説明

ポリエステルストランド、その製造およびその使用

【課題】優れた耐摩耗性および高い寸法安定性を有し、スクリーンまたは他の技術用/工業用布を製造するのに役立つポリエステルストランドの製造方法およびその使用が提供される。
【解決手段】本発明のポリエステルストランドは、溶融紡糸されたストランドであって、a)ポリエーテルジオールが1つのジオールである、異なる複数種のジオールから誘導される構造繰り返し単位を含んでなる熱可塑性弾性ポリエステル共重合体と、b)異なる複数種のジカルボン酸またはそれらのポリエステル形成性誘導体から誘導される構造繰り返し単位を含んでなる熱可塑性ポリエステル共重合体とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に高い耐摩耗性と寸法安定性とを有するストランドへと加工することが可能なポリエステル組成物に関する。これらストランドは、とりわけモノフィラメントの場合、例えばスクリーンまたはコンベヤーベルトへの使用に有用である。
【背景技術】
【0002】
工業的用途に用いられるポリエステル繊維は、使用中に高い機械的および/または熱応力に曝されることが多いことは知られている。さらに、多くの場合、前記材料が十分な耐性を示さなければならない化学的および他の環境的影響に起因する応力が存在する。前記材料は、これらの応力すべてに対する十分な耐性だけでなく、良好な寸法安定性および非常に長い使用期間にわたって変わらない応力−ひずみ特性を備えていなければならない。
高い機械的、熱的および化学的応力の組み合わせを伴う工業的用途の一例として、フィルター、スクリーンまたはコンベヤーベルトへのモノフィラメントの使用が挙げられる。この使用には、スクリーンまたはコンベヤーベルトが使用中に曝される高い応力に耐えられるようにするため、および、スクリーンまたはコンベヤーベルトが十分な使用期間を有するようにするために、優れた機械的性質、例えば高い初期弾性率、破断強度、結節強さ、引掛け強さおよび高い耐摩耗性を有するモノフィラメントが必要とされる。
製紙業者または紙加工業者のごとき工業製造業者は、高温多湿な環境下で行われる作業においてフィルターまたはコンベヤーベルトを用いる。
ポリエステル系合成繊維はそのような環境下で良好な性能を示すことが証明されているが、ポリエステルは、高温多湿な環境下で用いられる場合、機械摩耗および加水分解を受け易い。
【0003】
工業的用途における摩耗の原因は多岐にわたり得る。例えば、製紙機械内部のシート成形ワイヤースクリーンは、サクションボックスの上に導かれたペーパースラリーを脱水する工程に関与するが、これによって前記ワイヤースクリーンの損耗が激しくなる。製紙機械の乾燥エリアでは、ペーパーウェブとワイヤースクリーン表面との間およびワイヤースクリーン表面と乾燥ドラムの表面との間の速度差の結果として、ワイヤースクリーンの損耗が生じる。摩耗に因る布の傷みは他の工業用布でも生じる。例えば、運搬ベルトを固定面の上を引き摺ることによって生じたり、濾布を機械的清掃に掛けることによって生じたり、スクリーン印刷布の表面をスキージが動くことによって生じたりする。
【0004】
最先端の製紙機械の成形ワイヤースクリーンは、多重に織られた布を使用している。紙の脱水の速度を最大にするために、サクションボックスをワイヤースクリーンの下面に設置して、アンダープレッシャーによってペーパーウェブの脱水を速める。一般に、これらのサクションボックスの端の、前記成形布との接触面は、サクションボックスの過剰な損耗を防ぐために、セラミックでできている。
一方、高い製造速度、モノフィラメントに添加された充填剤に因る摩擦および製紙機械の吸引効果によって、多重成形布の下面が酷く損耗する。
ナイロン、例えばナイロン−6またはナイロン−6,6でできたモノフィラメントは、ワイヤースクリーンの下面の耐摩耗性を向上させるという目的で未だに用いられている。現在、この目的には、寸法安定性が高いという理由で、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)でできたモノフィラメントが主として用いられており、成形ワイヤースクリーン布は主に前記モノフィラメントでできている。ワイヤースクリーンの下面用の構造として試行を重ねたものの1つとして、ナイロンモノフィラメントの裏当て横糸とPETモノフィラメントの裏当て横糸とが互い違いに配置されている構造がある。この構造は、耐摩耗性と寸法安定性との間に妥協(compromise)をもたらす。
【0005】
ナイロンの吸水率がPETよりも高いことにより、ワイヤースクリーンの操作における横糸が長くなる。その結果、ワイヤースクリーンは、製紙機械内で端が巻き上がり、二度と平らにならないというエッジカーリングとして知られる好ましからざる状態を生じ易い。
これまで、ナイロン製モノフィラメントを、吸水率が低くかつ耐変形性を有する他の耐摩耗性ポリマーでできたモノフィラメントに切り替える試みが数多く行われてきた。
そのようなモノフィラメントの一例として、10〜40%の熱可塑性ポリウレタン(TPU)とPETとのブレンドでできたモノフィラメントが挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。同様に、熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートイソフタレートと、200〜230℃の融点を有する熱可塑性ポリウレタンとの混合物も用いられている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
従来技術は、芯−鞘構造を有するモノフィラメントをさらに含んでなる。前記構造において、鞘は、PETのごとき200〜300℃の融点を有する熱可塑性ポリエステルと、選択されたポリエーテルジオール構成単位基をソフトセグメントとして有する熱可塑性弾性コポリエーテルエステルとの混合物でできている。このモノフィラメントも同様に、改善された耐摩耗性を示す(例えば、特許文献3を参照)。
結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂と、ポリエステルエラストマーと、ソルビタンエステルとを含んでなるさらなるポリエステル組成物が特許文献4によって知られている。これらは、良好な成形性、とりわけ、良好な離型性で有名である。
【0007】
特許文献5には、芳香族ポリカーボネートと、アルカンジオールおよびベンゼンジカルボン酸から誘導されるポリエステルと、ポリエステルウレタンエラストマーまたはポリエーテルイミドエステルエラストマーとを含んでなるポリエステル組成物が開示されている。前記組成物は、改善された流動性と良好な機械的性質とを兼ね備える。
【0008】
ショア硬度の比較的低いエラストマーは、ショア硬度の比較的高いエラストマーよりも良好な摩耗値を有することが明らかとなった。従って、エラストマーの含有率が高いモノフィラメントの方が耐摩耗性が高い。しかしながら、前記モノフィラメントには、前記モノフィラメントが縦糸のクリンピングポイントにおいてより平らになり易いため、布の透水性を下げてしまうという不都合がある。
【特許文献1】EP−A−387,395
【特許文献2】EP−A−674,029
【特許文献3】EP−A−735,165
【特許文献4】DE 691 23 510 T2
【特許文献5】DE 690 07 517 T2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、優れた耐摩耗性と高い寸法安定性とを有するストランドへと加工することが可能な組成物を提供することである。
この組成物から形成されるストランドは、織布へと加工された際にクリンピングポイントにおいて平坦化をほとんど起こさない。
意外にも、選択されたポリマー組成物を含んでなるストランドが前記特性を有することが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、溶融紡糸されたストランドであって、a)ポリエーテルジオールが1つのジオールである異なる複数種のジオールから誘導される構造繰り返し単位を含んでなる熱可塑性弾性ポリエステル共重合体と、b)異なる複数種のジカルボン酸またはそれらのポリエステル形成性誘導体から誘導される構造繰り返し単位を含んでなる熱可塑性ポリエステル共重合体とを含んでなるストランドを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この明細書における「ストランド」という用語は、有限長の繊維(短繊維)、無限長の繊維(長繊維)および長繊維から成る多繊維、あるいは短繊維から二次的に紡糸されたヤーンを幅広く指していると理解されるべきである。前記溶融紡糸されたストランドは、モノフィラメントの形態で用いられることが好ましい。
【0012】
前記熱可塑性弾性ポリエステル共重合体a)は、多種多様な組み合わせのモノマーから形成されていてもよい。ここで、1つのジオールはポリエーテルジオールであり、他のジオールはポリエーテル単位を有さない。問題の共重合体は、一般に、混合物または短鎖アルコール、例えば炭素数が2〜10である脂肪族または脂環式ジオールおよびポリエーテルジオールから、および脂肪族、脂環式および/または芳香族基を有するジカルボン酸またはそれらのポリエステル形成性誘導体、例えばジカルボン酸エステルまたはジカルボニルクロライドから誘導される。
【0013】
この明細書において、熱可塑性弾性コポリエステルは、慣用のエラストマーと同様の室温挙動を有するコポリエステルであるが、加熱によって塑性変形可能であり、従って熱可塑性挙動を示す。これらの熱可塑性弾性コポリエステルは、加熱時にポリマー分子が分解すること無く分離する物理的な架橋点を備えた小区域(例えば、二次原子価力または結晶)を有する。これらのコポリエステルは、いずれか一つの分子中にハードセグメントおよびソフトセグメントを有するブロックコポリエステルである。
【0014】
これらの熱可塑性弾性ポリエーテルコポリエステルは、それ自体が周知である。それらの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはとりわけポリブチレンテレフタレート単位に加えて、芳香族および/または脂肪族および/または脂環式ジカルボン酸、とりわけアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはイソフタル酸と、ポリアルキレングリコール、とりわけポリエチレングリコールとから誘導されるさらなる単位を含んでなるコポリエステルが挙げられる。
【0015】
熱可塑性弾性コポリエステルa)の構成単位は、ジオール、ポリエーテルジオールおよびジカルボン酸、またはそれらのポリエステル形成性誘導体であることが好ましい。前記コポリエステルの主要な酸成分は、テレフタル酸またはシクロヘキサンジカルボン酸を含んでなるが、他の芳香族および/または脂肪族または脂環式ジカルボン酸、好ましくはパラ位またはトランス位芳香族化合物、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸または4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびイソフタル酸も好適となり得る。脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸またはセバシン酸は、芳香族ジカルボン酸と組み合わせて用いられることが好ましい。
【0016】
有用な二価アルコールとしては、一般に、脂肪族および/または脂環式ジオール、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはそれらの混合物が挙げられる。好ましいのは、炭素数が2〜4である脂肪族ジオール、とりわけエチレングリコールおよびブタンジオールである。脂環式ジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールも好ましい。これらの二価アルコールがジカルボン酸単位と組み合わさることによって、熱可塑性弾性コポリエステルa)のハードセグメントが形成される。このコポリエステルのソフトセグメントは、ポリエーテルジオールおよびジカルボン酸から誘導される構造繰り返し単位によって形成される。前記ポリエーテルジオールは、一般に、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールを含んでなる。
【0017】
成分a)として好ましく用いられるのは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールおよびポリアルキレングリコールとから誘導される構造繰り返し単位を含んでなるコポリエステルである。
好ましい熱可塑性弾性コポリエステルa)は、
テレフタル酸、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、ブチレングリコールおよびポリブチレングリコールから、または
ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
ナフタレンジカルボン酸、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
ナフタレンジカルボン酸、ブチレングリコールおよびポリブチレングリコールから、または
テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、イソフタル酸、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、イソフタル酸、ブチレングリコールおよびポリブチレングリコールから、誘導される構造繰り返し単位を有する。
【0018】
任意の繊維形成性熱可塑性ポリエステル共重合体b)を用いることができる。問題の共重合体は、一般に、アルコールおよび脂肪族および/または脂環式および/または芳香族基を有するジカルボン酸またはそれらのポリエステル形成性誘導体、例えばジカルボン酸エステルまたはジカルボニルクロライドから誘導されるポリマーを含んでなる。これらのコポリエステルは、ポリエーテルジオールから誘導される構成単位基を全く含有していない。換言すれば、これらのコポリエステルは、あらゆる組み合わせのハードセグメントおよびソフトセグメントを含有していない。
【0019】
これらの熱可塑性コポリエステルは、それ自体が周知である。熱可塑性コポリエステルb)の構成単位は、ジオールおよびジカルボン酸またはそれらのポリエステル形成性誘導体であることが好ましい。前記ポリエステルの主要な酸成分は、テレフタル酸またはシクロヘキサンジカルボン酸と共に、他の芳香族および/または脂肪族または脂環式ジカルボン酸、好ましくはパラ位またはトランス位芳香族化合物、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸または4,4’−ビフェニルジカルボン酸、および好ましくはイソフタル酸および/または脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸またはセバシン酸である。
【0020】
有用な二価アルコールとしては、一般に、脂肪族および/または脂環式ジオール、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはそれらの混合物が挙げられる。好ましいのは、炭素数が2〜4である脂肪族ジオール、とりわけエチレングリコールおよびブタンジオールである。脂環式ジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールも好ましい。
【0021】
好ましい成分b)の例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはとりわけポリエチレンテレフタレート単位に加えて、アルキレングリコール、とりわけエチレングリコールと、脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、セバシン酸またはイソフタル酸とから誘導されるさらなる単位を含んでなるコポリエステルが挙げられる。
特に好ましい成分b)は、ポリアルキレンテレフタレートの構造繰り返し単位に加えて、ポリアルキレンアジペート、ポリアルキレンセバケートまたはとりわけポリアルキレンイソフタレートの構造繰り返し単位を含んでなるコポリエステルである。
いっそうとりわけ好ましい成分b)は、ポリエチレンテレフタレートの構造繰り返し単位に加えて、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンセバケートまたはとりわけポリエチレンイソフタレートの構造繰り返し単位を含んでなるコポリエステルである。
【0022】
前記第2の酸成分、好ましくはイソフタル酸によって占められる本発明によるストランドの割合は、前記コポリエステルの重量に基づいて、一般に25重量%以下、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは8〜12重量%である。
本発明の繊維中の成分a)およびb)の量は、広い範囲内で選択することができる。前記繊維は、その総質量に基づいて、一般に、10〜90重量%の成分a)と、90〜10重量%の成分b)とを含有する。
【0023】
前記ストランドの総質量に基づく成分b)の含有率は、好ましくは40〜95重量%、さらに好ましくは50〜85重量%、最も好ましくは65〜75重量%であり、成分b)との合計で100重量%となるストランドの残りの部分は成分a)によって構成される。
さらに特に好ましいストランドは、ショア硬度Dが35〜90、好ましくは35〜45であるポリエーテルポリエステルを成分a)として含有する。
さらに特に好ましいストランドは、160℃における自由熱収縮率が6%未満である。
【0024】
成分a)およびb)に加えて、本発明の繊維は、さらなる繊維形成性熱可塑性ポリマーc)、例えばポリエステル、例えばPET、および/またはポリアミドをさらに含有していてもよい。この成分c)の割合は一般に低く、前記繊維の総質量に基づいて10重量%を超えるべきではない。
本発明に従って成分a)およびb)に用いられるポリエステルは、(ジクロロ酢酸(DCE)中で25℃で測定された)溶液粘度(IV値)が、一般に少なくとも0.60dl/g、好ましくは0.60〜1.05dl/g、さらに好ましくは0.62〜0.93dl/gである。
好ましいのは、遊離カルボキシル基の含有量が3meq/kg以下のポリエステルのストランドである。
【0025】
これらは、遊離カルボキシル基を封止する剤、例えばカルボジイミドおよび/またはエポキシ化合物を含んでなることが好ましい。
このように特徴付けられるポリエステルストランドは加水分解に対して安定しており、高温多湿な環境下、とりわけ製紙機械内での使用あるいはフィルターとしての使用に特に好適である。
本発明に従って用いられるポリエステルa)およびb)の組み合わせは、前記ポリエステルストランドの動的性質または寸法安定性に悪影響を及ぼすこと無く、優れた耐摩耗性を前記ポリエステルストランドに与える。
【0026】
本発明のストランドを製造するのに必要な成分a)およびb)はそれら自体が周知である。それらの中には、市販されているものもあり、それ自体が周知である方法によって得ることができるものもある。
本発明のストランドは、成分a)およびb)および必要に応じてc)に加えて、補助的な化学種d)をさらに含有していてもよい。
その例としては、前記加水分解安定剤に加えて、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、顔料、艶消し剤、粘度調整剤および結晶化促進剤が挙げられる。
【0027】
加工助剤の例としては、シロキサン、ワックス、比較的長鎖のカルボン酸またはその塩、脂肪族エステルまたはエーテルおよび芳香族エステルまたはエーテルが挙げられる。
酸化防止剤の例としては、リン化合物、例えばリン酸エステル、および立体障害フェノールが挙げられる。
顔料または艶消し剤の例としては、有機染料顔料および二酸化チタンが挙げられる。
粘度調整剤の例としては、多塩基カルボン酸およびそれらのエステルおよび多価アルコールが挙げられる。
【0028】
本発明のストランドは、任意の所望の形態、例えば、多繊維として、短繊維として、二次的に紡糸されたヤーンとして、スレッドの形態で、あるいはとりわけモノフィラメントとして存在することができる。
本発明によるストランドの線密度は、広い範囲内を変化することができる。その例としては、1〜45,000dtex、とりわけ100〜4,000dtexである。
本発明によるストランドの断面形状は、自由に選択することが可能である。その例としては、円形、楕円形およびn角形(nは3以上である)が挙げられる。
【0029】
さらに本発明は、
(i)紡糸口金ダイから成分a)およびb)からなる混合物を押出し、(ii)得られるフィラメントを引取りそして(iii)もし適切であれば得られるフィラメントを延伸および/または施緩させる、処理工程からなる、本発明のストランドの製造方法を提供する。
【0030】
本発明のストランドは、その製造の過程において、単延伸または多延伸に制限されることが好ましい。
固体縮合によって製造されたポリエステルを成分a)および/またはb)として用いて前記ストランドを製造することが特に好ましい。
【0031】
ポリマー融解物を紡糸口金から押し出した後、高温のポリマーストランドを、例えば急冷浴、好ましくは水浴で急冷し、その後、巻き取るかまたは回収する。回収速度は、ポリマー融解物の排出速度よりも速い。
このように製造されたストランドは、その後、好ましくは後延伸処理、さらに好ましくは複数の段階で、とりわけ2または3段階後延伸処理で、3:1〜8:1、好ましくは4:1〜6:1の総延伸比で延伸される。
延伸後、熱処理を行うことが好ましく、前記熱処理では、130〜280℃の温度が用いられる。例えば、長さは一定に保たれ、わずかな後延伸が生じ、あるいは最大30%までの収縮が許容される。
【0032】
本発明のストランドの製造にとって、230〜280℃の溶融温度および2:1〜6:1のジェット延伸比で操作することが特に有利であることが分かった。
回収速度は、通常、10〜80メートル/分である。
【0033】
本発明のストランドは、織物、とりわけ織布、らせん布、不織スクリムあるいは延伸ループニットの製造に用いられることが好ましい。
本発明のストランドを含んでなる織物も同様に、本発明の主題の一部を担う。
特に好ましいのは、成分a)およびb)を含んでなるストランドに加えて、ポリエステルのストランド、例えばPETストランドをさらに含んでなる織物である。
【0034】
本発明のストランドは、あらゆる産業分野で用いることができる。本発明のストランドは、機械的応力に起因する損耗の増大が生じ易い用途に用いられることが好ましい。その例としては、スクリーンまたはコンベヤーベルトへの使用が挙げられる。これらの使用も同様に、本発明の主題の一部を担う。
モノフィラメントの形態での本発明のストランドのさらなる使用は、コンベヤーベルトまたはコンベヤーベルトの部品としての使用に関する。
特に好ましいのは、製紙機械の成形部分に用いられるためのワイヤースクリーンであるスクリーンへの本発明のストランドの使用である。
これらの使用も同様に、本発明の主題の一部を担う。
【実施例】
【0035】
下記実施例によって本発明を説明するが、本発明はそれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
実施例
いずれの場合も、9つの同一の織物構造を用いた。いずれの場合も、使用した材料が異なる裏当て横糸に直径が0.22mmであるモノフィラメントを用いた。使用したポリエステルは、市販の材料であった。
下記織物を製造した。
ファブリック1(対照): PETモノフィラメントとN6モノフィラメントとが互い違いになっている裏打ち横糸(交互横糸)
ファブリック2(対照): PETモノフィラメントのみでできている裏打ち横糸(Type900S1)
ファブリック3: 900 DQ2)(80%がイソフタル酸で改質されたPET3)、20%が熱可塑性ポリエステルエラストマー4)であるモノフィラメント)
ファブリック4: 900 DQ2)(75%がイソフタル酸で改質されたPET3)、25%が熱可塑性ポリエステルエラストマー4)であるモノフィラメント)
ファブリック5: 900 DQ2)(70%がイソフタル酸で改質されたPET3)、30%が熱可塑性ポリエステルエラストマー4)であるモノフィラメント)
ファブリック6: 900 DQ2)(65%がイソフタル酸で改質されたPET3)、35%が熱可塑性ポリエステルエラストマー4)であるモノフィラメント)
ファブリック7: 900 DQ2)(60%がイソフタル酸で改質されたPET3)、40%が熱可塑性ポリエステルエラストマー4)であるモノフィラメント)
ファブリック8(対照): 900 RQ2)(75%がPET、25%が熱可塑性ポリエステルエラストマー5)であるモノフィラメント)
ファブリック9(対照): 900 RQ2)(70%がPET、30%が熱可塑性ポリエステルエラストマー5)であるモノフィラメント)
1)Type900は、低収縮率ポリエステルを示す。
【0037】
2)種類の名称は、テイジン モノフィラメント ジャーマニィ ゲー・エム・ベー・ハーから市販されている種類の命名法に由来している。type900は、低収縮率ポリエステルを示す。続く1つ目の文字はベースとなるポリマーを表しており、Sは標準的なPET、Rは10meqCOOH基/kg未満のポリエステルを含むPET、そしてDは約10%がイソフタル酸で改質されたPET共重合体を表す。2つ目の文字は添加剤を表しており、QはRiteflex(登録商標)型のポリエーテルポリエステル(Ticona GmbH社製の商品)を表す。
3)約10%がイソフタル酸で改質されたPET共重合体
4)ショア硬度Dが40であるRiteflex(登録商標)640
5)ショア硬度Dが55であるRiteflex(登録商標)655
前記ファブリックを同一の条件下に置き、細長い切片へと切り出し、セラミック−バー回転子を備えたAT2000Einlehnerで試験した。
ファブリック片: 148mm × 25.8 mm
ファブリックの装置側(下面)がセラミック−ストリップ回転子(幅:22.6mm)に面する。
プレテンション: 2kN
懸濁液: 1,000mlの水 + 8gの炭酸カルシウム(Millicarb 45 OG) + (炭酸カルシウムの非常に細かく分離された顔料懸濁液を得るための)14mgのPolysalt S 分散助剤
懸濁液温度: 50℃に固定
走行距離: 25km
サンプルの相対重量損失を求めた。結果を下記表に示す(Cは対照を表し、Iは本発明を表わす)。
【0038】
【表1】

【0039】
ファブリック1(交互横糸)の重量損失を基準と考える。すべての裏打ち横糸がPETであるファブリック2は、前記交互横糸と比べて、低い耐摩耗性を示した。ファブリック8および9は、PETとのブレンドとして、より硬度の高いポリエーテルエステルを含有する。摩耗は基準よりも酷かった。一方、PETとイソフタル酸のコポリエステルとの混合物中にさらに存在するショア硬度の低い方のポリエーテルエステルは、耐摩耗性がより高いことをはっきりと示した。特に、35%〜40%の高い添加率によって、これらのファブリックサンプル(ファブリック6および7)の耐摩耗性は、基準(ファブリック1)と比べて著しく向上した。この結果は、25〜30重量%におけるファブリックサンプル4および5が平坦化(最終ファブリックの透水性)と耐摩耗性との間の妥協が最適であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡糸されたストランドであって、
a)ポリエーテルジオールが1つのジオールである、異なる複数種のジオールから誘導される構造繰り返し単位を含んでなる熱可塑性弾性ポリエステル共重合体と、
b)異なる複数種のジカルボン酸またはそれらのポリエステル形成性誘導体から誘導される構造繰り返し単位を含んでなる熱可塑性ポリエステル共重合体と、
を含んでなる前記ストランド。
【請求項2】
成分a)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールおよびポリアルキレングリコールとから誘導される構造繰り返し単位を有するコポリエステルである、請求項1に記載のストランド。
【請求項3】
成分a)が、
テレフタル酸、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、ブチレングリコールおよびポリブチレングリコールから、または
ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
ナフタレンジカルボン酸、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
ナフタレンジカルボン酸、ブチレングリコールおよびポリブチレングリコールから、または
テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、イソフタル酸、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールから、または
テレフタル酸、イソフタル酸、ブチレングリコールおよびポリブチレングリコールから、誘導される構造繰り返し単位を含んでなる、請求項2に記載のストランド。
【請求項4】
成分b)が、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレートまたはとりわけポリエチレンテレフタレート単位に加えて、アルキレングリコール、とりわけエチレングリコールと、脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸、とりわけアジピン酸、セバシン酸またはイソフタル酸とから誘導される単位をさらに含んでなるコポリエステルである、請求項1に記載のストランド。
【請求項5】
成分b)が、ポリアルキレンテレフタレートの構造繰り返し単位に加えて、ポリアルキレンアジペート、ポリアルキレンセバケートまたはとりわけポリアルキレンイソフタレートの構造繰り返し単位を含んでなるコポリエステルである、請求項4に記載のストランド。
【請求項6】
成分b)が、ポリエチレンテレフタレートの構造繰り返し単位に加えて、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンセバケートまたはとりわけポリエチレンイソフタレートの構造繰り返し単位を含んでなるコポリエステルである、請求項5に記載のストランド。
【請求項7】
成分b)中の他のカルボン酸成分の量、好ましくはイソフタル酸の量は、前記コポリエステルの重量に基づいて、0.1〜20重量%、好ましくは8〜12重量%である、請求項2に記載のストランド。
【請求項8】
成分b)は、前記ストランドの総質量の40〜95重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは65〜75重量%を構成し、残りを成分a)が構成することによって100重量%とする、請求項1〜7のいずれかに記載のストランド。
【請求項9】
前記熱可塑性弾性ポリエステル共重合体のショア硬度Dは、35〜90、好ましくは35〜45である、請求項1〜8のいずれかに記載のストランド。
【請求項10】
溶融紡糸された繊維から二次的に紡糸されたストランドであり、マルチフィラメントであるか、または好ましくはモノフィラメントである、請求項1〜9のいずれかに記載のストランド。
【請求項11】
160℃での自由熱収縮率が6%未満である、請求項1〜10のいずれか1つに記載のストランド。
【請求項12】
(i)紡糸口金ダイから成分a)およびb)からなる混合物を押出し、(ii)得られるフィラメントを引取りそして(iii)もし適切であれば得られるフィラメントを延伸および/または施緩させる、処理工程からなる、請求項1に記載のストランドの製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のストランドからなる、織布特に織物。
【請求項14】
請求項1に記載の成分(a)および(b)からなるストランドに加えて、ポリエステル特にポリエチレンテレフタレートのストランドをさらに含有してなる請求項13に記載の織物。
【請求項15】
特に製紙機布、濾過布およびコンベアベルト布における、技術的または工業的利用のための織布への、請求項1に記載の溶融紡糸されたストランドの使用。
【請求項16】
製紙機の形成布の裏打ち横糸としての、請求項15に記載の溶融紡糸されたストランドの使用。

【公開番号】特開2007−247131(P2007−247131A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66079(P2007−66079)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501078281)テイジン モノフィラメント ジャーマニイ ゲー・エム・ベー・ハー (11)
【Fターム(参考)】