説明

ポリエステルポリオール、その製造方法およびその使用

【課題】 従来のポリエステルポリオールに比べ低い粘度を示し、経済的に有利な方法により製造できるポリエステルポリオールを提供する。
【解決手段】 官能価1.95〜3.25、OH価90〜33mgKOH/gのポリエステルポリオールは、1)150〜250℃で、a)C4〜12個、カルボキシル基2〜4個のポリカルボン酸をb)官能価2〜4、分子量62〜400のポリオールと反応させてOH価100〜40mgKOH/g、官能価1.95〜3.25のOH基末端ポリエステルポリオールZを得、2)ポリエステルポリオールZに、220℃未満の開始温度でc)環状エステルをポリエステルポリオールZ/該エステルの重量比10:1〜1:1で添加し、温度は60分以下の後に175℃以下で、ポリエステルポリオールZのOH価は5mgKOH/g以上減少され、該エステル対ポリエステルポリオールZのOH基モル比は0.75:1〜10:1である方法により製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い粘度値を有するポリエステルポリオールの製造方法、これらのポリエステルポリオールから製造されたプレポリマー、これらのポリエステルポリオールおよび/またはこれらのプレポリマーから製造されたポリウレタン、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルポリオール(これらは、例えば、ポリウレタンの製造に使用できる)の成分としてのε-カプロラクトンの使用は、従前から知られている。W. Meckel, W. GoyertおよびW. Wieder, Thermoplastic Elastomers, A Comprehensive Review, N.R. Legge, G. HoldenおよびH. E. Schroeder, Hanser Publishers Munich 1987, p.17参照。
【0003】
モノマーε-カプロラクトンからのポリ-ε-カプロラクトンの合成も既知である。米国特許第2933477号の開示によれば、ポリ-ε-カプロラクトンの製造は、二官能性出発分子とラクトンとの反応によって行われる。この方法によって得られるポリ-ε-カプロラクトンの分子量は、使用される出発分子とモノマーε-カプロラクトン分子とのモル比によって実質的に決まる。米国特許第2933477号によれば、出発分子は基R'(ZH)2に由来し、ここで、Zは、-O-、-NH-または-NR''-を実質的に示し、ここでR'は、アルキレン、アリーレン、アラルキレンおよびシクロアルキレンから成る群から選択される炭化水素基を示す。これらの出発分子の例は、例えばジオール(例えばエチレングリコール)、アミノアルコール(例えばエタノールアミン)、またはジアミン(例えばピペラジン)等である。ヒドロキシル基末端ポリエーテル、例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン等を出発分子として使用することもできる。重合は、50〜300℃、好ましくは120〜200℃の温度範囲で、好ましくは触媒の存在下に行われ、該触媒は、塩基性、酸性または中性であってよく、またはエステル交換触媒であってもよい。
【0004】
構造的に類似したポリアジペートと比較して、ポリ-ε-カプロラクトンは、ポリウレタン系において軟質セグメント成分として使用した場合に、その増加した加水分解安定性を特徴とする。このような理由から、それらは、その高コストにもかかわらず使用されている。しかし、それらは結晶化が増加する傾向を有し、これは、この硬化傾向により、それらが多くの用途に適していないことを意味する。この課題は、DE-A 1946873によれば、ジカルボン酸およびジオールを組み込むことによりポリ-ε-カプロラクトンを改質することによって改善することができる。このように改質されたポリ-ε-カプロラクトンから製造されたポリウレタンエラストマーも、向上した加水分解安定性、ならびに結晶化および硬化傾向の減少または不存在を特徴とする。
【0005】
改質ポリ-ε-カプロラクトンの製造のために、ε-カプロラクトン、ジカルボン酸およびジオール成分を混合し、好ましくは100〜250℃の温度に加熱し、それによって、水を除去しながら、供給比に依存して40〜約80mg KOH/gのOH価を有するポリエステルポリオールを生成する。ε-カプロラクトンの割合は10〜75wt%であってよいが、好ましくは25〜70wt%である。ポリエステルポリオールの製造用の代表的物質は、例えば、ジカルボン酸として使用することができるコハク酸、アジピン酸等、およびジオールとして使用できるエチレングリコール、ブチレングリコール等である。さらに、少量の、より高い官能価を有する代表的物質、例えば、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン等も使用しうる。
【0006】
DE-A 2115072より、特定触媒(例えば、ハロゲン化アンチモン)の使用、および反応を行う特定の方法(例えば、ε-カプロラクトンとポリオールとの予備反応、および次のポリカルボン酸との反応)は、改質ポリ-ε-カプロラクトン(例えば、混合ポリエステルポリオール)の製造に関して既知である。
【0007】
これらの混合ポリエステルポリオールは、特に高価な用途、例えば、フロッピーディスク(米国特許第5955169号参照)、水溶性、水分散性または感水性材料のマイクロカプセル封入(米国特許第5911923号)、眼用レンズの製造(米国特許第5880171号)、損傷鼻骨の安定化用の骨代用材料(米国特許第5810749号)、球状ポリウレタン粒子の製造(EP-A 0509494参照)等に使用される。
【0008】
さらに、例えばポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーに基づく、カプロラクトン単位含有ポリエーテルエステルは、医療用途において関心のもたれる構成ブロックである。これらは、水中でのゲル化挙動、分解動態、レオロジー挙動の温度依存性に関係した、系特有の制御可能特性を与える親水性構成要素(PEO)を含有するので、関心がもたれている(D. Cohnら, Biomaterials 27 (2006) 1718参照)。
【0009】
例えばポリウレタン(PU)用途において、ポリエステルを使用する場合、PU最終生成物の特性に加えて、その製造方法も、改善努力の対象である。例えば、反応ポリウレタンメルトの加工特性が取扱い容易であるべきことは決定的に重要である。これは、その粘度について特に言えることであり、粘度はできる限り特定限度を超えるべきでない。粘度が高すぎるメルトは、例えば、金型に流し込むのが困難であり、または、所定時間内に連鎖延長剤と完全に混合することができず、従って、このようにして製造された生成物は価値がない。ポリエーテルポリオールに基づく系がより低い粘度を有することは知られており、従って、用途が許せば、ポリエステルポリオールをポリエーテルポリオールで置き換えることによって、この課題を解決しうる場合がある。
【0010】
ポリオールの粘度は、分子量の増加と共に一般に増加することも既知である(例えば、P.C. Hiemenz: Polymer Chemistry, The Basic Concepts, Marcel Dekker, Inc. New York, p.104, 1984参照)。従って、前記の加工上の問題は、a)ポリエステルポリオール、b)より高い分子量を有するポリエステルポリオール、およびc)より高い分子量およびより高い官能価を有するポリエステルポリオールを使用する場合に特に生じ、加工上の問題はa)〜b)〜c)に向かって累進的により深刻になる。それにもかかわらず、例えば、比較的高い軟化点を有する比較的軟質のキャストエラストマーを製造しなければならない場合、特に問題であるb)およびc)を使用して、従来からそれらに関連している不都合を伴って製造しなければならない場合がある。この場合、例えば、次に、比較的高い比率の連鎖延長剤を、比較的多数のNCO基を有するプレポリマーと反応させる必要があり、それによって、高度の硬質セグメントオリゴマー化、およびそれに関連した高い軟化点を達成することができる。そのような場合、硬度を減少させるために、鎖ができるだけ長いポリオール、および、用途の必要に応じて、できるだけ長鎖のポリエステルポリオールを使用する必要がある。しかし、上記記載に基づいて、明らかに、この組合せはとりわけ問題となる。
【0011】
この問題の1つの解決法は、ポリオール開始ポリ-ε-カプロラクトンを使用することである。分子量の点で同等のポリアジペートと比較して、ポリ-ε-カプロラクトンは、かなり低い粘度を示すことを特徴とする。従って、技術的観点から、それらは前記の問題に充分に満足のいく解決法を提供する。
【0012】
しかしながら、残念なことに、分子量および官能価の点で同等のポリアジペートと比較して、ポリ-ε-カプロラクトンは、かなり高価である。従って、ポリ-ε-カプロラクトンは、経済的見地から多くの用途に使用することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、類似した従来のポリエステルポリオールと比較して、顕著に低い粘度を示し、それに加えて、技術的に簡単かつ経済的に有利な方法によって製造できるポリエステルポリオール、ならびにその製造方法を提供することである。
【0014】
これに関連して、従来のポリエステルポリオールは、少なくとも2個および6個以下、好ましくは4個のカルボキシル基、合計4〜12個の炭素原子を有するポリカルボン酸またはその誘導体、即ち、例えば、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、フタル酸等から専らまたは主として構成されたポリエステルポリオールであり、それらは、水または低分子量の一般に一官能性アルコールを除去しながら180℃以上の温度で生成される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
意外にも、所定条件下に特定の順序で反応される特定出発化合物から製造したポリエステルポリオールが、顕著に低い粘度を示し、かつ、その製造方法が技術的に簡単であり経済的であることが見出された。
【0016】
本発明のポリエステルポリオールの製造方法は、二段階法である。この方法は、第一段階において、中間体としてのポリエステルポリオールの生成を含み、該ポリエステルポリオールはゼロに近い酸価を有し、一般的なエステル化条件下にポリカルボン酸と1つまたはそれ以上のポリオールとを反応させることによって生成され、次に、第二段階において、この中間体ポリエステルポリオールを1つまたはそれ以上の環状エステルモノマーと反応させる。
【0017】
本発明は、1.95〜3.25の官能価、および90〜33mg KOH/gのOH価を有するポリエステルポリオールの製造方法に関する。この方法は下記の工程を含んで成る:
1) a) 4〜12個の炭素原子および2〜4個のカルボキシル基を有する1つまたはそれ以上のポリカルボン酸、その誘導体、および/またはそれらの混合物を、
b) 2〜4の官能価および62〜400g/molの数平均分子量を有する1つまたはそれ以上の有機ポリオール
と、150〜250℃の温度で真空下に反応させて、100〜40mg KOH/gのヒドロキシル価および1.95〜3.25の官能価を有するヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールZを生成し;
次に、
2) 該ヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールZに、220℃未満の開始温度で、
c) 1つまたはそれ以上の環状エステルモノマー、好ましくはε-カプロラクトン
を、ポリエステルポリオールZ/環状エステルモノマーの重量比10:1〜1:1で添加し、温度は60分以下の後に175℃またはそれ以下であり、ポリエステルポリオールZのOH価は少なくとも5mg KOH/gで減少され、環状エステルモノマー対ポリエステルポリオールZのヒドロキシル基のモル比は0.75:1〜10:1である。
【0018】
得られるポリエステルポリオールは、同じ全体的組成であるが従来法、即ち一段階法で製造されたポリエステルポリオールと比較して、顕著に低い粘度を示す。
【0019】
第一工程で得られるポリエステルポリオールの粘度は、第二段階における環状エステルモノマーとの反応の間に実質的に増加しない。
【0020】
2つの反応段階は、当然、同じかまたは異なる反応器で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第一段階において/から生成されたポリエステルポリオールZは、当業者に既知の、PU(ポリウレタン)エラストマーの製造に使用できる全てのポリエステルポリオールを包含する。それらは、1つまたはそれ以上の有機ポリカルボン酸またはポリカルボン酸誘導体またはそれらの混合物を、ポリエステルポリオールZが得られるように反応させることによって製造され、ポリエステルポリオールZは主にヒドロキシル基を末端とし、ほぼゼロの酸価を有する。
【0022】
好適な有機ポリカルボン酸は、好ましくは、4〜12個のC原子を有する二官能性脂肪族または芳香族または芳香脂肪族カルボン酸である。特に好ましいのは、2,2-ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸から成る群から選択されるカルボン酸である。
【0023】
有機ポリカルボン酸および/またはその誘導体(例えばエステル)と、低分子量一官能性アルコールおよび/またはそのポリエステルとの混合物も、当然、使用できる。
【0024】
ジカルボン酸の無水物も当然使用できる。無水物の例は、無水フタル酸、無水コハク酸等である。
【0025】
2〜20個のC原子を有する二官能性脂肪族および/または芳香脂肪族ポリオールを、有機ポリオールとして使用するのが好ましい。有機ポリオールとして使用するのに特に好ましい化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、デシレングリコール、ドデシレングリコールおよびヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテルから成る群から選択されるポリオールである。オリゴエチレンオキシド、オリゴプロピレンオキシドおよびオリゴブチレンオキシドの同族列からのポリオールも好ましい。
【0026】
2より大きい官能価を有する好適なポリオールおよび/またはポリカルボン酸、例えば、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、ピロメリット酸等も組み込むことができる。
【0027】
第一段階におけるポリエステルポリオールZの生成は、それ自体既知の方法により、反応物を混合し、それらを、攪拌しながら、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも180℃の温度にゆっくり加熱し、反応から除去された水(または、おそらくは低分子量一官能性アルコール)を留去することによって行われる。触媒を使用しないのが好ましい。圧力を、最終的に50mbar未満、好ましくは25mbarにゆっくりと減少させることによって、反応を終了させる。エステル化触媒は、好ましくは、この操作の間(即ち、減圧の間)に1〜100ppmの量で添加される。しかし、触媒を使用せずに行うこともでき、これは反応時間を増加させる。
【0028】
ポリエステルポリオールZが10mg KOH/g未満、好ましくは5mg KOH/g未満、より好ましくは3mg KOH/g未満の酸価を有するようになった時点で、反応を終了する。
【0029】
中間体(ポリエステルポリオールZ)の生成のための反応は、当然、共留剤、例えば、ジオキサン、トルエン等を使用して行うこともできる。この態様において、共留剤は、反応の終了時に蒸留によって分離される。
【0030】
方法の第二段階は、ポリエステルポリオールZを、1つまたはそれ以上の環状エステルモノマーと反応させることを含んで成る。この反応に特に好ましい方法は、下記の方法である:ポリエステルポリオールZを、220℃未満、好ましくは180〜210℃の開始温度で、60分間以下、好ましくは45分間以下にわたって、環状エステルモノマーと共に攪拌し、次に、開始時間後に、175℃未満の温度、好ましくは140〜170℃の温度で反応を終了させる。
【0031】
環状エステルモノマーの転化の迅速な近似的測定のために、反応混合物の屈折率を参照することができる。屈折率の一定値は、反応が実質的に終了していることを示す。しかし、精密分析のためには、例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)等のような既知の方法を使用すべきである。
【0032】
実際に使用できる反応生成物(即ち、得られたポリエステルポリオール)は、3wt%以下、好ましくは1.5wt%以下、より好ましくは1wt%以下の遊離環状エステルモノマー含量を有する。
【0033】
ポリエステルポリオールZを環状エステルモノマーと反応させるために、当然、触媒を使用することもできる。触媒として、当業者に既知の全てのエステル交換およびエステル化触媒が好適である。以下にその例を示す:ハロゲン化スズ(II)、有機スズ化合物、チタンおよびジルコニウムアルコキシレート、スズおよびビスマスカルボキシレート等。
【0034】
本発明の方法によって製造されるポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオールZのOH価と比較して、少なくとも5mg KOH/g低いOH価を有するのが好ましい。ポリエステルポリオールZ/環状エステルモノマーの重量比は、10:1〜1:1である。環状エステルモノマー対ポリエステルポリオールZのヒドロキシル基のモルの比は、少なくとも0.75:1〜10:1である。
【0035】
本発明の方法によって製造されたポリエステルポリオールは、同じ全体的組成および同じ官能価を有するポリエステルポリオールと比較して、顕著に減少した粘度値を有する。
【0036】
本発明の方法によって製造されたポリエステルポリオールは、プレポリマーの製造用および/またはポリウレタンの製造用の、ポリオール成分として、またはポリオール成分の一部として、使用することができる。
【0037】
イソシアネート末端プレポリマーは、1つまたはそれ以上の有機ジ-またはポリイソシアネートと、少なくとも1つの本発明のポリエステルポリオールとの反応生成物を含んで成る。これらのイソシアネート末端プレポリマーは、1つまたはそれ以上の有機ジ-またはポリイソシアネートを、本明細書に開示されている少なくとも1つのポリエステルポリオールと反応させることによって製造される。イソシアネート末端プレポリマーは、過剰のイソシアネートを使用して既知の方法によって製造される。
【0038】
例えば、0.4〜1.3g/mLの密度を有する発泡または非発泡ポリウレタンの製造において、これらは、1つまたはそれ以上の有機ポリイソシアネート成分を、本発明によって製造された少なくとも1つのポリエステルポリオールを含んで成るイソシアネート反応性成分と反応させることによって製造できる。これらのポリウレタンの製造は、例えば、既知のキャスティング法によって行うことができる。
【0039】
イソシアネート末端プレポリマーおよびポリウレタンの製造において、下記から成る群から選択されるポリイソシアネートを使用するのが好ましい:ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、1-イソシアネート-3-イソシアネートメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、メタ-テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルフェニレンジイソシアネートおよび4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート。
【0040】
下記の実施例は、本発明の方法をさらに詳しく示すものである。先に示した本発明は、これらの実施例によって意図または範囲を限定されるものではない。当業者は、下記手順の条件の既知の変形を使用しうることを容易に理解するであろう。特に記載がなければ、全ての温度は摂氏温度であり、全てのパーセントはwt%である。
【0041】
実施例
実施例1:(比較)
48.3重量部のアジピン酸
26.1重量部の1,4-ブタンジオール
8.5重量部の1,6-ヘキサンジオール
0.8重量部の1,1,1-トリメチロールプロパン
16.3重量部のε-カプロラクトン
をフラスコに計り入れ、標準圧下で攪拌しながら200℃にゆっくり加熱した。約11部の水を留去した。水の除去の終了時に、20ppmの二塩化スズ二水化物を添加し、真空(15mbar)を約4時間にわたってゆっくり適用した。これらの条件下に、さらに約15時間以内に反応を終了させた。酸価、OH価および粘度を測定し、以下に示す。
酸価: 0.5mg KOH/g
OH価: 47.4mg KOH/g
官能価: 2.16
粘度: 1320mPas/75℃
【0042】
実施例2:(本発明)
48.3重量部のアジピン酸
26.1重量部の1,4-ブタンジオール
8.5重量部の1,6-ヘキサンジオール
0.8重量部の1,1,1-トリメチロールプロパン
をフラスコに計り入れ、標準圧下で攪拌しながら200℃にゆっくり加熱した。約11部の水を留去した。水の除去の終了時に、20ppmの二塩化スズ二水化物を添加し、真空(15mbar)を約4時間にわたってゆっくり適用した。これらの条件下に、さらに約15時間以内に反応を終了させた。中間体ポリエステルポリオールの酸価およびOH価を測定し、以下に示す。
酸価: 0.2mg KOH/g
OH価: 60.5mg KOH/g
官能価: 2.16
【0043】
生成物を150℃に冷却し、16.3重量部のε-カプロラクトンを添加し、混合物を、屈折率が一定(50℃において1.46376)になるまで約20時間にわたって150℃で攪拌した。酸価、OH価、粘度および遊離カプロラクトンの割合を測定し、以下に示す。
酸価: 0.9mg KOH/g
OH価: 45.0mg KOH/g
粘度: 750mPas/75℃
遊離カプロラクトンの割合: 0.86wt%
【0044】
実施例3:(比較)
実施例2を繰り返したが、唯一異なるのは、ε-カプロラクトンを、200℃に加熱されている中間体ポリエステルポリオール生成物に添加したことである。この反応混合物を200℃の温度で5時間維持した。得られたポリエステルポリオール生成物は、2.18の官能価を有していた。この生成物の酸価、OH価および粘度を表1に示す。
【0045】
実施例4:(比較)
実施例2を繰り返したが、それと異なるのは、第一段階において、ε-カプロラクトンを1,6-ヘキサンジオールと反応させ、第二段階において、1,4-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパンおよびアジピン酸をこの生成物に200℃で添加したことである。この温度を20時間維持した。この生成物は、2.16の官能価を有していた。この生成物の酸価、OH価および粘度を表1に示す。
【0046】
実施例1および2の比較は、本発明(実施例2)によって生成したポリエステルポリオールが、同様のOH価および同じ全体的組成を有しながら顕著に低い粘度を有することを示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の結果は、同じ組成、即ち、ポリオールおよびポリカルボン酸およびε-カプロラクトンの同じ量的比率、および生成物の同様の分子量またはヒドロキシル価(44.4〜47.4)でありながら、本発明の方法を使用した場合だけ、低い粘度(75℃において1000mPas以下)を有するポリエステルポリオールが得られることを示す。
【0049】
実施例5a〜5c:
中間体を、実施例2に記載のように生成した。中間体ポリエステルポリオールを、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび1,1,1-トリメチロールプロパンならびにアジピン酸から生成した(量的比率については表2参照)。
【0050】
次に、ε-カプロラクトンを中間体ポリエステルポリオールに、種々の量で(表3参照)、30分間にわたって滴下漏斗を用いて添加した。初めに、ここでの初期ポリエステルポリオールの温度は200℃であった。ε-カプロラクトンの添加の間に、温度を150℃に下げた。10ppmの二塩化スズ二水化物を添加し、この温度でさらに10時間攪拌を続け、OH価、粘度および遊離カプロラクトンの割合を測定した。これらを表3に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
表3の結果は、分子量の増加(これはOH価の減少に対応する)にかかわらず、得られたポリエステルポリオールの粘度は1000Pas(75℃)未満であることを示す。
【0054】
実施例6:
実施例5a、5bおよび5c(本発明の代表例)に記載のように生成したポリエステルポリオール、ならびに実施例1の比較ポリエステルポリオール1を用いたポリウレタンの製造:
【0055】
実施例1(比較)および5bのポリエステルポリオールは、それらのε-カプロラクトンの割合(それぞれ約16wt%)において同等である。一方、実施例5aのポリエステルポリオールは、比較例1のポリエステルポリオールより少ない9%のε-カプロラクトンを含有し、実施例5cのポリエステルポリオールは、それより多い23%のε-カプロラクトンを含有する。OH価に関して、47.4mg KOH/gを有する実施例1(比較)のポリエステルポリオールは、実施例5bのポリエステルポリオール(49.9mg KOH/g)と実施例5c(45.2mg KOH/g)のポリエステルポリオールとの間にある。表4に示す配合物を、ショアA硬度において実質的に同じであるPUエラストマーが4つの全実施例で得られるように調製した。これら4つの各実施例のショアA硬度は、94〜95である。従って、これらの実施例において異なるポリエステルポリオールを使用することに加えて、同じショアA硬度値を得るために、実施例ごとに配合を少し変えることも必要であった。
【0056】
実施例6は、下記の手順を用いて調製した:
実施例5aのポリエステルポリオール124部を130℃に加熱し、固体1,5-ナフタレンジイソシアネート27部を攪拌しながら添加した。3分後に、真空を適用して反応混合物を脱気した。NCO-OH反応の結果として、14分後に反応メルトが124℃に昇温した。プレポリマーのNCO値は4.35wt%NCOであり、粘度は1630mPas(120℃)であった。次に、5.8重量部の1,4-ブタンジオールを、混合物中に気泡が形成されないように、30秒間にわたって激しく攪拌しながらこのプレポリマーに添加した。反応混合物を、110℃に予熱した金型に注ぎ、約15分後に成形物を取り出した。成形物を循環空気炉で24時間にわたって110℃でアニールし、室温で約1ヶ月間の保存後、機械的特性を測定した。
【0057】
実施例7〜9は、表4に示す異なる配合物を用いて、実施例6に示したのと本質的に同じ手順によって調製した。
【0058】
【表4】

【0059】
表4に示したキャストエラストマーの機械的特性は、ほとんど差異を示さない。これは、本発明の代表例である実施例6、7および8の間において、および比較例9と比較した場合においても、言えることである。本発明による実施例における加工挙動は、特にNCOプレポリマーの粘度に関して、より好ましく、ある場合には顕著により好ましい。ここで、加工を容易にするプレポリマー粘度の明らかな減少は、選択される可変要素との相関関係において得られる。
【0060】
実施例は、本発明のポリエステルポリオールの粘度について見出された好ましい数値が、それから生成されたNCOプレポリマーにおいても見出され、全体的工程系統(overall process chain)を好都合に設計しうることを示している。
【0061】
本発明を例示目的で先に詳しく説明したが、そのような説明は、例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図および範囲を逸脱せずに、当業者によってそれに変更を加えうるものと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.95〜3.25の官能価、および90〜33mg KOH/gのOH価を有するポリエステルポリオールの製造方法であって、下記の工程を含んで成る方法:
1) 150〜250℃の温度で、真空下に、
a) 4〜12個の炭素原子および2〜4個のカルボキシル基を有する1つまたはそれ以上のポリカルボン酸、その誘導体、および/またはそれらの混合物を、
b) 2〜4の官能価および62〜400g/molの数平均分子量を有する1つまたはそれ以上の有機ポリオール
と反応させて、100〜40mg KOH/gのヒドロキシル価および1.95〜3.25の官能価を有するヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールZを生成し、
次に、
2) 該ヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールZに、220℃未満の開始温度で、
c) 1つまたはそれ以上の環状エステルモノマー
を、ポリエステルポリオールZ/環状エステルモノマーの重量比10:1〜1:1で添加し、ここで、温度は60分以下の後に175℃またはそれ以下であり、該ポリエステルポリオールZのOH価は少なくとも5mg KOH/gで減少され、環状エステルモノマー対ポリエステルポリオールZのヒドロキシル基のモル比は0.75:1〜10:1である。
【請求項2】
1つまたはそれ以上の有機ジ-またはポリイソシアネートと、請求項1に記載の方法によって製造された少なくとも1つのポリエステルポリオールとの反応生成物を含んで成るイソシアネートプレポリマー。
【請求項3】
1つまたはそれ以上の有機ジ-またはポリイソシアネートと、請求項1に記載の方法によって製造された少なくとも1つのポリエステルポリオールとを反応させることを含んで成るイソシアネートプレポリマーの製造方法。
【請求項4】
0.4〜1.3g/mLの密度を有するポリウレタンの製造方法であって、有機ジ-またはポリイソシアネートと、請求項1に記載の方法によって製造された少なくとも1つのポリエステルポリオールを含んで成るイソシアネート反応性成分とを反応させることを含んで成る方法。
【請求項5】
ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート(TODI)、メタ-テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルフェニレンジイソシアネートおよび4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートから成る群から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項2に記載のイソシアネートプレポリマーを、連鎖延長剤、架橋剤およびそれらの混合物から成る群から選択される1つまたはそれ以上の化合物と反応させることを含んで成るポリウレタンの製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載のイソシアネートプレポリマーと、連鎖延長剤、架橋剤およびそれらの混合物から成る群から選択される1つまたはそれ以上の化合物との反応生成物を含んで成るポリウレタン。

【公開番号】特開2008−95109(P2008−95109A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−265519(P2007−265519)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】