説明

ポリエステル環状オリゴマーを製造するための連続バイオリアクター方法

環状エステルオリゴマーの直鎖状エステルオリゴマーからの酵素触媒製造プロセスのための連続方法。この方法には、直線または再循環反応器を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を触媒として、直鎖状エステルオリゴマーから環状エステルオリゴマーを連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状エステルオリゴマー(CEO)は、古くから知られている;例えば米国特許公報(特許文献1)を参照されたい。それらは、多くの直鎖状ポリエステル中に、様々な、通常はわずかな量で存在することが知られており、そのような直鎖状ポリエステルから分離されてきた;例えば(非特許文献1)および(非特許文献2)を参照されたい。それらは、低粘度の液体であることが多く、開環重合によって、より高分子量の直鎖状ポリエステルに重合できることが以前から知られていた;例えば米国特許公報(特許文献2)および米国特許公報(特許文献3)並びにそれらの中で引用されている文献を参照されたい。この比較的低粘度の液体から高分子量のポリマーを容易に生成する性質が、これらのCEOを、反応射出成形方式に用いる材料として魅力のあるものにしている。この反応射出成形方式は、型の中で低粘度の材料を高分子量ポリマーに転換して最終形状の成形品を得るものである。
【0003】
しかしながら、そのようなCEOは、例えば、非常に高い希釈条件を必要とすること、および/または、ジオールおよび生成するHClと反応させる塩基とともに、ハロゲン化ジアシルなどの比較的高価な出発物質を使用することから、調製は困難かつ高価であった;例えば、米国特許公報(特許文献2)を参照されたい。多くの場合、こうした製造コストの高さのためにCEOの商業的な使用が妨げられてきており、それ故、低コストのCEOの製造方法が大きな関心事となっている。
【0004】
最近、(トランス)エステル化反応を触媒する酵素を使用して、ジカルボン酸またはそれらのジエステルとジオールからポリエステルを製造できることが見出された;例えば(非特許文献3)、(非特許文献4)および(非特許文献5)を参照されたい。ある場合には、そうした反応で少量のCEO副生成物も生成されることが報告されている;例えば(非特許文献6)を参照されたい。そのような反応において存在するCEOの量に関して報告した研究もある;例えば(非特許文献7)を参照されたい。後者の研究では、酵素触媒反応のCEOの生成は、非酵素触媒反応においてCEOの生成を支配する規則と同タイプの規則に従い、また、反応を非常に高い希釈条件で行わないと、酵素触媒反応では非常に僅かのCEOしか生成できないと結論している。これらすべての文献に記載された製造方法では、重合生成物をさらに高分子量とするために、トランスエステル化/エステル化の副生成物であるアルコールまたは水を除去(通常、不活性ガスの曝気により)している。
【0005】
最近の論文、(非特許文献8)には、ジメチルテレフタレートとジエチレングリコールまたはビス(2−ヒドロキシエチル)チオエーテルとの酵素触媒反応により、2量体環状エステルの本質的に完全な生成がなされ、一方で、1,5−ペンタンジオールの使用により、いくらかの直鎖状ポリエステルとともに、比較的高い収率で2量体環状エステルを得ることができる方法が記載されている。ジエチレングリコールとビス(2−ヒドロキシエチル)チオエーテルにより、高収率で環状エステルが得られるのは、2量体環状エステルの生成に有利なπ−スタッキングタイプの近接相互作用によるものである。
【0006】
しかしながら、当業者にはよく知られていることであるが、(非特許文献9)に教示されているように、熱力学的平衡から予測されるより多くの量のCEOを、ジカルボン酸とジオールとの反応により連続プロセスで製造する方法は、この技術分野では知られていなかった。
【0007】
驚いたことに、本発明の連続プロセスを使用して、直鎖状エステルオリゴマー(LEO’S)を非水性媒体中でエステル化/トランスエステル化酵素触媒の存在下に反応させると、かなりの量の環状エステルオリゴマーが得られることがわかった。
【0008】
【特許文献1】米国特許第2,020,298号明細書
【特許文献2】米国特許第5,466,744号明細書
【特許文献3】米国特許第5,661,214号明細書
【非特許文献1】A・G・ハリソン(A.G.Harisson)、「アナリシス・オブ・サイクリック・オリゴマーズ・オブ・ポリ(エチレンテレフタレート)・バイ・リキッド・クロマトグラフィー/マス・スペクトロメトリー(Analysis of cyclic oligomers of poly(ethylene terephthalate) by liquid chromatography/mass spectrometry)」、Polymer、1997年、第38巻、第10号、p.2549−2555
【非特許文献2】G・ウイック(G.Wick)、エッチ・ジートラー(H.Zeitler)、「サイクリック・オリゴマーズ・イン・ポリエステルズ・フロム・ジオールズ・アンド・アロマティック・ジカルボキシリック・アシッヅ(Cyclic Oligomers in polyesters from diols and aromatic dicarboxylic acids)」、Angewandte Makromolekulare Chemie、1983年、第112巻、p.59−94
【非特許文献3】X・Y・ウー(X.Y.Wu)ら、「Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology」、1998年、第20巻、p.328−332
【非特許文献4】E・M・アンダーソン(E.M.Anderson)ら、「Biocatalysis and Biotransformation」、1998年、第16巻、p.181−204(1998年)
【非特許文献5】H・G・パーク(H.G.Park)ら、」Biocatalysis」、1994年、第11巻、p.263−271
【非特許文献6】G・メゾウル(G.Mezoul)ら、「Polymer Bulletin」、1996年、第36巻、p.541−548
【非特許文献7】C・バーケイン(C.Berkane)ら、「Macromolecules」、1997年、第30巻、p.7729−7734
【非特許文献8】A・ラバレッテ(A.Lavalette)ら、「Biomacromolecules」、2002年、第3巻、p.225−228
【非特許文献9】H・ジェイコブソン(H.Jacobson)およびW・H・ストックメイヤー(W.H.Stockmeyer)、「インターモレキュラー・リアクション・アンド・ポリコンデンセイションI.ザ・セオリー・オブ・リニアー・システムズ(Intermolecular Reaction and Polycondensation I.The Theory of Linear Systems)」、The Journal of Chemical Physics、1950年12月、第18巻、第12号
【非特許文献10】F・ダブリュー・ビルメーヤー(F.W.Billmeyer)、「Textbook of Plymer Science」、第3版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1984年、pp.25−48
【非特許文献11】柴田充弘ら、「デポリメリゼーション・オブ・ポリ(ブチレンズ・テレフタレート)・ユージング・ハイ−テンプリチャー・アンド・ハイ−プレッシャー・メタノール(Depolymerization of poly(butylenes terephthalate) using high−temperature and high−pressure methanol)」、J.Applied Polymer Science、2000年、第77巻、第14号、p.3228−3233
【非特許文献12】クマー(Kumar)、ラジェシュ(Rajesh)ら、「エンザイマティック・シンセシス・オブ・マルチ−コンポーネント・コポリマーズ・アンド・ゼア・ストラクチュラル・キャラクタリゼーション(Enzymatic Synthesis of multi−component copolymers and their structural characterization)」、Polymer Preprints、アメリカン・ケミカル・ソサエティ、ディビジョン・オブ・ポリマー・ケミストリー(American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry)、2003年、第44巻、第1号、p.998−999
【非特許文献13】R・J・カズラウカス(R.J.Kazlaukas)ら、「バイオトランスフォーメーション・ウィズ・リパーゼズ(Biotransformation with Lipases)」、「Biotechnology」、(独国)、第2版、第8a巻、エッチ・ジェイ・レーム(H.J.Rehm)ら編、ウィリー−ブイシーエッチ(Wiley−VCH)、バインハイム(Weinheim)、1998年、p.40−191
【非特許文献14】G・E・ビッカースタッフ(G.E.Bickerstaff)編、「Immobilization of Enzymes and Cells」、フマナ・プレス(Humana Press)、トトワ(Totowa)、ニュージャージー州(NJ)、1997年
【非特許文献15】J・アンダーソン(J.Anderson)、ティー・バイルン(T.Byrne)、ケイ・ジェイ・ウェルフェル(K.J.Woelfel)、J・イー・ミーニー(J.E.Meany)、G・T・スパイリディス(G.T.Spyridis)、ワイ・ポッカー(Y.Pocker)、「Journal of Chemical Education」、1994年、第71巻、p.715−718
【非特許文献16】T・フルタニ(T.Furutani)、R・シュ(R.Su)、エッチ・オオシマ(H.Ooshima)、J・カトウ(J.Kato)、「Enzyme and Microbial Technology」、1995年、第17巻、p.1067−1072
【非特許文献17】J・ツォウ(J.Zhou)、R・J・アイン(R.J.Ain)、C・M・リリー(C.M.Riley)、R・L・ショーウェン(R.L.Schowen)、「Analytical Biochemistry」、1995年、第231巻、p.265−267
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(i)溶媒に溶解した直鎖状エステルオリゴマーを酵素と接触させて、環状エステルオリゴマーに富む溶液を生成する工程、および
(ii)その溶液から環状エステルオリゴマーを分離する工程
を連続的に行うことを含む環状エステルオリゴマーの製造方法が、ここに開示され、特許請求される。
この方法は、再循環または直線反応器を用いて行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書中、ある決められた用語が使用されており、そのいくつかを下記に定義する。
【0011】
「重合度」(DP)は、オリゴマー鎖における繰り返し単位の数を意味する。ジカルボン酸とジオールとからのポリエステルの繰り返し単位とは、1つのジカルボン酸由来の単位と1つのジオール由来の単位とを有するユニットのことをいう。ヒドロキシカルボン酸の繰り返し単位は、単一のヒドロキシカルボン酸分子から誘導される。
【0012】
本明細書で使用される際、「ジカルボン酸」という用語は、2つのカルボキシル基を有する有機化合物であり、ジカルボン酸もしくはジエステルなどのその簡単な誘導体、または、ジカルボン酸のハーフアシッドエステルから誘導される化合物、あるいは、それらの混合物を含む。ジカルボン酸は、本明細書で示す方法に記載された各種の反応を実質的に阻害することのないアルキル、ハロゲン、エーテル、チオエーテルおよびオキソ(ケト)などの1つまたは複数の官能基で置換されていてもよい。ジカルボン酸は、その構造の一部に芳香環を含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸もまた、使用することができる。「ヒドロキシカルボン酸」という用語は、ヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する有機化合物を意味し、カルボキシル基がカルボン酸もしくはエステルなどのその簡単な誘導体である化合物を含む。
【0013】
「ジオール」は、2つのヒドロキシ基を有する有機化合物またはその簡単な誘導体を意味する。ジオールは、本明細書で示す方法に記載された各種の反応を実質的に阻害することのないハロゲン、エーテル、チオエーテルおよびオキソ(ケト)などの1つまたは複数の官能基で置換されていてもよい。ジオールは、その構造の一部に芳香環を含んでいてもよい。
【0014】
「モノマー」は、上に定義したようなジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸またはジオールを意味する。
【0015】
「環状エステルオリゴマー」(CEO)は、少なくとも1つのジカルボン酸と少なくとも1つのジオールから、少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸から、または、少なくとも1つのジカルボン酸、少なくとも1つのジオールおよび少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸の組み合わせから誘導される環状の化合物を意味する。CEO中の各種のジオール、ジカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸の部分はエステル基によって結合している。
【0016】
本明細書における「二量体」CEOは、ジカルボン酸およびジオールから誘導され、CEO中に2つのジカルボン酸部分と2つのジオール部分が存在する化合物を意味するが、他方、二量体CEOがヒドロキシカルボン酸から生成されるときは、それは2つのヒドロキシカルボン酸分子から誘導される。三量体、四量体などのCEOは同様に定義される。CEOは、2つ以上の異なるジカルボン酸、2つ以上の異なるジオールおよび/または2つ以上のヒドロキシカルボン酸から調製することができる。CEOは、約1〜約20、好ましくは約1〜約10、より好ましくは約1〜約5の重合度(DP)を有することが好ましい。
【0017】
「直鎖状エステルオリゴマー」(LEO)は、本明細書では、1つまたは複数のジカルボン酸と1つまたは複数のジオールから、1つまたは複数のヒドロキシカルボン酸から、あるいは、1つまたは複数のジカルボン酸、1つまたは複数のジオールおよび1つまたは複数のヒドロキシカルボン酸の組み合わせから誘導される直鎖状の化合物を意味する。LEOは、約1〜約20、好ましくは約1〜約10、より好ましくは約1〜約5の重合度(DP)を有することが好ましい。
【0018】
LEOは、溶融重合;溶液重合;酵素触媒重合;ポリエステルの熱解重合、ポリエステルのアルコリシス(例えばメタノリシス)や加水分解などのポリエステルの解重合;または当業者に知られる他の方法で生成することができる。溶融重合の使用例としては、(非特許文献10)を参照されたい。解重合の使用例としては、(非特許文献11)を参照されたい。酵素触媒の使用例としては、(非特許文献12)を参照されたい。
【0019】
「直鎖状エステルオリゴマー」(LEO)という用語は、また、1つまたは複数のジカルボン酸と1つまたは複数のジオールから、1つまたは複数のヒドロキシカルボン酸から、または、1つまたは複数のジカルボン酸、1つまたは複数のジオールおよび1つまたは複数のヒドロキシカルボン酸の組み合わせから誘導される少なくとも1つの直鎖状化合物と、LEOがトランスエステル化触媒の存在下に重合または解重合により生成されるとき、自然に存在するCEOとの両方を含む混合物を包含する。自然に存在するCEOの量は、(非特許文献9)に教示されているように、熱力学平衡から推測される。
【0020】
本発明で使用するLEOを誘導するための、ジオールの好ましい1つのタイプは、各ヒドロキシル基が異なるアルキル炭素原子と結合している脂肪族ジオールである。他の好ましいジオールとしては、一般式がHOCH(CRCHOHであるジオールが挙げられる。ここでRおよびRは、それぞれ独立に水素またはアルキル基であり、nは0〜10の整数であるが、全てのRおよびRが水素であることが好ましく、特にnが0または1〜4の整数であることが好ましく、nが1または2であることがより好ましい。一般式がHO((CH)Hであるジオールもまた好ましい。ここで、pは2〜15、rは1〜10である。同じ一般式で、pが2〜10、rが1〜5のジオールがより好ましい。シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールもまた好ましい。ハイドロキノンなどの芳香族ジオールも、チオエーテルと同様、使用することができる。
【0021】
本発明で使用するLEOを誘導するための、好ましいジカルボン酸(または、ハーフアシッドエステルおよびジエステルを含むそれらの誘導体)は、イソフタル酸、置換イソフタル酸、テレフタル酸、置換テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、並びにそれらの組み合わせである。より好ましいカルボン酸はテレフタル酸およびイソフタル酸であり、特にテレフタル酸が好ましい。好ましい脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、セバシン酸およびマレイン酸である。使用されるジカルボン酸はジエステルの形態であることが特に好ましい。好ましいジカルボン酸と上記一般式で明記したジオールのいかなる組み合わせも、本発明での使用に好ましいLEOを製造するために使用することができる。
【0022】
本発明で使用するLEOを誘導するための、ジカルボン酸とジオールとの好ましい組み合わせとしては、ジメチルテレフタレートと、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジ(エチレングリコール)、ジ(ブチレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)、トリ(ブチレングリコール)、またはこれらの混合物との組み合わせ;ジメチルイソフタレートと、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジ(エチレングリコール)、ジ(ブチレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)、トリ(ブチレングリコール)、またはこれらの混合物との組み合わせ;ジメチルテレフタレートとシクロヘキサンジメタノールとの組み合わせ;およびジメチル2,6−ナフタレンジカルボキシレートと、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジ(エチレングリコール)、ジ(ブチレングリコール)、ジ(プロピレングリコール)、トリ(ブチレングリコール)、またはこれらの混合物との組み合わせが挙げられる。
【0023】
p−ヒドロキシ安息香酸や2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸を、使うとするならば、コモノマーとしてジオールおよびジカルボン酸ととも使用することが好ましい。
【0024】
本発明のプロセスで生成されたCEOは、また、前記のジオールおよびジカルボン酸(または、ハーフアシッドエステルおよびジエステルを含むそれらの誘導体)からも好適に生成できることは明らかである。
【0025】
本発明の方法では、溶媒に溶解したLEOは、トランスエステル化/エステル化酵素が触媒する分子内環化反応により連続的にCEOに転換される。このようにして生成されたCEOは、酵素との接触を断たれ、分離され、回収される。未反応LEOは連続的に酵素の存在下へ戻され、さらに連続的にCEOに転換される。このプロセスで使用するLEOは、本プロセスに供給される前に、上に列挙したような当業者に知られた方法で生成しておいてもよい。LEOは、また、本発明のプロセスのその場で生成してもよい。その場で生成されるLEOは、ジカルボン酸とジオールおよび/またはヒドロキシカルボン酸モノマーの酵素触媒反応で生成されることが好ましい。この反応で使用する酵素は、LEOからCEOへの転換に使用するものと同じ酵素であってもよく、異なる酵素であってもよい。あるいは、LEOは本発明のプロセスに供給される前に生成されてもよく、また、プロセスの途中のその場でモノマーから生成されてもよい。LEOは、また、プロセスの途中で、予め生成されたLEOと追加のモノマーから重合度がより高いLEOを生成する反応によって生成されてもよい。酵素を触媒とするLEOの反応で生成されたCEOは、生成元のLEOより低いDPを有することがある。そうした場合には、LEOの酵素触媒による分子内環化によって、副生成物として別のLEOまたはジオール、ジカルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸が生成される。
【0026】
本発明のプロセスでは、反応物質(「反応物質」という用語は、本明細書で用いられるときは、LEOおよび/またはモノマーをいう)を、有機反応溶媒に溶解して反応混合物を調製する。必要ならば、反応物質を溶解させるために溶媒を加熱してもよい。好ましい溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、o−ジクロロベンゼン、ヘキサン、ジフェニルエーテル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、またはそれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、トルエン、o−ジクロロベンゼンおよびメチルイソブチルケトンである。
【0027】
本反応で使用される酵素は、カルボン酸のエステル化、エステルのトランスエステル化および/またはエステルの加水分解に対して触媒作用を有する少なくとも1つの酵素である。使用することができる酵素の代表的なタイプとしては、リパーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼが挙げられる。例えば、(非特許文献13)のアール・ジェイ・カズラウカス(R.J.Kazlaukas)らの章を参照されたい。酵素は反応混合物に溶解せず、固体物質に付着させてもよい(担持乃至固定化する);例えば、(非特許文献14)を参照されたい。担体としては、珪藻土、多糖類(例えば、キトサン、アルギン酸塩またはカラゲナン)、チタニア、シリカ、アルミナ、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびイオン交換樹脂などの物質が挙げられ、また、酵素は、吸着させてもよく、共有結合で付着させてもよく、イオン結合で付着させてもよく、あるいは架橋した酵素結晶(CLECS)の形態としてもよい。酵素は、また、予め担体に固定化せずに使用してもよく、攪拌した反応混合物に懸濁させてもよい。固定化酵素の比活性は、約0.1IU/g固定化酵素〜約2000IU/g固定化酵素であることが好ましく、約10IU/g固定化酵素〜約500IU/g固定化酵素であることがより好ましい。
【0028】
本発明で使用される好ましい酵素は、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルトロバクター属(Arthrobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、桿菌属(Bacillus)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium)、カンジダ属(Candida)、フザリウム属(Fusarium)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ヒューミコラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、ピチア属(Pichia)、ペニシリウム属(Penicillium)、リゾムコール属(Rhizomucor)、クモノスカビ属(Rhizopus)またはサームス属(Thermus)の有機体由来の細菌性および真菌性酵素触媒である。特に好ましい細菌性および真菌性酵素触媒は、アルトロバクター種(Arthrobacter sp.)、アルカリゲネス種(Alcaligenes sp.)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、こうじ菌(Aspergillus oryzae)、バチルスセレウス(Bacillus cereus)、リケニホルミス菌(Bacillus licheniformis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルスコアギュランス(Bacillus coagulans)、ブレビバクテリウムアンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)、ブルコルデリアプランタリー(Burkholderia plantarii)、カンジダアンタルチカ(Candida antartica)、カンジダシリンドラセア(Candida cylindracea)、カンジダリポリチカ(Candidia lipolytica)、カンジダユティリス(Candida utilis)、カンジダルゴサ(Candida rugosa)、クロモバクテリウムヴィスコスム(Chromobacterium viscosum)、フザリウムソラニ(Fusarium solani)、ゲオトリクムカンディドゥム(Geotrichum candidum)、ヒューミコララヌギノザ(Humicola lanuginosa)、ムコール種(Mucor sp.)、ムコールジャポニクス(Mucor japonicus)、ムコールジャワニクム(Mucor javanicum)、ムコールミエヘイ(Mucor miehei)、ピチアミソ(Pichia miso)、リゾムコールミエヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾープス種(Rhizopus sp.)、リゾープスニグリカンス(Rhizopus nigricans)、リゾープスオリザエ(Rhizopus oryzae)、リゾープスアルヒズス(Rhizopus arrhizus)、リゾープスデレマール(Rhizopus delemar)、リゾープスニべウス(Rhizopus niveus)、ペニシリウムアシラーゼ(Penicillium acylase)、ペニシリウムロクエフォルティ(Penicillium roqueforti)、サームスアクアティクス(Thermus aquaticus)、サームスフラヴス(Thermus flavus)、サームステルモフィルス(Thermus thermophilus)、クロモバクテリウムヴィスコスム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナスバークホルデリア(Pseudomonas burkholderia)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)またはシュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)由来のものである。最も好ましいリパーゼは、カンジダアンタルチカB−リパーゼ(Candida antartica B−lipase)「CALB」(非特許文献4)などのカンジダアンタルチカ(Candida antartica)由来のものである。C.アンタルチカ(C.antartica)由来の、適切な商業的に入手可能な触媒の例としては、ノボザイム(Novozym)(登録商標)435(製品番号#L4777、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、ミズーリ州(MO))およびキラザイム(CHIRAZYME)L−2、c−f C2、lyo(ID番号#2207257、バイオキャタリティックス(Biocatalytics)、パサディナ(Pasadena)、カリフォルニア州(CA))が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0029】
全プロセスを通じて、酵素の水和状態と触媒活性状態を保つため、反応混合物中に十分な水が存在しなければならない。プロセスの最初に、適当な量の水を溶媒に加える必要がある場合もあり、全プロセスを通じて水の供給を続ける必要があることもしばしばある。反応全体を通じて酵素の活性を維持するのに必要な水の量は、CEOの生成速度を測定することによって決定できる。酵素触媒の活性評価の方法については、(非特許文献15)、(非特許文献16)および(非特許文献17)を参照されたい。一般に、溶媒の親水性が高いほど、多くの水を加えなければならない。例えば、溶媒としてヘキサンを使用するときは、約50ppmの水が必要である。トルエンを使用するときは、約100〜約200ppmの水が必要であり、メチルイソブチルケトンを使用するときは、約400〜500ppmの水が存在しなければならない。溶媒中に存在する水の量は、カール−フィッシャー(Karl−Fischer)滴定法または当業者に知られた他の方法で測定できる。
【0030】
反応混合物は、プロセスの間、好ましくは不活性ガスで連続的にパージし、生成したアルコールなどのトランスエステル化/エステル化プロセスの副生成物を除去することが好ましい。このパージプロセスによって水もまた除かれることがあり、その場合、全プロセスを通じて水を供給し、水の量を維持して、酵素活性が維持されるようにする必要がある。もしパージプロセスによって溶媒が除去されるなら、場合により、同様に、全プロセス期間を通じて溶媒を追加しなければならない。
【0031】
本発明の方法は、反応物質が部分的にまたは完全にCEOに転換される条件下、反応容器内で、LEOを酵素と連続的に接触させることを含む。酵素は固体担体に担持させてもよいし、担持させずに使用してもよい。酵素は固定層として存在させてもよいし、攪拌した反応混合物中に懸濁させてもよく、また、反応容器は、酵素がLEOからCEOの生成に触媒作用を示す温度(「反応温度」)に維持する。反応混合物は、連続的に分離装置へと送られ、そこで、生成されたCEOの全てまたは一部が、当業者に知られた方法で分離され、必要ならば、精製される。分離装置は、そこでCEOが反応混合物から分離されるフィルタや抽出器などの容器その他の装置を意味する。CEOが分離された残りの反応混合物は、その後、酵素との接触に連続的に戻される。それが反応器内で酵素と接触させるために戻される前、または戻されたときに、追加のLEOおよび/またはモノマーを加えてもよい。加えられたモノマーの少なくとも一部は、酵素の触媒作用によって反応し、LEOを生成する。存在するモノマーは、既に存在するLEOと反応して、より重合度の高いLEOを生成する。カルボン酸よりもジオールが多く存在すると、またはその逆の場合、モノマーはLEOと反応して、LEOの重合度を低くする。存在するLEOの重合度を低くするために、過剰のジオールまたは過剰のジカルボン酸モノマーを反応混合物に加えることが好ましい。これが望ましいのは、低重合度のLEOが、高重合度のそれよりも反応溶媒によりよく溶解するときである。生成されたCEOは、2〜約30、より好ましくは2〜約10の重合度を有していることが好ましい。酵素は触媒として連続的に作用し、存在するLEOの全てまたは一部をCEOに転換する。
【0032】
分離装置で反応混合物からCEOを分離する際には、適切などのような方法をも使用することができる。もし、CEOと反応混合物の残り(例えば、もし存在するとすれば、LEOとモノマー)が、反応温度より低い温度において、反応溶媒中で異なる溶解度を有しているならば、酵素から分離したときに、反応で生成したCEOまたはLEOとモノマーのどちらかが、少なくとも部分的に不溶となり、少なくともその一部が溶液から沈殿する温度に維持された容器に、反応混合物を流入させる。前者の場合、不溶の、沈殿したCEOは、ろ過などの適切な手段で、プロセスから除去され、回収され、その結果得られるCEOを含まない反応混合物は、反応温度で酵素と接触するように連続的に戻される。後者の場合、CEOを含有する溶液は容器から除去され、適切な手段でCEOを回収する。CEOを分離する方法の例としては、蒸発または蒸留による溶媒の除去;補助溶媒を加えてCEOを沈殿させ、沈殿物を回収;およびCEOを別の溶媒に抽出し、沈殿によりまたは蒸発もしくは蒸留による第2の溶媒の除去により分離;が挙げられる。不溶の、沈殿したLEOは、連続ロータリーフィルタの使用などの適当な方法で回収し、反応溶媒に再度溶解し、反応温度で酵素と接触するように戻される。
【0033】
CEOと、存在するLEOおよびモノマーが、反応溶媒と相溶しないある溶媒に対し異なる溶解度を有する場合には、別の方法を適用することができる。この方法では、CEOまたはLEOとモノマーの一部または全部を、非相溶性の溶媒を用いて向流抽出により反応混合物から分離する。非相溶性溶媒にCEOが溶解する場合には、この溶媒の流れをプロセスから除去し、沈殿、抽出、蒸発および結晶化などの適切な手段によって抽出されたCEOを回収し、一方、反応混合物の残りを、反応温度で酵素と接触するように戻す。LEOとモノマーが非相溶性溶媒に溶解する場合には、CEOを含有する溶液をプロセスから除き、CEOを分離する。抽出されたLEOとモノマーは、反応温度で酵素と接触するように戻す。これらに対して反応溶媒を用いて2回目の向流抽出を行ってもよいし、抽出された溶液を反応溶媒で希釈してもよいし、また、非混合性溶媒を除去し、分離したLEOとモノマーを反応溶媒に再度溶解させた後、酵素との接触に戻すようにしてもよい。
【0034】
CEOを反応混合物から取り出す別の方法では、CEOの一部もしくは全部、または存在するLEOおよびモノマーの一部もしくは全部を溶液から沈殿させる溶媒を追加する。後者の場合には、CEOに富む溶液を取り出し、CEOを回収する。不溶のLEOおよびモノマーを、連続ロータリーフィルタを用いるなどの適切な方法で回収し、反応溶媒に再溶解し、酵素との接触に戻す。前者の場合には、不溶のCEOをプロセスから取り出して回収し、残りのLEOとモノマーを、第2の溶媒から、向流抽出、蒸発、晶析などの適切な方法によって除去し、反応溶媒に再溶解または希釈した後、酵素とに接触に戻す。
【0035】
CEOを反応混合物から取り出す別の方法では、冷却、アンチソルベントの添加、溶媒の蒸発などの方法、または当業者に知られている他の方法によって、溶液から全ての成分を取り出す。CEOは、晶析、溶融晶析、または、CEOもしくはLEOおよびモノマーが使用温度で溶解するような溶剤の添加によって、分離される。
【0036】
CEOは、反応混合物またはLEOおよびモノマーを含有する他の溶液から、選択的晶析;溶液を半透膜に通す;ショートパス蒸留などの蒸留技術;昇華;CEOもしくはLEOおよびモノマーに対し選択性を有する吸着剤の使用;または当業者に知られている方法などの別の方法によっても、除去することができる。
【0037】
前記方法を使用するとき、全てのCEOを反応混合物から分離する必要はない。LEOおよびモノマーと共に残留するCEOは、酵素と接触するように戻され、さらに反応するか、または後のプロセスで分離される。本発明のプロセスで回収されるCEOの純度は、少なくとも50重量パーセントであり、好ましくは少なくとも75重量パーセントであり、より好ましくは少なくとも90重量パーセントである。不純物には、LEOおよび/またはモノマーが含まれる。CEOは、クロマトグラフィーまたは再結晶などの既に知られた精製技術によって、さらに精製することができる。
【0038】
本発明の連続法の一実施形態では、再循環反応器を使用する。最初の反応混合物を、反応容器内で酵素と接触させる。この最初の反応混合物は、本発明で使用される反応物質の溶液を含む。反応容器は、最初の反応混合物の全成分だけでなく、反応の過程で生成するLEOやCEOも溶解する温度に維持される。反応容器は連続的に攪拌されることが好ましい。酵素は、反応物のエステル化/トランスエステル化を触媒し、CEOに富む反応混合物を生成する。反応容器の反応混合物は、連続濾過、抽出、ソックスレー抽出、遠心分離などの知られた方法によって酵素との接触から除かれ、分離装置に導かれるが、この分離装置も連続的に攪拌される容器であってもよい。CEOを、上記方法の1つのような方法によって分離装置の反応混合物から除去し、その結果得られるCEOを含まない反応混合物を反応容器に戻し、そこで酵素と再び接触させ、さらに反応させる。存在する反応物を補給するために、全プロセスを通じて、反応混合物を追加供給してもよい。
【0039】
反応混合物は、反応容器と分離装置の間を、チューブ、パイプ、その他の液体を輸送する手段により移送される。反応混合物は、反応器と分離装置の間をポンプまたは重力により移送されるが、このループには追加の容器や装置を含むことができる。
【0040】
本発明の第2の実施形態では、直列に連なった複数の反応容器/分離装置を含む直線式反応器を使用する。最初の反応混合物を、第1の反応容器内で酵素と接触させる。この最初の反応混合物は、酵素の存在下に反応してCEOを生成することができる反応物質の組み合わせからなる溶液を含む。第1の反応容器は、最初の反応混合物の全成分だけでなく、反応の過程で生成するLEOやCEOも溶解する温度に維持される。第1の容器は連続的に攪拌されることが好ましい。酵素は、反応物のエステル化/トランスエステル化を触媒し、CEOに富む反応混合物を生成する。第1の反応器の反応混合物は、酵素との接触から除かれ、第1の分離装置に連続的に導入される。
【0041】
分離装置においては、上記方法の1つなどの方法によりCEOが反応混合物から取り出され、その結果得られるCEOを含まない反応混合物が、場合により、反応混合物の全ての成分が溶解する温度に維持された酵素を含有する第2の反応器に導入される。反応混合物が次々と、場合により、連続的に第2の分離装置に導入されて、CEOがプロセスから除去される。このようにして、必要な数の反応容器および分離装置を連結し、反応混合物を、酵素を含有する反応容器から、酵素を含有しない分離装置に連続的に供給し、CEOを除去することができる。使用する反応容器および分離装置の数は、反応物質の転化率の程度または所望の生成物の量に依存する。反応混合物からCEOを分離する方法は、各分離装置で必ずしも同じである必要はない。
【0042】
存在する反応物質を補給するために、全プロセスを通じて、反応混合物を追加供給することができる。反応混合物は、反応容器と分離装置の間を、チューブ、パイプ、その他の液体を輸送する手段により移送される。反応混合物は、反応器と分離装置の間をポンプまたは重力により移送されるが、この列には追加の容器や装置を含むことができる。
【0043】
反応温度より低い温度で、LEOがCEOよりも反応溶媒に溶解しにくいときには、第2の実施形態が第1の実施形態よりも好ましい。
【0044】
本発明の方法で生成する好ましいCEOは、1,4−ブタンジオールとジメチルテレフタレートから誘導される2量体(3,8,15,20−テトラオキサトリシクロ[20.2.2.210,13]オクタコサ−10,12,22,24,25,27−ヘキサエン−2,9,14,21−テトロン)(構造1);1,4−ブタンジオールとジメチルテレフタレートから生成される3量体(3,8,15,20,27,32−ヘキサオキサテトラシクロ[32.2.2.210,13.222,25]ドテトラコンタ−10,12,22,24,34,36,37,39,41−ノナエン−2,9,14,21,26,33−ヘキソン);1,3−プロパンジオールとジメチルテレフタレートから生成される2量体(3,7,14,18−テトラオキサトリシクロ[18.2.2.29,12]ヘキサコサ−9,11,20,22,23,25−ヘキサエン−2,8,13,19−テトロン)(構造2);ジ(エチレングリコール)とジメチルテレフタレートから生成される2量体(3,6,9,16,19,22−ヘキサオキサトリシクロ[22.2.2.211,14]トリアコンタ−11,13,24,26,27,29−ヘキサエン−2,10,15,23−テトロン)(構造3);およびエチレングリコールとジメチルテレフタレートから生成される3量体(3,6,13,16,23,26−ヘキサオキサテトラシクロ[26.2.2.28,11.218,21]ヘキサトリアコンタ−8,10,18,20,28,30,31,33,35−ノナエン−2,7,12,17,22,27−ヘキソン)である。
【0045】
【化1】

【0046】
本発明の方法により生成されるCEOは、分子量のより大きいポリエステルに重合することができ、それらは、射出成形、ブロー成形、押出成形、ファイバ、フィラメントおよびフィルムにおいて多くの用途を持ち、耐久製品や使い捨て製品の製造に有用である。CEOは、また、金型内で直接重合することができる。
【実施例】
【0047】
(実施例)
使用した反応器の概略図を図1に示す。10は、ポリマービーズに担持したチラザイム(Chirazyme)(登録商標)L−2リパーゼ、およびジメチルテレフタレートとジ(エチレングリコール)の0.1Mトルエン溶液を含有する、600mLのジャケット付反応容器である。11は、室温に保たれた600mLの反応容器である。各反応器にはランニング攪拌機12が設置されている。容器10の溶媒の温度は、ヒーター14で加熱され、容器10のジャケット15を循環する熱シリコーン油により、50〜55℃に維持される。反応溶液は、ポンプ16でチューブ17を通って容器11へ送られ、リパーゼはガラス濾過器13によって所定の位置に保持される。所望のCEO反応生成物である、ジメチルテレフタレートとジ(エチレングリコール)から誘導される環状2量体(CPEOT)(構造)は、容器11内で沈殿し、ガラス濾過器18上に回収される。濾過された室温の反応溶液は、ポンプ19によってチューブ20を通って容器10の頂部に送られる。この間、十分な量の、トルエンに溶解したジメチルテレフタレートとジ(エチレングリコール)が、開口21から容器10の頂部に添加され、容器10内の出発材料の濃度および一定の容量が維持される。反応溶液を、50mL/minの窒素流で連続的にパージし、1μl/minの水を連続的に追加する。所望時間、連続的に反応させる。反応が完了した時点で、容器11を空にし、回収されたCPEOTを回収する。純度は、HPLCによる測定で、90%より高いが、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーによりさらに精製することができる。
【0048】
試料を、LCMSを用いて次の方法により分析する。約10滴の反応混合物を1.5mlのo−クレゾールに加える。o−クレゾール混合物を攪拌しながら、100〜125℃で5分間加熱する。その後、5滴のo−クレゾール溶液を3mlのクロロフォルムに加え、混合物を振盪し、0.45ミクロンのフィルタ(アクロディスク(Acrodisc)(登録商標)CR25mmシリンジフィルタ、ゲルマン・ラボラトリー(Gelman Laboratory))を通して、液体クロマトグラフの試料バイアルに濾過する。分析は、HP G1315A UVダイオードアレイ検出器(HP G1315A UV Diode array detector)およびHP G1946A マススペクトロメーター検出器(HP G1946A Mass Spectrometer detector)を備えた、ヒューレット−パッカード(登録商標)1100液体クロマトグラフ(Hewlett−Packard(登録商標)1100 Liquid Chromatograph)を使用して実施する。流量1ml/minのCHClを溶出剤とし、2本のピーエルゲル(登録商標)50オングストロームカラム(PLGel(登録商標)50 Angstrom column)を使用する。環状オリゴマーのピークは、質量クロマトグラフのスペクトルと、入手できるなら、対応する高分子量ポリマーから抽出された純環状オリゴマー試料とによって同定する。環状オリゴマーの濃度は、補正なしの面積パーセント法により測定する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例に記載の連続方法で使用される反応器の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(iii)溶媒に溶解した直鎖状エステルオリゴマーを酵素と接触させて、環状エステルオリゴマーに富む溶液を生成する工程、および
(iv)前記溶液から前記環状エステルオリゴマーを分離する工程
を連続的に行うことを含むことを特徴とする環状エステルオリゴマーの製造方法。
【請求項2】
再循環反応器を使用して前記環状エステルオリゴマーを製造することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
直線反応器を使用して前記環状エステルオリゴマーを製造することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記直鎖状エステルオリゴマーは、式HO((CHO)H(式中、pは2〜10、rは1〜5である)のジオールとジメチルテレフタレートとから誘導されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記直鎖状エステルオリゴマーは、式HO((CHO)H(式中、pは2〜15、rは1〜10である)のジオールとジメチルテレフタレートとから誘導されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記直鎖状エステルオリゴマーは、約1〜約20の重合度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素は、少なくとも1つのリパーゼ、プロテアーゼおよび/またはエステラーゼであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記環状エステルオリゴマーは、沈殿により前記溶液から分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記環状エステルオリゴマーは、抽出により前記溶液から分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記環状エステルオリゴマーは、蒸発により前記溶液から分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記環状エステルオリゴマーは、晶析により前記溶液から分離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−524989(P2006−524989A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571716(P2004−571716)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/035176
【国際公開番号】WO2004/099174
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】