説明

ポリエチレングリコール/グルコース脱水素酵素を固定化した金表面

【課題】 活性の利用時に取り扱い容易で、安定なグルコース脱水素酵素複合体の提供
【解決手段】 グルコース脱水素酵素をポリエチレングリコール(PEG)鎖の末端に第一級、第二級もしくは第三級アミン部分を側鎖に有するポリマーセグメント鎖を有する水溶性ポリマーとともに金表面に非共有結合的にバインディングさせる方法、並びに、該バインディングした酵素複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離の酵素の活性に比べてより高い酵素活性を示し、かつ、その活性を長期にわたり維持する高い安定を有するグルコース脱水素酵素の複合体及びその作製に関する。
【背景技術】
【0002】
高い選択性および高い活性を有する酵素は、従来から工業的な触媒として利用されている。特に、グルコース脱水素酵素は、グルコースに対する応答が早く、かつ活性が溶存酸素に影響されないことからも、グルコースセンサー(血糖値測定)や他のバイオセンサーへの開発が進められている。しかしながら、タンパク質であるグルコース脱水素酵素は、穏和な条件下でのみ利用が可能であり、ある範囲を超える温度やpH等によって容易に失活し、取扱いが困難なことが知られている。したがって、例えば、グルコースセンサーとしては、現在、扱いやすいグルコース酸化酵素が用いられているが、グルコース脱水素酵素よりも応答が遅く、感度などが十分でない場合が多い。
【0003】
近年、グルコース脱水素酵素の安定性の向上を目指して、遺伝子組み換え技術によりアミノ酸配列中の一部のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基で置換したり該配列中に他のアミノ酸を導入することで、安定性を向上せしめ得ることが、報告されている(非特許文献1参照)。しかし、この報告では、熱に対する安定性や活性が向上するものの、導入するアミノ酸基によっては基質特異性の低下が観察されることが述べられている。さらに、遺伝子組み換え技術によるグルコース脱水素酵素の修飾は、工業的には難しく、製造コストがかかるという問題もある。また、コロイド粒子などの担体を用いてグルコース脱水素酵素を元の状態をなるべく維持したままで安定化させる固定化グルコース脱水素酵素が提供されている。例えば、磁性粒子にビオチン/アビジンの相互作用を介して固定化したグルコース脱水素酵素は、安定性が向上し、さらに磁石による回収・再利用が可能であることが報告されているものの、活性は低下してしまうなどの問題点を抱えている(非特許文献2参照)。
【0004】
他方、金粒子表面上にリゾチーム等の酵素をポリエチレングリコール−block−ポリ(メタクリル酸(2−N,N−ジメチルアミノエチル))とともに非共有結合的に担持させた複合体がリゾチームの熱安定性を高めることが報告されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】WO2005/073370 A1
【非特許文献1】S.Igarashi、J.Okuda、k.Ikebukuro、k.Sode Achieves Biochem.Biophys.,2004、248,52−63
【非特許文献2】G.Zhao、G.Wittstock Anal.Chem.,2004、76(11)3145−3154
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、天然のグルコース脱水素酵素の遊離酵素が有する活性を維持し、かつ、その酵素活性を長期にわたり安定に維持しうるように安定性が向上した酵素複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
グルコース脱水素酵素は二量体で活性を示し、単量体になった場合はその活性を失活させる。このため、グルコース脱水素酵素を安定化する目的で修飾する際には、タンパク質の変性と上記二量体の単量体への解離の二つを同時に抑制できることが必要である。にもかかわらず、本発明者等は、グルコース脱水素酵素をその等電点付近(等電点から±pH1.5の範囲内)で金表面に担持させ、次いで、こうして酵素が担持された金表面を特定のブロックコポリマーと接触させること含んでなる簡易な処理により、該酵素の活性を低下させることなく、安定な酵素複合体を提供できることを、ここに見出した。より具体的には、有利に入手し得る、アシネトバクター カルコセティカス(Acinetobactor calcoaceticus)に由来するグルコース脱水素酵素を用いる場合には、pHが8〜10、好ましくは8.7〜9.5に緩衝化された水溶液中で金表面と接触させ、次いで、前記水溶液中の酵素が担持された金表面とポリエチレングリコール(PEG)鎖の末端に第一級、第二級もしくは第三級アミン部分を側鎖に有するポリマーセグメント鎖を有する水溶性ポリマーを接触させることにより前記目的の酵素複合体を提供できる。
【0008】
したがって、本発明は、金表面上にグルコース脱水素酵素およびポリエチレングリコール(PEG)鎖の末端に第一級、第二級もしくは第三級アミン部分を側鎖に有するポリマーセグメント鎖を有する水溶性ポリマーを非共有結合的にバインディングするための方法を提供する。この方法では、グルコース脱水素酵素の等電点付近に緩衝化された水溶液中で金表面と前記酵素を接触させ、次いで、前記水溶液中の酵素が担持された金表面と前記水溶性ポリマーを接触させる工程を含んでなることに特徴がある。
【0009】
また、本発明は、かような方法を用いて効果的に作製できる、センサーチップの金表面上または金微粒子の表面上に、式(I):
R−L−(CHCHO)−L−X (I)
上式中、LおよびLは、独立して、原子価結合又はリンカーを表し、
nは、2〜20,000の整数であり、そして
Xは、N−もしはN,N−モノもしくはジ−C−Cアルキルアミノ−C−C12アルキルオキシカルボニル部分を側鎖に有する繰り返し単位からなるポリマー鎖を表す、で示される水溶性ポリマーおよびグルコース脱水素酵素が非共有結合的に担持されている、酵素複合体も提供する。
【0010】
<発明の詳細な記述>
本発明では、グルコース脱水素酵素として、本発明の目的を達成できるものであればいかなる起源によるか、また、遺伝子組換え技法に従って生産されたものでも使用できるが、特性がよく研究され、入手の容易なアシネトバクター カルコアセティカス(Acinetobactor calcoaceticus)に由来する酵素が有利に使用できる。この酵素は、Mwが10kDaであり、pIが9.5にある(A.Oubrie,et
al.,J.Mol.Biol.1999,289,319−333参照)。本発明の特定の態様では、このような巨大分子の酵素に属し、アルカリ性酵素に属する酵素であるグルコース脱水素酵素が、金表面上に安定に固定でき、しかも固定化後でも、該酵素の初期酵素活性は、天然の遊離酵素のそれに匹敵するか、それを越える点に特徴のある酵素複合体が提供される。
【0011】
かような酵素複合体の作製は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖の末端に第一級、第二級もしくは第三級アミン部分を側鎖に有するポリマーセグメント鎖を有する水溶性ポリマー(例えば、WO2006/085664に記載のポリマーのアミン基を有するポリマーセグメント鎖を包含する)を使用できるが、好ましくは、下記式(I):
R−L−(CHCHO)−L−X (I)
上式中、Rは、水素原子、未置換もしくはホルミル基、アミノ基、カルボキシル基、マ
レイミド基で置換されたC1−6アルキル基を表し、
およびLは、独立して、原子価結合又はリンカー(例えば、1〜2個の酸素原子、−OCO−,−COO−,−NH−,−NHCO−もしくは−CONH−の1個以上、で中断されていてものよい、炭素原子数1〜10個のアルキレン鎖、等)を表し、
nは、2〜20,000の整数であり、そして
Xは、N−もしはN,N−モノもしくはジ−C−Cアルキルアミノ−C−C12アルキルオキシカルボニル部分を側鎖に有する繰り返し単位からなるポリマー鎖を表す、で表される、ブロックコポリマーを使用できる。さらに好ましくは、本発明では、上記式(I)におけるXがメタクリル酸2−N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸2−N,N−ジメチルアミノエチルおよびアクリル酸2−N,N−ジメチルアミノエチルからなる群より選ばれるモノマーに由来するポリマー鎖である、ブロックコポリマーが使用できる。このようなブロックコポリマーの中、さらに具体的には、下記式(I−a):
【0012】
【化1】

【0013】
上式中、Rは、水素原子、未置換もしくはホルミル基、アミノ基、カルボキシル基、マレイミド基で置換されたC1−6アルキル基を表し、
およびLは、独立して、原子価結合またはリンカー(例えば、1〜2個の酸素原子、−OCO−,−COO−,−NH−,−NHCO−もしくは−CONH−の1個以上で中断されていてものよい、炭素原子数1〜10個のアルキレン鎖、等)を表し、
nは、2〜20,000(好ましくは、10〜10,000、さらに好ましくは、20〜5000)の整数であり、そして
mは、1〜20,000(好ましくは、5〜10,000、より好ましくは、5〜7,000)の整数である、
で示される水溶性ポリマーを挙げることができる。また、これらのポリマーの総分子量については、理論的に制限はないが、500〜1,000,000が好ましく、2,000〜500,000がより好ましく、合成の容易さの観点からは3,000〜100,000が、特に好ましい。以上のポリマーは、それ自体公知であるか、または公知の方法に順ずる方法により容易に得られることができる。例えば、ポリエチレングリコール鎖のα−末端に各種官能基を導入する場合、分子量を調整する場合は、Y.Nagasaki et al.,Macromol.Rapid Commun.、1997、18、927を参照することができる。
【0014】
本発明によれば、用いるグルコース脱水素酵素の等電点付近(等電点から±pH1.5の範囲内)、特に好ましくは等電点を示すpHに緩衝化された該酵素含有水溶液中に、センサーチップ(例えば、グルコース濃度を検出するためのセンサーチップ)の金表面または金微粒子の表面を存在させ、該水溶液中で上記の酵素が該表面と接触することにより該酵素が金表面上に非共有結合的にバインディングされ、次いで、こうして酵素が固定化された金表面と上記水溶性ポリマーが接触することにより、該水溶性ポリマーがさらに金表面上にバインディングされる。上記緩衝化は、グルコース脱水素酵素の処理または反応において常用されている緩衝剤、例えば、Tris系緩衝剤を使用して実施できる。
【0015】
上記の2つの接触工程は、室温で行なうことができ、必要により、5℃程度まで冷却して行なってもよい。通常、上記の2つの接触工程は、数分から数十分間金表面と酵素の接
触した状態の、酵素および酵素のバインディングした金表面と水溶性ポリマーをそれぞれ接触した状態の静置または,必要により振とうすることにより実施できる。本発明にいう、非共有結合的とは、共有結合以外の結合であって、限定されるものでないが、静電結合的、配位結合的、疎水結合的、水素結合的等の共有結合のいずれかの結合形式を意味する。
【0016】
センサーチップの金表面は、各種酵素を担持するのに常用されているサイズのセンサーチップの表面であるか、金微粒子である表面は、サイズが、平均粒径として、数(例えば、2乃至3)nm〜1000nm,好ましくは5nm〜100nmであるもの意図している。限定されるものではないが、金コロイド調製法に従って得られる金微粒子が都合よく使用できる。金微粒子としては、例えば、BBInternational社(問い合わせ先Commercial Office:Archway House 77 Ty Glas Avenue Cardiff,CF14 5DX,UK)から、EM.GC10の商品名の下に入手できる平均粒径が約10nmである金微粒子を代表的なものとしてあげることができる。
【0017】
上記の接触工程で使用する酵素対金表面対水溶性ポリマーの比率は、PEGのポリマー鎖のMnが500〜10000、好ましくは2000〜8000であり、ポリ(メタクリル酸)のポリマー鎖のMnが1000〜10000、好ましくは1000〜6000のブロックコポリマーを用い、そして金微粒子として平均粒径10nm(上記BB International社から市販されている)を用いた場合に、酵素分子の数対金微粒子の数対水溶性ポリマーの数の比が、酵素の分子数対金粒子の個数対水溶性ポリマーの分子数を基準に、1〜10:1:100〜1200、好ましくは1〜10:1:120〜1000に、より好ましくは1〜10:1:240〜1000相当するように、金表面に酵素および水溶性ポリマーがバインディングされることが好ましい。
【0018】
こうして得られる、菌表面または金微粒子表面にグルコース脱水素酵素と水溶性ポリマーがバインディングした酵素複合体は、下記の実施例で具体的に説明するとおり、本来アルカリ性酵素の範疇に入る酵素を用いて場合でも、例えば、生理条件下および低pHにおいても高い安定性を示し、約1.4倍の初期活性の増加を示す。また、金微粒子の表面に酵素および水溶性ポリマーを固定化した場合には、酵素複合体はナノサイズでかつ外殻にポリエチレングリコール層を有するので、水に分散可能で、遊離の酵素に匹敵するかそれ以上の活性を維持し、かつ酵素の安定性が高い複合体を提供できる。
【0019】
さらには、上述するとおり、混合するだけで製造できることからも、簡便かつコストが低い。
【発明の効果】
【0020】
したがって、本発明によれば、遊離の酵素が有している活性を維持および増加し、該活性を生じさせる条件下で安定性が高く、しかも回収・再利用が可能等の取り扱いが容易であり、かつ製造コストが低い、グルコースセンサーを初めとするバイオセンサーの構築用に有用な酵素複合体が提供される。
【0021】
<実施例>
以下、本発明について具体例を参照にさらに詳細に説明するが、本発明をこれらの態様に限定することを意図するものでない。
【実施例1】
【0022】
酵素複合体の製造
この実施例は、ポリマー(PEG−PAMA)(y.Nagasaki et al.
、Macromol.Rapid Commun.、1997、18、927.に表記の方法に従って得られた。PEG Mn=5000g/mol、PAMA(ポリ(メタクリル酸 N,N−ジメチルアミノエチル):Mn=5000g/mol)を使用した例である。
【0023】
【化2】

【0024】
市販品の金微粒子(BB International社、平均粒軽10nm、5.7かける重12個/mL)(0.5mL)に1μLのNaOH水溶液(0.34N)を入れてpHを7.1に調整した後、0.4mL pH=9.0、20mM Tris/HCl緩衝液を25℃で加えて、金微粒子の濃度を希釈した。次に、0.1mLのグルコース脱水素酵素溶液(天野酵素社、10μg/mL pH=9.0中;20mM Tris/HCl緩衝液(1mM CaClに含有))を添加し、グルコース脱水素酵素を金微粒子に固定化させた。25℃で10分間静置した後、更に0.05mLのポリマーPEG−PAMA(44.4μM;pH=9.0;20mM Tris/HCl緩衝液)を加え、再び25℃で10分間静置することで酵素複合体溶液を調製した。
【0025】
タングステン酸溶液でネガティブ染色した酵素複合体の透過型電子顕微鏡(TEM)写真から、粒径10nmの金微粒子とその周りにグルコース脱水素酵素が存在していることが確認された(図1参照)。
【実施例2】
【0026】
生理条件下塩濃度における酵素複合体の安定性評価
実施例1で調製した酵素複合体溶液および酵素複合体(ポリマーなし)溶液に、NaClを加えることで生理条件下塩濃度である0.15メガに調製し、動的光散乱(DLS)により25℃における安定性を経時的に評価した。
【0027】
DLSの測定および目視の観察から、酵素金微粒子複合体(ポリマーなし)は凝集に見られる粒径の増大が確認された。一方、酵素複合体は、粒径変化は観察されず分散安定性に優れていることが確認された(図2参照)。
【実施例3】
【0028】
種々のpHにおける酵素複合体の安定性評価
実施例1で調製した酵素複合体溶液および酵素複合体(ポリマーなし)溶液に、HCl溶液を加えることで、pH7.8、3.9、2.9および2.6に調整し、動的光散乱(DLS)および目視により25℃に於ける安定性を経時的に評価した。
【0029】
DLSの測定および目視の観察から、酵素複合体(ポリマーなし)は凝集に見られる粒径の増大がpH2.9と2.6で顕著に確認され、沈殿が生じた。一方、酵素複合体は、いずれのpHにおいても粒径変化や沈殿は観察されず分散安定性に優れていることが確認された(図3参照)。
【0030】
DLSの測定および目視の観察から、酵素複合体(ポリマーなし)は凝集に見られる粒径の増大がpH2.9と2.6で顕著に確認され、沈殿が生じた。一方、酵素複合体は、いずれのpHにおいても粒径変化や沈殿は観察されず分散安定性に優れていることが確認された(図3参照)。
【実施例4】
【0031】
酵素複合体の酵素活性の測定
0.75mL Tris/HCl緩衝液(10mM、pH=9.0)に0.1mLのグルコース溶液(5mM;pH=9.0、10mM Tris/HCl緩衝液)と 0.05mLの2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(dichlorophenolindophenol(DCIP))溶液(0.8mM;HO)を混合することで基質溶液とした。さらにこの基質溶液に、実施例1と同様の手法により調製した酵素複合体(酵素(分子):金微粒子(個数):ポリマー(分子)=2:1:0、120、240、48および960)溶液を0.1mLを加え、DCIP の600nmにあるUV吸収の減少を25℃で経時的に測定し、UV吸収の減少速度を酵素活性とした。
【0032】
UV吸収の測定から、酵素複合体(ポリマーなし)は、時間の経過とともに著しい酵素活性の減少が見られた。一方、酵素複合体は、ポリマー量が増えるに従い、初期活性が増加し、経時的な酵素活性の減少は抑制される傾向が観察された。特に、金微粒子の960倍ポリマーを加えた酵素複合体は、1.4倍の初期活性の増加と経時的な酵素活性の減少が著しいく抑制されていることが確認された(図4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、活性を維持、安定性が高い、回収・再利用が可能、かつ製造コストが低い、グルコースセンサーおよびバイオセンサーとして有用な酵素複合体を提供することが期待できることから、本発明は診断薬製造業、等で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ネガティブ染色した酵素複合体の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
【図2】生理条件下塩濃度における酵素複合体の粒径と時間の関係を示すグラフである。
【図3】種々のpHにおける酵素複合体の粒径と時間の関係を示すグラフおよび30分後の酵素複合体溶液の写真である。
【図4】種々のポリマー量における酵素複合体の活性と時間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金表面上にグルコース脱水素酵素およびポリエチレングリコール(PEG)鎖の末端に第一級、第二級もしくは第三級アミン部分を側鎖に有するポリマーセグメント鎖を有する水溶性ポリマーを非共有結合的にバインディングするための方法であって、
該酵素の等電点付近(等電点から±pH1.5の範囲内)に緩衝化された水溶液中で金表面と前記酵素を接触させ、次いで、前記水溶液中の酵素が担持された金表面と前記水溶性ポリマーを接触させる工程を含んでなる、上記方法。
【請求項2】
水溶性ポリマーが、式(I):
R−L−(CHCHO)−L−X (I)
上式中、Rは、水素原子、未置換もしくはホルミル基、アミノ基、カルボキシル基、マレイミド基で置換されたC1−6アルキル基を表し、
およびLは、独立して、原子価結合又はリンカーを表し、
nは、2〜20,000の整数であり、そして
Xは、N−もしはN,N−モノもしくはジ−C−Cアルキルアミノ−C−C12アルキルオキシカルボニル部分を側鎖に有する繰り返し単位からなるポリマー鎖を表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水溶性ポリマーが、式(I)で表され、式中のXがメタクリル酸2−N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸2−N,N−ジメチルアミノエチルおよびアクリル酸2−N,N−ジメチルアミノエチルからなる群より選ばれるモノマーに由来するポリマー鎖である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
金表面が、金微粒子の表面である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水溶性ポリマーとしてPEGのMnが1000〜10000であり、ポリ(メタクリル酸)のMnが1000〜10000のブロックコポリマーを用い、そして金微粒子として平均粒径10nm(BBI社から市販されている)を用いた場合に、酵素分子の数対金微粒子の数対水溶性ポリマーの数の比が1〜10:1:120〜1200に相当するように、金表面に酵素および水溶性ポリマーがバインディングされている、請求項4記載の方法。
【請求項6】
グルコース脱水素酵素がアシネトバクター カルコアセティカス(Acinetobactor calcoaceticus)に由来し、かつ、緩衝化された水溶液のpHが8〜10にある、請求項1〜6のいずれかの一項に記載の方法。
【請求項7】
センサーチップの金表面上または金微粒子の表面上に、式(I):
R−L−(CHCHO)−L−X (I)
上式中、LおよびLは、独立して、原子価結合又はリンカーを表し、
nは、2〜20,000の整数であり、そして
Xは、N−もしはN,N−モノもしくはジ−C−Cアルキルアミノ−C−C12アルキルオキシカルボニル部分を側鎖に有する繰り返し単位からなるポリマー鎖を表す、で示される水溶性ポリマーおよびグルコース脱水素酵素が非共有結合的に担持されている、酵素複合体。
【請求項8】
水溶性ポリマーが、式(I−a):
【化1】

上式中、Rは、水素原子、未置換もしくはホルミル基、アミノ基、カルボキシル基、マレイミド基で置換されたC1−6アルキル基を表し、
およびLは、独立して、原子価結合またはリンカーを表し、
nは、2〜20,000の整数であり、そして
mは、1〜20,000の整数である、
で示され、かつ、グルコース脱水素酵素がアシネトバクター カルコアセティカス(Acinetobactor calcoaceticus)に由来する、請求項6に記載の酵素複合体。
【請求項9】
表面が2〜1000nmの平均粒径である金微粒子の表面である、請求項7又は8記載の複合体。
【請求項10】
水溶性ポリマーとしてPEGのMnが1000〜10000であり、ポリ(メタクリル酸)のMnが1000〜10000のブロックコポリマーを用い、そして金微粒子として平均粒径10nm(BB International社から市販されている)を用いた場合に、酵素分子の数対金微粒子の数対水溶性ポリマーの数の比が1〜10:1:120〜1200に相当するように、金表面に酵素および水溶性ポリマーがバインディングされている、請求項7〜9のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の酵素複合体が構成要素として組み込まれたグルコースセンサー。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−171846(P2009−171846A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10589(P2008−10589)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会予稿集 56巻2号[2007]」に発表
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】