説明

ポリウレタンエラストマー組成物、及びそれを用いたスクリーン印刷用スキージー

【課題】 生産時のハンドリング性と成形性に優れるワンショット成形用のポリウレタンエラストマー組成物、及び良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能となるスクリーン印刷用スキージーを提供する。
【解決手段】 エチレングリコール(a1)とトリエチレングリコール(a2)とを必須に含むグリコール成分と、コハク酸(b)を必須に含むポリカルボン酸成分とを反応して得られるポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、必要に応じてウレタン化触媒(C)を含有してなるポリエステルポリオール組成物と、ポリイソシアネート(D)を含むポリウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリオール(A)における前記EG(a1)とTEG(a2)との使用量が(a1)/(a2)=10/90〜50/50モル%の範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマー組成物、及びそれを用いたスクリーン印刷用スキージーに関する。更に詳しくは、用いるポリエステルポリオールが常温で液状に保たれているため、生産時のハンドリング性と成形性に優れるポリウレタンエラストマー組成物に関する。また、ポリウレタンエラストマーの良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷を可能としたスクリーン印刷用スキージーに関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷は、例えば、ポスター、プリント配線、服地プリント、陶磁器やガラス製品、金属、プラスチック製品等への印刷に広く用いられており、画像以外の部分のスクリーンの目をつぶして版とし、「スキージー」と呼ばれる用具にてスクリーン目を通してインキを被印刷表面に印刷する方法である。
【0003】
一般に、「スキージー」とは、上記スクリーン上を加圧摺動して、インキを被印刷表面に押出すゴム板をいい、通常、被印刷表面に所定の角度を有するように、ホルダにて固定して用いられる。従って、このスキージーの素材、形状、硬度等は、スキージーの特性に実質的な影響を及ぼし、延いては、印刷特性に重要な影響を与える。
【0004】
従来、スキージーは、例えば、ポリウレタンエラストマー、シリコンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等から製造されているが、これらの中でも、ポリウレタンエラストマーは、機械的強度、耐摩耗性等に優れるため、広く用いられてはいるが、耐溶剤性が未だ不十分であるという問題があった。
【0005】
また、スキージーを用いたスクリーン印刷法は、例えば、電気・電子部品の製造に用いられ、IC用やLSI用のプリント配線基板にクリーム半田を印刷したり、ハイブリッドICやセラミック多層基板を含む各種回路基板、各種電子部品の製造における導電性インキ等の厚塗り印刷などの高度で精密な印刷分野に幅広く利用されつつある。
【0006】
更に近年では、電子機器の小型化と複雑化に伴い、プリント配線基板などの部品の高密度実装が益々要求されており、部品の固定に用いられるクリーム半田の量もより微量になってきている。そのため、微量のクリーム半田を用いて高密度実装を行い、精密で精巧な印刷仕上がりを完成させるには、スキージーの基板上の印刷圧力の安定化が極めて重要な因子となる。
【0007】
しかしながら、従来のポリウレタンエラストマー組成物は生産時のハンドリング性や成形性に劣っていたり、それを用いたスクリーン印刷用のスキージーは耐溶剤性や反発弾性に劣り、印刷圧力が不安定となり、精密で精巧な印刷には不向きであるという問題があった。
【0008】
かかる問題を改良するために、これまでに種々の提案がなされてきた。
【0009】
例えば、スクリーン上のインキを被印刷物に写すスクリーン印刷用スキージーにおいてエチレングリコールとHOOC(CHCOOH (mは3以下の整数)の構造式から成るジカルボン酸との重合によるポリエステルとポリイソシアネートとを反応硬化せしめて得られるウレタンゴムを材質としたスクリーン印刷用スキージーが知られている。かかるスクリーン印刷用スキージーは、力学的特性、耐磨耗性、耐含インク溶剤性が良好であるという(特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のスクリーン印刷用スキージーは、反発弾性に劣り、スクリーン印刷において、精密で精巧な印刷に要求される印刷特性を満足できないという問題があった。
【0011】
特に、エチレングリコールとコハク酸を反応して得られるポリエステルポリオールは、極性が大変高いので得られるポリウレタンエラストマー(ポリウレタン樹脂)の分子鎖のミクロブラウン運動が阻害されてしまい、低温特性に劣る。従って、前記ポリウレタンエラストマーを用いてなるスキージーは、低温条件下で芯部硬度が高くなりすぎて、機械的物性が低下する所謂「ハードコア現象」を生じてしまい、印刷特性を一定に保持することが困難になるという問題があった。
【0012】
また、スクリーン上のインキを被印刷物に写すスクリーン印刷用スキージーにおいて、HOOC(CHCOOH (mは3以下の整数)とエチレングリコールを縮合重合して得られるポリエステルを重合開始剤としたラクトンポリエステルをポリイソシアネート及び硬化剤で反応せしめて得られるウレタンゴムを材料としたスクリーン印刷用スキージーが知られている。かかるスクリーン印刷用スキージーは、各種溶剤に耐え、耐摩耗性が良好であり、高弾性で長期に亘って安定した印刷ができるという(特許文献2参照)。
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載のスクリーン印刷用スキージーも特許文献1と同様、反発弾性に劣り、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷に要求される印刷特性を満足できないという問題があった。また、低温条件下で前記の如きハードコア現象を生じて、印刷特性を一定に保持することが困難になるという問題があった。
【0014】
また、ポリエチレンアジペートポリオール10〜90重量%とラクトンエステルポリオール90〜10重量%とからなるポリオールと、ポリイソシアネートとから得られるウレタンプレポリマーを硬化剤にて硬化させてなるスクリーン印刷用スキージーが知られている。かかるスクリーン印刷用スキージーは、ポリオールとして、ポリエチレンアジペートポリオールとラクトンエステルポリオールとを所定割合にて併用することによって、良好な耐溶剤性を保持しつつ、低温特性が改善されるという(特許文献3参照)。
【0015】
しかしながら、特許文献3に記載のスクリーン印刷用スキージーは、用いられるポリウレタンエラストマーが結晶性に富むため、融点が高く、成形性に劣り生産性が低下するという問題があった。
【0016】
更に、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びコハク酸とからなるポリエステルポリオール10〜90重量%と、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール及びコハク酸からなるポリエステルポリオール90〜10重量%とからなるポリエステルポリオール混合物と、ポリイソシアネートと硬化剤とを反応させて得られるスクリーン印刷用スキージーが知られている。かかるスクリーン印刷用スキージーは、耐溶剤性が良好であるという(特許文献4参照)。
【0017】
しかしながら、特許文献4に記載のスクリーン印刷用スキージーは、反発弾性は比較的良好であるものの、一般的に耐溶剤性を低下させることが知られている「側鎖を有する多価アルコール」の一種であるネオペンチルグリコールを必須成分として含むため、スクリーン印刷で用いられるインキやペーストに含有される有機溶剤に対する耐溶剤性に劣るため、膨潤しやすいという問題があった。
【0018】
従来のポリウレタンエラストマー組成物では、使用するポリエステルポリオールが主として、エチレングリコール−アジピン酸系やエチレングリコール−コハク酸系のポリエステルポリオールであったので、ガラス転移温度(Tg)が比較的高く、反発弾性における損失エネルギーが大きいという欠点を有していた。
【0019】
以上のように、生産時のハンドリング性や成形性に優れるワンショット成形用のポリウレタンエラストマー組成物、及びポリウレタンエラストマーの良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能となるスクリーン印刷用スキージーの開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開昭59−129155号公報
【特許文献2】特開昭59−212269号公報
【特許文献3】特開平3−164254号公報
【特許文献4】特開平4−175325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、生産時のハンドリング性と成形性に優れるポリウレタンエラストマー組成物を目的とする。また、ポリウレタンエラストマーの良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能なスクリーン印刷用スキージーを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレングリコールとトリエチレングリコールとを必須に含むグリコール成分と、コハク酸を必須に含むポリカルボン酸成分とを反応して得られるポリエステルポリオール、鎖伸長剤、必要に応じてウレタン化触媒を含有してなるポリエステルポリオール組成物と、ポリイソシアネートを含むポリウレタンエラストマー組成物であって、特定範囲の使用量のエチレングリコールとトリエチレングリコールを併用することにより、前記ポリエステルポリオールが常温で液状に保たれており、生産時のハンドリング性や成形性に優れるポリウレタンエラストマー組成物、及びポリウレタンエラストマーの良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能なスクリーン印刷用スキージーを得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0023】
即ち、本発明は、エチレングリコール(a1)とトリエチレングリコール(a2)とを必須に含むグリコール成分と、コハク酸(b)を必須に含むポリカルボン酸成分とを反応して得られるポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、必要に応じてウレタン化触媒(C)を含有してなるポリエステルポリオール組成物と、ポリイソシアネート(D)を含むポリウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリエステルポリオール(A)におけるエチレングリコール(a1)とトリエチレングリコール(a2)との使用量が、(a1)/(a2)=10/90〜50/50モル%の範囲であることを特徴とするポリウレタンエラストマー組成物に関するものである。
【0024】
また、本発明は、前記ポリウレタンエラストマー組成物を熱硬化させて得られることを特徴とするスクリーン印刷用スキージーに関するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、エチレングリコールとトリエチレングリコールとを特定の使用量で用いるポリエステルポリオールが常温で液状であるため、生産時のハンドリング性と成形性に優れる。また、本発明のスクリーン印刷用スキージーは、ポリウレタンエラストマーの良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、エチレングリコール(a1)(以下「EG」とも略す。)とトリエチレングリコール(a2)(以下「TEG」とも略す。)とを必須に含むグリコール成分と、コハク酸(b)(以下「SuA」とも略す。)を必須に含むポリカルボン酸成分とを反応して得られるポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、必要に応じてウレタン化触媒(C)を含有してなるポリエステルポリオール組成物、及びポリイソシアネート(D)を含有してなる。本発明は、前記ポリウレタンエラストマー(A)のTgをより低温側にシフトさせるために、ポリエステルポリオール(A)におけるEG(a1)とTEG(a2)との使用量を、特定比率の範囲に限定することにより、スクリーン印刷用スキージーに適した優れた特性を有するポリウレタンエラストマー組成物を得ることができる。
【0027】
本発明で用いるポリエステルポリオール(A)は、グリコール成分としてEG(a1)とTEG(a2)とを必須に併用してなる。
【0028】
前記グリコール成分としてEG(a1)とTEG(a2)を併用せずに、EG(a1)単独使用の場合では、得られるポリエステルが高極性となりすぎて、特に低温域での反発弾性に劣り、本発明の目的を達成することができない。
また、TEG(a2)単独使用の場合では、耐溶剤性に劣り、本発明の目的を達成することができない。
このように、ポリエステルポリオール(A)を構成するグリコール成分として、EG(a1)又はTEG(a2)を使用しない場合には、何れの場合も優れたエラストマー特性を付与することはできない。
【0029】
前記ポリエステルポリオール(A)を構成するグリコール成分において、前記EG(a1)とTEG(a2)との使用量は、(a1)/(a2)=10/90〜50/50モル%の範囲であり、好ましくは25/75〜50/50モル%の範囲である。前記EG(a1)とTEG(a2)との使用量が、かかる範囲であるならば、ポリエステルの極性が適度に下がり常温以下の低温域でもミクロブラウン運動を起こし易いため、優れた反発弾性を発現できる。前記EG(a1)とTEG(a2)との使用量が、かかる範囲を外れると、高温域では反発弾性が向上するものの、常温以下の低温域では十分な反発弾性を得ることができない。また、前記EG(a1)とTEG(a2)との使用量が、(a1)/(a2)=50/50モル%の範囲を超える場合は、常温にて固形となり、作業性や成形性に劣るようになる。
【0030】
また、前記ポリエステルポリオール(A)には、グリコール成分として、必須成分であるEG(a1)とTEG(a2)と共に、多価アルコール(a3)を併用してもよい。
【0031】
前記多価アルコール(a3)としては、反応挙動や目的とする製品の性能や品質などに悪影響を与えなければ、その種類に特に制限はないが、側鎖を有さない多価アルコールの方が、側鎖を有する多価アルコールよりも、耐溶剤性の面でより良好な物性が得られるので好ましい。
【0032】
前記多価アルコール(a3)としては、従来公知のものが何れも使用でき、例えば、側鎖を有さない多価アルコールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエチルベンゼン(BHEB)等の二官能成、グリセリン、ヘキサントリオール等の三官能成分、ペンタエリスリトール等の四官能成分、あるいは、ペンタエリスリトール等の二量体、ソルビトール、マンニトール等の糖類等が挙げられる。また、側鎖を有する多価アルコールとしては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、3,3’−ジメチロールへプタン等の2官能性分、トリメチロールプロパン(TMP)等の三官能成分、トリメチロールプロパン(TMP)の2量体等が挙げられる。これらの中でも、良好な反発弾性や耐溶剤性を得ることができることから、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールがより好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0033】
グリコール成分として、必須であるEG(a1)とTEG(a2)と共に、任意成分である前記多価アルコール(a3)を用いる場合には、前記(a3)の使用量は、(a1)と(a2)の合計量に対して、50モル%を超えないことが好ましく、より好ましくは30%以下である。
【0034】
前記ポリエステルポリオール(A)を構成する必須のポリカルボン酸成分とは、コハク酸(b)(以下「SuA」とも略す。)である。
【0035】
前記ポリカルボン酸成分の全てがSuA(b)であるのが好ましいが、SuA(b)と共にSuA(b)以外のポリカルボン酸を、本発明の目的を阻害しない範囲で併用してもよい。
【0036】
ポリカルボン酸成分として、必須であるSuA(b)と共に、任意成分であるSuA(b)以外のポリカルボン酸を用いる場合には、その使用量は、ポリカルボン酸成分の合計量に対して、50モル%を超えないことが好ましく、より好ましくは30モル%以下である。
【0037】
前記SuA(b)以外のポリカルボン酸としては、特に限定せず、例えば、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの脂肪族ポリカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ポリカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ポリカルボン酸等が挙げられ、これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記ポリエステルポリオール(A)は、EG(a1)とTEG(a2)とを必須に含むグリコール成分と、SuA(b)を必須に含むポリカルボン酸成分とを反応して得ることができ、合成方法については公知慣用の方法にて行えばよく、特に限定しない。
【0039】
前記ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量(以下「Mn」とも云う。高速液体クロマトグラフィーにより後述の条件にて測定。)は、好ましくは500〜5000の範囲であり、より好ましくは2000〜3000の範囲である。前記ポリエステルポリオール(A)のMnがかかる範囲であれば、ポリウレタンの日本工業規格(JIS)のA硬度が各種用途に適した範囲に設定可能であり、且つ、温度依存性が少なく、常温以下の低温条件下でも反発弾性の良好なウレタンエラストマーを得ることができる。
【0040】
前記ポリエステルポリオール(A)の水酸基価は、好ましくは10〜100の範囲であり、より好ましくは30〜60の範囲である。前記ポリエステルポリオール(A)の水酸基価がかかる範囲であれば、耐溶剤性やエラストマー物性(反発弾性等)、作業性が良好なウレタンエラストマーを得ることができる。
【0041】
前記ポリエステルポリオール(A)の酸価は、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.5以下である。前記ポリエステルポリオール(A)の酸価がかかる範囲であれば、ポリエステルポリオールの耐加水分解性や、イソシアネートとの反応性が良好となる。
【0042】
前記ポリエステルポリオール(A)の溶融粘度(測定温度75℃)は、好ましくは10000mPa・s(以下、単位略す。)の範囲であり、より好ましくは5000の範囲である。前記ポリエステルポリオール(A)の溶融粘度がかかる範囲であれば、作業性が良好となり、コンパウンド時のハンドリング性(樹脂攪拌等)にも優れる。
【0043】
また、前記ポリエステルポリオール(A)には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステルポリオール以外のポリオールを、本発明の目的を阻害しない範囲で併用することができる。
【0044】
本発明では、鎖伸長剤(B)を必須に用いる。前記鎖伸長剤(B)としては、特に限定せず、従来公知のものが何れも使用でき、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエチルベンゼン(BHEB)、ビスヒドロキシメチルテレフタレート(BHET)等の二官能成、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリン、ヘキサントリオール等の三官能成分、ペンタエリスリトール等の四官能成分、あるいは、トリメチロールプロパン(TMP)やペンタエリスリトール等の二量体、ソルビトール、マンニトール等の糖類等が挙げられる。これらの中でも、ハードセグメントの凝集力を高くすることで反発弾性や耐溶剤性を向上可能であることから、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン(TMP)、及びビスヒドロキシエチルベンゼン(BHEB)が好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、及びビスヒドロキシエチルベンゼン(BHEB)がより好ましい。
【0045】
前記鎖伸長剤(B)の使用量は、目標とする硬度に合わせて設定すればよく、それにより、反発弾性と耐溶剤性に優れるポリウレタンエラストマー組成物を得ることができる。通常、鎖伸長剤(B)の使用量は、ポリエステルポリオール(A)の使用量に対して、好ましくは1〜25質量%の範囲であり、より好ましくは3〜15質量%の範囲である。
【0046】
また、本発明では、必要に応じて、ウレタン化触媒(C)を用いてもよい。前記ウレタン化触媒(C)としては、特に限定せず、従来公知のものが使用でき、例えば無機酸または有機酸類;Li、Na、K、Rb、Ca、Mg、Sr、Zn、AL、Ti、V、Cr、Mn、Fc、Co、Ni、Cu、Zr、Pd、Sn、Sb、Pbなどの金属の塩化物、酸化物、水酸化物または酢酸、シュウ酸、オクチル酸、ラウリル酸もしくはナフテン酸などの脂肪酸塩類;ナトリウム・メチラート、ナトリウム・エチラート、アルミニウム・トリイソプロポキサイド、イソプロピル・チタネートもしくはn−ブチル・チタネートなどのアルコラート類;ナトリウム・フェノラートなどのフェノラート類;あるいはAl、Ti、Zn、Sn、Zr、Pbなどの金属、その他の有機金属化合物などが挙げられる。
【0047】
前記ウレタン化触媒(C)の使用量は、前記ポリエステルポリオール(A)を合成する際に用いる原料の合計質量に対して、好ましくは0.00001〜5質量%の範囲であり、より好ましくは0.001〜2質量%の範囲である。
【0048】
次いで、前記ポリエステルポリオール組成物と用いるポリイソシアネート(D)について、以下に説明する。
【0049】
本発明で用いるポリイソシアネート(D)としては、特に限定されず、従来公知のものが使用でき、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(略称;MDI;その4,4’体、2,4’体又は2,2’体、若しくはそれらの混合物、クルードMDI)、カルボジイミド変性MDI(変性MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネ−ト(TDI;その2,4体、又は2,6体、若しくはそれらの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネ−ト、あるいはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)等の脂環族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート等が挙げられ、これらの中でも、適度な反応性、優れた機械的物性や反発弾性を得ることができるなどの理由から、MDI、クルードMDI、変性MDIが好ましい。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記ポリイソシアネート(D)の有するイソシアネート基のモル数を[NCO]、及びポリエステルポリオール(A)と鎖伸長剤(B)の有する水酸基のモル数を[OH]で表した場合に、モル比([NCO]/[OH])は好ましくは0.70〜1.20の範囲であり、より好ましくは0.90〜1.10の範囲である。前記[NCO]/[OH]モル比がかかる範囲であれば、ポリウレタンエラストマーの高分子量化が可能となり、優れた反発弾性と耐久性を得ることができる。
【0051】
次に、本発明のポリウレタンエラストマー組成物について、以下に説明する。
【0052】
一般に、ポリウレタンエラストマー組成物の成形方法には、大別して、プレポリマー成形とワンショット成形の2通りの方法がある。
【0053】
プレポリマー成形法は、予め、ポリイソシアネート(D)とポリエステルポリオール(A)とを反応(第1ステップ反応)させてプレポリマーを合成した後、次いで、前記プレポリマーと鎖伸長剤(B)とを反応(第2ステップ反応)させる二段反応である。
【0054】
プレポリマー成形法は、第1ステップで得られるイソシアネート末端プレポリマーの粘度がウレタン成形に影響を及ぼす。特にコハク酸系ポリエステルの場合は粘度が高いので、第2ステップの鎖伸長剤(B)との反応において、攪拌不良を起こしやすいため、樹脂の混ざり具合に注意して成形を行う必要がある。
【0055】
一方、ワンショット成形法は、ポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、必要に応じてウレタン化触媒(C)と、ポリイソシアネート(D)を同時に混合攪拌し成形する一段反応である。
【0056】
ワンショット成形法では、樹脂の粘度が比較的低いので、攪拌が容易で混合不良による成形不良が起こり難いという利点がある。また、ポリエステルと鎖伸長剤(B)の結合配列がランダムになるため、反発弾性の向上が期待できる。反面、樹脂が高分子量化し難いため、成形後の樹脂の養生を充分に行う必要がある。
【0057】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、プレポリマー成形法あるいはワンショット成形法のどちらの成形方法を用いて成形しても生産上問題はないが、上記理由により、ワンショット成形法により成形する方がより好ましい。
【0058】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、日本工業規格 JIS K−7312に規定する反発弾性試験に準じて測定した反発弾性率が、好ましくは35%以上あり、より好ましくは40%以上である硬化物となる。前記硬化物の反発弾性率が35%以上であれば、前記ポリウレタンエラストマー組成物を熱硬化させて得られるスクリーン印刷用スキージーは反発弾性に優れ、印刷圧力が十分に安定となり、精密で精巧な印刷が可能となる。
【0059】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来公知の各種添加剤を任意成分として含有することができる。
【0060】
かかる添加剤としては、特に限定しないが、例えば、可塑剤、酸化防止剤、脱泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤、補強剤、充填剤、着色剤(染料または顔料)、離型剤、安定剤、光安定剤、電気絶縁性向上剤、防かび剤、有機酸の金属塩、ワックス(アミド系他)、金属酸化物、金属水酸化物などの増量剤などを挙げることができる。
【0061】
前記ポリウレタンエラストマー組成物の調整方法は、特に限定しないが、例えば、(方法1)ポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、ウレタン化触媒(C)を含有してなるワンショット成形用のポリエステルポリオール組成物と、ポリイソシアネート(D)とを、一括若しくは分割にて、攪拌し混合して反応させる方法、あるいは(方法2)ポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)を含有してなるワンショット成形用のポリエステルポリオール組成物と、ウレタン化触媒(C)及びポリイソシアネート(D)とを一括若しくは分割にてして攪拌し混合して反応させる方法などを例示できる。その際に、各種添加剤などを任意の段階で添加し混合してもよい。また、必要に応じて真空脱泡処理することにより調製することもできる。
【0062】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、用いるポリエステルポリオールが常温で液状に保たれているため、生産時のハンドリング性と成形性に優れる。
【0063】
次いで、本発明のスクリーン印刷用スキージーについて説明する。
【0064】
本発明でいうスクリーン印刷用スキージーとは、スクリーン上を加圧摺動して、インキを被印刷表面に押出す目的で使用され、通常、被印刷表面に所定の角度を有するように、ホルダにて固定して用いられ、例えば、ポリウレタンエラストマー、シリコンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴムなどの材質の弾性を有する板をいう。従って、このスキージーの素材、形状、硬度等は、スキージーの特性に実質的な影響を及ぼし、延いては、印刷特性に重要な影響を与える。
【0065】
本発明のスクリーン印刷用スキージーは、前記した本発明のポリウレタンエラストマー組成物を熱硬化させて得ることができ、ポリウレタンエラストマーの優れた耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能となる。
【0066】
前記ポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、ウレタン化触媒(C)及びポリイソシアネート(D)を用いて、ポリウレタンエラストマー組成物からなる本発明のスクリーン印刷用スキージーを製造するには、例えば、次のような方法が挙げられる。
即ち、予め脱水処理を行なったポリエステルポリオール(A)と、鎖伸長剤(B)と、ウレタン化触媒(C)を混合し、ポリエステルポリオール組成物(ポリオールコンパウンド)を作成し、このコンパウンドを温度80℃で、常温のポリイソシアネート(D)と1分間混合攪拌し、ポリウレタンエラストマー組成物を調整し、温度120℃に調整した金型に注入し、2時間加熱し、シート状のポリウレタンエラストマー成形品(成形シート)を作成する。
更に、この成形シートを100℃で24時間加熱し、二次硬化させることにより、本発明のスクリーン印刷用スキージーを得ることができる。
【0067】
この際のポリイソシアネート(D)とポリエステルポリオール組成物(ポリオールコンパウンド)とのモル比は、ポリイソシアネート(D)の有するイソシアネート基のモル数を[NCO]、及びポリエステルポリオール組成物(ポリオールコンパウンド)の有する水酸基のモル数を[OH]で表した場合に、モル比([NCO]/[OH])は、好ましくは0.7〜1.2の範囲であり、より好ましくは0.9〜1.1の範囲である。
【0068】
本発明のスクリーン印刷用スキージーは、ポリウレタンエラストマーの良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能となり、例えば、ポスター、プリント配線、服地プリント、陶磁器やガラス製品、金属、プラスチック製品等への印刷に広範囲に利用可能である。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
尚、本発明で用いた測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0070】
〔ポリエステルポリオール(A)の溶融粘度の測定方法〕
各ポリエステルポリオール(A)の溶融粘度(mPa・s)を下記条件にて測定した。
測定機器:BM型粘度計(東京計器株式会社製)
測定温度:75℃又は100℃
ローター:No.3
回転数 :6RPM
【0071】
〔熱硬化性ポリウレタン成形品の反発弾性率の測定方法〕
ポリウレタンエラストマー組成物を調整し、それを用いて後述の如く作成した熱硬化性ポリウレタン成形品(円柱体)を試験体として、日本工業規格 JIS K−7312に規定する反発弾性試験に準じて、反発弾性率を測定した。
尚、反発弾性率の測定結果を下記の基準に従い評価した。
○:35%以上
△:35%未満30%以上
×:30%未満
【0072】
〔ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量(Mn)の測定方法〕
高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC−8220)を用いて、標準分子量のポリスチレンを用いた検量線法によりポリエステルポリオール(A1)〜(A7)の数平均分子量(Mn)を測定した。
【0073】
〔ポリエステルポリオール(A)の水酸基価・酸価・粘度の測定方法〕
JIS K−1557「ポリウレタン用ポリエーテル試験法」に準拠して、ポリエステルポリオール(A)の水酸基価、酸価、粘度の測定を行った。測定結果を第2表に記載した。
【0074】
〔ポリウレタンエラストマー成形品の硬度の測定方法〕
JIS K−7311「熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物性試験方法」に準拠して、ポリウレタンエラストマー成形品の硬度の評価を行った。
【0075】
〔耐溶剤性の試験方法〕
(1)耐溶剤性の試験方法
熱硬化性ポリウレタンエラストマー組成物の成形品の試験体(50×25×2mmのシート)を各々、溶剤〔メチルエチルケトン(MEK)、イソプロパノール(IPA)、ブチルセロソルブ(BCS)〕の中に25℃で22時間浸漬後の質量変化率(%)を下式に従い算出し、耐溶剤性を評価する。
質量変化率(%)=W/W×100
式中、WとWは下記を意味する。
:試験前の試験片の質量
:各溶剤に25℃で22時間浸漬した後の試験片の質量
尚、質量変化率の測定結果を第1表に記載の基準により評価した。
【0076】
【表1】

【0077】
<ポリエステルポリオール(A1)〜(A7)の合成>
〔合成例1〕
5リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてトリエチレングリコール(以下「TEG」と略す。)(a2)2734部、エチレングリコール(以下「EG」と略す。)(a1)396部、ポリカルボン酸成分としてコハク酸(以下「SuA」と略す。)(b)2670部、及び触媒であるテトラブチルチタネート(以下「TBT」と略す。)0.06部を仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。
反応後、得られたポリエステルポリオール(A1)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.42、水酸基価が36.4であった。
【0078】
〔合成例2〕
5リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてTEG(a2)1966部、EG(a1)871部、ポリカルボン酸成分としてSuA(b)2963部、及び触媒であるTBT0.06部を仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。
反応後、得られたポリエステルポリオール(A2)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.37、水酸基価が36.7であった。
【0079】
〔合成例3〕
5リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてTEG(a2)2425部、EG(a1)334部、ポリカルボン酸成分としてSuA(b)2241部、及び触媒であるTBT0.06部を仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。
反応後、得られたポリエステルポリオール(A3)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.28、水酸基価が56.4であった。
【0080】
〔合成例4〕
5リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてTEG(a2)2820部、EG(a1)61部、ポリカルボン酸成分としてSuA(b)2119部、及び触媒であるTBT0.06部を仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。
反応後、得られたポリエステルポリオール(A4)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.31、水酸基価が36.1であった。
【0081】
〔合成例5〕
5リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてTEG(a2)1104部、EG(a1)1410部、ポリカルボン酸成分としてSuA(b)3286部、及び触媒であるTBT0.06部を仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。
反応後、得られたポリエステルポリオール(A5)は、常温で白色固体であり、酸価が0.47、水酸基価が36.0であった。
【0082】
〔合成例6〕
5リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてジエチレングリコール(以下「DEG」と略す。)1536部、EG(a1)963部、ポリカルボン酸成分としてSuA(b)3300部、及び触媒であるTBT0.06部を仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。
反応後、得られたポリエステルポリオール(A6)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.16、水酸基価が37.0であった。
【0083】
〔合成例7〕
5リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてEG(a1)1577部、ポリカルボン酸成分としてアジピン酸(以下「AA」と略す)3423部、及び触媒であるTBT0.06部を仕込み、窒素導入管より窒素気流下、220℃で24時間反応させた。
反応後、得られたポリエステルポリオール(A7)は、常温で白色固体であり、酸価が0.28、水酸基価が37.2であった。
【0084】
〔実施例1〜3〕及び〔比較例1〜4〕
<ワンショット成形法によるポリウレタン成形品の作成>
第2表に示す配合組成に従い、合成例1〜7で得られたポリエステルポリオール(A1)〜(A7)、鎖伸長剤(B1)としてビスヒドロキシエチルベンゼン(以下「BHEB」と略す。)、または鎖伸長剤(B2)として1,4ブタンジオール(以下「1,4BG」と略す。)とトリメチロールプロパン(以下「TMP」と略す。)を質量比で9:1の割合で混合してなる混合物を、100℃で加熱溶解し、更にウレタン化触媒(C)であるネオスタンU−830(商標、日東化成株式会社製、ジオクチル錫ジデカネート)を混合攪拌し、ポリエステルポリオール組成物(ポリオールコンパウンド)を調整した。
次いで、ポリイソシアネート(D)であるコロネートMX(商標、日本ポリウレタン株式会社製、液状MDI)を混合攪拌し、高さ12mm、直径25mmの円柱体を成形する金型に注入し、120℃で2時間、110℃で16時間加熱硬化させ反発弾性測定用のポリウレタン成形品を作成した。
また、同様に、樹脂を混合攪拌し、型温度120℃に設定した遠心成型機中に注入し、120℃で1時間加熱し2mm厚のシート状のウレタンエラストマー成形品を作成した。更に、それを110℃で16時間、二次硬化させて、スキージー用熱硬化性ポリウレタン成形品を作成した。
実施例1〜3及び比較例1〜4の評価結果を第2表に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
鎖伸長剤(B1):ビスヒドロキシエチルベンゼン(BHEB)
鎖伸長剤(B2):1,4−ブタンジオール/トリメチロールプロパン=9/1質量比
ウレタン化触媒(C) :ネオスタンU−830(日東化成株式会社製)
ポリイソシアネート(D):コロネートMX(日本ポリウレタン工業株式会社製)
【0088】
実施例1〜3で用いたポリエステルポリオール(A1)〜(A3)は、常温で液体であり生産時のハンドリング性や作業性に優れていた。一方、比較例2と4で用いたポリエステルポリオール(A5)と(A7)は、常温で固体であるため、粉砕や加熱溶融などの煩雑な工程が不可欠であり、生産時のハンドリング性や作業性が実施例と較べて大幅に劣る。
また、実施例1〜3で得たポリウレタン成形品は、反発弾性、耐溶剤性に優れており、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能となるスクリーン印刷用スキージーを提供できる。一方、比較例1で得たポリウレタン成形品は、反発弾性は良好であるものの、耐溶剤性に劣ることが判る。また、比較例2〜4で得たポリウレタン成形品はいずれも反発弾性に極めて劣り、良好な性能を有するスクリーン印刷用スキージーを得ることができない。特に比較例4で得たポリウレタン成形品は、MEK、IPA、BCSの全てに対し耐溶剤性に著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、ポリエステルポリオールが常温で液状に保たれているため、生産時のハンドリング性と成形性に優れる。また、本発明のポリウレタンエラストマー組成物を熱硬化させてなるスクリーン印刷用スキージーは、ポリウレタンエラストマーの良好な耐溶剤性を保持したままで、エラストマー特性(特に反発弾性)が改良され、スクリーン印刷において精密で精巧な印刷が可能となり、例えば、ポスター、プリント配線、服地プリント、陶磁器やガラス製品、金属、プラスチック製品等への印刷に広範囲に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレングリコール(a1)とトリエチレングリコール(a2)とを必須に含むグリコール成分と、コハク酸(b)を必須に含むポリカルボン酸成分とを反応して得られるポリエステルポリオール(A)、鎖伸長剤(B)、必要に応じてウレタン化触媒(C)を含有してなるポリエステルポリオール組成物と、ポリイソシアネート(D)を含むポリウレタンエラストマー組成物であって、前記ポリエステルポリオール(A)におけるエチレングリコール(a1)とトリエチレングリコール(a2)の使用量が、(a1)/(a2)=10/90〜50/50モル%の範囲であることを特徴とするポリウレタンエラストマー組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量が、500〜5000の範囲である請求項1記載のポリウレタンエラストマー組成物。
【請求項3】
前記鎖伸長剤(B)が、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、及びビスヒドロキシエチルベンゼンから選ばれる少なくとも一つである請求項1記載のポリウレタンエラストマー組成物。
【請求項4】
日本工業規格 JIS K−7312に規定する反発弾性試験に準じて測定した反発弾性率が、35%以上の硬化物となる請求項1記載のポリウレタンエラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のポリウレタンエラストマー組成物を熱硬化させて得られることを特徴とするスクリーン印刷用スキージー。

【公開番号】特開2011−168690(P2011−168690A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33447(P2010−33447)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】