説明

ポリエステル系繊維製品の染色方法

【課題】様々なポリエステル系繊維製品、特に、レギュラーポリエステルを用いて得られるポリエステル系繊維製品であっても、天然染料で高濃度に着色できる染色方法を提供することを課題としている。
【解決手段】 ポリエステル系繊維製品を第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液で処理した後、天然染料にて染色する。第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液での処理が100℃以上140℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系繊維製品の染色方法に関するものである。さらに、詳しく述べるならば、天然染料を用いて染色されたポリエステル系繊維製品の染色方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自然に対する消費者の関心の高まりとともに、シャツ、ジャケット、パンツ等の衣服においても天然染料にて染色された商品に人気が高まってきている。そのため、様々な方法にて、木綿、麻などの天然繊維をクチナシや茜などの天然染料を用いて染色することが検討され、天然染料独特の色調の衣服が市場に供給されている。
【0003】
また、天然繊維にはない風合、物性をもったポリエステル系合成繊維に対しても、天然染料にて染められた天然染料独特の色調を有するものが求められてきている。
しかしながら、ポリエステル系繊維製品を天然染料で染色処理したものは、天然染料を高濃度にもちいた場合においても、ほとんど着色することができなかった。
そこで、5−スルホイソフタル酸塩共重合ポリエステル系繊維をもちいて、天然染料による染色が検討されている(特許文献1)
【特許文献1】特開平9−170180
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記のものでは、特定のポリエステル系合成繊維のみしか使用できないため、5−スルホイソフタル酸塩を共重合させていないその他のポリエステル系繊維、特に一般的なテレフタル酸とエチレングリコールから得られるポリエステル系繊維(レギュラーポリエステル繊維)等においても、天然染料にて染色可能な染色方法の開発が望まれていた。
したがって、本発明では、上記課題を解決し、様々なポリエステル系繊維を天然染料で高濃度に着色できる染色方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の(1)〜(3)からなる。
(1)ポリエステル系繊維製品を第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液で処理した後、天然染料にて染色することを特徴とするポリエステル系繊維製品の染色方法。
(2)第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液での処理が、80℃以上140℃以下であることを特徴とする上記(1)に記載のポリエステル系繊維製品の染色方法。
(3)天然染料での染色温度が70℃以上140℃以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリエステル系繊維製品の染色方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリエステル系繊維製品の染色方法を用いれば、種々のポリエステル系繊維製品、特にレギュラーポリエステルを用いて得られるポリエステル系繊維製品であっても、天然染料で染色することができ、天然染料で染色された色調を有しながら濃度を含め豊富なカラ−バリエ−ションを有する様々な衣服、鞄、靴、テーブルクロスなどの繊維雑貨などのポリエステル系繊維製品を提供することができる。また、天然染料を効率よくポリエステル系繊維製品に染めることができるため、天然染料の使用量も抑えることができ、天然染料で染色された安価なポリエステル系繊維製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ポリエステル系繊維製品を第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液で処理した後、天然染料にて染色することを特徴とするポリエステル系繊維製品の染色方法である。
本発明のポリエステル系繊維製品とは、テレフタル酸とエチレングリコールを用いて得られるポリエステル(レギュラーポリエステル)、テレフタル酸とトリメチレングリコールを用いて得られるポリエステル(ポリトリメチレンテレフタレート:PTT)やテレフタル酸とテトラメチレングリコールを用いて得られるポリエステルなどから得られるものが挙げられる。
また、テレフタル酸成分の一部を、他の2官能性カルボン酸で置き換えたポリエステルであってもよく、または、グリコール成分の一部を上記グリコール成分以外のジオール成分に置き換えたポリエステルから得られるものであってもよい。
【0008】
ここで使用されるテレフタル酸以外のニ官能性カルボン酸としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β―ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの芳香族、脂肪族、脂環族の2官能性カルボン酸を挙げることができる。
【0009】
また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えば、ブチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物、およびポリオキシアルキレングリコールなどを挙げることができる。
また、ポリエステル系繊維製品が、常圧分散染料可染型ポリエステルやカチオン染料可染型ポリエステル(CDP)、ポリ乳酸(PLA)から得られるものであってもよい。
本発明では、常圧分散染料可染型ポリエステルやカチオン染料可染型ポリエステル(CDP)、ポリ乳酸(PLA)に比べ染まり難いと思われるレギュラーポリエステルを用いたポリエステル系繊維製品であっても、濃く染めることが可能である。
【0010】
上記ポリエステルには、酸化チタンなどのつや消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが含有されていてもよい。
また、必要に応じ、触媒、安定剤、着色防止剤、難燃剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、耐熱剤、抗菌剤、SR剤、無機粒子などの添加剤が含有されていてもよい。
これらの添加剤は、予めポリエステル樹脂に添加しておいてもよいし、糸、織物、編物等のシート状、衣服等の縫製品となった後に付与してもよい。
【0011】
本発明のポリエステル系繊維製品の形状は、マルチフィラメントや紡績糸などの糸形状であってもよいし、織物、編物、不織布などのシート状であってもよく、また、これを縫製して得られたシャツ、ジャケット、パンツ、鞄、シーツ、枕カバー、カーテン、テーブルクロスなどの縫製品であってもよい。また、無縫製ニットからえられる衣服等であってももちろんよい。
【0012】
また、本発明のポリエステル系繊維製品は、前記のポリエステルのみではなく、他のナイロン、アクリル、ポリウレタン、レーヨンなどの化学繊維、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維との混紡、混繊、交織、交編等複合されたものであってもよく、また、ウレタン樹脂膜、ナイロン樹脂膜、ポリエステル樹脂膜等を積層させた合成皮革、人工皮革や防水布帛であってもよい。
【0013】
また、本発明の第4級アンモニウム塩としては、特に限定されるものではないが、天然染料で染色し着色される濃度の観点からは好ましくは、
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
の構造式を有するものを挙げることができる。
より具体的には、
【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
【化8】

【0023】
などが好ましく挙げられる。
また、第4級アンモニウム塩は、第4級アンモニウム塩ポリマーであってもよい。
【0024】
水溶液中の第4級アンモニウム塩の濃度は、0.05g/l〜50g/l含むとよい。より好ましくは、0.1g/〜10g/lがよい。
0.05g/l未満では十分な濃度まで天然染料で着色することがでないことがある。
また、50g/lを超えても、濃度に応じての天然染料での着色濃度が向上しないので経済的に不利である。また、ポリエステルの溶解が著しく進んでしまい、得られるポリエステル系繊維製品の風合が大きく変化したり、強度が著しく低下してしまう可能性がある。
【0025】
また、本発明のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。
【0026】
水溶液中のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の濃度は、0.05g/l〜50g/l含むとよい。より好ましくは、0.1g/〜10g/lがよい。0.05g/l未満では十分な濃度まで天然染料で着色することがでないことがある。
また、50g/lを超えても、さほど天然染料での着色濃度が向上しないので経済的に不利である。また、ポリエステルの溶解が著しく進んでしまい、得られるポリエステル系繊維製品の風合が大きく変化したり、強度が著しく低下してしまう可能性がある。
【0027】
また、第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液には、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のアミン系化合物も含んでいてもよい。
また、第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液での処理が、80℃以上140℃以下であると好ましい。より好ましくは、100℃以上135℃以下がよい。
80℃未満では、その後の染色処理において、充分な濃度を有する天然染料で着色されたポリエステル系繊維製品がえられないことがあり、140℃を超えるとポリエステル系繊維製品が脆化し、また、天然染料の色素が分解する恐れがある。
【0028】
ポリエステル系繊維製品を第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液で処理するときに用いられる処理機としては、ポリエステル系繊維製品の形状等に応じ任意に選択すればよいが、かせ染め機、液流染色機、ウインス、ジッカー、ワッシャー、ビーム型染色機などを用いた浴中処理やパッダーや噴霧器を用い前記水溶液をポリエステル系繊維製品に付与した後、乾熱処理や水蒸気を用いた湿熱処理を行うことができる。
また、液流染色機などのバッチ式処理装置を用いたときのポリエステル系繊維製品と第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液の浴比は1:5〜1:300程度にておこなうことができる。
【0029】
また、本発明の天然染料は、植物から抽出されたものや動物から抽出されたものが用いることができ、植物から抽出されるものとして、ウコン、緑葉、スオウ、ラックダイ、柿渋、くちなし、えんじゅ、やまもも、ざくろ、ゴバイシ、からかし、チョウジ、エビズル、オオバヒルギ、オニグルミ、カシワ、カツラ、シャリンバイ、テイカカラズ、ナツメ、ヌルデ、ナンテン、センダン、サフラン、キハダ、ログウッドなどをあげることができる。
また、動物から抽出されるものとして、貝から抽出される帝王紫などが挙げられる。
【0030】
これらの染料は、それぞれの草木から煮出等で抽出して、用いることもできるが、市販されているものを用いてもよい。具体的には、洛東化成工業(株)製のRKカラ−シリ−ズや(株)田中直染料店の植物染料や液体植物染料シリ−ズとして市販されている。
天然染料の繊維への付与量は、天然物のため、季節や産地によって異なるため、濃度を確認し、任意の濃度で付与するとよい。
また、天然染料として、特に、生薬効果を有するものをもちいれば、本発明では、得られる繊維製品に抗菌防臭性や制菌性、花粉やダニの死骸を不活化するアレルゲン抑制機能を付与することができる。
【0031】
より具体的には、ウコン、緑葉、スオウ、ラックダイ、柿渋、くちなしなどを用いたものは、抗菌防臭性能や制菌性能(以下、これらを抗菌性という)を付与することができる。また、柿渋を用いた場合には、花粉やダニの死骸や糞に対するアレルゲン抑制機能を付与することができる。
【0032】
また、天然染料での染色温度は、70℃以上140℃以下であるとよい。より好ましくは、100℃以上135℃以下がよい。一般的に、天然染料を用いた染色では70℃未満の低温にて染色をおこなったほうが、天然染料の分解を抑え濃色に染められると考えられているが、本発明では、70℃以上で染色することにより、天然染料にて高濃度に着色することができる。
70℃未満にて染色した場合には、染料の種類やポリエステルの種類等によっては、十分な濃度のポリエステル系繊維製品がえられないことがあり、また、140℃以上では、ポリエステル系繊維製品が脆化する恐れがある。
また、液流染色機などのバッチ式処理装置を用いたときのポリエステル系繊維製品と天然染料を含む染色液の浴比は1:5〜1:300程度にておこなうことができる。
【0033】
本発明の染色方法にて得られたポリエステル系繊維製品は、用いられる天然染料の濃度などにより異なるが、染色前に第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液で処理しなかったものに比べK/Sで1.5倍以上、さらに2.5倍以上の濃度のものが得られる。
なお、K/Sは、K/S=(1−R)/2Rにて求められたものであり、Rは、本発明の染色方法にて染色されたポリエステル系繊維製品での最大吸収波長での反射率をいう(全反射=1)。また、反射率は値が高いほど色濃度は低くなり、値が低いほど色濃度は高くなるが、K/S値は、値が高いほど色濃度は高くなり、値が低いほど色濃度は低くなる。
【0034】
また、染色に用いられる処理機としては、ポリエステル系繊維製品の形状に合わせ任意に選択すればよいが、かせ染め機、液流染色機、ドラム型染色機、ウインス型染色機、ジッカー、ビーム型染色機などの浴中染色のほか、パッダ−や噴霧器を用い天然染料を含む染色液を付与した後、乾熱処理や水蒸気を用いた湿熱処理をおこなう連続染色であってもよい。
得られるポリエステル系繊維布帛の風合いの観点からは、高圧タイプの液流染色機が好ましく、また、生産性の観点からは、パッダ−を用いた連続染色が好ましい。
また、本発明の天然染料にて染色する際の染色液の中には、pH調整剤や中性無水芒硝などの無機塩などを添加してもよいが、本発明ではこれらのものを添加しなくとも、従来に比べ著しく濃色にポリエステル系繊維を染色することができる。
【0035】
本発明は、上記のごときポリエステル系繊維製品を第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液で処理した後、天然染料にて染色する。
また、染色後、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、木酢鉄、塩化第一鉄、酢酸銅、合成タンニンなどを含む水溶液で媒染処理をおこなってもよい。
さらに、天然染料にて染色した後、必要に応じ、帯電防止加工、撥水加工、柔軟加工、SR加工、紫外線遮蔽加工、抗菌加工、消臭加工等任意の仕上加工をおこなってもよい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例における評価は次の方法によった。
A 染色濃度 K/Sにて求めた。K/S=(1−R)/2R。Rは、染色されたポリエステル系繊維製品での最大吸収波長での反射率(全反射=1)。また、反射率は値が高いほど色濃度は低くなり、値が低いほど色濃度は高くなるが、K/S値は、値が高いほど色濃度は高くなり、値が低いほど色濃度は低くなる。
B 抗菌性 JIS L1902 定量試験 菌液吸収法 殺菌活性値により測定した。(SEKマーク(社団法人繊維評価技術協議会認証マーク)の制菌性赤ラベル基準では殺菌活性値0以上合格)
【0037】
C アレルゲン抑制機能 アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「Mite Extract−Df」)を蛋白質量が8ng/ミリリットルになるようにリン酸バッファ−(pH7.6)に溶解させアレルゲン溶液を作成した。
次に、アレルゲン溶液を試験管ミキサ−を用いて攪拌しながら試験片20cmをいれて37℃で48時間に亘って振とうした。
続いて、アレルゲン溶液のアレルゲン性をアレルゲン測定具(シント−ファイン社製商品名「マイティ−チェッカ−」)を用いて評価した。そして、アレルゲン測定具の発色度合いを目視観察して評価した。評価は、「−」、「±」、「+」、「++」で行う。「−」がアレルゲン抑制機能が大きく、「++」はアレルゲン抑制効果が小さい。
なお、撥水加工がなされる繊維製品での試験は、撥水加工を行う前の繊維製品で行った。
【0038】
(実施例1)
ポリエステル平織物(タテ糸、ヨコ糸とも:レギュラーポリエステル)を精練したものをポリエステル系繊維製品としてもちいた。
ポリエステル系繊維製品を水酸化ナトリウム 1.5g/lと第4級アンモニウム塩として
【0039】
【化4】

【0040】
1.5g/l含む処理液にて、浴比1:50、115℃で40分間、液流染色機を用いて処理した後、水洗をおこなった。
次に、染料液として、ウコン液50((株)田中直染料店)を用い10%omf、20%omf、50%omfの染料液にて、浴比1:100、冷水から昇温し、120℃で30分染色処理をおこなった(液流染色機使用)。その後、水洗し、120℃で30秒乾燥した後、ナイスポールFL(日華化学(株)製) 0.5%水溶液を用い帯電防止加工を行った。
次に、150℃にて30秒間、仕上げセットを行い、天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。得られた繊維製品のK/S、抗菌性は以下の通りであり、濃く染まっており、また、抗菌性も有していた。
【0041】
K/S 10%omf 1.09、20%omf 1.23、50%omf 2.05
抗菌性 10%omf 2.8、 20%omf 2.8、 50%omf 2.8
【0042】
(比較例1)
第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物を含む処理液で処理をおこなわなかった以外は、実施例1と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。
得られた繊維製品のK/S、抗菌性は以下の通り、濃度は低く、抗菌性もなかった。

K/S 10%omf 0.22、20%omf 0.29、50%omf 0.5
抗菌性 10%omf −1.2、20%omf −1.2、50%omf −1.2
【0043】
(比較例2)
処理液に水酸化ナトリウムを用いなかった以外は、実施例1と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。得られた繊維製品のK/Sは以下の通り、濃度は低かった。

K/S 10%omf 0.30、20%omf 0.45、50%omf 0.66

【0044】
(比較例3)
処理液に第4級アンモニウム塩を用いなかった以外は、実施例1と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。得られた繊維製品のK/Sは以下の通り、濃度は低かった。

K/S 10%omf 0.24、20%omf 0.31、50%omf 0.51

【0045】
(実施例2)
ポリエステル天竺(糸:レギュラーポリエステル)を精練したものをポリエステル系繊維製品としてもちいた。
ポリエステル系繊維製品を水酸化ナトリウム 0.5g/lと第4級アンモニウム塩として
【0046】
【化6】

【0047】
0.5g/lとポリオキシエチレンアルキルアミン 0.2g/l含む処理液にて、浴比1:50、110℃で40分間、液流染色機を用いて処理した後、水洗をおこなった。
次に、染料液として、RKカラ−5KA−Fconc 柿渋(洛東化成工業(株))を用い5%omf、10%omf、20%omfの染料液にて、浴比1:50、冷水から昇温し、120℃で30分処理をおこなった(液流染色機使用)。その後、水洗し、120℃で30秒乾燥した後、アサヒガードAG710(旭硝子(株)製) 3%水溶液を用い撥水加工を行った。
次に、150℃にて30秒間、仕上げセットを行い、天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。得られた繊維製品のK/Sは大きく、濃い色に染まっていた。制菌性、アレルゲン抑制機能も有していた。


K/S 5%omf 0.41、10%omf 0.56、20%omf 0.78
抗菌性 5%omf 2.8、 10%omf 2.8 、20%omf 2.8
アレルゲン
抑制機能 5%omf 「−」 10%omf 「−」 、20%omf 「−」

【0048】
(比較例4)
第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物を含む処理液で処理をおこなわなかった以外は、実施例2と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。
得られた繊維製品のK/S、抗菌性、アレルゲン抑制機能は以下の通り、濃度は低く、抗菌性、アレルゲン抑制機能もなかった。

K/S 5%omf 0.17、10%omf 0.23、20%omf 0.29
抗菌性 5%omf −1.2、10%omf −1.0、20%omf −1.0
アレルゲン
抑制機能 5%omf「++」 、10%omf「++」 、20%omf「++」

【0049】
(実施例3)
実施例2において、80℃にて染色した以外は実施例2と同様にし、天然染料で染色されたポリエステル系繊維布帛を得た。
得られた繊維製品のK/Sは以下の通り、実施例2と比べると濃度は低いが、比較例4に比べ、濃く染まっていた。

K/S 5%omf 0.24、10%omf 0.32、20%omf 0.55

【0050】
(比較例5)
第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物を含む処理液で処理をおこなわなかった以外は、実施例3と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。
得られた繊維製品のK/Sは以下の通り、ほとんど染まっていなかった。

K/S 5%omf 0.09、10%omf 0.11、20%omf 0.17

【0051】
(実施例4)
ポリエステル系繊維製品としてブラウスに縫製されたものをもちいた(たて糸、よこ糸ともPTT)。
ポリエステル系繊維製品を、水酸化ナトリウム 1.0g/lと第4級アンモニウム塩として
【0052】
【化4】

【0053】
【化7】

【0054】
をそれぞれ0.5g/l含む処理液にて、浴比1:50、105℃で40分間、液流染色機を用いて前処理した後、水洗をおこなった。
次に、染料液としてRKカラ−9KU−HPG クチナシ(洛東化成工業(株))を用い10%omf、20%omf、50%omfの染料液にて、浴比1:80、冷水から昇温し80℃で30分処理をおこなった(ドラム型染色機使用)。
次に、水洗後、媒染剤として、硫酸アルミニウムカリウム5%omf含む処理液にて、浴比1:80、70℃で20分間処理をおこなった。
その後、水洗し、120℃で30秒乾燥した後、ソフテックスK370(北広ケミカル(株)製) 0.5%水溶液をもちいて柔軟加工を行った。
次に、150℃にて30秒間、仕上げセットを行い、天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。得られた繊維製品のK/Sは大きく、濃い色に染まっていた。

K/S 10%omf 0.94、20%omf 1.67、50%omf 3.32

【0055】
(比較例6)
第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物を含む処理液で処理をおこなわなかった以外は、実施例4と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。
得られた繊維製品のK/Sは以下の通り、ほとんど染まっていなかった。

K/S 10%omf 0.12、20%omf 0.21、20%omf 0.43

【0056】
(実施例5)
ポリエステル系繊維製品として、パンツに縫製したものをもちいた(ポリウレタン繊維をレギュラーポリエステルでカバーリングした糸を用いた織物を縫製)。
ポリエステル系繊維製品に、水酸化ナトリウム 1.0g/lと第4級アンモニウム塩として
【0057】
【化3】

【0058】
を1.0g/l含む処理液にて、浴比1:50、110℃で40分間、液流染色機を用いて処理した後、水洗をおこなった。
次に、染料液として、緑葉エキスパウダー((株)田中直染料店)を用い0.5%omf、1%omf、2%omfの染料液にて、浴比1:100、冷水から昇温し、120℃で30分処理をおこなった(ドラム型染色機使用)。その後、水洗し、120℃で30秒乾燥した。
次に、150℃にて30秒間、仕上げセットを行い、天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。得られた繊維製品のK/Sは以下の通りであり、濃く染まっていた。

K/S 0.5%omf 1.98、1%omf 2.52、2%omf 3.83

【0059】
(比較例7)
第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物を含む処理液で処理をおこなわなかった以外は、実施例5と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。
得られた繊維製品のK/Sは以下の通りであり実施例5と比べ非常に薄かった。

K/S 0.5%omf 0.42、1%omf 0.56、2%omf 0.84

【0060】
(実施例6)
ポリエステル平織物(タテ糸、ヨコ糸とも:PLA)を精練したものをポリエステル系繊維製品としてもちいた。
ポリエステル系繊維製品を水酸化ナトリウム 1.5g/lと第4級アンモニウム塩として
【0061】
【化5】

【0062】
1.5g/l含む処理液にて、浴比1:50、115℃で40分間、液流染色機を用いて処理した後、水洗をおこなった。
次に、染料液として、RKカラ−9KU−HPG クチナシ(洛東化成工業(株))を用い10%omf、20%omf、50%omfの染料液にて、浴比1:100、冷水から昇温し、110℃で30分染色処理をおこなった(液流染色機使用)。その後、水洗し、120℃で30秒乾燥した後、ナイスポールFL(日華化学(株)製) 0.5%水溶液を用い帯電防止加工を行った。
次に、150℃にて30秒間、仕上げセットを行い、天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。得られた繊維製品のK/Sは以下の通りであり、比較例8と比べK/Sで約9倍の濃色に染まっていた。
【0063】

K/S 10%omf 0.47、20%omf 0.98、50%omf 1.75

【0064】
(比較例8)
第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物を含む処理液で処理をおこなわなかった以外は、実施例6と同様にして天然染料にて染色されたポリエステル系繊維製品を得た。
得られた繊維製品のK/Sは以下の通りであり実施例6と比べ非常に薄かった。

K/S 10%omf 0.05、20%omf 0.11、50%omf 0.20

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系繊維製品を第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液で処理した後、天然染料にて染色することを特徴とするポリエステル系繊維製品の染色方法。
【請求項2】
第4級アンモニウム塩とアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む水溶液での処理が、80℃以上140℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系繊維製品の染色方法。
【請求項3】
天然染料での染色温度が70℃以上140℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル系繊維製品の染色方法。

【公開番号】特開2008−50733(P2008−50733A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230421(P2006−230421)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】