説明

ポリアルコキシスルホネート表面改変因子

本発明は、新規化合物、その製造方法および使用方法に関する。本発明はまた、固体の薬物粒子/活性剤粒子に関し、この薬物粒子/活性剤粒子は、その表面に結合した本発明の化合物の1つ以上を有する。本発明の化合物は、アニオン性スルホネート基に共有結合した非極性ポリエーテルから構成される。上記化合物は、両親媒性を有し、そして好ましくは、その表面が活性である。このような化合物は、好ましくは、連続的な液体媒体中の粒子の分散物をコーティングし、そしてその分散物を安定化するための界面活性因子として有用である。これらの界面活性因子は、薬学的用途、医療用途、美容的用途、もしくは農業用途について意図される懸濁物、エマルション、またはリポソーム処方物の安定化に適用され得る。本発明の粒子は、種々の方法によって調製され得、そして好ましくは、薬学的因子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、化合物の新規のクラス、その合成方法および使用に関する。本発明はまた、固体の薬物ナノ粒子/活性剤ナノ粒子に関し、この薬物ナノ粒子/活性剤ナノ粒子は、その表面に関連する本発明の化合物を有する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
ナノ懸濁物の長期安定化は、準安定な分散系の熱力学についての困難な闘いである。十分な時間が与えられると、全ての懸濁物は、最終的に合体する。したがって、安定性は、この工程を速度論的に妨げる能力に依存する。不安定性は、大きさの分布における、大きい粒子への移行(オストワルド熟成)、不可逆的な凝集、二次的かつ多形の核生成によって生じ得る。安定な懸濁物を得るために、固体とその周囲の媒体との間の広い界面によってもたらされるかなりの位置エネルギーが、界面活性因子を添加することによって減少されなければならない。表面の安定化は、固−液界面に移動し、そして粒子の凝集に対する静電的な障壁を提供する荷電した両親媒性物質を使用することによって達成され得る。非イオン性ポリマーもまた、表面の安定化を補助し得る。ポリマー性界面活性剤(例えば、ポロキサマー188(エチレングリコールとプロピレングリコールとのトリブロックコポリマー))は、その粒子表面における疎水性ドメインの複数の結合に起因して非常に有効な非イオン性安定化剤である。
【0003】
エントロピー的に、これらの疎水性部分の全ての分離の確率は、室温において非常に低く、したがって、それらの疎水性部分は、表面に対する強力な親和性を提供する(非特許文献1)。非イオン性界面活性剤はまた、水和帯(各粒子の周りに堅く結合した水分子の層)を形成し得る。2つの粒子が出会う場合、浸透圧の力に起因して、仕事(work)が、この水層を移動させるために必要とされる。他のエントロピー因子もまた、含まれる。その界面活性剤の疎水性ドメインは、水性媒体中に伸びるペンダントの親水性ドメインと共に、その粒子表面に結合する。粒子間の引力は、鎖の移動度に制限、およびそれによるエントロピーの好ましくない低下をもたらすこれらのペンダント鎖の絡み合いを必要とする(非特許文献2)。この型の安定化(「立体的」)は、凝集に対する有効な障壁を提供し得る。しかし、多くの場合、非イオン性の安定化と静電的な安定化との組み合わせが、所望の粒子の安定性を達成するために必要とされる。グリコールコポリマーは、水中で高温にて溶解度の減少を受け得、この溶解度の減少は、粒子の凝集をもたらす。この結果は、水和したポリマーと水との間の水素結合の、熱によって誘導される切断から生じ、この切断は、可視的なポリマー凝集物の形成をもたらす(「曇り点」)。このような処方物をオートクレーブする可能性は、曇り点が滅菌温度(121℃)より下にある場合、制限される。曇り点改変因子(通常は、アニオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム))の添加は、その曇り点を上昇させ得、そして高温における安定性を向上させ得る(非特許文献3を参照のこと)。ポリソルベート(Tweens)、ポロキサミンおよびポロキサマーは、非イオン性界面活性剤として使用されている。胆汁酸塩(例えば、コール酸ナトリウム)およびアルキルスルホネート(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、およびラウリル硫酸ナトリウム)は、イオン性界面活性剤として有効に使用されている。
【0004】
したがって、複数の疎水性ドメインを有するブロックコポリマーの界面活性剤、および粒子上に表面電荷を設定し、それによって静電反発力に起因して粒子間の接近を妨げる、荷電した両親媒性界面活性剤(二次的なイオン性界面活性剤)の両方を提供することが、有利である。二次的なイオン性界面活性剤の1つの例は、ドデシル硫酸ナトリウムである。別の例は、スルホコハク酸ジオクチルである。しかし、次にそれは、イオン性界面活性剤と、非イオン性のポリマー性界面活性剤との間の非共有結合性のファンデルワールス相互作用に依存する。二次的な(イオン性)界面活性剤と一次的な(非イオン性)界面活性剤との不完全な関係、したがってイオン性界面活性剤と粒子表面との非効率的な相互作用に起因して、懸濁物の不適当な安定性についての可能性が存在する。
【0005】
本発明は、アニオン性スルホネートに共有結合された非イオン性ポリマーを含む化合物を提供することによって上記問題に対して、解決策を提供する。化合物のこの新規のクラス(とりわけ、性質)は、アニオン性部分が、そのポリマーに常に固定(tie)され、次に、上に記載されるエントロピーの力およびエンタルピーの力によって粒子表面に強く結合されることを確保する。
【0006】
Wongら(特許文献1、Polyalkylene block copolymers as surface modifiers for nanoparticles)は、表面改変因子を有するナノ粒子を含む組成物を開示し、この表面改変因子は、1以上のポリオキシエチレンブロックおよび1以上のポリオキシ(より高級なアルキレン)ブロックを含むブロックコポリマーであり、そしてこのブロックの少なくともいくつかは、架橋基がオキシメチレン基であることで特徴付けられる架橋基によって1つに結合される。特許文献1の化合物とは対照的に、本発明の化合物は、スルホネートであり、かつ架橋されない。
【0007】
Wongら(特許文献2、Sulfated nonionic block copolymer surfactants as stabilizer coatings for nanoparticle compositions)は、治療剤または診断剤を含み、その表面に吸着された表面改変因子を有するナノ粒子から構成される組成物を開示し、その組成物は、オートクレーブ可能であり、そしてオートクレービング後に、そのナノ粒子は、500nm未満の平均粒径を有し、そしてその表面改変因子は、
【0008】
【化13】

の構造を有するトリブロックコポリマーであり、Qは、サルフェート基であり、Rは、水素または金属イオンであり、xは、15〜700であり、yは、5〜200であり、かつzは、15〜700である。したがって、上記ポリマー骨格は、エチレングリコールと1,2−ブチレングリコールとのブロックコポリマーである。本発明のペンダント基、Qは、スルホネートであり、特許文献2において開示されるもののようなサルフェートではない。有機サルフェートは、スルホネートとは、完全に異なる化学および薬理学を示す。例えば、上記サルフェートは、より化学的に反応性(サルフェートは、求核置換反応における良好な脱離基である)であり、そしてアルキル化剤として強力に作用するこのような試薬の能力に起因して、より毒性である[(a)非特許文献4;および(b)非特許文献5]。一方で、スルホネート塩は、より安定であり、化学的にほぼ不活性であり、したがって毒性がより低い。
【特許文献1】米国特許第5,565,188号明細書
【特許文献2】米国特許第5,569,448号明細書
【非特許文献1】Alexandridis,P.;Hatton,T.A.,「Poly(ethylene oxide)−poly(propylene oxide)−poly(ethylene oxide)block copolymer surfactants in aqueous solutions and at interfaces:thermodynamics,structure,dynamics,and modeling(Review)」,Colloids and Surfaces A:Physicochem.Eng.Aspects,1995年,第96巻,p.1−46
【非特許文献2】Lee,R.W.,Shaw,J.M.,McShane,J.,Wood,R.W.,.「Particle size reduction.」,Liu,R.(編),2000年b,Water−insoluble drug formulation,Interpharm,p.478
【非特許文献3】Leeら、「Particle size reduction」、p.487−488
【非特許文献4】Dyer,S.D.,Lauth,J.R.,Moral,S.W.,Herzog,R.R.,Cherry,D.S.,「Development of a chronic toxicity structure activity relationship for alkyl sulfates.」,Environ.Toxic.Chem.,1997年、第12巻,p.295−303
【非特許文献5】Druckrey,H.,Kruse,H.,Preussmann,R.,Ivankovic,S.,Landschutz.,C,「Carcinogenic alkylating substances」,Alkyl halogenides,sulfates,sulfonates and strained heterocyclic compounds.,Z.Krebsforsch.,1970年,第74巻,p.241−270
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、新規化合物、その製造方法および使用方法に関する。本発明はまた、固体の薬物粒子/活性剤粒子に関し、この薬物粒子/活性剤粒子は、その表面に吸着されたか、またはその表面に接近した本発明の化合物の1つ以上を有する。
【0010】
本発明の化合物は、アニオン性スルホネート基に共有結合した非極性ポリエーテルから構成される。上記化合物は、両親媒性を有し、そして好ましくは、その表面が活性である。このような化合物は、好ましくは、連続的な液体媒体中の粒子の分散物をコーティングし、そしてその分散物を安定化するための界面活性因子として有用である。これらの界面活性因子は、薬学的用途、医療用途、美容的用途、もしくは農業用途について意図される懸濁物、エマルション、またはリポソーム処方物の安定化に適用され得る。
【0011】
本発明の粒子は、種々の方法によって調製され得、そして好ましくは、薬学的因子を含む。本発明の薬学的組成物は、多くの状態を処置するために使用され得、そして静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜下、前房内、脳内、病巣内、局所、経口、口腔粘膜(buccal)、直腸、経皮、肺、および鼻が挙げられる多くの経路で投与され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、多くの異なる形態において可能な実施形態である。本発明の好ましい実施形態は、本開示が、本発明の原理の例示として見なされ、かつ本発明の広範な局面を例示された実施形態に限定することを意図しないという理解と共に開示される。
【0013】
本発明は、下に示され、そして本願全体を通して記載されるような、数種の定義を用いて記載される。
【0014】
「約」は、当業者によって認識され、そしてそれが使用される文脈においてある程度変動する。使用される所定の文脈において当業者にとって明確でない用語の使用が存在する場合、「約」は、特定の用語の±10%までを意味する。
【0015】
微粒子(例えば、ナノ微粒子またはマイクロ微粒子)組成物の界面活性剤または他の賦形剤に関して、「コーティングされた」とは、その粒子の表面か、またはその粒子の表面上付近におけるこのような化合物の存在を意味する。このような化合物によって「コーティングされた」粒子は、この化合物によって、部分的か、または完全に覆われ得、そしてこのような化合物は、この粒子内部に進入(entrain)しても、進入しなくてもよい。
【0016】
「もろい」とは、壊れやすく、そしてより小さい粒子へとより容易に分解される粒子をいう。
【0017】
「マイクロ懸濁物」とは、マイクロ粒子の懸濁物をいい、そして「マイクロ粒子」とは、特に明記しない限り、約200nm〜約5ミクロンの平均粒径を有する活性剤の粒子をいう。
【0018】
「ナノ懸濁物」とは、ナノ粒子の懸濁物をいい、そして「ナノ粒子」および「ナノ微粒子」とは、特に明記しない限り、約15nm〜約2ミクロンの平均粒径を有する活性剤の粒子をいう。「粒子懸濁物」とは、種々のサイズ分布の粒子であり得る粒子の懸濁物をいう。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「粒径」または「大きさ」(粒子に関して)は、当業者に周知である従来の粒径測定技術によって測定されるような、体積加重平均の粒径に基づいて決定される。このような技術としては、例えば、流動場沈降分画(sedimentation field flow fractionation)、光子相関法(photon correlation spectroscopy)、光散乱、ディスク遠心沈降(disk centrifugation)、光学顕微鏡法または電子顕微鏡法が挙げられる。
【0020】
「予備懸濁物(presuspension)」とは、非晶質、半晶質、または結晶性であり、そしてその大きさが所望の範囲まで減少されず、および/または固体分散物を安定化させるためにエネルギーの導入を必要としない得る固体分散物をいう。
【0021】
「水に難溶性」とは、その化合物の水溶性が約10mg/ml未満であることを意味する。
【0022】
安定な薬物粒子に関して「安定」とは、粒子が、ほとんど凝集(flocculate)しないか、もしくは凝集(agglomeration)しないか、あるいは粒径が増大しないことを意味する。
【0023】
「治療有効量」とは、一般的に、投薬された被験体に対して寛解作用を提供する薬物投薬量をいう。このような投薬量が当業者に「治療有効量」と考えられる場合であっても、疾患の状態および個体の応答の多様性に起因して、特定の場合において、常に、本明細書中に記載される疾患の処置に有効であるとは限らない、特定の被験体に対して投与される本発明の組成物の「治療有効量」をいうことが、強調される。薬物投薬量は、特定の場合において、非経口投薬量もしくは経口投薬量として特定されるか、または血液または血漿のいずれかにおいて測定される場合の薬物レベルに関して測定されることが、理解される。
【0024】
「アルキル」は、飽和した直鎖脂肪族炭水化物基または分枝鎖脂肪族炭水化物基を含む。すなわち、アルキルは、炭素−炭素二重結合を含まない。上記アルキル基は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、または硫黄)によって中断され得、そして他の基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アリール、シクロアルキル、アリールオキシ、またはアルコキシ)によって置換され得る。好ましい直鎖アルキル基または好ましい分枝鎖アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、およびt−ブチルが挙げられる。
【0025】
用語「シクロアルキル」は、連結して1つ以上の環を形成する、直鎖もしくは分枝鎖の、飽和脂肪族炭水化物基または不飽和脂肪族炭水化物基(これらは、融合されても、単独であってもよい)を含む。この環は、他の基(例えば、ハロゲン、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、またはアルキル)によって置換され得る。好ましいシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが挙げられる。
【0026】
用語「アリール」とは、芳香族である炭素ベースの環をいう。この環は、単独(例えば、フェニル)であっても、融合(例えば、ナフチル)されていてもよい。この環の水素は、他の基(例えば、アルキル、ハロゲン、遊離したヒドロキシまたは官能化したヒドロキシ、トリハロメチルなど)によって置換され得る。
【0027】
用語「ヘテロアリール」とは、環中に少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、S、またはN)を有する芳香族炭水化物環をいう。ヘテロアリール環は、単独(5個〜6個の環原子を有する)であっても、融合(8個〜10個の原子を有する)されていてもよい。開放型の原子価(open valency)を有するヘテロアリール環の水素またはヘテロ原子は、他の基(例えば、アルキルまたはハロゲン)によって置換され得る。ヘテロアリール基の例としては、イミダゾール、ピリジン、インドール、キノリン、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、テトラヒドロキノリン、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン、およびジヒドロベンズインドールが挙げられる。
【0028】
用語「アリールオキシ」、「ヘテロアリールオキシ」、「アルコキシ」、「シクロアルコキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、「アルケニルオキシ」、「シクロアルケニルオキシ」、「ヘテロシクロアルケニルオキシ」、および「アルキニルオキシ」は、それぞれ、酸素の連結を介して結合される、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、またはアルキニル基を示す。
【0029】
上記の定義によって示されない他の化学的部分は、有機化学の分野の当業者にとって慣習的な意味を有する。
【0030】
本発明の化合物は、式1:
【0031】
【化14】

に記載される種類の化合物であり、
xは、1〜300(好ましくは、3〜100)の整数であり;
yは、0〜300(好ましくは、3〜100)の整数であり;
zは、0〜300(好ましくは、3〜100)の整数であり;
およびRは、独立して、水素原子(H)、または以下の式:
【0032】
【化15】

のスルホネートであり、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリール架橋基であり、そしてRは、水素である(上記スルホン酸は、非荷電化学種(−SOH)として存在し得る)か、存在しない(上記スルホン酸は、モノアニオン(−SO)として存在し得る)か、または任意のこれら2つの化学種の平衡な混合物であるかのいずれかであるが;但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは、スルホン酸基(上で定義される)であり;そして
、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基(およびそれらの塩)である。
【0033】
本発明の塩化合物は、式1の任意のアニオン性化学種およびカチオンを含む。好ましいカチオンとしては、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。
【0034】
本発明の化合物は、xが、50〜150であり、yが、20〜80であり、かつzが、50〜150である化合物;およびより好ましくは、xが、50〜110であり、yが、20〜60であり、かつzが、50〜110である化合物;および最も好ましくは、xが、80であり、yが、27であり、かつzが、80である(すなわち、ポロキサマー188骨格)か、またはxが、101であり、yが、56であり、かつzが、101である(すなわち、ポロキサマー407骨格)化合物が好ましい。
【0035】
好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。好ましいアリール基としては、フェニルおよび置換フェニルが挙げられる。好ましいアリール基はまた、アルキル基に、そのアルキル部分(例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチルなど)の任意の炭素原子に対して共有結合する(covalently binding)ことによって、共有結合され(covalently attached)得る。さらに、好ましいアリール基は、任意の環状炭素に結合されたアルキル置換基(例えば、2−メチルフェニル置換基、3−エチルフェニル置換基、4−(l−メチルエチル)フェニル置換基など)を有し得る。
【0036】
好ましい本発明の化合物は、プロピレングリコールとエチレングリコールとのコポリマーが、末端のヒドロキシ酸素を介してスルホネート部分に結合される化合物である。このクラスの好ましい化合物としては、末端アルコールの酸素を介して少なくとも1つのスルホネート(好ましくは、n−ブチルスルホン酸)と共有結合した、エチレングリコールとプロピレングリコールとのトリブロックコポリマー骨格(すなわち、R、R、R、R、およびRは、水素であり、そしてRは、CHである、「ポロキサマー」)からなるポリマーが挙げられる。
【0037】
本発明の化合物の好ましい化学種は、式2:
【0038】
【化16】

の化学種である。
【0039】
ここでxは、50〜150であり、yは、20〜80であり、かつzは、50〜150であり;より好ましくは、xは、50〜110であり、yは、20〜60であり、かつzは、50〜110であり;そして最も好ましくは、xは、80であり、yは、27であり、かつzは、80であるか、またはxは、101であり、yは、56であり、かつzは、101である。
【0040】
本発明の化合物のより好ましい化学種は、式3:
【0041】
【化17】

である。
【0042】
ここでxは、50〜150であり、yは、20〜80であり、かつzは、50〜150であり;より好ましくは、xは、50〜110であり、yは、20〜60であり、かつzは、50〜110であり;そして最も好ましくは、xは、80であり、yは、27であり、かつzは、80であるか、またはxは、101であり、yは、56であり、かつzは、101であり;そしてRおよびR’は、独立して、存在しない(すなわち、上記OR基またはOR’基は、酸素アニオンである)か、もしくは水素であるか、または上記OR基もしくはOR’基は、塩(好ましくは、ナトリウム塩)、もしくはそれらの混合物を形成する。
【0043】
式1に記載される化合物は、両親媒性であり、そして好ましくは、その表面が活性である。このような化合物は、好ましくは、連続的な液体媒体中の粒子をコーティングし、そしてその分散を安定化するための界面活性因子として有用である。これらの界面活性因子は、薬学的使用、医療的使用、美容的使用、もしくは農業的使用について意図される懸濁物、エマルション、またはリポソーム処方物の安定化に適用され得る。
【0044】
本発明の(ポリアルコキシ)スルホネートは、親のポリアルキレングリコール(例えば、エチレン、プロピレン、またはそれらのブロックコポリマー)と任意の以下の試薬との反応によって合成され得る:(1)式2に示される式(nは、1〜6の整数である)のスルトン(例えば、プロピル、ブチルなど);または(2)2−ブロモエチルスルホン酸、2−クロロエチルスルホン酸、2−ヨードエチルスルホン酸、3−ブロモプロピルスルホン酸、3−クロロプロピルスルホン酸、3−ヨードプロピルスルホン酸、式3(nは、1〜20の整数であり、そしてXは、ハロゲン系列(Cl、Br、およびI)のいずれかの置換基、またはメシレート、トシレートおよびトリフレートからなるスルホネート系列の置換基である)のより高い分子量のアナログによって例示される酸のような置換アルキルスルホン酸およびそれらの塩。
【0045】
【化18】

以下の実施例は、本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
(ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム塩)の調製)
スキーム1(下記)に従って、ポロキサマー188(4.2g、0.5mmol)のトルエン(5mL)溶液に、35〜40℃にてアルゴン下で、メタノール(2.5mL)中のナトリウムメトキシド(330mg、6.1mmol)のスラリーを添加した。そのスラリーは、アルゴン下で調製され、そしてその添加を、気密(gas−tight)シリンジの手段によって、フラスコの首にある隔壁を通して行った。その混合物を、撹拌し、そしてその溶媒を、蒸留によって除去し、約3.5〜4mLを回収した。その混合物は、淡褐色のペーストになった。1,4−ブタンスルトン(0.70mL、6.8mmol)およびトルエン(2.5mL)を添加し、そしてその混合物を、アルゴン下で150℃にて1.5時間還流した。油浴を、取り外し、そしてその混合物を、アルゴン下で室温にて一晩静置し、淡褐色のワックスとして粗生成物を得た。塩化メチレン/メタノール/アンモニア水溶液(10:2:0.2、v/v/v)およびSilica Gel 60 F254プレコーティングプレート(2.5×7.5cm×250μm)を使用した薄層クロマトグラフィーは、単一生成物への出発物質のほぼ完全な変換が起こったことを示した。そのワックスを、クロロホルム(250mL)中に採取し、やや濁った(hazy)懸濁物を得た。15mLアリコートを取り出し、そして残渣を、ロータリーエバポレーターで乾燥状態にした。その残留物を、30℃にて4時間、真空オーブンでさらに乾燥して、2.8gの淡褐色のワックス状固体を得た。
【0047】
その生成物の一部(1.52g)を、8mLの蒸留水中に採取し、そして少量の微細な白色沈殿物を形成した。その溶液および沈殿物を、透析カセット(Pierce Slide−A−Lyzer(登録商標)Dialysis Cassette、3500分子量カットオフ、3〜12mL容量、製造番号66110)に移した。そのカセットを、ブイ(Pierce Slide−A−Lyzer(登録商標)Buoys、製造番号66432)に取り付け、次いでそのカセットアセンブリを、ビーカー中の4Lの蒸留水中においた。その水を、穏やかに撹拌し、そのビーカーを、アルミニウム箔で覆い、そしてその溶液を、一晩透析した。そのカセットアセンブリを、その水から取り出し、そして2回目の透析を、新しい4L部の蒸留水で4時間行なった。3回目の透析を、新しい4L部の蒸留水で3時間行なった。その溶液を、気密シリンジによってそのカセットから取り出し、そしてナシフラスコに移した。その溶液は、透明かつ無色であった。その溶液を一晩凍結乾燥して、生成物を硬い白色固体(1.04g)として得た。
【0048】
NMRデータを、600MHz(1Hv)にて運転する5mm 1H{13C,15N}TXIプローブを備えたDRX600 NMR分光器(Broker Biospin、Billerica、MA)において得た(CDCl3)。ポロキサマー188について、その末端ヒドロキシ基に隣接するメチレン単位は、約61ppmにて特徴的な13C−NMR共鳴を有した。この共鳴は、その生成物の13C−NMRにおいては存在せず、このことは、末端ヒドロキシ基の非存在を示す。実際に、共鳴は、その生成物において22.04ppm、28.67ppmおよび51.19ppmにて観察され、その共鳴は、そのブチルスルホネート部分に起因する。これらは、ポロキサマー188の13C−NMRスペクトルにおいては存在しなかった。ポロキサマー188およびそのビス−4−ブタンスルホン酸(ナトリウム塩)についてのNMRデータを、下に示す。
【0049】
ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム塩)についてのNMRデータ:
1H NMR(CDCl3):δ1.100、1.687、1.859、2.764、2.83、3.366−3.723。
【0050】
13C NMR(CDCl3):δ17.41、17.53、22.04、28.67、51.19、68.57、68.66、69.98−71.05、72.95、73.43、75.00−75.59。
【0051】
ポロキサマー188についてのNMRデータ:
H NMR(CDCl3):δ1.053−1.084、2.603、2.785、3.323−3.692。
【0052】
13C NMR(CDCl3):δ16.64、16.75、60.96、67.80、67.87、69.58−70.21、71.94、72.19、72.60、74.36−74.72。
【0053】
スキーム1:ポロキサマー188、ビス(4−ブタンスルホン酸(ここでRは、ナトリウムである)の調製のための合成経路)
【0054】
【化19】

(実施例2)
(ポロキサマー188、ビス(4−ブタンスルホン酸、ナトリウム塩)の溶血可能性(動的抽出試験)
式1の化合物の哺乳動物被験体に対する注射の際の、血球の溶解についての可能性を評価するために、ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム塩)(PBBS−188)を、全血と混合し、そしてその混合したサンプルを、溶血について調べた。その溶血試験(動的抽出試験)は、ウサギの血液とサンプルとの約1:1の混合物を調製し、その混合物を37℃にて1時間、振盪撹拌器(rocking agitator)上に配置することを包含する。次いでそのサンプルを、遠心分離し、そしてヘモグロビン(Hb)を、その上清において定量化する。その溶血指数を、以下のように計算する:
【0055】
【化20】

0〜2の評価を、非溶血性であると見なし、2〜10の評価を、わずかに溶血性である見なし、10〜20の評価を、中程度に溶血性であると見なし、20〜40の評価を、顕著に溶血性であると見なし、そして>40の評価を、重度に溶血性であると見なす。試験の結果を、以下の表に示す:
【0056】
【表1】

その結果は、0.1%(w/v)のポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム塩)が非溶血性であり、浸透圧調整媒体(9.25%のショ糖)において0.17の平均溶血指数を有することを示す。この結果は、静脈内用の流体として一般的に使用される0.9%の塩化ナトリウム(ノーマルセーライン)についての指数より有意に低い。これはまた、ノーマルセーライン(0.1%のDSPE−PEG、0.9%の塩化ナトリウム)中に分散されたペグ化した(pegylated)脂質についての溶血指数より有意に低い。
【0057】
このインビトロの結果は、実際の注射用製品においてこの化合物が安全であろうことを強調する。
【0058】
式1の化合物は、薬学的領域、医療領域、診断領域、美容領域、農業領域および他の領域に応用され得る。薬学的用途としては、式1の化合物と、治療剤または診断剤との併用が挙げられる。治療剤は、以下のような種々の公知である薬剤(pharmaceuticals)から選択され得るが、これらに限定されない:鎮痛薬、麻酔薬、中枢神経興奮薬、アドレナリン作用因子、抗アドレナリン作用因子、抗アドレナリン剤、アドレノコルチコイド、アドレナリン様作動剤、抗コリン作用因子、抗コリンエステラーゼ、鎮痙薬(anticonvulsant)、アルキル化剤、アルカロイド、アロステリックインヒビター、タンパク同化ステロイド、食欲抑制物、制酸薬、下痢止め薬、解毒剤、葉酸代謝拮抗薬、解熱薬、抗リウマチ剤、精神治療薬、神経遮断薬、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗不整脈薬、抗生物質、抗凝固薬、抗鬱薬、抗痙攣薬(antiepileptics)、抗真菌剤、抗ヒスタミン薬、抗ムスカリン性薬剤、抗マイコバクテリア因子、抗腫瘍剤、抗原虫剤、抗ウイルス剤、抗不安性鎮静剤、β−アドレナリン作用性レセプター遮断薬、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断剤、画像診断用剤、ドパミン作用因子、止血剤、血液学的因子、催眠薬、免疫学的因子(immuriological agent)、ムスカリン作用薬(muscarinics)、副交感神経作用因子、プロスタグランジン、放射性医薬品、鎮静剤、興奮薬、交感神経作用因子、ビタミン、キサンチン、成長因子、ホルモンおよび抗プリオン因子(antiprion agent)のような多くの公知の分類より選択され得るが、これらに限定されない。抗腫瘍剤としては、パクリタキセルおよびその誘導化合物、アルカロイド、代謝拮抗物質、酵素インヒビター、アルキル化剤ならびに抗生物質が挙げられ得る。
【0059】
治療剤としてはまた、生物学的物質(biologic)が挙げられ得る。その生物学的物質は、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、および核酸から選択され得る。そのタンパク質は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体から選択される抗体であり得る。タンパク質の例としては、第VIII因子、第IX因子、インスリン、ヒト成長ホルモン、tPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、エリスロポエチン、α−1−プロテインキナーゼインヒビター、および特定のモノクローナル抗体またはFabフラグメント、ならびにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
診断剤としては、X線造影剤および造影剤が挙げられる。X線造影剤の例としては、ジアトラゾ酸(diatrazoic acid)のエチルエステルとしても公知であるWIN−8883(エチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート)(EEDA)、WIN 67722(すなわち、6−エトキシ−6−オキソヘキシル−3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾエート)、エチル−2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)ブチラート(WIN 16318)、エチルジアトリゾキシアセテート(ethyl diatrizoxyacetate)(WIN 12901)、エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)プロピナート(WIN 16923)、N−エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセトアミド(WIN 65312)、イソプロピル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセトアミド(WIN 12855)、ジエチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)マロネート(WIN 67721)、エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)フェニルアセテート(WIN 67585)、プロパン二酸,[[3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,5−トリヨードベンゾイル]オキシ]ビス(1−メチル)エステル(WIN 68165)、および安息香酸,3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−4−(エチル−3−エトキシ−2−ブテノエート)エステル(WIN 68209)が挙げられる。好ましい造影剤としては、比較的に素早く生理学的条件下で崩壊し、従って、炎症反応に関連する任意の粒子を最小限にすると予測されるものが挙げられる。崩壊は、酵素的加水分解、生理学的なpHにおけるカルボン酸の可溶化、または他の機構によって生じる。従って、難溶性のヨウ素標識したカルボン酸(例えば、ヨージパミド、ジアトリゾ酸(diatrizoic acid)およびメトリゾ酸(metrizoic acid)、さらに、加水分解に対して不安定なヨウ素標識した化学種(例えば、WIN 67721、WIN 12901、WIN 68165、およびWIN 68209)または他のカルボン酸)が、好まれ得る。
【0061】
他の造影剤としては、ガドリニウムキレートのような磁気共鳴映像法を目的とする微粒子調製物、または他の常磁性造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例は、ガドペント酸ジメグルミン(Magnevist(登録商標))およびガドテリドール(Prohance(登録商標))である。
【0062】
治療剤および診断剤の分類についての記述ならびに各分類内の化学種の一覧は、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,第29版,The Pharmaceutical Press,London,1989に見出され得、それは、参考として本明細書に援用され、かつ本明細書の一部をなす。治療剤および診断剤は、市販されており、そして/または当該分野で公知の技術によって調製され得る。
【0063】
本発明のタンパク質組成物または他の高分子組成物が処方される場合、それらは、一般的に、水性媒体中に、タンパク質または他の高分子、および式1の1以上の化合物を含む。このような組成物は、溶液またはコロイド形態のいずれかにある。式1の化合物は、上記組成物を安定化するのに有効な量で存在する。この文脈において、「安定化する」とは、式1の1以上の化合物を含まないこのような高分子の組成物に対して、タンパク質/高分子の変性、不規則なフォールディングもしくは凝集を、阻害するかまたは部分的に阻害することをいう。
【0064】
本発明の粒子が作製される場合、それらは、好ましくは、水に難溶性である薬学的因子および式1の1以上の化合物を含む。「水に難溶性」の意味するところは、約10mg/mL未満、そして好ましくは、1mg/mL未満の、水に対するその化合物の溶解度である。これらの水に対して難陽性の薬剤は、水性媒体中に処方するこれらの化合物の代替物に対しての限定が存在するので、水性懸濁液調製物に、最も適している。本発明の粒子は、代表的に、固体結晶性の固体、半晶質の固体、非晶質の固体またはそれらの混合物形態、式1の1以上の化合物を有する薬学的因子(または他の因子)、および必要に応じて、それらの表面に結合した1種以上の界面活性剤(下に記載される)から構成される。
【0065】
本発明の組成物中の式1の化合物の濃度は、使用される式1の特定の化合物、さらなる界面活性剤の存在、その薬学的粒子/活性剤粒子の物理的性質/化学的性質、粒径およびその懸濁物中の粒子の濃度に依存して変動する。しかし、一般的に、式1の化合物は、約0.01の重量対容量%(%w/v)〜約5%w/vの濃度で本発明の粒子組成物中に存在する。好ましくは、式1の化合物は、約0.01%w/v〜2%w/vの量、そして最も好ましくは、約0.05%w/v〜1%w/vの量で、本発明の組成物中に存在する。
【0066】
本発明の懸濁物中に粒子形態で存在する上記薬学的因子の濃度または他の活性剤の濃度は、その因子の物理的性質/化学的性質、投与経路および投与速度、処置する状態などに依存して変動する。しかし、一般的に、上記活性剤は、約0.01%w/v〜約30%w/vの濃度、より好ましくは、約0.1%w/v〜約25%w/vの濃度、そして最も好ましくは、約0.5%w/v〜約20%w/vの濃度で本発明の組成物中に存在する。
【0067】
本発明において利用される粒子は、動的光散乱法(例えば、画像相関分光法(photocorrelation spectroscopy)、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光掩蔽(light obscuration)法(例えば、Coulter法)、レオロジー、または顕微鏡(光もしくは電子))によって測定されるとき、概して約100μm未満の平均有効粒径を有する。好ましい平均有効粒径は、投与の意図された経路、処方物、溶解度、化合物の毒性およびバイオアベイラビリティーのような要因に依存する。好ましくは、本発明の粒子は、約15nm〜200μmの平均有効粒径、より好ましくは、約15nm〜約100μmの平均有効粒径、より好ましくは、約15nm〜約50μmの平均有効粒径、そして最も好ましくは、約100nm〜約50μmの平均有効粒径を有する。本発明の粒子組成物が静脈内注入について意図される場合、その粒子は、15nm〜約2μmの平均有効粒径、そしてより好ましくは、50nm〜約1μmの平均有効粒径を有する。
【0068】
粒子の以下の記載はまた、本発明の全ての実施形態に適用される。分散物中の粒子は、適切な分析方法(例えば、示差走査熱量測定(DSC)またはX線回折)によって決定されるような、非晶質、半結晶性、結晶性、またはそれらの組み合わせであり得る。投与する前に、上記薬学的組成物は、均質化工程によって均質化され得る。上記薬学的組成物はまた、微小沈殿(microprecipitation)/均質化工程によって均質化され得る。
【0069】
上記薬学的組成物の分散物は、投与する前に滅菌され得る。滅菌は、任意の医療用滅菌工程によって行われ得、この滅菌工程としては、加熱滅菌またはγ線照射による滅菌が挙げられる。その分散物は、濾過(直接的(200nm未満の粒径を有する分散物の場合)か、または固体分散物を形成する前の、沈殿工程において使用される溶液の濾過滅菌によるかのいずれか)によって滅菌され得る。滅菌はまた、非常に高い圧力(2000気圧より大きい)の短時間の適用によってか、または高圧と高い温度との組み合わせによって達成され得る。
【0070】
本発明はまた、特定の場合において水溶性化合物と共に実施され得る。これらの水溶性活性化合物は、ポリマー(例えば、ポリラクテート−ポリグリコレート共重合体(PLGA)、ポリシアノアクリレート、アルブミン、デンプン)と混合されるか、その薬学的物化合物に非浸透性の小胞に囲まれてカプセル化される。このカプセル化する小胞は、ポリアクリレートのようなポリマーコーティングであり得る。さらに、これらの水溶性化合物から調製される小粒子は、化学的な安定性を改善するため、およびその粒子からの化合物の放出を制御することによって、その化合物の薬物動態を制御するために改変され得る。水溶性化合物の例としては、簡単な有機化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、および炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
(本発明の薬学的粒子組成物の調製)
本発明において使用される粒子を調製するための工程は、当業者に公知である多くの技術によって達成される。包括的ではないが、代表的に、薬学的組成物の粒子分散物を調製するための技術の考察は、以下に従う。以下の例において、好ましい方法および得られる生成物は、活性剤微粒子および式1の1以上の化合物から構成される(すなわち、さらなる界面活性剤化合物を含まない)。
【0072】
(I.小粒子の分散物を形成するためのエネルギー付加技術)
一般的に、エネルギー付加技術を使用して小粒子の分散物を調製する方法は、薬物と呼ばれることもある薬学的に活性な化合物に付加する工程を含み、その薬学的に活性な化合物は、適切なビヒクル(例えば、水、もしくは式1の1以上の化合物および必要に応じて、1種以上の後述される界面活性剤を含む水溶液、または予備懸濁物と称される第1の懸濁物を形成するために薬学的化合物がほとんど溶解しない他の液体)に対して大きすぎる形態である。エネルギーは、予備懸濁物より物理的に安定である粒子分散物を形成するために予備懸濁物に付加される。エネルギーは、機械的研削(例えば、パールミル粉砕(pearl milling)、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、流体エネルギーミル粉砕、ジェットミル粉砕または湿式研削によって付加される。このような技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,145,684号に開示される。
【0073】
エネルギー付加技術はさらに、予備懸濁物を、キャビテーション、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を利用する剪断または衝撃力が挙げられる高剪断条件に供することを含む。本発明はさらに、ピストンギャップ(piston gap)ホモジナイザーまたは対向流式(counter current flow)ホモジナイザー(例えば、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,091,188号に開示される)を使用して、予備懸濁物にエネルギーを付加する工程を企図する。適切なピストンギャップホモジナイザーは、AvestinによるEMULSIFLEX、およびSpectronic Instrumentsによって販売されるFrench Pressure Cellsの製品名で市販される。適切なマイクロフルイダイザーは、Microfluidics Corp.より入手可能である。
【0074】
エネルギーを付加する工程はまた、超音波処理技術を使用して達成され得る。超音波処理の工程は、任意の適切な超音波処理デバイス(例えば、Branson Model S−450AまたはCole−Parmer 500/750 Watt Model)を用いて実施され得る。このようなデバイスは、その業界において周知である。代表的に、その超音波処理デバイスは、超音波ホーンまたは超音波プローブを有し、それらは、溶液中にエネルギーを放出するために、その予備懸濁物中に挿入される。本発明の好ましい形態において、その超音波処理をするデバイスは、約1kHz〜約90kHzの周波数、そしてより好ましくは約20kHz〜約40kHzの周波数、もしくは任意の範囲またはその範囲の組み合わせにおいて操作される。そのプローブの大きさは、変化し得るが、好ましくは独特な大きさ(例えば、1/2インチもしくは1/4インチなど)である。
【0075】
使用されるエネルギー付加技術にかかわらず、小粒子の分散物は、使用の前に、滅菌されなければならない。滅菌は、加熱滅菌、γ線照射、濾過(直接的(200nm未満の粒径を有する分散物の場合)か、または固体分散物を形成する前の、沈殿工程において使用される溶液の濾過滅菌によるかのいずれか)、および非常に高い圧力(2000気圧より大きい)の短時間の適用、または高圧と高い温度との組み合わせによって達成され得る。
【0076】
(II.サブミクロンサイズの粒子の分散物を調製するための沈殿方法)
小粒子の分散物はまた、沈殿技術によって調製され得る。以下は、沈殿技術の例の記載である。
【0077】
(微小沈殿法)
微小沈殿法の1つの例は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,780,062号に開示される。米国特許第5,780,062号は、以下を含む有機化合物沈殿方法を開示する。:(i)水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解すること;(ii)水性の第2の溶媒において、式1の1以上の化合物と、必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤との溶液を調製する工程(ここで第2の溶媒の有機化合物は、実質的に不溶性である);および(iii)その有機化合物と、式1の1以上の化合物と、必要に応じた1種以上の界面活性剤との凝集体の沈殿を生じるために、工程(i)および工程(ii)に由来する溶液を混合すること。
【0078】
適切な沈殿工程の別の例は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第6,607,784号ならびに同時係属かつ同一出願人の米国出願番号09/874,499;米国出願番号09/874,637;および米国出願番号10/021,692に開示される。その開示された方法は、以下の工程を含む:(1)第1の溶液を生成するために、水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解する工程;(2)予備懸濁物を生成するために、第1の溶液と、その有機化合物を沈殿する第2の溶媒または水とを混合する工程;および(3)高剪断の混合または加熱の形態で予備懸濁物にエネルギーを付加して小粒子の分散物を得る工程。必要に応じて、上記第1の有機溶媒は、任意の適切な手段(例えば、遠心分離法または濾過法)によって上記混合物から除去される。さらに、上記分散物の連続相は、必要に応じて、遠心分離および濾過のような方法を使用して第1の連続相を除去し、第2の連続相を添加し、次いでその第2の連続相中に固体材料を再度分散することにより、別の連続相に置換され得る。式1の1以上の化合物、および必要に応じて、1種以上の後述される界面活性剤が、第1の有機溶媒もしくは第2の水溶液、またはその両方に添加される。
【0079】
(エマルション沈殿方法)
1つの適切なエマルション沈殿技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、同時係属かつ同一出願人の米国出願番号09/964,273に開示される。このアプローチにおいて、その方法は、以下の工程を含む:(1)有機相および水相を有する多相系(multiphase system)を提供し、その有機相が、その中に薬学的に活性な化合物を有する、工程;および(2)その水相においてその化合物の沈殿を生じるためにその系を超音波処理して、有機相の部分を揮発させ、小粒子の分散物を形成する工程。多相系を提供する工程は、以下の工程を含む:(1)水不混和性の溶媒と、有機溶液をを規定する薬学的に活性な化合物とを混合する工程;(2)式1の1以上の化合物、および必要に応じて、1種以上の後述される界面活性剤を用いて水ベースの溶液を調製する工程;ならびに(3)多相系を形成するために、その有機溶液とその水溶液とを混合する工程。その有機相およびその水相を混合する工程としては、ピストンギャップホモジナイザーの使用、コロイドミル(colloidal mill)の使用、高速撹拌装置の使用、押出成形装置の使用、手動の撹拌装置または手動の振盪装置の使用、マイクロフルイダイザーの使用、または高剪断条件を提供する他の装置もしくは技術の使用が挙げられ得る。粗エマルションは、水中に直径が約1μm未満のサイズの油滴を有する。粗エマルションは、マイクロエマルションを規定し、そして最終的に小粒子の分散物を得るために超音波処理される。
【0080】
小粒子の分散物を調製する別のアプローチは、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、同時係属かつ同一出願人の米国出願番号10/183,035に開示される。その方法は、以下の工程を含む:(1)有機相および水相を有する多相系の粗分散物を提供する工程であり、その有機相が、その中に薬学的化合物を有する、工程;(2)その粗製分散物にエネルギーを与えて微細な分散物を形成する工程;(3)その微細な分散物を凍結する工程;および(4)その微細な分散物を凍結乾燥してその薬学的化合物の小粒子を得る工程。その小粒子は、後述の技術によって滅菌され得るか、またはその小粒子は、水性媒体中に再構成され得、そして滅菌され得る。
【0081】
多相系を提供する工程は、以下の工程を含む:(1)水不混和性の溶媒と、有機溶液を規定する薬学的に有効な化合物とを混合する工程;(2)式1の1以上の化合物、および必要に応じて、1種以上の後述される界面活性剤を用いて水ベースの溶液を調製する工程;および(3)その有機溶液とその水溶液とを混合して多相系を形成する工程。その有機相およびその水相を混合する工程としては、ピストンギャップホモジナイザーの使用、コロイドミルの使用、高速撹拌装置の使用、押出成形装置の使用、手動の撹拌装置または手動の振盪装置の使用、マイクロフルイダイザーの使用、または高剪断条件を提供する他の装置もしくは技術の使用が挙げられる。
【0082】
(溶媒貧溶媒沈殿(Solvent Anti−solvent Precipitation))
小粒子の分散物はまた、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許出願第5,118,528号においてFessiらによって開示される溶媒貧溶媒沈殿技術、および米国特許出願第5,100,591号においてLeclefらによって開示される溶媒貧溶媒沈殿技術を使用して調製され得る。両方の方法は、以下の工程を含む:(1)式1の1以上の化合物、および必要に応じて、1種以上の後述される界面活性剤を添加され得る溶媒または溶媒の混合物において、生物学的に活性な物質の液相を調製する工程;(2)非溶媒または非溶媒の混合物の第2の液相を調製する工程であり、その非溶媒が、その物質のための溶媒または溶媒の混合物と混和性である、工程;(3)(1)の溶液と(2)の溶液とを、撹拌しながら一緒に添加する工程;および(4)望ましくない溶媒を除去して小粒子の分散物を生成する工程。これらの方法は、上記の節「微小沈殿法」に記載される方法と区別され、ここでこれらの方法は、高剪断の混合または加熱の形態で懸濁物にエネルギーを付加する最後の工程を提供しない。
【0083】
(転相沈殿(Phase Inversion Precipitation))
小粒子の分散物は、それらの各々が本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第6,235,224号、米国特許第6,143,211号および米国特許出願2001/0042932に開示されるような転相沈殿を使用して形成され得る。本発明に適用される場合、転相は、連続相である溶媒系中に溶解された式1の1以上の化合物、および必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤が、このような化合物が連続相である固体高分子のネットワークへと反転する物理的現象を使用する。転相を誘導する1つの方法は、その連続相への非溶媒の添加によるものである。式1の化合物、および必要に応じた界面活性剤は、単一の相から不安定な2相混合物(ポリマーが豊富な分画およびポリマーが少ない分画)への転移を起こす。ポリマーが豊富な相中の非溶媒のミセルの液滴は、核生成部位として働き、そしてポリマーによってコーティングされる。米国特許第6,235,224号は、特定の条件下でのポリマー溶液の転相が、ナノ粒子を含む分離したマイクロ粒子の自発的な形成をもたらし得ることを開示する。米国特許第6,235,224号は、溶媒中にポリマーを溶解する工程または溶媒中にポリマーを分散する工程を開示する。薬学的因子もまた、その溶媒中に溶解されるか、または分散される。この方法において有効である結晶シーディング工程のために、上記因子は上記溶媒中に溶解されることが、望ましい。上記ポリマー、上記因子および上記溶媒は、一緒になって連続相を有する混合物を形成し、その溶媒は、その連続相である。その後、その混合物は、少なくとも10倍を超過する混和性の非溶媒中に導入されて、その因子のマイクロカプセル化されたマイクロ粒子の自発的な形成をもたらし、その因子は、10nmと10μmとの間の平均粒径を有する。その粒径は、溶媒:非溶媒の体積比、ポリマー濃度、ポリマー−溶媒溶液の粘度、ポリマーの分子量、および溶媒と非溶媒の組み合わせの特徴に影響される。
【0084】
(pH変動沈殿(pH Shift Precipitation)
小粒子の分散物は、pH変動沈殿技術によって形成され得る。このような技術は、代表的に、薬物が溶解できるpHを有する溶液中にその薬物を溶解する工程、およびその工程の後に、薬物がもはや溶解できないpHにそのpHを変化させる工程を含む。そのpHは、その特定の薬学的化合物に依存して、酸性または塩基性であり得る。その後、その溶液は、小粒子の分散物を形成するために中和される。1つの適切なpH変動沈殿方法は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,665,331号に開示される。その方法は、その薬学的因子を、結晶成長を改変する因子(CGM)と一緒にアルカリ溶液中に溶解する工程、ならびにその後、式1の1以上の化合物の適切な、表面を改変する界面活性因子、および必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤の存在下で、酸を用いて中和して、その薬学的因子の小粒子の分散物を形成する工程を含む。その沈殿工程はその後に、分散物のダイアフィルトレーション洗浄の工程を従え、次いでその分散物の濃度は、所望のレベルに調整され得る。
【0085】
pH変動沈殿方法の他の例は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,716,642号、同第5,662,883号、同第5,560,932号、および同第4,608,278号に開示される。
【0086】
(注入沈殿法(Infusion Precipitation Method))
小粒子の分散物を形成するための適切な注入沈殿技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第4,997,454号および同第4,826,689号に開示される。第1に、適切な固体化合物は、溶媒混合物を形成するのに適した有機溶媒中に溶解される。その後、その有機溶媒と混和できる沈殿性の非溶媒は、約−10℃と約100℃との間の温度、および50mlの溶媒混合物の容量に対して、1分あたり約0.01ml〜約1000mlの注入速度にてその溶媒混合物中に注入されて、10μm未満の実質的に均一な平均直径を有するその化合物の、沈殿した非凝集固体粒子の懸濁物を生成する。沈殿性の非溶媒を注入された溶液の撹拌(例えば、かき混ぜることによる)は、好ましい。非溶媒は、その粒子を凝集に対して安定化させるために、式1の1以上の化合物、および必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤を含む。その後、その粒子は、その溶媒から分離される。その固体化合物および所望の粒径に依存して、温度のパラメータ、溶媒に対する非溶媒の比、注入速度、撹拌速度、および容量は、所望の懸濁物を達成するために変えられ得る。その粒径は、非溶媒容量:溶媒容量の比および注入の温度に比例し、そして注入速度および撹拌速度に反比例する。その化合物の相対的な溶解度および所望の懸濁ビヒクルに依存して、その沈殿性の非溶媒は、水性または非水性であり得る。
【0087】
(温度変動沈殿(Temperature Shift Precipitation))
温度変動沈殿技術もまた、小粒子の分散物を形成するために使用され得る。この技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,188,837号に開示される。本発明の実施形態において、リポスフェア(lipospher)は、以下の工程によって調製される:(1)物質(例えば、送達されるべき物質の液体を形成するための融解したビヒクル中に、送達されるべき薬物)を、融解する工程または溶解する工程;(2)その物質またはビヒクルの融解温度より高い温度において、リン脂質ならびに式1の1以上の化合物、および必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤を、水性媒体と一緒にその融解された物質または融解されたビヒクルに添加する工程;(3)そのビヒクルの融解温度を上回る温度において、均質で微細な調製物が得られるまで、その懸濁物を混合する工程;その後(4)その調製物を、室温以下まで素早く冷却する工程。
【0088】
(溶媒蒸発沈殿(Solvent Evaporation Precipitation))
溶媒蒸発沈殿技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第4,973,465号に開示される。米国特許第4,973,465号は、以下の工程を含む、微小結晶を調製するための方法を開示する:(1)一般的な有機溶媒または溶媒の組み合わせの中に溶解された、薬学的組成物とリン脂質と式1の1以上の化合物と必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤との溶液を提供する工程;(2)溶媒または溶媒の組み合わせを蒸発させる工程;および(3)水性溶液中の溶媒または溶媒の組み合わせの蒸発によって得られたフィルムを、激しく撹拌することによって懸濁して、小粒子の分散物を形成する工程。その溶媒は、化合物の沈殿を引き起こすためにその溶媒の十分な量を蒸発させることによって除去され得る。その溶媒はまた、他の周知の技術(例えば、溶液に真空を適用すること、または溶液に窒素を吹き込むこと)によって除去され得る。
【0089】
(反応沈殿(Reaction Precipitation))
反応沈殿は、溶液を形成するために、薬学的化合物、および必要に応じた他の賦形剤を適切な溶媒中に溶解する工程を含む。その化合物は、その溶媒中のその化合物の飽和点か、またはそれ以下における量で添加されるべきである。その化合物または任意の賦形剤は、化学的因子と共に反応することによってか、またはエネルギーを付加する工程(例えば、熱または紫外光など)に対する反応における改変(その結果、その改変された化合物は、その溶媒に対して、より低い溶解度を有し、そして溶液から沈殿して小粒子の分散物を形成する)によって溶液から沈殿する。賦形剤の沈殿は、薬物が吸着される固体マトリックスを提供する。
【0090】
(圧縮流体沈殿(Compressed Fluid Precipitation))
圧縮流体による沈殿のための適切な技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、JohnstonのWO97/14407に開示される。その方法は、溶媒中に水に不溶性の薬物を溶解して溶液を形成する工程を含む。その後、その溶液は、気体、液体または超臨界流体であり得る圧縮流体中に噴霧される。溶媒中の溶質の溶液に対する圧縮流体の添加は、その溶質を、過飽和状態に到達させるか、または過飽和状態に近づけ、そして微細な粒子として析出させる。この場合において、その圧縮流体は、その薬物が溶解される溶媒の凝集エネルギー密度を低下させる貧溶媒として作用する。
【0091】
あるいは、上記薬物は、上記圧縮流体中に溶解され得、その後その圧縮流体は、水相中に噴霧される。その圧縮流体の急速な膨張は、その流体の溶媒力を減少し、次いで、その水相中にその溶質を小粒子として析出させる。この場合において、その圧縮流体は、溶媒として作用する。
【0092】
凝集に対して粒子を安定化させるために、式1の1以上の化合物、および必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤が、この技術に含まれる。
【0093】
(低温流体への噴霧)
圧縮流体によって沈殿させるための適切な技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国出願10/273,730においてWilliamsらによって開示される。その方法は、小粒子の生成のためのシステムおよび方法を提供し、活性成分は、水、1種以上の溶媒、またはそれらの組み合わせ、ならびに式1の1以上の化合物、および必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤と混合され、そして得られた混合物は、低温流体の表面、またはその表面下に噴霧される。それによって、凍結した粒子が、提供される。その固体粒子をカプセル化するための材料もまた、凍結した粒子が生成されるように添加され得、そのカプセル化する因子は、その活性剤を取り囲む。
【0094】
(III.薬学的組成物の粒子分散物を調製するためのさらなる方法)
本発明において使用される薬学的組成物(すなわち、有機化合物)の粒子を調製するための以下のさらなる方法は、4つの一般的なカテゴリーに分けることができる。方法の各カテゴリーは、共通して、(1)有機化合物を、水混和性の第一の溶媒に溶解して、第一の溶液を生成する工程、(2)第一の溶液と水の第二の溶媒とを混合して有機化合物を沈殿させ、予備懸濁物を生成する工程、および(3)高剪断の混合もしくは加熱、またはその両方の組み合わせの形態で、予備懸濁物にエネルギーを付加し、上で定義した所望の大きさの範囲を有する有機化合物の安定形態を提供する工程とを含んでいる。混合工程およびエネルギーを付加する工程は、連続する工程として行われても、同時に行われてもよい。
【0095】
方法のカテゴリーは、X線回折試験、示差走査型熱量測定(DSC)試験、あるいはエネルギー付加前かエネルギー付加後に別の適当な方法を行って決定される有機化合物の物理的特性に基づいて区別される。
【0096】
(A.第1の方法カテゴリー)
第1の方法カテゴリーの方法は、一般的に、水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解する工程、次いで、この溶液を水性溶媒と混合することにより予備懸濁物を形成する工程を含み、ここで、有機化合物はX線回折試験、DSC、光学顕微鏡観察または他の分析技術により測定された場合に、非晶質形態、半結晶形態にあるか、または過冷却された液体形態であり、そして上記した有効粒径範囲の1つに包含される平均有効粒径を有する。混合工程の後にエネルギー付加工程が行われる。
【0097】
(B.第2の方法カテゴリー)
第2の方法カテゴリーの方法は、本質的に第1の方法カテゴリーの工程の場合と同様の工程を包含するが、以下の点において異なる。予備懸濁物のX線回折、DSCまたは他の適切な分析技術は、結晶形態にあり平均有効粒径を有する有機化合物を示す。エネルギー付加工程の後の有機化合物は、エネルギー付加工程の前と本質的に同じ平均有効粒径を有するが、予備懸濁物の粒子の場合と比較してより大型の粒子に凝集する傾向は低い。特段の理論に制約されないが、粒子の安定性の差は、固/液界面における界面活性剤分子の再秩序化に起因すると考えられる。
【0098】
(C.第3の方法カテゴリー)
第3のカテゴリーの方法は、第1および第2の方法カテゴリーの最初の2工程を変更することにより、予備懸濁物中の有機化合物が平均有効粒径を有するもろい形態である(例えば、細長い針状物または薄片)ことを確実にする。もろい粒子は、適切な溶媒、界面活性剤または界面活性剤の組み合わせ、個々の溶液の温度、混合速度および沈殿速度などを選択することにより形成され得る。もろさはまた、水性溶媒との第1の溶液の混合の工程の間に格子欠損(例えば、切断面)を導入することにより増強され得る。これは、沈殿工程において可能であるような急速な結晶化により生じる。エネルギー添加工程において、これらのもろい結晶は速度論的に安定化され予備懸濁物よりも小さい平均有効粒径を有する結晶に変換される。速度論的に安定化されるとは、速度論的に安定化されない粒子と比較した場合に粒子の凝集傾向が低下していることを意味する。このような例においては、エネルギー付加工程は、もろい粒子の崩壊をもたらす。予備懸濁物の粒子がもろい状態にあることを確保することにより、もろい形態とするための工程を実施しない有機化合物の処理の場合と比較して、より容易に、そしてより迅速に、有機化合物は、所望の大きさの範囲内の粒子へと調製され得る。
【0099】
(D.第4の方法カテゴリー)
第4の方法カテゴリーの方法は、エネルギー付加工程と同時に混合工程が実施されること以外は、第1の方法カテゴリーの工程と同様のものを包含する。
【0100】
(E.多形の制御)
本発明の方法はさらに、有機化合物の結晶構造を制御することにより所望の粒径範囲および所望の結晶構造における化合物の懸濁液を最終的にもたらすためのさらなる工程を提供する。「結晶構造」という用語は、結晶の単位セル内の原子の配列を意味する。種々の結晶構造へと結晶化され得る化合物は、多形であると称される。同じ薬物の異なる多形は、異なる溶解度、治療活性、バイオアベイラビリティーおよび懸濁液安定性を示し得るので、多形の同定は、薬物の処方の重要な工程である。従って、製品の純度およびバッチごとの再現性を確保するために、化合物の多形を制御することが重要である。
【0101】
化合物の多形を制御する工程は、所望の多形の形成を確保するための第1の溶液、第2の溶媒または予備懸濁物へのシーディングを包含する。シーディングはシード化合物の使用またはエネルギーの付加を包含する。本発明の好ましい形態において、シード化合物は、所望の多形形態を有する薬学的に活性な化合物である。あるいは、シード化合物はまた、不活性の不純物、所望の多形に関して構造的に無関係であるが、結晶核のテンプレートをもたらし得る特徴を有する化合物、または所望の多形と同様の構造を有する有機化合物であり得る。
【0102】
シード化合物は、第1の溶液から沈殿させることができる。この方法は、過飽和溶液を形成するために、第1の溶媒中の有機化合物の溶解度を超過するのに十分な量の有機化合物を添加する工程を包含する。過飽和溶液は、所望の多形形態の有機化合物を沈殿させるために処理される。過飽和溶液の処理は、結晶の形成が観察されてシーディング混合物が形成されるまでの時間、溶液をエイジングさせる工程を包含する。有機化合物が、溶液から所望の多形で析出できるように過飽和溶液にエネルギーを付加することも、可能である。エネルギーは、上記したエネルギー付加工程を包含する種々の方法で付加され得る。さらなるエネルギーが、加熱によってか、または、予備懸濁物を電磁エネルギー、粒子線または電子線の線源に曝露することによって付加され得る。電磁エネルギーは、光エネルギー(紫外線、可視光または赤外)またはレーザーにより生じるもののような可干渉性の放射、メーザー(maser:放射の刺激発射によるマイクロウェーブ増幅)により生じるもののようなマイクロウェーブエネルギー、動的電磁エネルギーまたは他の放射源を包含する。さらにまた、超音波、静電場もしくは静磁場、またはこれらの組み合わせをエネルギー付加源として利用することが、さらに企図される。
【0103】
好ましい形態において、エイジングした過飽和溶液からシード結晶を生成するための方法は、以下の工程を含む:(i)ある量の有機化合物を第1の溶媒に添加して過飽和溶液を形成する工程、(ii)過飽和溶液をエイジングさせて検出可能な結晶を形成させることによりシーディング混合物を形成する工程;および(iii)シーディング混合物を第2の溶媒と混合することにより有機化合物を沈殿させて予備懸濁物を形成する工程を包含する。次いで予備懸濁物は、上で詳細に記載した通り、所望の多形および所望の大きさの範囲の有機化合物の水性懸濁液を提供するために、さらに処理され得る。
【0104】
シーディングは、曝露された液体が有機化合物またはシード物質を含有する限り、第1の溶液、第2の溶媒または予備懸濁物にエネルギーを付加することによっても実施され得る。エネルギーは、過飽和溶液に関して上記したものと同様の態様において付加され得る。
【0105】
従って、本発明の方法は、特定されない多形を本質的に含まない所望の多形形態にある有機化合物の物質の組成物を利用する。好ましい形態において、有機化合物は、薬学的に活性な物質である。本明細書中に記載される方法は、多くの薬学的に活性な化合物について所望の多形を選択的に生成するために使用され得ることが、企図される。
【0106】
第1の方法カテゴリー、ならびに第2、第3および第4の方法カテゴリーは、さらに2つのサブカテゴリー、方法AおよびBへとさらに分割され得る。
【0107】
以下の方法に従う第1の溶媒は、目的の有機化合物が比較的可溶性であり、そして第2の溶媒と混和性である溶媒または溶媒の混合物である。このような溶媒としては、分子内の水素原子が、酸素、窒素または元素周期律表の他のVA族、VIA族およびVIIA族のような電気陰性の原子に結合している、水混和性のプロトン性化合物が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶媒の例としては、アルコール類、アミン類(第1級または第2級)、オキシム類、ヒドロキサム酸類、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類、リン酸類、アミド類および尿素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
第1の溶媒の他の例としてはまた、非プロトン性の有機溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性の溶媒の一部は、水と水素結合を形成し得るが、それらは有効なプロトン供与基を欠いているので、プトロン受容体としてのみ機能し得る。非プロトン性溶媒の1つのクラスは国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)により以下に定義されるとおり、双極性の非プロトン溶媒である(IUPAC、Compendium of Chemical Terminology,第2版,1997):
強力な水素結合を形成するため不安定な水素原子を適切に供与することができない、約15より高値の、比較的高い相対誘電率(または誘電定数)、およびかなり大きい永久双極子モーメントを有する溶媒、例えばジメチルスルホキシド。
【0109】
双極性の非プロトン性溶媒は、以下からなる群より選択され得る:アミド(完全置換、結合した水素原子を欠く窒素を有する)、尿素(完全置換、窒素原子に結合した水素原子を有さない)、エーテル類、環状エーテル類、ニトリル類、ケトン類、スルホン類、スルホキシド類、完全置換ホスフェート類、ホスホン酸エステル類、ホスホルアミド類、ニトロ化合物など。ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、2−ピロリジノン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリルおよびヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ニトロメタンは、とりわけ、このクラスのメンバーである。
【0110】
溶媒はまた、一般的には水不混和性であるが、低容量(10%未満)においては、このような低容量において水混和性の第1の溶媒として機能するのに十分な水溶性を有するものが選択され得る。例としては、芳香族炭化水素類、アルケン類、アルカン類およびハロゲン化芳香族類、ハロゲン化アルケン類およびハロゲン化アルカン類が挙げられる。芳香族としては、ベンゼン(置換または非置換)および単環または多環のアレンが挙げられるが、これらに限定されない。置換ベンゼンの例としては、キシレン(オルト、メタまたはパラ)およびトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。アルカンの例としては、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタンおよびシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化芳香族の例としては、クロロベンゼン、ブロモベンゼンおよびクロロトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化アルケンの例としては、トリクロロエタン、塩化メチレン、二塩化エチレン(EDC)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
上記した溶媒クラスの全ての例としては、N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドンともいわれる)、2−ピロリジノン(2−ピロリドンともいわれる)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸、乳酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、n−プロパノール、ベンジルアルコール、グリセロール、ブチレングリコール(ブタンジオール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、モノアシル化モノグリセリドおよびジアシル化モノグリセリド(例えば、グリセリルカプリレート)、ジメチルイソソルビド、アセトン、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリル、ニトロメタン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、芳香族炭化水素類、アルケン類、アルカン類、ハロゲン化芳香族類、ハロゲン化アルケン類、ハロゲン化アルカン類、キシレン、トルエン、ベンゼン、置換ベンゼン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、トリクロロエタン、塩化メチレン、二塩化エチレン(EDC)、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ポリエチレングリコール(PEG、例えばPEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150)、ポリエチレングリコールエステル類(例えば、ジラウリン酸PEG−4、ジラウリン酸PEG−20、イソステアリン酸PEG−6、パルミトステアリン酸PEG−8、パルミトステアリン酸PEG−150)、ポリエチレングリコールソルビタン類(例えば、PEG−20ソルビタンイソステアレート)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばPEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンアルギネート、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコールおよびグリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい第1の溶媒は、N−メチル−2−ピロリジノンである。別の好ましい第1の溶媒は、乳酸である。
【0112】
第2の溶媒は、水性溶媒である。この水性溶媒は、それ自体、水であってよい。この溶媒はまた、緩衝剤、塩、式1の1以上の化合物、界面活性剤、水溶性ポリマーおよびこれらの賦形剤の組み合わせを含み得る。
【0113】
(方法A)
方法Aにおいて、上記有機化合物(例えば、「薬物」)は、最初に、第1の溶媒に溶解して、第1の溶液を形成する。その有機化合物は、第1の溶媒中の有機化合物の溶解度に依存して、約0.1%(w/v)〜約50%(w/v)で添加され得る。第1の溶媒中の化合物の完全な溶解を確保するためには、約30℃〜約100℃で濃縮物を加熱することが必要であり得る。
【0114】
第2の水性溶媒は、式1の1以上の化合物および必要に応じた1種以上の後述される界面活性剤と共に提供される。この方法A、または一般的な粒子の調製もしくは特に本特許出願に開示される粒子の調製のための任意の他の方法において使用され得る界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤s、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤またはそこに添加される生物学的な界面活性分子が挙げられる。適切なアニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホネート類、アルキルホスフェート類、アルキルホスホネート類、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフェート類、アルギン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびそれらの塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸および他の胆汁酸類(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)およびそれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
適切な双性イオン性界面活性剤は、電気的に中性であるが、同一分子内に正電荷および負電荷を局所的に有する。適切な双性イオン性界面活性剤としては、双性イオン性のリン脂質が挙げられるが、これに限定されない。適切なリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジアシル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(例えば、ジミリストイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DSPE)およびジオレオイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DOPE))が挙げられる。アニオン性のリン脂質および双性イオン性のリン脂質を含むリン脂質の混合物が、本発明において使用され得る。このような混合物としては、リソリン脂質、卵もしくは大豆のリン脂質またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質は、アニオン性のリン脂質であるか、双性イオン性のリン脂質であるかまたはリン脂質の混合物であるかにかかわらず、塩化または脱塩化されていても、水素化または部分的に水素化されていても、天然、半合成または合成のものであってもよい。リン脂質はまた、本発明においてマクロファージへの送達を特異的に標的化するために、水溶性または親水性のポリマーと結合体化され得る。しかし、結合体化したリン脂質は、他の用途において他の細胞または他の組織を標的化するために使用され得る。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、これはまた、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)としても公知である。PEGの分子量は、例えば200〜50,000の範囲で変化し得る。一部の一般的に使用されている市販のPEGとしては、PEG350、PEG550、PEG750、PEG1000、PEG2000、PEG3000およびPEG5000が挙げられる。リン脂質またはPEG−リン脂質結合体はまた、リガンド(例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖タンパク質、抗体または薬学的に活性な物質が挙げられるが、これらに限定されない)に共有結合することができる官能基を取り込み得る。これらの官能基は、例えば、アミド結合の形成、ジスルフィドもしくはチオエーテルの形成、またはビオチン/ストレプトアビジン結合を介してリガンドと結合体化し得る。リガンド結合性官能基の例としては、ヘキサノイルアミン、ドデカニルアミン、1,12−ドデカンジカルボキシレート、チオエタノール、4−(p−マレイミドフェニル)ブチルアミド(MPB)、4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド(MCC)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(PDP)、スクシネート、グルタレート、ドデカノエートおよびビオチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
適切なカチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、キトサン、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩酸アシルカルニチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、ジオレオイル(dioleyol)トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、ジミリストイルトリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール(DC−Chol)、l,2−ジアシルグリセロ−3−(O−アルキル)ホスホコリン、O−アルキルホスファチジルコリン、アルキルピリジニウムハライドまたは長鎖アルキルアミン(例えば、n−オクチルアミンおよびオレイルアミン))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
適切な非イオン性界面活性剤としては、グリセリルエステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Myrj)、ソルビタンエステル(Span)、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポロキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、デンプンまたはデンプン誘導体を含むポリサッカライド(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES))、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。好ましい形態において、その非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマーであり、好ましくは、プロピレングリコールとエチレングリコールとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは、時にはPLURONIC(登録商標)とも称される、商品名POLPXAMERで販売され、そしてBASF、Spectrum Chemical、およびRugerを含むいくつかの供給業者によって販売される。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの間には、短いアルキル鎖を有するものが含まれる。このような界面活性剤の1つの例は、SOLUTOL(登録商標)HS 15(BASF Aktiengesellschaftによって製造されるポリエチレン−660−ヒドロキシステアレート)である。界面活性の生物学的分子としては、アルブミン、カゼイン、ヒルジンまたは他の適切なタンパク質のような分子が挙げられる。多糖類の生物学的物質も包含され、それらは、例えば、デンプン、ヘパリンおよびキトサンからなるが、これらに限定されない。他の適切な界面活性剤としては、任意のアミノ酸(例えば、ロイシン、アラニン、バリン、イソロイシン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、フェニルアラニン、またはこれらのアミノ酸の任意の誘導体(例えば、アミド誘導体またはエステル誘導体)およびこれらのアミノ酸から形成されるポリペプチドが挙げられる。
【0118】
pH調整剤を第2の溶媒に添加することもまた、望ましい。適切なpH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸、モノカルボン酸(例えば、酢酸および乳酸)、ジカルボン酸(例えば、コハク酸)、トリカルボン酸(例えば、クエン酸)、THAM(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、メグルミン(N−メチルグルコサミン)、水酸化ナトリウム、およびアミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、リジン、アラニン、ヒスチジンおよびロイシン)が挙げられるが、これらに限定されない。第2の溶媒は、約3〜約11の範囲内のpHを有するべきである。水性媒体は、浸透圧調整剤(例えば、グリセリン、単糖類(例えば、デキストロース)、二糖類(例えば、ショ糖)、三糖類(例えば、ラフィノース)、および糖アルコール(例えば、マンニトール、キシリトールおよびソルビトール)であるが、これらに限定されない)をさらに含み得る。
【0119】
好ましい形態において、有機化合物の小粒子を調製するための方法は、第2の溶媒に第1の溶液を添加する工程を含む。添加速度は、バッチサイズおよび有機化合物の沈殿の速度論的特徴に依存する。代表的には、小規模の実験室の方法(1リットルの調製)の場合、添加速度は約0.05cc/分〜約10cc/分である。添加の間、溶液は一定の撹拌下になければならない。非晶質の粒子、半晶質の固体、または過冷却の液体が形成されることにより予備懸濁物が生成していることが、光学顕微鏡観察を用いて観察されている。この方法は、さらに非晶質の粒子、過冷却液体または半結晶性の固体をより安定な結晶性の固体状態に変換するためのエネルギー付加工程に予備懸濁物を供す工程を含む。得られる粒子は動的光散乱法により測定した場合に、平均有効粒径を有する。方法カテゴリーの4つ目においては、第1の溶液および第2の溶媒を合わせながら、同時に例えばエネルギー付加工程を実施する。
【0120】
エネルギー付加工程は、超音波処理、均質化、対向流式均質化、マイクロフルイダイゼーションまたは衝撃、剪断またはキャビテーション力を与える他の方法を介してエネルギーを付加する工程を包含する。この試料は、この段階の間に冷却または加熱され得る。1つの好ましい実施形態において、エネルギー付加工程はAvestin Inc.から商品名EmulsiFlex−C160の下に販売されているようなピストンギャップホモジナイザーにより行われる。別の好ましい形態において、エネルギー付加工程はSonics and Materials,Inc.により製造されているVibra−Cell Ultrasonic Processor(600W)のような超音波処理機を用いた超音波処理によって行われ得る。さらに別の好ましい形態において、エネルギー付加工程は、本明細書中に参考として援用され、かつ本発明の一部をなす、米国特許第5,720,551号に記載の乳化装置を用いることによって行なわれ得る。
【0121】
エネルギー付加の速度に依存して、処理されている試料の温度を約−30℃〜30℃の範囲に調整することが、望まれ得る。あるいは、処理された固体において所望の相の変化を起こすために、エネルギー付加工程の間に予備懸濁物を約30℃〜約100℃の範囲の温度に加熱することも必要とされ得る。
【0122】
(方法B)
方法Bは以下の点において方法Aとは異なる。第1の相違点は、第1の溶液に式1の1以上の化合物および必要に応じた1種以上の界面活性剤が添加されることである。界面活性剤は、上記したアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および界面活性の生物学的改変因子からなる群より選択され得る。本明細書に記載した方法の適用により得られる薬物懸濁液は、注射用水が処方物において使用され、そして溶液の滅菌のための適切な手段が適用される限り、注射用溶液として直接投与され得る。滅菌は、当該分野で周知の方法(例えば、蒸気滅菌または加熱滅菌、ガンマ線照射など)によって行われ得る。特に、粒子の99%超が200nm未満である粒子に対する他の滅菌方法には、3.0ミクロンのフィルターを通した予備濾過、次いで0.45ミクロンの粒子フィルターを通した濾過、次いで蒸気滅菌または加熱滅菌または重複0.2ミクロンメンブレンフィルターを通した濾過滅菌を包含してもよい。滅菌のさらに別の手段は、薬物および任意の界面活性剤を含有する第1の溶媒から調製した濃縮物の濾過滅菌および水性希釈液の濾過滅菌である。次いでこれらは、好ましくは、隔離された滅菌環境中において、滅菌混合容器中で合わせられる。次いで懸濁液の混合、均質化およびさらなる処理が、無菌条件下において実施される。滅菌についてのさらに別の手順は、均質化工程の前、均質化工程の間、もしくは均質化工程の後の、ホモジナイザー自体の内部における加熱滅菌またはオートクレービングである。この加熱処理(treatment)後の処理(processing)は、無菌条件下で行なわれる。
【0123】
必要に応じて、溶媒を含まない懸濁物は、沈殿後の溶媒除去によって生成され得る。これは、遠心分離、透析、ダイアフィルトレーション、力場分画(force−filed fractionation)、高圧濾過、逆浸透および当該分野で公知の他の分離技術によって行われ得る。N−メチル−2−ピロリジノンの完全な除去を、代表的には1回〜3回連続の遠心分離の実施により行い;各遠心分離(18,000rpmで30分間)後に、上清をデカントして、廃棄した。有機溶媒を有しない懸濁液ビヒクルの新しい容量を、残った固体に添加し、混合物を均質化により分散させた。他の高剪断の混合技術がこの再構成工程において適用され得ることは、当業者に認識される。あるいは、溶媒を含まない粒子は、経口、肺、鼻、局所、筋肉内などのような種々の投与経路に対して望ましい種々の投薬形態へと処方され得る。
【0124】
さらに、界面活性剤のようないかなる望ましくない賦形剤は、上記パラグラフに記載した分離方法の使用により、より望ましい賦形剤に置換され得る。溶媒および第1の賦形剤は、遠心分離または濾過の後に上清と共に廃棄され得る。次いで、溶媒を含まず、かつ第1の賦形剤を含まない懸濁液ビヒクルの新しい容量が、添加され得る。あるいは、新しい界面活性剤が、添加され得る。例えば薬物、N−メチル−2−ピロリジノン(溶媒)、ポロキサマー188(第1の賦形剤)、デオキシコール酸ナトリウム、グリセロールおよび水からなる懸濁液は、遠心分離および上清除去の後にリン脂質(新しい界面活性剤)、グリセロールおよび水に置換され得る。
【0125】
本発明の粒子の例を、実施例3および実施例4に示す。
【0126】
(実施例3)
(ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム塩)を使用した1%イトラコナゾールのナノ懸濁物の調製)
溶液Aを、10mLのN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)中に1gのイトラコナゾールを溶解することによって調製した。100mgのポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム)および2.2gのグリセリンを含む水溶液(80mL)を、調製した。この水溶液(溶液B)を、水酸化ナトリウムを用いてpH8に調整し、さらに、100mLの最終溶液容量まで希釈した。25mL Erlenmeyerフラスコに、9mLの溶液Bを移した。激しく撹拌しながら、1mLの溶液Aを、溶液Bに添加した。得られたスラリーを、ピストンギャップホモジナイザー(Avestin C5)に移し、そして10,000psiにて1時間均質化した。均質化が完了した後、その懸濁物を、15cc遠心チューブ中におき、そして10,000rpmで25℃にて30分間遠心分離した。上清の流体を、慎重にデカントして、廃棄した。別の9mLの溶液Bを添加し、そのペレットを、ガラス棒を使用してスラリーになるまで破壊し、そしてそのスラリーを、第2の均質化のための容器に移した。残渣の固体を、さらなる約1mLの溶液Bを用いてそのチューブからリンスし、第1の部分と合わせた。そのスラリーを、均質化し、そして10,000rpmにて30分間遠心分離した。その上清の流体をデカントし、別の新しいアリコート(9mL)の溶液Bを添加し、そのペレットをガラス棒を用いてスラリーになるまで破壊し、次いでそのスラリーを均質化した。粒子分布を、静的光散乱(Horiba)および動的光散乱(Malvern)によって評価した。粒径の結果(静的光散乱によって測定した場合)を、図1に示す。動的光散乱によって得た大きさの分布のデータを、表1に示す。動的光散乱の結果(Malvern)を、下に記載する:
【0127】
【表2】

表1:実施例3において調製したナノ懸濁物についての動的光散乱の結果。
【0128】
(実施例4)
(ポロキサマー188、ビス(4−ブタンスルホン酸、ナトリウム塩)を使用して1%イトラコナゾールのナノ粒子と、従来の界面活性剤系(0.1%ポロキサマー188、0.1%デオキシコール酸ナトリウム)を使用して調製した1%イトラコナゾールのナノ粒子との、安定性の比較)
実施例3の方法によって調製したサンプルを、温度制御チャンバーにおいて5℃および40℃にて保存した。コントロールのサンプルを、同様の手順によって調製したが、0.1%(w/v)ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム塩)を、0.1%ポロキサマー188と胆汁酸塩である0.1%デオキシコール酸ナトリウムとの混合物によって置換した。1週間後、コントロールのユニットおよび実施例のユニットの粒径分布(Horiba)を、比較した。これらの結果を、表2に示す。
【0129】
表2は、40℃で1週間の保存が、コントロールの処方物および実施例の処方物の両方において粒子の成長を誘導したことを示した。しかし、本発明を使用して調製した実施例のユニットの安定性は、メジアン、90%の累積粒子分布および99%の累積粒子分布によって証明されるように、有意に、より安定であった。
【0130】
【表3】

表2:粒子の安定性に対する40℃における保存の効果。本発明の適用によって調製した1%イトラコナゾールのナノ懸濁物の安定性と、従来の界面活性剤系(0.1%ポロキサマー188、0.1%デオキシコール酸ナトリウム)を使用して調製した1%イトラコナゾールのナノ懸濁物の安定性との間の比較。
【0131】
実施例3の方法によって調製したサンプルを、17分間の合計サイクル時間(121℃における5分間の保持、6分間の排気)を使用してオートクレーブした(AMSCO、Eagle Series 2022)。粒径分布(Horiba LA−920)を、滅菌の前後にモニタリングした。その粒径分布を、図2および図3にて与える。
【0132】
オートクレービングの前の粒径分布とオートクレービングの後の粒径分布との比較(図3)によって示される通り、0.1%ポロキサマー188と0.1%デオキシコール酸ナトリウムとを使用して調製したナノ懸濁物に対する加熱の適用は、大規模な凝集および粒子の成長をもたらした。オートクレーブする前、体積加重の粒径のメジアンは、静的光散乱によって測定した場合、276nmの99パーセンタイル値を伴って、約132nmであった。オートクレーブした後、非常に著しい分布の広がりが、起こった−体積加重の粒径のメジアンは、4.49ミクロン(4,490nm)であった一方で、粒子分布についての99パーセンタイル値は、約23ミクロン(23,000nm)であった。
【0133】
対照的に、本発明の使用によって調製した1%イトラコナゾールのナノ懸濁物(ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム))に対する熱エネルギーの適用は、図3に示す通り、有意に低い粒子分布の広がりをもたらした。オートクレーブする前、静的光散乱によって測定した粒径のメジアンは、約130nmであり、そして99パーセンタイル値は、約732nmであった。滅菌後、滅菌後の粒径のメジアンは、約202nmであり、そしてその99パーセンタイル値は、約7.6ミクロンであった。
【0134】
同一の保存条件および同一のオートクレーブ条件下において、その粒子分布の結果は、本発明において開示されるポリマー誘導体(ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム)(ここで非イオン性の複数の疎水性セグメント、およびイオン性部分の両方が、単一分子中に構築される))の使用が、意外にも、従来の界面活性因子(ポロキサマー188、およびデオキシコール酸ナトリウム(ここで、そのポリマー(ポロキサマー188)は、同様に複数の疎水性セグメントを含むが、同じ分子内にイオン性部分を含まない))によって得られる安定性より大きい安定性を提供することを、確信的に示す。
【0135】
特定の実施形態が、例示され、記載されてきたが、本発明の精神を逸脱することなく多くの改変が想起され、保護の範囲は、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、実施例1において調製されるナノ懸濁物の粒径分布を示す。
【図2】図2は、ポロキサマー188とデオキシコール酸ナトリウムとによって作製されるナノ懸濁物(実施例3)の粒径分布を示す。
【図3】図3は、化合物と、ポロキサマー188,ビス(4−ブタンスルホン酸,ナトリウム)とによって作製されるナノ懸濁物(実施例3)の粒径分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】

の化合物であって、
xは、1〜300の整数であり;
yは、1〜300の整数であり;
zは、1〜300の整数であり;
およびRは、独立して、水素原子(H)、または式:
【化2】

のスルホネートであり、Rは、アルキル架橋基、シクロアルキル架橋基またはアリール架橋基であり、そしてRは、水素であるか、もしくは該スルホネートが、アニオンである場合、Rは、存在しないか、またはRが水素であるものと存在しないものとの混合物であるが、但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは、スルホン酸基であり;そして
、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基である;
化合物。
【請求項2】
前記ポリマー骨格は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのトリブロックコポリマーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、R、R、R、およびRは、水素であり、Rは、CHであり、xは、80であり、yは、27であり、かつzは、80であるか、またはxは、101であり、yは、56であり、かつzは、101である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、前記
【化3】

置換基は、ブチルスルホン酸、プロピルスルホン酸、ペンチルスルホン酸、ヘキシルスルホン酸、ヘプチルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、ウンデシルスルホン酸、またはドデシルスルホン酸である、化合物。
【請求項5】
前記置換基は、n−ブチルスルホン酸である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式:
【化4】

を有し、xは、50〜120であり、yは、20〜60であり、かつzは、50〜120であり;そしてRおよびR’は、独立して、存在しないか、水素もしくはカチオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
xは、80であり、yは、27であり、かつzは、80であるか、またはxは、101であり、yは、56であり、かつzは、101である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式:
【化5】

を有し、RおよびR’は、独立して、存在しないか、または水素もしくはカチオン、およびそれらの混合物である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
式:
【化6】

を有し、RおよびR’は、独立して、存在しないか、またはRおよびR’は、水素もしくはカチオン、およびそれらの混合物である、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
結晶形態、半晶質形態、非晶質形態またはそれらの混合形態である難溶性化合物と請求項1に記載の1以上の化合物とを含む、粒子組成物。
【請求項11】
前記難溶性化合物は、薬学的化合物、医療用化合物、診断用化合物、美容用化合物、または農業用化合物からなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマー骨格は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのトリブロックコポリマーである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
、R、R、R、およびRは、水素であり、Rは、CHであり、そして、xは、80であり、yは、27であり、かつzは、80であるか、または、xは、101であり、yは、56であり、かつzは、101である、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の組成物であって、前記
【化7】

置換基は、ブチルスルホン酸、プロピルスルホン酸、ペンチルスルホン酸、ヘキシルスルホン酸、ヘプチルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、ウンデシルスルホン酸、またはドデシルスルホン酸である、組成物。
【請求項15】
前記置換基は、n−ブチルスルホン酸である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記化合物は、式:
【化8】

の化合物であり、xは、50〜120であり、yは、20〜60であり、かつzは、50〜120であり;そしてRおよびR’は、独立して、存在しないか、水素もしくはカチオンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
xは、80であり、yは、27であり、かつzは、80であるか、または、xは、101であり、yは、56であり、かつzは、101である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記化合物は、
【化9】

であり、RおよびR’は、独立して、存在しないか、水素もしくはカチオン、およびそれらの混合物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
前記化合物は、
【化10】

であり、RおよびR’は、独立して、存在しないか、水素もしくはカチオン、およびそれらの混合物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項20】
前記粒子の平均有効粒径は、15nm〜200ミクロンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項21】
前記粒径は、15nm〜100ミクロンである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物は、15nm〜100ミクロンの有効平均粒径を維持するのに有効な量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項23】
前記粒径は、15nm〜50ミクロンである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
スルトンまたは置換アルキルスルホン酸の存在下においてポリアルキレングリコールを反応させる工程を包含する、請求項1に記載の化合物を合成する方法。
【請求項25】
前記スルトンは、式2:
【化11】

のスルトンであり、nは、1〜6である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記置換アルキルスルホン酸は、式3:
【化12】

の置換アルキルスルホン酸であり、nは、1〜20であり、そしてXは、Cl、Br、I、メシレート、トシレートおよびトリフレートからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ポロキサマー188と1,4ブタンスルトンとを反応させる工程を包含する、請求項8に記載の化合物を生成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−524393(P2008−524393A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546871(P2007−546871)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045321
【国際公開番号】WO2006/081000
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】