説明

ポリエステル系複合繊維および、それを用いてなる織編物

【課題】ストレッチ性に優れたポリエステル系複合繊維を提供する。
【解決手段】50〜95質量%のポリテトラメチレンテレフタレート成分と5〜50質量%ポリオキシテトラメチレングリコール成分を主成分とし、下記(a)を満足するブロック共重合ポリマーAと、95モル%以上の成分がポリエチレンテレフタレートであるポリマーBが接合された複合繊維。(a)2.4≦Mw/Mn(ここで、Mnは数平均分子量を、Mwは重量平均分子量を表し、Mw/Mnは分子量の分散度を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ性に優れたポリエステル系複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から収縮特性が異なる2種類のポリエステル成分を複合紡糸して捲縮糸とすることは、古くから知られており、それらの多くは、ポリエチレンテレフタレートを主体とする収縮特性が異なる2種類のポリエステルを複合紡糸した捲縮糸である。
【0003】
特許文献1には、捲縮性能をより向上させるために、複合成分の一方がハードセグメントとしてポリテトラメチレンテレフタレート成分、ソフトセグメントとしてポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーであり、複合成分の他方がポリテトラメチレンテレフタレートである捲縮性能に優れた複合繊維が記載されている。
【0004】
しかしながらこの複合繊維は、衣料用に使用されているポリエチレンテレフタレート繊維と比べると、分散染料の吸尽速度が速いために、ポリエチレンテレフタレート繊維と混繊して用いた場合、染料の染着速度の差が大きく、染色織編物では繊維間に濃淡差が生じ商品によっては見栄えが悪くなり商品価値を低下させるという問題がある。
【0005】
また特許文献2には、一方の複合成分がポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーであり、他方の複合成分がポリエチレンテレフタレートである複合繊維が記載されている。
【0006】
捲縮性能の発現を大きくするためには、接合させる2種類のポリマーの固有粘度差が大きい方が好ましい。しかし、固有粘度の差が大きくなると、両ポリマーのバラス効果が異なるため、吐出したポリマーが高粘度成分側に大きく屈曲するニーリング現象が発生し、紡糸安定性が不良となる。
【0007】
このため特許文献2記載の方法では、ブロック共重合ポリマーとポリエチレンテレフタレートの両成分の粘度差を大きくした場合、製糸性が著しく低下するという問題がある。
【特許文献1】特開昭49−35621号公報
【特許文献2】特開平3−185116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するものであり、粘度差を拡大することなく、良好なストレッチ性が得られるポリエステル系複合繊維、および前記ポリエステル系複合繊維を用いた織編物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の要旨は、50〜95質量%のポリテトラメチレンテレフタレート成分と5〜50質量%ポリオキシテトラメチレングリコール成分を主成分とし、下記(a)を満足するブロック共重合ポリマーAと、95モル%以上の成分がポリエチレンテレフタレートであるポリマーBが接合された複合繊維にある。
【0010】
(a) 2.4≦Mw/Mn
(ここで、Mnは数平均分子量を、Mwは重量平均分子量を表し、Mw/Mnは分子量の分散度を表す。)
また、本発明の第二の要旨は、本発明のポリエステル系複合繊維を含む織編物にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ストレッチ性、均染性に優れた織編物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のポリエステル系複合繊維を構成するブロック共重合ポリマーAは、50〜95質量%のポリテトラメチレンテレフタレート成分と5〜50質量%ポリオキシテトラメチレングリコール成分を主成分とし、下記(a)を満足する必要がある。
【0013】
(a) 2.4≦Mw/Mn
本発明に用いるブロック共重合ポリマーA中のポリオキシテトラメチレングリコールの割合は、5〜50質量%であることが必要である。ポリオキシテトラメチレングリコールの割合が5質量%未満であると、捲縮発現力が小さくなりやすく、織編物のストレッチ性が不十分となりやすい。ポリオキシテトラメチレングリコールの割合が50質量%を超えると、ブロック共重合ポリマーの融点が低下し、後加工工程での熱セットへの耐久性が低下する等、後加工が困難となりやすい。
【0014】
さらに、ポリオキシテトラメチレングリコールとしては、分子量が500〜5000の直鎖状のポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。分子量が500未満の場合には、ブロック共重合ポリマーの耐熱性の低下が大きく、製糸工程だけでなく、加工工程通過性が悪くなり易く、分子量が5000を超えると、ポリテトラメチレンテレフタレートに対するポリオキシテトラメチレングリコールの相溶性が低下し、繊維の不均一性が高くなり、製糸、加工工程通過性が悪くなるだけでなく、繊維の強度低下等の問題が発生しやすくなる。
【0015】
また、ブロック共重合ポリマーAには、結晶性能を大きく阻害しない範囲で他の成分を共重合するものであってもよい。他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸のモノアルカリ金属塩、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸類等があげられる。
【0016】
他のグリコール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(β―オキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールAのビスグリコールエーテル等があげられる。
【0017】
また、本発明におけるポリエチレンテレフタレートポリマーBは、95モル%以上の成分がポリエチレンテレフタレートであることが必要である。
【0018】
ポリエチレンテレフタレートが95モル%未満であると、捲縮発現力が小さくなりやすく、織編物のストレッチ性が不十分となりやすい。
【0019】
また、本発明に用いるポリマーBは、エチレンテレフタレート単位で構成されたものであることが好ましいが、結晶性能を大きく阻害しない範囲で他の成分を共重合するものであってもよい。
【0020】
共重合できる他の成分としては、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸のモノアルカリ金属塩、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸類等があげられる。
【0021】
他のグリコール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(β―オキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールAのビスグリコールエーテル等があげられる。
【0022】
また、本発明に用いるブロック共重合ポリマーAの分子量の分散度(以下 Mw/Mnと標記)は、2.4以上であることが必要である。さらに、2.4〜3.5の範囲であることが好ましい。また、Mw/Mnが2.4未満であると、織編物のストレッチ性が不十分なレベルとなる。Mw/Mnが2.4以上で織編物のストレッチ性が向上する理由については、ブロック共重合体に架橋構造が形成され、ポリマーの弾性が向上するためと考えられる。
【0023】
また、ブロック共重合ポリマーAが2.4≦Mw/Mnを満足するためには、ポリマー中に3官能、およびまたは4官能の分岐剤を共重合させることが好ましい。分岐剤としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等のカルボン酸型分岐剤、トリメチロールプロパンまたはそのエチレンオキサイド付加誘導体、ペンタエリスリトール、グリセリンまたはそのエチレンオキサイド付加誘導体等のアルコール型分岐剤が挙げられるが、織編物のストレッチ性にとっては、4官能のペンタエリスリトールが好ましい。また、通常は酸化防止剤として使用されるテトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート))メタンのように、分子中にエステル形成性官能基を3個または4個有する化合物を用いることがさらに好ましい。
【0024】
分岐剤の共重合量は、ブロック共重合ポリマーAに対して、以下の(b)式を満足することが好ましい。
【0025】
(b)C+2D≧0.06
ここで、Cは、3官能の分岐剤の共重合量(モル%)であり、また3官能の分岐剤1分子あたりで分岐に利用できる官能基数=1を乗じた数でもある。Dは4官能の分岐剤共重合量(モル%)であり、2Dは、4官能の分岐剤の共重合量(モル%)に4官能の分岐剤1分子あたりで分岐に利用できる官能基数=2を乗じた数である。C+2Dが0.06未満であると、架橋構造によるブロック共重合ポリマーAの弾性向上効果が小さく、捲縮発現力が小さくなりやすく、織編物のストレッチ性が不十分となる。
【0026】
また、ブロック共重合ポリマーAとポリエチレンテレフタレートBとの固有粘度差は、0.65以上、1.00以下であることが好ましい。また、0.7〜0.9の範囲であることがさらに好ましい。固有粘度差が0.65未満であると十分な捲縮発現力が得られず、織編物のストレッチ性が不十分となる。固有粘度差が1.00を超えると、紡糸工程において吐出直後の屈曲が大きくなり、製糸安定性が不良となる。
【0027】
ここで、固有粘度とは、ポリマーをフェノールとテトラクロロエタンの1:1混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用して25℃で測定した値をいう。なお、各ポリマーの固有粘度の測定は、複合紡糸繊維を紡糸する条件で、ノズルのみを前記ブロック共重合ポリマーA、前記ポリエチレンテレフタレートポリマーBそれぞれの単一成分のみを吐出可能なノズルに取り替えて、前記ブロック共重合ポリマーAのみから成る糸条と、前記ポリエチレンテレフタレートポリマーBのみから成る糸条をサンプリングし、それぞれの固有粘度の測定を行った。
【0028】
次に、本発明のポリエステル系複合繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0029】
ブロック共重合ポリマーAの製造方法に関しては、工業的に広く用いられている各種の製造方法を採用することができる。
【0030】
例えばジメチルテレフタレート、1,4−ブタンジオール、分岐剤、及びポリオキシテトラメチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下150〜220℃の温度でエステル交換し、次いで230〜260℃に昇温させ、0.5kPa以下の減圧下で加熱することにより得られる。
【0031】
この際、ポリオキシテトラメチレングリコールは、ブロック共重合体分子鎖中に導入されるものと考えることができ、従ってポリオキシテトラメチレングリコールの使用量からブロック共重合体中のポリオキシテトラメチレングリコールの重量比を計算で求めることができる。
【0032】
ブロック共重合ポリマーAの合成に際しては、従来公知の任意のポリテトラメチレンテレフタレート用触媒を用いることができる。また、公知の抗酸化剤等の安定剤、着色防止剤、易滑剤、難燃剤、蛍光剤、その他の添加剤が適宜含まれていてもよい。
【0033】
また、ポリエチレンテレフタレートBの合成に際しても、従来公知の任意のポリエチレンテレフタレート用触媒を用いることができ、公知の着色防止剤、易滑剤、難燃剤、蛍光剤、その他の添加剤が適宜含まれていてもよい。例えばテレフタル酸とエチレングリコールを4kPaの加圧下260℃にてエステル化反応を行い、得られたエステル化物にトリエチルフォスフェイト、三酸化アンチモンを加えた後に0.5kPa以下の減圧下で280〜290℃程度の温度に加熱して重縮合反応を行うことにより得られる。次いで、ブロック共重合ポリマーAとポリエチレンテレフタレートBとは、別々に溶融し、固有粘度差で0.65以上、1.00以下の2種の溶融流からなるサイドバイサイドの複合流とした後、複合流を紡糸口金の吐出孔より吐出し、サイドバイサイドに複合した複合繊維にする。
【0034】
ここで、本発明のポリエステル系複合繊維を得るための紡糸口金については、ブロック共重合ポリマーAとポリエチレンテレフタレートポリマーBの合流地点が吐出孔内において紡糸口金の吐出面から2mm以内である紡糸口金を使用することが織編物のストレッチ性にとって好ましい。このような紡糸口金を使用することで、繊維断面における2成分の界面を直線に近づけることができ、捲縮発現力が大きくなり、織編物のストレッチ性が高くなるからである。
【0035】
吐出孔より吐出したマルチフィラメント糸は、公知の方法で未延伸糸として巻き取った後に延伸を行っても、吐出後一旦巻き取ることなく延伸した後、巻き取って延伸糸としても良い。
【0036】
また本発明では、引き取り速度又は巻き取り速度は1200〜3000m/分、延伸倍率は未延伸糸の最大延伸倍率の、0.65〜0.85倍程度が好ましい。
【0037】
本発明のポリエステル系複合繊維は、パーンから解じょすることにより緊張−緩和がおこり、ポリマーA,Bの塑性変形、弾性変形の差により高い捲縮を発現する。さらに前記繊維を熱水で処理すると、ポリマーA,Bの収縮差が加わりさらに高い捲縮となる。このようなことから本発明のポリエステル系複合繊維を含む織編物は極めて高いストレッチ性有するものとなる。本発明では、織編物のストレッチ性を布帛収縮率で評価し、その値は45%以上となる。また、本発明のポリエステル系複合繊維を含む織編物は、本発明のポリエステル系複合繊維を単独で用いても他繊維を含んでいても良いが、高いストレッチ性を得るためには、本発明のポリエステル系複合繊維は、織編物全体に対して、10質量%以上含まれることが好ましい。
【0038】
なお各評価は以下の方法に従った。
【0039】
(ポリマーの固有粘度[η])
ポリマーをフェノールとテトラクロロエタンの1:1の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計により25℃において測定した。
【0040】
(ポリマーのMn、Mw、Mw/Mn)
ポリマー試料3mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/クロロホルム=1/9(体積比)の混合液10mlに溶解後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液をGPC(TOSOH製HLC−8020)に供し下記の条件で測定した。なお、標準物質としてポリスチレン溶液を調整しGPC較正曲線用試料とした。溶離液:HFIP/クロロホルム=1/9(体積比)
流速:1ml/min
カラム:TSK−GEL G3000HXL、G5000HXL
カラム恒温槽温度:40℃
波長:254nm
(布帛収縮率)
サンプル原糸を撚係数K=10000(T=K/√D、Tは1m当りの撚数、Dはサンプル原糸の繊度(デシテックス))の条件で撚糸を施し、温度70℃、湿度90%RHの条件下で40分間セットした糸を緯糸として、このサンプル糸の繊度(D)から打ち込み本数(本/cm)=311.1/√Dで算出される打ち込み本数で、経糸密度39.6本/cmに設定された56dtex/18フィラメントの原糸を経糸として製織した後、織物の緯糸方向に長さ1mの間隔で印を付け(L0)、緯糸に平行に10cm幅のサンプル布を切り出し、130℃で30分間、熱水処理した。熱水処理したサンプル布を風乾後、片端を固定して垂直に垂らし、下方の他端に0.45g/dtexの荷重をかけ、先に付けた印の間隔(L1)を測定し、次式にて布帛収縮率を算出した。
【0041】
布帛収縮率(%)=((L0−L1)/L0)×100
以下、実施例をあげて本発明を説明する。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
ジメチルテレフタレート3210g、1,4−ブタンジオール2080g、ペンタエリスリトール(以下 PENと標記)4.0g、分子量約1000のポリオキシテトラメチレングリコール(以下 PTMGと標記)1350g、及びチタンテトラブトキシド4gを150〜220℃で加熱してエステル交換反応を行わせた。次いで、ヒンダードフェノール系安定剤として、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート))メタン((株)ADEKA製、製品名:AO−60 以下、AO−60と標記)4.5g、を加え、過剰の1,4−ブタンジオールを留去した後、徐々に減圧にしていき、0.5kPa以下の減圧下で240℃にて重縮合反応を進行させ、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0043】
また、ポリエチレンテレフタレートBについては、テレフタル酸とエチレングリコールを4kPaの加圧下260℃にてエステル化反応を行い、得られたエステル化物にトリエチルフォスフェイト、三酸化アンチモンを加えた後に0.5kPa以下の減圧下で285℃に加熱して重縮合反応を行うことによりポリエチレンテレフタレートBを得た。得られたポリエチレンテレフタレートポリマーの[η]を表1に示した。
【0044】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAを230℃で、ポリエチレンテレフタレートBを285℃で別々に溶融した後に、270℃の紡糸頭に導入し、吐出孔内において各ポリマーの導入孔が紡糸口金の吐出面から0.8mmの位置にあり、丸形の吐出孔を12個有する紡糸口金から吐出して2成分の比率が1/1のサイドバイサイド複合流とし、紡速1800m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]については、各成分の単独ポリマーの紡出糸を別々にサンプリングしたもので測定した結果を表1に示した。
【0045】
前記未延伸糸を、80℃の熱ローラーを介して、未延伸糸の最大延伸破断倍率の70%延伸するとともに、130℃の熱板に接触させて熱処理し、400m/分の速度で巻き取り、56dtex/12フィラメント(以下 fと標記)の延伸糸を得た。
【0046】
得られた延伸糸の布帛収縮率は58.5%と高く、高いストレッチ性を有していた。
【0047】
(実施例2)
紡糸時の溶融温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した
(実施例3)
PENを3.0gとした以外、実施例1と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0048】
次いで、前記ブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0049】
(実施例4)
PENを6.7gとした以外、実施例1と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0050】
(実施例5)
PENに替えて、トリメチロールプロパン(以下 TMPと標記)5.32gを加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0051】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0052】
(実施例6)
PENに替えて、トリメリット酸(以下 TMAと標記)7.62gを加えた以外は、実施例1と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0053】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0054】
(実施例7)
PENを加えず、AO−60の添加量を75gに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの固有粘度[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0055】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0056】
(実施例8)
AO−60の添加量を7.5gに変更した以外は、実施例7と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの固有粘度[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0057】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0058】
(実施例9)
ジメチルテレフタレート3479g、1,4−ブタンジオール2259g、分子量約1000のPTMG1000g、及びチタンテトラブトキシド4gを150〜220℃で加熱してエステル交換反応を行わせた。次いで、AO−60を75g加え、過剰の1,4−ブタンジオールを留去した後、徐々に減圧にしていき、0.5kPa以下の減圧下で240℃にて重縮合反応を進行させ、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0059】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0060】
(実施例10)
ジメチルテレフタレート2554g、1,4−ブタンジオール1618g、分子量約1000のPTMG2000g、及びチタンテトラブトキシド4gを150〜220℃で加熱してエステル交換反応を行わせた。次いで、AO−60を75g加え、過剰の1,4−ブタンジオールを留去した後、徐々に減圧にしていき、0.5kPa以下の減圧下で240℃にて重縮合反応を進行させ、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0061】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0062】
(比較例1)
AO−60の添加量を2.25gに変更した以外は、実施例7と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの固有粘度[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0063】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0064】
(比較例2)
PENを5.0gとした以外、実施例1と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの固有粘度[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0065】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0066】
(比較例3)
ブロック共重合ポリマーAに代えて未変性のポリテトラメチレンテレフタレートを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。ポリテトラメチレンタレフタレートの固有粘度[η]、Mn,Mw,Mn/Mw、紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0067】
(比較例4)
ブロック共重合ポリマーAの固有粘度を1.551とし、ポリエチレンテレフタレートBの紡糸温度を300℃とした以外は、実施例8と同様の方法で紡糸を試みたが、紡糸工程において吐出直後の屈曲が大きくなり、未延伸糸を採取することができなかった。得られたブロック共重合ポリマーAの固有粘度[η]、Mn,Mw,Mn/Mw、紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]を表1に示した。
【0068】
(比較例5)
AO−60の添加量を1.125gに変更した以外は、実施例7と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAを得た。得られたブロック共重合ポリマーAの固有粘度[η]、Mn,Mw,Mn/Mwを表1に示した。
【0069】
次いで、得られたブロック共重合ポリマーAと、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレートBを用いて、実施例1と同様に紡糸、延伸を行い、延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分の固有粘度[η]、および布帛収縮率を表1に示した。
【0070】
(比較例6)
AO−60を無添加とした以外は、比較例1と同様の方法で、ブロック共重合ポリマーAの重縮合を行ったが、熱分解が大きく、反応を充分に進められず、ポリマーを得ることができなかった。
【表1】

【表2】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の複合繊維に使用する紡糸口金の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1:吐出孔
2:ポリマーA導入孔
3:ポリマーB導入孔
4:口金吐出面からポリマー導入孔までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜95質量%のポリテトラメチレンテレフタレート成分と5〜50質量%ポリオキシテトラメチレングリコール成分を主成分とし、下記(a)を満足するブロック共重合ポリマーAと、95モル%以上の成分がポリエチレンテレフタレートであるポリマーBが接合された複合繊維。
(a) 2.4≦Mw/Mn
(ここで、Mnは数平均分子量を、Mwは重量平均分子量を表し、Mw/Mnは分子量の分散度を表す。)
【請求項2】
ブロック共重合ポリマーAが、ポリマー中に3官能、およびまたは4官能の分岐剤が共重合されており、その共重合量が下記(b)を満足するブロック共重合ポリマーである請求項1に記載のあるポリエステル系複合繊維。
(b)C+2D≧0.06
(ここで、Cは3官能の分岐剤の共重合量(モル%)を、Dは4官能の分岐剤共重合量(モル%)を表す。)
【請求項3】
ブロック共重合ポリマーAと、ポリエチレンテレフタレートポリマーBとの固有粘度差が0.65以上、1.00以下である請求項1または、2に記載のあるポリエステル系複合繊維
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のあるポリエステル系複合繊維を含む織編物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101281(P2008−101281A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282455(P2006−282455)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】