説明

ポリウレタンスラブフォーム

【課題】低密度で且つ高弾性のポリウレタンスラブフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、整泡剤と、水とを含む原料混合物から得られるポリウレタンスラブフォームであって、前記ポリオール成分の30〜80質量%は、分子量が6000以上の高分子量ポリオールであって、前記整泡剤が高反発スラブ用整泡剤であることを特徴とするポリウレタンスラブフォームである。前記ポリオール成分は、更にポリマーポリオールを含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンスラブフォーム、特には、低密度で且つ高弾性のポリウレタンスラブフォームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寝具用マットレス、枕、家具のクッション材等の用途に、軟質ポリウレタンスラブフォームが使用されている。該軟質ポリウレタンスラブフォームは、一般に、コンベア上に連続的に繰り出される紙またはプラスチックフィルムの上に、専用の発泡機で連続的に計量混合した原料混合液を吐出し、発泡硬化させて製造され、その後、適当な大きさに切り出されて、各種製品に利用されている。そして、該ポリウレタンスラブフォームは、上記のような用途に使用されるため、一般に反発弾性が高いことが好ましい。
【0003】
例えば、特開2006−316210号には、反発弾性に優れる軟質ポリウレタンスラブフォームとして、(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネートと、(B)ヒドロキシル基を供給し且つ数平均分子量が6000以上のポリオールと、(C)有機化ケイ酸塩と、(D)水とを含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させてなる軟質ポリウレタンスラブフォームが提案されており、特開2006−316210号の実施例には、具体的に、反発弾性が65%以上の軟質ポリウレタンスラブフォームが開示されている。
【特許文献1】特開2006−316210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリウレタンスラブフォームは、上記のような用途に使用されるため、反発弾性率が高いことに加えて、密度が低い方が好ましい。しかしながら、低密度で且つ高弾性のポリウレタンスラブフォームを得ることは難しく、例えば、上述の特開2006−316210号の実施例に開示の軟質ポリウレタンスラブフォームは、反発弾性が65%以上であるものの、密度が60kg/m3であり、更に密度の低いポリウレタンスラブフォームを開発する必要がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、低密度で且つ高弾性のポリウレタンスラブフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、整泡剤と、水とを含み、前記ポリオール成分が高分子量ポリオールを特定量含み、前記整泡剤として高反発スラブ用整泡剤を使用したスラブフォーム用原料混合物を発泡硬化させてなるポリウレタンスラブフォームが、低密度で且つ高弾性であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明のポリウレタンスラブフォームは、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、整泡剤と、水とを含む原料混合物から得られるポリウレタンスラブフォームであって、
前記ポリオール成分の30〜80質量%は、分子量が6000以上の高分子量ポリオールであって、
前記整泡剤が高反発スラブ用整泡剤である
ことを特徴とする。なお、上記高分子量ポリオールの分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
【0008】
本発明のポリウレタンスラブフォームの好適例においては、前記ポリオール成分がポリマーポリオールを含む。この場合、ポリウレタンスラブフォームの硬度の低下を抑制することができる。ここで、上記ポリマーポリオールは、分子量が5000以上であることが好ましい。なお、該ポリマーポリオールの分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
【0009】
また、前記高反発スラブ用整泡剤は、平均分子量が1000〜3000の整泡剤(A)と平均分子量が3000より大きい整泡剤(B)と平均分子量が1000より小さい整泡剤(C)とを、質量比(A:B)が100:0〜95:5で、質量比(A:C)が100:0〜95:5で混合してなることが好ましい。なお、上記整泡剤(A)、整泡剤(B)及び整泡剤(C)の平均分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
【0010】
本発明のポリウレタンスラブフォームにおいて、前記原料混合物は、前記ポリオール成分100質量部に対して前記水を1.9〜4質量部含むことが好ましい。この場合、ポリウレタンスラブフォームが低密度(軽量)でも、安定して発泡させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高分子量ポリオールを特定量含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、高反発スラブ用整泡剤と、水とを含む混合物を原料とした、低密度で且つ高弾性なポリウレタンスラブフォームを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のポリウレタンスラブフォームは、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、整泡剤と、水とを含む原料混合物から得られ、前記ポリオール成分の30〜80質量%は、分子量が6000以上の高分子量ポリオールであって、前記整泡剤が高反発スラブ用整泡剤であることを特徴とし、低密度で且つ高弾性である。ここで、本発明のポリウレタンスラブフォームは、特に限定されるものではないが、密度が好ましくは60kg/m3以下であり、また、反発弾性率が好ましくは65%以上である。
【0013】
本発明のポリウレタンスラブフォームに用いる原料混合物は、ポリオール成分を含み、該ポリオール成分は、分子量が6000以上の高分子量ポリオールを30〜80質量%含む。ポリオール成分中の分子量6000以上の高分子量ポリオールの割合が30質量%未満では、反発弾性率が十分に高くならないことがあり、一方、80質量%を超えると、原料混合物が十分に発泡しないことがある。
【0014】
上記高分子量ポリオールは、分子量が6000以上であり、7000〜10000であることが好ましい。高分子量ポリオールの分子量が6000未満では、反発弾性率が高くならないことがあり、一方、7000以上とすることで、反発弾性率を十分に高くすることができる。また、高分子量ポリオールの分子量が10000を超えると、ポリオールの不飽和度が大きくなり、安定発泡ができないことがある。
【0015】
上記高分子量ポリオールは、分子量が6000以上である限り特に限定されない。該ポリオールとして、具体的には、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。なお、該ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られる。上記高分子量ポリオールとしては、市販品を使用することができ、例えば、三井化学ポリウレタン社製の「FC24」、三洋化成社製の「FA−155」等を使用することができる。
【0016】
上記ポリオール成分は、上記高分子量ポリオールと共に、ポリマーポリオールを含むことが好ましい。ポリオール成分がポリマーポリオールを含む場合、ポリウレタンスラブフォームの硬度の低下を抑制することができる。ここで、本発明のポリウレタンスラブフォームの硬度は、特に限定されるものではないが、好ましくは50N以上、より好ましくは100〜200Nである。硬度がこの範囲であれば、クッション材として好適である。
【0017】
なお、上記ポリマーポリオールは、分子量が5000以上であることが好ましい。
【0018】
上記ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールにポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたポリマーポリオール等が挙げられ、該ポリマーポリオールは、上記ポリマー成分を通常25〜50質量%含有する。該ポリマーポリオールのポリオール成分中での割合は、20〜70質量%の範囲が好ましい。ポリオール成分中のポリマーポリオールの割合を20質量%以上とすることで、ポリウレタンスラブフォームの硬度の低下を十分に抑制することができ、一方、70質量%を超えると、上記高分子量ポリオールの割合が不足して、ポリウレタンスラブフォームの反発弾性率が十分に高くならないことがある。なお、上記ポリマーポリオールとしては、市販品を使用することができ、例えば、三洋化成社製の「KC841」、「KC855」、三井化学ポリウレタン社製の「POP3428」、「POP3690」等を使用することができる。
【0019】
本発明のポリウレタンスラブフォームに用いる原料混合物は、ポリイソシアネート成分を含む。該ポリイソシアネート成分は、特に限定されるものではなく、イソシアネート基(NCO基)を複数有する化合物から適宜選択して使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等が挙げられる。これらポリイソシアネート成分は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、該ポリイソシアネート成分としては、市販品を使用することができる。
【0020】
本発明のポリウレタンスラブフォームに用いる原料混合物は、整泡剤として、高反発スラブ用整泡剤を含む。該高反発スラブ用整泡剤は、高反発弾性のポリウレタンスラブフォームの原料混合物に使用されるものであり、ポリウレタンスラブフォームの反発弾性率を向上させることができる。
【0021】
上記高反発スラブ用整泡剤は、平均分子量が1000〜3000の整泡剤(A)と平均分子量が3000より大きい整泡剤(B)と平均分子量が1000より小さい整泡剤(C)とを、質量比(A:B)が100:0〜95:5で、質量比(A:C)が100:0〜95:5で混合してなることが好ましく、かかる整泡剤は、ポリウレタンスラブフォームの反発弾性率の向上効果が大きい。なお、整泡剤(A)と整泡剤(B)との質量比(A:B)、整泡剤(A)と整泡剤(C)との質量比(A:C)が上記の範囲を外れると、反発弾性率の向上効果が小さいことがある。
【0022】
上記高反発スラブ用整泡剤としては、シリコーン系整泡剤が挙げられ、市販品を使用することができ、例えば、モメンティブ・パフォーマンスマテリアル社製の「L−2100」、エボニック社製の「B8716LF」、モメンティブ・パフォーマンスマテリアル社製の「Y10366」等を使用することができる。
【0023】
上記高反発スラブ用整泡剤の配合量は、上記ポリオール成分100質量部に対して0.2〜5.0質量部の範囲が好ましい。高反発スラブ用整泡剤の配合量がポリオール成分100質量部に対して0.2質量部以上であれば、ポリウレタンスラブフォームの反発弾性率を十分に向上させることができ、また、5.0質量部以下とすることで、安定的に発泡させることができる。
【0024】
本発明のポリウレタンスラブフォームに用いる原料混合物は、水を含む。該水の配合量は、上記ポリオール成分100質量部に対して1.0〜4質量部の範囲が好ましく、1.9〜4質量部の範囲が特に好ましい。水の配合量がポリオール成分100質量部に対して1.0〜4質量部であれば、発泡可能であり、また、1.9〜4質量部であれば、低密度(軽量)でありながらも、安定した発泡を達成することができる。
【0025】
本発明のポリウレタンスラブフォームに用いる原料混合物は、更に、通常、ポリウレタンスラブフォーム用原料混合物に添加される添加剤を更に含んでもよい。該添加剤としては、例えば、触媒等が挙げられる。該触媒として、具体的には、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン等のアミン触媒が挙げられる。
【0026】
本発明のポリウレタンスラブフォームは、例えば、上述した原料混合物を発泡機で連続的に計量混合して、コンベア上に連続的に繰り出される紙やプラスチックフィルムの上に吐出し、発泡硬化させて製造される。また、本発明のポリウレタンスラブフォームは、発泡硬化後、適当な大きさに切り出されて、寝具用マットレス、枕、家具のクッション材等の各種製品に利用することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
表1及び2に示す配合のポリウレタンスラブフォーム用原料混合物を調製し、スラブ成型装置を用いてポリウレタンスラブフォームを作製した。次に、得られたポリウレタンスラブフォームのセル外観、通気性、密度、硬度、反発弾性率を下記の方法で評価した。結果を表1及び2に示す。
【0029】
(1)セル外観
ポリウレタンスラブフォームのセル外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:特に良好
○:良好
×:不良
【0030】
(2)通気性
JIS K6400−7に従ってポリウレタンスラブフォームの通気性を測定し、以下の基準で評価した。
◎:特に良好
○:良好
×:不良
【0031】
(3)密度
JIS K 6400:2004に記載の方法により、全密度の測定を実施した。ここで、全密度とは、JIS規格で規定している「見掛け密度」を指す。スラブフォームの中心部(スキン層を含まない部分)から直方体フォームサンプルを切り出し、全密度の測定を行った。
【0032】
(4)硬度及び反発弾性率
JIS K 6400:2004に準じて測定した。なお、スラブフォームの中心部(スキン層を含まない部分)から直方体フォームサンプルを切り出して試験片とした。該試験片の空気を逃げ易くするために、直径6mm、中心距離19mmの多数の小孔のあいた台上に試験片を置いた。次に自動記録装置を有するインストロン型圧縮荷重試験機を用いて、直径200mmの円形加圧板で試験片の上面から押さえつけた。このとき、φ300mm以上の円形を含む大きさの試験片を用い、ILD(局部圧縮)で試験を行った。前荷重として4.9Nかけた時の厚さを測定し、これをはじめの厚さとした。次に、円形加圧板を100mm/minの速さではじめの厚さの75%の距離を押し込んだ。押し込んだ後、直ちに100mm/minの速さで加圧板を上昇させ、はじめの厚さまで戻した。直ちに、再び同じ速度で初めの厚さの25%の距離まで圧縮し、静止させて20秒後の荷重を読み、これを硬度とした。また、金属のボールを所定の位置から落下させて最初の高さに対する跳ね返った高さの割合を反発弾性率とした。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
*1 ポリオール1:三井化学ポリウレタン製「FC24」、Mw=7000
*2 ポリオール2:三洋化成製「KC725」、Mw=5000
*3 ポリオール3:三洋化成製、Mw=3000
*4 ポリマーポリオール:三井化学ポリウレタン製「POP3428」、Mw=5000
*5 ポリイソシアネート1:三井武田ケミカル製「T−80」、トリレンジイソシアネート(TDI)
*6 ポリイソシアネート2:住化バイエルウレタン製「c−MDI」、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート
*7 高反発スラブ用整泡剤:モメンティブ・パフォーマンスマテリアル製「L−2100」、平均分子量が1000〜3000の整泡剤(A)と平均分子量が3000より大きい整泡剤(B)と平均分子量が1000より小さい整泡剤(C)との混合物[質量比(A:B)=100:0〜95:5、質量比(A:C)=100:0〜95:5]
*8 スラブ用整泡剤:東レ・ダウコーニング製「L−6202B」
*9 モールド用整泡剤:モメンティブ・パフォーマンスマテリアル製「L3623」
【0036】
表1から、本発明に従う実施例のポリウレタンスラブフォームは、低密度で且つ反発弾性率が高いことが分かる。
【0037】
また、表2の比較例10から、分子量6000以上のポリオールを使用しないと、高反発スラブ用整泡剤を使用しても、反発弾性率が低いことが分かる。
【0038】
更に、比較例7から、ポリオール成分中の分子量6000以上のポリオールの割合が30質量%未満であると、高反発スラブ用整泡剤を使用しても、反発弾性率が低いことが分かる。また、比較例8から、ポリオール成分中の分子量6000以上のポリオールの割合が80質量%を超えると、高反発スラブ用整泡剤を使用しても、原料混合物が十分に発泡しないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、整泡剤と、水とを含む原料混合物から得られるポリウレタンスラブフォームであって、
前記ポリオール成分の30〜80質量%は、分子量が6000以上の高分子量ポリオールであって、
前記整泡剤が高反発スラブ用整泡剤である
ことを特徴とするポリウレタンスラブフォーム。
【請求項2】
前記ポリオール成分がポリマーポリオールを含むことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンスラブフォーム。
【請求項3】
前記ポリマーポリオールは、分子量が5000以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリウレタンスラブフォーム。
【請求項4】
前記高反発スラブ用整泡剤は、平均分子量が1000〜3000の整泡剤(A)と平均分子量が3000より大きい整泡剤(B)と平均分子量が1000より小さい整泡剤(C)とを、質量比(A:B)が100:0〜95:5で、質量比(A:C)が100:0〜95:5で混合してなることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンスラブフォーム。
【請求項5】
前記原料混合物は、前記ポリオール成分100質量部に対して前記水を1.9〜4質量部含むことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンスラブフォーム。

【公開番号】特開2010−37468(P2010−37468A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203800(P2008−203800)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】