説明

ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造方法

【課題】ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】1)少なくとも1種のケトンの存在下に、少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸と、少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させることによって、1.5〜3重量%の遊離イソシアネート基含有率を有する、カルボキシレート官能性の、ゲル化していない、水分散性のポリウレタンプレポリマーを製造する工程と、
2)前記ケトン溶液を、水と混合することによって水性分散体へ変換する工程と、
3)ポリウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基を水と、および/またはイソシアネート基に付加してウレア基を形成することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物と反応させることによってポリウレタンプレポリマーを鎖延長させる工程と
を含む、樹脂固形分1gあたり10〜50mgKOHのカルボキシル価および樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトン含有率を有する水性ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造方法であって、
得られる水性ポリウレタンウレア樹脂分散体が樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトンを含有するような方法で、工程1)で使用されるケトンの割合が選択される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタンウレア樹脂分散体の周知の製造方法は、いわゆるアセトン法である((非特許文献1)を参照されたい)。典型的には、NCO官能性の親水性ポリウレタンプレポリマーは、希釈剤としてのアセトンの存在下にポリオールとポリイソシアネートとの付加反応によって製造される。NCO官能性の親水性ポリウレタンプレポリマーは、例えば、ポリアミン、ヒドラジン誘導体または水のような、NCO反応性の鎖延長剤と反応させることができる。アセトン溶液は、水と混合することによって水性分散体へ変換される。鎖延長反応が行われる場合、それは水性分散体への変換前および/または後に起こってもよい。最後にアセトンは、特に、それを留去することにより所望の程度まで除去される。アセトン除去工程は、廃アセトンの形成、エネルギーの消費およびこの方法の比較的劣る時空収率のためにアセトン法の弱点である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、第A21巻、678−679ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
水性ポリウレタンウレア樹脂分散体へ変換することができる、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーの製造は、ポリイソシアネートと、ポリオールと、既に第三級アミンで中和されたポリヒドロキシカルボン酸とからポリウレタンプレポリマーが製造され、そしてポリヒドロキシカルボン酸によって提供されるカルボキシル基の中和が、先行技術で一般に行われているように、形成されたポリウレタンプレポリマーの水性分散体への変換の実質的に直前に行われない場合に、通常有効であるものより実質的に低い量のケトン溶媒の存在下に行い得ることが分かった。先に説明されたケトン溶媒の留去は、従って回避することができる。ケトンを含まない水性ポリウレタンウレア樹脂分散体が望まれる場合、蒸留を比較的低いエネルギーおよび時間消費で実施することができ、かつ、蒸留により生成される廃ケトンの量はより少量であろう。勿論、ケトンが比較的低量であるだけでなく、いかなる他の有機溶媒も使用される必要がない。
【0005】
本発明は、工程:
1)1種以上のケトンの存在下に、少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸と、少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させることによる、1.5〜3wt.%(重量%)、特に1.7〜2.5重量%の遊離イソシアネート基含有率を有する、カルボキシレート官能性の、ゲル化していない、水分散性のポリウレタンプレポリマーを製造する工程と、
2)ポリウレタンプレポリマーのケトン溶液を、水と混合することによって水性分散体へ変換する工程と、
3)ポリウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基を水と、および/またはイソシアネート基に付加してウレア基を形成することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物と反応させることによって、ポリウレタンプレポリマーを鎖延長させる工程と
を含む、樹脂固形分1gあたり10〜50mgKOHのカルボキシル価および樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトン含有率を有する水性ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造方法であって、
工程3)の完了後に得られる水性ポリウレタンウレア樹脂分散体が、樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトンを含有するような方法で、工程1)に使用されるケトンの割合が選択される方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
用語「樹脂固形分」が本説明および特許請求の範囲において用いられる。それは、ポリウレタンウレア樹脂分散体の実際のポリウレタンウレア樹脂固形分、すなわち、中和第三級アミンを考慮することなくプロセス工程3)において形成されたポリウレタンウレア樹脂の固形分寄与を意味する。
【0007】
本説明および特許請求の範囲において用語「遊離イソシアネート基の含有率」が用いられる。それは、物質の100g当たりの遊離NCO(モル質量=42)の含有率として計算され、重量%で表される。言い換えれば、プロセス工程1)において生成した100gの溶媒を含まないイソシアネート−およびカルボキシレート−官能性ポリウレタンプレポリマー(中和第三級アミンに由来するアンモニウムを含めて)は、1.5〜3gのNCOを含有する。
【0008】
プロセス工程1)において1.5〜3重量%の遊離イソシアネート基含有率を有する、カルボキシレート官能性の、ゲル化していない、水分散性ポリウレタンプレポリマーは、1種以上のケトンの存在下に少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸と、少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させることによって製造される。
【0009】
プロセス工程1)に使用される少なくとも1種のポリオールは、実験式および構造式によって定義される低モル質量化合物の形態でのポリオールだけでなく、例えば、2,000以下の、特に、500〜2,000の数平均モル質量のオリゴマーもしくはポリマーポリオールを含んでもよい。オリゴマーもしくはポリマーポリオールの例は、相当するヒドロキシル官能性ポリエーテル、ポリエステルまたはポリカーボネートである。
【0010】
数平均モル質量との関連で本説明および特許請求の範囲において行われるすべての言明は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、ポリスチレン標準、固定相としてポリスチレンゲル、移動相としてテトラヒドロフラン)によって測定された数平均モル質量に関する。
【0011】
プロセス工程1)に使用されてもよい低モル質量ポリオールの例は、エチレングリコール、異性体プロパン−およびブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、異性体シクロヘキサンジオール、異性体シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジメタノール、および二量体脂肪アルコールなどの低モル質量ジオールである。
【0012】
プロセス工程1)に使用されてもよい分子当たり3個以上のヒドロキシル基を持った低モル質量ポリオールの例は、グリセロール、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパンなどの化合物である。
【0013】
プロセス工程1)に使用されてもよいオリゴマーもしくはポリマーポリオールの例は、それぞれ、例えば、2,000以下の、特に、500〜2,000の数平均モル質量の、テレケリック(メタ)アクリルポリマージオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールなどのオリゴマーもしくはポリマージオールである。
【0014】
プロセス工程1)に使用されてもよい2より大きいヒドロキシル官能性のオリゴマーもしくはポリマーポリオールの例は、それぞれ、例えば、2,000以下の、特に、500〜2,000の数平均モル質量の、相当するポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールである。
【0015】
本発明による方法の工程1)において、少なくとも1種のポリオールに加えて、少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸が少なくとも1種のポリイソシアネートと反応させられる。プロセス工程1)に使用されてもよいポリヒドロキシカルボン酸の例は、ジメチロールプロピオン酸またはジメチロール酪酸などのポリヒドロキシモノカルボン酸および酒石酸などのポリヒドロキシポリカルボン酸である。
【0016】
ポリウレタンプレポリマー合成の最初から、少なくとも1種のポリヒドロキシカルボン酸は第三級アミン中和形態で使用されることが本発明にとって不可欠である。この場合にポリヒドロキシカルボン酸対中和第三級アミンの比は、例えば、70〜100%、好ましくは90〜100%の中和度に相当するものである。例えば、少なくとも1種のポリヒドロキシカルボン酸は、プロセス工程1)において、少なくとも1種のポリイソシアネートと接触させられる前に、反応媒体として使用される、ケトン(混合物)中でまたはケトン(混合物)の一部中で第三級アミンで中和することができる。
【0017】
少なくとも1種のポリヒドロキシカルボン酸を中和するために使用されてもよい第三級アミンの例は、トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、トリイソプロピルアミンおよびジメチルイソプロピルアミンなどの、イソシアネート基に対して不活性な第三級アミンを含む。ジメチルイソプロピルアミンが特に好ましい。
【0018】
プロセス工程1)に使用されてもよいポリイソシアネートの例は、例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび1,4−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族ジイソシアネートである。さらなる例は、トリスイソシアナトノナンなどの、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートおよび先行文章に述べられたジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネート、例えば、それのイソシアヌレート、ウレチジオンまたはビウレット誘導体である。
【0019】
少なくとも1種のポリオール、少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸および少なくとも1種のポリイソシアネートは、タイプおよび量の観点から、プロセス工程1)において1.5〜3重量%の遊離イソシアネート基含有率を有する、カルボキシレート官能性の、ゲル化していない、水分散性のポリウレタンプレポリマーであって、プロセス工程3)において行われる鎖延長の過程で、後で反応させられて10〜50mgKOH/gのカルボキシル価のポリウレタンウレア樹脂を形成するプレポリマーが形成されるような方法で選択される。プロセス工程1)は従って、過剰のイソシアネートで、かつ、少なくとも1種のポリオールおよび少なくとも1種のポリヒドロキシカルボン酸によって提供されるヒドロキシル基の完全な消費で実施され;例えば、プロセス工程1)で用いられるNCO:OH当量比は2:1〜1.1:1、好ましくは1.5:1〜1.1:1である。
【0020】
少なくとも1種のポリオール、少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸および少なくとも1種のポリイソシアネートの添加の順序は固定されない。例えば、少なくとも1種のポリイソシアネートが最初に少なくとも1種のポリオールと、その後少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸と反応させられてもよいし、またはその逆であってもよい。好ましくは、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸との混合物がケトン中で提供され、次に、場合によりケトンに溶解された、少なくとも1種のポリイソシアネートが加えられる。ジオルガノスズ化合物などの、ポリウレタン合成用の通常の触媒が任意の時間に添加されてもよい。反応温度は、反応媒体として使用されるケトンまたはケトン混合物の沸点によって制限されるかもしれず、一般に45〜85℃の範囲にある。低下しない、またはゆっくり低下するにすぎないNCO濃度が達成されたときに反応の終わりに到達する。これは、分析によって、例えば、IR分光分析法または滴定を用いて検出することができる。
【0021】
既に述べられたように、プロセス工程1)は、ケトンまたは複数のケトンの混合物の存在下に行われる。ケトンは、イソシアネート基に対して不活性であるケトンである。好適なケトンの例は、メチルエチルケトンおよびアセトンである。唯一のケトンとしてアセトンの存在下に作業することが好ましい。例えば、N−メチルピロリドンなどの、さらなる有機溶媒は、ケトンに加えて全く使用される必要がない。むしろ、さらなる有機溶媒が全く加えられないかまたはケトンは別として使用されないことが好ましく;ところで、同じことはプロセス工程2)および3)に関しても本当である。ケトンの割合は、プロセス工程3)の完了後に得られる水性ポリウレタンウレア樹脂分散体がこの低いケトン含有率を達成するためにケトンを留去する必要性なしに、樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトン含有率を有するように選択される。言い換えれば、本発明による方法は、それ自体、ケトンの留去を含まない。
【0022】
プロセス工程1)で形成されるカルボキシレート官能性ポリウレタンプレポリマーは、1.5〜3重量%の遊離イソシアネート基含有率および、例えば、10〜55mgKOH/g超のカルボキシル価を有し、従って水分散性である。選択された出発化合物に依存して、すなわち、少なくとも1種のポリオール、少なくとも1種のポリヒドロキシカルボン酸および少なくとも1種のポリイソシアネートに依存して、ポリウレタンプレポリマーは線状または分岐ポリウレタンであってもよいが、いかなる場合にもゲル化していないポリウレタンである。プロセス工程1)において形成されたポリウレタンプレポリマーの数平均モル質量はGPCによって直接測定することはできず、それ故イソシアネート基は、例えば、ジブチルアミンと反応させることによって最初に脱官能基化される。ジブチルアミンと反応させることによってNCO脱官能基化されたポリウレタンプレポリマーの、GPCによって測定される、数平均モル質量は、例えば、3,000〜4,000の範囲にある。
【0023】
本発明による方法の工程2)において、プロセス工程1)で得られた、そしてケトンに溶解している非水性の、イソシアネート−およびカルボキシレート−官能性ポリウレタンプレポリマーは、水と混合することによって、例えば、30〜47重量%の固形分含有率を有する水性分散体へ変換される。この場合に水をポリウレタンプレポリマーに加えることができるし、または逆もまた同様である。一般に、水との混合は、60℃より下の温度で行われる。混合の時点で、ポリウレタンプレポリマーのケトン溶液の温度は、例えば、40〜60℃であってもよく、水の温度は、例えば、20〜40℃であってもよい。
【0024】
本発明による方法の工程3)において、プロセス工程2)において水中に分散されたイソシアネート−およびカルボキシレート−官能性ポリウレタンプレポリマーの鎖延長であって、ウレア基が生成し、そしてモル質量が増加する鎖延長は、水、および/またはイソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を持った少なくとも1種の化合物と反応させることによって行われる。鎖延長中に、ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基は完全に使い尽くされる。
【0025】
プロセス工程2)および3)は、時間的にオーバーラップしてもよいし、または次々に行われてもよい。例えば、プロセス工程2)および3)は、一部同時に行われてもよく、鎖延長反応の完了は、水性分散体が形成された後に、すなわち、既に形成された分散粒子内で起こる。
【0026】
水中に分散されたイソシアネート−およびカルボキシレート−官能性ポリウレタンプレポリマーの鎖延長は、鎖延長剤として水を使用して実施することができる。水の場合、鎖延長は、イソシアネート−およびカルボキシレート−官能性ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基のNH2基への加水分解と、まだ加水分解していないイソシアネート基へのそれの自発的な付加とウレア基の形成とによって進行する。水が唯一の鎖延長剤である場合、プロセス工程2)による水との混合を実施すること、ならびにプロセス工程3)に従って進行する、アミノ基を形成するためのイソシアネート基の加水分解、およびウレア基を形成するためのアミノ基のイソシアネート基への付加を待つことで十分である。この目的のために、プロセス工程2)で形成された水性分散体は、遊離イソシアネートがもはや全く検出できなくなるまで、例えば、30〜80℃の温度で撹拌される。
【0027】
しかしながら、鎖延長はまた、イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する1種以上の化合物を、水中に分散されたイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーと反応させることによって実施することができる。このタイプの化合物の例は、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンなどの、適切なポリアミンだけでなく、ヒドラジンおよびフェニルヒドラジンなどのヒドラジン誘導体である。イソシアネート−およびカルボキシレート−官能性ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基の反応性は一般に水に対してよりも、イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する化合物のアミノ基に対してかなり大きい。水の存在にもかかわらず、この場合に鎖延長は、ポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基と、イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物のアミノ基との付加反応によるウレア基の形成によって最初にまたは実質的に行われるであろう。
【0028】
イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する1種以上の化合物が鎖延長剤として使用される場合、これらは好ましくは水溶液として、イソシアネート−およびカルボキシレート−官能性ポリウレタンプレポリマーの水性分散体に加えられる。この添加は好ましくは、プロセス工程2)における分散体形成の終了後に有意の時間遅延なしに、例えば、直ちにまたはプロセス工程2)の終了後30分未満内に行われる。
【0029】
既に述べられたように、プロセス工程3)は、(i)唯一の鎖延長剤としての水で、または(ii)1種の鎖延長剤としての水と、さらなる鎖延長剤としての、イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物との組み合わせで、または(iii)鎖延長剤としての、イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物で、そして水の存在下に、しかし前記水が鎖延長に実質的に関与することなく実施されてもよい。これらの場合の最後、(iii)において、0.9:1〜1.2:1の、特に好ましくは1:1の化学量論比に相当する計算されたNCO:(NH+NH2)当量比で作業することが好ましい。
【0030】
本発明による方法は、バッチ法として不連続的にまたは連続的に実施されてもよい。連続法の例は、プロセス工程2)および/または3)が分散装置、例えば、回転子−固定子装置を用いて実施される方法である。この場合、混合されるべき物質は、別個の物質フローとして互いに接触させられる。プロセス工程2)の例において、これは、ポリウレタンプレポリマーのケトン溶液と水とが別個の物質フローとして分散装置へ導入され、その中で互いに混合され、分散させられ、水性分散体として再び前記装置を出る。これはプロセス工程3)の例において類似であり;イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物が鎖延長剤として使用される場合には、プロセス工程2)において得られた水性分散体と、イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物とは、別個の物質フローとして分散容器へ導入され、ここで、イソシアネート基に付加することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物は、例えば、水溶液の形態をとってもよい。
【0031】
樹脂固形分1gあたり10〜50mgKOHのカルボキシル価および樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトン含有率を有する水性ポリウレタンウレア樹脂分散体が、本発明による方法の生成物として得られる。その樹脂固形分含有率は、水の添加によって調節されてもよく、それは、例えば、30〜47重量%の範囲にある。好ましくは、本発明の方法によって製造されたポリウレタンウレア樹脂分散体は、樹脂固形分に対して5〜10重量%の割合で含有されるケトンは別として有機溶媒を含有しない。かかる水性ポリウレタンウレア樹脂分散体は、様々な工業分野において、とりわけ、例えば、接着剤、インク、コーティングおよび含浸剤において使用することができる。それらは主としてバインダーとして使用される。
【0032】
本発明の方法は、既に記載されたプロセス工程1)〜3)を含む。一般に、さらなるプロセス工程は全くなく、本発明による方法は、プロセス工程1)〜3)からなり、ケトン溶媒の除去を含まない。しかしながら、溶媒を含まないポリウレタンウレア樹脂分散体、またはより低いケトン含有率、すなわち、樹脂固形分に対して5〜10重量%未満のケトン含有率を有するポリウレタンウレア樹脂分散体が望まれる場合には、ケトン溶媒は、所望のケトン含有率が達成されるまで、特に蒸留または減圧蒸留によって除去することができる。この点で、本発明による方法は、ケトン溶媒の部分または完全除去のさらなるプロセス工程4)を含んでもよい。
【0033】
以下の実施例は本発明を例示する。
【実施例】
【0034】
比較例1(水性ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造)
112mgのKOH/gのヒドロキシル価を有する24.08pbw(重量部)のポリエステルジオール(ヘキサンジオールおよびアジピン酸とイソフタル酸との2:1モル混合物から製造された)と1.32pbwのジメチロールプロピオン酸とを、攪拌機および還流冷却器を備え付けた反応容器中で11.6pbwのアセトンと混合した。ポリエステルジオールに対して0.004重量%のジブチルスズジラウレート触媒を添加した。混合物を50℃に加熱した後、9.45pbwのイソホロンジイソシアネートを加え、混合物を、一定のNCO値が得られるまで50℃で撹拌した。次に0.88pbwのジメチルイソプロピルアミンを加え、混合物を均一になるまで50℃で撹拌した。次に54.79pbwの脱イオン水を加えて水性分散体を形成し、その後6.48pbwのエチレンジアミンの6.25重量%水溶液を40℃で加えた。次に温度を50℃に上げて元に戻し、この温度を2時間維持した。次に還流冷却器を蒸留ブリッジで置き換え、アセトンを蒸留によって除去して3重量%の残留アセトン含有率まで下げた。蒸留中に同伴したいかなる水も、得られたポリウレタンウレア樹脂分散体中で35重量%の樹脂固形分含有率を達成することによって補った。
【0035】
比較例2
24.08pbwの比較例1に使用したポリエステルジオールと1.32pbwのジメチロールプロピオン酸とを、攪拌機および還流冷却器を備え付けた反応容器中で3pbwのアセトンと混合した。ポリエステルジオールに対して0.004重量%のジブチルスズジラウレート触媒を添加した。混合物を50℃に加熱した後、9.45pbwのイソホロンジイソシアネートを加え、混合物を50℃で撹拌した。反応中に粘度の大幅な増加があり、反応容器の内容物の撹拌はもはや可能ではなかった。それ故、合成を終了させた。
【0036】
本発明による実施例3(水性ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造)
24.08pbwの比較例1に使用したポリエステルジオールと、1.32pbwのジメチロールプロピオン酸と0.88pbwのジメチルイソプロピルアミンとを、攪拌機および還流冷却器を備え付けた反応容器中で3pbwのアセトンと混合した。ポリエステルジオールに対して0.004重量%のジブチルスズジラウレート触媒を添加した。混合物を50℃に加熱した後、9.45pbwのイソホロンジイソシアネートを加え、混合物を、一定のNCO値が得られるまで50℃で撹拌した。次に54.79pbwの脱イオン水を加えて水性分散体を形成し、その後6.48pbwのエチレンジアミンの6.25重量%水溶液を40℃で加えた。次に温度を50℃に上げて元に戻し、この温度を2時間維持した。冷却後に35重量%樹脂固形分の水性ポリウレタンウレア樹脂分散体を得た。
【0037】
実施例4(NCO官能性ポリウレタンプレポリマーの脱官能基化)
24.08pbwの比較例1に使用したポリエステルジオールと、1.32pbwのジメチロールプロピオン酸と0.88pbwのジメチルイソプロピルアミンとを、攪拌機および還流冷却器を備え付けた反応容器中で3pbwのアセトンと混合した。ポリエステルジオールに対して0.004重量%のジブチルスズジラウレート触媒を添加した。混合物を50℃に加熱した後、9.45pbwのイソホロンジイソシアネートを加え、混合物を、一定のNCO値が得られるまで50℃で撹拌した。NCO基を脱官能基化するためにNCOに対して10%モル過剰のジブチルアミンを加えた。
【0038】
NCO脱官能基化ポリウレタンプレポリマーは、3,800の(GPCによって測定された)数平均モル質量を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)少なくとも1種のケトンの存在下に、少なくとも1種のポリオールと、少なくとも1種の第三級アミン中和ポリヒドロキシカルボン酸と、少なくとも1種のポリイソシアネートとを反応させることによって1.5〜3重量%の遊離イソシアネート基含有率を有する、カルボキシレート官能性の、ゲル化していない、水分散性のポリウレタンプレポリマーを製造する工程と、
2)前記ポリウレタンプレポリマーの前記ケトン溶液を、水と混合することによって水性分散体へ変換する工程と、
3)前記ポリウレタンプレポリマーの前記遊離イソシアネート基を水と、および/またはイソシアネート基に付加してウレア基を形成することができる少なくとも2個のアミノ基を有する少なくとも1種の化合物と反応させることによって前記ポリウレタンプレポリマーを鎖延長させる工程と
を含む、樹脂固形分1gあたり10〜50mgKOHのカルボキシル価および樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトン含有率を有する水性ポリウレタンウレア樹脂分散体の製造方法であって、
工程3)の完了後に得られる前記水性ポリウレタンウレア樹脂分散体が、樹脂固形分に対して5〜10重量%のケトンを含有するような方法で、工程1)で使用される前記ケトンの割合が選択される方法。
【請求項2】
前記ケトン溶媒を部分的にまたは完全に除去するさらなるプロセス工程4)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程1)〜3)からなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリウレタンプレポリマーの前記遊離イソシアネート基含有率が1.7〜2.5重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリヒドロキシカルボン酸対中和第三級アミンの比が70〜100%の中和度に相当する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記中和第三級アミンがジメチルイソプロピルアミンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
プロセス工程1)に用いられるNCO:OH当量比が2:1〜1.1:1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のケトンが、メチルエチルケトンおよびアセトンからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種のケトンは別として、さらなる有機溶媒の添加も使用もなく行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2010−47762(P2010−47762A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−209788(P2009−209788)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】