説明

ポリウレタン組成物、ポリウレタンのリサイクル方法、およびリサイクル品

【課題】廃製品のリサイクル処理によって回収されたポリウレタンが使用されても、有害性重金属の溶出を抑制するポリウレタン組成物、ポリウレタンのリサイクル方法およびリサイクル品を提供すること。
【解決手段】廃製品のリサイクル処理によって回収されたポリウレタンおよび重金属捕捉剤を含有するポリウレタン組成物、および該組成物からなるポリウレタンリサイクル品。廃製品のリサイクル処理によってポリウレタンを回収した後、該回収ポリウレタンを少なくとも重金属捕捉剤と混合する工程を含むことを特徴とするポリウレタンのリサイクル方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン組成物、ポリウレタンのリサイクル方法、およびポリウレタンリサイクル品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用の観点から制定された家電リサイクル法に則り、廃棄された4家電製品の冷蔵庫、テレビ、洗濯機およびエアコンのリサイクルについて種々の取り組みがなされている。
【0003】
例えば、廃冷蔵庫はまず、手作業で分解され、電源コード、塩化ビニルガスケット、マグネット、ならびに庫内のガラス製棚板およびプラスチック製容器等を取り外した後、コンプレッサーの冷媒フロン・オイルを回収し、コンプレッサーを分離する。次いで、金属製の筐体をまるごと一括して粉砕した後、磁選機および比重差選別機等により鉄、銅およびアルミ等を分別・回収する。その後、残りの粉砕物をさらに風力選別機等に付し、ポリウレタンをその他のプラスチックとは別に回収する。回収されたポリウレタンは減容機により一旦、圧縮成形されて取り出される。取り出されたポリウレタンは、例えばボードに再利用することができる。一般的には、一旦圧縮成形された回収ポリウレタンを再度、粉砕し、風力選別でポリウレタンの純度をさらに上げた上で熱圧縮成形してボードの芯材として利用する。
【0004】
一方、人間の健康や環境の保全を図る観点からヨーロッパで発令された、六価クロムや鉛など6物質の使用を禁止する有害化学物質規制(RoHS規制)が世界各国に波及し、グローバルスタンダードとなる様相を呈しており、国内においても検討されている。他方、あらゆる家電製品はその使用後、破棄されるが、埋め立て破棄されたとき、雨水等によって有害性物質が溶出し、人間の健康や環境に悪影響を与えない様に、有害性物質の溶出基準を規定した土壌環境基準(平成3年8月23日環境庁告示第46号)が制定され、これらの要求基準を満足する製品が求められている。リサイクル材においても全く同様の対応が必要であり、RoHSの有害物質含有規制と土壌汚染の溶出基準をクリアーしておく必要がある。しかも、これらの規制や基準は、人間の健康や環境の保全という本質的な観点から、将来的にさらに厳しくなってゆく傾向にあり、より厳しい規制および基準をクリアーしておくことがより望ましい。
【0005】
なお、冷蔵庫のリサイクル材の活用例として、ポリウレタンとガラス繊維等の無機材料を用いた真空断熱材との両者を含む断熱材のリサイクル処理方法に関し、混合廃材の品質の一定化を目的として、混合廃材中の無機材料含有率を調整する技術が報告されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−66628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、冷蔵庫のリサイクルに際しては、前記のごとく、例えば、鉛を含んだ半田を使用しているプリント基板や筐体塗装の下地処理に六価クロムを使用した状態で筐体そのものを一括粉砕するため、そのリサイクル材においては微量とは言え、これら有害物質の含有は免れない問題であった。
その結果、このようなリサイクル材を用いて、新たなリサイクル品を生産することはできなかった。
あるいは、特許文献1のような再利用を行うためには、廃冷蔵庫から断熱材ポリウレタンを回収する際に、前記した有害物質が混入しないように手作業での分別作業を行う必要があり、手作業を行う作業者を配置することで発生する作業工数の増加や、解体費用の増加などを考慮する必要があった。
【0007】
本発明は、廃製品のリサイクル処理によって回収されたポリウレタンが使用されても、有害性重金属の溶出を抑制するポリウレタン組成物、ポリウレタンのリサイクル方法およびリサイクル品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、廃製品のリサイクル処理によって回収されたポリウレタンおよび重金属捕捉剤を含有するポリウレタン組成物、および該組成物からなるリサイクル品に関する。
【0009】
本発明はまた、廃製品のリサイクル処理によってポリウレタンを回収した後、該回収ポリウレタンを少なくとも重金属捕捉剤と均一に混合する工程を含むことを特徴とするポリウレタンのリサイクル方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタン組成物および該組成物からなるリサイクル品は、土壌中に埋設・廃棄されたり、水中に投棄されたりしても、有害性重金属の溶出が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(ポリウレタン組成物)
本発明のポリウレタン組成物に含有されるポリウレタンは、廃製品をリサイクル処理したときに回収されたポリウレタンである。廃製品はポリウレタン製部品を有するものであれば特に制限されず、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、ジャーポット、給湯器の屋外に設置される給湯用タンクなどのような廃電化製品が挙げられる。
【0012】
リサイクル処理とは廃製品を構成する材料を再利用するために行われる再生処理であって、粉砕工程を含むものである。リサイクル処理では処理効率の観点から一般に、廃製品における少なくともポリウレタン製部品およびポリウレタン以外のプラスチック製部品、ならびに鉄、銅、アルミニウムといった金属部品や所望により電子回路板等を一括して粉砕し、当該粉砕物から各材料の磁性、比重等の差を利用して磁選機、比重差選別機および風力選別機等によりポリウレタンを分別・回収する。一括粉砕により得られる粉砕物には通常、部品の塗装やメッキの下地処理に由来する六価クロム、電子回路板のハンダに由来する鉛等の有害性重金属が含有され、それらの重金属はその後の処理によっても除去することは困難である。そのため、リサイクル処理によって回収されたポリウレタンには六価クロムや鉛等の有害性重金属が微量ではあるが含有され、そのような回収ポリウレタンを再利用して製造された従来のリサイクル品が土壌に廃棄された場合には当該重金属が雨水等によって溶出する。またそのようなリサイクル品が河川・湖沼・海に投棄された場合には当該重金属が河川・湖沼の水や海水に溶出する。その結果、環境が汚染され、人間の健康を阻害する。本発明においては廃製品のリサイクル処理によって回収されたポリウレタンに後述の重金属捕捉剤を含有させるため、そのようなポリウレタン組成物からなるリサイクル品が土壌中または水中に廃棄されても、有害性重金属の溶出が抑制される。
【0013】
ポリウレタンを、例えば、冷蔵庫のリサイクル処理によって回収する場合について説明する。冷蔵庫には筐体の壁内部に断熱材としてポリウレタンフォームが配設されており、当該ポリウレタンフォームがリサイクル処理によって回収される。
【0014】
冷蔵庫は、例えば、まず手作業で分解され、電源コード、塩化ビニルガスケット、マグネット、ならびに庫内のガラス製棚板およびプラスチック製容器等を取り外した後、コンプレッサーの冷媒フロン・オイルを回収し、コンプレッサーを分離する。次いで、金属製の筐体をまるごと一括して粉砕した後、磁選機および比重差選別機等により鉄、銅およびアルミ等を分別・回収する。その後、残りの粉砕物をさらに風力選別機等により分別処理し、ポリウレタンをその他のプラスチックとは別に回収する。詳しくはポリウレタンと、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等の他のプラスチックとは、粒子状態での大きさ、比重および嵩比重の差等に基づいて風力選別機等によって分別され、ポリウレタンを回収する。
【0015】
ポリウレタンは通常、粉体粒子の形態で回収される。回収ポリウレタンの粒径は、粉砕条件に依存するため一概に規定できるものではないが、通常は0.05〜0.25mm程度である。
【0016】
回収ポリウレタンを提供する廃製品には通常、様々なメーカーや機種のものが混在するため、回収ポリウレタンに含有される有害性重金属の量は一概に規定できるものではなく、例えば、廃冷蔵庫のリサイクル処理ラインにより回収されるポリウレタンの場合、溶出試験での溶出量が、基準値を超えることもある。
基準値としては、六価クロムは0.05mg/L、鉛は0.01mg/Lである。
【0017】
回収ポリウレタンにおける有害性重金属の検出量は以下の方法によって測定された値を用いている。すなわち、六価クロムはJIS K0102の65.2、鉛はJIS K0102の54に定められた方法によって測定され、検出限界値は六価クロムで0.04mg/L、鉛で0.005mg/Lである。
【0018】
回収ポリウレタンは、リサイクル処理時において、ポリウレタン以外の物質、例えば鉄、銅、アルミ等の金属、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS等の他のプラスチック、ならびにその他の紙や木材等と厳密に分別されて回収されなければならないというわけではなく、本発明のポリウレタン組成物を用いて製造されるリサイクル品の機能が阻害されない範囲内であれば、そのようなポリウレタン以外の物質が含有されていてもよい。従って、本発明のポリウレタン組成物においては、上記したように有害性重金属が含有されていることだけでなく、上記ポリウレタン以外の物質、すなわち不純物が含有されていることによっても、使用されたポリウレタンがリサイクル処理によって回収されたものであることが容易に判別できる。
【0019】
重金属捕捉剤は、水中で有害性重金属を一旦、捕捉すると、当該重金属を水中に放出することがほとんどなく、継続して保持するものであれば特に制限されず、例えば、排水処理の分野で重金属を凝集させることによって排水中から除去・分離可能な凝集剤として使用されているもの等が使用される。
【0020】
そのような排水処理用凝集剤として例えば、無機系または有機系の凝集剤が知られており、本発明はいずれの凝集剤も使用可能であるが、使用の容易さおよび含有させる製品に対する影響の観点から無機系凝集剤が好ましい。
【0021】
排水処理用無機系凝集剤としては、例えば、「スーパーナミット」シリーズ((株)ノアテック社製)等として入手可能な市販品を使用することもできるし、またはポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄等の物質を使用することもできる。
【0022】
特に「スーパーナミット」シリーズの具体例としては、例えば、スーパーナミットCZ、TN315CK、CY等が挙げられる。
【0023】
重金属捕捉剤の中でも、重金属、特に六価クロムの捕捉をより有効に行う観点から、より好ましくは「スーパーナミット」シリーズ、特にスーパーナミットCZを使用する。
【0024】
重金属捕捉剤は粉体形態または液体形態のいずれの形態を有していてもよいが、好ましくは粉体形態を有するものである。粉体形態を有する重金属捕捉剤を用いると、組成物の製造が容易であるためである。粉体形態の重金属捕捉剤の平均粒径は通常80μm〜100μmであるが、微粉砕することによって、さらに小さな粒径に制御可能である。
【0025】
重金属捕捉剤は、回収ポリウレタンに含有される有害性重金属を捕捉・保持するのに十分な量で含有されればよく、そのような含有量は通常、回収ポリウレタンに対して0.01重量%以上(第1範囲)である。重金属捕捉剤の含有量の上限は特に限定されるものではないが、製造コストと効果とリサイクル品の品質確保とのバランスの観点からは0.10〜3.00重量%(第2範囲)、特に0.15〜1.00重量%(第3範囲)が好ましい。重金属捕捉剤は2種類以上組み合わせて含有されてよく、その場合それらの合計含有量が上記範囲内であればよい。
【0026】
本発明において溶出を抑制され得る有害性重金属は、使用される重金属捕捉剤の種類に依存するため、一概に規定できるものではないが、少なくとも六価クロムおよび鉛である。
例えば、重金属捕捉剤として「スーパーナミット」シリーズ、特にスーパーナミットCZが含有される場合、本発明のポリウレタン組成物は六価クロムおよび鉛等の重金属の溶出を抑制できる。
【0027】
本発明のポリウレタン組成物は、その用途によっては、ポリウレタンおよび重金属捕捉剤以外の他の成分を含有していてもよい。
【0028】
ポリウレタン組成物の形態は、少なくとも回収ポリウレタンおよび重金属捕捉剤を含有する限り特に制限されず、例えば、(1)回収ポリウレタンおよび重金属捕捉剤がそれぞれ別個に粉体粒子として存在してなる混合粒子形態、(2)回収ポリウレタン粉体粒子の表面に重金属捕捉剤が被膜形態でコーティングされてなる被膜状コーティング粒子形態、(3)それらの形態を複合的に有する複合形態等が挙げられる。さらにポリウレタン組成物は、(4)前記(1)〜(3)のいずれかの形態のポリウレタン組成物を圧縮成形してなる圧縮形態を有していても良い。製造コストの観点から(1)の形態、および(4)の形態が好ましく、特に(1)の形態のポリウレタン組成物を圧縮成形してなる圧縮形態が、ポリウレタン組成物の製造コストおよび搬送性の観点から好ましい。
【0029】
(ポリウレタンのリサイクル方法)
本発明のポリウレタンのリサイクル方法は、廃製品のリサイクル処理によってポリウレタンを回収した後、該回収ポリウレタンを少なくとも重金属捕捉剤と混合する工程を含むことを特徴とする。詳しくは、前記したようにリサイクル処理によって廃製品からポリウレタンを回収した後、当該回収ポリウレタンを少なくとも重金属捕捉剤と均一に混合する工程を経ることによって、上記ポリウレタン組成物を得る。混合方法は均一な混合が達成される限り特に制限されるものではない。特に、共に粉体粒子形態の回収ポリウレタンおよび重金属捕捉剤の混合の際は、ポリウレタンおよび重金属捕捉剤を所定の割合になる様に供給すると共に、空間部において気流を利用して攪拌し、さらには貯留状態においても攪拌することにより、均一な混合を達成することができる。
【0030】
具体的には例えば、少なくとも回収ポリウレタン粉体粒子および重金属捕捉剤粉体粒子を単に混合・撹拌すると、前記(1)の混合粒子形態を有するポリウレタン組成物が得られる。特に、重金属捕捉剤粉体粒子の粒径が回収ポリウレタン粉体粒子より小さいときなどのように、ポリウレタン組成物は、回収ポリウレタン粉体粒子の表面に重金属捕捉剤が微粒子形態でコーティングされてなる混合粒子形態を有していてもよい。
【0031】
また例えば、少なくとも回収ポリウレタン粉体粒子および重金属捕捉剤溶液を混合・撹拌し、乾燥させ、所望により解砕すると、前記(2)の被膜状コーティング粒子形態を有するポリウレタン組成物が得られる。重金属捕捉剤溶液の溶媒は、重金属捕捉剤は溶解可能であるがポリウレタンは溶解させ得ない有機溶剤が使用される。重金属捕捉剤が液体形態を有する場合は溶液形態にすることなく、そのまま用いても良い。
【0032】
また例えば、前記(1)〜(2)の形態のポリウレタン組成物から選択された2種類以上のポリウレタン組成物を単に混合・撹拌すると、前記(3)の複合形態を有するポリウレタン組成物が得られる。
【0033】
また例えば、前記(1)〜(3)のいずれかの形態のポリウレタン組成物を、例えば減容機等によって圧縮成形すると、前記(4)の圧縮形態を有するポリウレタン組成物が得られる。圧力等の圧縮成形条件は、取扱い時において圧縮物が崩壊しない程度に適宜決定されればよい。ポリウレタン組成物が前記(4)の圧縮形態を有する場合、リサイクル品の製造時には、当該組成物は通常、一旦粉砕されて使用される。
【0034】
上記のようなリサイクル方法において、得られたポリウレタン組成物はリサイクル品の製造に使用される。
【0035】
(リサイクル品)
本発明のリサイクル品は、上記ポリウレタン組成物からなることを特徴とするものである。本発明においてリサイクル品は、ポリウレタンが有する断熱機能、軽量化機能、吸水機能、吸油機能などの機能を活かした用途に有用である。詳しくは、ポリウレタン組成物をボード形状等の各種形状に加工して、以下に示す用途に使用することができる;
・建材ボードの断熱用および軽量化用芯材
・畳の断熱用芯材;
・ビルの屋上緑化のための給水用基材;
・海洋汚染防止のためのオイルフェンスやオイル回収材;
・道路の凍結防止のためにアスファルト下面に埋設される凍結防止材;
・ペットの糞尿吸着剤;
・家屋の天井、壁および床等の断熱材。
【0036】
加工方法としては特に制限されず、例えば、圧縮成形法、熱圧縮成形法等が使用可能である。
【実施例】
【0037】
図1に示すフロー図に基づいて作業を行った。詳しくは以下に記載の通りである。
【0038】
(比較例1)
冷蔵庫をまず手解体工程1で、電源コード、塩化ビニルガスケット、マグネット及び、庫内のガラス製の棚板、プラスチック製の容器等を取り外す。次にコンプレッサー冷媒フロン・オイル回収工程2で、コンプレッサーの冷媒フロン・オイルを回収した後、コンプレッサー分離工程3でコンプレッサーを冷蔵庫本体から分離し、一括粉砕工程4で冷蔵庫本体を金属製の筐体ごと破砕機にて、一括粉砕する。その後、磁選機5、比重差選別機6等により、鉄、銅・アルミを回収すると共に、回収できなかった残りの粉砕物は比重の大きい銅・アルミの金属類と、比重の小さいポリウレタン類とに分別される。比重の大きい銅・アルミの金属類は、更に非鉄選別機7によって、銅・アルミの回収を行い、その残りは廃プラスチックとして廃棄処分した。一方、比重の小さいポリウレタン類は発泡含有されている断熱材フロンの回収率を上げると共に、粒度の揃ったポリウレタンのリサイクル材にするため、ウレタン粉砕機8で細かく粉砕した。その後、風力選別機9によって微粉体のポリウレタンを取り除いた後、図2に示すようにサイクロン10を経由して、一旦ウレタン減容機のホッパータンク14に貯留させた。貯留させたポリウレタン(平均粒径0.2mm)10を所定の時間毎に所定の量だけウレタン減容機11に供給し、圧縮シリンダー15でプレスすることで断熱材フロンを搾り出して回収すると共にポリウレタンを圧縮減容された圧縮成形ポリウレタン18の形態で回収した。なお、比較例1において図2では重金属捕捉剤の供給は行わなかった。
【0039】
(実施例1〜5)
図2に示すようにサイクロン10を経由した回収ポリウレタン17に対して重金属捕捉剤を、表1に示す所定の割合で添加・混合したこと以外、比較例1と同様の方法により、ポリウレタンを圧縮減容された圧縮成形ポリウレタン18の形態で回収した。
詳しくは、図2に示すように、重金属捕捉剤12としてスーパーナミットCZ((株)ノアテック社製)を、定量供給装置13にてウレタン減容機11のホッパータンク14に供給し、ウレタン減容機11のホッパータンク14に連続的に供給される回収ポリウレタン17と重金属捕捉剤12のスーパーナミットCZとを一定の割合で供給した。ホッパータンク14の底部には攪拌用プロペラ16を配設し、攪拌用プロペラ16が回ることによりホッパータンク14内に気流を発生させ、この気流により回収ポリウレタン17と重金属捕捉剤12のスーパーナミットCZをホッパータンク14の内部空間で攪拌混合させ、時間の経過と共に底部に貯留させた。更には、貯留された回収ポリウレタン17と重金属捕捉剤12のスーパーナミットCZの混合物は攪拌用プロペラ16で直接攪拌することにより、回収ポリウレタン17と重金属捕捉剤12のスーパーナミットCZを均一に混合させた。
【0040】
(評価)
実施例/比較例で得られた圧縮成形ポリウレタン18に対して、六価クロムおよび鉛に関する溶出試験を行った。試験方法は前記した方法に従った。結果を表1に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果より、重金属捕捉剤の添加によって有害性重金属の溶出抑制効果が得られることが明らかである。特に、添加量を0.15重量%以上とすることにより、六価クロムおよび鉛の溶出量を検出限界値未満に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のポリウレタン組成物および該組成物からなるリサイクル品はポリウレタンが従来から使用されている用途、例えば、以下に示す用途に有用である;
・建材ボードの断熱用および軽量化用芯材
・畳の断熱用芯材;
・ビルの屋上緑化のための給水用基材;
・海洋汚染防止のためのオイルフェンスやオイル回収材;
・道路の凍結防止のためにアスファルト下面に埋設される凍結防止材;
・ペットの糞尿吸着剤;
・家屋の天井、壁および床等の断熱材
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例および比較例で行った冷蔵庫リサイクル処理のフロー図を示す。
【図2】実施例で採用した重金属捕捉剤の混合方法を説明するためのサイクロンから減容プレス機に至るまでの概略断面図を示す。
【符号の説明】
【0045】
1:手解体工程、2:コンプレッサー冷媒フロン・オイル回収工程、3:コンプレッサー分離工程、4:一括粉砕工程、5:磁選機、6:比重差選別機、7:非鉄選別機、8:ウレタン粉砕機、9:風力選別機、10:サイクロン、11:ウレタン減容機、12:重金属捕捉剤、13:定量供給装置、14:ホッパータンク、15:圧縮シリンダー、16:撹拌用プロペラ、17:回収ポリウレタン、18:圧縮成形ポリウレタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃製品のリサイクル処理によって回収されたポリウレタンおよび重金属捕捉剤を含有するポリウレタン組成物。
【請求項2】
重金属捕捉剤が排水処理用凝集剤である請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
廃製品が冷蔵庫である請求項1または2に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
廃製品のリサイクル処理によってポリウレタンを回収した後、該回収ポリウレタンを少なくとも重金属捕捉剤と混合する工程を含むことを特徴とするポリウレタンのリサイクル方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン組成物からなるリサイクル品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−254589(P2007−254589A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80710(P2006−80710)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】