説明

ポリエステルポリオール及びポリエステル変性物の製造方法

【課題】原料ポリエステルを短時間に解重合して、着色の少ないポリエステルポリオールを製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】原料ポリエステル、ポリオール成分、及び錫錯体および有機錫石鹸からなる群から選ばれる触媒を必須成分として含む混合物を加熱して原料ポリエステルを解重合する工程を備えることを特徴とするポリエステルポリオールの製造方法である。前記触媒がオクチル酸錫、アセチルアセトン錫およびナフテン酸錫からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルを原料とするポリエステルポリオールおよびポリエステル変性物の製造方法に関し、詳しくは、着色の少ないポリエステルポリオールを得ることのできるポリエステルポリオールの製造方法および該製造方法により得られたポリエステルポリオールを変性させるポリエステル変性物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステルは、成型品、フィルム、繊維等様々な用途で使用されている。その中でもPETボトルは近年、軽量で透明性、ガスバリア性に優れ、強度も高いことから使用量が急増してきている。
【0003】
一方、ポリエステルを多価アルコールにより解重合してポリエステルポリオールを製造したり、該ポリエステルポリオールを変性することにより様々な樹脂を誘導することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、グリコール類による解重合反応を用いた塗料用アルキッド樹脂の製造が開示され、特許文献2および3には、再生ポリエステルを用いた塗料用ポリエステル樹脂の製造方法が開示され、特許文献4には、再生ポリエステルを光硬化性ウレタン樹脂の原料として利用することが開示されている。上記特許文献記載の樹脂は、いずれも塗料組成物に用いることを目的としている。
【0005】
従来、ポリエステルの解重合反応は、原料ポリエステルと多価アルコール、解重合触媒を反応器に仕込み、加熱することで行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3310661号
【特許文献2】特許第3443409号
【特許文献3】特許第3256537号
【特許文献4】特開2004−307779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポリエステルの解重合反応は、かなりの高温下で長時間行われるため、得られる解重合物が褐色を呈することがあるという問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、原料ポリエステルを短時間に解重合して、着色の少ないポリエステルポリオールを製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、錫錯体および有機錫石鹸からなる群から選ばれる触媒を用いることで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のポリエステルポリオールの製造方法は、原料ポリエステル、ポリオール成分、及び錫錯体および有機錫石鹸からなる群から選ばれる触媒を必須成分として含む混合物を加熱して原料ポリエステルを解重合する工程を備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のポリエステルポリオールの製造方法においては、前記触媒がオクチル酸錫、アセチルアセトン錫およびナフテン酸錫からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のポリエステルポリオールの製造方法においては、前記ポリオール成分が、3官能以上のポリオールを含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明のポリエステルポリオールの製造方法においては、前記原料ポリエステルが、再生ポリエステルであることが好ましい。
【0014】
また、本発明のポリエステルポリオールの製造方法においては、原料ポリエステル、ポリオール成分、及び前記触媒を必須成分として含む混合物に、さらに水を加えて原料ポリエステルの解重合を行うことが好ましい。
【0015】
また、本発明のポリエステルポリオールの製造方法においては、前記解重合が、200〜300℃で行われることが好ましい。
【0016】
また、本発明のポリエステルポリオールの製造方法においては、下記一般式(1)で表される化合物の混合物が得られることが好ましい。

(式中、Rは(l+m)価の多価アルコールからOH基を除いた基を表し、Rは炭素原子数1〜10のアルキレン基、または、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、Rは置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、lは0〜10の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜10の整数を表す。)
【0017】
本発明のポリエステル変性物の製造方法は、上記のポリエステルポリオールの製造方法により得られたポリエステルポリオールに、水酸基と反応可能な基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリエステルポリオールの製造方法によれば、原料ポリエステルを簡便に有機溶剤に溶解可能で各種化学変性可能なポリエステルポリオールへと変換することが可能である。
さらに、本発明によれば、感光性を付与したポリエステル変性物を比較的低コストで生産効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリエステルポリオールの製造方法の基本的な特徴は、原料ポリエステルをポリオール成分で解重合する際に錫錯体および有機錫石鹸からなる群から選ばれる触媒を用いる点にある。
【0020】
[錫錯体、有機錫石鹸]
本発明の方法で用いる錫錯体および有機錫石鹸からなる群から選ばれる触媒としては、例えば、モノブチル錫ハイドロオキサイド、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫−2−エチルヘキサノエート、酸化第一錫、酢酸錫、オクチル酸錫、アセチルアセトン錫、などを挙げることができる。中でも反応速度が速いことから、オクチル酸錫、アセチルアセトン錫、ナフテン酸錫が特に好ましい。また、これら触媒は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記触媒の使用量は、原料ポリエステルとポリオール成分の合計量100質量部に対して、好ましくは0.005〜5質量部であり、より好ましくは0.05〜3質量部である。
【0022】
[原料ポリエステル]
本発明の方法に用いる原料ポリエステルは、公知のポリエステルであれば特に限定されない。加熱により溶融することができれば、いずれのポリエステルであっても本発明の方法は適用可能である。
【0023】
また、原料ポリエステルとしては、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。

(式中、Rは炭素原子数1〜10のアルキレン基、または、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、Rは置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基、Oは1以上の整数を表す。)
【0024】
上記一般式(2)においてRがとりうる炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,2−ブチレン基、1,5−ペンチレン基等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(2)においてRがとりうる炭素数6〜20のアリーレン基としては、1,4−フェニレン基、2,6−ナフチレン基等が挙げられる。これらアリーレン基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0026】
上記一般式(2)においてRがとりうる炭素数6〜20のアリーレン基としては、上記Rで例示したものと同様のものが挙げられる。
【0027】
好ましい原料ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、4,4−ジヒドロキシビフェノールとテレフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体などの液晶ポリマー等が挙げられる。上記の中でもポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0028】
また、環境保護の観点から、ペットボトル廃材等の廃棄物から回収されたリサイクルPET及び再生PETが、原料ポリエステルとしてさらに好ましい。回収されたPETは粉砕し洗浄され、再生PETは洗浄しペレット化されたものを市場から手に入れることができる。
【0029】
[ポリオール成分]
上記ポリオール成分としては、2官能ポリオールや3官能以上のポリオールなどを特に限定せずに用いることができる。上記ポリオール成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
2官能ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、ジオキサングリコール、アダマンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、メチルオクタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール1,3、3−メチルペンタンジオール1,5、ヘキサメチレングリコール、オクチレングリコール、9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのエチレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのプロピレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合変性化合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、1,4−ポリイソプレンジオール、1,4−ポリブタジエンジオール、1,2−ポリブタジエンジオール、1,4−もしくは1,2−ポリブタジエンジオールの水素添加物といったヒドロキシル基末端ポリアルカンジエンジオール類が挙げられる。
【0031】
上記ポリカプロラクトンジオールの市販品の例としては、例えば、プラクセル205、プラクセルL205AL、プラクセル205U、プラクセル208、プラクセルL208AL、プラクセル210、プラクセル210N、プラクセル212、プラクセルL212AL、プラクセル220、プラクセル220N、プラクセル220NP1、プラクセルL220AL、プラクセル230、プラクセル240、プラクセル220EB、プラクセル220EC(以上いずれもダイセル化学工業(株)製)が挙げられる。
【0032】
上記ヒドロキシル基末端ポリアルカンジエンジオールの市販品の例としては、例えば、エポール(登録商標;水素化ポリイソプレンジオール、分子量1,860、平均重合度26、出光興産(株)製)、PIP(ポリイソプレンジオール、分子量2,200、平均重合度34、出光興産(株)製)、ポリテールH(水素化ポリブタジエンジオール、分子量2,200、平均重合度39、三菱化学(株)製)、R−45HT(ポリブタンジオール、分子量2,270、平均重合度42、出光興産(株)製)が挙げられる。
【0033】
3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アダマンタントリオール、ポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。また、芳香環を有する3官能以上のポリオールとして、3官能以上のフェノール化合物のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性物等が挙げられ、複素環を有する3官能以上のポリオールとしては四国化成工業(株)製セイクなどが挙げられる。
【0034】
上記ポリカプロラクトントリオールの市販品の例としては、例えば、プラクセル303、プラクセル305、プラクセル308、プラクセル312、プラクセルL312AL、プラクセル320ML、プラクセルL320AL;以上いずれもダイセル化学工業(株)製;商品名)が挙げられる。
【0035】
ポリオール成分として、植物由来のアルコール成分(植物由来ポリオール)を用いてもよい。植物由来のアルコール成分としては、ひまし油類アルコール成分が好ましい。市販品として、例えば、URIC H−30、URIC H−31、URIC H−52、URIC H−56、URIC H−57、URIC H−62、URIC H−73X、URIC H−92、URIC H−420、URIC H−854、URIC Y−202、URIC Y−403、URIC Y−406、URIC Y−563、URIC AC−005、URIC AC−006、URIC PH−5001、URIC PH−5002、URIC PH−6000、URIC F−15、URIC F−25、URIC F−29、URIC F−40、URIC SE−2010、URIC SE−3510、URIC SE−2606、URIC SE−3506、URIC SE−2003、POLYCASTOR#10、POLYCASTOR#30、URIC SE−2003(いずれも伊藤製油社製)等が挙げられる。
【0036】
本発明において使用するポリオール成分は、3官能以上のポリオールを含むことが好ましく、特にトリメチロールプロパンを含むことが好ましい。
【0037】
上記ポリオール成分の使用量は、原料ポリエステルのエステル結合1モルに対してポリオール成分の水酸基が0.5モル〜7.0モルであることが好ましく、1.0モル〜5.0モルであることがより好ましい。
【0038】
[反応条件]
本発明の方法においては、上記各成分を含む混合物を反応器に入れて、加熱することにより、原料ポリエステルの解重合を行う。加熱の方法は従来公知の方法を用いることができる。上記各成分を混合し、混合物としてから加熱してもよく、加熱しながら各成分を順次反応器に導入してもよい。加熱温度は、150〜350℃が好ましく、200〜300℃がより好ましい。また、有機溶媒を使用する場合は、従来公知の溶媒を使用することができるが、環境への影響の観点から、有機溶媒を使用しないで反応を行うことが好ましい。
【0039】
本発明の方法においては、原料ポリエステル、ポリオール成分、及び触媒を必須成分として含む混合物に、さらに水を加えて原料ポリエステルの解重合を行うことが好ましい。水を使用すると、得られる解重合物の酸化がより高くなる。水を加えることにより、原料であるポリエステルやポリオールがスラリー状となり、攪拌効率が向上する為好ましい。
【0040】
本発明のポリエステルポリオールの製造方法においては、下記一般式(1)で表される化合物の混合物が得られることが好ましい。

(式中、Rは(l+m)価の多価アルコールからOH基を除いた基を表し、Rは炭素原子数1〜10のアルキレン基、または、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、Rは置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、lは0〜10の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜10の整数を表す。)
【0041】
上記一般式(1)中のRは(l+m)価の多価アルコールからOH基を除いた基を表すが、該多価アルコールとして、上記の2官能ポリオール、3官能以上のポリオールで例示したものを挙げることができる。また、Rがとりうるアルキレン基、アリーレン基、Rがとり得るアリーレン基としては、上記したものと同様のものを挙げることができる。
【0042】
上記一般式(1)で表される化合物は、本発明のポリエステル変性物の製造方法の好適な原材料となる。
【0043】
[ポリエステル変性物の製造方法]
本発明のポリエステル変性物の製造方法は、上記のポリエステルポリオールの製造方法により得られたポリエステルポリオールに、水酸基と反応可能な基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させることを特徴とするものである。この変性により、ポリエステルに感光性を付与することができる。ポリエステルポリオールの変性反応は、従来周知のエステル化反応と同様であり、有機溶剤の存在下又は非存在下で、通常、酸触媒や重合禁止剤を添加して、好ましくは80℃〜130℃の温度範囲のもと、2時間から10時間の範囲で行なう。常圧でも加圧下でも合成が可能であり、加圧下の場合には反応の温度を低くすることができる。尚、得られたポリエステル変性物に、解重合物由来の未反応水酸基が存在していても特性上問題ない。
【0044】
[水酸基と反応可能な基とエチレン性不飽和基を有する化合物]
上記の製造方法で得られたポリエステルポリオールの変性に用いられる化合物は、水酸基と反応可能な基とエチレン性不飽和基を1分子中に有する化合物である。水酸基と反応可能な基は分子中に1個、エチレン性不飽和基は分子中に1個以上有することが好ましい。上記水酸基と反応可能な基としては、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基などの環状エーテル基、水酸基等が挙げられる。
水酸基と反応可能な基とエチレン性不飽和基を1分子中に有する化合物であれば、上記製造方法で得られたポリエステルポリオールの変性に用いることができるため、特に限定されないが、上記ポリエステルポリオールとの反応性などの点から、アクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有する化合物が特に好ましい。
【0045】
1つのカルボキシル基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、アクリル酸、アクリル酸の2量体、メタクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸カプロラクトン付加物、及び飽和又は不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類とのハーフエステル化合物などが挙げられる。ハーフエステル化合物を製造するための水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ハーフエステル化合物を製造するための二塩基酸無水物としては、例えば無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0046】
1分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上のエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネートあるいはこれらの変性体等が挙げられる。また、1分子中に1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と、イソホロンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートとのハーフウレタン化合物も使用することができる。これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記の1分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上のエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物の市販品としては、「カレンズMOI」(メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、「カレンズAOI」(アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート)、「カレンズMOI−EG」(メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート)、「カレンズMOI一BM」(カレンズMOIのイソシアネートブロック体)、「カレンズMOI−BP」(カレンズMOIのイソシアネートブロック体)、「カレンズBEI」(1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート)が、昭和電工(株)から市販されている。なお、これらの商品名は、いずれも登録商標である。
【0048】
1分子中に1つの環状エーテル基と1つ以上のエチレン性不飽和基を併せ持つ化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2ーヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、6ーヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルもしくはグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記水酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物としては、1分子中に1つの水酸基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であればよく、特に限定されない。具体的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明の製造方法により製造されたポリエステル変性物は、上記ポリエステルポリオールを、水酸基と反応可能な基と1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物と反応させて化学変性することにより、感光性を付与した感光性化合物であるため、光硬化性樹脂組成物もしくは光硬化性熱硬化性樹脂組成物の感光性成分として有用である。例えば、上述したポリエステル変性物に、オキシムエステル系光重合開始剤、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、キサントン化合物、3級アミン化合物等の従来公知慣用の光重合開始剤や、光開始助剤及び増感剤を配合することにより、光硬化性樹脂組成物とすることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0052】
[実施例1]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、オクチル酸錫0.17部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃に昇温させた油浴に浸し、フラスコ内が透明になるまで反応を続け、ポリエステルオリゴマーを得た。
【0053】
[実施例2]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、アセチルアセトン錫0.17部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃昇温させた油浴に浸し、フラスコ内が透明になるまで反応を続け、ポリエステルオリゴマーを得た。
【0054】
[実施例3]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、オクチル酸錫0.97部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃に昇温させた油浴に浸し、フラスコ内が透明になるまで反応を続け、ポリエステルオリゴマーを得た。
【0055】
[実施例4]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、アセチルアセトン錫0.97部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃に昇温させた油浴に浸し、フラスコ内が透明になるまで反応を続け、ポリエステルオリゴマーを得た。
【0056】
[実施例5]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコに実施例4で得られたポリエステルオリゴマー225部、アクリル酸187部、パラトルエンスルホン酸1.87部、パラメトキシフェノール1.50部を仕込み、攪拌して均一に溶解させた後、118℃に昇温させた油浴に浸して16.5時間反応を続けた。反応終了後、反応液の酸価を測定して酸当量のアルカリ水溶液をフラスコ内に加え、中和した。次いで、食塩水(20wt%)を加え、攪拌した。その後、溶液を分液漏斗に移し、反応液の1.4倍のメチルイソブチルケトンを加え、水相を捨てた。油相を食塩水(5wt%)にて再度洗い、水相を捨てた。その後、油相をヘキサン中に再沈した後、メチルエチルケトンに溶解させ、吸引濾過で不純物を除いた。濾液を水道水で再沈させた後、上澄み液を捨てて再沈物をさらに水道水で攪拌、洗浄し、最後にカルビトールアセテートで固形分が70%になるよう希釈し、アクリレート樹脂ワニスを得た。
【0057】
[比較例1]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、三酸化アンチモン0.65部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃に昇温させた油浴に浸し、反応を行った。
【0058】
[比較例2]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、アセチルアセトンコバルト0.65部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃に昇温させた油浴に浸し、反応を行った。
【0059】
[比較例3]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、ジブチル錫オキサイド0.65部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃に昇温させた油浴に浸し、フラスコ内が透明になるまで反応を続け、ポリエステルオリゴマーを得た。
【0060】
[比較例4]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた500ミリリットルの四口丸底セパラブルフラスコにPETフレーク192部(三菱化社製:ノバベックス(商品名)、トリメチロールプロパン134部、ジブチル錫ジラウレート0.65部を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、220℃に昇温させた油浴に浸し、反応を行った。
【0061】
<解重合時間>
実施例1〜4及び比較例1〜4の解重合に要した時間を下記表1に示す。10時間以上反応を行っても、原料が残留するものに関しては『×』と表記する。
【0062】
<ガードナー色数>
実施例1〜4及び比較例1〜4の解重合物のガードナー色数を測定した(JIS K6901に準拠)。結果を下記表1に示す。
【0063】
<分子量>
実施例1〜4及び比較例2の解重合物の分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定した。測定条件は、カラムに昭和電工(株)製のShodex GPC KF−806L×3を使用し、カラム温度40℃で用いた。基準物質には標準ポリスチレンを用い、溶離液はテトラヒドロフランを1mL/分の流速で使用した。測定結果を下記表1に示す。
【0064】
<溶剤溶解性試験>
実施例1〜4及び比較例1〜4の解重合物の溶剤溶解性を確認した。
確認方法としては解重合物50部に対して各種溶剤を50部加え、攪拌し解重合物の50wt%溶液を作成しその溶液の透明度を評価した。評価の記載方法を以下の通り
完全に透明である:○
やや濁りがある :△
濁りがある :×
【0065】
【表1】

【0066】
[参考例1]
前記実施例5で得られたアクリレート樹脂ワニス100部を5部の光重合開始剤(イルガキュアー184;BASF社製)と混ぜ合わせた後、ガラス板にアプリケーターを用いて20μmの膜厚で塗布した。塗布した後、80℃の熱風循環式乾燥炉で20分間乾燥し、高圧水銀灯搭載の露光装置を用いて、露光量1J/cmで露光し、評価塗膜を得た。
【0067】
<ラビングテスト>
前記評価塗膜をアセトンを含ませたウエスにて50回こすったところ、表面の溶解が無く、十分に硬化していることが確認された。
【0068】
<鉛筆硬度試験>
前記評価塗膜に鉛筆の芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を、塗膜に対して45℃の角度で1kgの荷重をかけて押し付けた。この荷重をかけた状態で約1cm程度塗膜を引っかき、塗膜の剥がれない鉛筆の硬さを測定した結果、6Hであった。
【0069】
<耐熱性試験>
前記評価塗膜を、200℃の熱風循環式乾燥炉に投入して、3分間加熱した。加熱後取り出して、目視にて溶融の形跡を観察して耐熱性試験を行ったところ、200℃、3分の耐熱性を有していることを確認した。
【0070】
上述したように、本発明の方法は、ポリエステルを簡便に有機溶剤に溶解可能で各種化学変性可能なポリエステルポリオールへ変換することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ポリエステル、ポリオール成分、及び錫錯体および有機錫石鹸からなる群から選ばれる触媒を必須成分として含む混合物を加熱して原料ポリエステルを解重合する工程を備えることを特徴とするポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項2】
前記触媒がオクチル酸錫、アセチルアセトン錫およびナフテン酸錫からなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1記載のポリエステルポリオールの製造方法
【請求項3】
前記ポリオール成分が、3官能以上のポリオールを含む請求項1または2記載のポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項4】
前記原料ポリエステルが、再生ポリエステルである請求項1〜3のいずれか一項記載のポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項5】
原料ポリエステル、ポリオール成分、及び前記触媒を必須成分として含む混合物に、さらに水を加えて原料ポリエステルの解重合を行う請求項1〜4のいずれか一項記載のポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項6】
前記解重合が、200〜300℃で行われる請求項1〜5のいずれか一項記載のポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される化合物の混合物が得られる請求項1〜6のいずれか一項記載のポリエステルポリオールの製造方法。

(式中、Rは(l+m)価の多価アルコールからOH基を除いた基を表し、Rは炭素原子数1〜10のアルキレン基、または、置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、Rは置換もしくは無置換の炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、lは0〜10の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の製造方法により得られたポリエステルポリオールに、水酸基と反応可能な基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させることを特徴とするポリエステル変性物の製造方法。

【公開番号】特開2012−214644(P2012−214644A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81291(P2011−81291)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310024066)太陽インキ製造株式会社 (16)
【Fターム(参考)】