説明

ポリエステル芯鞘複合繊維

【課題】ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートとからなり、耐久性、並びに紡糸にあたって良好な操業性を有する芯鞘複合繊維を提供する。
【解決手段】芯部がポリ乳酸で構成されたポリエステル芯鞘複合繊維であって、固有粘度が0.41〜0.59のポリエチレンテレフタレートを鞘部とし、かつ鞘部のポリエチレンテレフタレートが原料着色化されているポリエステル芯鞘複合繊維。芯部を構成するポリ乳酸の数平均分子量が7万〜15万であり、芯部の偏心度が3.0以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸を含有し、かつ耐久性並びに紡糸操業性に優れるポリエステル芯鞘複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の合成繊維は、自然環境ではほとんど分解されず、廃棄処理が問題となっている。そのため最近では、ポリ乳酸繊維に代表されるような生分解性の繊維が注目され、盛んに開発が進められている。 しかし、ポリ乳酸繊維などの生分解性繊維は、生分解性を持つがゆえに、耐候性、耐湿熱分解性が悪く、衣料用、土木建材用、水産資材用、自動車資材用等の耐久性が要求される分野では、使用が制限されている。
【0003】
そこで、ポリ乳酸の耐久性を上げるために、カルボジイミドなどの末端封鎖剤により、ポリマーの末端を封鎖し、耐加水分解性を向上させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法では、重合上がりにおいて加水分解を促進する末端基の数を減らしたに過ぎず、加水分解そのものを抑制することは不十分であった。
【0004】
また、他の手段として、結晶性を有する芳香族ポリエステルとの複合繊維化が提案されているが(例えば特許文献2参照)、これらのポリエステルはポリ乳酸との融点差が大きいため、複合繊維化そのものが難しい。特に融点が高いポリエチレンテレフタレートとの複合化においては、紡糸温度を270℃以上の温度にする必要があり、ポリ乳酸に好適な紡糸温度である200〜230℃と比較してかなりの高温となる。そのため、ポリエチレンテレフタレートに好適な温度で紡糸した場合、ポリ乳酸の溶融粘度が非常に低くなるため、ポリエチレンテレフタレートとポリ乳酸との溶融粘度の差が大きくなり、紡糸操業性の低下や、物性の低下などが起こる。このため、ポリエチレンテレフタレートとポリ乳酸との複合繊維では、操業性と繊維物性の両面において満足できるものは得られていない。
【特許文献1】特開2001−261797
【特許文献2】特開2005−187950
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特開2004−353161号広報では、ポリ乳酸を芯部、ポリエチレンテレフタレートを鞘部に用いた複合繊維について開示されており、強度、耐摩耗性、耐湿熱分解性についての改善効果が認められている。しかしながら、これらの複合繊維を染色する場合には、高温での染色が必要であるため、芯部のポリ乳酸が熱により劣化し、本来の耐久性を保持できないという虞があった。
【0006】
したがって、本発明では、上記の問題を解決し、ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートとからなり、耐久性、並びに紡糸にあたって良好な操業性を有するポリエステル芯鞘複合繊維を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
(1)芯部がポリ乳酸で構成されたポリエステル芯鞘複合繊維であって、固有粘度が0.41〜0.59のポリエチレンテレフタレートを鞘部とし、かつ鞘部のポリエチレンテレフタレートが原料着色化されていることを特徴とするポリエステル芯鞘複合繊維。
(2)芯部を構成するポリ乳酸の数平均分子量が7万〜15万であり、芯部の偏心度が3.0以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル芯鞘複合繊維。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は、鞘成分であるポリエチレンテレフタレートが予め原料着色化されているため、繊維の染色に伴うポリ乳酸成分の劣化もなく、優れた耐久性を保持したものとなる。また、本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は、芯部のポリ乳酸が原料着色されていないため、紡糸にあたっては、ノズルとの剥離性に優れており糸切れ等もなく優れた紡糸操業性を有している。
さらに、石油由来の汎用プラスチックに比べ相対的に熱安定性や機械的特性に劣るポリ乳酸を構成成分としながらも、本発明のポリエステル芯鞘複合繊維は、強度、耐湿熱分解性に優れており、衣料、産業資材用途等に幅広く用いることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステル芯鞘複合繊維(以下、本発明の複合繊維と略す場合がある。)は、ポリエチレンテレフタレートとポリ乳酸とからなる芯鞘複合繊維であって、鞘部がポリエチレンテレフタレート、芯部がポリ乳酸によって構成されるものである。
【0010】
また、本発明の複合繊維の芯部を構成するポリ乳酸としては、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、L−乳酸とD−乳酸との共重合体、あるいはポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)等を挙げることができる。
【0011】
ここで、本発明におけるポリ乳酸がL−乳酸とD−乳酸との共重合体の場合、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸のどちらかを主体成分とするものであって、主体としないポリ乳酸成分の含有量は5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。主体としないポリ乳酸成分の含有量が5質量%より多い場合、ポリ乳酸共重合体の結晶性が低下し、耐熱性並びに耐久性が低下する虞があるため好ましくない。
【0012】
また、本発明におけるポリ乳酸の数平均分子量としては、7万〜15万であるものが好ましく、8万〜13万の範囲にあるものがより好ましい。数平均分子量が7万未満である場合、溶融押出が困難となるだけでなく、繊維の機械的強力が低下する傾向となり好ましくない。また、数平均分子量が15万を超えた場合、溶融押出が困難となると共に、鞘成分であるポリエチレンテレフタレートとの溶融粘度のバランスが適正ではなく耐久性のある複合繊維が得られ難い傾向となるため好ましくない。
【0013】
本発明の複合繊維において、鞘部を構成するポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸、エチレングリコールから常法を利用して得られるポリエチレンテレフタレートを主成分とするものであるが、本発明の特性を損なわない範囲において他のカルボン酸成分やジオール成分を共重合させてもよい。
【0014】
例えば、カルボン酸成分としては、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸、ε−カプロラクトン等の脂肪族ラクトン等を挙げることができる。
また、ジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール等を挙げることができる。
【0015】
また、本発明の複合繊維においては、鞘部に使用するポリエチレンテレフタレートの固有粘度を0.41〜0.59とすることが必要であり、好ましくは0.45〜0.57であり、より好ましくは0.50〜0.57である。この固有粘度の値は、繊維用として一般的に使用されているポリエチレンテレフタレートの粘度(0.62〜0.68)よりも、かなり低いものであるが、ポリエチレンテレフタレートの粘度を低粘度とすることで、複合紡糸の際の、ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートの溶融粘度差を小さくすることができるため、紡糸操業性の向上、物性(特に強度)の向上の効果が得られる。
【0016】
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度の値が0.59を超えて大きい場合、ポリ乳酸との溶融粘度の差が大きくなり、糸切れなどの操業性の低下や、延伸による両ポリマー間の配向差が大きくなるため得られた複合糸が低強度となる。一方、固有粘度が0.41未満の場合には、ポリエチレンテレフタレートの溶融粘度が低くなりすぎ、溶融押出が困難となり、本発明の目的とする複合繊維が得られなくなる。
【0017】
本発明の複合繊維においては、鞘部を構成するポリエチレンテレフタレートが原料着色化されていることが必要である。通常、複合繊維の原料着色化には、(1)芯部を原料着色化する、(2)鞘部を原料着色化する、(3)芯部と鞘部の両方を原料着色化するという3つの方法があるが、本発明においては、鞘部を原料着色化することが必要である。(1)の芯部を原料着色化、(3)の芯部と鞘部の両方を原料着色化した場合には、ポリ乳酸を原料着色化することになるが、本発明の複合繊維において、ポリ乳酸を原料着色した場合には、紡出時に紡糸ノズルからの複合繊維の押し出し性が著しく悪くなり、ポリマーがノズル面に付着してしまい、紡糸が困難となる。
【0018】
本発明の複合繊維において、ポリ乳酸を原料着色化した場合に紡糸ノズルからの複合繊維の押し出し性が著しく悪くなる理由としては、当該複合繊維の紡糸温度をポリエチレンテレフタレートの紡糸温度にする必要があり、そのためポリ乳酸の熱分解反応が起こるためであり、更にポリ乳酸を原料着色化することによりポリ乳酸の熱分解反応が助長されるためであると考えられる。
【0019】
一般に、ポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートとからなる複合繊維において染色を行う場合、ポリエチレンテレフタレートに好適な温度条件が選択されるため、染色工程における湿熱処理によって、ポリ乳酸成分が劣化し、複合繊維の耐久性が低下するという現象が発生する。本発明の複合繊維において、エチレンテレフタレートを予め原料着色化しておくことは、これを回避する効果がある。
【0020】
よって、本発明の複合繊維では、鞘部を構成するポリエチレンテレフタレートを原料着色化するため、複合繊維の紡糸性を損なうことがなく、かつ染色工程に起因する複合繊維の耐久性の低下を回避することができる。
【0021】
本発明におけるエチレンテレフタレートを原料着色する方法としては、常法を利用したものでよい。例えば、ポリマーの製造から繊維化までのいずれかの段階で顔料もしくは染料を直接添加する方法でもよいし、ポリマーに下記の染料もしくは顔料を添加し、エクストルーダーのような混練機によって混和した後、再ペレット化することによって得られるマスターペレットを用いる方法でもよい。
【0022】
また、マスターペレットは紡糸する前に乾燥して、未着色のポリマーで希釈して使用する。マスターペレットとして使用する場合は、1種または2種以上の原料着色ペレットと未着色のペレットとを適切な混合装置、たとえばV型ブレンダーやダブルコーン型ブレンダーで混合してもよいし、また1種または2種以上の原料着色ペレットおよび未着色のペレットを各々別々に溶融した後、エクストルーダーなどの駆動部を有する混練装置、またはスタティックミキサーなどの駆動部を有さない静的混練装置を用いて混和してもよい。
【0023】
本発明において原料着色化のために使用される顔料もしくは染料としては、例えば従来公知のカーボンブラック、酸化チタン、硫化カドミウム、酸化鉄、酸化クロム等の無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサン系、アンスラキノン系、ペリレン・ペリノン系等の有機顔料を挙げることができる。また、その他、ポリエチレンテレフタレート樹脂の着色に使用しうる耐熱、耐光性の良好な公知の色素、あるいはそれらの混合物についても使用できる。
【0024】
また、上記した顔料および染料の分散性、耐熱性、耐光性などを改善するため、必要に応じて分散剤、界面活性剤、紫外線吸着剤、酸化防止剤などの添加剤を適当量加えることができる。また、上記した顔料もしくは染料を本発明の複合繊維に含有させる比率としては、0.01〜5質量%であることが好ましく、用いられる顔料もしくは染料の種類によって適宜調節することができる。例えば、カーボンブラックの場合では0.5〜3質量%、無機顔料の場合0.5〜5質量%、有機顔料の場合0.3〜3質量%とすることが好ましい。
【0025】
本発明の複合繊維としては、偏心度が3.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。本発明における偏心度としては、繊維の横断面において、複合繊維の芯部の中心点が複合繊維全体の中心点から、どの程度ずれているかを表す値であり、値が大きいほど、芯部の中心が複合繊維全体の中心よりずれており、鞘部の厚みが均一でないことを示している。すなわち、本発明における偏心度は、複合繊維の繊維方向に対し垂直に切断した横断面において、鞘部の最も厚い部分の厚みをaとし、最も薄い部分の厚みをbとした場合、偏心度=a/bとして求めることができる。
【0026】
本発明の複合繊維において偏心度が3.0を超えて大きい場合、鞘部のポリエチレンテレフタレートの厚みが厚い部分と、薄い部分の差とが大きく、本発明の効果である耐久性の向上の効果が得られにくくなるため好ましくない。すなわち、偏心度が3.0を超えてより大きくなると、厚い部分はより厚くなる一方、薄い部分はより薄くなることになり、複合繊維の保管中あるいは使用中において、鞘部の厚みの薄い部分が摩耗や湿熱などにより浸食され、芯部のポリ乳酸成分が表面に露出してしまう可能性が高くなる。これにより芯部であるポリ乳酸成分の劣化が促進され、複合繊維全体の耐久性が劣るものになってしまう。本発明における偏心度としては、鞘部が均一な厚みとなる場合の1.0が下限となる。
【0027】
本発明の複合繊維としては、常法を利用して複合紡糸することにより得られる。すなわち、ポリエチレンテレフタレート成分とポリ乳酸成分とは、従来公知の溶融複合紡糸法で紡糸され、横吹付や環状吹付等の従来公知の冷却装置を用いて冷却された後、油剤を付与され、引き取りローラを介して未延伸糸として巻取機に巻取られる。巻取られた未延伸糸は、公知の延伸機にて周速の異なるローラ群間で延伸され、必要に応じて油剤の付与が行なわれる。目的とする繊維が短繊維の場合は、必要に応じてクリンパーなどでの機械クリンプの付与を行い、ECカッター、ギロチンカッターなどのカッターで目的とする長さに切断すればよい。目的とする繊維が長繊維の場合は、そのまま捲き取り、必要に応じて、撚糸、仮撚加工等の加工を行うことができる。
【0028】
また、本発明の複合繊維の形状としては、特に限定されるものではないが、本発明の効果を最大限に発揮するためには、ポリエチレンテレフタレート(鞘部)が、ポリ乳酸(芯部)を、均一な厚みで覆うことが重要であり、鞘ポリマーの厚みを均一にすることが比較的容易である丸断面が好ましい。
【0029】
本発明の複合繊維における芯鞘成分の複合比率としては、容積比率で、芯:鞘=30:70〜70:30が好ましく、芯:鞘=40:60〜60:40の範囲がより好ましい。
【0030】
また、本発明の複合繊維では、本発明の効果を損なわない範囲であれは、ポリ乳酸の耐久性をより高めるためとして、ポリ乳酸に脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤を添加してもよい。さらに、本発明の複合繊維には、顔料、染料、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料等の添加剤や金属粒子を混合することができる。
【実施例】
【0031】
以下実施例によって本発明を詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
なお実施例における特性値等の測定法は次の通りである。
(1)ポリエチレンテレフタレートの固有粘度
フェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して20℃下で常法に基づき測定した。
(2)ポリ乳酸の数平均分子量
テトラヒドロフランを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、屈折率計を使用して測定した。
(3)L−乳酸、D−乳酸の含有量(%)
1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液と超純水の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。カラムにはsumichiral OA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(4)紡糸操業性
2錘で8時間の紡糸を行い、糸切れが0 回を◎、1回以上2回以下を○、3回以上5回以下を△、6回以上を×とした。本発明では糸切れ2回以下を合格とした。
(5)偏心度
前述の式により算出した。なお、鞘部の厚みは、繊維の長さ方向に対して垂直に切断した横断面を、光学顕微鏡(500倍)にて撮影し、顕微鏡写真より測定し、n=20の平均値とした。
(6)単糸強度(cN/dtex)
得られた複合繊維の耐久性の評価にあたっては、複合繊維の単糸強度をもっておこなった。強度測定は、JIS L−1015 8−7−1の方法により行った。
本発明においては、 単糸強度3.0cN/dtex以上を合格とした。
【0032】
(実施例1)
数平均分子量が89500であり、D−乳酸の含有量が1.3質量%であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸を芯部とし、固有粘度が0.42のポリエチレンテレフタレート16.5質量部に、平均の一次粒子径が43μmのカーボンブラックを35質量%混練したマスターペレット(ポリエチレンテレフタレート、固有粘度0.59)を1質量部混合することで、カーボンブラック濃度が2.0質量%となるように原料着色化したポリエチレンレテフタレートを鞘部とし、孔数560孔、丸断面複合紡糸口金を用い、芯鞘比率が溶融容積比として芯:鞘=50:50、偏心度が1.5となるように、紡糸温度280℃、紡糸速度800m/分で溶融紡糸し、ポリエステル芯鞘複合繊維の未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を延伸温度60℃、延伸倍率4.50倍で延伸してから、140℃で緊張熱処理を行うことで、繊度が3.3dtexのポリエステル芯鞘複合繊維を得た。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例2〜3、比較例1)
実施例1におけるポリエチレンテレフタレートの固有粘度および偏心度を表1に示すように変更した以外は、実施例1の方法と同様にして、ポリエステル芯鞘複合繊維を得た。結果を表1に示す。
【0034】
(比較例2)
数平均分子量が89500であり、D−乳酸の含有量が1.3質量%であるL−乳酸を主体とするポリ乳酸16.5質量部に対し、平均の一次粒子径が43μmのカーボンブラックを35質量%混練したポリ乳酸からなるマスターペレット(数平均分子量85300)を1質量部混合することで、カーボンブラック濃度が2.0質量%となるように原料着色化したポリ乳酸を芯部に用い、鞘部は原料着色化しないエチレンテレフタレート(固有粘度0.56)を用いた以外は、実施例1の方法と同様にして、ポリエステル芯鞘複合繊維の紡糸を行った。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例3)
実施例1で作成したポリエチレンテレフタレートからなるマスターペレットを鞘部用に用い、比較例2で作成したポリ乳酸からなるマスターペレットを芯部用に用い、芯部、鞘部共に顔料濃度1.5質量%で原料着色化した以外は、実施例1の方法と同様にして、ポリエステル芯鞘複合繊維の紡糸を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1におけるポリエチレンテレフタレートの固有粘度を0.38に変更した以外は、実施例1の方法と同様にして、ポリエステル芯鞘複合繊維の紡糸を行った。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜3では、紡糸操業性が良好であり、得られた複合繊維の強度も良好である、ポリエチレンテレフタレートとポリ乳酸からなる複合繊維が得られた。
【0038】
一方、比較例1は、鞘部のポリエチレンテレフタレートの固有粘度が高く、ポリ乳酸との溶融粘度差が大きいため、紡糸操業性が悪く、さらに単糸強度も低下した。
また、比較例2、3では、ポリ乳酸を原料着色化したため、紡糸ノズルからの複合繊維の押し出し性が著しく悪くなり、ポリマーがノズル面に付着し、紡糸できなかった。さらに、比較例4では、鞘部のポリエチレンテレフタレートの固有粘度が低いため溶融粘度が低くなり、紡糸操業性が悪く、目的とする芯鞘複合糸は得られなかった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部がポリ乳酸で構成されたポリエステル芯鞘複合繊維であって、固有粘度が0.41〜0.59のポリエチレンテレフタレートを鞘部とし、かつ鞘部のポリエチレンテレフタレートが原料着色化されていることを特徴とするポリエステル芯鞘複合繊維。
【請求項2】
芯部を構成するポリ乳酸の数平均分子量が7万〜15万であり、芯部の偏心度が3.0以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル芯鞘複合繊維。



【公開番号】特開2008−88570(P2008−88570A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267553(P2006−267553)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】