説明

ポリイミドの製造方法

【課題】新規なポリイミドの製造方法を提供する。
【解決手段】次式(I)で示される化合物を溶媒中で重合し、ポリイミドを固体にて析出させることを特徴とする、ポリイミドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドの製造方法に関し、より詳細には、細長い帯状体が集合した微粒子組織を有するポリイミドを製造することができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、電気絶縁性や高耐熱性等といった好ましい性質を有するため、種々の分野において用いられており、ポリイミドの製造方法についても、様々なものが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
特許文献1には、「表面性が損なわれることなく、弾性率や軟化温度を向上させることが可能な繊維、フィルムあるいは樹脂用成形材料として好適に添加することのできる、ポリイミドウィスカー及びその製造方法を提供する」(発明の詳細な説明中、段落番号0007)ためになされたものであり、段落番号0009に示される式(1)「で示されるパラフエニレンピロメリットイミドであり、かつウィスカーの径dが0.5nm<d<50nmであり、その長さが径の5倍以上であることを特徴とするポリイミドウィスカーであり、その製造方法においてその濃度が0.05〜30重量%のポリアミド酸の溶液を、脱水縮合剤を用いてイミド化することにより得られるポリイミドウィスカーの製造方法である。またポリアミド酸重合時にアミンもしくは酸無水物で末端封止するポリイミドウィスカーの製造方法である。」ものが開示されている。
特許文献2には、「芳香族ポリアミドマトリクス中に良好に分散し、物性を向上させるのに有効なポリイミドウィスカーとその製造方法」(発明の詳細な説明中、段落番号0015)を提供するためになされたものであり、段落番号0018に示される式(1)「に示す繰り返し単位を主成分とするポリイミドからなりかつウィスカーの径dが0.5nm<d<50nmであり、その長さが径の5倍以上であるポリイミドウィスカーであって、N−メチル−2−ピロリドン溶媒中、濃度0.1重量%のポリイミドウィスカー分散溶液のヘイズが20以下であることを特徴とするポリイミドウィスカー。」(発明の詳細な説明中、段落番号0017〜0019)及び「溶媒中、ピロメリット酸二無水物を主成分とする酸無水物とパラフェニレンジアミンを主成分とするジアミンとを反応させることによりポリアミド酸の溶液を得て、濃度が0.05〜30重量%のポリアミド酸の溶液を80℃以上に加熱した後、脱水縮合剤を添加してイミド化することを特徴とする、ウィスカーの径dが0.5nm<d<50nmであり、その長さが径の5倍以上であるポリイミドウィスカーの製造方法。」(発明の詳細な説明中、段落番号0024)が開示されている。
特許文献3には、「樹脂の補強剤としての適用の際により高い効果を発揮させることを目的とした、より分散性の向上したポリイミドウィスカーの製造方法を提供することにある。また分散性の良好なポリイミドウィスカーを提供する」(発明の詳細な説明中、段落番号0012)ためになされたものであり、「ピロメリット酸二無水物を主成分とする酸無水物とパラフェニレンジアミンを主成分とするジアミンとの重合反応から得られる濃度が0.05〜30重量%のポリアミド酸の溶液に、脱水縮合剤を添加してイミド化反応を行う際、アミン触媒として複素環式化合物を用いることを特徴とする」(発明の詳細な説明中、段落番号0014)段落番号0015に示される式(1)「に示す繰り返し単位を主成分とするポリイミドからなり、かつウィスカーの径dが0.5nm<d<50nmであり、その長さが径の3倍以上であるポリイミドウィスカーの製造方法」(発明の詳細な説明中、段落番号0016)が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−168858号公報(例えば、発明の詳細な説明中、段落番号0007〜0010等)
【特許文献2】特開2004−285484号公報(例えば、発明の詳細な説明中、段落番号0015〜0024等)
【特許文献3】特開2004−307626号公報(例えば、発明の詳細な説明中、段落番号0012〜0016等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のポリイミドの製造方法は、上述の如く「濃度が0.05〜30重量%のポリアミド酸の溶液を、脱水縮合剤を用いてイミド化することにより得られるポリイミドウィスカーの製造方法である。またポリアミド酸重合時にアミンもしくは酸無水物で末端封止するポリイミドウィスカーの製造方法である。」ものであり、ポリアミド酸溶液と脱水縮合剤とを用いる必要があった。
特許文献2に開示のポリイミドの製造方法は、上述の如く「溶媒中、ピロメリット酸二無水物を主成分とする酸無水物とパラフェニレンジアミンを主成分とするジアミンとを反応させることによりポリアミド酸の溶液を得て、濃度が0.05〜30重量%のポリアミド酸の溶液を80℃以上に加熱した後、脱水縮合剤を添加してイミド化することを特徴とする」ものであり、これもポリアミド酸溶液と脱水縮合剤とを用いる必要があった。
特許文献3に開示のポリイミドの製造方法は、上述の如く「ピロメリット酸二無水物を主成分とする酸無水物とパラフェニレンジアミンを主成分とするジアミンとの重合反応から得られる濃度が0.05〜30重量%のポリアミド酸の溶液に、脱水縮合剤を添加してイミド化反応を行う際、アミン触媒として複素環式化合物を用いる」ものであり、これもポリアミド酸溶液と脱水縮合剤とを用いる必要があった。
このような脱水縮合剤としては「無水酢酸、無水安息香酸、トリフルオロ酢酸二無水物といった酸無水物;ホスゲン、塩化チオニル、塩化トシル、塩化ニコチル等の塩化物;三塩化リン、亜リン酸トリフェニル、ジエチルリン酸シアニドのようなリン化合物;N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドのようなN,N’−2置換カルボジイミドといった縮合剤」(特許文献1、段落番号0030)を用いるものであり、脱水縮合剤の吸水を防止する等といった取り扱いに注意が必要であることから、製造方法の実施を複雑化するといった問題があった。
【0005】
このような従来のポリイミドの製造方法に鑑み本発明はなされたもので、本発明においては、新規なポリイミドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、所定の化合物をモノマーとして用い、該化合物を溶媒中で重合させることでポリイミドを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のポリイミドの製造方法(以下、「本製造方法」という。)は、次式(I)で示される化合物(以下、「化合物(I)」という。)を溶媒中で重合し、次の式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを固体にて析出させることを特徴とする、ポリイミドの製造方法である。
【化1】

(式中、X1とX2とのうちいずれか一方は水素原子であり、いずれか他方は水素原子、アルキル基、アリール基を意味し、X3は水素原子又はアシル基を意味する。)
【化2】

【0007】
また、本製造方法には、以下(イ)〜(リ)の態様が含まれる。
(イ)式(I)中のX3が水素原子である、上記製造方法。
(ロ)式(I)中のX1とX2とのうち前記いずれか他方がメチル基又はエチル基である、上記製造方法。
(ハ)化合物(I)の全てが前記溶媒中に完全に溶解する溶解ステップと、該溶解ステップの後、式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが溶液中から固体として析出する析出ステップと、を含むものである、上記製造方法。
(ニ)前記溶媒が芳香族化合物を含むものである、上記(ハ)の製造方法。
(ホ)前記芳香族化合物が、ジイソプロピルナフタレン、ジエチルナフタレン、エチルーイソプロピルナフタレン、シクロヘキシルジフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニル、ジベンジルトルエンよりなる群より選ばれる1又は2以上のものの混合物である、上記(ニ)の製造方法。
(ヘ)前記溶媒がジベンジルトルエンである、上記(ホ)の製造方法。
(ト)重合が、240℃乃至350℃の温度範囲で行われるものである、上記製造方法。
(チ)重合に用いる化合物(I)から100%の収率にて、前記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが生成すると仮定した場合に生成する該ポリイミドの重量W(g)が、前記溶媒の体積V(ml)に対する割合(パーセント)((W/V)×100)が、0.5乃至12.0の範囲である、上記製造方法。
(リ)生成するポリイミドが、細長い帯状体が集合した微粒子組織を形成するものである、上記製造方法。
【0008】
また、本発明は、ポリイミドを提供する。
第1の本発明のポリイミド(以下、「第1本ポリイミド」という。)は、前述の本製造方法により得られうる、ポリイミドである。
第2の本発明のポリイミド(以下、「第2本ポリイミド」という。)は、次式(II)で示される繰り返し単位を有し、細長い帯状体が集合した微粒子組織を有するポリイミドである。
【化3】

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本製造方法は、上記式(I)で示される化合物(I)を溶媒中で重合(化合物(I)が互いに縮合重合する。)し、上記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを固体にて析出させることを特徴とする、ポリイミドの製造方法である。本製造方法のように、化合物(I)を溶媒中で縮合重合させ、上記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを固体にて析出させることによるポリイミドの製造方法は従来知られておらず、本製造方法は新規なポリイミドの製造方法である。本製造方法は、前述した特許文献1〜3に開示のポリイミドの製造方法のように脱水縮合剤のような重合を促す重合剤等(上記のように、かかる重合剤等の取り扱いは、通常、煩雑である。)を必須とするものではなく、この点からも本製造方法は、(従来のポリイミドの製造方法に比し)簡単にポリイミドを製造することができる。
【0010】
モノマーたる化合物(I)を示す上記の式(I)中、X1とX2とのうちいずれか一方は水素原子であり、いずれか他方は水素原子、アルキル基、アリール基を意味し、X3は水素原子又はアシル基を意味する。
X1とX2とのうちいずれか一方は水素原子であるが、いずれか他方(X1が該いずれか一方(水素原子)の場合にはX2が該いずれか他方であり、X2が該いずれか一方(水素原子)の場合にはX1が該いずれか他方である。)は水素原子、アルキル基、アリール基を意味するが、好ましくはアルキル基であり、その中でも最も好ましくはメチル基又はエチル基である。ここにアルキル基としては、炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基など直鎖状及び分岐状アルキル基が例示できるが、最も好ましくはメチル基又はエチル基である。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等を挙げることができる。
そして、X3は水素原子又はアシル基を意味するが、好ましくは水素原子である。また、このアシル基はRCOー(但しRはアルキル基又はアリール基を意味する。)として示されるが、Rとしてはメチル基、エチル基、フェニル基等を挙げることができるが、好ましくはメチル基である。
【0011】
化合物(I)は、種々の方法により調製されてよく何ら制限されるものではないが、X3が水素原子の場合であれば、4−ニトロ無水フタル酸(4ーニトロー1,2ーベンゼンカルボン酸無水物:4−Nitrophthalic anhydride)(4NPAH。図1参照)にアルコールを付加させることで、4NPAHの5員環を開環させた後、ニトロ基を還元しアミノ基とすれば、X1とX2とのうちいずれが水素原子となるかにより2種の構造異性体が生じるので、これら2種の構造異性体各々を分離精製するようにしてもよい。なお、特段問題がなければ(例えば、後述の実施例のように該2種の構造異性体各々によって生成するポリイミドの組織や収率等があまり変わらない場合等)、該2種の構造異性体各々を分離精製することなく混合物として用いるようにしてもよい。
【0012】
化合物(I)を重合させる際の前記溶媒は、化合物(I)と不要な反応を起こさず化合物(I)を溶解させ、化合物(I)同士が互いに重合する条件(例えば、重合温度)にて安定であり、さらに重合にて生成したポリイミドを固体(例えば、粉体や粒体等)として析出させることができるものであればいかなるものであってもよく何ら制限されるものではないが、化合物(I)と不要な反応を起こさず、かつ、化合物(I)同士が互いに重合する重合温度(通常は高温)にて安定であることからは、高沸点(該重合温度よりも高い)の有機溶媒が好ましく、芳香族化合物たる化合物(I)を安定に十分溶解させることからは芳香族化合物を含むものであることが好ましい(前記溶媒が芳香族化合物からなる場合はさらに好ましい。)。該芳香族化合物としては、ジイソプロピルナフタレン、ジエチルナフタレン、エチルーイソプロピルナフタレン、シクロヘキシルジフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニル、ジベンジルトルエンよりなる群より選ばれる1又は2以上のものの混合物であってもよく、とりわけ前記溶媒がジベンジルトルエンであれば前記溶媒に要求される上述の性質を前記溶媒が有するので好ましい。なお、このようなジベンジルトルエンは、高温において使用される熱媒体として市販されているので、このような市販品を前記溶媒として用いるようにしてもよく、市販品の一例を挙げれば、松村石油株式会社製の商品名「バーレルサーム400」(高沸点高温度用熱媒体油:主成分はジベンジルトルエン混合物)を用いてもよい。
【0013】
本製造方法は、化合物(I)の全てが前記溶媒中に完全に溶解する溶解ステップと、該溶解ステップの後、式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが溶液中から固体として析出する析出ステップと、を含むものであってもよい。
まず、溶解ステップにおいて化合物(I)の全てが前記溶媒中に完全に溶解して溶液となり、溶解ステップの後の析出ステップにおいて上記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが該溶液中から固体として析出するので、該溶液に完全に溶解した溶質たる化合物(I)が重合反応し、その重合反応によって生成したポリイミドが該溶液中から固体として析出する。その結果、溶液中から固体として析出するポリイミドは、粉体又は粒体の微粒子として析出するので、その後のポリイミドの使用(例えば、プラスチックを強化するためにプラスチックに練り込む補強材として用いる。)や取り扱いを便ならしめる。このことは所謂、塊状重合法によって化合物(I)を重合する場合(本製造方法のように溶媒を用いずに、モノマーである化合物(I)のみを重合温度に昇温する場合)には塊状のポリイミドが生成し、取り扱いが困難であることとは大きく異なる。そして、該溶液に完全に溶解した溶質たる化合物(I)が重合反応し、その重合反応によって生成したポリイミドが該溶液中から固体として析出するようにすることで、その作用や機構は必ずしも明らかではないが、細長い帯状体が集合した微粒子組織をポリイミドが形成するようにできる。この「細長い帯状体が集合した微粒子組織」については、後で詳述する。
なお、かかる細長い帯状体が集合した微粒子組織を有するポリイミドを生成させるには、少なくともポリイミドが固体として析出するとき(析出ステップ)における該溶液はあまり流動させない方が好ましく、とりわけ撹拌は行わないことが好ましい。
また、析出ステップにて固体として析出した式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドは、前記溶媒と分離され回収される。この回収は、液体の溶媒と固体(例えば、粉体や粒体)のポリイミドとを分離することにより行われ、例えば、濾過、静置分離、遠心分離等のような方法によればよく、回収されたポリイミドに不純物等が付着していれば該不純物を洗浄する等により取り除くことができる。
【0014】
化合物(I)を溶媒中で重合させる際の温度は、あまり低いと化合物(I)同士の重合反応がうまく進まず(重合反応速度が小さくなりすぎる)、重合反応が起こらなかったり反応時間が長くかかりすぎたりする問題を生じうるし、あまり高いと化合物(I)や前記溶媒の熱分解が生じうるので、使用する化合物(I)や前記溶媒の種類等に応じ、これらを両立する範囲とされることが好ましく、通常、(下限として)好ましくは240℃以上であり、より好ましくは260℃以上であり、最も好ましくは280℃以上であり、逆に(上限として)好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、最も好ましくは330℃以下である(従って、通常、好ましくは240℃〜350℃、より好ましくは260℃〜340℃、最も好ましくは280℃〜330℃である。)。
【0015】
化合物(I)を溶媒中で重合させる際の時間は、所望程度のポリイミドが析出するように適宜定められればよく何ら制限されるものではないが、あまり短いと化合物(I)同士の重合反応がうまく進まず十分なポリイミドを得ることができず、あまり長いと得られるポリイミド量があまり増加しないのに無駄な時間を要するので、使用する化合物(I)、重合温度、前記溶媒の種類等に応じ、これらを両立する範囲とされることが好ましく、通常、(下限として)好ましくは1時間以上であり、より好ましくは2時間以上であり、最も好ましくは3時間以上であり、逆に(上限として)好ましくは48時間以下であり、より好ましくは36時間以下であり、最も好ましくは24時間以下である(従って、通常、好ましくは1時間〜48時間、より好ましくは2時間〜36時間、最も好ましくは3時間〜24時間である。)。
【0016】
重合に用いる前記溶媒の体積に対する化合物(I)の割合(即ち、モノマーたる化合物(I)の前記溶媒中の濃度)は、あまり大きいと化合物(I)がうまく前記溶媒に溶解せず溶媒を用いて生成するポリイミドの組織をうまく制御できない問題(例えば、塊状重合に近い状態が生じうる。)が生じうるし、あまり小さいと、固体として析出するポリイミドの量が減少(前記溶媒に溶解することでポリイミドとして析出しない。)しポリイミドの収率が低下する問題を生じうるので、これらを両立する範囲とされることが好ましい。
重合に用いる化合物(I)から100%の収率にてポリイミド(上記の式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミド)が生成すると仮定した場合に生成するポリイミドの重量W(g)(即ち、Wは、重合に用いる化合物(I)が重合によりポリイミドとなる際、100%収率にてポリイミドとなったと仮定した場合に脱離する成分を除いた質量である。)を、前記溶媒の体積V(ml)にて除した値に100を乗じた値((W/V)×100)(単位:g/ml))としてモノマーたる化合物(I)の前記溶媒中の濃度を示せば、通常、(下限として)好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.8以上であり、最も好ましくは1.0以上であり、逆に(上限として)好ましくは12.0以下であり、より好ましくは11.0以下であり、最も好ましくは10.0以下である(従って、通常、好ましくは0.5〜12.0、より好ましくは0.8〜11.0、最も好ましくは1.0〜10.0である。)。
【0017】
本製造方法においては、化合物(I)を前記溶媒に溶解させ、前記溶媒中で化合物(I)を重合させポリイミドとし、前記溶媒中にポリイミドを固体として析出させることで、生成するポリイミドの組織を細長い帯状体が集合した微粒子組織を形成するよううまく制御することができる。
ここに「細長い帯状体」とは、長手方向に沿った長さLと、該長手方向に対する垂直な断面における最大の寸法D(該断面において内部を通過する最も長い線分の長さをいう。)と、の比率(L/D)が、通常5以上のものをいい、好ましくは10以上のものをいい、最も好ましくは20以上のものをいう(比率(L/D)の上限は特にないが、通常、数百(例えば、200〜300)程度以下である。)。また、「細長い帯状体が集合した微粒子組織」の大きさ(直径)は、特に制限はされないが、通常、顕微鏡(例えば、数百倍以上の倍率の電子顕微鏡)観察により個々の微粒子が看取される程度のものであり、通常、(下限として)好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、最も好ましくは1μm以上であり、逆に(上限として)好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、最も好ましくは10μm以下である(従って、通常、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは0.5μm〜50μm、最も好ましくは1μm〜10μmである。)。該比率(L/D)の調整は、DとLとのいずれか一方又は両方を調節すればよく、例えば、Dは、生成するポリイミド(上記の式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミド)に対する貧溶媒を前記溶媒として用いることで減少させることができ(より貧溶媒中で重合することで、析出するポリイミドオリゴマーの過飽和度が増大し、小さな結晶核が多数生成することで、結果的にDが減少する。)、Lは、結晶成長を継続させるようにすれば増加する(例えば、モノマーやオリゴマーを重合系(前記溶媒)内に添加して結晶成長を継続させるようにしてもよい。)。
かかる細長い帯状体が集合した微粒子(粉体、粒体等)組織を有するポリイミドは、繊維状の微細組織を有するものであり、他のプラスチック(樹脂材料)を強化するためにプラスチックに練り込み混合する補強材(補強用フィラー又は補強用充填材とも呼ばれるもので、従来はガラス繊維等が多用されてきた。)として効果的に用いられるものである。とりわけポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルニトリル等といった分子内に極性を有するエンジニアリングプラスチックをベース樹脂とし、これに本発明の「細長い帯状体が集合した微粒子組織を有するポリイミド」を添加すれば、ベース樹脂と本発明のポリイミドとの親和性(いずれも分子内に極性を有する。)により効果的な補強を行うことができる。
【0018】
第1本ポリイミド及び第2本ポリイミドいずれも、後述するように広角X線散乱(WAXS)測定を行うとアモルファス(非晶質構造)由来のハロー(幅の広いピーク)が観察されず高結晶性であることを示し、さらに常温(25℃)の濃硫酸(具体的には97%)に24時間浸漬しても不溶であり、十分な重合度と高結晶性と耐薬品性とを有するものである。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を挙げる。しかしながら、これら実施例によって、本発明は何ら制限されるものではない。
【0020】
(合成例1):1EAPと2EAPとの混合物の合成
1EAPと2EAPとの混合物(以下、「EAP混合物」という。)を、図1に示す反応式に従い合成した(なお、1EAP及び2EAPは、それぞれ図2(a)及び(b)に示す構造の化合物であり、いずれも上述の化合物(I)の一つである。)。
具体的には、4−ニトロ無水フタル酸(4ーニトロー1,2ーベンゼンカルボン酸無水物:4−Nitrophthalic anhydride)(以下、「4NPAH」ということもある。)19gと、無水エチルアルコール120mlと、を200mlのフラスコ(以下、「フラスコA」という。)に入れた。なお、4NPAHは東京化成工業株式会社の特級試薬を用い、無水エチルアルコールはナカライテスク社の特級試薬を用いた。フラスコAにコンデンサー(水冷)と加熱装置(具体的には電熱器)を取り付け、フラスコAを加熱し、大気圧下で3時間還流させて反応(図1中、反応1)させた。その後、フラスコAを略室温まで放冷した。
【0021】
フラスコAの内容物全量を、水素化用の反応容器(以下、「反応容器B」という。)に移し、Pd/C(具体的には、Aldrich社製の商品名「Palladium,5wt.% on activated carbon」を用いた。)5%(担持量)粉末0.45gを水素化触媒として反応容器Bに入れ、反応容器B内を水素気流にて置換しつつマグネチックスターラーにて撹拌し、室温にて約12時間(一晩)水素化反応(図1中、反応2)させた。
反応容器B中の内容物を、濾過操作により触媒Pd/Cを濾過残として除去し、濾液を回収した。該回収した濾液をロータリエバポレーターにかけて残留しているエチルアルコール等を留去し濃縮して油状物質(オイル状)を得た。該得られた油状物質を常温(約25℃)にて24時間程度風乾し、濃縮油状物質を得た。
該濃縮油状物質は、粘性がある液体中に微細固体が分散した状態であり、該微細固体を採取するため、該濃縮油状物質20g程度を蒸留水100mlに注入撹拌し水中に懸濁させ懸濁液とした後、該懸濁液を濾紙を用いた濾過操作により濾過残として微細固体(以下、「粗製固体」という。)を得た。得られた粗製固体を乾燥させ、該乾燥させた粗製固体の質量を測定すると11.5gであり、用いた19gの4NPAHの重量に対し収率60.6%であった。
【0022】
上記した合成例1の操作を図1を参照しつつ簡単に説明する。まず、4NPAHと無水エチルアルコールとをフラスコA中にて大気圧下で3時間還流させて反応させることで、図1中の反応1に示すように4NPAHの酸素原子を含む5員環が開環しエチルアルコールが付加することで、図1中のニトロフタル酸モノエチル(なお、ニトロ基は、ベンゼン環に結合したカルボキシル基から見てパラ位に存在する場合とメタ位に存在する場合とがある。)がフラスコA中に生成する。該生成したニトロフタル酸モノエチル(以下、「ENP」という。)は、該付加したエチルアルコール由来のエチル基及び水素原子の位置により2種類の構造異性体が存し、フラスコAにはこれら2種類の構造異性体が共存する。具体的には、ENPのベンゼン環に付加したニトロ基から見て、メタ位とパラ位とのいずれのカルボキシル基がエチル基によりエステル化されるかによって2種類の構造異性体を生じる。
【0023】
フラスコAの内容物(上記のENPを含む。)を反応容器Bに移し、Pd/C粉末を水素化触媒として反応容器Bに入れ、反応容器B内を水素気流にて置換しつつ水素化反応させることで、図1の反応2によりENPのニトロ基が還元されてアミノ基となった図1のEAP混合物が生成する。
このため上述したように、反応容器B中の内容物から濾過により触媒Pd/Cを除去し、濾液をロータリエバポレーターにかけて残留しているエチルアルコール等を留去し、濃縮して油状物質(オイル状)を得た後、常温(約25℃)にて24時間程度風乾させ得られた濃縮油状物質に含まれる微細固体を回収することで得た粗製固体には、上記したENPの2種類の構造異性体それぞれに対応した2種類の構造異性体(図2中の(a)及び(b)にて示される2種類の異性体である。)を含む。具体的には、EAPのベンゼン環が有するアミノ基から見て、メタ位とパラ位とのいずれのカルボキシル基がエチル基によりエステル化されるかによって2種類の構造異性体が生じるが、パラ位のカルボキシル基がエチル基によりエステル化されたもの(図2中、(a))を「1EAP」と呼び、メタ位のカルボキシル基がエチル基によりエステル化されたもの(図2中、(b))を「2EAP」と呼ぶ。
【0024】
(分離例1):1EAPと2EAPとの分離
上述のように、粗製固体には、ENPの2種類の構造異性体それぞれに対応した2種類の構造異性体(図2中の(a)及び(b)にて示される2種類の異性体である。)が含まれるので、これら1EAPと2EAPとを図3及び図4の工程に従って再結晶操作(晶析操作)によりそれぞれ分離精製した。
まず、粗製固体10gを混合溶媒80mlに投入し、約80℃まで加熱し撹拌して溶解(図3中、ステップ1)させた後、約1℃/時間の冷却速度にて20℃まで冷却(図3中、ステップ2)した。冷却物中には析出物が生じたので、冷却物を濾紙を用いた濾過操作(図3中、ステップ3)により濾過残として第1析出物を得た。なお、該混合溶媒としては、酢酸エチルとn−ヘキサンとを体積比5:1で混合したものを用いた。
【0025】
第1析出物7gを酢酸エチル30mlに投入し、加熱し撹拌して完全に溶解(図3中、ステップ4)させた後、約1℃/時間の冷却速度にて20℃まで冷却(図3中、ステップ5)した。冷却物中には析出物が生じたので、冷却物を濾紙を用いた濾過操作(図3中、ステップ6)により濾過残として第2析出物(黄色)を得ると共に、濾液(以下、「第2濾液」という。)を得た。第2析出物を乾燥し質量を測定したところ3.0gあり、用いた第1析出物7gに対して収率42.8%であった。
上記した第2濾液をロータリエバポレーターにかけて酢酸エチルを完全に留去(図3中、ステップ7)し第3析出物を得た。第3析出物を減圧下にて乾燥(図3中、ステップ8)させ、乾燥第3析出物を得た。
【0026】
図3に示した操作により得られた乾燥第3析出物を図4に示す操作により精製した。
まず、乾燥第3析出物約5gを蒸留水70mlに投入し、45℃まで加熱し約1時間撹拌し(図4中、ステップ10)、第3析出物懸濁液を得た。第3析出物懸濁液を濾紙を用いた濾過操作(図4中、ステップ11)により不溶物を濾過残として回収し、第4析出物2.2gを得た。
第4析出物約2gをトルエン(特級試薬)100mlに投入し、約120℃まで加熱し撹拌して溶解(図4中、ステップ13)させた後、約2℃/時間の冷却速度にて25℃まで冷却(図4中、ステップ14)した。冷却物中には析出物が生じたので、冷却物を濾紙を用いた濾過操作(図4中、ステップ15)により濾過残として第5析出物(淡黄色)を得た。
同様に、第5析出物約1.7gをトルエン(特級試薬)90mlに投入し、約120℃まで加熱し撹拌して溶解(図4中、ステップ16)させた後、約2℃/時間の冷却速度にて25℃まで冷却(図4中、ステップ17)した。冷却物中には析出物が生じたので、冷却物を濾紙を用いた濾過操作(図4中、ステップ18)により濾過残として第6析出物(白色)を得た。
最後に、第6析出物約1.3gをトルエン(特級試薬)90mlに投入し、約120℃まで加熱し撹拌して溶解(図4中、ステップ19)させた後、約2℃/時間の冷却速度にて25℃まで冷却(図4中、ステップ20)した。冷却物中には析出物が生じたので、冷却物を濾紙を用いた濾過操作(図4中、ステップ21)により濾過残として第7析出物(白色)を得た。第7析出物を乾燥させ質量を測定したところ0.65gあり、用いた乾燥第3析出物約5gに対して収率13.0%であった。
【0027】
以上のようにして得られた粗製固体、第2析出物及び第7析出物の3種類の試料をDSC(示差走査熱量計:Perkin Elmer社製の型番TAC 7/DXを用いた。)にて融点を測定したところ、それぞれ110℃(粗製固体)、157℃(第2析出物)及び174℃(第7析出物)であった。
なお、このDSCの測定条件は、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分であった。
【0028】
これら粗製固体、第2析出物及び第7析出物の3種類の試料を赤外分光計(日本分光社製の型番FT/IRー410を用いた。)にて分光分析して得られたチャートを図5に示した。図5は、横軸に波数(Wavenumber)(単位:cmー1)をとり、縦軸に吸光度(Absorbance)(上方向に吸光度が大きくなるよう描いている。なお、かっこ内の「a.u.」は任意強度(arbitrary unit)を意味している。)をとっている。図5には、(イ)、(ロ)及び(ハ)の3本のグラフが同じ座標系に描かれているが、これら(イ)は粗製固体を試料として用いた場合、(ロ)は第2析出物を試料として用いた場合、そして(ハ)は第7析出物を試料として用いた場合、をそれぞれ示している。これら図5中の(ロ)は第2析出物が1EAPであり、図5中の(ハ)は第7析出物が2EAPであることを示している。なお、図5中、「Amino N−H stretching」とは第1アミンのN−H伸縮振動に基づく吸収であり、「COOH stretching」とはカルボキシル基のO−H伸縮振動に基づく吸収であり、「CH,CH stretching」とはエチル基のC−H伸縮振動に基づく吸収であり、そして「Ether and Carboxylic acid(C=O) stretching」とはエステル結合及びカルボキシル基のC=O伸縮振動に基づく吸収である。
なお、この赤外分光分析の測定条件は、測定領域4000cmー1〜500cmー1、透過モード、KBr錠剤法であった。
【0029】
さらに、粗製固体、第2析出物及び第7析出物の3種類の試料をプロトン(H)核磁気共鳴分析法(NMR)にて分析して得られたチャートを図6に示した。図6は、日本電子社製の型番JNM−AL300を用いて分析したものであり、横軸に、TMS(テトラメチルシラン)を基準化合物としたときの化学シフト(ppm)を示し、縦軸にシグナルを示したものである。図6には、(イ)、(ロ)及び(ハ)の3本のグラフが同じ座標系に描かれているが、これら(イ)は粗製固体を試料として用いた場合、(ロ)は第2析出物を試料として用いた場合、そして(ハ)は第7析出物を試料として用いた場合、をそれぞれ示している。一方、図7は、(a)に1EAPの構造を示し、(b)に2EAPの構造を示したものであり、それぞれの水素原子(プロトン)にa、b、c、d、e、f、a’、b’、c’、d’、e’、f’と位置を示した(プライム「’」が付されたものが2EAPを示し、それが付されていないものは1EAPを示している。)。
図6の(ロ)及び(ハ)に示されたピークの化学シフトと、図7の(a)及び(b)に示したa、b、c、d、e、f、a’、b’、c’、d’、e’、f’の位置の水素原子の予想化学シフトと、を比較すると、図6の(ロ)及び(ハ)に示された各ピークのa、b、c、d、e、f、a’、b’、c’、d’、e’、f’のように各ピークと図7に示した構造式の水素位置とがうまく対応することが明らかになった。このことからも図6の(ロ)は第2析出物が1EAP(図7(a))であり、図6の(ハ)は第7析出物が2EAP(図7(b))であることを確認した。
【0030】
(合成例2及び分離例2):1HAPと2HAPとの合成及び分離
上述した1EAPと2EAPとの合成例1においてフラスコAに注入した無水エチルアルコール120mlの代わりに、ナカライテスク社の特級試薬である無水1−ヘキサノール(ヘキシルアルコール)114mlを用い、上記した合成例1及び分離例1と同様の実験操作により、図20(a)及び(b)に示すような1ーヘキシル 4ーアミノフタレート(図20(a)。以下、「1HAP」という)及び2ーヘキシル 4ーアミノフタレート(図20(b)。以下、「2HAP」という)を合成し、分離した。なお、1HAP及び2HAPいずれも上述の化合物(I)の一つである。
【0031】
(重合例)
上記のようにして得た1EAP、2EAP及び2HAPを用いて重合実験を行った。
図8は、重合実験に用いた重合装置11を示す概念図(断面図)である。図8を参照して、重合装置11について説明する。
重合装置11は、三口のフラスコ21と、フラスコ21を温度制御下にて加熱する加熱器31(所謂、マントルヒータをここでは使用している。)と、フラスコ21の内部23に挿入された撹拌器41と、フラスコ21の内部23に窒素ガスを導入する窒素導入管51と、フラスコ21の内部23からの気体を導出する気体導出管61と、を有してなる。
フラスコ21は、下部が加熱器31の加熱面に包囲されており、内部23に存する溶媒13に先端(検出端)が潜入した熱電対温度計(図示せず)によって加熱器31は内部23温度を検知し温度制御する。加熱器31は、電気ヒータによりフラスコ21を外面から熱するものであり、スイッチ33を入れた後、温度調節つまみ35を操作することで設定温度を調整することができ(設定温度表示窓37に設定温度が表示される。)、該熱電対温度計(図示せず)により検出される温度(現在温度表示窓39に表示される。)が設定温度になるよう発熱量が制御される。
フラスコ21が有する最も大きな口には、上端が回転装置(図示せず)に連結された撹拌棒43が貫入されており、撹拌棒43の下端には撹拌羽根45が取り付けられており、該回転装置により回転されるこれら撹拌棒43及び撹拌羽根45によって撹拌器41が構成されている。
フラスコ21が有する他の2の口には、所定の流量によって窒素ガスを供給する窒素ガス供給装置(図示せず)に接続された窒素導入管51と、フラスコ21の内部23からの気体を導出する気体導出管61と、が内部23に連通するように取り付けられている。これによってフラスコ21の内部23の雰囲気は、常に窒素導入管51から導入される窒素ガスによって置換されている(かかる窒素ガス置換により、1EAP及び/又は2EAPや2HAPをモノマーとして縮合重合する際に生じるエチルアルコールや水が内部23から除かれる。)。
【0032】
上述のような重合装置11を用いて、大略次のように重合を行った。
第1に、フラスコ21に溶媒13(体積:V(ml))注入し、図8に示したように重合装置11を組み立てた後、加熱器31のスイッチ33を入れ、温度調節つまみ35を操作して設定温度まで溶媒13を加熱する(前記回転装置により撹拌器41を適宜回転させ、溶媒13を撹拌しつつ加熱する。)。
第2に、溶媒13が設定温度まで加熱されたら(現在温度表示窓39の表示と、設定温度表示窓37の表示と、が略一致する。)、モノマー粉体(質量(g))をフラスコ21の内部23に投入する(モノマー粉体の内部23への投入は、窒素導入管51をフラスコ21の口から一時抜き取って、該口から行えばよい。)。
第3に、投入したモノマー粉体が溶媒13に完全に溶解した後(溶解ステップ)、前記回転装置による撹拌器41の回転を停止し、溶媒13の撹拌を止める(上記第2にてモノマー粉体をフラスコ21内部23に投入してから所定の反応時間が経過するまでこのままの状態(析出ステップ)を保持する(溶媒13を設定温度に保つ)。)。この保持状態において、ポリイミドが溶液中から微細な固体(粉体等)として析出する。
第4に、第2にてモノマー粉体をフラスコ21内部23に投入して所定の反応時間(6時間)が経過したら、フラスコ21内部23に存する内容物を濾過する。この濾過は、ほぼ設定温度近くで行うので、かかる高温にも耐えられるガラス繊維フィルター(具体的には、柴田科学株式会社製の型番「3GP5.5 円筒ロート型ガラスろ過器」を用いる。)を用いる。
第5に、第4の濾過にて得た濾過残をnーヘキサンにて十分洗浄した後、さらにアセトンにて十分洗浄し、十分乾燥させた。この乾燥させた物を「生成物」という。
なお、該所定の反応時間は、ここでは具体的には6時間とした。
【0033】
種々の条件によって上記の重合実験を行った結果を図9に示す。
図9中の各項目については、次の内容を示している。
「実験番号」とは、各実験操作を示す番号である。
「モノマー濃度」とは、フラスコ21の内部23に投入されたモノマー粉体から100%の収率にてポリイミド(上記の式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミド)が生成すると仮定した場合に生成するポリイミドの重量W(g)を、溶媒13の体積V(ml)(なお、ここでは具体的には、V=20mlとした。)にて除した値に100を乗じた値((W/V)×100)(単位:g/ml)である。具体的には、図9中の実験番号1においては1EAP:0.288gを用い、実験番号2においては1EAP:0.577gを用い、実験番号3においては1EAP:0.577gを用い、実験番号4においては1EAP:0.577gを用い、実験番号5においては1EAP:0.865gを用い、実験番号6においては1EAP:1.442gを用い、実験番号7においては1EAP:2.8835gを用い、実験番号8においては1EAP:0.865gを用い、実験番号9においては1EAP:0.865gを用い、実験番号10においては1EAP:0.288gを用い、実験番号11においては1EAP:0.260gと2EAP:0.028gとの混合物(合計0.288g)を用い、実験番号12においては1EAP:0.288gと2EAP:0.288gとの混合物(合計0.576g)を用い、実験番号13においては2EAP:0.577gを用い、実験番号14においては2HAP:0.407gを用いた。図9中の実験番号1を例にとれば、上述のように1EAPを0.288g用いたので、これに145/209を乗じて(なお、145はポリイミドの繰り返し単位当たりの分子量であり、209は1EAPの分子量である。)W=0.2gであるので、モノマー濃度((W/V)×100)=1.0となった。他の実験番号についてもこれと同様に計算できる。
「モノマー比率」とは、(実験番号14を除き)フラスコ21の内部23に投入されたモノマー粉体の質量(g)中の1EAPと2EAPとのモル比率(%)であり、該モノマー粉体中の1EAPのモル数をm1(モル)とし、2EAPのモル数をm2(モル)とすれば、((m1/m2)×100)(%)にて示される(即ち、モノマー比率が100とは用いたモノマー粉体の全部が1EAPであり、モノマー比率が0とは用いたモノマー粉体の全部が2EAPであることを示す。)。なお、実験番号14は、用いたモノマーの全部が2HAPである。
「使用溶媒」とは、用いた溶媒13の種類であり、図9中の「BT4」とは松村石油株式会社製の商品名「バーレルサーム400」(高沸点高温度用熱媒体油:主成分はジベンジルトルエン混合物)であり、「DPS」とは東京化成工業株式会社製のジフェニルスルホンであり、「LPF」とはナカライテスク社製の流動パラフィンであり、そして「BT4/LPF=50/50」とはこれらBT4とLPFとを50体積%ずつ(即ち、体積基準で半々)混合したものである。
「設定温度」とは、加熱器31にて設定した設定温度(単位:℃)である。
「収率」とは、用いたモノマーが100%の収率にてポリイミド(上記の式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミド)を生成すると仮定した場合に生成するポリイミドの重量W(g)(前述のモノマー濃度におけるW(g)と同様のものであるので、計算方法は前述のモノマー濃度における説明を参照されたい。)に対する、得られた生成物の質量(g)の割合(100倍して%換算している。)である。
「形態」とは、得られた生成物を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した際に見られた形態を示しており、「Fibril」は繊維状(細長い帯状体が集合した微粒子組織)であり、「Cluster」は塊状を示しており、そして「P.N」は、繊維状形態からなる結晶を表面に有する微粒子状を示している。
「10%重量減少温度」とは、熱重量分析(TGA)により昇温した際、室温(25℃)における重量から10%重量が減少(即ち、室温での重量の90%になる)する温度(単位:℃)をいい、ここではPerkin−Elmer社製の型番TGA7を分析機器として用い、運転条件は昇温速度20℃/分、窒素気流下にて分析した。
【0034】
図9に示す実験番号2の生成物と、図9に示す実験番号13の生成物と、を赤外分光計(日本分光社製の型番FT/IRー410を用いた。)にて分光分析して得られたチャートを図10に示した。図10は、横軸に波数(Wavenumber)(単位:cmー1)をとり、縦軸に吸光度(Absorbance)(上方向に吸光度が大きくなるよう描いている。なお、かっこ内の「a.u.」は任意強度(arbitrary unit)を意味している。)をとっている。図10には、(a)及び(b)の2本のグラフが同じ座標系に描かれているが((a)が上部に示され、(b)が下部に示されている。)、これら(a)は実験番号2の生成物を試料として用いた場合のものであり、(b)は実験番号13の生成物を試料として用いた場合のものである。図10中、「Imide C=O stretching」とは、イミド分子(式(II))中に存するC=O伸縮振動に基づく吸収であり、「Imide CーN stretching」とは、イミド分子(式(II))中に存するCーN伸縮振動に基づく吸収である。図10に示す(a)及び(b)いずれのグラフも、約1720cmー1及び1780cmー1に現れるイミド分子特有のC=O伸縮振動と、約1380cmー1に現れるイミド分子特有のCーN伸縮振動と、を示しており、いずれの生成物も式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが生成していることを示すものであった。また、その他の生成物についても赤外分光分析を同様に行ったところ、これら(a)及び(b)と同様のグラフが得られ、いずれも式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが生成していることを示した。
なお、この赤外分光分析の測定条件は、測定領域4000cmー1〜500cmー1、透過モード、KBr錠剤法であった。
【0035】
図9に示す実験番号1の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図11に示し、図9に示す実験番号5の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図12に示し、図9に示す実験番号6の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図13に示し、図9に示す実験番号11の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図14に示し、図9に示す実験番号13の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図15に示し、図9に示す実験番号4の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図16に示し、図9に示す実験番号8の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図17に示し、そして図9に示す実験番号14の生成物の走査型電子顕微鏡写真を図21に示した。
これら走査型電子顕微鏡写真(SEM)はいずれも株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の型番S−3500Nの走査型電子顕微鏡を用い、運転条件は加速電圧20KVにて観察した。
また、これら生成物のうち形態に「Fibril」と記載されているものは、図18(a)に示すような細長い板状体(帯状、リボン状)が集合した微粒子組織の形態を有しており、長手方向(図18(a)中のLに沿った方向)に対して垂直な断面形状は図18(b)のように略長方形(断面のハッチングは省略)をしていた。従って、ここでは長手方向に対して垂直な断面形状における最大の寸法は、該略長方形の対角線の長さ(図18(b)中の寸法D)である。
また、実験番号2、3、7、9及び12の生成物を同様に走査型電子顕微鏡にて観察したところ、これらの生成物も図11乃至図15及び図21の形態と同様の細長い板状体(帯状、リボン状)が集合した微粒子組織の形態を有していた。実験番号10の生成物を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、不明瞭(不規則)な塊状の形態を有していた。そして、実験番号4及び8の生成物を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、繊維状形態からなる結晶を表面に有する微粒子状(「P.N」)の形態を有していた。
【0036】
さらに、図9に示す実験番号2の生成物と、図9に示す実験番号13の生成物と、を広角X線散乱(WAXS)測定を行った結果を図19に示す。ここに広角X線散乱(WAXS)測定はいずれも理学電機株式会社製の商品名「Mini Flex」の測定装置を用い、運転条件はスキャン速度1°/分、測定領域3°〜50°にて行った。図19は、横軸に2θ(単位:度)をとり、縦軸に散乱強度(任意強度(arbitrary unit)、なお、上方向が強度大である。)をとったグラフである。図19には、(a)及び(b)の2本のグラフが同じ座標系に描かれているが((a)が上部に示され、(b)が下部に示されている。)、これら(a)は実験番号2の生成物を試料として用いた場合のものであり、(b)は実験番号13の生成物を試料として用いた場合のものである。
なお、実験番号10以外のその他の生成物についても広角X線散乱(WAXS)測定を行ったところ、図19と同様のグラフが得られた。
【0037】
これら実験番号1〜14は実施例であるが、そのうち実験番号10の生成物については不明瞭(不規則)な塊状の形態を有しており、そして実験番号4及び8の生成物については繊維状形態からなる結晶を表面に有する微粒子状の形態を有していたが、それら以外の実験番号1〜3、5〜7、9、11〜14については細長い板状体(帯状、リボン状)が集合した微粒子組織の形態を有していた。
【0038】
図9に示すように、得られた生成物は、10%重量減少温度として630℃以上(ここでは具体的データとしては635℃〜721℃であるので、ほぼ635℃〜720℃程度、測定誤差等を考慮しほぼ630℃〜730℃程度である。)を示しており、高耐熱性を有することが明らかになった。
【0039】
実験番号1〜3、5〜7、9、11〜14にて得られた生成物は、いずれも図18(a)に示すような細長い帯状体(帯状、リボン状)が集合した微粒子組織(図9中の形態が「Fibril」)を形成しており、多数の該細長い板状体がある点から放射状に成長したような形態を有していた。なお、該細長い板状体の先端部分は尖っているものが多く観察された。
実施例にて得られた生成物は、図11乃至図17に示したように、モノマー比率が変化しても形態は変化せず、1EAPと2EAPとの比率(モル比率(%))による生成物の形態変化は観察されなかった(1EAP単独、2EAP単独、そして1EAPと2EAPとの混合物、いずれを用いても生成物の形態変化は観察されなかった。)。
実施例にて得られた生成物において、モノマー濃度が高くなると、該集合体内部における該細長い板状物の密集度合いが高くなると共に、該集合体の大きさが大きくなった。
実施例にて得られた生成物いずれの該細長い板状物も、長手方向に沿った寸法Lは非常に大きく(少なくとも5000nm以上)、該長手方向に対して垂直な断面形状が示す該略長方形の短辺方向の寸法Tは約40nmであり、該略長方形の長辺方向の寸法Y(幅)は約130nm〜140nmであった。従って、該長手方向に対して垂直な断面形状における最大の寸法は、該略長方形の対角線の長さ(図18(b)中の寸法D)であるから、約141nm程度である。該長手方向に沿った寸法を、該長手方向に対して垂直な断面形状における最大の寸法で除した値(L/D)は、約35であり、細長い帯状体が集合した微粒子組織を形成していた。
また、実験番号1〜3、5〜7、9、11〜14にて得られた生成物は、いずれも図18(a)に示すような細長い帯状体(帯状、リボン状)が集合した微粒子組織(図9中の形態が「Fibril」)を形成していたことから、少なくとも次の重合条件(A)〜(D)にて重合反応を行えば、かかる細長い帯状体(帯状、リボン状)が集合した微粒子組織を有するポリイミドが生成することが明らかになった。
(A)1EAPと2EAPとのいずれか一方又は両方の混合物(「モノマー比率」に影響されない。)をモノマーとして用いて、これらモノマー同士を縮合重合させる。また、2HAPを用いてもよい。
(B)「BT4」、即ちジベンジルトルエンを含む溶媒(好ましくは、溶媒中にジベンジルトルエンが50体積%以上含まれる。実験番号9参照。)中で重合させる。
(C)「モノマー濃度」(((W/V)×100)(単位:g/ml))が1.0〜10.0の範囲で重合させる。
(D)重合温度(設定温度)は280℃〜330℃で重合させる。
【0040】
実施例にて得られた生成物は、図19に示すように、(a)及び(b)のいずれもアモルファス(非晶質構造)由来のハロー(幅の広いピーク)が観察されず、高結晶性であることが明らかになった。
そして、実施例にて得られた生成物は、常温(25℃)の濃硫酸(具体的には97%)に約24時間浸漬しても不溶であった。
また、図10に示したIRチャートには、図5に示したIRチャートに見られる(ロ)(1EAP)及び(ハ)(2EAP)が示す「Amino N−H stretching」(第1アミンのN−H伸縮振動に基づく吸収)と「COOH stretching」(カルボキシル基のO−H伸縮振動に基づく吸収)等が消失していることからも、実施例にて得られた生成物は、1EAP及び/又は2EAP(実験番号14では2HAP)が重合することで生成した、式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドであることが明らかになった。
【0041】
以上のように、実験番号1〜14に示した上記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドの製造方法は、上記式(I)で示される化合物(I)たる1EAP及び/又は2EAPや2HAPを溶媒中で重合し、上記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを固体にて析出させることを特徴とする、ポリイミドの製造方法である。
なお、1EAP、2EAP及び2HAPのいずれも、上記式(I)中のX3が水素原子である。
1EAPにおいては、上記式(I)中のX1とX2とのうちX1は水素原子であり、式(I)中のX2はエチル基である。
2EAPにおいては、上記式(I)中のX1とX2とのうちX2は水素原子であり、式(I)中のX1はエチル基である。
【0042】
また、実験番号1〜14に示した上記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドの製造方法は、化合物(I)たる1EAP及び/又は2EAP(実験番号14においては2HAP)の全てが前記溶媒中に完全に溶解する溶解ステップと、該溶解ステップの後(撹拌を止め)、式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが溶液中から固体として析出する析出ステップ(撹拌せず静置状態にて析出させる。)と、を含むものである。
ここでは実験番号1〜9及び11〜14のいずれも、前記溶媒が芳香族化合物(BT4:ジベンジルトルエン、DPS:ジフェニルスルホン)を含むものである。そして、実験番号1〜7、9、11〜14のいずれも、前記芳香族化合物が、ジベンジルトルエンである。さらに、実験番号1〜7、11〜14のいずれも、前記溶媒がジベンジルトルエンである。
【0043】
実験番号1〜14のいずれも、重合が、240℃乃至350℃の温度範囲で行われるものである。
そして、実験番号1〜14においては、重合に用いる化合物(I)(1EAP及び/又は2EAP、2HAP)から100%の収率にて、前記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが生成すると仮定した場合に生成する該ポリイミドの重量W(g)が、前記溶媒の体積V(ml、ここではV=20ml)に対する割合(パーセント)((W/V)×100)が、0.5乃至12.0の範囲である。
実験番号1〜3、5〜7、9、11〜14にて得られた生成物は、いずれも図18(a)に示すような細長い帯状体(帯状、リボン状)が集合した微粒子(粉状)組織を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】モノマーの合成操作を示す図である。
【図2】1EAP及び2EAPの構造式を示す図である。
【図3】1EAPと2EAPとの分離操作を示すフローチャートである。
【図4】1EAPと2EAPとの分離操作を示すフローチャートである。
【図5】粗製固体、第2析出物及び第7析出物の赤外分光分析チャートである。
【図6】粗製固体、第2析出物及び第7析出物のプロトン(H)核磁気共鳴分析法(NMR)によるチャートである。
【図7】図6のプロトン(H)核磁気共鳴分析法(NMR)チャートと、1EAP及び2EAPの水素原子(プロトン)と、の対応関係を示す図である。
【図8】重合実験に用いた重合装置を示す概念図(一部断面図)である。
【図9】重合実験の結果を示す図である。
【図10】実験番号2の生成物と実験番号13の生成物との赤外分光分析チャートである。
【図11】実験番号1の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】実験番号5の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実験番号6の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】実験番号11の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】実験番号13の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図16】実験番号4の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図17】実験番号8の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【図18】生成物が有する細長い板状体の形態を説明する模式図である。
【図19】実験番号2の生成物と実験番号13の生成物との広角X線散乱(WAXS)測定チャートである。
【図20】1HAP及び2HAPの構造式を示す図である。
【図21】実験番号14の生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0045】
11 重合装置
13 溶媒
21 フラスコ
23 内部
31 加熱器
33 スイッチ
35 温度調節つまみ
37 設定温度表示窓
39 現在温度表示窓
41 撹拌器
43 撹拌棒
45 撹拌羽根
51 窒素導入管
61 気体導出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物(I)
【化1】

(式中、X1とX2とのうちいずれか一方は水素原子であり、いずれか他方は水素原子、アルキル基、アリール基を意味し、X3は水素原子又はアシル基を意味する。)
を溶媒中で重合し、次の式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを固体にて析出させることを特徴とする、ポリイミドの製造方法。
【化2】

【請求項2】
式(I)中のX3が水素原子である、請求項1に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項3】
式(I)中のX1とX2とのうち前記いずれか他方がメチル基又はエチル基である、請求項1又は2に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項4】
化合物(I)の全てが前記溶媒中に完全に溶解する溶解ステップと、
該溶解ステップの後、式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが溶液中から固体として析出する析出ステップと、
を含むものである、請求項1乃至3のいずれか1に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が芳香族化合物を含むものである、請求項4に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項6】
前記芳香族化合物が、ジイソプロピルナフタレン、ジエチルナフタレン、エチルーイソプロピルナフタレン、シクロヘキシルジフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニル、ジベンジルトルエンよりなる群より選ばれる1又は2以上のものの混合物である、請求項5に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項7】
前記溶媒がジベンジルトルエンである、請求項6に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項8】
重合が、240℃乃至350℃の温度範囲で行われるものである、請求項1乃至7のいずれか1に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項9】
重合に用いる化合物(I)から100%の収率にて、前記式(II)で示される繰り返し単位を有するポリイミドが生成すると仮定した場合に生成する該ポリイミドの重量W(g)が、前記溶媒の体積V(ml)に対する割合(パーセント)((W/V)×100)が、0.5乃至12.0の範囲である、請求項1乃至8のいずれか1に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項10】
生成するポリイミドが、細長い帯状体が集合した微粒子組織を形成するものである、請求項1乃至9のいずれか1に記載のポリイミドの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1に記載のポリイミドの製造方法により得られうる、ポリイミド。
【請求項12】
次の式(II)で示される繰り返し単位を有し、細長い帯状体が集合した微粒子組織を有するポリイミド。
【化3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−274103(P2008−274103A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119196(P2007−119196)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】