説明

ポリウレタン発泡体の製造方法

【課題】硬化初期反応を良好に進行して均一な反応を行うとともに、発泡(セル)が均一に分散したポリウレタン発泡体を得ることができるポリウレタン発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】発泡工程と、硬化工程とを有するポリウレタン発泡体の製造方法において、以下の撹拌装置10を用いて、発泡処理する。撹拌装置10は、容器12と、撹拌機14を有し、撹拌機14は、回転軸18に、4枚の水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dで構成される撹拌翼20a、20bが延出される。水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dの回転径方向外周端部に環状の支持部材26a、26bが設けられ、支持部材26a、26bの外周位置に、回転径方向の水平面に対して立設される平板状の縁板部28a〜28d、30a〜30dが設けられる。なお、一部の構成部材は図1に現れない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体(フォーム)は、容器内でイソシアネート、ポリオールを主剤とする原料を触媒存在下、撹拌して、樹脂化と泡化反応のバランスを制御して発泡させた後(発泡工程)、発泡反応液を成形機内で反応硬化させることで得られる(硬化工程)。したがって、本明細書において、ポリウレタン発泡体は、ポリウレタンフォームの成形品をいう。
このようにして得られるポリウレタン発泡体は、発泡程度、言い換えれば比重によってフォームと微発泡エラストマーに大別される。フォームは、車両のシートクッション、家具、寝具、さらには断熱材や建材等に用いられる。一方、微発泡エラストマーは、研磨パッド、防振材、OA用ロール等に用いられる。
【0003】
発泡工程での発泡方式には、水等の発泡剤を用いるものと、ポリウレタン原料を撹拌する過程で気体を液体に混入して発泡させるものとがある。この場合、フォームの種類等によっては、水等の発泡剤を用いる方式が適さないものもある。
上記後者の気体を液に混入して発泡させる方式(メカニカルフロスと呼ばれる。)に関して、撹拌回転軸が水平方向に形成され、撹拌回転軸から径方向に無数のピンが動翼として延出されるとともに、撹拌機構を収容する横長ドラムの内壁に径方向に延出する無数のピンが静翼として設けられた撹拌機構を備えた装置を用い、ポリウレタン原料と気体を装置の一端側の別々に設けられた入り口から導入して撹拌、混合した後、他の一端側の側方に設けられた吐出口から発泡した成形材料を連続的に吐出する方式のものがよく知られている。
しかしながら、この方式の装置は、ポリウレタン原料および気体の注入量を高精度で制御するための定量ポンプを含め、全体の設備費用が高価であり、また、製造時に連続注入を行うため、比較的少量生産する品種の装置としては適さない。
【0004】
これに対して、メカニカルフロス方式として、撹拌機を備えた容器で所定量のポリウレタン原料を回分(バッチ)式に処理して、液中に気体を注入し、あるいはまた撹拌力によって液中に気体を巻き込んで発泡させる方法も採用されている。これによれば、上記の連続式装置に比べて、装置費用が安価であり、また、簡便に発泡操作を行うことができる。
しかしながら、この方式の装置は、連続式の装置に比べて、撹拌、混合を容器内で均一に行って硬化初期反応を良好に進行させ、かつ発泡反応についても同様に行ううえで十分な配慮が求められる。
【0005】
上記した撹拌機を備えた容器で所定量のポリウレタン原料を回分(バッチ)式に処理して空気を液中に巻き込んで発泡させる方式として、例えば、生クリーム等を泡立てるために用いられる市販の撹拌装置(泡立て器)を利用することは、非常に簡便である。
ただし、市販の泡立て器は、往々にして羽根が小さいので、ポリウレタン原料を均一に攪拌混合するためには、泡だて器を動かす、カップを動かす等の人手による操作が必要となる。また、このとき、撹拌条件をそろえるのが難しく、個人差が生じてしまい安定して同品質の製品を得られないといった不具合もある。一方、人手による操作を避けるためには、何らかの装置的な工夫が必要であり、特に、撹拌機の構造上、生クリーム等に比べて粘度の高いポリウレタン原料の撹拌に用いるには、高い撹拌効率によって硬化初期反応が良好に行われ、また、均一に気泡が分散された反応液を得るうえで十分ではないと思われる。
【0006】
一方、ポリウレタンの発泡工程に用いられる撹拌技術について、いくつかの特許文献が見られる。
【0007】
例えば、垂直方向に回転軸を有する第1ミキサー羽根と第2ミキサー羽根とを備え、第1ミキサー羽根と第2ミキサー羽根とが互いにかみ合うように逆方向に回転し、かつ互いの羽根が干渉しないように構成したミキサーを用いた研磨パッド用ポリウレタン発泡体の製造装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。詳細に見ると、この装置の第1ミキサー羽根および第2ミキサー羽根は、立設した環状に形成されており、単一のミキサー羽根のみでは撹拌力が不十分であるために、このようにミキサー羽根を複数設け、さらにそれらをかみ合わせることで、撹拌力の向上を図ったものと考えられる。
【0008】
そして、上記特許文献1の出願人による関連技術として、撹拌工程においてスクレーパーを容器内壁面に沿わせて少なくとも1周させる研磨パッド用ポリウレタン発泡体の製造方法が開示されており(特許文献2参照)、これによれば、撹拌不良が解消され、気泡のアンバランスがなくなるとされている。この作用効果の具体的意義は必ずしも明確ではないが、撹拌機構から見て、上記特許文献1の装置における撹拌力の不足をカバーするものではないかと考えられる。
【0009】
なお、同じく上記特許文献1の出願人による関連技術として、上記特許文献1の装置を用い、この装置に液面検出装置を取り付けて、ポリウレタン原料の一方成分を容器に投入したのち、ポリウレタン原料の他方成分を徐々に投入し、液面変化からフォームの比重変化を知ることで、ポリウレタン発泡体の密度を正確に調整する技術が開示されている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、この技術は、上記特許文献1、2のような撹拌作用そのものに着目した技術とはいえない。
【特許文献1】特開2002−226537号公報
【特許文献2】特開2005−169571号公報
【特許文献3】特開2004−189830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、発泡工程で用いられる、撹拌機を備えた容器で所定量のポリウレタン原料を回分式に処理して空気を液中に巻き込んで発泡させる従来の方式は、いずれも、硬化初期反応を良好に進行して均一な反応を行うとともに、発泡(セル)が均一に分散した発泡体を得るうえで、十分ではないと考えられる。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、硬化初期反応を良好に進行して均一な反応を行うとともに、発泡(セル)が均一に分散したポリウレタン発泡体を得ることができるポリウレタン発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、発泡(セル)が微細化されたポリウレタン発泡体を得ることができるポリウレタン発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、
イソシアネート成分とポリオール成分を主成分とする原料を、空気又は不活性気体の存在下、容器内で、垂直方向に延出する回転軸を有するとともに該回転軸から延出する撹拌翼が設けられた撹拌機で混合して発泡反応液を得る発泡工程と、該発泡反応液を反応硬化させる硬化工程とを有するポリウレタン発泡体の製造方法であって、
該発泡工程において、該撹拌翼の回転径方向先端に、回転径方向の水平面に対して立設される縁板部を設けた撹拌機を用いることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、前記発泡工程において、撹拌翼の回転方向先端が先鋭に形成された撹拌機を用いることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、回転方向に1〜45°の伏角を有する撹拌翼が設けられた撹拌機を用いることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、前記発泡工程において、前記縁板部の回転方向先端が先鋭に形成された撹拌機を用いることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、
前記発泡工程において、撹拌翼本体と、支持部材と、縁板部を備えた撹拌機を用い、
該撹拌翼本体は回転軸に取り付けられる、少なくとも2枚以上の水平パドル状部材であり、該撹拌翼本体の回転方向先端が先鋭に形成されるとともに、回転方向に1〜45°の伏角を有し、
該支持部材は、該撹拌翼本体の回転径方向先端に取り付けられた環状部材であり、
該縁板部は、該支持部材の外周に立設される、少なくとも2枚以上の板状部材であることを特徴とする。
このとき、好ましくは、平面状の底を有する円筒状の容器を用いる。
【0017】
また、本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、前記発泡工程において、着脱可能な撹拌翼が少なくとも2段以上設けられた撹拌機を用いることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、前記原料が、界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、好ましくは、前記発泡工程において、直径が前記撹拌翼の最外部直径の1.02〜2である容器を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、発泡工程において、撹拌翼の回転径方向先端に、回転径方向の水平面に対して立設される縁板部を設けた撹拌機を用いるため、気泡を含む反応液に、適宜の撹拌翼を用いて十分な撹拌力を加えた状態で、さらに、液深方向の広い範囲にわたって縁板部によってせん断力を加えることにより、気泡の分割、分散を促進して、均一かつ良好に初期硬化反応が進行するとともに、気泡が反応液中に均一に分散した発泡反応液を得ることができ、さらに、この発泡反応液を硬化、成形することで、特性が均一なポリウレタン発泡体を得ることができる。また、発泡(セル)が微細化されたポリウレタン発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法の好適な実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0022】
本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、イソシアネート成分とポリオール成分を主成分とする原料を、空気又は不活性気体の存在下、容器内で、垂直方向に延出する回転軸を有するとともに回転軸から延出する撹拌翼が設けられた撹拌機で混合して発泡反応液を得る発泡工程と、発泡反応液を反応硬化させる硬化工程とを有する。
ここで、上記原料は、界面活性剤を含有するものであると、例えば発泡工程において生成する気泡の形状等を制御するうえで、より好ましい。原料のうちイソシアネート成分とポリオール成分については、ほぼ化学量論比率で配合するが、界面活性剤については、例えばこれらの主成分100質量部に対して0.5〜10質量部配合する。
本発明において、イソシアネート成分とポリオール成分は、両者を同時に容器に入れて混合してもよいし、いずれか一方の成分を先に容器に入れて短時間混合した後、残りの成分を引き続き容器に入れて混合してもよい。
発泡工程では、撹拌によって、容器上面の開口から、空気あるいは必要に応じて適宜雰囲気ガスとして供給される不活性気体がイソシアネート成分とポリオール成分からなる混合液中に取り込まれる。この場合、容器を実質的に密閉構造として、発泡源となる空気又は不活性気体を容器内に吹き込む方法を採用してもよい。空気や不活性気体は、乾燥状態のものであることが好ましいが、これに限らず、湿った状態のものであってもよい。
【0023】
一般に、撹拌機は、十分な撹拌効果を得ることによって撹拌対象流体を均一に混合することを目的とするものであり、そのために、撹拌対象流体の粘度等の特性に応じた種々の撹拌羽根構造が採用される。例えば、プロペラ形は低粘度多量液の処理に適し、かい型は処理液量は比較的少ないが広範囲の粘度液に適するといわれている。また、撹拌力の不足は撹拌動力を大きくすることによってある程度カバーされる。
したがって、ポリウレタン発泡体の製造方法においても、撹拌羽根の形態を適宜選択して用いることにより、および、撹拌機を高速回転させることにより、短時間で進行するポリウレタン化反応に合わせて発泡を十分に行うことができる。すなわち、発泡工程で十分な撹拌力を得ることで初期硬化反応を均一にかつ良好に進行させ、また、反応液中に混入させる気泡を反応液中に均一に分散させることができる。
【0024】
ところが、一般の混合と異なり、ポリウレタン発泡体の製造方法の発泡工程(以下、単に発泡工程ということがある。)においては、連通気泡を意図的に形成する場合を除くと、既に述べたように反応液に取り込んだ気泡を適宜分断(分割)することにより、均一で、微細な気泡を形成することが重要な要素となっている。そして、このことは、気泡を含んだ反応液にあるいは気泡自体に適当なせん断力を加えることによって効果的に実現される。
【0025】
上記のいわば泡立てを効果的に実現するものとして、先に説明した生クリーム等を泡立てるために用いられる市販の撹拌装置を挙げることができる。この撹拌装置(撹拌羽根)は、抹茶を立てる際に、茶をかきまわして泡を立てたり練ったりするときに用いる茶筅(ちゃせん)を中空にしたような形態であり、言い換えれば、針金状等の細線で地球儀の外殻のうちの等間隔に離間した複数の経度線を骨格として形成したものである。
この撹拌装置によれば、液深方向(上下方向)に伸びる複数の細線が、処理液を効率的にせん断するため、効率的に泡立てを行うことができる。なお、先に挙げた特許文献1、特許文献2の撹拌機は、この技術の延長線上にあるものと見ることができる。
しかしながら、これらの撹拌装置(撹拌羽根)は上記の羽根構造上明らかなように、撹拌力をある程度犠牲にしたものと考えられる。その場合でも、上記のように生クリーム等の低粘度液体を撹拌するうえでは必要な撹拌力(混合性)を得られるものと思われるが、ポリウレタン発泡体原料である発泡反応液のような相対的に粘度の高い液体を混合するのに撹拌力が不足するものと考えられる。
また、同じく先に説明した連続型の装置の無数の動翼ピンおよび静翼ピンを供えた撹拌翼を回分式装置においても採用することが考えられる。この撹拌翼は、連続型の装置に実用されているものであり、また、構造上、粘度の高い液にせん断力を加えて発泡させるのに好適であることが明らかであるからである。しかしながら、この無数の動翼ピンおよび静翼ピンを供えた撹拌翼を有する装置は、回分式で処理するときに求められる装置の簡易性の観点から不適であることも明らかである。
【0026】
本発明者等は、上記の点に鑑みて、必要な撹拌力(混合性)が得られるとともに、気泡を含む発泡反応液に効果的にせん断力を加えることができる発泡ポリウレタン原料の混合方法について鋭意検討した結果、本発明に想達したものである。
【0027】
本発明に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、発泡工程において、撹拌翼(撹拌翼本体)の回転径方向先端に、回転径方向の水平面に対して立設される縁板部を設けた撹拌機を用いるものである。
上記したように、撹拌翼20a、20b(発明の理解のために、最先に現れる部材名称のみについて実施例で用いる装置の対応する部材の参照番号を付す。以下、他の部材についても同じ。)は、所定の撹拌力を得ることができるものである限り、適宜の形態のものを採用することができる。
例えば、撹拌翼の回転方向先端が先鋭に形成された撹拌機14を用いると、発泡反応液に効果的にせん断力を加えて気泡を適度に分断(分割)して均一寸法とすることができるものと思われる。このとき、撹拌翼の先鋭の程度、すなわち、鋭角の大きさは特に限定するものではない。また、撹拌翼を回転方向に1〜45°の伏角を有するように形成することが好ましい。
【0028】
撹拌翼の回転径方向先端に、回転径方向の水平面に対して立設される縁板部28a〜28d、30a〜30d、は、発泡反応液の液深方向、言い換えれば容器12の垂直方向に延出する、一定の長さのせん断刃に相当する。通常の撹拌翼のみでは、せん断力が加えられる範囲は発泡反応液の比較的少ない体積部分に限られるが、本発明の縁板部によって、発泡反応液の相対的に多くの体積部分に対してせん断力を加えることができ、微細な気泡が均一に発泡反応液中に分散した発泡反応液を得ることができる。
また、このとき、撹拌機の高速回転によって、液に遠心力が作用し、液が容器の周壁に押し付けられて盛り上がった状態で偏在するようになる。これにより、生成される発泡反応液の流線(流れ)は、主に液表面で回転軸18の周辺に巻き込まれてほぼ回転軸に沿って下降する流れが、容器の底面近傍で反転して容器壁に沿って上昇する流れとなり容器内を循環するものとなるため、流線密度が比較的高く、また、液が盛り上がった容器壁近傍に設けられる縁板部がより効率的なせん断効果を発揮するのではないかと考えられる。
【0029】
縁板部は、撹拌翼の高さ方向中心から上方にのみ延出してもよく、また、下方にのみ延出してもよく、さらにまた、撹拌翼の高さ方向中心を挟んで上下方向に延出してもよい。ただし、撹拌翼を多段に設ける場合、少なくとも上方側に位置する撹拌翼の縁板部については、液の盛り上がり部に対しても効率的にせん断力を加えることができるように、上方に延出することがより好ましい。
また、縁板部の枚数、1枚の縁板部の寸法等の好適な条件については、必ずしも明確ではないが、適宜設計事項として設定することができる。少なくとも容器内壁に沿って全周、全高さを縁板部で覆うことが不適であることはいうまでもなく明らかである。撹拌翼による撹拌力と縁板部によるせん断力との適切なバランスや、処理対象物である発泡反応液の粘度や発泡度合い等との関係についても設計事項として考慮する。
【0030】
また、縁板部は、回転方向先端を先鋭に形成すると、発泡反応液に効果的にせん断力を加えて気泡を適度に分断(分割)して均一寸法とすることができるものと思われる。このとき、先鋭の程度、すなわち鋭角の大きさについては特に限定するものではない。
【0031】
また、縁板部は、十分なせん断力が得られるものである限り、例えば、回転径方向の水平面に対して垂直状態から適度に傾斜した状態に変えたものであってもよく、また同様に、平面視、流線方向(回転径に対する切線方向)に対して平行状態から適度に流線と交差した状態に変えたものであってもよい。
【0032】
また、本発明において、撹拌翼本体20a、20bと、支持部材26a、26bと、縁板部28a〜28d、30a〜30dを備えた撹拌機14を用い、撹拌翼本体は回転軸18に取り付けられる、少なくとも2枚以上の水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dであり、撹拌翼本体の回転方向先端が先鋭に形成されるとともに、回転方向に1〜45°の伏角を有し、支持部材は、撹拌翼本体の回転径方向先端に取り付けられた環状部材であり、縁板部は、該支持部材の外周に立設される板状部材であると、好適である。
また、このとき、撹拌機を収容する容器の直径(最小内径)を撹拌翼の直径(最外部直径)の1.02〜2とすると、容器と撹拌機との間にバランスのよい離間間隔が得られるため、上記縁板部の効果、さらには、撹拌翼の効果をより好適に得ることができる。また、容器として平面状の底を有する円筒状の容器12を用いると、容器が自立姿勢をとれるため、保管、移動等の際の取り扱いが容易である。また、このような容器は、ポリカップや紙カップのような安価な市販品を利用することができ、さらにまた必要に応じて使い捨てすることもできる。
【0033】
また、本発明において、好ましくは、着脱可能な撹拌翼20a、20bが少なくとも2段以上設けられた撹拌機14を用いる。この場合、撹拌翼(撹拌翼本体)の各段にそれぞれ設けられる羽根(上記水平パドル状部材等)22a〜22d、24a〜24dは、好ましくは、平面視で例えば1〜45°の位相差を以って配置される。
撹拌翼を液深方向に複数設けることにより、より均一な撹拌、混合効果を得ることができる。このとき、複数の撹拌翼を、一定の処理条件に応じて適正に配置された固定翼とし、異なる処理条件に対応できる複数の撹拌機を用意してもよいが、複数の撹拌翼を、回転軸に対して着脱可能に構成すると、撹拌翼の位置を液深方向に移動、調整し、例えば、反応液の液深および容器内壁に接する反応液の盛り上がり高さに応じて2段目以上の上段側の撹拌翼の高さ位置決定する等により、1つの撹拌機で異なる処理条件に容易に対応することができる。
【0034】
本発明の実施の形態に係るポリウレタン発泡体の製造方法は、イソシアネート成分とポリオール成分を、容器内で、上記の撹拌機を用いて混合して発泡反応液を得る(発泡工程)。
ついで、得られた発泡反応液を型内に注入又は圧入して反応硬化させることにより(硬化工程)、ポリウレタン発泡体を得る。
このとき、反応液中への気体の最高混入率、言い換えればポリウレタン発泡体の低密度化には原料の処方により限界があるが、この気体の混入度合い、言い換えれば発泡度合いは、液面の盛り上がりの高さによって経験的に判断できる。したがって、発泡度合いが限界に達したと経験的に判断された時点で撹拌を停止し、成形型への注入操作に移行する。この撹拌停止の時期が大幅に遅れると、液の粘度が過度に上昇してもはや成形型へ発泡反応液を注入できなくなることもある。
【0035】
以上説明した本実施の形態に係るポリウレタン発泡体の製造方法によれば、気泡の分割、分散を促進して、均一かつ良好に初期硬化反応が進行するとともに、気泡が反応液中に均一に分散した発泡反応液を得ることができ、さらに、この発泡反応液を硬化、成形することで、発泡反応液の品質特性を実質的にそのまま引き継いだ、微細気泡が均一に分散し、また、発泡(セル)が微細化された、機械物性や圧縮特性等の物性の良好なポリウレタン発泡体を得ることができる。
本発明で得られるポリウレタン発泡体の用途は、特に限定するものではないが、研磨パッド、防振材、鉄道用パッド、ロール等に好適である。
【実施例】
【0036】
実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例)
まず、実施例で用いる撹拌装置について説明する。
図1〜図3に示す実施例の撹拌装置10は、容器12と、撹拌機14を有する。図1中、参照符号16は、撹拌機14の駆動源であるモータを模式的に示す。
容器12は、上部の内径が170Φmm、下部の内径が140Φmm、高さが160mmの紙製の円筒容器であり、下部が平面状の底12aで閉塞されている。底12aの外周には、袴状脚部13が設けられる。
撹拌機14は、モータ16から垂直方向に延出して容器12内に垂下される回転軸18の上下2箇所(2段)に撹拌翼20a、20bが水平方向に延出される。撹拌翼20a、20bの直径は94mmである。撹拌翼20a、20bは、それぞれ4枚の水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dで構成される。各水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dは、それぞれ、回転径方向の長さが30mmであり、幅が20mmである。各水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dは、それぞれ回転方向(図2、3中、矢印Aで示す。)に20°の伏角θ1を有する。また、水平パドル状部材(撹拌翼)22a〜22d、24a〜24dの回転方向先端が25°の鋭角θ2に先鋭に形成される。
各水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dの回転径方向外周端部(回転径方向先端)を囲うように環状の支持部材26a、26bが設けられる。支持部材26a、26bは、回転径方向側の幅が8mmである。
各水平パドル状部材22a〜22d、24a〜24dに対応する支持部材26a、26bの外周位置に、回転径方向の水平面に対して立設される平板状の縁板部28a〜28d、30a〜30dが設けられる。縁板部28a〜28d、30a〜30dは、それぞれ、高さが25mmであり、幅が40mmである。
なお、上記撹拌機14の各構成部材は、金属あるいは樹脂等の適宜の材料で形成することができる。
【0038】
上記の撹拌装置10を用い、以下の処方等により密度(狙いの値)が0.66/cmのポリウレタン発泡体を製造した。
まず、以下の処方のイソシアネート成分としてイソシアネートプレポリマー700gおよびポリオール成分としてポリオールプレミックス74.2gを準備した。なお、イソシアネートプレポリマーの粘度は2500mPa・s(測定温度45℃)、ポリオールプレミックスの粘度は、770mPa・s(測定温度45℃)であった。粘度の測定はいずれもB型粘度計を用いて行った。
○イソシアネートプレポリマー(イソシアネート成分)
MT(ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’異性体が99%以上、日本ポリウレタン工業社製)377部と、PTG-2000SN(数平均分子量が2000のポリテトラメチレングリコール、保土谷化学工業社製)623部を、80℃で3時間反応させることにより得たNCO含有量10%のイソシアネート基末端プレポリマー
○ポリオールプレミックス(ポリオール成分)
EG(エチレングリコール)521.7部
1,4-BG(1,4-ブタンジオール)86.95部
ジグリセリン130.4部
GL-3000(公称平均官能基数が3で、数平均分子量が3,000のポリプロピレングリコール、三洋化成工業社製)130.4部
F-341(界面活性剤、信越化学工業社製シリコーン系整泡剤)130.4部
DOTDL(錫系ウレタン化触媒)0.06部
【0039】
イソシアネートプレポリマーおよびポリオールプレミックスを容器12に入れ、液温を45℃に保持しながら、撹拌機14の回転速度1500rpmで60秒撹拌して発泡反応液を得た。
発泡反応液を型温を110℃に保持した成形機で板状に成形してポリウレタン発泡体を得た。
発泡工程での混合性(目視評価による)およびポリウレタン発泡体の性状を表1に示した。なお、発泡体のセルサイズの測定およびセル状態の評価は、以下の方法により行った。
セル径の測定は、電子顕微鏡:JSM−6360LA(日本電子株式会社製)を使用した。
平均セル径〔平均値(Dav)〕:
ポリウレタン樹脂の任意の部位を切り出し、任意に選択した5つの切断面において、面積=2cm2 のサンプリング範囲内に存在するセルの径を測定し、各切断面での平均セル径(D1 ,D2 ,D3 ,D4 ,D5 )を求め、さらに、これらの平均値(Dav)〔Dav=(D1 +D2 +D3 +D4 +D5 )/5〕を算出した。
セル径のバラツキ:〔標準偏差(σ)〕:
上記の方法で測定した全てのセル径から、標準偏差(σ)を算出してバラツキを示す値とした。この数値が高いほどバラツキが多いことを示す。
表1中、発泡体の比重は、JIS K−6400(1997)に準じて測定した。
【0040】
(参考例)
撹拌機として実施例の撹拌機14から縁板部28a〜28d、30a〜30dを取り除いたものを用いたほかは、原料処方、撹拌条件、成形条件について実施例と同一にして発泡反応液、ポリウレタン発泡体を得た。結果を実施例と同様に表1に示す。
(比較例)
撹拌機として市販の生クリーム用の泡だて器を治具に固定して用いたほかは、原料処方、撹拌条件、成形条件について実施例と同一にして発泡反応液、ポリウレタン発泡体(発泡体)を得た。結果を実施例と同様に表1に示す。なお、この場合、良好な発泡反応液が得られなかったため、ポリウレタン発泡体の成形、評価は行わなかった。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例で用いた撹拌装置の正面図である。
【図2】図1の撹拌装置の、容器を省略して示す平面図である。
【図3】図1の撹拌装置を図2中III−III線で破断して示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10 撹拌装置
12 容器
12a 底
13 袴状脚部
14 撹拌機
16 モータ
18 回転軸
20a、20b 撹拌翼
22a〜22d、24a〜24d 水平パドル状部材
26a、26b 支持部材
28a〜28d、30a〜30d 縁板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分とポリオール成分を主成分とする原料を、空気又は不活性気体の存在下、容器内で、垂直方向に延出する回転軸を有するとともに該回転軸から延出する撹拌翼が設けられた撹拌機で混合して発泡反応液を得る発泡工程と、該発泡反応液を反応硬化させる硬化工程とを有するポリウレタン発泡体の製造方法であって、
該発泡工程において、該撹拌翼の回転径方向先端に、回転径方向の水平面に対して立設される縁板部を設けた撹拌機を用いることを特徴とするポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記発泡工程において、撹拌翼の回転方向先端が先鋭に形成された撹拌機を用いることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項3】
回転方向に1〜45°の伏角を有する撹拌翼が設けられた撹拌機を用いることを特徴とする請求項2記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記発泡工程において、前記縁板部の回転方向先端が先鋭に形成された撹拌機を用いることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡工程において、撹拌翼本体と、支持部材と、縁板部を備えた撹拌機を用い、
該撹拌翼本体は回転軸に取り付けられる、少なくとも2枚以上の水平パドル状部材であり、該撹拌翼本体の回転方向先端が先鋭に形成されるとともに、回転方向に1〜45°の伏角を有し、
該支持部材は、該撹拌翼本体の回転径方向先端に取り付けられた環状部材であり、
該縁板部は、該支持部材の外周に立設される、少なくとも2枚以上の板状部材であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡工程において、平面状の底を有する円筒状の容器を用いることを特徴とする請求項5記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項7】
前記発泡工程において、着脱可能な撹拌翼が少なくとも2段以上設けられた撹拌機を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項8】
前記原料が、界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項9】
前記発泡工程において、直径が前記撹拌翼の最外部直径の1.02〜2である容器を用いることを特徴とする1〜8のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−150409(P2008−150409A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336694(P2006−336694)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】