説明

ポリエステル繊維およびそれを用いた布帛

【課題】洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない、優れた撥水性能を有し、かつ実用に耐えうる十分な強度や伸度などの機械的物性を有する合成繊維の提供。
【解決手段】アルキレン基の両端にカルボキシル基または水酸基が付加した炭素数が15〜23の撥水成分を、ポリエステル組成物の重量を基準として、該撥水成分の含有量が10〜30重量%の範囲にあるポリエステル組成物からなるポリエステル繊維およびそれを用いた布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族炭化水素系撥水成分を含有するポリエステル繊維に関し、特に優れた撥水性と機械的特性とを有するポリエステル繊維およびそれを用いた布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂を含有する分散液等で布帛を処理して布帛表面にこれらの樹脂を付着せしめて、撥水処理を施すことは広く行われている。しかしながら、これらの加工処理で得られた布帛には撥水性はあるものの、耐久性が低く、布帛の使用に伴って処理した樹脂が、その表面から脱落して撥水性を失い易いという欠点を有している。一方、十分な撥水耐久性を付与する程の量を処理すると布帛の風合いが硬くなるという問題点があった。そのためにポリエステル繊維のスポーツウェア分野等撥水耐久性と風合いが共に要求される分野への応用が大きく制限されていた。
【0003】
これに対して、特開昭62−238822号公報(特許文献1)にはフッ素系樹脂を溶融混練して得られた繊維が提案され、特開平2−26919号公報(特許文献2)にはフッ素系重合体微粒子を練り込んで得られた繊維が提案されている。また、特開平9−302523号公報(特許文献3)および特開平9−302524号公報(特許文献4)ではテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフルオリドの共重合体を撥水成分としてポリエステルに含有した繊維が提供されている。しかしながら、フッ素樹脂は一般に融点と分解点が近いため、長期のランニングでは分解熱劣化したポリマーが影響して、安定して良好な糸質の繊維を得ることが困難である。また、加熱によるフッ化水素の発生により装置を劣化させてしまう危険性がある。また、布帛の撥水性は織編み構造や目付けなどにより大きく変化するため、繊維の本質的な撥水性を評価しておらず、本質的な撥水性の評価ができていないという問題がある。
【0004】
また、特開2005−105424号公報(特許文献5)では、炭素数が26以上のダイマー酸や炭素数が24以上のダイマージオールを含有させることが提案されているが、強度や伸度などの物性が低下しやすいなどの問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−238822号公報
【特許文献2】特開平2−26919号公報
【特許文献3】特開平9−302523号公報
【特許文献4】特開平9−302524号公報
【特許文献5】特開2005−105424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、撥水性能と強度や伸度などの機械的物性とを高度に兼備するポリエステル繊維およびそれを用いた布帛を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして本発明によれば、下記一般式(1)
−R−X ・・・(1)
(上記式(1)中、Rはアルキレン基であり、XおよびXはそれぞれカルボキシル基または水酸基である。)
で示される炭素数が15〜23の範囲にある撥水成分を含有するポリエステル組成物からなる繊維であって、ポリエステル組成物の重量を基準として、該撥水成分の含有量が10〜30重量%の範囲にあるポリエステル繊維およびそれを用いた布帛が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、ポリエステル組成物の固有粘度が0.61dl/g以上であるポリエステル繊維や布帛の重量を基準として、30重量%以上が、本発明のポリエステル繊維である布帛も提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撥水性能と強度や伸度などの機械的物性とを高度に兼備するポリエステル繊維およびそれを用いた布帛が提供され、その結果、安定して繊維及び布帛とすることができる。そして、得られる布帛を衣服とした場合、繊維自体が撥水性を有することから、着用や洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少なく、しかも強度などの機械的特性も十分あることから破れなどの生じがたい耐久性の優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリエステル繊維は、前記式(1)の構造を有する撥水成分を、ポリエステル組成物重量を基準として、10〜30重量%含有させたポリエステル組成物からなる。含有量が下限未満では、得られるポリエステル繊維を布帛としたときに十分な撥水性が発現されがたく、他方上限を越えると、得られるポリエステル繊維の強度が乏しくなり、糸切れが発生しやすくなる。好ましい撥水成分の含有量は、10〜30重量%、さらに15〜20重量%の範囲である。なお、本発明における撥水成分が含有されているとは、撥水成分がポリエステルに対して化学結合により分子鎖に取り込まれて共重合されている状態と、ポリエステルとは化学結合せずにブレンド状態で存在する状態の両方を意味する。
【0011】
本発明で使用される撥水成分は、前述の式(1)で示されるものであり、上記式(1)中、Rはアルキレン基であり、XおよびXはそれぞれカルボキシル基または水酸基であり、好ましくは両方共にカルボキシル基である。また、撥水成分を構成する炭素数は、15〜23、好ましくは18〜21の範囲にあることが必要である。本発明における撥水性は、撥水成分のアルキレン基の部分が大きく影響し、撥水成分の炭素数が下限未満の場合には十分な撥水性がみられない。また、撥水成分の炭素数が上限を超える場合、得られる繊維の強度や伸度などの機械的物性が損なわれやすくなる。好ましい撥水成分としては、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸もしくはそれらの側鎖に上記炭素数を満足する範囲でメチル基やエチル基などを有するものが挙げられ、特に8−エチルオクタデカン二酸やエイコサン二酸が好ましい。
【0012】
本発明のポリエステル繊維を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステルを好ましく挙げることができ、これらのなかでも機械的性質、成形性等のバランスのとれたポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートが好ましい。なお、これらのポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて他の成分が共重合されていても良い。例えば、共重合成分としては、イソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはペンタエリスリトールなどを挙げることができる。また、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸モノカリウム塩などの多価カルボン酸、グリセリン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどの多価ヒドロキシ化合物、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸などを共重合してもよい。
【0013】
本発明におけるポリエステルの製造方法としては、公知の任意の方法で合成すればよい。例えば、ジカルボン酸成分がテレフタル酸の場合、テレフタル酸とアルキレングリコールとを直接エステル化反応させる方法、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとアルキレングリコールとをエステル交換反応させる方法、またはテレフタル酸とアルキレンオキサイドを反応させる方法によってテレフタル酸のグリコールエステルを生成させる第一段の反応を行い、引続いて重合触媒の存在下に減圧加熱して所望の重合度になるまで重縮合させる第二段の反応によって製造できる。なお、上述の撥水成分の添加時期は、本発明の効果の点から、このポリエステルの重縮合反応の前から重縮合反応の終了以前に行なうのが好ましく、複数回に分けて添加しても良い。そして、この添加時期や添加量によって上記共重合している撥水成分の割合を調整することもできる。
【0014】
なお、第一段階の反応がエステル交換反応の場合、反応温度は180〜230℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaの範囲が好ましく、また第二段階の反応(重縮合反応)時の反応温度は200〜260℃、反応圧力は60〜0.1kPaの範囲であることが好ましい。このようなエステル交換反応および重縮合反応は一段で行っても、複数段階に分けて行っても良い。
【0015】
これらの反応段階で用いるエステル交換触媒としては、ナトリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、チタン、亜鉛またはマンガン等の金属化合物を使用するのが好ましい。重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物またはスズ化合物を使用するのが好ましい。触媒の使用量は、エステル交換反応、重縮合反応を進行させるために必要な量であるならば、特に限定されるものではなく、また複数の触媒を併用することも可能である。また第一段階の反応が直接エステル化反応の場合、触媒を用いなくでも直接エステル化反応を進行することもできるが、必要に応じて上記の触媒を用いても良い。
【0016】
また、第一段階の反応の途中、第二段階の反応の途中若しくは反応終了後のいずれかにおいて安定剤を添加することも好ましい。その安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート等の酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、若しくはポリリン酸等のリン化合物、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が好ましい。
【0017】
重縮合段階においては溶融粘度のモニターすること等の手法により目的とするポリエステルの重合度(分子量、固有粘度)であることを確認できるまで、上記の条件にて重縮合反応を行う。そして目的とする分子量に到達したことを確認した後、重縮合反応を終了し、反応槽から吐出し冷却後チップ状にカットすることによりポリエステルを得ることができる。そのチップを乾燥後、後述のポリエステル繊維等の製造に用いる事ができる。また一旦チップ状に成形することなく、重縮合反応終了後のポリエステルからそのままポリエステル繊維を製造しても良い。 ところで、本発明のポリエステル繊維は、繊維とした状態での固有粘度(溶媒:1,1,2,2−テトラクロルエタン40重量%とフェノール60重量%の混合溶媒)が0.61以上、さらに0.62dl/g以上、特に0.63dl/g以上であることが好ましい。他方、固有粘度の上限は特に制限はされないが、紡糸安定性などの点から0.80dl/g以下であることが好ましく、さらに固相重合などの追加の固有粘度を高くする工程を省略または時間を短縮できることから0.70dl/g以下であることが好ましい。そして、固有粘度を下限以上にすることで、前述の撥水成分を含有させたことによる強度や伸度などの機械的物性の低下をより抑制しやすくなる。このような繊維とした状態での固有粘度を満足させるには、一つには繊維状に押出す際の溶融押出機での温度をなるべく低くし、かつそこでの滞留時間を短くして、ポリマーの固有粘度の低下を小さくすることが挙げられる。ただ、そのような条件を採用したとしても0.02〜0.03dl/gの固有粘度は低下は避けられないことから、さらに使用するポリマーの固有粘度を繊維とした状態での固有粘度よりも0.03dl/g以上高いものとすることが好ましい。また、このような高い固有粘度のポリエステルに均一に含有させる観点からも、撥水成分の炭素数は前述の上限以下であることが好ましい。
【0018】
本発明に係るポリエステル繊維は、それ自体公知の方法で製造することができる。例えば、紡糸方法も特に限定はなく、例えば前述のようにして得られたポリエステル組成物を溶融状態で繊維状に押出し、それを500〜3500m/分の速度で溶融紡糸し、延伸、熱処理する方法、1000〜5000m/分の速度で溶融紡糸し、延伸、仮撚加工を同時に又は続いて行う方法、5000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法などが好ましく挙げられる。また、そのようにして得られる繊維を所望の長さに切断して短繊維としても良いし、さらにスパンボンドやメルトブロー紡糸といった方法も好ましく採用できる。繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、円形断面のほか、楕円形断面、三角断面、星型断面であってもよい。また、本発明のポリエステル繊維は、前述の撥水成分を含有するポリエステル組成物だけを用いて紡糸した繊維に限られず、該撥水成分を含有するポリエステル組成物が得られる繊維の表面配置するように、例えば該撥水成分を含有するポリエステル組成物が鞘に、該撥水成分を含有しないか鞘のポリエステル組成物よりも含有量が少ないポリエステル組成物を芯に配置した芯鞘構造の複合繊維であってもよいし、芯が多数ある海島型の複合繊維であってもよい。このような複合繊維とすることは、繊維の機械的物性をさらに保持しやすいことから好ましい。
【0019】
ところで、本発明のポリエステル繊維は、前述のとおり、撥水成分を含有することにより優れた撥水性を有する。ただ、布帛とした際に、十分な撥水性を発現させる観点からは、ポリエステル繊維の表面の水との接触角は110°以上、さらに好ましくは115°以上であることが好ましい。このような高い接触角をポリエステル繊維自体に具備させることで、布帛にしたときに優れた撥水性を発現させることができる。このような水との接触角は、撥水成分の種類にもよるが、撥水成分の含有量を増やしていくことで大きくすることができる。
【0020】
また、本発明のポリエステル繊維は、撥水性とその後の加工工程などの取扱い性の観点から、単糸繊度は0.3〜5.0dtexの範囲、さらには1.0〜3.0dtexの範囲にあることが好ましい。また、長繊維として用いる場合は、同様な理由から繊維束としての繊度(単子繊度×単糸数)が30〜150dtex、さらには50〜100dtexの範囲にあることが好ましい。
【0021】
つぎに本発明の布帛は、上述の本発明のポリエステル繊維から形成されたものであり、織物、編物、不織布のいずれの形態であっても良い。特に布帛にしたときの撥水性をより発現しやすいことから、織物であることが好ましい。また、本発明の布帛は、布帛にしたときの撥水性をより発現しやすくするため、布帛の重量を基準として、30重量%以上、さらに50重量%以上が、本発明のポリエステル繊維で占められていることが好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
(1)固有粘度:
1,1,2,2−テトラクロルエタン40重量%とフェノール60重量%の混合溶媒中に試料を溶解して定法に従って35℃にて測定した。
【0024】
(2)強度・伸度
20℃、65%RHの雰囲気下で引張試験機により、試料長20cm、速度20cm/分の条件で破断時の強度および伸度を測定した。測定数は10とし、その平均をそれぞれの強度および伸度とした。
【0025】
(3)接触角:
後述の(6)撥水性の試験において、アルカリ減量する前の試験片から単糸を採取し、協和界面科学(株)社製 自動微小接触角測定装置「MCA−2」を使用し、蒸留水500ピコリットルを使用して単糸表面の接触角を測定した。接触角が大きいほど、撥水性に優れると判断した。
【0026】
(4)撥水性成分量:
H−NMR法にてポリエステル組成物中に含有している撥水性成分を定量した。
【0027】
(5)紡糸性:
紡糸工程における紡糸性について、以下の4段階評価で表した。
◎:毛羽発生・糸切れが無く、非常に良好。
○:やや毛羽の発生があるものの糸切れが無く良好。
△:やや毛羽の発生があり、糸切れが発生(1〜2回/hr)
×:毛羽が発生・糸切れが多発(3回/hr以上)
これらの評価の中で○以上が実用的に使用可能な評価結果である。なお、これらの評価の中で×のものは、サンプルを取ること自体難しく、繊維での測定は実施していない。
【0028】
(6)撥水性:
各実施例および比較例で得られたポリエステル繊維を経糸及び緯糸に使用して、平織物を製織し、この布帛を常法により精錬、乾燥したのち、180℃でヒートセットした。また、その一部を常法により減量率が30重量%となるようにアルカリ減量した。このようにして得られたアルカリ減量後の布帛を、JIS−L−1092(スプレー法)(1992)により測定した。その測定後の布帛の状態から該JIS規格に記載の以下の基準で0〜100点の点数で評価を行った。
100点:表面に湿潤や水滴の付着が無いもの。
90点:表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの。
80点:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの。
70点:表面の半分以上に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの。
50点:表面全体に湿潤を示すもの。
0点:表面及び裏面が全体に湿潤を示すもの。
【0029】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、撥水性成分(エイコサン二酸(岡村製油株式会社製、商品名:SL−20)を得られるポリエステル樹脂組成物の重量を基準として10重量%となるように添加し、さらに酢酸マンガン4水塩0.031部を反応器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で3時間かけて140℃から240℃まで昇温して、生成するメタノールを系外に留出しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応を終了させた後、安定剤としてリン酸0.024部及び重縮合反応触媒として三酸化アンチモン0.04部を添加した後、285℃まで昇温して、減圧下で重縮合反応を実施してポリエステル組成物を得た。このポリエステル組成物の固有粘度を測定したところ、0.641dl/gであった。
【0030】
該ポリエステル組成物を乾燥させた後、一軸押出機にて285℃で溶融し、孔径0.3mmφのランド長0.6mmの丸孔押出ノズルホールを24個を有する紡糸口金から紡糸押出し温度290℃でトータル吐出量24g/minの条件で吐出させ、1000m/分の速度で引き取り、未延伸糸を得た。この得られた未延伸糸を80℃で3.3倍に延伸し、180℃で熱処理を施し、76.3dtex/24フィラメントのポリエステル繊維を得た。
得られたポリエステル組成物、ポリエステル繊維および布帛の特性を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
撥水成分の含有量が20重量%となるようにエイコサン二酸の添加量を調整したこと以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物、ポリエステル繊維および布帛の特性を表1に示す。
【0032】
[実施例3]
エイコサン二酸の代わりに、8−エチルオクタデカン二酸(岡村製油株式会社製SB−20)を用いた以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物、ポリエステル繊維および布帛の特性を表1に示す。
【0033】
[実施例4および5、比較例1および2]
撥水成分の含有量が表1に記載の量となるように8−エチルオクタデカン二酸(岡村製油株式会社製SB−20)の添加量を調整したこと以外は、実施例3と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物、ポリエステル繊維および布帛の特性を表1に示す。
【0034】
[比較例3]
エイコサン二酸の代わりに、1,10−デカンジオール(和光純薬工業製)を用いた以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエステル組成物、ポリエステル繊維および布帛の特性を表1に示す。
【0035】
[実施例6]
該ポリエステル組成物の固有粘度を0.668dl/gとした以外は実施例3と同様の操作を繰り返した。
【0036】
[実施例7]
一軸押出機での溶融温度を295℃とした以外は実施例3と同様の操作を繰り返した。
【0037】
[実施例8]
一軸押出機での溶融温度を300℃とした以外は実施例3と同様の操作を繰り返した。
【0038】
[比較例4]
撥水成分として、モンタン酸エチレングリコールエステル(クラリアントジャパン製リコワックスパウダー)を使用した以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。
【0039】
[比較例5]
エイコサン二酸を添加しないこと以外は実施例2と同様の操作を繰り返した。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、着用、洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない優れた撥水性を示し、かつ実用に耐えうる十分な強度や伸度などの機械的物性を有する合成繊維を得ることができ、耐久撥水性が要求される衣料用途、産業資材用途の素材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される炭素数が15〜23の範囲にある撥水成分を含有するポリエステル組成物からなる繊維であって、ポリエステル組成物の重量を基準として、該撥水成分の含有量が10〜30重量%の範囲にあることを特徴とするポリエステル繊維。
−R−X ・・・(1)
(上記式(1)中、Rはアルキレン基であり、XおよびXはそれぞれカルボキシル基または水酸基である。)
【請求項2】
ポリエステル組成物の固有粘度が0.61dl/g以上である請求項1記載のポリエステル繊維。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル繊維を用いた布帛。
【請求項4】
布帛の重量を基準として、30重量%以上が、請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル繊維である請求項3記載の布帛。

【公開番号】特開2009−30177(P2009−30177A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191913(P2007−191913)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】