説明

ポリウレタン弾性糸およびその製造方法

【課題】 伸度、回復性、耐光性に優れ、ストレッチ布帛や衣服用などに好適なポリウレタン弾性糸を提供する。併せてその製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸を製造する際、次の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1種を含有させる。
(A)分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤
(B)分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
(C)分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性糸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途や産業資材用途に幅広く使用されている。
【0003】
かかる弾性繊維の中でも特に多用されているものとしてポリウレタン弾性糸が挙げられるが、ポリウレタン弾性糸は光により劣化や着色を生じ易いという欠点がある。そのため、ポリウレタン弾性糸を用いた伸縮繊維製品は、屋内展示された際、衣服として着用された際、及び、洗濯して屋外で干す際等において、使用されているポリウレタン弾性糸が光により徐々に脆化していく。
【0004】
ところで、ポリウレタン弾性糸の光による脆化を防止するために、ポリウレタンとともに種々の紫外線吸収剤を添加した紡糸原液を紡糸してポリウレタン弾性糸を製造する技術が知られている(特許文献1、2)。また、添加した紫外線吸収剤が高次加工工程での摩擦、熱処理、染色、あるいは、繊維製品にした後の洗濯、ドライクリーニングなどによる脱落を防止し、優れた耐光性を維持させるために、特定の紫外線吸収剤をポリウレタンに共重合する技術も知られている(特許文献3)。
【0005】
しかし、これらの技術は、いずれも光劣化を防ぐことを目的としており、紫外線吸収剤を添加することで、紡糸直後のポリウレタン弾性糸の破断強伸度特性、回復性は、紫外線吸収剤無添加のものと比較すると良くても同等、場合によっては低下してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−169700号公報
【特許文献2】特開2001−81310号公報
【特許文献3】特開2006−307351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特定の紫外線吸収剤を添加することにより、耐光性とともに強伸度特性(破断強度、破断伸度)、回復性を向上し、また、高次加工時の後処理や洗濯による紫外線吸収剤の脱落を少なくし得るポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、実使用領域での歪みを与えた際の応力(以下、実使用領域での強度という)を高めることができるポリウレタン弾性糸およびその製造方法を提供することも目的とする
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリウレタン弾性糸は、前記の目的を達成するため、以下のいずれかの手段を採用する。
(1) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸であって、次の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
(A)分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤
(B)分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
(C)分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤
(2) 前記(A)を含有し、かつ、前記(A)が、不飽和カルボン酸系化合物とベンゾトリアゾール骨格を有する化合物および/またはベンゾフェノン骨格を有する化合物との共重合物であることを特徴とする、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(3) 前記(A)を含有し、かつ、前記(A)が、メタクリル酸骨格を有する化合物とベンゾトリアゾール骨格を有する化合物および/またはベンゾフェノン骨格を有する化合物との共重合物であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のポリウレタン弾性糸。
(4) 前記(B)を含有し、かつ、前記(B)のアルコキシ基が炭素数1から40であることを特徴とする、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(5) 前記(B)のアルコキシ基が炭素数6から20であることを特徴とする、前記(4)に記載のポリウレタン弾性糸。
(6) 前記(C)を含有し、かつ、前記(C)がアルコキシ基を含有することを特徴とする、前記(1)に記載のポリウレタン弾性糸。
(7) ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、次の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1種を含有させて、弾性糸を製造することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
(A)分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤
(B)分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
(C)分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリウレタン弾性糸は、特定の紫外線吸収剤を添加することにより、紫外線吸収剤無添加の物や他の紫外線吸収剤を含む物に比べ、高強伸度、高回復性を有し、且つ耐光性にも優れたものとなる。また、高次加工時の後処理や洗濯による紫外線吸収剤の脱落も少なく、優れた耐光性を維持することができる。さらに、実使用領域での強度を高めることも可能となる。そのため、このような弾性糸を使用した衣服などは、脱着性、フィット性、着用感、耐変色性、外観品位などに優れ、さらに薄地で軽量化することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるポリウレタンは、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンであれば任意のものであってよく、特に限定されるものではない。また、その合成法も特に限定されるものではない。
【0011】
すなわち、例えば、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジアミンからなるポリウレタンウレアであってもよく、また、ポリマージオールとジイソシアネートと低分子量ジオールからなるポリウレタンであってもよい。また、鎖伸長剤として水酸基とアミノ基を分子内に有する化合物を使用したポリウレタンウレアであってもよい。なお、本発明の効果を妨げない範囲で3官能性以上の多官能性のグリコールやイソシアネート等が使用されることも好ましい。
【0012】
ここで、本発明におけるポリウレタンを構成する代表的な構造単位について述べる。
【0013】
ポリウレタンを構成する構造単位のポリマージオールとしては、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等が好ましい。そして、特に柔軟性、伸度を糸に付与する観点からポリエーテル系ジオールが使用されることが好ましい。
【0014】
ポリエーテル系ジオールは、次の一般式で表される単位を含む共重合ジオール化合物を含むことが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
(但し、a、cは1〜3の整数、bは0〜3の整数、R1、R2はH又は炭素数1〜3のアルキル基)
このポリエーテル系ジオール化合物としては、具体的には、ポリエチレングリコール、変性ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略す)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)および3−メチル−THFの共重合体である変性PTMG、THFおよび2,3−ジメチル−THFの共重合体である変性PTMG、THF及びネオペンチルグリコールの共重合体である変性PTMG、THFとエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが不規則に配列したランダム共重合体等が挙げられる。これらポリエーテル系グリコール類の1種を使用してもよいし、また2種以上混合もしくは共重合して使用してもよい。その中でもPTMGまたは変性PTMGが好ましい。
【0017】
また、ポリウレタン弾性糸における耐摩耗性や耐光性を高める観点からは、ブチレンアジペート、ポリカプロラクトンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとポリプロピレンポリオールの混合物をアジピン酸等と縮重合することにより得られる側鎖を有するポリエステルジオールなどのポリエステル系グリコールや、3,8−ジメチルデカン二酸及び/又は3,7−ジメチルデカン二酸からなるジカルボン酸成分とジオール成分とから誘導されるジカルボン酸エステル単位を含有するポリカーボネートジオール等が好ましく使用される。
【0018】
こうしたポリマージオールは単独で使用されてもよいし、2種以上を混合もしくは共重合して使用されてもよい。
【0019】
本発明に使用されるポリマージオールの分子量は、弾性糸にした際の伸度、強度、耐熱性などを所望水準とするために、数平均分子量で1000〜8000が好ましく、1800〜6000がより好ましい。この範囲の分子量のポリマージオールが使用されることにより、伸度、強度、弾性回復力、耐熱性に優れた弾性糸を得ることができる。
【0020】
次に、ポリウレタンを構成する構造単位のジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが、特に耐熱性や強度の高いポリウレタンを合成するのに好適である。さらに脂環族ジイソシアネートとして、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5−ナフタレンジイソシアネートなどが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、特にポリウレタン弾性糸の黄変を抑制する際に有効に使用できる。そして、これらのジイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
次に、ポリウレタンを構成する構造単位の鎖伸長剤としては、低分子量ジアミンおよび低分子量ジオールのうち少なくとも1種を使用するのが好ましい。なお、エタノールアミンのような水酸基とアミノ基を分子中に有するものであってもよい。
好ましい低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン(以下、EDAと略す)、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、1,3−シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレンジアミンである。エチレンジアミンを用いることにより伸度および弾性回復性、さらに耐熱性に優れた糸を得ることができる。これらの鎖伸長剤に架橋構造を形成することのできるトリアミン化合物、例えば、ジエチレントリアミン等を効果を失わない程度に加えてもよい。
【0022】
また、低分子量ジオールとしては、エチレングリコール(以下、EGと略す)、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1−メチル−1,2−エタンジオールなどは代表的なものである。これらの中から1種または2種以上が使用されることも好ましい。特に好ましくはエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオールである。これらを用いると、ジオール伸長のポリウレタンとしては耐熱性が高く、また、強度の高い糸を得ることができるのである。
さらに、本発明におけるポリウレタンには、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤として、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0023】
また、本発明においてポリウレタンの分子量は、耐久性や強度の高い繊維を得る観点から、数平均分子量として40000以上150000以下の範囲であることが好ましい。なお、分子量はGPCで測定しており、ポリスチレンにより換算した値である。
【0024】
そして、本発明の弾性糸を構成するポリウレタンとして特に好ましいものは、工程通過性も含め、実用上の問題がなく、かつ、高耐熱性に優れたものを得る観点から、ジオールとジイソシアネートからなり、かつ高温側の融点が150℃以上300℃以下の範囲となるものである。ここで、高温側の融点とは、DSCで測定した際のポリウレタンまたはポリウレタンウレアのいわゆるハードセグメント結晶の融点が該当する。
【0025】
即ち、ポリマージオールとして分子量が1000以上8000以下の範囲にあるPTMG、ジイソシアネートとしてMDI、鎖伸長剤としてエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミンからなる群から少なくとも1種選ばれたものが使用されてポリウレタンが合成され、かつ、高温側の融点が150℃以上300℃以下の範囲であるポリウレタンから製造された弾性糸は、特に伸度が高くなり、さらに上記のように、工程通過性も含め、実用上の問題はなく、かつ、高耐熱性に優れるので好ましい。
【0026】
以上のようなポリウレタンからなる本発明のポリウレタン弾性糸は、(A)分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤、(B)分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、(C)分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤、の少なくとも1種を含有することを特徴とするものである。
【0027】
本発明で用いる、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とは、ベンゾトリアゾール骨格を有する芳香族複素環化合物の芳香族水素原子を不飽和結合を有する化合物残基が置換した化合物であれば特に制限はなく、例えば、不飽和結合を有する化合物をモノマーとしてベンゾトリアゾール骨格を有する化合物と重合した化合物が挙げられる。その場合、モノマーとして不飽和結合を有する化合物のみを用いても、その他のモノマーを含む共重合体を用いてもよい。また、不飽和結合を有する化合物としては、ビニル化合物、アリル化合物、不飽和カルボン酸などが好ましい。
【0028】
このような紫外線吸収剤としては、具体的に、化2に示す構造を有するものを挙げることができる。中でも、強伸度特性(破断強度、破断伸度)、回復性の観点から、アクリル酸骨格やメタクリル酸骨格などの不飽和カルボン酸系化合物とベンゾトリアゾール骨格を持つ化合物との共重合物がより好ましく、特に紡糸溶液の安定性や紡糸連続性の観点から、メタクリル酸骨格を持つ化合物とベンゾトリアゾール骨格を持つ化合物との共重合物が好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
(但し、R(A)は不飽和結合を一つ以上含有する一価の有機基)。
【0031】
具体的には、2−(2′−ヒドロキシ−3′−アリル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−アリル−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−イソプロペニル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−イソプロペニル−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−アクリロイルオキシ−5′−メチル)ベンゾトリアゾール、2 −( 2′− ヒドロキシ− 5' − メタクリロキシメチルフェニル)−2 H−ベンゾトリアゾール、2 −( 2′− ヒドロキシ− 5' − メタクリロキシエチルフェニル)−2 H−ベンゾトリアゾール、2 −( 2′− ヒドロキシ− 5' − メタクリロキシプロピルフェニル)−2 H−ベンゾトリアゾールなどが好ましく、とりわけ、化3に示される2 −( 2′− ヒドロキシ− 5' − メタクリロキシメチルフェニル)−2 H−ベンゾトリアゾールが、強伸度特性、回復性、紡糸性の観点から特に好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
本発明で用いる、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤とは、ベンゾフェノン骨格を有する芳香族化合物の芳香族水素原子を不飽和結合を有する化合物残基が置換した化合物であれば特に制限はなく、例えば、不飽和結合を有する化合物をモノマーとしてベンゾフェノン骨格を有する化合物と重合した化合物が挙げられる。その場合、モノマーとして不飽和結合を有する化合物のみを用いても、その他のモノマーを含む共重合体を用いてもよい。また、不飽和結合を有する化合物としては、ビニル化合物、アリル化合物、不飽和カルボン酸系化合物などが好ましい。
【0034】
このような紫外線吸収剤としては、具体的に、化4に示す構造を有するものを挙げることができる。中でも、強伸度特性(破断強度、破断伸度)、回復性の観点から、アクリル酸骨格やメタクリル酸骨格などの不飽和カルボン酸系化合物とベンゾフェノン骨格を持つ化合物との共重合物がより好ましく、特に紫外線吸収剤の脱落や紡糸溶液の安定性の観点から、メタクリル酸骨格を持つ化合物とベンゾフェノン骨格を持つ化合物との共重合物が好ましい。
【0035】
【化4】

【0036】
(但し、R(A‘)は不飽和結合を一つ以上含有する一価の有機基)。
【0037】
具体的には、2−ヒドロキシ−3−アリル−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−アリル−5−オクチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−イソプロペニル−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−イソプロペニル−5−t−オクチルベンゾフェノン、2−アクリロイルオキシ−5−メチルベンゾフェノン、2− ヒドロキシ−5−メタクリロキシメチルベンゾフェノン、2− ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルベンゾフェノン、とりわけ、化5に示される2− ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルベンゾフェノンが、紫外線吸収剤の脱落、強伸度特性、回復性の観点から特に好ましい。
【0038】
【化5】

【0039】
本発明で用いる、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とは、アルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であれば特に制限はなく、好ましくはアルコキシ基として炭素数1以上40以下、さらに好ましくは炭素数1以上35以下、より好ましくは炭素数1以上24以下、最も好ましくは炭素数6以上20以下が、強伸度特性、回復性を向上することに対し好適であり、紡糸性の観点からも好適である。また、他の官能基を含有しても良く、ポリウレタンへの相溶性の観点からハロゲンを含有していたり、ベンゾトリアゾール骨格を複数含有していても良い。とりわけ、化6に示される構造が好ましい。
【0040】
【化6】

【0041】
(但し、R(B)は一価の有機基、Xは一価の有機基またはハロゲン原子)。
【0042】
具体的には、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクタデシルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−(3−メチルペンチルオキシ)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−(3−メチルデシルオキシ)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−メチルオキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−ヘキサデシルオキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクタデシルオキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシフェニル)−5−メチルオキシ−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシフェニル)−5−エチルオキシ−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシフェニル)−5−オクチルオキシ−ベンゾトリアゾールなどが好ましい。
【0043】
本発明で用いる、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤とは、スルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン骨格を有する化合物であれば特に制限はなく、スルホン酸基は一部スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウムなどの塩を含有していても良い。そして、好ましくは2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸の誘導体が強伸度特性、回復性を向上することに対し好適であり、更には、他の官能基を含有しても良く、特に、アルコキシ基を含有することが糸の実使用領域での歪みを与えた際の応力を大きくする効果が高く、紡糸性の観点からも好適である。とりわけ、化7に示される構造が好ましい。
【0044】
【化7】

【0045】
(但し、R(C)は一価の有機基)。
【0046】
具体的には、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸と2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウムの混合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−6−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−エトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン−5−スルホン酸などが好ましい。
【0047】
本発明において、上記した紫外線吸収剤の量は、良好な工程通過性、紡糸性を得る観点から、ポリウレタン弾性糸の全重量に対して0.5重量%以上15重量%未満の範囲が好ましく、ポリウレタン弾性糸の耐薬品性、耐熱性等の低下を少なくする観点から、ポリウレタン弾性糸の全重量に対して0.5重量%以上5重量%以下がより好ましい。なお、これらの含有量は、用途に応じて事前にテストし、適宜決定することも好ましく行われる。
【0048】
また、本発明において、ポリウレタン弾性糸やポリウレタン紡糸液中に、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、酸化防止剤などに2,6−ジ−tブチル−pクレゾール(BHT)や住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA−80”(製品名)などのヒンダードフェノール系薬剤、上記した(A)〜(C)の紫外線吸収剤以外のチバガイギー社製“チヌビン”(登録商標)などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、トリアジン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザーP−16”(製品名)などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラックなどの各種無機顔料、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらとポリマとを反応させることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素補足剤が使用されることも好ましい。
【0049】
また、耐熱性向上や機能性向上の観点から、無機物や無機多孔質(例えば、竹炭、木炭、カーボンブラック、多孔質泥、粘土、ケイソウ土、ヤシガラ活性炭、石炭系活性炭、ゼオライト、パーライト等)が、本発明の効果を阻害しない範囲内で添加されてもよい。
【0050】
次に本発明のポリウレタン弾性糸の製造方法について詳細に説明する。
【0051】
本発明の製造方法においては、ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなる弾性糸を製造する際に、ポリウレタンを含有する紡糸原液に、次の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1種を含有させることを特徴とする。
(A)分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤
(B)分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
(C)分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤
これら(A)〜(C)の系紫外線吸収剤を紡糸原液に含有させるにあたっては、予めポリウレタン溶液を作製しておき、その該ポリウレタン溶液に前記紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。
【0052】
ポリウレタン溶液、また、その溶液中の溶質であるポリウレタンを製造する方法は、溶融重合法、溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少ないので、紡糸しやすく、低繊度のポリウレタン弾性糸を製造しやすい。また、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0053】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1000以上8000以下のPTMGを用い、ジイソシアネートとしてMDIを用い、さらに、鎖伸長剤としてエチレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミンのうちの少なくとも1種を使用して合成され、かつ、高温側の融点が150℃以上300℃以下、さらに好ましくは200℃以上300℃9以下の範囲のものが挙げられる。
【0054】
かかるポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、DMSO、NMPなどやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述のジオールと反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0055】
鎖伸長剤にジオールを用いる場合、ポリウレタンの高温側の融点を150℃以上300℃以下の範囲内とするための代表的な方法としては、ポリマージオール、MDI、ジオールの種類と比率をコントロールすることが挙げられる。例えば、ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温側の融点が高いポリウレタンを得ることができる。また、同様にジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温側の融点が高いポリウレタンを得ることができる。ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を150℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0056】
なお、かかるポリウレタンの合成に際し、アミン系触媒や有機金属触媒等の触媒が1種もしくは2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0057】
アミン系触媒としては、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ビス−2−ジメチルアミノエチルエーテル、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチル−ピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0058】
また、有機金属触媒としては、オクタン酸スズ、二ラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸鉛ジブチル等が挙げられる。
【0059】
こうして得られるポリウレタン溶液におけるポリウレタンの濃度は、通常、30重量%以上80重量%以下の範囲が好ましい。
【0060】
本発明においては、かかるポリウレタン溶液に、上記した(A)〜(C)の少なくとも1種を添加することが好ましい。上記した(A)〜(C)の紫外線吸収剤のポリウレタン溶液への添加方法としては、任意の方法が採用できる。その代表的な方法としては、スタティックミキサーによる方法、攪拌による方法、ホモミキサーによる方法、2軸押し出し機を用いる方法など各種の手段を利用した方法が採用できる。ここで、上記した(A)〜(C)の紫外線吸収剤は、ポリウレタン溶液への均一な添加を行う観点から、溶液にして添加することが好ましい。
【0061】
なお、上記した(A)〜(C)の紫外線吸収剤のポリウレタン溶液への添加により、添加後の混合溶液の溶液粘度が添加前のポリウレタンの溶液粘度に比べ予想以上に高くなる現象が発生する場合があるが、この現象を防止する観点から、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどの末端封鎖剤が1種または2種以上混合して使用されることも好ましい。
【0062】
上記した(A)〜(C)の紫外線吸収剤のポリウレタン溶液への添加の際に、前記した、例えば、耐光剤、耐酸化防止剤などの薬剤や顔料などを同時に添加してもよい。
【0063】
以上のように構成した紡糸原液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性糸を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0064】
本発明のポリウレタン弾性糸の繊度、単糸数、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸は1単糸で構成されるモノフィラメントでもよく、また複数単糸で構成されるマルチフィラメントでもよい。糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
【0065】
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0066】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性糸の永久歪率と応力緩和の特性は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン弾性糸を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。そして、特に高い永久歪率と、低い応力緩和を有するポリウレタン弾性糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.4以下の範囲がより好ましく、1.15以上1.35以下の範囲がさらに好ましい。一方、低い永久歪率と、高い応力緩和を有するポリウレタン弾性糸を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.25以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましく、1.35以上1.65以下の範囲がより好ましい。
【0067】
また、紡糸速度を高くすることによってポリウレタン弾性糸の強度を向上させることができるので、450m/分以上の紡糸速度を採用することが、実用上好適な強度水準とするために好ましい。さらに工業生産の点を考慮すると、450〜1000m/分程度が好ましい。
【実施例】
【0068】
本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0069】
まず、以下に本発明におけるポリウレタン弾性糸中の分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の分析方法、本発明におけるポリウレタン弾性糸の強度、伸度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性の測定方法を説明する。
【0070】
[糸中の紫外線吸収剤の分析方法]
糸試料約10mgをDMAcに10mlに溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより分析を行った。高速液体クロマトグラフィーの検出器はUV検出器を使用し、測定波長340nmで測定した。定量には濃度の決定している上記(A)〜(C)それぞれの紫外線吸収剤の溶液により検量線を予め作成し用いた。下記式により含有率を求めた。
含有率(重量%)=(糸試料ピーク面積/検量線ピーク面積)×検量線試料量/糸試料重量×100
[永久歪率、応力緩和、破断強度、破断伸度、実使用領域での強度]
インストロン4502型引張試験機を用い、ポリウレタン弾性糸を引張テストすることにより、永久歪率、応力緩和、破断強度、破断伸度を測定した。測定回数はn=3で測定し、それらの平均値を採用した。
【0071】
試長5cm(L1)の試料に対して50cm/分の引張速度で300%伸長を5回繰返し、5回目の300%伸長時の応力を(G1)とした。次に試料の長さを300%伸長のまま30秒間保持した。30秒間保持後の応力を(G2)とした。次に試料の伸長を回復せしめ応力が0になった際の試料の長さを(L2)とした。さらに6回目に試料が切断するまで伸長した。この破断時の応力を(G3)、破断時の試料長さを(L3)とした。以下、上記特性は下記式により算出される。
【0072】
破断強度(cN)=(G3)
応力緩和(%)=100×((G1)−(G2))/(G1)
永久歪率(%)=100×((L2)−(L1))/(L1)
破断伸度(%)=100×((L3)−(L1))/(L1)
また、前述の5回目の30秒間保持後の回復時における歪みと応力をプロットして曲線を描き、200%歪み時の応力を(P−200)として、所定の繊度(20dtex)の伸縮特性における実使用領域の強度として算出した。
【0073】
[光照射に対する耐久性]
糸を100%伸長状態で固定し、UV暴露処理を実施した。UV暴露処理は、機器としてスガ試験機社製のカーボンアーク型フェードメーターを用い、63℃、60%RHの温湿度で実施した。この暴露処理を合計2回実施した後、糸をフリーで24時間、室温で放置し、前記と同じ方法で破断強度(G4)を測定した。未処理糸の破断強度(G3)に対する、処理後の破断強度(G4)の割合(保持率)を耐薬品性とした。測定回数はn=3で測定し、それらの平均値を採用した。
【0074】
光照射に対する耐久性(%)=100×(G4)/(G3)
[光照射に対する白度保持性]
糸を5×5cmの試料板に、試料板の色の影響が現れない程度に緻密に最小の荷重(伸長率で言えば1.05)で巻き取り、試料とし、これをUV暴露処理した。UV暴露処理は、機器としてスガ試験機社製のカーボンアーク型フェードメーターを用い、63℃、60%RHの温湿度で実施した。この暴露処理を合計2回実施した。暴露処理後の試料のb値を測定し、白度保持性を判定した。b値の測定は、JIS L 1013:1999のC法(ハンターの方法)に準じ、ハンター形色差計を用い、下記式に基づき算出した。測定回数は3回とし、その平均値を採用した。
b=7.0(Y−0.847Z)/Y1/2
(但し、X、Y、ZはJIS Z 8701:1999により算出した)
判定はbが1.5未満を◎、1.5以上3未満を○、3以上5未満を△、5以上を×と表記した。
【0075】
[有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性]
ドライクリーニング等で使用されるテトラクロロエチレンに糸を約1時間浸漬した。その後、糸を取り出し、風乾してテトラクロロエチレンを除去した。その後、前述の光照射に対する耐久性と同法で耐久性(%)を算出した。
【0076】
[有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性]
ドライクリーニング等で使用されるテトラクロロエチレンに糸を約1時間浸漬した。その後、糸を取り出し、風乾してテトラクロロエチレンを除去した。その後、前述の光照射に対する白度保持性と同法で白度保持性を測定した。
[実施例1]
分子量2900のPTMG、MDIおよびエチレングリコールからなるポリウレタン重合体のDMAC溶液(35重量%)を常法により重合し、ポリマ溶液P1とした。
【0077】
次に、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′−イソプロペニル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールを用い、そのDMAc溶液A1(35重量%)を調製した。
【0078】
さらに、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2462、c1)と、p−クレゾ−ル及びジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール”(登録商標)2390、c2)とを2対1(重量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35重量%)を調整し、これをその他添加剤溶液B1(35重量%)とした。
【0079】
ポリマ溶液P1、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の溶液A1、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D1とした。この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0080】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強度および破断伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例1(後述)および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例3(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例3に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例1に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例3と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例3に比べ、2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例3と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0081】
[実施例2]
分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2 −( 2′− ヒドロキシ− 5' − メタクリロキシメチルフェニル)−2 H−ベンゾトリアゾール(前記化3の化合物)を用いた以外は実施例1と同じ方法でそのDMAc溶液を調製し、DMAc溶液A2(35重量%)とした。
【0082】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤の溶液A2、及び、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D2とした。
【0083】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0084】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強度および破断伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例1(後述)および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例3(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例3に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例1に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例3と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、約1.1倍の改善であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例3に比べ、2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例3と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0085】
[実施例3]
分子量1800のPTMG、MDI、エチレンジアミン、および末端封鎖剤としてジエチルアミンからなるポリウレタンウレア重合体(P2)のDMAc溶液(35重量%)を常法により重合し、ポリマ溶液P2とした。
【0086】
次に、このDMAc溶液P2、実施例1で調整した紫外線吸収剤の溶液A1、及びその他添加剤溶液B1を、それぞれ、94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D3とした。この紡糸溶液D3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0087】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1に示すとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例4(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例4に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例4と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、15%程度の増加であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例4に比べ、2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例4と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は、大幅に改善された。
【0088】
[実施例4]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例2で調製した紫外線吸収剤溶液A2、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D4とした。この紡糸溶液D4をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0089】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1に示すとおりであった。
【0090】
このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例4(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例4に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例4と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、15%程度の増加であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例4に比べ、2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例4と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は、大幅に改善された。
【0091】
[実施例5]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例2で調製した紫外線吸収剤溶液A2、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.7重量%、0.3重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D5とした。
【0092】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0093】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例4(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例4に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例4と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例4に比べ、1.5倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例4と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0094】
[実施例6]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例2で調製した紫外線吸収剤溶液A2、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.3重量%、0.7重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D6とした。
【0095】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0096】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例4(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例4に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2.5倍以上と大幅に増加した。比較例4と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例4に比べ、2.0倍に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例4と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0097】
[実施例7]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例2で調製した紫外線吸収剤溶液A2、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ84.0重量%、13.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D7とした。
【0098】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0099】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例4(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例4に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2.5倍以上と大幅に増加した。比較例4と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例4に比べ、2.0倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例4と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0100】
[実施例8]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例2で調製した紫外線吸収剤溶液A2、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ80.0重量%、17.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D8とした。
【0101】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0102】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表1のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例4(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例4に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例4と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例4に比べ、1.5倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例4と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0103】
[比較例1]
実施例1で調整したポリマ溶液P1、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ、97重量%、3重量%の割合で均一混合し、紡糸溶液E1とした。この紡糸溶液E1をゴデローラーと巻取機の速度比を1.40として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメントのポリウレタン弾性糸を作製した。
【0104】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強度及び破断伸度は実施例1〜2に比べ、低く、永久歪み率、応力緩和も実施例1〜2に比べ、高く回復性に劣る結果となった。光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性についても、実施例1〜2に比べ、大幅に劣るものであった。又、色調についても実施例1〜2より劣る結果であった。
【0105】
[比較例2]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液添加剤溶液B1を、それぞれ、97重量%、3重量%の割合で均一混合し、紡糸溶液E2とした。この紡糸溶液E2をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0106】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強度及び破断伸度は実施例3〜5に比べ、低く、永久歪み率、応力緩和も実施例3〜5に比べ、高く回復性に劣る結果となった。光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性についても、実施例3〜5に比べ、大幅に劣るものであった。又、色調についても実施例3〜5より劣る結果であった。
[比較例3]
分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α, α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールのDMAc溶液C1(35重量%)を調整した。
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤溶液C1、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E3とした。この紡糸溶液E3をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメントのポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0107】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強度及び破断伸度は実施例1〜2に比べ、低く、永久歪み率、応力緩和も実施例1〜2に比べ、高く回復性に劣る結果となった。光照射に対する耐久性および光照射に対する白度保持性は比較例2に比べ向上し、実施例1〜2に近い結果であったが、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性については、実施例1〜2に比べ、劣るものであった。
[比較例4]
分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α, α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールのDMAc溶液C1(35重量%)を調整した。
【0108】
実施例3で調製したポリマ溶液P2、比較例3で調製した紫外線吸収剤溶液C1、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E3とした。この紡糸溶液E3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0109】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表2に示す。破断強度及び破断伸度は実施例3〜8に比べ、低く、永久歪み率、応力緩和も実施例3〜8に比べ、高く回復性に劣る結果となった。光照射に対する耐久性および光照射に対する白度保持性は比較例2に比べ向上し、実施例3〜8に近い結果であったが、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性については、実施例3〜8に比べ、劣るものであった。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
[実施例9]
分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、2−ヒドロキシ−3−アリル−5−オクチルベンゾフェノンを用いた以外は実施例1と同じ方法でそのDMAc溶液を調製し、DMAc溶液A9(35重量%)とした。
【0113】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤の溶液A9、及び、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D9とした。
【0114】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0115】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表3のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強度および破断伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例1(前述)および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例5(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例5に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例1に比べて2倍以上と大幅に増加した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は、比較例1、5に比べて2倍程度もしくはそれ以上にと大幅に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例5と比べた場合、有機溶剤浸漬前は、同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0116】
[実施例10]
分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルベンゾフェノン(前記化5の化合物)を用いた以外は実施例1と同じ方法でそのDMAc溶液を調製し、DMAc溶液A10(35重量%)とした。
【0117】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤の溶液A10、及び、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D2とした。
【0118】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0119】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表3のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、永久歪率、実使用領域での強度、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強度および破断伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例1(前述)および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例5(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例5に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は、比較例1、5に比べて2倍程度もしくはそれ以上にと大幅に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例5と比べた場合、有機溶剤浸漬前は同等であったが、有機溶剤浸漬後は改善された。
【0120】
[実施例11]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例9で調製した紫外線吸収剤溶液A9、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D11とした。この紡糸溶液D11をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0121】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表3に示すとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例6(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例6に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例6と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は1.5倍、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例6と比べた場合も改善がみられた。
【0122】
[実施例12]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例10で調製した紫外線吸収剤溶液A10、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D12とした。この紡糸溶液D12をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメント、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0123】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表3に示すとおりであった。
【0124】
このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例6(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例6に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例6と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は40%程度の増加であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例6と比べた場合も改善がみられた。
【0125】
[実施例13]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例10で調製した紫外線吸収剤溶液A10、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.7重量%、0.3重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D5とした。
【0126】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0127】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表4のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例6(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例6に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例4と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は15%程度の増加であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例6と比べた場合も改善がみられた。
【0128】
[実施例14]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例10で調製した紫外線吸収剤溶液A10、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.3重量%、0.7重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D14とした。
【0129】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0130】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表4のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例6(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例6に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例6と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は17%程度の増加であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例6と比べても改善がみられた。
【0131】
[実施例15]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例10で調製した紫外線吸収剤溶液A10、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ84.0重量%、13.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D15とした。
【0132】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0133】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表3のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例6(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例6に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は、比較例2に比べて約3倍と大幅に増加し、比較例6と比較した場合、それぞれ、1.5倍、2.6倍に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例6と比べても改善がみられた。
【0134】
[実施例16]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例10で調製した紫外線吸収剤溶液A10、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ80.0重量%、17.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D16とした。
【0135】
この紡糸溶液D16をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0136】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表3のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。破断強伸度は、分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例6(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例4に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて3倍以上と大幅に増加し、比較例6に比べてそれぞれ、約1.5倍、約2.7倍に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例6と比べても改善がみられた。
【0137】
[比較例5]
分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン系紫外線吸収剤である2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのDMAc溶液C1(35重量%)を調整した。
【0138】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤溶液C1、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E3とした。この紡糸溶液E3をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメントのポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0139】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。
【0140】
[比較例6]
分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン系紫外線吸収剤である2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンのDMAc溶液C1(35重量%)を調整した。
【0141】
実施例3で調製したポリマ溶液P2、比較例3で調製した紫外線吸収剤溶液C1、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E3とした。この紡糸溶液E3をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0142】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表4に示す。
【0143】
【表3】

【0144】
【表4】

【0145】
[実施例17]
分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール(アルコキシ基の炭素数:8)を用いた以外は実施例1と同じ方法でそのDMAc溶液を調製し、DMAc溶液A17(35重量%)とした。
【0146】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤の溶液A17、及び、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D17とした。この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0147】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強度および破断伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例1(前述)および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例7(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例7に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例1に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例7と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性が2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例7と比べた場合、有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0148】
[実施例18]
分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクタデシルオキシフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール(アルコキシ基の炭素数:18)を用いた以外は実施例1と同じ方法でそのDMAc溶液を調製し、DMAc溶液A18(35重量%)とした。
【0149】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤の溶液A18、及び、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D2とした。
【0150】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0151】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、永久歪率、実使用領域での強度、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強度および破断伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例1(前述)および分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例7(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例7に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例1に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例7と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性が1.2倍程度、有機溶剤浸漬後の耐久性が2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ大幅に改善し、比較例7と比べた場合は有機溶剤浸漬後、大幅に改善された。
【0152】
[実施例19]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例17で調製した紫外線吸収剤溶液A17、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D19とした。この紡糸溶液D19をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0153】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5に示すとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例8(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例8に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例8と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ、大幅に改善し、比較例8と比べた場合、有機溶剤浸漬後は、大幅に改善された。
【0154】
[実施例20]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例18で調製した紫外線吸収剤溶液A18、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D20とした。この紡糸溶液D20をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメント、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0155】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5に示すとおりであった。
【0156】
このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例8(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例8に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例8と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ、大幅に改善し、比較例8と比べた場合、有機溶剤浸漬後は、大幅に改善された。
【0157】
[実施例21]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例18で調製した紫外線吸収剤溶液A18、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.7重量%、0.3重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D21とした。
【0158】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0159】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例8(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例8に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例8と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ、大幅に改善し、比較例8と比べた場合、有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0160】
[実施例22]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例18で調製した紫外線吸収剤溶液A18、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.3重量%、0.7重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D22とした。
【0161】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0162】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、永久歪率、実使用領域での強度、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例8(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例8に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例8と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2と比べ、大幅に改善され、比較例8と比べた場合、有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0163】
[実施例23]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例18で調製した紫外線吸収剤溶液A18、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ84.0重量%、13.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D23とした。
【0164】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0165】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例8(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例8に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の耐久性は比較例2に比べて約2.8倍以上となり、大幅に増加した。比較例8と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は1.2倍程度、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例8と比べた場合も、有機溶剤浸漬後、大幅に改善された。
【0166】
[実施例24]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例18で調製した紫外線吸収剤溶液A18、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ80.0重量%、17.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D24とした。
【0167】
この紡糸溶液D24をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0168】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表5のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。破断強伸度は、分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール紫外線吸収剤を含有した比較例8(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例8に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて3倍以上と大幅に増加した。比較例8と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は1.2倍程度、有機溶剤浸漬後の耐久性は約2.7に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2、比較例4と比べた場合、有機溶剤浸漬前、有機溶剤浸漬後、共に改善した。
【0169】
[比較例7]
分子中にアルコキシ基を含有しないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である2−(2′−ヒドロキシ−4′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールのDMAc溶液C7(35重量%)を調整した。
【0170】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤溶液C7、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E7とした。この紡糸溶液E7をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメントのポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0171】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。
【0172】
[比較例8]
実施例3で調製したポリマ溶液P2、比較例3で調製した紫外線吸収剤溶液C7、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E8とした。この紡糸溶液E8をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0173】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表6に示す。
【0174】
【表5】

【0175】
【表6】

【0176】
[実施例25]
分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノンスルホン酸を用いた以外は実施例1と同じ方法でそのDMAc溶液を調製し、DMAc溶液A25(35重量%)とした。
【0177】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤の溶液A25、及び、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D25とした。この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0178】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強度および破断伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例1(前述)および分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例9(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例9に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例1に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例9と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ大幅に改善し、比較例9と比べた場合有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0179】
[実施例26]
分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸を用いた以外は実施例1と同じ方法でそのDMAc溶液を調製し、DMAc溶液A26(35重量%)とした。
【0180】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤の溶液A26、及び、その他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3重量%、3重量%で均一に混合し、紡糸溶液D2とした。
【0181】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0182】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強度および破断伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例1(前述)および分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例9(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例1及び比較例9に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例1に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例9と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例1に比べ、大幅に改善し、比較例9と比べた場合は有機溶剤浸漬後、大幅に改善された。
【0183】
[実施例27]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例25で調製した紫外線吸収剤溶液A25、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D27とした。この紡糸溶液D27をゴデローラーと巻取機の速度比を1.20として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメント、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0184】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7に示すとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例10(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例10に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて3倍以上と大幅に増加した。比較例10と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は1.2倍程度、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例10と比べた場合、有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0185】
[実施例28]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例26で調製した紫外線吸収剤溶液A26、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94.0重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D28とした。この紡糸溶液D28をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメント、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤の含有量が3重量%であるポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0186】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7に示すとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例10(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例10に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例10と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、1.2倍であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は、比較例10に比べ、2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例10と比べた場合、有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0187】
[実施例29]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例26で調製した紫外線吸収剤溶液A26、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.7重量%、0.3重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D29とした。
【0188】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0189】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例10(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例10に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する耐久性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例10と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等程度であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は1.8倍程度に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例10と比べた場合、有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0190】
[実施例30]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例26で調製した紫外線吸収剤溶液A26、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ96.3重量%、0.7重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D30とした。
【0191】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0192】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例10(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例10に比べ減少し、回復性が向上した。有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性は比較例2に比べて2倍以上と大幅に増加した。比較例10と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は同等程度であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例10と比べた場合、有機溶剤浸漬後は大幅に改善された。
【0193】
[実施例31]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例26で調製した紫外線吸収剤溶液A26、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ84.0重量%、13.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D31とした。
【0194】
この紡糸溶液をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0195】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中に不飽和結合を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例10(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例10に比べ減少し、回復性が向上した。光照射に対する有機溶剤浸漬後の耐久性は比較例2に比べて3倍以上となり、大幅に増加した。比較例10と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、1.2倍程度であったが、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例10と比べた場合も、有機溶剤浸漬後、大幅に改善された。
【0196】
[実施例32]
実施例3で調整したポリマ溶液P2、実施例26で調製した紫外線吸収剤溶液A26、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ80.0重量%、17.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液D32とした。
【0197】
この紡糸溶液D32をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0198】
得られたポリウレタン弾性糸の組成(重量%)は表7のとおりであった。このポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。破断強伸度は、分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤未配合の比較例2および分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン紫外線吸収剤を含有した比較例10(後述)に比べ増大した。永久歪率および応力緩和の値は比較例2及び比較例10に比べ減少し、回復性が向上した。
光照射に対する有機溶剤浸漬後の耐久性は比較例2に比べて3倍以上となり、大幅に増加した。比較例10と比較した場合、有機溶剤浸漬前の光照射に対する耐久性は、1.3倍程度に、有機溶剤浸漬後の耐久性は2倍以上と大幅に増加した。光照射に対する白度保持性及び有機溶剤浸漬後の光照射に対する白度保持性も、比較例2に比べ大幅に改善し、比較例10と比べた場合も、有機溶剤浸漬後、大幅に改善された。
【0199】
[比較例9]
分子中にスルホン酸基を含有しないベンゾフェノン系紫外線吸収剤であるオクタベンゾンのDMAc溶液C9(35重量%)を調整した。
【0200】
実施例1で調整したポリマ溶液P1、上記の紫外線吸収剤溶液C9、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E7とした。この紡糸溶液E7をゴデローラーと巻取機の速度比1.4として540m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、モノフィラメントのポリウレタン弾性糸(200g巻糸体)を作製した。
【0201】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。
【0202】
[比較例10]
実施例3で調製したポリマ溶液P2、比較例9で調製した紫外線吸収剤溶液C9、及び実施例1で調整したその他添加剤溶液B1を、それぞれ94重量%、3.0重量%、3.0重量%で均一に混合し、紡糸溶液E10とした。この紡糸溶液E10をゴデローラーと巻取機の速度比を1.30として600m/分の紡糸速度で乾式紡糸して巻取り、20デシテックス、2フィラメントのマルチフィラメントのポリウレタン弾性糸(500g巻糸体)を作製した。
【0203】
得られたポリウレタン弾性糸の破断伸度、破断強度、実使用領域での強度、永久歪率、応力緩和、光照射に対する耐久性、光照射に対する白度保持性、有機溶剤浸漬後の光照射に対する耐久性及び光照射に対する白度保持性を表8に示す。
【0204】
【表7】

【0205】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明のポリウレタン弾性糸は、高強伸度、高回復性、耐光性に優れ、また、高次加工時の後処理や洗濯による紫外線吸収剤の脱落がなく、優れた耐光性を維持することができる。したがって、この弾性糸を使用した衣服などは、脱着性、フィット性、着用感、染色、耐変色性、外観品位などに優れたものとなる。また、実使用領域での強度が高いものとなることで、ポリウレタン繊維の繊度を小さくしたり、含有率を減じる生地組織設計を施すことができ、生地目付が小さくても従来と同等の生地伸縮特性を維持できることにより、この弾性糸を使用した衣服は薄地で軽いものとなる。
【0207】
これらの優れた特性を有することから、本発明のポリウレタン弾性糸は単独での使用はもとより、各種繊維との組み合わせにより、優れたストレッチ布帛を得ることが可能で、編成、織成、紐加工に好適である。その使用可能な具体的用途としては、ソックス、ストッキング、丸編、トリコット、水着、スキーズボン、作業服、煙火服、ゴルフズボン、ウエットスーツ、ブラジャー、ガードル、手袋等の各種繊維製品、締め付け材料、さらには、紙おしめなどサニタリー品の漏れ防止用締め付け材料、防水資材の締め付け材料、似せ餌、造花、電気絶縁材、ワイピングクロス、コピークリーナー、ガスケットなどが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンからなるポリウレタン弾性糸であって、次の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とするポリウレタン弾性糸。
(A)分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤
(B)分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
(C)分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤
【請求項2】
前記(A)を含有し、かつ、前記(A)が、不飽和カルボン酸系化合物とベンゾトリアゾール骨格を有する化合物および/またはベンゾフェノン骨格を有する化合物との共重合物であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項3】
前記(A)を含有し、かつ、前記(A)が、メタクリル酸骨格を有する化合物とベンゾトリアゾール骨格を有する化合物および/またはベンゾフェノン骨格を有する化合物との共重合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項4】
前記(B)を含有し、かつ、前記(B)のアルコキシ基が炭素数1から40であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項5】
前記(B)のアルコキシ基が炭素数6から20であることを特徴とする、請求項4に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項6】
前記(C)を含有し、かつ、前記(C)がアルコキシ基を含有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン弾性糸。
【請求項7】
ポリマージオールおよびジイソシアネートを出発物質とするポリウレタンを含む紡糸原液に、次の(A)、(B)、(C)のうちの少なくとも1種を含有させて、弾性糸を製造することを特徴とするポリウレタン弾性糸の製造方法。
(A)分子中に不飽和結合を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および/またはベンゾフェノン系紫外線吸収剤
(B)分子中にアルコキシ基を一つ以上含有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
(C)分子中にスルホン酸基を一つ以上含有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤

【公開番号】特開2011−144491(P2011−144491A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279490(P2010−279490)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(502179282)東レ・オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】