説明

ポリイミド前駆体およびポリイミド

【課題】 光透過性に優れるポリイミドを製造できるポリイミド前駆体、および光透過性に優れるポリイミドを提供すること。
【解決手段】 芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分とを重縮合反応により得られるポリイミド前駆体に関する。
本発明の第二は、芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分とを重縮合反応により得られるポリイミドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性に優れる新規なポリイミドを製造できるポリイミド前駆体、および光透過性に優れる新規なポリイミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、フィルムに成形して、電気・電子の基板部材、カバー部材として用いられている。またポリイミドは、ポリイミド前駆体として、半導体、各種金属材料などの表面保護膜や層間絶縁膜としてコーティング材として用いられている。
【0003】
特許文献1には、製膜時の高温でのキュアによって寸法安定性が良好なポリイミドフィルムを与えるポリアミック酸の有機極性溶媒溶液に置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物を含有させて、共押出し−流延製膜法により基体層(フィルム全体の厚みの50%以上)の片面に薄層(フィルム全体の厚みの50%以下)を形成することによって、該薄層表面に流延製膜法による成形時に金属支持体との剥離性を与えた、光透過性の良好な芳香族ポリイミドフィルムの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、芳香族テトラカルボン酸と芳香族ジアミンから繰り返し単位が構成されるポリアミド酸から製造される延伸芳香族ポリイミドフィルムであって、前記芳香族テトラカルボン酸がピロメリット酸、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体からなる群より選択され、前記芳香族ジアミンがパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3−メチル−5−アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらのアミド形成性誘導体からなる群より選択され、さらに面内異方性指数が20以下であり、等方性でかつ面配向係数が0.11以上になるように二軸配向された、幅1400mm以上であることを特徴とする延伸芳香族ポリイミドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−254467号公報
【特許文献2】特許第3635085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光透過性に優れるポリイミドを製造できるポリイミド前駆体、および光透過性に優れるポリイミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分との重縮合反応により得られるポリイミド前駆体に関する。
【0008】
本発明の第二は、芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分との重縮合反応により得られるポリイミドに関する。
【0009】
本発明のポリイミド前駆体から、光透過性に優れるポリイミドを得ることができる。
【0010】
本発明の第一及び本発明の第二の好ましい態様を以下に示す。これらの態様は任意に複数組合せることが出来る。
1)ジアミン成分は、ジアミン成分100モル%中にパラキシリレンジアミンを70〜100モル%含むことにより、光透過性により優れる。
2)芳香族テトラカルボン酸成分は、ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸成分より選ばれる少なくとも1種の成分を含むことにより、耐熱性に優れる。
3)ジアミン成分は、さらに、パラフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルエーテルより選ばれる少なくとも1種の成分を含むことにより、耐熱性に優れる。
4)ポリイミドフィルムの吸光係数は、波長400nmで0.1/μm以下であること。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、光透過性、特に波長400nm以上の光の透過性に優れるポリイミドを製造できるポリイミド前駆体を提供することができる。
【0012】
また、本発明は、光透過性、特に波長400nm以上の光の透過性に優れるポリイミドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1〜6のフィルムの波長と吸光係数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のポリイミド前駆体は、芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分とを重縮合反応させることにより得ることができる。
【0015】
本発明のポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分との重縮合反応により、直接またはポリイミド前駆体を経由して得ることができる。
【0016】
本発明のポリイミドは、ジアミン成分としてパラキシリレンジアミンを含むことにより、光透過性、特に波長400nmから500nmでの光透過性に優れる。パラキシリレンジアミンのジアミン成分中の含有量は、特に限定されないが、ジアミン成分100モル%中、30モル%以上、さらには60モル%以上、好ましくは70モル%以上であることができ、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは91モル%以上であり、さらに好ましくは96モル%以上であり、特定の態様では100モル%であってよい。
【0017】
ジアミン成分は、パラキシリレンジアミンの他に、パラキシリレンジアミン以外のジアミン化合物の1種または2種以上を含有してもよい。このジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンなどの芳香族ジアミン化合物及びそれらの類似物などを挙げることができる。
【0018】
これらのジアミン化合物の中で、パラキシリレンジアミンと併用することが好ましいジアミン化合物としては、芳香族ジアミンが好ましく、特にp−フェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンが挙げられ、さらに、p−フェニレンジアミン、4,4’−オキシジアニリン(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、3,4’−オキシジアニリン(3,4’−ジアミノジフェニルエーテル)等のジアミノジフェニルエーテルが、耐熱性などの面で好ましい。
【0019】
テトラカルボン酸成分としては、公知のテトラカルボン酸無水物を使用することができる。テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0020】
テトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸成分及び/又はビフェニルテトラカルボン酸成分、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種を含むことが好ましく、テトラカルボン酸成分100モル%中、ピロメリット酸成分及び/又はビフェニルテトラカルボン酸成分を10モル%以上、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上含むことが好ましい(100モル%であってもよい。)。さらに本発明の特性を損なわない範囲で、その他の上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0021】
特に、テトラカルボン酸成分としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び/又は2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むことが、光透過性に優れるために好ましい。
【0022】
本発明のポリイミド前駆体は、上述のジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。その製造方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、有機溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させてポリイミド前駆体を製造することができる。
【0023】
本発明のポリイミドは、上述のジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。その製造方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、有機溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させてポリイミド前駆体を製造し、その後、化学イミド化又は熱イミド化する方法、あるいは有機溶媒中又は直接テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて直接イミド化する方法等により製造することができる。
【0024】
ポリイミド及びポリイミド前駆体の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、実質的に等モル量、或いはテトラカルボン酸二無水物又はジアミン成分のどちらか一方を過剰(好ましくはどちらかの成分を100モル%として、一方の成分を好ましくは100〜110モル%、より好ましくは100〜107モル%、さらに好ましくは100〜105モル%)にして、有機溶媒中で反応させ、制御された温度条件下で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重合反応が(ほぼ)完了するまで攪拌することによって製造することができる。これらのポリイミド前駆体溶液は通常1〜35wt%、好ましくは5〜30wt%、さらに7〜25wt%の濃度で得ることができ、この範囲の濃度では、適当な分子量と適当な溶液粘度を得ることができる。
【0025】
ポリイミド前駆体の重合方法としては公知の方法を用いることができる。
【0026】
ポリイミド前駆体を与えるジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを、有機溶媒中で0〜100℃、好ましくは5〜50℃の温度で重合させてポリイミド前駆体の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)とし、必要ならポリイミド前駆体の溶液を複数混合して用いてもよい。
【0027】
得られたポリイミド前駆体溶液を塗膜化或いはフィルム化し、乾燥・イミド化・加熱乾燥(キュア)することによって、ポリイミドを製造することができる。この加熱乾燥の最高加熱処理温度は、250〜600℃、さらに270〜450℃、特に290〜350℃の範囲であることが好ましい。
【0028】
ポリイミドの重合方法としては公知の方法を用いることができる。
1)ポリイミド前駆体溶液を、重合溶媒を一部除去する等によりフィルム状などに成形し、その後乾燥・イミド化・加熱乾燥(キュア)することによって、ポリイミドを製造することができる。
2)ポリイミドを与えるジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを、有機溶媒中で反応させて、脱水及びイミド化を行い、140℃以上の温度で重合させて直接ポリイミド溶液を製造することができる。(溶媒可溶の場合)ポリイミド溶液は、必要ならポリイミド溶液を複数混合して用いてもよい。
【0029】
上記1)及び2)において、イミド化の加熱乾燥の最高加熱処理温度は、250〜600℃、さらに270〜450℃、特に290〜350℃の範囲であることが好ましい。
【0030】
ポリイミドの透明性を確保するために、イミド化・加熱乾燥(キュア)時に、不活性なガス雰囲気下、又は減圧雰囲気下で加熱処理してもよい。不活性なガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを挙げることができ、これらは単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0031】
ポリイミド前駆体のアミン末端を封止する必要がある場合には、ジカルボン酸無水物、例えば無水フタル酸及びその置換体(例えば3−メチル又は4−メチルフタル酸無水物)、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びその置換体、無水コハク酸及びその置換体など、特には無水フタル酸を少量添加してもよい。
【0032】
またポリイミド前駆体溶液は、イミド化促進の目的で、溶液中にイミド化剤を添加することができる。例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジンなどをポリイミド前駆体に対して0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜2質量%の割合で使用することができる。これらにより比較的低温でイミド化を完了することができる。
【0033】
本発明のポリイミドにおいて、芳香族テトラカルボン酸成分と特定のジアミン成分とがブロック的な構造を有してもよいし、ランダムな構造を有してもよい。
【0034】
本発明のポリイミド前駆体溶液又はポリイミドをフィルム化する場合には、フィルムのゲル化を制限する目的でリン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリイミド前駆体であるポリアミック酸の重合時に固形分(ポリマー)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。
【0035】
本発明のポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液には、必要に応じて有機リン含有化合物、無機微粒子や有機微粒子などの微粒子などを加えてもよい。
本発明のポリイミドは、必要に応じて有機リン含有化合物、無機微粒子や有機微粒子などの微粒子などを含んででもよい。
【0036】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。
【0037】
微粒子としては、有機微粒子と無機微粒子などを挙げることが出来る。
【0038】
有機微粒子としては、ポリイミド溶液やポリイミド前駆体溶液に溶解しない有機物の微粒子を挙げることが出来、ポリイミド微粒子、アラミド微粒子などの高分子化合物の微粒子、エポキシ樹脂などの架橋樹脂の微粒子などを挙げることが出来る。
【0039】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。
【0040】
これらの微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
【0041】
ポリイミド前駆体の製造に使用する有機溶媒は、ポリイミド前駆体を可溶な溶媒を用いることができ、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタムなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリイミドの製造に使用する有機溶媒は、ポリイミドを可溶な溶媒を用いることができ、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、フェノール、クロルフェノールなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明のポリイミドは、以下の吸光係数を有するフィルムを製造することができる。
1)波長500nmにおいて、吸光係数が好ましくは0.01/μm以下、さらに好ましくは0.007/μm以下、特に好ましくは0.005/μm以下。
2)波長450nmにおいて、吸光係数が好ましくは0.05/μm以下、より好ましくは0.02/μm以下、さらに好ましくは0.01/μm以下、特に好ましくは0.007/μm以下。
3)波長400nmにおいて、吸光係数が好ましくは0.1/μm以下、より好ましくは0.05/μm以下、さらに好ましくは0.03/μm以下、特に好ましくは0.01/μm以下。
【0044】
本発明のポリイミド前駆体又はポリイミドは、コーティング剤やフィルム(例えば、未キュアフィルムを、ピンテンターを使用して熱処理し、実質的に延伸をかけることによって得られる。)のいずれにも適用可能である。
【0045】
本発明のポリイミド前駆体又はポリイミドは、フィルムに適用する場合、フィルムの厚みは3〜200μm程度であり、コーティング剤として適用する場合、その厚みは0.1〜2μm程度である。
【0046】
また本発明のポリイミドは、耐熱性ポリイミドからなるコア層の表面層としての改質ポリイミド層として適用することも可能である。この場合、耐熱性ポリイミドからなるポリイミドコア層を与えるポリイミド前駆体溶液を支持体上に流延、乾燥して自己支持性フィルムを形成し、その片面に、本発明のポリイミドを与えるポリイミド前駆体溶液を塗布又は吹き付けて、乾燥し、さらに必要であれば他の面にポリイミド前駆体溶液を塗布又は吹き付けて、乾燥し、加熱して溶媒除去及びイミド化すること、さらに必要に応じて最高加熱処理温度250〜600℃で加熱乾燥(キュア)することによって、少なくとも片面が改質された積層ポリイミドフィルムを製造することができる。この積層ポリイミドフィルムとしては、厚みが5〜150μm程度、特に10〜125μm程度であることが好ましい。
【0047】
耐熱性ポリイミドからなるコア層と改質ポリイミド層の厚みは、目的に応じて選択することができる。
【0048】
積層ポリイミドフィルムの耐熱性ポリイミド層のポリイミドとしては、
i)7.5〜100モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と0〜92.5モル%のピロメリット酸二無水物との芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と、15〜100モル%のp−フェニレンジアミンと0〜85モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのジアミン成分とを重合及びイミド化することによって、さらに必要に応じて最高加熱処理温度250〜600℃で加熱乾燥(キュア)することによって得られるポリイミド、或いは
ii)ピロメリット酸二無水物の酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンとの成分の割合(モル比)が90/10〜10/90のジアミン成分とを重合及びイミド化することによって、さらに必要に応じて最高加熱処理温度250〜600℃で加熱乾燥(キュア)することによって得られるポリイミド、或いは
iii)7.5〜100モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と0〜92.5モル%のピロメリット酸二無水物との芳香族テトラカルボン酸二無水物と、o−トリジン又はm−トリジンを含むジアミン成分とを重合及びイミド化することによって、さらに必要に応じて最高加熱処理温度250〜600℃で加熱乾燥(キュア)することによって得られるポリイミド、などが挙げられる。
【0049】
本発明のポリイミドの少なくとも片面と基材とを、直接或いは接着剤を介して、加圧又は加圧加熱(ラミネート法)して、積層することにより、少なくとも片面に基材を有する積層体を製造することができる。
【0050】
本発明のポリイミドのフィルムは、TAB用フィルム、電子部品用基板、配線基板として好適に使用でき、例えば、プリント回路基板、電力用回路基板、フレキシブルヒーター、抵抗器用基板として好適に使用することができる。またLSI等のベース基材等の線膨張係数が小さい材料上に形成する絶縁膜、保護膜等の用途に有用である。
【0051】
本発明のポリイミドは、シリコン、銅、金、銀、錫などの電子部材などのコーティング材として絶縁膜、保護膜等として用いることができ、例えばポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液をコーティングして、必要なら加熱して得ることができる。
【0052】
本発明のポリイミドは、太陽電池、電子ペーパーなどの絶縁膜、保護膜などとして用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例により、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は、これらの実施の形態のみに限定されるものではない。
【0054】
評価は以下の方法で行う。
1)ガラス転移点温度(Tg):TAインスツルメンツ社製動的粘弾性装置(ARES)を用い、tanδのピーク温度から求めた。
2)光透過率測定:ポリイミドフィルムの光透過率を、日立社製U−2800形分光光度計を用いて、波長350nm〜900nmの範囲で測定した。
【0055】
吸光係数は以下の数式に従い算出した。
【0056】
吸光係数(/厚み)=[−log(光透過率)]/(フィルム厚み)
【0057】
(実施例1)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPと略す)をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解したs−BPDAに対して当モル量のパラキシリレンジアミン(以下、XPと略す)を滴下し、30℃で24時間撹拌し重合して、18質量%濃度のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液に、ポリアミック酸100質量部に対して0.1質量部のモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、次いでポリアミック酸100質量部に対して0.5質量部のシリカフィラー(平均粒径0.08μm、日産化学社製ST−ZL)を添加して均一に混合して、ポリイミド前駆体溶液組成物を得た。
【0058】
ポリイミド前駆体溶液組成物を基板(支持体)上に連続的に流延し、140℃の熱風で乾燥をおこなった後に、再度加熱炉で100℃から300℃に徐々に昇温して溶媒を除去し、イミド化してポリイミドフィルムを得た。
【0059】
ポリイミドフィルムの光透過率とTgを測定し、結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2〜6、比較例1)
表1に示すテトラカルボン酸成分とジアミン成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体溶液組成物を製造し、さらにポリイミド前駆体溶液組成物からポリイミドフィルムを製造した。ポリイミドフィルムの光透過率とTgを測定し、結果を表1に示す。
【0061】
表1において、
PMはピロメリット酸二無水物を、
a−BPは2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、
DEは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、
PDはパラフェニレンジアミンを示す。
【0062】
実施例1〜6及び比較例1の光透過率の測定結果から吸光係数を算出し、結果を表2と図1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
実施例1〜6において、波長500nmでは吸光係数は全て0.005/μm以下であり、波長400nmでは吸光係数は全て0.1/μm以下である。実施例1〜6のポリイミドは、比較例1のポリイミドよりも光透過性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分との重縮合反応により得られるポリイミド前駆体。
【請求項2】
ジアミン成分は、ジアミン成分100モル%中にパラキシリレンジアミンを70〜100モル%含むことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項3】
芳香族テトラカルボン酸成分は、ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸成分より選ばれる少なくとも1種の成分を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリイミド前駆体。
【請求項4】
ジアミン成分は、さらに、パラフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルエーテルより選ばれる少なくとも1種の成分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。
【請求項5】
芳香族テトラカルボン酸成分と、パラキシリレンジアミンを含むジアミン成分との重縮合反応により得られるポリイミド。
【請求項6】
ジアミン成分は、ジアミン成分100モル%中にパラキシリレンジアミンを70〜100モル%含むことを特徴とする請求項5に記載のポリイミド。
【請求項7】
芳香族テトラカルボン酸成分は、ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸成分より選ばれる少なくとも1種の成分を含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のポリイミド。
【請求項8】
ジアミン成分は、さらに、パラフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルエーテルより選ばれる少なくとも1種の成分を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のポリイミド。
【請求項9】
フィルムにしたときに、ポリイミドフィルムの吸光係数は、波長400nmで0.1/μm以下であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のポリイミド。

【図1】
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【公開番号】特開2011−80052(P2011−80052A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202738(P2010−202738)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】