説明

ポリエステル樹脂の製造法

【課題】高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応またはジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル交換反応、およびそれに続く重縮合反応を行うことによりポリエステル樹脂を製造する方法において、生成するポリエステル樹脂100重量部に対し、3つ以上の官能基を有する化合物0.1〜2.0重量部を、ポリエステル樹脂製造過程で添加し、前記エステル化反応またはエステル交換反応の反応触媒として、チタン化合物および/またはスズ化合物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂は、優れた機械特性、耐熱性、成形性およびリサイクル性を有し、機械強度も高く耐薬品性にも優れていることから、成形品、フィルムおよび繊維などに広く利用されており、中でもPBTは、自動車や電気・電子機器のコネクター、リレーおよびスイッチなどの工業用成形品の材料として広く使用されている。
【0003】
一般に、このような用途に用いられるポリエステル樹脂は、直接重合法またはエステル交換法によって製造される。直接重合法は、ジカルボン酸とジオールとの直接エステル化反応によりポリエステル先駆体であるオリゴマーを形成し、次いでそのオリゴマーを常圧または減圧下で重縮合させて製造する方法である。また、エステル交換法は、ジカルボン酸のエステル形成誘導体とジオールとをエステル交換反応させてポリエステル先駆体であるオリゴマーを形成し、次いでそのオリゴマーを常圧または減圧下で重縮合させて製造する方法である。
【0004】
しかしながら、近年、工業用成形品の小型化・軽量化に対する要求がますます高まっており、機械強度のさらなる向上と同時に、溶融時の流動性を改良させることが望まれ、さらにはそのようなポリエステル樹脂を効率的に製造することが望まれていた。
【0005】
従来、3価以上の多価カルボン酸または多価アルコールを含有する溶融張力が0.8〜5.0gの芳香族ポリエステル樹脂が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案で得られるポリエステル樹脂は、増粘してしまい流動性が低下するものしか得ることができなかった。
【0006】
また、3官能以上のモノマー単位を含有する脂肪族ポリエステル樹脂の効率的な製造方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、やや効率的に製造できるようになったものの、高分子量体を得るまでにまだ長時間を要するという課題があり、より反応時間が短縮された効率的な製造方法が求められていた。
【0007】
また、芳香族ポリエステルであるポリブチレンテレフタレートにポリ(アルキレンオキシド)グリコールを共重合成分とする直接重合法による製造方法が提案されており(特許文献3参照。)、さらに、この文献にはエステル形成性の多官能成分を用いてもよいと記載されている。しかしながら、この提案では、エステル形成性の多官能成分の具体的な添加方法や添加条件の開示はなく、ましてや、エステル形成性の多官能成分を共重合することによる効果については一切開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−200038号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2006−328374号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開平6−128364号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、3つ以上の官能基を有する化合物を、ポリエステル樹脂製造過程で添加することにより、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造する方法を見出し、本発明に到達した。
【0011】
本発明のポリエステル樹脂の製造法は、ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分(A−1)とジオール成分(B)とのエステル化反応またはジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)とジオール成分(B)とのエステル交換反応、およびそれに続く重縮合反応を行うことによりポリエステル樹脂を製造する方法において、生成するポリエステル樹脂100重量部に対し、3つ以上の官能基を有する化合物(C)0.1〜2.0重量部を、ポリエステル樹脂製造過程で添加し、前記エステル化反応またはエステル交換反応の反応触媒として、チタン化合物(D−1)および/またはスズ化合物(D−2)を使用することを特徴とするポリエステル樹脂の製造法である。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂の製造法の好ましい態様によれば、前記のジカルボン酸成分(A−1)はテレフタル酸を50モル%以上含み、これを主成分とする芳香族ジカルボン酸であり、前記のジオール成分(B)は1,4−ブタンジオールを50モル%以上含み、これを主成分とする脂肪族ジオールである。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂の製造法の好ましい態様によれば、前記の3つ以上の官能基を有する化合物(C)が、3つ以上の官能基を有する多官能性化合物であって、前記の官能基を有する末端構造の少なくとも一つが、次式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、nは、1〜10の整数で繰り返し単位を表す。)で示される構造である。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂の製造法の好ましい態様によれば、前記のエステル化反応またはエステル交換反応を、圧力13.3〜79.9kPaの減圧下で行い、前記のジオール成分(B)と、前記のジカルボン酸成分(A−1)またはジカルボン酸成分(A−2)のモル比((B)/(A−1)または(B)/(A−2))を1.1〜2.0の範囲で行うことである。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂の製造法の好ましい態様によれば、前記のエステル化反応またはエステル交換反応において、前記のジオール成分(B)を、前記のエステル化反応またはエステル交換反応の開始後、前記の重縮合反応の開始までの段階で追加添加することである。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂の製造法の好ましい態様によれば、前記の3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、前記のエステル化反応またはエステル交換反応の開始時に、前記のジカルボン酸成分(A−1)またはジカルボン酸成分(A−2)と前記のジオール成分(B)を混合したところに添加することである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高分子量を有するポリエステル樹脂を従来技術よりも短い重縮合反応時間で効率的に製造することができ、かつ、従来技術で得られる同等の重量平均分子量を持つポリエステル樹脂よりも250℃の温度における溶融粘度が低く、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明が対象とするポリエステル樹脂は、ジカルボン酸(A−1)またはそのエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)とジオール成分(B)とのエステル化反応またはエステル交換反応、およびそれに続く重縮合反応を行うことによりポリエステル樹脂を製造する方法において、生成するポリエステル樹脂100重量部に対し、3つ以上の官能基を有する化合物(C)0.1〜2.0重量部を、ポリエステル樹脂製造過程で添加し、前記エステル化反応またはエステル交換反応の反応触媒として、チタン化合物(D−1)および/またはスズ化合物(D−2)を使用することにより製造される、主鎖にエステル結合を有するポリエステル樹脂である。
【0022】
本発明で使用されるジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびこれらの混合物からなるジカルボン酸成分(A−1)と、ジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)が挙げられる。
【0023】
上記の芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸および5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。上記の芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステル等が挙げられる。
【0024】
上記の脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。上記の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステル等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、高い流動性を有し、耐熱性および耐薬品性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できる点で、芳香族ジカルボン酸を用いることが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましく使用される。
【0026】
本発明において、ジカルボン酸成分がテレフタル酸である場合には、耐熱性、機械特性および耐薬品性が優れるポリエステル樹脂が製造できるという点から、全ジカルボン酸成分に対してテレフタル酸が主成分で50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましく、100モル%であることが最も好ましい態様である。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分として、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸を1種または2種以上を併用することも好ましい態様である。
【0027】
本発明で使用されるジオール成分(B)としては、芳香族ジオール、脂肪族ジオールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
上記の芳香族ジオールとしては、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびポリオキシエチレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のエチレンオキサイドを付加したビスフェノールA誘導体およびポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびポリオキシプロピレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のプロピレンオキサイドを付加したビスフェノールA誘導体等が挙げられる。
【0029】
上記の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソマンニドおよびイソイデット等が挙げられる。
【0030】
これらのジオールは、単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも、高い流動性を有し、耐熱性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できる点で、脂肪族ジオールを用いることが好ましい。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、特に結晶化特性、成形性、耐熱性および耐薬品性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できる点で、1,4−ブタンジオールが好ましく用いられる。
【0031】
本発明において、ジオール成分(B)が1,4−ブタンジオールである場合には、結晶化特性、成形性、耐熱性および機械特性が優れるポリエステル樹脂が製造できるという点から、全脂肪族ジオールに対して1,4−ブタンジオールが主成分で50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが最も好ましい態様である。1,4−ブタンジオール以外のジオール成分として、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを1種または2種以上を併用することも好ましい態様である。
【0032】
本発明で使用される3つ以上の官能基を有する化合物(C)は、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造するために必要な成分である。3つ以上の官能基を有する化合物(C)としては、分子中に3つ以上の官能基を有するもので、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。また、3つ以上の官能基を有する化合物(C)としては、3官能性化合物、4官能性化合物および5官能性化合物などの3つ以上の官能基を有する化合物が挙げられるが、流動性および機械物性が優れるポリエステル樹脂を製造できるという点で、3官能性化合物または4官能性化合物が好ましく、特に3官能性化合物が好ましく用いられる。
【0033】
本発明で使用される3つ以上の官能基を有する化合物(C)中の官能基としては、水酸基、アルデヒド基、カルボン酸基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基およびシリルエーテル基等の官能基から選択された少なくとも1種類以上の官能基が挙げられる。
【0034】
これらの官能基は、反応性の点から、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、エステル基、アミド基およびシラノール基からなる群から選択されることが好ましく、また重合の制御のしやすさから、水酸基およびカルボン酸基からなる群から選択されることが特に好ましく、3つ以上の官能基を有する化合物(C)中の官能基としては水酸基が最も好ましい。
【0035】
本発明で使用される3つ以上の官能基を有する化合物(C)中の官能基としては、異なる3つ以上の官能基を有していても構わないが、反応性の点から、3つ以上の官能基を有する化合物(C)中の官能基としては、2つ以上の官能基が同一の官能基であることが好ましく、3つ以上の官能基が同一の官能基であることがさらに好ましく、機械特性、耐久性、耐熱性が優れるポリエステル樹脂を製造できるという点で、全ての官能基が同一の官能基であることが特に好ましい態様である。
【0036】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−へキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンおよび1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどの炭素数3〜24の多価アルコールやポリビニルアルコールなどのポリマーが挙げられる。なかでも、流動性および機械物性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、分岐構造を有するグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0037】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がカルボン酸基の場合は、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−2,5,7−トリカルボン酸、ピリジン−2,4,6−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸およびナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸などの多価カルボン酸やアクリル酸およびメタクリル酸などのポリマーが挙げられ、それらの酸無水物も使用することができる。なかでも、流動性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、分岐構造を有するプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸およびその酸無水物が好ましく用いられる。
【0038】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の官能基がアミノ基の場合は、3つ以上の置換基のうち少なくとも1つは1級または2級アミンであることが好ましく、いずれも1級または2級アミンであることがさらに好ましく、いずれも1級アミンであることが特に好ましい態様である。3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がアミノ基の場合は、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,2,3,4−テトラミノブタン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、1,2,3−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4,5−テトラミノベンゼン、1,2,4−トリアミノナフタレン、2,5,7−トリアミノナフタレン、2,4,6−トリアミノピリジン、1,2,7,8−テトラミノナフタレンおよび1,4,5,8−テトラミノナフタレン等が挙げられる。なかでも、流動性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、分岐構造を有する1,2,3−トリアミノプロパン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサンおよび1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましく用いられる。
【0039】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がグリシジル基の場合は、トリグリシジルトリアゾリジン−3,5−ジオン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの単量体や、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメチルメタクリレート、グリシジル基含有アクリルポリマーおよびグリシジル基含有アクリル/スチレンポリマーなどのポリマーが挙げられる。
【0040】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がイソシアネート基の場合は、ノナントリイソシアネート(例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN))、デカントリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネートおよびドデカントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、3官能基以上のオキシカルボン酸の場合は、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸およびヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用することもできる。特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸ならびにそれらの混合物が好ましく用いられる。
【0042】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がエステル基の場合は、上記3つ以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステルや、上記3つ以上カルボン酸基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
【0043】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がアミド基の場合は、上記3つ以上カルボン酸基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
【0044】
また、流動性と機械物性に優れたポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、本発明で用いられる3つ以上の官能基を有する化合物(C)は、アルキレンオキシド単位を一つ以上含むことが好ましい。本発明において、3つ以上の官能基を有する化合物(C)が、3つ以上の官能基を有する多官能性化合物であって、官能基を有する末端構造の少なくとも一つが次式(2)
【0045】
【化2】

【0046】
(式中、Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、nは、1〜10の整数で繰り返し単位を表し、Xは、水酸基、アルデヒド基、カルボン酸基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基およびシリルエーテル基から選択される少なくとも1種の官能基を表す。)で示される構造である化合物であり、式(2)中のRがアルキレン基の場合、式(2)で表される構造はアルキレンオキシド単位を含有する構造を示すものである。
【0047】
特に流動性に優れるポリエステル樹脂が効率的に製造できるという点で、3つ以上の官能基を有する化合物(C)としては、3つ以上の官能基を有する多官能性化合物であって、かつアルキレンオキシド単位を含有する多官能性化合物であることが最も好ましい態様である。
【0048】
本発明において、アルキレンオキシド単位の好ましい例として、炭素原子数1〜4である脂肪族アルキレンオキシド単位が好ましく、具体例としてはメチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位およびイソブチレンオキシド単位などを挙げることができる。本発明においては、特に、流動性、リサイクル性、耐久性、耐熱性および機械物性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点で、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位またはプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが好ましく、また耐加水分解性および靱性(引張破断伸度)に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点で、プロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが好ましい態様である。
【0049】
本発明で用いられる3つ以上の官能基を有する化合物(C)において、3つ以上の官能基を有する化合物(C)に含まれるアルキレンオキシド単位数については、流動性および機械物性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは0.5〜10であり、さらに好ましくは1〜5であり、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分(B)とジカルボン酸成分(A−1)のモル比((B)/(A−1))、または、ジオール成分(B)とジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)のモル比((B)/(A−2))が1.5以上の場合、エステル化反応またはエステル交換反応時における1,4−ブタンジオールの環化による副生テトラヒドロフラン(THF)発生量を低減できるという点から、特に好ましくは1〜3である。
【0050】
アルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシトリメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシテトラメチレングリセリン、(ポリ)オキシメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシトリメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシテトラメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシテトラメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレングルコース、(ポリ)オキシエチレングルコース、(ポリ)オキシトリメチレングルコース、(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングルコースおよび(ポリ)オキシテトラメチレングルコース等を挙げることができる。
【0051】
また、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸および(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0052】
また、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がアミノ基の場合は、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼンおよび(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン等を挙げることができる。
【0053】
また、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がエステル基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステルや、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上カルボン酸基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
【0054】
また、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物(C)の好ましい例として、官能基がアミド基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3つ以上カルボン酸基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
【0055】
流動性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、アルキレンオキシド単位を一つ以上含む3つ以上の官能基を有する化合物(C)の特に好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトールおよび(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトールが挙げられる。
【0056】
また、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸および(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸が挙げられる。
【0057】
また、官能基がアミノ基の場合は、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼンおよび(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼンが挙げられる。
【0058】
本発明において用いられる3つ以上の官能基を有する化合物(C)として、最も好適な化合物は、3つ以上の官能基を有し、水酸基を少なくとも1つ以上有する多官能性化合物であり、流動性および機械特性に優れるポリエステルを効率的に製造できるという点で、水酸基を有する末端構造の少なくとも1つ以上が次式(1)
【0059】
【化3】

【0060】
(式中、Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、nは、1〜10の整数で繰り返し単位を表す。)で示される構造を有する化合物である。
【0061】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)が、水酸基を2つ以上有する多官能性化合物であるとき、3つ以上の官能基を有する化合物(C)中の水酸基を有する末端構造の2つ以上が上記式(1)で表される構造を有する化合物であることがより好ましく、水酸基を3つ以上有する多官能性化合物であるとき、3つ以上の官能基を有する化合物(C)中の水酸基を有する末端構造の3つ以上が上記式(1)で表される構造を有する化合物であることがさらに好ましく、3つ以上の官能基を有する化合物(C)中の水酸基を有する末端構造の全てが上記式(1)で表される構造を有する化合物であることが最も好ましい態様である。
【0062】
本発明においては、流動性、リサイクル性、耐久性および機械物性などが優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点で、上記式(1)のRは、アルキレン基を表し、nが、1〜7の整数を表す官能基であることが好ましく、Rは、アルキレン基を表し、nは、1〜5の整数を表す官能基であることがより好ましく、Rは、アルキレン基を表し、nは、1〜4の整数を表す官能基であることがさらに好ましく、Rは、アルキレン基を表し、nは、1〜3の整数を表す官能基であることが特に好ましい態様である。
【0063】
本発明において、Rが、アルキレン基の場合、上記式(1)で表される構造は、アルキレンオキシド単位を含有する構造を示す。このような構造を有する化合物として、パーストープ社製PolyolR3611、パーストープ社製Polyol3380、パーストープ社製PolyolR3530、パーストープ社製Polyol3165、パーストープ社製Polyol4290、日本乳化剤株式会社製PNT−60U、日本乳化剤株式会社製TMP−F32および株式会社アデカ製T−400等が挙げられる。
【0064】
本発明で用いられる3つ以上の官能基を有する化合物(C)の粘度は、25℃において15000m・Pa以下であることが好ましく、流動性、機械物性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、より好ましくは5000m・Pa以下であり、さらに好ましくは2000m・Pa以下である。粘度の下限は、成形時のブリード性の点から100m・Pa以上であることが好ましい。3つ以上の官能基を有する化合物(C)の25℃における粘度が15000m・Paよりも大きいと、流動性改良効果が不十分なポリエステル樹脂となる傾向を示す。
【0065】
本発明で用いられる3つ以上の官能基を有する化合物(C)の重量平均分子量:Mwは、流動性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点で、好ましくは50〜10000の範囲であり、より好ましくは150〜8000の範囲であり、さらに好ましくは200〜3000の範囲である。本発明において、3つ以上の官能基を有する化合物(C)のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0066】
本発明において、3つ以上の官能基を有する化合物(C)の添加量は、生成するポリエステル樹脂100重量部に対して0.1〜2.0重量部の範囲であることが必須である。流動性と機械物性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造することができ、また、反応制御のしやすさから、その添加量は、好ましくは0.5〜2重量部の範囲であり、より好ましくは0.5〜1.5重量部の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜1.0重量部の範囲である。添加量が0.1〜2.0重量部の範囲より少ないと、流動性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造することができず、添加量がこの範囲より多い場合は、流動性に優れるポリエステル樹脂を製造することができず、場合によっては、ゲル化により反応の制御が難しくなり、ポリエステル樹脂を得ることができないこともある。
【0067】
本発明において、高い流動性を有し、結晶化特性、成形性、耐熱性および機械特性に優れるポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、ジカルボン酸成分(A−1)がテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸であり、ジオール成分(B)が1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールであり、3つ以上の官能基を有する化合物(C)が3つ以上の水酸基を有する多官能性化合物であって、かつ、アルキレンオキシド単位を含有する多官能性化合物であることが好ましい。
【0068】
本発明においては、エステル化反応時またはエステル交換反応時に、反応触媒としてチタン化合物(D−1)および/またはスズ化合物(D−2)を使用することを特徴とする。反応触媒を使用することによって、エステル化反応またはエステル交換反応をより効果的に進めることができる。本発明においては、反応性向上の点から、チタン化合物(D−1)およびスズ化合物(D−2)の混合触媒を用いることが好ましい。
【0069】
本発明において、エステル化反応時またはエステル交換反応時に反応触媒として使用されるチタン化合物(D−1)は、式(RO)Ti(OR4−n(ただし、式中、RとRは炭素数1〜l0の脂肪族、脂環族または芳香族の炭化水素基を表し、nは0〜4の数字(小数を含む)を表す。)で示されるチタン酸エステルおよび縮合物であることが好ましい。
【0070】
本発明で用いられるチタン化合物(D−1)の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステルおよびトリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどが挙げられるが、これらのなかでも、ポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、チタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルが好ましく、特にチタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが好ましく使用される。
【0071】
これらのチタン化合物(D−1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0072】
これらのチタン化合物(D−1)の添加量は、ポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、生成するポリエステル樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.3重量部の範囲であり、より好ましくは0.02〜0.2重量部の範囲である。
【0073】
本発明において、エステル化反応時またはエステル交換反応時に反応触媒として使用されるスズ化合物(D−2)は、次式(3)
【0074】
【化4】

【0075】
(ただし、式中、Rは炭素数1〜15のアルキル基またはアリール基、X1〜X4は炭素数1〜15のアルキル基、アリール基、アリルオキシ基、シクロヘキシル基、ヒドロキシ基、ハロゲンなどを含む1価の基を表し、同一であっても異なっていてもよい。また、X5は硫黄または酸素原子を表す。)で示される化合物およびその縮合体が好ましく使用される。
【0076】
このスズ化合物(D−2)の具体例としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズオキサイド、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキサイドなどが挙げられる。これらのなかでも、ポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、特にモノアルキルスズ化合物が好ましく使用される。
【0077】
また、他のスズ化合物(D−2)としては、スタンノン酸も用いることができ、この場合には、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸およびブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸が好ましく使用される。
【0078】
これらのスズ化合物(D−2)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0079】
これらのスズ化合物(D−2)の添加量は、ポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、生成するポリエステル樹脂100重量部に対して、好ましくは0.02〜0.3重量部の範囲であり、より好ましくは0.03〜0.2重量部の範囲である。
【0080】
本発明において、ポリエステル樹脂を製造する際、直接重合法を用いる場合には、ジカルボン酸とジオールとの直接エステル化反応を行ってオリゴマーとし、次いで重縮合反応を行うことによりポリエステル樹脂を製造する。また、エステル交換法を用いる場合には、ジカルボン酸のエステル形成誘導体とジオールとのエステル交換反応を行ってオリゴマーとし、次いで重縮合反応を行うことによりポリエステル樹脂を製造する。
【0081】
本発明において、エステル化反応またはエステル交換反応は、圧力が通常101kPa以下であり、ポリエステル樹脂を効率的に製造できるという点から、圧力は好ましくは13.3〜79.9kPaの範囲であり、さらに好ましくは13.3〜53.3kPaの範囲となる減圧下で行う。
【0082】
エステル化反応またはエステル交換反応の反応温度は、好ましくは140〜290℃の範囲であり、さらに好ましくは180〜280℃の範囲である。また、エステル化反応後またはエステル交換反応後のオリゴマーの反応率は97%以上であることが好ましい。
【0083】
本発明において、ジオール成分(B)とジカルボン酸成分(A−1)のモル比((B)/(A−1))、または、ジオール成分(B)とジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)のモル比((B)/(A−2))は、好ましくは1.1〜6.0の範囲内であり、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造することができるという点で、より好ましくは1.1〜3.0の範囲内であり、更に好ましくは1.1〜2.0の範囲内であり、重縮合反応時間短縮効果の点から、特に1.1〜1.5の範囲内であることが好ましい。
【0084】
本発明では、エステル化反応またはエステル交換反応において、ジオール成分(B)を追加添加することが好ましい態様として含まれる。
【0085】
本発明におけるエステル化反応またはエステル交換反応において、反応を効率的に進行させるという点から、ジオール成分(B)の追加添加を行うことが好ましく、エステル化反応またはエステル交換反応の終了後、重縮合反応の開始前に行ってもよいが、重合時間短縮の点から、エステル化反応またはエステル交換反応の開始後、重縮合反応の開始までのいずれかの段階で追加添加することがより好ましい態様である。ジオール成分(B)の追加添加は、エステル化反応またはエステル交換反応の開始後、重縮合反応開始までのいずれか1ヶ所または複数ヶ所で行ってもよいが、操作性の点から、ジオール成分(B)の追加添加は、エステル化反応またはエステル交換反応の開始後、重縮合反応の開始までのいずれか1ヶ所にて追加添加を行うことが好ましい。
【0086】
本発明において、ジオール成分(B)の追加添加を行うに際し、エステル化反応またはエステル交換反応の開始時のジオール成分(B)と、ジカルボン酸成分(A−1)またはジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)のモル比((B)/(A−1)または(B)/(A−2))は、好ましくは0.7〜1.1であり、さらに好ましくは0.9〜1.0の範囲である。
【0087】
本発明において、ジオール成分(B)の追加添加をエステル化反応段階またはエステル交換反応段階に行う場合には、ジオール成分(B)の追加添加後、重縮合反応の開始までの時間は、反応を効率的に進行させるという点から、30〜150分とすることが好ましく、その時間はより好ましくは60〜150分であり、さらに好ましくは60〜120分であり、特に好ましくは60〜90分である。
【0088】
本発明における3つ以上の官能基を有する化合物(C)の添加時期は、ポリエステル樹脂製造過程である。ポリエステル樹脂製造過程での具体的な添加時期としては、エステル化反応の開始またはエステル交換反応の開始から重縮合反応の終了直前までのいずれの段階で添加してもよいが、高い流動性を有するポリエステル樹脂が得られるという点で、添加時期は、エステル化反応前またはエステル交換反応前から重縮合反応の開始までのいずれかの段階で添加することが好ましく、作業性の点で、添加時期として、エステル化反応またはエステル交換反応の開始時に、ジカルボン酸成分(A−1)またはジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)とジオール成分(B)を混合したところに添加することが最も好ましい態様である。
【0089】
このように、本発明において、エステル化反応の開始またはエステル交換反応の開始とは、ジカルボン酸成分やジオール成分など反応成分を混合し反応を準備している段階、すなわち、エステル化反応前またはエステル交換反応前の反応開始時を含む意味で用いられる。また、3つ以上の官能基を有する化合物(C)の添加は、1回または複数回で行ってもよいが、高い流動性を有するポリエステル樹脂が得られるという点から、エステル化反応の開始またはエステル交換反応の開始から重縮合反応の終了直前までの1回で添加することが好ましい。
【0090】
エステル化反応またはエステル交換反応から得られたオリゴマーは、次いで重縮合反応に供されるが、その反応では、回分法または連続法の通常のポリエステル樹脂の製造に用いられる重縮合条件をそのまま適用することができる。例えば、反応温度を230〜260℃、好ましくは240〜255℃の範囲とし、圧力を667Pa以下、好ましくは133Pa以下の減圧下とした条件で行うことが好ましい態様である。
【0091】
本発明における、エステル化反応後またはエステル交換反応後の重縮合反応においては、この重縮合反応を効果的に進める上で、必要な触媒を別途添加し使用することができる。例えば、三酸化アンチモンや酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物、前記のチタン化合物(D−1)および前記のスズ化合物(D−2)などを、生成するポリエステル樹脂100重量部に対して0.01〜0.15重量部の範囲で添加することが好ましく、特にチタン化合物を使用することが好ましい。
【0092】
本発明の方法によりポリエステル樹脂を製造するに際して、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、染料および顔料を含む着色剤などの1種または2種以上を、エステル化反応時またはエステル交換反応時、あるいは、重縮合反応時に添加し、ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0093】
本発明においては、特に重縮合反応時に、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、リン酸トリアミド、リン酸モノアンモニウム、リン酸トリメチル、リン酸ジメチル、リン酸ジフェニル、リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニルおよびホスホン酸ジメチルフェニルなどから選ばれたリン化合物を添加すると、生成するポリエステル樹脂の色調が著しく改善されるという好ましい効果が得られる。
【0094】
本発明の製造法により得られるポリエステル樹脂は、高い流動性を有するポリエステル樹脂であり、電気部品や自動車部品などの成形材料の他、フィルム用、繊維用およびブローボトル用としても広く用いることができる。
【実施例】
【0095】
次に、実施例により本発明のポリエステル樹脂の製造法を具体的に説明する。本発明で用いた測定方法および判定方法を、次に示す。
【0096】
(1)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP−806MとShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速1.0mL/minとし、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入した。この重量平均分子量の値が大きい程、優れた機械強度を有することを示す。
【0097】
(2)溶融粘度
東洋精機製キャピログラフ1C型を用いて、温度250℃、剪断速度100(/sec)〜3700(/sec)、オリフィス径1mmの条件で溶融粘度を測定した。この溶融粘度の値が小さい程、高い流動性を有することを示す。
【0098】
[実施例1]
エステル化反応におけるジオール成分(B)とジカルボン酸成分(A−1)のモル比((B)/(A−1))を1.2とし、ジカルボン酸成分(A)としてテレフタル酸:780g、ジオール成分(B)として1,4−ブタンジオール:390g、3つ以上の官能基を有する化合物(C)として、3つの水酸基を有するポリオキシプロピレントリメチロールプロパン(分子量310、1官能基あたりのアルキレンオキシド単位数約1、パーストープ社製PolyolR3530):10.6g、エステル化反応触媒としてチタン化合物(D−1)(テトラ−n−ブチルチタネート):0.47g、およびエステル化反応触媒としてスズ化合物(D−2)(モノブチルヒドロキシスズオキサイド):0.45gを、精留塔の付いた反応器に仕込み、温度190℃、圧力60kPaの減圧下にエステル化反応を開始した後、徐々に昇温および減圧し、最終的に温度230℃、圧力30kPaの条件下でエステル化反応を245分間行った。1,4−ブタンジオールの追加添加量は120gであり、添加終了後90分でエステル化反応が終了した。得られた反応物にリン酸:0.18g添加し、その後、重縮合反応触媒としてのチタン化合物(D−1)(テトラ−n−ブチルチタネート):5.2gを添加し、温度250℃、圧力100Paの条件で重縮合反応を80分間行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0099】
[実施例2]
実施例1における重縮合反応時間を100分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0100】
[実施例3]
実施例2における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を5.2gに変更したこと以外は、実施例2と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0101】
[実施例4]
実施例3における重縮合反応時間を140分間に変更したこと以外は、実施例3と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例5]
実施例1におけるジオール成分(B)とジカルボン酸成分(A)のモル比((B)/(A−1))を1.5に変更し、重縮合反応時間を115分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0102】
[実施例6]
実施例5におけるエステル化反応での減圧条件を常圧に変更し、エステル化反応時間を270分とし、重縮合反応時間を150分間に変更したこと以外は、実施例5と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0103】
[実施例7]
実施例1における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)を添加する時期を、重縮合反応前(エステル化反応後)に変更し、重縮合反応時間を140分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0104】
[実施例8]
実施例1における3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、3つの水酸基を有するシグマ−アルドリッチ社製トリメチロールプロパンに変更し、重縮合反応時間を140分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0105】
[実施例9]
実施例6におけるエステル化反応触媒としてチタン化合物(D−1)のみを添加し、エステル化反応時間を270分間とし、重縮合反応時間を160分間に変更したこと以外は、実施例6と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0106】
[実施例10]
実施例9におけるジオール成分(B)とジカルボン酸成分(A)のモル比((B)/(A−1))を2.0に変更し、3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を2.1gに変更し、重縮合反応時間を175分間に変更したこと以外は、実施例9と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0107】
[実施例11]
実施例10における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を5.2gに変更し、重縮合反応時間を165分間に変更したこと以外は、実施例10と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0108】
[実施例12]
実施例11における重縮合反応時間を220分間に変更したこと以外は、実施例11と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0109】
[実施例13]
実施例10における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を10.5gに変更し、重縮合反応時間を200分間に変更したこと以外は、実施例10と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0110】
[実施例14]
実施例10における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を15.8gに変更し、重縮合反応時間を190分間に変更したこと以外は、実施例10と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0111】
[実施例15]
実施例10における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を21.0gに変更し、重縮合反応時間を180分間に変更したこと以外は、実施例10と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0112】
[実施例16]
実施例15における3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、4つの水酸基を有するポリオキシプロピレンペンタエリストール(分子量600、1官能基あたりのアルキレンオキシド単位数約2、パーストープ社製Polyol4360)に変更し、重縮合反応時間を130分間に変更したこと以外は、実施例15と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0113】
[実施例17]
実施例13における3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、トリメチロールプロパンに変更し、重縮合反応時間を225分間に変更したこと以外は、実施例13と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0114】
[実施例18]
実施例13における3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、3つの水酸基を有するポリオキシプロピレングリセリン(分子量770、1官能基あたりのアルキレンオキシド単位数約4、ADEKA社製G−700)に変更し、重縮合反応時間を225分間に変更したこと以外は、実施例13と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0115】
[実施例19]
実施例13における3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、3つのカルボン酸基を有する東京化成工業株式会社製トリメリット酸に変更し、重縮合反応時間を220分間に変更したこと以外は、実施例13と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0116】
[実施例20]
実施例13における3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、3つのアミノ基を有するトリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン(分子量470、1官能基あたりのアルキレンオキシド単位数2、三井化学ファイン株式会社製ジェファーミン“T−403”)に変更し、重縮合反応時間を250分間に変更したこと以外は、実施例13と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0117】
[比較例1]
実施例1における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)を添加せず、重縮合反応時間を150分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0118】
[比較例2]
実施例1における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を0.5gに変更し、重縮合反応時間を150分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0119】
[比較例3]
実施例1における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を53gに変更したこと以外は、実施例1と同様に行ったが、ゲル化が発生しポリエステル樹脂を得ることができなかった。
【0120】
[比較例4]
実施例1における3つ以上の官能基を有する化合物(C)をトリメチロールプロパンに変更し、3つ以上の官能基を有する化合物(C)の添加量を0.5gに変更し、重縮合反応時間を150分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0121】
[比較例5]
実施例1における3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、2つの水酸基を有する東京化成工業株式会社製ポリエチレングリコール200に変更し、重縮合反応時間を150分間に変更したこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0122】
[比較例6]
比較例1で得られたポリエステル樹脂について固相重合を行った。固相重合の条件は、温度200℃、時間1440分間(24時間)、窒素気流下で実施した。
【0123】
[比較例7]
実施例9における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)の添加量を0.5gに変更し、重縮合反応時間を230分間に変更したこと以外は、実施例9と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
[比較例8]
比較例7における3つ以上の官能基を有する化合物(C)をトリメチロールプロパンに変更し、重縮合反応時間を250分間に変更したこと以外は、比較例7と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0124】
[比較例9]
実施例10における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン)を添加せず、重縮合反応時間を190分間に変更したこと以外は、実施例10と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0125】
[比較例10]
実施例16における3つ以上の官能基を有する化合物(C)(ポリオキシプロピレンペンタエリストール)の添加量を23.3gに変更し、重縮合反応時間を130分間に変更したこと以外は、実施例16と同様に行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0126】
得られたポリエステル樹脂について、エステル化反応時間、重縮合反応時間、固相重合時間、ポリエステル樹脂の分子量特性および溶融粘度特性を、まとめて表1、2(実施例1〜8および比較例1〜6)と表3、4(実施例9〜20および比較例7〜10)に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
上記の実施例および比較例の結果から、本発明において、高い流動性を有するポリエステル樹脂を効率的に製造できることがわかる。すなわち、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分と、ジオール成分とのエステル化反応またはエステル交換反応、およびそれに続く重縮合反応を行うことによりポリエステル樹脂を製造するに際し、生成するポリエステル樹脂100重量部に対し、3つ以上の官能基を有する化合物0.1〜2重量部を、ポリエステル樹脂製造過程で添加し、エステル化反応またはエステル交換反応の反応触媒として、チタン化合物および/またはスズ化合物を使用するポリエステル樹脂の製造法を採用することにより、重縮合反応時間が短くなっており効率的に製造することができ、さらに得られるポリエステル樹脂について、同じ分子量を有するにも関わらず、溶融粘度が低くなることを示しており、高い流動性を有するポリエステル樹脂を得ることができた。
【0132】
さらに、本発明の好ましい態様としては、次のことがわかる。
【0133】
実施例1〜実施例4と比較例1〜比較例3および実施例10〜実施例16と比較例9と比較例10の結果から、3つ以上の官能基を有する化合物の添加量は、溶融粘度が低くなり、流動性に優れるポリエステル樹脂が得られるという点で、生成するポリエステル樹脂100重量部に対して0.5〜1.5重量部の範囲で配合することが好ましく、0.5〜1.0重量部の範囲で添加することがさらに好ましいことがわかる。
【0134】
実施例2と実施例7の結果から、3つ以上の官能基を有する化合物の添加時期として、重合時間が短縮されるという点で、エステル化反応またはエステル交換反応の開始時に、ジカルボン酸成分およびジオール成分を混合したところに添加することが最も好ましいことがわかる。
【0135】
実施例6と実施例9の結果から、重合時間が短縮されるという点で、エステル化反応時またはエステル交換反応時に、反応触媒としてチタン化合物およびスズ化合物の混合触媒を用いることが好ましいことがわかる。
【0136】
実施例5と実施例6の結果から、エステル化反応またはエステル交換反応は、重合時間が短縮されるという点で、圧力が常圧以下の減圧下で行うことが好ましいことがわかる。
【0137】
実施例2と実施例5および実施例9と実施例13の結果から、ジオール成分とジカルボン酸成分のモル比は、重合時間が短縮されるという点で、特に1.1〜1.5の範囲内であることが好ましいことがわかる。
【0138】
実施例15と実施例16の結果から、3つ以上の官能基を有する化合物として、流動性に優れるポリエステル樹脂が得られるという点で、官能基数が3であることが特に好ましいことがわかる。
【0139】
実施例13と実施例18〜実施例20の結果から、3つ以上の官能基を有する化合物として、重合時間が短縮され、流動性に優れるポリエステル樹脂が得られるという点で、官能基の種類として水酸基が特に好ましいことがわかる。
【0140】
実施例13と実施例17と実施例18の結果から、3つ以上の官能基を有する化合物として、エステル化反応時の副反応である、1,4ブタンジオールの環化によるテトラヒドロフラン(THF)発生量を減らすことができるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数が1〜3の範囲であることが特に好ましいことがわかる。
【0141】
また、実施例1と比較例1および実施例2と比較例6の結果から、本発明で使用される3つ以上の官能基を有する化合物は、高い流動性を有するポリエステル樹脂を短い反応時間で効率的に製造するために必要な成分であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分(A−1)とジオール成分(B)とのエステル化反応またはジカルボン酸のエステル形成誘導体からなるジカルボン酸成分(A−2)とジオール成分(B)とのエステル交換反応、およびそれに続く重縮合反応を行うことによりポリエステル樹脂を製造する方法において、生成するポリエステル樹脂100重量部に対し、3つ以上の官能基を有する化合物(C)0.1〜2.0重量部を、ポリエステル樹脂製造過程で添加し、前記エステル化反応またはエステル交換反応の反応触媒として、チタン化合物(D−1)および/またはスズ化合物(D−2)を使用することを特徴とするポリエステル樹脂の製造法。
【請求項2】
ジカルボン酸成分(A−1)が、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂の製造法。
【請求項3】
ジオール成分(B)が、1,4−ブタンジオールを主成分とする脂肪族ジオールであることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル樹脂の製造法。
【請求項4】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)が、3つ以上の官能基を有する多官能性化合物であって、前記官能基を有する末端構造の少なくとも一つが、次式(1)
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、nは、1〜10の整数で繰り返し単位を表す。)で示される構造である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造法。
【請求項5】
エステル化反応またはエステル交換反応を、圧力13.3〜79.9kPaの減圧下で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造法。
【請求項6】
エステル化反応またはエステル交換反応を、ジオール成分(B)と、ジカルボン酸成分(A−1)またはジカルボン酸成分(A−2)のモル比((B)/(A−1)または(B)/(A−2))を、1.1〜2.0の範囲で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造法。
【請求項7】
エステル化反応またはエステル交換反応において、ジオール成分(B)を前記エステル化反応またはエステル交換反応の開始後、重縮合反応の開始までの段階で追加添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造法。
【請求項8】
3つ以上の官能基を有する化合物(C)を、エステル化反応またはエステル交換反応の開始時に、ジカルボン酸成分(A−1)またはジカルボン酸成分(A−2)とジオール成分(B)を混合したところに添加することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造法。

【公開番号】特開2011−84737(P2011−84737A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206490(P2010−206490)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】