説明

ポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂

【課題】 低粘度で十分な混合が可能で、硬化後において高温条件下における硬度変化が小さいことから長期間にわたって基材に十分密着し、発生する多量の熱を外部に放出し得るポリウレタン樹脂組成物及びこれを硬化させたポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】
(A)ポリイソシアネートと、(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物と、(C)無機充填材と、(D)可塑剤とを含有していることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物と、これを硬化させることにより得られるポリウレタン樹脂である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂に関し、より詳細には、粘度低化により十分な混合が可能で、硬化後において優れた放熱性を長期間にわたって維持し得るポリウレタン樹脂組成物、及びこれを硬化させたポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子回路基板や電子部品は、外部からの汚染を防ぐためにポリウレタン樹脂等を用いて封止することが行われている(特許文献1)。また、近年、LSI等に見られるように、電子回路の集積化、小型化及び高機能化によって電子回路基板上の発熱量が局所的に増大しているため、ポリウレタン樹脂は高温条件下に曝されている。このような高温条件下における硬度変化を低減するために、ポリオール成分としてポリブタジエンポリオールの水素添加物や、ポリイソプレンの水素添加物の使用が検討されている(例えば、特許文献2)。また、発生する熱をより効率的に外部に放出する必要性が高くなっていることから、これらのポリウレタン樹脂には、多量の無機充填材が配合されているのが通常である。
【0003】
しかしながら、多量の無機充填材を配合したポリウレタン樹脂を製造する場合、硬化前のポリウレタン樹脂組成物の段階で粘度が大きくなるため、十分に混合することができず、均一なポリウレタン樹脂を得ることができなくなるという問題がある。ポリウレタン樹脂組成物の混合が不十分な場合、均一なポリウレタン樹脂を得ることができなくなり、放熱性を長期間にわたって維持することができないという問題がある。
【特許文献1】特開2000−226426号公報
【特許文献2】特開平11−166032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術に鑑みて為されたものであり、本発明の目的は、粘度低下により十分な混合が可能で、硬化後において優れた放熱性と可撓性を長期間にわたって維持し得るポリウレタン樹脂組成物、及びこれを硬化させたポリウレタン樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(A)ポリイソシアネートと、(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物と、(C)無機充填材と、(D)可塑剤とを含有していることを特徴とする。
【0006】
本発明のポリウレタン樹脂組成物では、ポリオール成分として(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物が配合されているため、無機充填材が多量に配合されていても混合時の粘度が増大せず、均一に混合することが可能となっている。
【0007】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物では、一般式(1)で表される(E)リン酸エステルを配合してもよい。一般式(1)のリン酸エステルを配合すれば、(C)無機充填材を高い配合比率で使用した場合にも、比較的低粘度を保ったままポリウレタン組成物を均一に混合することができる。
【0008】
本発明のポリウレタン樹脂は、上記ポリウレタン樹脂組成物を硬化させることにより得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分として(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物を含有しているため、無機充填材が多量に配合されていても混合時の粘度が増大せず、均一に混合することが可能となっている。また、高温条件下における硬度変化が小さいことから長期間にわたって基材に十分密着し、発生する多量の熱を外部に放出することが可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、(A)ポリイソシアネートと、(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物との反応によりポリウレタン樹脂を生成する。ここで使用し得る(A)ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。
【0011】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0012】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0013】
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0014】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0015】
また、これらの有機ポリイソシアネートのカルボジイミド体、アロハネート体、ビューレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等の変性体を挙げることができる。尚、これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることもできる。
【0016】
これらのうち、特に、変色が起こりにくいという観点から、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート変性イソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート変性ビューレット体、及びヘキサメチレンジイソシアネート変性アダクト体がより好ましい。
【0017】
また、本発明においては、上記ポリイソシアネートと特定の構造を有する(B)ポリオールとをイソシアネート基過剰条件で反応させて得られるウレタンプレポリマーを(A)ポリイソシアネートとして使用してもよい。
【0018】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール成分として使用されるのは、ひまし油系ポリオールの水素添加物である。ここで、ひまし油系ポリオールの水素添加物とは、ひまし油に水素付加した水添ひまし油のほか、ひまし油脂肪酸に水素を付加した水添ひまし油脂肪酸や水添ひまし油を用いて得られる水添ひまし油変性ポリオールが挙げられる。なお、以下、「水添」と記載するものは、「水素添加物」を意味している。
【0019】
水添ひまし油変性ポリオールとしては、例えば、水添ひまし油と水添ひまし油以外の油脂とのエステル交換反応物、水添ひまし油と水添ひまし油脂肪酸を含む水添油脂脂肪酸とのエステル化反応物、水添ひまし油と多価アルコールとのエステル化反応物、水添ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、水添ひまし油に含まれる水酸基の一部を酢酸などのモノカルボン酸でエステル化した反応生成物などが挙げられる。
【0020】
(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物のヨウ素価は、20g/100g以下であることが好ましく、10g/100g以下がより好ましい。ヨウ素価が上記範囲より大きいと、高温条件下における硬度上昇が大きくなり、基材に十分密着することができなくなる場合があるからである。
【0021】
本発明のポリウレタン樹脂組成物においては、(A)ポリイソシアネート成分に含まれるイソシアネート基と、(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物に含まれる水酸基の和とのモル比(NCO/OH)が、0.3〜1.1であることが好ましい。イソシアネート基と水酸基のモル比がこの範囲より小さいと、得られる樹脂の耐熱性が低くなり、この範囲より大きいと、樹脂が硬くなり、基材に十分密着できなくなる場合があるからである。
【0022】
本発明のポリウレタン樹脂組成物に配合される(C)無機充填材としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素んなどの金属窒化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が挙げられる。
【0023】
(C)無機充填材は、平均粒子径の異なる少なくとも2種類の混合物であることが好ましい。具体的には、(C1)平均粒子径の最も大きい無機充填材と(C2)平均粒子径の最も小さい無機充填材との平均粒子径の比(C1)/(C2)が、1.5〜100であることが好ましく、2〜50であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、ポリオール成分をより低粘度化することができる。
【0024】
さらに、(C1)平均粒子径の最も大きい無機充填材と(C2)平均粒子径の最も小さい無機充填材の重量比は、(C1)/(C2)=99/1〜50/50であることが好ましい。
【0025】
(C)無機充填材の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、30〜95重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、60〜95重量%であることが更に好ましく、70〜90重量%であることが最も好ましい。(C)無機充填材の配合量が上記範囲より多いと混合初期粘度が高くなりすぎる傾向にあり、上記範囲より少ないと十分な放熱性が得られにくくなる傾向にある。
【0026】
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、(D)可塑剤が配合される。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸ジエステル、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、などのトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテートなどのピロメリット酸エステル、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、アセチル化リシノール酸トリグリセリド、アセチル化ポリリシノール酸トリグリセリドなどのひまし油系エステル、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートなどのリン酸トリエステルが挙げられる。
【0027】
上記(D)可塑剤の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、1〜30重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがより好ましく、5〜15重量%であることが更に好ましい。(D)可塑剤の配合量が上記範囲より少ないと、ポリオール成分の十分な減粘効果と、ポリウレタン樹脂の可撓性が得られ難くなる傾向にあり、上記範囲より多いと、ポリウレタン樹脂の強度などの各種物性が低下する傾向にある。
【0028】
更に、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、一般式(1)で表される(E)リン酸エステルを配合してもよい。
【0029】
【化1】

【0030】
ここで、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数、R’はOH又は一般式(2)に示す基であり、一般式(1)及び一般式(2)においてR”はCH3又はCH2CH3であり、「/」はその左右に記載されているオキシアルキレン基がブロック付加でもランダム付加でもよいことを表している。
【0031】
【化2】

【0032】
この(E)リン酸エステルは、例えば、炭素数1〜30のモノアルコールに公知の方法によりアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルモノオールと、無水リン酸とを反応させて得ることができる。なお、上記アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドを必須成分とするものであればよく、プロピレンオキサイドやブチレンオキサイドを併用することもできる。更に、アルキレンオキサイドの付加モル数や、ポリエーテルモノオールと無水リン酸との反応割合は、上記一般式(1)の条件を満たすように適宜選択されるものである。
【0033】
本発明のポリウレタン樹脂組成物に使用される一般式(1)で表される(E)リン酸エステルの配合量は、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、0.01〜2重量%の範囲が好ましく、0.01〜1重量%の範囲がより好ましい。上記範囲を超えると、使用量の増加による更なる減粘効果は得られ難くなるとともに、ポリウレタン樹脂の物性も低下する傾向が現れ、また、上記範囲未満では、(E)リン酸エステルの添加による減粘効果が得られない。
【0034】
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤など、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール含有酸化防止剤、フェニルジイソデシルホスファイトなどのリン含有酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステルなどのイオウ含有酸化防止剤、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのフェノールとイオウとを一分子中に含有する酸化防止剤などを挙げることができる。酸化防止剤を用いる場合、ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、0.01〜5重量%の範囲で添加することが好ましい。また、吸湿剤としては、ゼオライト、水硬性アルミナ、塩化カルシウムなどを挙げることができる。吸湿剤を用いる場合、ポリウレタン樹脂を100重量%とした場合に、0.1〜3重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0035】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物の調製に際しては、ポリウレタン樹脂の硬化を早めるために触媒を添加してもよい。触媒としては、通常、ポリウレタン樹脂の製造に使用される、金属触媒やアミン系触媒を使用することができる。金属触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクテートなどの錫触媒、オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛触媒、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどのビスマス触媒などを挙げることができる。アミン系触媒としては、ジエチレントリアミンなどを挙げることができる。
【0036】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、硬化後のタイプAによる硬度が80以下となることが好ましい。更に、硬化後の熱伝導率が1W/m・K以上であることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明のポリウレタン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂について詳細に説明する。なお、本明細書中に於ける「部」、「%」は、特に明示した場合を除き、「重量部」、「重量%」をそれぞれ表している。
【0038】
以下の実施例及び比較例においては、以下の原料を使用した。
・ポリイソシアネート
デュラネートTKA-100(ヘキサメチレンジイソシアネート変性イソシアヌレート体、旭化成社製)
・ひまし油系ポリオールの水素添加物
URIC PH-5001(ヨウ素価:10g以下/100g、伊藤製油社製)
HS 2T-1208(ヨウ素価:10g以下/100g、豊国製油社製)
HS 2T-166H(ヨウ素価:10g以下/100g、豊国製油社製)
・無機充填材
水酸化アルミニウムA(平均粒子径:3.2μm)
水酸化アルミニウムB(平均粒子径:35μm)
酸化アルミニウムA(平均粒子径:45μm)
・酸化防止剤
BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
・吸湿剤
ゼオラムA4(ゼオライト、東ソー社製)
・比較例用のポリオール
エポール(ヨウ素価:7.9g/100g、ポリイソプレンポリオールの水素添加物、出光興産社製)
KRASOL HLBH P3000(ヨウ素価:1.1g/100g、ポリブタジエンポリオールの水素添加物、サートマー社製)
ひまし油D(ひまし油、伊藤製油社製)
また、(E)リン酸エステル成分については、以下のようにして合成した。
【0039】
(E−1:リン酸エステル1の合成)
ラウリルアルコールを出発物質とし、プロピレンオキサイド2モルおよびエチレンオキサイド8モルを公知の方法でブロック付加して、ラウリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物を得た。
【0040】
続いて、四つ口フラスコに、上記ラウリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物300gと、無水リン酸27.1gとを、モル比2.4:1にて仕込み、撹拌しながら70℃にて4時間反応を行い、リン酸エステル1(リン酸のOH基の理論上の置換数1.2)を得た。
【0041】
(E−2:リン酸エステル2の合成)
トリデシルアルコールを出発物質とし、エチレンオキサイド10モルを公知の方法を用いて付加して、トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Aを得た。
【0042】
続いて、四つ口フラスコに、上記トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Aの300gと、無水リン酸22.2gとを、モル比3:1にて仕込み、撹拌しながら70℃にて4時間反応を行い、リン酸エステル2(リン酸のOH基の理論上の置換数1.5)を得た。
【0043】
(E−3:リン酸エステル3の合成)
トリデシルアルコールを出発物質とし、エチレンオキサイド7モルを公知の方法を用いて付加して、トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Bを得た。
【0044】
続いて、四つ口フラスコに、上記トリデシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物Bの300gと、無水リン酸23.3gとを、モル比3.6:1にて仕込み、撹拌しながら70℃にて4時間反応を行い、リン酸エステル3(リン酸のOH基の理論上の置換数1.8)を得た。
【0045】
【表1】

【0046】
(ポリウレタン樹脂組成物の製造)
表1に示す配合により、実施例1〜7及び比較例1〜3のポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1に示す成分のうち、(A)ポリイソシアネート成分を除く成分を、混合機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて2000rpmで3分間混合した後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整したポリイソシアネート成分を加え、同上の混合機を用いて2000rpmで1分間混合することにより、各実施例のポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0047】
(ポリウレタン樹脂の製造)
次に、上記で調製したポリウレタン樹脂組成物を用いてポリウレタン樹脂の試験片を作製した。まず、上記ポリウレタン樹脂組成物を110×110×10mmの金型に充填し、蓋をして23℃で48時間養生した後、これを脱型してポリウレタン樹脂の試験片を得た。但し、比較例1及び2のポリウレタン樹脂組成物の場合は、高粘度のため、均一なポリウレタン樹脂が得ることができなかった。
【0048】
<性能試験>
上記で得られた実施例1〜7及び比較例1〜3について、組成物調製時の混合初期の重合粘度の測定を行い、実施例1〜7及び脱型が可能であった比較例3の樹脂については、更に熱伝導率、硬度(タイプA)、耐熱性試験後の硬度(タイプA)の評価を行った。各試験結果を表1に併せて示した。各試験方法は、以下に示すとおりである。
【0049】
(混合初期粘度)
得られたポリウレタン樹脂組成物を25℃に調整し、混合開始から10分後の粘度をBH型粘度計を用いて測定した。
【0050】
(熱伝導率)
熱伝導率は、JIS R2618に従い、熱伝導率計(京都電子工業(株)製、QTM−D3)を用いて測定した。
【0051】
(硬度(タイプA))
JIS K6253に従って測定した。
【0052】
(耐熱性試験後の硬度(タイプA))
150℃の条件下に90時間の耐熱性試験を行った後のポリウレタン樹脂について、JIS K6253に従って硬度(タイプA)を測定した。
【0053】
<試験結果>
実施例1〜7のポリウレタン樹脂組成物は、何れも混合可能な粘度であった。特に、リン酸エステルを配合した場合には、より低粘度となった。一方、比較例3のポリウレタン樹脂組成物は混合可能な粘度ではあったが、比較例1及び2の組成物は粘度が非常に高く、混合か不可能となり、均一なポリウレタン樹脂を得ることができなかった。
【0054】
また、実施例1〜7のポリウレタン樹脂は、何れも熱伝導率が高く、十分な放熱性を有していることが分かる。
【0055】
更に、実施例1〜7のポリウレタン樹脂は、耐熱性試験後においても硬度がほとんど変化しておらず、耐熱性に優れていることが分かる。一方、比較例3のポリウレタン樹脂は、耐熱性試験後において大幅な硬度上昇が見られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、低粘度で十分な混合が可能であり、高温条件下における硬度変化が小さいことから長期間にわたって基材に十分密着し、発生する多量の熱を外部に放出し得るポリウレタン樹脂が得られるので、電気製品、電子部品等の分野で利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイソシアネートと、(B)ひまし油系ポリオールの水素添加物と、(C)無機充填材と、(D)可塑剤とを含有していることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)無機充填材は、前記ポリウレタン樹脂組成物を100重量%とした場合に、30〜95重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
一般式(1)で表される(E)リン酸エステルを更に含有している請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【化1】

(Rは炭素数1〜30の炭化水素基、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数、R’はOH又は一般式(2)に示す基であり、一般式(1)及び一般式(2)において、R”はCH3又はCH2CH3であり、「/」はその左右に記載されているオキシアルキレン基がブロック付加でもランダム付加でもよいことを表している。)
【化2】

【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のポリウレタン樹脂組成物を硬化させることにより得られるポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2010−150477(P2010−150477A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332502(P2008−332502)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】