基型アニオン交換樹脂で処理を行い、上記一般式(1)においてXがヒドロキシアニオンである塩基性イミノホスファゼニウム塩へイオン交換する方法が挙げられる。
【0023】
上記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩の製造方法としては、例えば五塩化リンと下記一般式(3)で示されるグアニジン類を反応する方法を挙げることができる。
【0024】
【化3】

(上記一般式(3)中、R及びRは、上記一般式(1)中のR及びRと同じ定義である。)
本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を構成する溶媒は、溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒である。ここで、非プロトン性溶媒、又は、溶解度パラメータ10(cal/cm1/2未満のプロトン性有機溶媒のみからなる溶媒である場合、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を構成する塩基性イミノホスファゼニウム塩の保存安定性が低下し、ポリアルキレングリコール製造用触媒としての使用に課題を有するものとなる。
【0025】
該溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒としては、例えばメタノール(溶解度パラメータ14.5(cal/cm1/2)、エタノール(溶解度パラメータ12.7(cal/cm1/2)、n−プロパノール(溶解度パラメータ11.9(cal/cm1/2)、イソプロパノール(溶解度パラメータ11.5(cal/cm1/2)、n−ブタノール(溶解度パラメータ11.4(cal/cm1/2)、イソブタノール(溶解度パラメータ10.5(cal/cm1/2)、t−ブタノール(溶解度パラメータ10.6(cal/cm1/2)等のモノアルコール;エチレングリコール(溶解度パラメータ14.6(cal/cm1/2)、ジエチレングリコール(溶解度パラメータ12.1(cal/cm1/2)、トリエチレングリコール(溶解度パラメータ10.7(cal/cm1/2)、プロピレングリコール(溶解度パラメータ12.6(cal/cm1/2)、1,3−ブタンジオール(溶解度パラメータ11.6(cal/cm1/2)、1,4−ブタンジオール(溶解度パラメータ12.1(cal/cm1/2)、2,3−ブタンジオール(溶解度パラメータ11.1(cal/cm1/2)、グリセリン(溶解度パラメータ16.5(cal/cm1/2)等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル(溶解度パラメータ11.4(cal/cm1/2)、エチレングリコールモノエチルエーテル(溶解度パラメータ10.5(cal/cm1/2)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(溶解度パラメータ10.9(cal/cm1/2)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(溶解度パラメータ11.5(cal/cm1/2)等の多価アルコール誘導体;蟻酸(溶解度パラメータ12.1(cal/cm1/2)、酢酸(溶解度パラメータ10.1(cal/cm1/2)等の脂肪酸;エチレンジアミン(溶解度パラメータ12.3(cal/cm1/2)、アニリン(溶解度パラメータ10.3(cal/cm1/2)、アセトニトリル(溶解度パラメータ11.9(cal/cm1/2)等の含窒素化合物等を挙げることができ、その中でも、入手及び溶媒の除去が容易で特に保存安定性にも優れるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液となることから、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等の炭素数1〜4であるモノアルコール;アセトニトリルが好ましい。または、2種以上混合溶媒であってもよい。
【0026】
本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液の製造方法としては、例えば上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩を溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒に溶解する方法を挙げることができ、より詳細には、上記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩のイオン交換を行い得られた上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液から、イオン交換の際に用いた溶媒を除去した後、溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒を添加する方法;イオン交換後の塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液に溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒を添加した後、イオン交換の際に用いた溶媒のみを除去する方法;等を挙げることができる。
【0027】
本発明における溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒とは、溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を含有する溶媒であれば如何なる溶媒であってもよく、非プロトン性または溶解度パラメータ10(cal/cm1/2未満の溶媒との混合溶媒であってもよい。その中でも、特にポリアルキレングリコール製造用触媒溶液の安定性に優れた溶液となることから、溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を40重量%以上含む溶媒であることが好ましく、さらに溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を50重量%以上含む溶媒であることが好ましく、特に溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒のみからなる溶媒であることが好ましい。
【0028】
本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液としては、溶液の形態をとりうる範囲であれば如何なる濃度であってもよく、その中でもポリアルキレングリコール製造用触媒溶液の安定性に優れる溶液となることから、溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の濃度は1〜99重量%であることが好ましく、さらに20〜80重量%であることが好ましい。
【0029】
本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液は、上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩を溶媒に溶解し、溶液を調製した後10日間を経過した後の該溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率が90%以上を有するものであることが好ましい。この際、塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率の測定は、10日間を経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液のH−NMR測定を行い、2.84〜2.88ppmのピーク積分値(塩基性イミノホスファゼニウム塩に由来するピーク)/2.80〜3.00ppmのピーク積分値(塩基性イミノホスファゼニウム塩及び分解物に由来するピーク)×100により算出することができる。
【0030】
本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液の製造及び保存を行う際の雰囲気に関しては特に制限はなく、例えば窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、または空気下であってもよく、その中でも特に保存安定性に優れたポリアルキレングリコール製造用触媒溶液となることから、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
【0031】
本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液は、ポリアルキレングリコールの製造に用いることが可能であり、その際の製造方法としては、例えば本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液と活性水素含有化合物を接触し重合開始剤を調製すると共に、溶媒及び副生水の除去を行った後に、アルキレンオキシドを添加し、アルキレンオキシドの開環重合を行う方法を挙げることができる。
【0032】
重合開始剤を調製する際の活性水素含有化合物としては、例えばヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、チオール化合物等を挙げることができ、より具体的には、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ、グルコース等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン等のアミン化合物;安息香酸、アジピン酸等のカルボン酸化合物;2−ナフトール、ビスフェノール等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等を挙げることができる。また、水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いることも可能であり、例えばポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールグリセリンエーテル等を挙げることができ、この際のポリエーテルポリオールの分子量に特に制限はなく、その中でも低粘度で流動性に優れる分子量200〜3000のポリエーテルポリオールが好ましい。また、これら活性水素含有化合物は単独でも数種類を混合して用いても良い。
【0033】
重合開始剤を調製する際の該ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液と活性水素化合物の割合は任意であり、その中でも効率よくポリアルキレングリコールを製造することが可能となることから、活性水素含有化合物1モルに対して該ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩が1×10−4〜1×10−1モルとなる範囲、好ましくは5×10−3〜5×10−2モルとなる範囲で用いることが好ましい。
【0034】
重合開始剤を調製する際に副生する水及びポリアルキレングリコール製造用触媒溶液に含まれている溶媒を除去する方法としては、例えば減圧下で溶媒および副生水を除去する方法を挙げることができ、その際の減圧度としては、例えば50kPa以下、好ましくは10kPa以下、特に好ましくは5kPa以下の減圧下を挙げることができる。また、その際の温度条件としては、例えば30〜130℃の温度範囲、好ましくは40〜100℃の範囲を挙げることができる。
【0035】
該アルキレンオキシドとしては、例えば炭素数2〜20のアルキレンオキシドを挙げることができ、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、ペンテンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等を挙げることができる。これらの中で、入手容易で工業的価値の高いことから、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドは、単一で用いても2種以上を混合して用いても良い。2種以上を混合して用いる場合は、例えば第1のアルキレンオキシドを反応させた後、第2のアルキレンオキシドを反応させても良いし、2種以上のアルキレンオキシドを同時に反応させても良い。
【0036】
アルキレンオキシドの開環重合を行う際の圧力は、例えば0.05〜1.0MPaの範囲、好ましくは、0.1〜0.6MPaの範囲である。また、反応温度は、例えば40〜130℃の範囲、好ましくは60〜130℃の範囲である。
【0037】
本発明のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を用いて得られるポリアルキレングリコールは、水酸基価の異なるポリアルキレングリコールとすることが可能であり、得られるポリアルキレングリコールの水酸基価に特に制限は無く、その中でも、5〜500mgKOH/gの範囲が好ましく、特に10〜170mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0038】
本発明により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等に有用である。特に各種イソシアネート化合物と反応させることにより、断熱材等に使用される硬質フォームや、自動車のシート・クッション、寝具等に使用される軟質フォーム、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーへの展開が期待される。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、有機塩基として有用な塩基性イミノホスファゼニウム塩を長期間安定に保存することが可能な塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液からなるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液及びそのポリアルキレングリコール製造用触媒溶液を用いてなるポリアルキレングリコールの製造方法に関するものであり、各種の樹脂材料として期待されるポリアルキレングリコールを提供することが可能となり、その工業的価値は極めて高いものである。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例は何ら本発明を制限するものではない。以下に、本発明により得られるポリアルキレングリコール製造用触媒溶液およびポリアルキレングリコールの分析方法について説明する。
【0041】
〜塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率(単位:積分%)測定〜
核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置(日本電子社製、(製品名)GSX270WB)を用い、重溶媒に重水を使用してH−NMRを測定した。2.80〜3.00ppmの範囲のピークの積分値(aとする)中の2.84〜2.88ppmのピークの積分値(bとする)の割合により、塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率を算出した。すなわち、塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率は、次式によって算出した。
塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率(積分%)=(b/a)×100
〜塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液の濃度(単位:重量%)測定〜
微量全窒素分析装置(三菱化学製、(商品名)TN−100)を用い、ヒーター温度T1:600℃、T2:800℃、ガス流量O:500ml/min、O:200ml/minの条件で、塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液の窒素濃度(cとする)を測定した。この窒素濃度から、水溶液中の塩基性イミノホスファゼニウム塩の濃度を算出した。すなわち、塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液の濃度は、次式によって算出した。
塩基性イミノホスファゼニウム塩溶液の濃度(重量%)=c/0.33
〜ポリアルキレングリコールの水酸基価(単位:mgKOH/g)測定〜
JIS K−1557記載の方法により、算出した。
【0042】
〜ポリアルキレングリコールの分子量(単位:g/mol)測定〜
算出したポリアルキレングリコールの水酸基価(dとする)から、次式によって、ポリアルキレングリコールの分子量を算出した。
ポリアルキレングリコールの分子量(単位:g/mol)=(1/((d/56.1)/開始剤の官能基数))×1000
〜ポリアルキレングリコールのエチレンオキシド含有量(単位:重量%)測定〜
核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置(日本電子社製、(製品名)GSX270WB)を用い、重溶媒に重クロロホルムを使用して、ポリアルキレングリコールのH−NMRを測定した。0.80〜1.50ppmの範囲のピーク(ポリアルキレングリコール中のプロピレンオキシド鎖のピーク)の積分値と、3.20〜3.90ppmの範囲のピーク(ポリアルキレングリコール中のプロピレンオキシド鎖およびエチレンオキシド鎖のピーク)の積分値から、ポリアルキレングリコールのエチレンオキシド含有量を算出した。
【0043】
合成例1(イミノホスファゼニウム塩の塩化物体の合成)
攪拌翼を付した200mlの4つ口フラスコを窒素雰囲気とし、五塩化リン2.3g(11mmol)とトルエン23mlを加え、−20℃で攪拌した。フラスコ内を−20℃に維持したまま、テトラメチルグアニジン13g(110mmol)を滴下し、−20℃で1時間攪拌を継続した。さらに、110℃に昇温し15時間攪拌を行った。得られた白色懸濁液を濾過し、濾物として白色固体を得た。この白色固体をアセトンに溶解し、濾過を行い、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、目的とするイミノホスファゼニウム塩の塩化物体の粗生成物を白色固体として得た。
【0044】
得られた粗生成物をクロロホルムと水で分液抽出した。クロロホルム相を濃縮し、目的とするイミノホスファゼニウム塩の塩化物体5.1g(9.7mmol;収率88%;一般式(2)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Aが塩素アニオンに相当するイミノホスファゼニウム塩)を白色固体として得た。
【0045】
合成例2(塩基性イミノホスファゼニウム塩の合成)
磁気回転子を付した300mlのシュレンクフラスコに、合成例1で得られたイミノホスファゼニウム塩の塩化物体21g(40mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ水酸化カリウム2.2g(40mmol)、イソプロパノール80mlを加え、室温中で3時間攪拌した。反応終了後に得られる白色固体を含む懸濁溶液を、濾紙を付した漏斗を用い、減圧下にて濾過を行った。濾液側に目的とする塩基性イミノホスファゼニウム塩のイソプロパノール溶液が得られ、濾物側に副生塩である塩化カリウムが得られた。
【0046】
得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩のイソプロパノール溶液を減圧下濃縮し、塩基性イミノホスファゼニウム塩(一般式(1)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Xがヒドロキシアニオンに相当する塩基性イミノホスファゼニウム塩)を得た。この塩基性イミノホスファゼニウム塩の純度を分析した結果、純度は99%以上であった。
【0047】
実施例1
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、t−ブタノール2.0g(27mmol)を加え、塩基性イミノホスファゼニウム塩−t−ブタノール溶液とし、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Aを得た。
【0048】
このポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Aを10日放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ92%であった。
【0049】
そして、攪拌翼を付した2リットルのオートクレーブに、10日経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液A(50重量%)4.0g、および活性化水素化合物として3官能のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP−1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え重合開始剤の調製を行った。その際オートクレーブ内を窒素雰囲気とし、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下で溶媒及び副生水の除去を行った。その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88〜92℃の範囲で8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温88〜92℃の範囲で6時間開環重合反応を行った。そして、0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去をおこない、無色無臭のポリアルキレングリコール1250gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.8mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7100g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0050】
実施例2
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2において濾過後に得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩のイソプロパノール溶液8.3g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。減圧下、イソプロパノールの留去をおこない、塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0gとイソプロパノール2.0g(33mmol)を含有する塩基性イミノホスファゼニウム塩−イソプロパノール溶液になるよう濃縮・調製を行い、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Bを得た。
【0051】
このポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Bを10日放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ96%であった。
【0052】
そして、10日経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液B(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの製造を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0053】
実施例3
t−ブタノール2.0g(27mmol)の代わりに、アセトニトリル2.0g(49mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法を行い、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Cを合成した。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ98%であった。
【0054】
そして、10日経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液C(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの製造を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1300gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.7mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7100g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0055】
実施例4
t−ブタノール2.0g(27mmol)の代わりに、ジメチルスルホキシド2.0g(25mmol)とエタノール2.0g(44mmol)の混合溶媒を用いた以外は、実施例1と同様の方法を行い、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Dを合成した。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ97%であった。
【0056】
そして、10日経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液D(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの製造を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1280gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.2mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0057】
実施例5
t−ブタノール2.0g(27mmol)の代わりに、エタノール2.0g(44mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法を行い、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Eを合成した。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ95%であった。
【0058】
そして、10日経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液E(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの製造を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.8mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は6800g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0059】
実施例6
t−ブタノール2.0g(27mmol)の代わりに、エタノール2.0g(44mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法を行い、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Fを合成し、空気下にさらした。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ95%であった。
【0060】
そして、10日経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液F(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの製造を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1240gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.5mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は6900g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0061】
実施例7
t−ブタノール2.0g(27mmol)の代わりに、メタノール2.0g(63mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法を行い、ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液Gを合成した。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ98%であった。
【0062】
そして、10日経過したポリアルキレングリコール製造用触媒溶液G(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1260gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.0mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は17重量%であった。詳細を表1に示す。
【0063】
実施例8
プロピレンオキシド925g、エチレンオキシド165gを用いた以外は、実施例2と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1250gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は23.8mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は7000g/mol、エチレンオキシド含有量は13重量%であった。詳細を表2に示す。
【0064】
実施例9
プロピレンオキシド970g、エチレンオキシド120gを用いた以外は、実施例2と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.7mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は6800g/mol、エチレンオキシド含有量は10重量%であった。詳細を表2に示す。
【0065】
実施例10
プロピレンオキシド1015g、エチレンオキシド75gを用いた以外は、実施例2と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、無色無臭のポリアルキレングリコール1220gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は24.8mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は6800g/mol、エチレンオキシド含有量は6重量%であった。詳細を表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

比較例1
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。そこへ、テトラヒドロフラン2.0g(28mmol)を加え、塩基性イミノホスファゼニウム塩−テトラヒドロフラン溶液Hとした。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ21%であった。
【0068】
そして、10日経過した塩基性イミノホスファゼニウム塩−テトラヒドロフラン溶液H(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、アミン臭を有する褐色のポリアルキレングリコール190gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は158mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は1100g/molであり(活性水素化合物として用いた3官能のポリアルキレングリコールの分子量1000g/mol)、目的とする開環重合反応はほとんど進行していないものであった。詳細を表3に示す。
【0069】
比較例2
テトラヒドロフラン2.0g(28mmol)の代わりに、ピリジン2.0g(25mmol)を用いた以外は、比較例1と同様の方法を行い、塩基性イミノホスファゼニウム塩−ピリジン溶液Iを合成した。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ28%であった。
【0070】
そして、10日経過した塩基性イミノホスファゼニウム塩−ピリジン溶液I(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、アミン臭を有する褐色のポリアルキレングリコール230gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は134mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は1300g/molであり(活性水素化合物として用いた3官能のポリアルキレングリコールの分子量1000g/mol)、目的とする開環重合反応はほとんど進行していないものであった。詳細を表3に示す。
【0071】
比較例3
テトラヒドロフラン2.0g(28mmol)の代わりに、ジメチルスルホキシド2.0g(25mmol)を用いた以外は、比較例1と同様の方法を行い、塩基性イミノホスファゼニウム塩−ジメチルスルホキシド溶液Jを合成した。この溶液を10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ31%であった。
【0072】
そして、10日経過した塩基性イミノホスファゼニウム塩−ジメチルスルホキシド溶液J(50重量%)4.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、アミン臭を有する褐色のポリアルキレングリコール240gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は121mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は1400g/molであり(活性水素化合物として用いた3官能のポリアルキレングリコールの分子量1000g/mol)、目的とする開環重合反応はほとんど進行していないものであった。詳細を表3に示す。
【0073】
比較例4
磁気回転子を付した100mlのシュレンクフラスコに、合成例2で得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩2.0g(4.0mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。10日間放置した後の塩基性イミノホスファゼニウム塩の残存率をH−NMRにより測定したところ28%であった。
【0074】
そして、得られた塩基性イミノホスファゼニウム塩K2.0gを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、ポリアルキレングリコールの合成を行った。その結果、アミン臭を有する褐色のポリアルキレングリコール220gを得た。得られたポリアルキレングリコールの水酸基価は130mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量は1300g/molであり(活性水素化合物として用いた3官能のポリアルキレングリコールの分子量1000g/mol)、目的とする開環重合反応はほとんど進行していないものであった。詳細を表3に示す。
【0075】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0076】
ポリアルキレングリコール製造用触媒溶液により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等としてその有用性が期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩及び溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒からなることを特徴とするポリアルキレングリコール製造用触媒溶液。
【化1】

(上記一般式(1)中、R及びRは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。なお、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。Xはヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜4のアルキルカルボキシアニオン、または炭酸水素アニオンを表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)で示される塩基性イミノホスファゼニウム塩が、下記一般式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩を、塩基性化合物又はイオン交換樹脂によってイオン交換を行い得られる塩基性イミノホスファゼニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液。
【化2】

(上記一般式(2)中、R及びRは、上記一般式(1)中のR及びRと同じ定義である。Aは塩素アニオン、臭素アニオン、よう素アニオンを表す。)
【請求項3】
溶解度パラメータ10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アセトニトリルからなる群より選択されるプロトン性有機溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリアルキレングリコール製造用触媒溶液と活性水素含有化合物を接触し重合開始剤を調製すると共に、溶媒及び副生水の除去を行った後、アルキレンオキシドを添加し、開環重合を行うことを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項5】
活性水素化合物が、ポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項4に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項6】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであることを特徴とする請求項4又は5に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項7】
開環重合を、反応圧力0.05〜1MPa、反応温度40〜130℃の条件下で行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。

【公開番号】特開2012−21108(P2012−21108A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161448(P2010−161448)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】