説明

ポリエステル系複合繊維及びその製造方法並びに織編物

【課題】本発明は、ポリエチレンテレフタレート繊維と混繊し染色したときでも、染色織編物には繊維間の濃淡差が極めて少なく見栄えが良好で、極めて高いストレッチ性を織編物に付与するポリエステル系複合繊維及びその織編物を提供する。
【解決手段】ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAと、ポリエチレンテレフタレートポリマーBがサイドバイサイドに複合した複合繊維であって、下記(a)、(b)を満足するポリエステル系複合繊維。
(a)Y/X≦0.20
(b)20cN/dtex≦ヤング率≦60cN/dtex

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ性に優れたポリエステル系複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から収縮特性が異なる2つのポリエステル成分を複合紡糸して捲縮糸とすることは、古くから知られており、それらの多くは、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル同士を複合紡糸した捲縮糸である。
【0003】
特許文献1には、捲縮性能をより向上させるために、複合成分の一方がハードセグメントとしてポリテトラメチレンテレフタレート成分、ソフトセグメントとしてポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーであり、複合成分の他方がポリテトラメチレンテレフタレートである捲縮性能に優れた複合繊維が記載されている。
【0004】
しかしながらこの複合繊維は、衣料用に使用されているポリエチレンテレフタレート繊維と比べると、分散染料の吸尽速度が速いために、ポリエチレンテレフタレート繊維と混繊し、染色したときに染色性差が大きく、染色織編物では繊維間に濃淡差が生じ商品によっては見栄えが悪くなり商品価値を低下させるという問題がある。
【0005】
また特許文献2には、一方の複合成分がポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーであり、他方の複合成分がポリエチレンテレフタレートである複合繊維が記載されている。
【特許文献1】特開昭49−35621号公報
【特許文献2】特開平3−185116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
捲縮性能の発現を大きくするためには、張り合わせる2種類のポリマーの固有粘度差が大きな方が好ましい。しかし、固有粘度の差が大きくなると、両ポリマーのバラス効果が異なるため、吐出したポリマーが高粘度成分側に大きく屈曲するニーリング現象が発生し、紡糸安定性が不良となる。
【0007】
このため特許文献2記載の方法では、ブロック共重合ポリマーとポリエチレンテレフタレートの両成分の粘度差を大きくできないため、極めて高いストレッチ性の複合繊維が得られないという問題がある。
【0008】
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するものであり、ポリエチレンテレフタレート繊維と混繊し、染色したときでも、染色織編物には繊維間の濃淡差が極めて少なく見栄えが良好で、極めて高いストレッチ性を織編物に付与するポリエステル系複合繊維を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の要旨は、ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAと、ポリエチレンテレフタレートポリマーBがサイドバイサイドに複合した複合繊維であって、下記(a)、(b)を満足するポリエステル系複合繊維にある。
【0010】
(a)Y/X≦0.20
(b)20cN/dtex≦ヤング率≦60cN/dtex
X:繊維断面の外周とポリマーA、Bの接合面の曲線が交わる2点を結ぶ直線xの長さ
Y:直線xの中点と、該中点を通り直線xに垂直な直線とA、Bの接合面が交わる点を結ぶ直線yの長さ
また本発明の第2の要旨は、固有粘度差が0.50以上1.00以下である、ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAとポリエチレンテレフタレートポリマーBを、吐出孔内において紡糸口金の吐出面から2mm以内で合流した後に吐出するポリエステル系複合繊維の製造方法にある。
【0011】
さらに本発明の第3の要旨は、本発明のポリエステル系複合繊維を含む織編物にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ストレッチ性、均染性に優れた複合繊維、織編物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のポリエステル系複合繊維は、ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAと、ポリエチレンテレフタレートポリマーBがサイドバイサイドに複合した複合繊維で、繊維断面において、繊維断面の外周とポリマーA、Bの接合面の曲線が交わる2点を結ぶ直線xの長さをX、該直線xの中点と該中点を通り直線xに垂直な直線とA、Bの接合面が交わる点を結ぶ直線yの長さをYとしたときに、Y/Xが0.20未満であることが必要である。
【0014】
本発明では、緊張−緩和処理におけるポリマーA、Bの塑性変形、弾性変形の差により捲縮が発現するものであり、巻き取った延伸糸を解除すること(緊張−緩和)で顕著な捲縮が発現し優れたストレッチ性が得られるが、Y/Xが小さくポリマーA、Bの接合面が直線に近いほうが、緊張−緩和処理による捲縮発現力が大きくなり、織編物のストレッチ性が高くなる。Y/Xが0.20を超えると、捲縮発現が不十分となり織編物のストレッチ性が低下する。
【0015】
さらに本発明では、繊維断面の外周とポリマーA、Bの接合面の曲線が交わる2点を結ぶ直線xの長さをXとし、該直線xの中点を通り直線xに垂直な直線と繊維外周との交点を結ぶ直線の長さをZとしたときに、Z/Xが0.80以上、1.60以下にすることが好ましい。このZ/Xの値は、複合繊維の断面形状を表すファクターであり、Z/Xが0.80未満、または1.60を超えると、断面形状が影響して捲縮発現力が小さくなりやすく、織編物のストレッチ性が低下しやすい。
【0016】
また本発明では、ヤング率が20cN/dtex以上、60cN/dtex以下であることが必要である。ヤング率が20cN/dtex未満になると、複合繊維の強度が低くなりすぎて、実用上使用困難となり、60cN/dtexを超えると、最終的な織編物の引張応力が高くなるため、ストレッチ性の高い織編物が得られても、手で引っ張ったときの感覚が硬く、風合いが低下する。
【0017】
本発明の、ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAは、ハードセグメントがポリテトラメチレンテレフタレート、ソフトセグメントがポリオキシテトラメチレングリコールであるポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体である。
【0018】
ハードセグメントのポリテトラメチレンテレフタレートとしては、テトラメチレンテレフタレート単位で構成されたものであることが好ましいが、結晶性能を大きく阻害しない範囲でアジピン酸、イソフタル酸等の第3成分を含有するものであってもよい。
【0019】
なお、ソフトセグメントであるポリオキシテトラメチレングリコールの割合は、5〜50重量%であることが好ましく、ポリオキシテトラメチレングリコールの割合が5重量%未満であると、緊張−緩和処理による捲縮発現力が小さくなりやすく、織編物のストレッチ性が不充分となりやすい。一方、ポリオキシテトラメチレングリコールの割合が50重量%を超えると、ブロック共重合ポリマーの融点が低下し、後加工工程での熱セットへの耐久性が低下する等、後加工が困難となりやすい。
【0020】
さらに、ソフトセグメントのポリオキシテトラメチレングリコールとしては、分子量が500〜5000の直鎖状のポリオキシテトラメチレングリコールが好ましい。分子量が500未満の場合には、ブロック共重合ポリマーの耐熱性の低下が大きく、製糸工程だけでなく、加工工程通過性が悪くなり易く、分子量が5000を超えると、ポリテトラメチレンテレフタレートに対するポリオキシテトラメチレングリコールの相溶性が低下し、繊維の不均一性が高くなり、製糸性、加工工程通過性が悪くなるだけでなく、繊維の強度低下等の問題が発生しやすくなる。
【0021】
また、本発明におけるポリエチレンテレフタレートポリマーBは、エチレンテレフタレート単位で構成されたものであることが好ましいが、結晶性能を大きく阻害しない範囲でアジピン酸、イソフタル酸等の第3成分を含有するものであってもよい。
【0022】
次に、本発明のポリエステル系複合繊維の製造方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明のポリエステル系複合繊維は、固有粘度差が0.50以上1.00以下である、ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAとポリエチレンテレフタレートポリマーBを、吐出孔内において紡糸口金の吐出面から2mm以内で合流した後に吐出することにより得られる。
【0024】
該ブロック共重合ポリマーAと該ポリエチレンテレフタレートポリマーBの 固有粘度の差が0.5未満の場合には、緊張−緩和処理による十分な捲縮発現力が得られず、織編物のストレッチ性が不充分となる。固有粘度差が1.00を超えると、ニーリングが発生しやすくなり紡糸安定性が低下する。
【0025】
ここで、固有粘度とは、ポリマーをフェノールとテトラクロロエタンの1:1混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用して25℃で測定した値をいう。
【0026】
なお、各ポリマーの固有粘度の測定は、複合紡糸繊維を紡糸する条件で、ノズルのみを該ブロック共重合ポリマーA、該ポリエチレンテレフタレートポリマーBそれぞれの単一成分のみを吐出可能なノズルに取り替えて、該ブロック共重合ポリマーAのみから成る糸条と、該ポリエチレンテレフタレートポリマーBのみから成る糸条をサンプリングし、それぞれの固有粘度の測定を行った。
【0027】
このようなブロック共重合ポリマーAは、例えばジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオール及びポリオキシテトラメチレングリコールを、チタン化合物を触媒として、150〜220℃の温度でエステル交換し、次いで230〜260℃に昇温し、0.5kPa以下の減圧下で加熱することにより得られる。
【0028】
この際、ポリオキシテトラメチレングリコールは、ブロック共重合体分子鎖中に導入されるものと考えることができ、従ってポリオキシテトラメチレングリコールの使用量からブロック共重合体中のソフトセブグメントの重量比を計算で求めることができる。
【0029】
また、複合成分の他方のポリエチレンテレフタレートBは、例えばテレフタル酸とエチレングリコールを4kPaの加圧下260℃にてエステル化反応を行い、得られたエステル化物にトリエチルフォスフェイト、三酸化アンチモンを加えた後に0.5kPa以下の減圧下で280〜290℃程度の温度に加熱して重縮合反応を行うことにより得られる。
【0030】
本発明の複合繊維は、公知の複合紡糸方法で製造可能であるが、ブロック共重合ポリマーAとポリエチレンテレフタレートポリマーBを、図2に示すような、吐出孔内1において各ポリマーの導入孔2,3が、紡糸口金の吐出面からの距離4が2mm以内の位置にある紡糸口金を用い、両成分のポリマーを紡糸口金の吐出面から2mm以内で合流した後に吐出することが必要である。
【0031】
吐出孔内において、両成分のポリマーの合流する位置(ポリマーの導入孔の位置)が、紡糸口金の吐出面から2mmを越える場合には、両成分のポリマー接合面の直線性が低下し、Y/Xが0.20を超え、捲縮発現性が低下する。
【0032】
吐出孔より吐出したマルチフィラメント糸は、公知の方法で未延伸糸として巻き取った後に延伸を行っても、吐出後一旦巻き取ることなく延伸した後、巻き取って延伸糸としても良い。
【0033】
また本発明では、引き取り速度又は巻き取り速度は1200〜3000m/分、延伸倍率は未延伸糸の最大延伸倍率の、0.65〜0.85倍程度が好ましい。
【0034】
得られた延伸糸はパーンから解除することにより巻き取りの際の緊張が緩和され、ポリマーA、Bの塑性変形、弾性変形の差により捲縮を発現し、長手方向に単繊維間でランダムな捲縮を有する部分と単繊維間で比較的捲縮形態が揃ったコイル状の部分を有するものとなる。
【0035】
また、本発明のポリエステル系複合繊維を含む織編物は、本発明のポリエステル系複合繊維を単独で用いても他繊維を含んでいても良いが、高いストレッチ性を得るためには、本発明のポリエステル系複合繊維は、混繊糸中に30重量%以上含まれることが好ましい。
【0036】
以下、実施例をあげて本発明を説明する。なお各評価は以下の方法に従った。評価結果は表1に示した。
(繊維断面の観察)
光学顕微鏡を用いて延伸糸の断面を400倍に拡大した写真を撮影し、界面を観察した。界面が不明確の場合は、公知の方法で分散染料で染色した後に観察を行った。
【0037】
(ポリマーの融点)
セイコー電子工業社製DSC220を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
【0038】
(ポリマーの固有粘度[η])
ポリマーをフェノールとテトラクロロエタンの1:1の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計により25℃において測定した。
【0039】
(ヤング率(初期引張抵抗度))
JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に準拠して測定した。 試長200mm、引張速度20mm/分、チャート速度300mm/分で、荷重−伸長曲線を描き、この曲線から原点の近くで伸長変化の最大点A(接線角の最大点)を求め、次の式により算出した。
【0040】
ヤング率(cN/dtex)=P/(d× l’/l)
(P:接線角の最大点Aにおける荷重(cN)、d:繊維の繊度(dtex)、l:試験長(mm)、l’:THの長さ(Hは垂線の足、Tは接線の横軸との交点))
(織物伸長率)
サンプル原糸を撚係数K=10000(T=K/√D、Tは1m当りの撚数、Dはサンプル原糸のデニール)の条件で撚糸を施し、温度70℃、湿度90%RHの条件下で40分間セットした糸を緯糸として、このサンプル糸の繊度(D)から打ち込み本数(本/cm)=311.1/√Dで算出される打ち込み本数で、経糸密度39.6本/cmに設定された56dtex/18フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸を経糸として製織した後、緯糸に平行に10cm幅のサンプル布を切り出し、130℃で30分間、熱水処理した。熱水処理したサンプル布を風乾後、緯糸の方向を鉛直方向として片端を固定して無荷重下で垂らし、緯糸方向にL0=30cmの間隔の印を付けた。その後、下方の他端に2.0kgの荷重をかけ、先に付けた印の間隔(L1)を測定し、次式にて伸長率を算出した。
【0041】
伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
【実施例1】
【0042】
ジメチルテレフタレート3.02kg、1,4−ブタンジオール1.70kg及び分子量約1000のポリオキシテトラメチレングリコール1500gを、チタンテトラブトキサイド3gの存在下で、150〜210℃で3時間加熱してエステル交換反応を行わせ、次いで徐々に減圧にしながら250℃まで昇温し、最終的に0.2KPaの圧力で3時間反応させた。得られたブロック共重合ポリマーは、ポリテトラメチレンテレフタレート成分を70重量%、ポリオキシテトラメチレングリコール成分を30重量%含み、融点203℃、[η]は1.29であった。
【0043】
得られたブロック共重合ポリマーを225℃で、酸化チタンを1.5重量%含む[η]が0.51のポリエチレンテレフタレートを285℃で別々に溶融した後に、270℃の紡糸頭に導入し、吐出孔内において各ポリマーの導入孔が紡糸口金の吐出面から0.8mmの位置にあり、泪形の吐出孔を12個有する紡糸口金から吐出して2成分の比率が1/1のサイドバイサイド複合流とし、紡速1800m/分で巻き取り未延伸糸を得た。
【0044】
また、紡糸後の各複合成分のポリマーの[η]については、各成分の単独ポリマーの紡出糸を別々にサンプリングしたもので測定した結果、ブロック共重合ポリマー紡出糸の[η]は1.28、ポリエチレンテレフタレート紡出糸の[η]は0.49であった。
【0045】
この未延伸糸を延伸速度600m/分、温度82℃、延伸倍率2.84倍(最大延伸倍率の0.82倍)で延伸し56dtex/12fの延伸糸を得た。巻き取った延伸糸を解除すると、長手方向に単繊維間でランダムな捲縮を有する部分と単繊維間で比較的捲縮形態が揃ったコイル状の部分を有するものであった。
【0046】
得られた延伸糸のヤング率は40cN/dtex、延伸糸を構成する単繊維断面のY/Xは0.11で、Z/Xは1.33であった。さらに、延伸糸の織物の伸長率は110%と非常に高いストレッチ性を有するものであった。
【0047】
(比較例1)
実施例1と同様のブロック共重合ポリマーを225℃で、実施例1記載のポリエチレンテレフタレートを285℃で別々に溶融した後に、270℃の紡糸頭に導入し、吐出孔内において各ポリマーの導入孔が紡糸口金の吐出面から3mmの位置にあり、円形の吐出孔を12個有する紡糸口金から吐出して2成分の比率が1/1のサイドバイサイド複合流とし、紡速1800m/分で巻き取り未延伸糸を得た。
【0048】
この未延伸糸を延伸速度600m/分、温度82℃、延伸倍率2.84倍(最大延伸倍率の0.82倍)で延伸し56dtex/12fの延伸糸を得た。
【0049】
得られた延伸糸のY/Xは0.58で、Z/Xは1.0であったが、織物の伸長率は61%とストレッチ性は不充分であった。
【0050】
(比較例2)
実施例1と同様のブロック共重合ポリマーを225℃で、実施例1記載のポリエチレンテレフタレートを285℃で、別々に溶融した後に、270℃の紡糸頭に導入し、各成分を個別の吐出孔から吐出した直後に2成分を合流するタイプの紡糸口金を用いて紡糸し、2成分の比率が1/1のサイドバイサイド複合流とし、紡速1800m/分で巻き取り未延伸糸を得た。 この未延伸糸を延伸速度600m/分、温度82℃、延伸倍率2.84倍(最大延伸倍率の0.82倍)で延伸し56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸のY/Xは0.03で、Z/Xは1.81であったが、織物の伸長率は65%と低く、ストレッチ性は不充分であった。
【0051】
(比較例3)
イソフタル酸を8モル%共重合した[η]0.70の変性PETを270℃で、実施例1記載の未変性PETを285℃で、別々に溶融した後に、280℃の紡糸頭に導入し、実施例1と同様の紡糸口金から吐出して2成分の比率が1/1のサイドバイサイド複合流とし、紡速1800m/分で巻き取り未延伸糸を得た。
【0052】
また、紡糸後の各複合成分のポリマーの[η]については、各成分の単独ポリマーの紡出糸を別々にサンプリングしたもので測定した結果、イソフタル酸共重合PETの[η]は0.68、未変性PETの[η]は0.48であった。
【0053】
この未延伸糸を延伸速度600m/分、温度85℃、延伸倍率2.77倍(最大延伸倍率の0.82倍)で延伸し56dtex/12fの延伸糸を得た。巻き取った延伸糸を解除しても、捲縮は発現しなかった。
【0054】
得られた延伸糸のY/Xは0.13で、Z/Xは1.35であった。また、延伸糸のヤング率は68cN/dtexであった。延伸糸の織物の伸長率を測定したところ38%とストレッチ性は不充分であった。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の複合繊維の断面の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の紡糸口金の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
A:ブロック共重合ポリマー
B:ポリエチレンテレフタレートポリマー
X:繊維断面の外周とポリマーA、Bの接合面の曲線が交わる2点を結ぶ直線xの長さ
Y:直線xの中点と、該中点を通り直線xに垂直な直線とA、Bの接合面が交わる点を結ぶ直線yの長さ
1:吐出孔
2:ポリマーA導入孔
3:ポリマーB導入孔
4:口金吐出面からポリマーの導入孔までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAと、ポリエチレンテレフタレートポリマーBがサイドバイサイドに複合した複合繊維であって、下記(a)、(b)を満足するポリエステル系複合繊維。
(a)Y/X≦0.20
(b)20cN/dtex≦ヤング率≦60cN/dtex
X:繊維断面の外周とポリマーA、Bの接合面の曲線が交わる2点を結ぶ直線xの長さ
Y:直線xの中点と、該中点を通り直線xに垂直な直線とA、Bの接合面が交わる点を結ぶ直線yの長さ
【請求項2】
固有粘度差が0.50以上1.00以下である、ポリテトラメチレンテレフタレート成分とポリオキシテトラメチレングリコール成分からなるブロック共重合ポリマーAとポリエチレンテレフタレートポリマーBを、吐出孔内において紡糸口金の吐出面から2mm以内で合流した後に吐出するポリエステル系複合繊維の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のポリエステル系複合繊維を含む織編物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−328614(P2006−328614A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157495(P2005−157495)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】