説明

ポリエステルの製造方法

【課題】
鉛元素含有量が少なく環境負荷が小さい、かつ透明性に優れたポリエステルの製造方法の提供。
【解決手段】
テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体ならびにエチレングリコールを、エステル交換反応または、エステル化反応した後、重縮合してポリエチレンテレフタレート中の鉛元素が10ppb以下であるポリエステルを製造するに際して、ポリエステル重縮合触媒として用いる酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとが下記条件(1)〜(3)を満足することを特徴とするポリエステルの製造方法。
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対してビスマス元素が8ppm以上105ppm以下・・・(1)
三酸化アンチモン中のビスマス元素が400ppm以上・・・(2)
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量がポリエチレンテレフタレートに対して、10ppm以上1000ppm以下・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ポリエステルの製造法に関するものである。詳しくは、ポリエチレンテレフタレートの製造方法に関するものであって、鉛の含有量が少なくかつ透明性に優れたポリエチレンテレフタレートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、その優れた特性により、繊維、フィルム、ボトルに広く使用されている。
ポリエチレンテレフタレートの工業的製造法としては、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化させた後、重縮合をおこなう直接重合法、ならびにテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとをエステル交換反応させた後、重縮合をおこなうエステル交換反応方法が広く採用されている。
【0003】
従来、ポリエチレンテレフタレートを製造する際には、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン等のアンチモン化合物が重縮合反応触媒として使用されてきた。
この際、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンに二酸化鉛を添加すると、アンチモンの色調改善および透明性が改善できることは公知である(特許文献1)。しかし、この方法は透明性を向上させる優れた方法ではあるが、ポリエチレンテレフタレート中に重金属である鉛を添加する点で好ましくない。
またアンチモン化合物である三酸化アンチモン中のビスマス元素などを制御することにより、ポリエチレンテレフタレートの色調を制御することは、公知であった(特許文献2〜5)。
【0004】
しかしながら特許文献1以外にポリエチレンテレフタレートの透明性を向上させる方法は、知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭49−31793号公報
【特許文献2】特開平3−215522号公報
【特許文献3】特開平11−60714号公報
【特許文献4】特開昭64−69623号公報
【特許文献5】特開平1−185355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにポリエステルを製造する際に二酸化鉛を添加すると、ポリエステルの透明性を改善できるが、鉛は近年、環境への負荷が問題となっており、極力その含有量を抑制させる必要がある。
本願発明の目的は、ポリエステルの製造において、鉛の含有量が少なくかつ透明性に優れたポリエステルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は次の本願発明の製造方法によって、達成できる。
(1)テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体ならびにエチレングリコールを、エステル交換反応または、エステル化反応した後、重縮合してポリエチレンテレフタレート中の鉛元素が10ppb以下であるポリエステルを製造するに際して、ポリエステル重縮合触媒として用いる酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとが下記(1)〜(3)を満足することを特徴とするポリエチレンテレフタレートの製造方法。
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対してビスマス元素が8ppm以上105ppm以下・・・(1)
三酸化アンチモン中のビスマス元素含有量が400ppm以上・・・(2)
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量がポリエチレンテレフタレートに対して、10ppm以上1000ppm以下・・・(3)
(2)重縮合開始以前にトリエチルフォスフォノアセテートを添加することを特徴とする請求項1記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本願発明のポリエチレンテレフタレートの製造方法は、透明性が優れ、かつ鉛の含有量の少ないポリエチレンテレフタレートの製造を可能にするものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明のポリエチレンテレフタレートは、主たるカルボン酸成分がテレフタル酸単位(以下、TPAという)であり、主たるグリコール単位がエチレングリコール(以下、EGという)単位である。
本願発明のポリエチレンテレフタレートの製造においては、例えばテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応後、重縮合反応させるエステル交換反応法、またはテレフタル酸とエチレングリコールをエステル化反応後、重縮合反応させる直接重合法のいずれも採用することができる。
【0010】
また、本願発明におけるポリエチレンテレフタレートの製造においては、カルボン酸成分の20モル%以下であれば、TPA単位以外のジカルボン酸単位の1種または2種以上を含むことができ、また同様にグリコール単位の20モル%以下であれば、EG単位以外のグリコール単位を1種または2種以上を含むことができる。
【0011】
TPA単位以外のジカルボン酸単位としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;ドデカンジオン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸の単位が挙げられる。
【0012】
また、EG単位以外のグリコール単位としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、p−キシレングリコール、1,4−シクロヘキサジメタノール、ビスフェノールなどが挙げられる。
さらに熱可塑性を損なわない程度であれば三官能以上の多官能性化合物を共重合したポリエステルでもよい。
【0013】
本願発明におけるポリエステルの製造方法は、触媒として酢酸アンチモンと、特定量のビスマス元素を含有する三酸化アンチモンとを併用することに特徴がある。
上記酢酸アンチモンと三酸化アンチモンは、それぞれをEGスラリーまたはEG溶液として添加してもよいし、酢酸アンチモンまたは、三酸化アンチモンを粉体で添加しても良い。粉体で添加する場合は、酢酸アンチモンと三酸化アンチモンを別々に添加しても良いし、混合して添加しても良いが、粉体で添加すると、三酸化アンチモンが完全に溶解せず、そのためアンチモンメタルが完全に溶解して、アンチモンの凝集による粗大化の生成を防止でき、その結果透明性が向上するので、望ましい。
【0014】
また、酢酸アンチモンと三酸化アンチモンの添加時期は、直接重合法では重縮合反応前に、エステル交換反応法ではエステル交換反応前に添加するとポリエチレンテレフタレート中のアンチモン金属などの凝集がなく透明性が向上するので望ましい。
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンの合計添加量は得られるポリエチレンテレフタレートに対して、10ppm以上1000ppm以下とする必要がある。添加量が10ppm未満であると重縮合反応が進まず、所定の固有粘度のポリエチレンテレフタレートを得ることが困難になる。また1000ppmを超える量を添加すると、ポリエチレンテレフタレートの耐熱性が低下し、色調が黄味を帯びるほか、溶解していたアンチモン元素が不溶化して、透明性が悪化する。40以上500ppm以下であると、得られたポリエチレンテレフタレートの透明性と色調が良好となり、好ましい。
また、その量比(酢酸アンチモン重量/三酸化アンチモン重量)は、酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対してビスマス元素と、三酸化アンチモン中のビスマス元素含有量が規定の範囲を満たせば、6以上99以下であることが望ましい。その量比が6以上99以下であるとポリエチレンテレフタレートの透明性が良好になり好ましい。
【0015】
本願発明の特徴は、特定量のビスマス元素を含有する三酸化アンチモン、および酢酸アンチモンを併用し、かつ酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対するビスマス元素の量を特定範囲とすることによって、得られるポリエチレンテレフタレートの透明性向上をはかることにある。
【0016】
まず、三酸化アンチモン中のビスマス元素の含有量は三酸化アンチモンに対して400ppm以上であることが必要である。三酸化アンチモン中のビスマス元素量が400ppm未満であると、酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとを併用して得られたポリエチレンテレフタレートの透明性が低くなり好ましくない。特に三酸化アンチモン中のビスマス元素量が400ppm以上1000ppm以下であるポリエステルの透明性が良好になり好ましい。
【0017】
また本願発明で得られるポリエチレンテレフタレートの透明性は、重縮合触媒として添加する酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対するビスマス元素の量にも依存する。本願発明においては添加する酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対して、ビスマス元素が8ppm以上105ppm以下の範囲とする必要がある。ビスマス元素が8ppm未満であるとポリエチレンテレフタレートの透明性が目標を達成できないばかりか、黄味(以下b値)も高くなる。また、105ppmを超えるとポリエチレンテレフタレートの透明性が不十分である以外に、ポリエチレンテレフタレートの白度(以下L値)が低下する。ただし、8ppm以上20ppm以下であると、ポリエチレンテレフタレートの透明性は良いがb値は高く、80ppm以上105ppm以下であると、ポリエチレンテレフタレートの透明性は良いがL値は低い。特に酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対するビスマス元素量が40ppm以上60ppm以下であると、ポリエチレンテレフタレートの透明性が良好になり、b値、L値の色調も好ましい。
【0018】
上記2点の理由は、ビスマス元素がアンチモンメタルの粒径を制御することによって、光拡散を制御できるためと推定するが、本願の場合は三酸化アンチモン中のビスマス元素が高濃度で添加されることになるので、アンチモンメタルの微細化、具体的には、アンチモンメタルの粒径を可視光波長以下にできるためと推定される。
【0019】
一方、酢酸アンチモンについては、従来アンチモンの結晶核についての知見はなく、本願発明の三酸化アンチモン中のビスマス元素と酢酸アンチモンの相互作用については十分解明されていないが、大部分が溶けているものの、微量に析出する金属アンチモンの量を制御することによってポリエチレンテレフタレートの透明性を微妙に制御しているものと思量する。
このような条件を採用することで酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対する鉛元素の含有量を10ppm以下とすることがはじめて可能となった。
【0020】
本願発明における三酸化アンチモンの製法については従来公知の触媒用三酸化アンチモンまたは、酢酸アンチモンの製造方法が適用できる。例えば、アンチモン鉱石を電解精錬して得た金属アンチモンを加熱・溶解した後、酸素を吹き込み一次酸化して昇華した後、更に酸素と反応させて三酸化アンチモンを析出させる方法があげられる。また、三酸化アンチモンにビスマス元素を含有させる方法としては、上記金属アンチモンとビスマス金属を加熱・溶解して、昇華させる方法があげられる。一方、本願発明における酢酸アンチモンは、三酸化アンチモンを無水酢酸と反応させ、得られた反応混合物を冷却し、酢酸アンチモンを析出させることで得られる。
本願発明のポリエチレンテレフタレートの製造方法においては、従来から公知のリン化合物などの安定剤、シリカ、二酸化チタンなどの滑剤などを使用できる。
【0021】
リン化合物として、トリエチルフォスフォノアセテートを添加すると、得られるポリエチレンテレフタレートの透明性が向上するので好ましい。この理由は明確ではないが、一般にリン化合物はアンチモン触媒を失活させるところ、トリエチルフォスフォノアセテートは、その分子構造が立体障害性を有するため、リン酸などのリン化合物とは異なってアンチモン触媒に対する作用が少なくなるためと推定される。リン元素量が10以上60ppm以下であると、ポリエチレンテレフタレートの透明性が良好になり好ましい。リン化合物の添加は重縮合開始以前が好ましい。ここで、エステル交換法においてはエステル交換反応後、重縮合開始以前が好ましい。ただし、酢酸アンチモンまたは三酸化アンチモンと同時に添加すると、アンチモンとリン化合物の結合物を生成することがあるので、同時添加は避けることが望ましい。
【0022】
本願発明におけるポリエステルの製造方法は従来公知の製造方法を採用できる。
例えば、TPAとEGの反応物であるビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(以下、BHTという)を予め255℃の溶融状態で貯留させ、さらにTPAとEGからなるスラリーを反応槽とは別に設けた混合槽に準備しておき、反応槽の温度を保ちながら定量供給しながら、水を留出させ、エステル化反応させる。反応を開始してから4〜5時間後にエステル化を終了し、この反応生成物であるBHTを重縮合反応槽に移し、酢酸アンチモン、三酸化アンチモンおよびその他の添加物を添加する。その後、高真空になるまで減圧するとともに290℃程度まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、目標固有粘度に到達まで重縮合反応する。反応終了後、重縮合反応槽の底部に設けたポリマ吐出口金より冷水中にストランド状に吐出・冷却し、カッターによってペレット化を行なう。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を挙げて、本願発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0024】
(1)アンチモン化合物中のビスマスおよび鉛元素量の測定方法
ICP発光分析装置(パーキンエルマー社製、OPTIMA 4300DV)にて測定した。
【0025】
(2)固有粘度
o−クロロフェノールを用いて25℃で測定した。
【0026】
(3)ポリエチレンテレフタレートの色調の測定方法
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ(SM−T))を用い、反射法にて測定した。得られた色調のb値(黄味)は、8.0未満が好ましく、6.0未満がさらに好ましい。
また、得られた色調のL値(白度)は、45以上が好ましく、60以上がさらに好ましい。
【0027】
(4)透明性の測定方法
得られたポリエチレンテレフタレートを、乾燥機を用いて170℃、4時間にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー設定温度275℃、滞留時間60秒で成形、プレートを得た。得られたプレートの厚み4mmの部分をヘイズメーター(日本電色社製、NDH−20D)で測定した。
得られた透明性は、1.1%未満のものを極めて良好、1.1以上1.5%未満のものを良好とし、1.5以上2.4%未満のものを合格とし、2.4%以上のものを不合格とした。
【0028】
(5)ポリエチレンテレフタレート中の鉛元素量
得られたポリエチレンテレフタレート中の鉛元素量は、製造時の添加物中の鉛元素含有量から計算して求めた。鉛元素含有量は、10ppb未満を合格、10ppb以上のものを不合格とした。
【0029】
[実施例1]
テレフタル酸41.1重量部からなるテレフタル酸とエチレングリコールの反応物であるビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(以下、BHTという)46.4重量部を予め255℃の溶融状態で貯留させ、さらにテレフタル酸45.3重量部とエチレングリコール19.5重量部からなるスラリーを別に設けた混合槽に用意し、反応槽の温度を保ち定量供給しながら、水を留出させ、エステル化反応させた。反応を開始してから4時間40分後にエステル化を終了し、この反応生成物であるBHTを重縮合反応槽に移し、トリエチルフォスフォノアセテート0.0218重量部添加した。次いで、酢酸マグネシウム0.06重量部、水酸化カルシウム0.0006重量部、酢酸アンチモン237ppm、ビスマス元素を500ppm含む三酸化アンチモン23ppmを添加して(この際、酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対してビスマス元素量は45ppm、鉛元素量は1ppm以下であった)、40分で高真空になるまで減圧するとともに290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、目標固有粘度に到達まで実施した。反応終了後、重縮合反応槽底部にある口金より冷水中にストランド状に吐出し、押し出しカッターによって円柱状のペレット化した。得られたポリエチレンテレフタレートは100重量部であり、表2に示すようにポリマ特性はいずれも良好であった。
【0030】
[実施例2〜15]
添加する三酸化アンチモン中のビスマス元素含有量および酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対するビスマス元素量、そして酢酸アンチモンと三酸化アンチモンの添加量を表1とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。表2に示すようにポリマ特性はいずれも良好であった。
【0031】
[実施例16]
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンをスラリーにして添加した以外は実施例1と同様の方法で実施した。表2に示すようにポリマ特性はいずれも良好であった。
[実施例17]
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンのスラリーを150℃で加熱し、溶液にして添加した以外は実施例1と同様の方法で実施した。表2に示すようにポリマ特性はいずれも良好であった。
【0032】
[実施例18〜20]
トリエチルフォスフォノアセテートの添加量を表1とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。表2に示すようにポリマ特性はいずれも良好であった。
【0033】
[実施例21〜28]
添加するリン化合物をリン酸とし、添加する三酸化アンチモン中のビスマス元素含有量および酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対するビスマス元素量、そして酢酸アンチモンと三酸化アンチモンの添加量を表1とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。表2に示すようにポリマ特性はいずれも良好であった。
【0034】
[実施例29]
テレフタル酸ジメチル101重量部とエチレングリコール50重量部をエステル交換反応容器に仕込み、酢酸マグネシウム0.06重量部、水酸化カルシウム0.006重量部、酢酸アンチモン237ppm、ビスマス元素を500ppm含む三酸化アンチモン合計23ppmを添加した。この際、酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対してビスマス元素量は45ppm、鉛元素量は1ppm以下であった。その後、140から235℃まで3.5時間を要して徐々に昇温し、生成するメタノールを凝縮器で冷却後、留出させてエステル交換反応を完結させた。そして、反応物であるBHTにトリエチルフォスフォノアセテート0.0218重量部を添加した。次いで、実施例1と同様に重縮合反応して表2に示す良好な特性のポリマを得た。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
[比較例1〜8]
添加する三酸化アンチモン中のビスマス元素含有量および酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対するビスマス元素量、そして酢酸アンチモンと三酸化アンチモンの添加量を表3とした以外は実施例1と同様の方法で得たポリマ特性は表4に示すように不良であった。
【0038】
[比較例9〜10]
トリエチルフォスフォノアセテートの添加量を表3とした以外は実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリマ特性は表4に示すように不良であった。
【0039】
[比較例11〜14]
表3に示す三酸化アンチモンあるいは酢酸アンチモンを単独で260ppm添加した以外は実施例1と同様の方法で得た。ポリマは表4に示すように不良であった。
【0040】
[比較例15]
酢酸アンチモンを添加せず、表3に示す三酸化アンチモン260ppm、二酸化鉛0.000015重量部添加して、実施例1と同様の方法で実施した。得られたポリエチレンテレフタレートは表4に示すように透明性は良好であるが、鉛元素が145ppb含まれている。
【0041】
[比較例16]
ジメチルテレフタレート970重量部およびエチレングリコール620重量部を反応器に仕込み、加熱昇温して反応器の温度が155〜160℃になった時点で、酢酸マンガン0.50重量部をエチレングリコール溶液にて添加した後、副生するメタノールを系外に除去しながら、反応器の内温が220℃になった時点で亜リン酸0.02重量部および二酸化鉛0.05重量部をエチレングリコール溶液にて添加し、内温が240℃に達するまで加熱し過剰のエチレングリコールを系外に除去した。次に得られた反応物を重縮合反応釜に仕込み、ビスマス元素を45ppm含む三酸化アンチモン417ppmおよび二酸化鉛0.05重量部をエチレングリコール溶液にて添加し、240℃から徐々に昇温しながら、最初30分間は常圧で、続いて減圧下に発生するエチレングリコールを系外に除去しながら最終的に内温が280℃、最終到達真空度を0.20mmHg以下となし約2時間反応を行った。得られたポリエチレンテレフタレートは表4に示すように透明性は優れているが、鉛元素が527ppb含まれている。
【0042】
[比較例17]
添加する二酸化鉛の量を0.005重量部とする以外は比較例16と同様の方法でエステル交換反応および重縮合反応を行った。得られたポリエチレンテレフタレートは表4に示すように透明性は優れているが、鉛元素が53ppb含まれている。
【0043】
[比較例18]
酢酸マンガンの代わりに酢酸カルシウム0.70重量部を用い、二酸化鉛を0.08重量部添加して、比較例16と同様の条件でエステル交換反応および重縮合反応を行った。得られたポリエチレンテレフタレートは表4に示すように透明性は優れているが、鉛元素が842ppb含まれている。
【0044】
[比較例19]
比較例16における970重量部のジメチルテレフタレートの代わりに、920重量部のジメチルテレフタレートと50重量部のジメチルイソフタレートを酸成分として用い、二酸化鉛を各々0.08重量部添加して、比較例16と同様の条件でエステル交換反応および重縮合反応を行った。得られたポリエチレンテレフタレートは表4に示すように透明性は優れているが、鉛元素が842ppb含まれている。
【0045】
[比較例20]
比較例16の亜リン酸の代わりに亜リン酸トリメチル0.03重量部を用い、二酸化鉛を0.08重量部添加して比較例16と同様の条件でエステル交換反応および重縮合反応を行った。得られたポリエチレンテレフタレートは表4に示すように透明性は優れているが、鉛元素が842ppb含まれている。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体ならびにエチレングリコールを、エステル交換反応または、エステル化反応した後、重縮合してポリエチレンテレフタレート中の鉛元素が10ppb以下であるポリエステルを製造するに際して、ポリエステル重縮合触媒として用いる酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとが下記(1)〜(3)を満足することを特徴とするポリエチレンテレフタレートの製造方法。
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量に対してビスマス元素が8ppm以上105ppm以下・・・(1)
三酸化アンチモン中のビスマス元素含有量が400ppm以上・・・(2)
酢酸アンチモンと三酸化アンチモンとの合計量がポリエチレンテレフタレートに対して、10ppm以上1000ppm以下・・・(3)
【請求項2】
重縮合開始以前にトリエチルフォスフォノアセテートを添加することを特徴とする請求項1記載のポリエチレンテレフタレートの製造方法。

【公開番号】特開2012−41444(P2012−41444A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183869(P2010−183869)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】