説明

ポリエステル分割型複合繊維パッケージおよび製造方法

【課題】 生産性がよく、布帛にしたときに均一な表面感、染色の均一性が得られるポリエステル分割型複合繊維が巻き付けられたパッケージを提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維が巻き付けられ、以下の(1)〜(3)の条件を満たすことを特徴とするチーズ状パッケージ。
(1)チーズ状パッケージのふくらみ率が−5〜5%
(2)チーズ状パッケージの耳高率が0〜5%
(3)ふくらみ率の経時変化率が50%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートを含む分割型複合繊維を巻き付けたチーズ状パッケージに関するものであり、良好な解舒性はもとより、パッケージ端面周期やパッケージ内外層での物性むらが抑制され、さらに、生産性に優れたパッケージおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸の低級アルキルエステルと、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)を重縮合させて得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下、3GTと称する)は、低弾性率、ソフトな風合い、易染性といった特徴が注目され、近年、その需要が大きく拡大している。
【0003】
3GT繊維が巻き付けられたチーズ状パッケージに関しては、すでに技術開示がなされている(特許文献1、特許文献2参照)。しかし、いずれの技術内容とも3GTを単独で製糸した場合のものであり、分割型複合糸に関する内容は全く開示されていない。パッケージの耳高率を押さえることが該文献群には記載されているが、本複合糸に適用した場合、解舒性は確かに良くなり、解舒性不良に起因する染色欠点は減少できることは公知技術の通りであったが、パッケージ内層と外層の物性差やパッケージ端面と中央部での物性差が大きく、布帛としたときに染めをふくめた品位が低下するという問題が顕著となることがわかった。さらに、製造方法においても、公知技術では良好なパッケージを得ることが困難であったり、生産性に劣ることがわかった。
【0004】
また、一方の成分としてポリ乳酸を用いる分割型複合繊維の技術開示もなされている(特許文献3、特許文献4参照)。しかし、他方の成分として3GTを使用した場合のパッケージに関する内容については触れておらず、該文献の技術では良好なパッケージは得られず、物性むらが大きくなる問題があることがわかった。
【特許文献1】特開2003−81533号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】WO02/4332(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−232117号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平11−100721号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、良好な解舒性はもとより、パッケージ端面周期やパッケージ内層、外層での物性むらが抑制され、さらに、生産性に優れたパッケージおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の項目を採用することにより達成される。
(1)ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維が巻き付けられ、以下の(ア)〜(ウ)の条件を満たすことを特徴とするチーズ状パッケージ。
(ア)チーズ状パッケージのふくらみ率が−5〜5%
(イ)チーズ状パッケージの耳高率が0〜5%
(ウ)ふくらみ率の経時変化率が50%以下
(2)遅延収縮率が0〜3%の分割型複合繊維からなることを特徴とする上記(1)記載のチーズ状パッケージ。
(3)ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維が巻き付けられたチーズ状パッケージを得るに際し、以下の(ア)〜(ウ)の条件を満たすことを特徴とするチーズ状パッケージの製造方法。
(ア)Vc=α×Vp,α=1.001〜1.01
(イ)Tc=0.1〜0.3cN/dtex
(ウ)Vc=3800〜5000m/分
但し、Vpはチーズ状パッケージ上の走行糸条の速度、Vcはパッケージに接するコンタクトロールの速度、Tcはコンタクトロール入口の糸条張力を表す。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、従来技術では成し得なかった、生産性がよく、布帛にしたときに均一な表面感、染色の均一性が得られるポリエステル分割型複合繊維が巻き付けられたパッケージを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
まず、本発明のパッケージに巻き付けられている複合繊維について説明する。該複合繊維はポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維であり、図1、図2に示すような海島型複合繊維や割繊型複合繊維が例として挙げられる。分割数や繊度は特に規定はなく、対象となる最終製品や生産性を考慮し設定すると良い。
【0010】
複合繊維の一方の成分であるポリエステルAは、ポリ乳酸を主成分とするポリエステルであり、アルカリ処理により溶出される成分である。ポリ乳酸はポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)よりも融点が低く3GTの熱劣化を抑制できる。また、有機金属塩を共重合したPETと異なり、溶出に酸処理を必要としないため、酸性溶媒の排出が無く、環境負荷を小さくでき、また溶出工程の短縮化が図れ好ましい。ここで本発明で用いるポリ乳酸とは、−(O−CHCH−CO)n−を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やそのオリゴマーを重合したものをいう。乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D−乳酸)とL体のみからなるポリ(L−乳酸)および両者からなるポリ乳酸がある。ポリ乳酸中のD−乳酸、あるいはL−乳酸の光学純度は、低くなると共に結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。そのため、耐熱性を高めるために光学純度は90%以上であることが好ましい。より好ましい光学純度は93%以上、さらに好ましい光学純度は97%以上である。なお、光学純度は前記したように融点と強い相関が認められ、光学純度90%程度で融点が約150℃、光学純度93%で融点が約160℃、光学純度97%で融点が約170℃となる。また、上記のように2種類の光学異性体が単純に混合している系とは別に、前記2種類の光学異性体をブレンドして繊維に成型した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を飛躍的に高めることができ、より好ましい。
【0011】
また、他方の成分であるポリエステルBは、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするものであり、アルカリ処理によっても溶出されず、処理後、極細糸を構成する成分であり、90モル%以上がトリメチレンテレフタレートの繰り返し単位からなる。ポリトリメチレンテレフタレートとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、10モル%以下の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであってよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸などのジカルボン酸類、一方グリコール成分として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。また、艶消し剤として、二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤として、ヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0012】
本発明における好ましい極限粘度は、0.7〜2.0であり、極限粘度を0.7以上とすることで十分な強度と伸度を兼ね備えた繊維を製造することが容易となる。より好ましい極限粘度は0.8以上である。また極限粘度を2.0以下とすることで生産安定性が得られやすい。より好ましい極限粘度は1.5以下である。
【0013】
該複合繊維の物性は、3GTの特徴を活かした複合繊維とするためには、以下の範囲が好ましい。
【0014】
強度は3.0〜5.0cN/dtexが好ましい。さらに伸度は30〜60%であると発色性に優れ、後加工でのハンドリングも良好な複合繊維が得られる。より好ましくは伸度35%以上であると良好な発色性が得ることが容易となる。
【0015】
また収縮性能は、沸騰水収縮率は8〜20%、160℃乾熱収縮率は12〜30%、熱収縮応力ピーク値は0.2〜0.5cN/dtexの範囲が適度なソフト感と発色性を得る上で適当である。また初期引張抵抗度は20〜40cN/dtexの範囲が適度なソフト感を得る上で適当である。
【0016】
上記のような複合繊維が、各種衣料用途や資材用途への展開では好ましい複合繊維であるが、この複合繊維の物性むらを抑制する上では、以下に記載するパッケージ形状が必要である。
【0017】
本発明のチーズ状パッケージは、内径50.8mm(2インチ)〜152.4mm(6インチ)、外径55〜170mm、長さ50〜300mmのコアを用い、図3に示すような形状に繊維が巻き付けられたパッケージをいう。本発明のパッケージは、ふくらみ率が−5〜5%、耳高率が0〜5%である必要がある。ここで、ふくらみ率、耳高率とは、図3に示すように、パッケージの最大幅Wmax、パッケージ最小幅Wmin、パッケージの最大径Dmax、パッケージの最小径Dminとすると、以下の式にて算出される値である。
ふくらみ率(%) B={(Wmax−Wmin)/Wmin}×100
耳高率(%) S={(Dmax−Dmin)/Dmin}×100
ふくらみ率は上記の規定範囲を超えると、パッケージの巻締まりが起こり、パッケージ内層部の物性が変化する。特に収縮特性が変化し、布帛とした後、染色したときに染色むらが顕著となり好ましくない。より好ましいふくらみ率の範囲は−4〜4%である。また、耳高率が上記の範囲を超えると、パッケージ端面と中央部での巻硬度が異なるため、端部と中央部での収縮特性等の物性差が起こり、やはり染色したときにスジ状の欠点となるため好ましくない。より好ましい耳高率の範囲は0〜3.5%である。さらに、ふくらみ率は巻取り直後からの経時変化率が少ないことが必要である。ここで、経時変化率とは、巻取り10分後に測定したふくらみ率をB0、巻き取り後、25℃、65%RHの雰囲気にて24時間放置した後のふくらみ率をB1とすると、以下の式にて算出される値である。
ふくらみ率の経時変化率(%) R(B)={(B1−B0)/B0}×100
この経時変化率は50%以下である必要がある。50%以下とすることで、パッケージ内層と外層の物性差やパッケージ端面と中央部での物性差を抑制することができる。たとえ、24時間後のふくらみ率が4%であったとしても、巻取り直後のふくらみ率が2%であると、経時変化率が100%となる。これは、巻取り後に大きく物性が変化していることを意味し、物性差が大きくなることから、好ましくないのである。これらの経時変化率のより好ましい範囲は40%以下、さらに好ましい範囲は30%以下である。
【0018】
また、パッケージから採取した複合繊維の遅延収縮率は0〜3%であることが好ましい。ここで、遅延収縮率とは、パッケージ巻取直後の複合繊維を1m採取し、5.4×10−3cN/dtexの荷重を掛け、25℃、65%RHの雰囲気下で重力下に24時間放置後の長さの変化率を言い、パッケージ巻取直後の複合繊維の5.4×10−3cN/dtexの荷重下における長さをL0、24時間放置後の長さをL1とおくと、以下の式にて算出されるものである。
遅延収縮率(%) NS={(L0−L1)/L0}×100
遅延収縮率が3%を超えると、パッケージ巻取後、パッケージの巻締まりが大きくなり過ぎ、ふくらみ率の経時変化率を抑えることが容易ではなくなる。より好ましい遅延収縮率は2%以下である。
【0019】
以上で説明した本発明のチーズ状パッケージの好ましい製造方法について説明する。
【0020】
本発明のパッケージを得るための複合繊維は、いずれの公知の方法においても製造されるが、複合構造の安定性、生産性を考慮すると、溶融紡糸法が最も優れている。該複合繊維を溶融紡糸する上では、一方の成分となる3GTは、240〜280℃にて溶融されるのが好ましい。溶融するに際し、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられるが、均一溶融と滞留防止の観点からエクストルーダーによる溶融が好ましい。一方、他方の成分であるポリ乳酸は、3GTと同様にエクストルーダーを用い、200〜240℃での溶融が好ましい。別々に溶融されたポリマーは別々の配管を通り、計量された後、口金パックへ流入する。この際、熱劣化を抑制する観点から、配管通過時間が5〜30分であることが好ましい。パックへ流入したポリマーは口金により合流され、公知の技術により海島型、割繊型などの形態に複合され口金より吐出される。この際のポリマー温度は、240〜270℃が適当である。この範囲であれば、3GTの特徴を活かした複合繊維が製造できる。
【0021】
口金から吐出されたポリマーは冷却、固化され、油剤が付与された後、引き取られる。引取速度は1000〜5500m/分のいずれの速度においても可能である。100〜400m/分の未延伸糸または部分配向領域において引き取る場合は、一旦巻取ることなく、予熱、延伸、熱処理を行い延伸糸とした後、巻き取る方法が取られる。以上挙げた直接紡糸延伸法においては、延伸倍率は延伸糸伸度が30〜60%の範囲となるように適宜設定するのが良い。また、紡糸、延伸いずれかの工程において、巻取までで公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回付与することで交絡数を上げることが可能となる。さらには、巻取り直前に、追加で油剤を付与するのも良い。
【0022】
好ましく用いられる装置の概略を図4に示す。40〜80℃に加熱されたホットローラー8にて1000〜4000m/分にて一旦引き取られた糸条は予熱のため、数ターンホットローラー8上で巻き付けられ、3800〜5500m/分の速度にてホットローラー9へ引き回され延伸される。この際、ホットローラー9は110〜170℃に加熱しておき、数ターン巻き付けられることで熱セットが行われる。交絡の付与後、2つのゴデーローラー11、12によって糸条の冷却と共に張力が調整され、巻取機にてパッケージに巻き付けられる。巻取機においては、パッケージに接するコンタクトロール13によってパッケージ巻き付け張力が調整される。
【0023】
パッケージへの巻取条件は、Vpをチーズ状パッケージ上の走行糸条の速度、Vcをパッケージに接するコンタクトロールの速度、Tcをコンタクトロール入口の糸条張力とおくと、
(1)Vc=α×Vp,α=1.001〜1.01
(2)Tc=0.1〜0.3cN/dtex
(3)Vc=3800〜5000m/分
と設定することが好ましい。コンタクトロールの速度をパッケージの巻取速度に対して、1.001〜1.01倍早く設定することで得られるパッケージの良好なふくらみ率と耳高率が容易に得られる。α(以下、オーバーフィード率と称す)が1.001未満では、パッケージに巻かれる際の張力が大きくなりすぎ、ふくらみ率、耳高率を抑制することが困難となる。より好ましい範囲は、1.0015以上である。さらに、1.01を上回ると、パッケージ端面から糸が落ちてしまい、良好な解舒性が確保できない。より好ましいオーバーフィード率の範囲は1.008以下である。
【0024】
さらに、コンタクトロール入口での糸条の張力は、0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。張力0.1cN/dtexを満たないと、ゴデーローラーからの糸条の剥離が悪くなり、ゴデーローラーから巻取機間の糸条の揺れが大きくなり、巻取速度を上げた時に、ゴデーローラーでの糸切れが起こりやすくなる。より好ましい張力は0.12cN/dtex以上である。張力が0.3cN/dtexよりも高くなると、ゴデーローラーから巻取機までの糸条の揺れが安定するものの、コンタクトロールでの張力抑制が困難となり、良好なパッケージを得ることが難しくなる。より好ましい張力は0.25cN/dtex以下である。
【0025】
さらには、巻取速度は3800〜5000m/分であることが好ましい。3800m/分未満では生産性が悪く、5000m/分を超える場合では、好ましい強度、伸度の糸条が得られにくいことから好ましくない。より好ましい速度の範囲は3900〜5000m/分である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を上げて具体的に説明する。なお、実施例の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値である。
【0027】
【数1】

【0028】
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノールで溶解した3GTの希釈溶液の25℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。また、cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
(2)ふくらみ率、ふくらみ率の経時変化率
ふくらみ率(%) B={(Wmax−Wmin)/Wmin}×100
ただし、Wmax、Wminは図3に示すように、パッケージの最大幅、最小幅である。
ふくらみ率の経時変化率(%) R(B)={(B1−B0)/B0}×100
ただし、B0は巻取り10分後のふくらみ率、B1は巻き取り後、25℃、65%RHの雰囲気にて24時間放置後のふくらみ率を表す。
(3)耳高率
耳高率(%) S1={(Dmax−Dmin)/Dmin}×100
ただし、Dmax、Dminは図3に示すように、パッケージの最大径、最小径であり、S1は巻取後、25℃、65%RHの雰囲気にて24時間放置後の耳高率を表す。
(4)遅延収縮率
遅延収縮率(%) NS={(L0−L1)/L0}×100
ただし、L0:パッケージ巻取直後の複合繊維を1m採取し、5.4×10−3cN/dtexの荷重を掛けた時の長さ
L1:25℃、65%RHの雰囲気下で5.4×10−3cN/dtexの荷重下に24時間放置後の長さ
以降、複合繊維の物性に関わる測定は、パッケージ採取後、25℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、サンプル採取し、測定を行った。
(5)強度、伸度
JIS L1013(1999)に従い測定した。
(6)沸騰水収縮率
沸騰水収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
L0:原糸を1m×10回巻きのかせ取りし、測定荷重0.029cN/dtexでのかせ長
L1:原糸を無荷重下の状態で、100℃の沸騰水にて15分間処理し、風乾後、測定荷重0.029cN/dtexでのかせ長
(7)染色均一性
パッケージ外層部(サンプルA)とパッケージ内層部(サンプルB)を筒編みし、染料としてテトラシールネイビーブルーSGL0.275%owf、助剤としてテトロシンPE−C5.0%owf、分散剤としてニッカサンソルトと#1200 1.0%owfを用い、浴比1:100にて50℃、15分、さらに90℃、20分にて染色を行った。染色後のサンプルは染色むら、サンプルA,B間の染色差を総合的に官能評価した。尚、合格レベルは○以上である。
○○:非常に優れている
○ :優れている
× :均一性に乏しい
実施例1
光学純度98.0%のポリ―L―乳酸と極限粘度1.1のホモ3GTをそれぞれエクストルーダーを用い、それぞれ210℃、250℃にて溶融後、ポンプによる計量を行い、250℃にて図1に示すような海島型複合形態を形成すべく公知の口金に流入させた。複合重量比はポリ乳酸3に対し、3GT7の割合とした。各ポリマーの配管通過時間は、ポリ乳酸が20分、3GTは11分であった。口金から吐出された糸条は、図4に示す装置にて冷却、油剤付与後、2700m/分の速度で55℃に加熱されたホットローラー8に引き取られ、一旦巻取ることなく、4300m/分の速度で150℃に加熱されたホットローラー9に引き回し、延伸、熱セットを行った。さらに、4200m/分にて2個のゴデットローラー11、12を引き回した後、コンタクトロール入口での張力を0.13cN/dtex、コンタクトロール速度4080m/分、パッケージ巻取速度4072m/分、オーバーフィード率1.0020として、外径134mmのコアに巻取り、72dtex−36フィラメントの8島の海島型複合糸からなる外径340mmのチーズ状パッケージを得た。得られたパッケージの形状および複合糸の物性、染色性評価の結果は表1の通り、染色均一性に優れたものであった。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例2
口金を変更し、72dtex−9フィラメントの70島の海島型複合糸とし、コンタクトロール入口での張力を0.15cN/dtex、コンタクトロール速度4070m/分、パッケージ巻取速度4062m/分、オーバーフィード率1.0020として巻き取った。上記以外の条件は実施例1と同様とした。得られたパッケージの形状は良好であり、染色性も良好であった。
【0031】
実施例3
実施例1と同様の口金を使用し、ホットローラー9温度を130℃、コンタクトロール入口での張力を0.23cN/dtex、コンタクトロール速度4090m/分、パッケージ巻取速度4070m/分、オーバーフィード率1.0050として巻き取った。上記以外の条件は実施例1と同様とした。得られたパッケージの形状は実施例1に比較して若干ふくらみ率、経時変化率が大きいものであったが、染色性は良好であった。
【0032】
比較例1
実施例1と同様の口金を使用し、コンタクトロール入口での張力を0.35cN/dtex、コンタクトロール速度4150m/分、パッケージ巻取速度4129m/分、オーバーフィード率1.0050として巻き取った。上記以外の条件は実施例1と同様とした。得られたパッケージはふくらみ率、耳高率ともに大きかった。物性測定の結果、パッケージ内層と外層で沸水収縮率差が大きく、染色の結果、スジ状の欠点や内層、外層での染色差があり、実用に耐えないものであった。
【0033】
比較例2
実施例1と同様の口金を使用し、ホットローラー9温度を100℃、コンタクトロール入口での張力を0.09cN/dtex、コンタクトロール速度4090m/分、パッケージ巻取速度4070m/分、オーバーフィード率1.0050として巻き取った。上記以外の条件は実施例1と同様とした。得られたパッケージはふくらみ率、耳高率ともに大きくなかったが、ふくらみ率の経時変化が大きく、物性測定の結果、パッケージ内層と外層で沸水収縮率差が大きく、染色の結果、スジ状の欠点は合格レベルであるもの、内層、外層での染色差があり、実用に耐えないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】海島型複合繊維の断面の一例
【図2】割繊型複合繊維の断面の一例
【図3】本発明のチーズ状パッケージの一例
【図4】本発明における製造装置の概略図
【符号の説明】
【0035】
1:ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリマーからなる領域
2:ポリ乳酸を主成分とするポリマーからなる領域
3:中空部
4:口金
5:糸条冷却風装置
6:油剤付与装置
7:交絡装置
8:ホットローラー
9:ホットローラー
10:交絡装置
11:ゴデーローラー
12:ゴデーローラー
13:コンタクトロール
14:パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維が巻き付けられ、以下の(1)〜(3)の条件を満たすことを特徴とするチーズ状パッケージ。
(1)チーズ状パッケージのふくらみ率が−5〜5%
(2)チーズ状パッケージの耳高率が0〜5%
(3)ふくらみ率の経時変化率が50%以下
【請求項2】
遅延収縮率が0〜3%の分割型複合繊維からなることを特徴とする請求項1記載のチーズ状パッケージ。
【請求項3】
ポリ乳酸を主成分とするポリエステルAと、ポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルBからなり、ポリエステルAによってポリエステルBが複数のセグメントに分割された分割型複合繊維が巻き付けられたチーズ状パッケージを得るに際し、以下の(1)〜(3)の条件を満たすことを特徴とするチーズ状パッケージの製造方法。
(1)Vc=α×Vp,α=1.001〜1.01
(2)Tc=0.1〜0.3cN/dtex
(3)Vc=3800〜5000m/分
但し、Vpはチーズ状パッケージ上の走行糸条の速度、Vcはパッケージに接するコンタクトロールの速度、Tcはコンタクトロール入口の糸条張力を表す。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−283200(P2006−283200A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101468(P2005−101468)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】