説明

ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体

【課題】長期機械的物性が高められたポリエチレン系樹脂成形体を得ることができるポリエチレン系樹脂組成物、並びに該ポリエチレン系樹脂組成物を用いたポチエチレン系樹脂成形体を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂100重量部と、1分半減期温度が140〜220℃の範囲内である有機過酸化物0.03〜2.0重量部と、無機フィラー0.3〜20重量部とを含む。上記ポリエチレン系樹脂は、末端二重結合を1000カーボン中0.1〜0.9個有する。本発明に係るポリエチレン系樹脂成形体は、上記ポリエチレン系樹脂組成物を加熱及び混練し、成形することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂組成物に関し、より詳細には、優れた長期機械的物性を有するポリエチレン系樹脂成形体を得ることができるポリエチレン系樹脂組成物、並びに該ポリエチレン系樹脂組成物を用いたポリエチレン系樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂は、比較的安価であり、かつ成形性、耐熱性、耐溶剤性、機械的特性及び外観等に優れている。このため、ポリエチレン系樹脂は、各種成型品に加工されており、多くの分野で使用されている。ポリエチレン系樹脂は耐震特性にも優れていることから、近年、ガス管及び配水管等としての使用が増大している。
【0003】
ガス管及び配水管等に使用されるポリエチレン系樹脂は、ISO9080及びISO12162で規定されているPE80(MRS:Minimum Required Strength=8MPa)やPE100(MRS=10MPa)等のような優れた長期機械的物性を満足する必要がある。
【0004】
また、ポリエチレン系樹脂は、適当な重合触媒の存在下での多段重合により、エチレンとα−オレフィンとを共重合させることにより製造されている。ポリエチレン系樹脂を得る際の重合技術は、下記の特許文献1を含む多くの文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−301933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリエチレン系樹脂を得る際の重合技術は、既に十分に成熟しているため、ポリエチレン系樹脂を得る際の重合技術により、ポリエチレン系樹脂の長期機械的物性を更に高めることは非常に困難である。
【0007】
本発明の目的は、ポリエチレン系樹脂を得る際の重合技術に頼ることなく、ポリエチレン系樹脂成形体の長期機械的物性を容易に向上させ、安価で産業上普及しやすいポリエチレン系樹脂組成物、並びに該ポリエチレン系樹脂組成物を用いたポリエチレン系樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、ポリエチレン系樹脂100重量部と、1分半減期温度が140〜220℃の範囲内である有機過酸化物0.03〜2.0重量部と、無機フィラー0.3〜20重量部とを含み、上記ポリエチレン系樹脂が、末端二重結合を1000カーボン中0.1〜0.9個有する、ポリエチレン系樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物のある特定の局面では、上記無機フィラーは、シリカ、層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、黒鉛、タルク、モンモリロナイト及びカーボンブラックからなる群から選択された少なくとも1種である。
【0010】
本発明に係るポリエチレン系樹脂成形体は、本発明に従って構成されたポリエチレン系樹脂組成物を加熱及び混練し、成形することにより得られたポリエチレン系樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂と特定の上記有機過酸化物と無機フィラーとを特定の含有量で含み、また上記ポリエチレン系樹脂が、末端二重結合を1000カーボン中0.1〜0.9個有するので、ポリエチレン系樹脂組成物を加温して有機過酸化物を分解させつつ混練し、成形することにより、優れた長期機械的物性を有するポリエチレン系樹脂成形体を得ることができる。本発明では、ポリエチレン系樹脂の重合技術及びフィラーの処理技術に依存することなく、ポリエチレン系樹脂成形体に優れた長期機械的物性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0013】
本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂100重量部と、1分半減期温度が140℃〜220℃の範囲内である有機過酸化物0.03〜2.0重量部と、無機フィラー0.3〜20重量部とを含む。上記ポリエチレン系樹脂は、末端二重結合を1000カーボン中0.1〜0.9個有する。末端二重結合を上記割合で有するポリエチレン系樹脂を用いることで、元の樹脂単体を用いた成形体の長期機械的物性に対して、本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物を用いた成形体の長期機械的物性を効果的に向上させることが可能となる。
【0014】
(ポリエチレン系樹脂)
上記ポリエチレン系樹脂は、末端二重結合を1000カーボン中0.1〜0.9個有する。成形体の長期機械的物性をより一層良好にする観点からは、上記ポリエチレン系樹脂の末端二重結合は、1000カーボン中好ましくは0.3個以上、より好ましくは0.5個以上である。
【0015】
末端二重結合を上記割合で有するポリエチレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−メチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。上記ポリエチレン系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、成形体の長期機械的物性をより一層高める観点からは、高密度ポリエチレン又は中密度ポリエチレンが好ましく、重合触媒の存在下での多段重合により、エチレンとα−オレフィンとを共重合させて得られたポリエチレン系樹脂が好ましく、重合触媒の存在下での多段重合により、エチレンとα−オレフィンとを共重合させて得られた高密度ポリエチレン又は中密度ポリエチレンがより好ましい。
【0016】
(有機過酸化物)
本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物に含まれている上記有機過酸化物(以下、有機過酸化物Xと記載することがある)の1分半減期温度は140〜220℃の範囲内である。上記「1分半減期温度」とは、有機過酸化物Xの半減期が1分となる分解温度を示す。
【0017】
上記ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、上記有機過酸化物Xは0.03〜2.0重量部の範囲内で含まれる。有機過酸化物Xの含有量が少なすぎると、クリープ性能向上の効果が充分に高められないことがある。有機過酸化物Xの含有量が多すぎると、ポリエチレン系樹脂の架橋が進行し過ぎて、成形が困難になる。
【0018】
1分半減期温度が140〜220℃の範囲にある有機過酸化物Xとしては、特に限定されないが、ジアシルパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物及びパーカーボネート化合物等が挙げられる。
【0019】
上記有機過酸化物Xとしては、具体的には、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ[4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル]プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレラート、ジ−(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、及び3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等が挙げられる。上記有機過酸化物Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記有機過酸化物Xは、ジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカーボネート化合物又はアルキルパーエステル化合物であることが好ましく、ジアルキルパーオキサイド化合物又はパーカーボネート化合物であることがより好ましく、ジアルキルパーオキサイド化合物であることがさらに好ましい。
【0021】
(無機フィラー)
本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーを0.3〜20重量部含む。ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーの含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。無機フィラーの含有量が少なすぎると、クリープ強度等の物性が十分に向上しないことがある。無機フィラーの含有量が多すぎると、ポリエチレン系樹脂の本来の伸び性能を損なうことがあり、成形性も損なう。
【0022】
上記無機フィラーは特に限定されないが、例えば、シリカ、層状ケイ酸塩、タルク、モンモリロナイト、黒鉛及び炭酸カルシウム等が挙げられる。上記無機フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。成形体の長期機械的物性をより一層良好にする観点からは、上記無機フィラーは、シリカ、層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、黒鉛、タルク、モンモリロナイト及びカーボンブラックからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
さらに、無機フィラーの表面は、化学処理されていてもよい。該化学処理に用いる化学処理剤としては、例えば、コーティングによる改質では脂肪酸、ワックス、非イオン系界面活性剤及びゴムなどがあり、合成反応による改質では、シラン系、チタネート系又はリン酸系のカップリング剤などがある。
【0024】
上記無機フィラーの形状は特に限定されない。無機フィラーの平均粒径は好ましくは0.5μm以上、好ましくは900μm以下、より好ましくは100μm以下である。また、平均粒径は、フィラー種によって粒子の凝集状態も異なるが、通常は一次粒子が凝集し二次粒子、三次粒子として存在する。上記無機フィラーの平均粒径は、粉体として存在している状態での粒子の平均粒径を指す。
【0025】
(ポリエチレン系樹脂成形体の製造方法)
本発明に係るポリエチレン系樹脂組成物は、特定の上記ポリエチレン系樹脂、特定の上記有機過酸化物X、及び上記無機フィラーを特定の上記割合で配合することにより得られる。
【0026】
本発明に係るポリエチレン系樹脂成形体は、上記ポリエチレン系樹脂組成物を加熱及び混練し、成形することにより得られる。例えば、上記ポリエチレン系樹脂成形体は、ポリエチレン系樹脂組成物を加熱及び混練した後、冷却し、成形することにより得られる。
【0027】
ポリエチレン系樹脂成形体を製造する際には、上記ポリエチレン系樹脂組成物を上記ポリエチレン系樹脂の融点以上、該融点+150℃以下の温度で混練し、上記有機過酸化物Xを分解させるとともに上記無機フィラーを分散させることが好ましい。混練温度が上記ポリエチレン系樹脂の融点未満であると、上記ポリエチレン系樹脂が溶融しないため、成形性が損なわれることがある。上記混練温度が上記ポリエチレン系樹脂の融点+150℃を超えると、上記ポリエチレン系樹脂が分解したり、変色したりすることがある。上記ポリエチレン系樹脂の融点とは、示差走査型熱量分析(DSC)により測定された吸収熱曲線のピークにおける温度を示す。
【0028】
上記温度で混練した後、上記有機過酸化物Xが分解され、かつ上記無機フィラーが分散されたポリエチレン系樹脂組成物は、成形される。
【0029】
本発明では、ポリエチレン系樹脂を得る際の重合技術に頼ることなく、またフィラーの処理技術に頼ることなく、上記ポリエチレン系樹脂組成物を加熱及び混練するだけで、ポリエチレン系樹脂成形体の長期機械的物性を高めることができる。また、本発明では、上記無機フィラーを表面処理しなくても、ポリエチレン系樹脂成形体の長期機械的物性を高めることができる。ただし、上記無機フィラーは表面処理されていてもよい。
【0030】
以下実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
ポリエチレン系樹脂である高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.57個)100重量部と、有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日油社製、パーヘキシン25B、1分半減期温度194.3℃)0.2重量部と、シリカ(東ソー・シリカ社製、E150J、平均粒径4.7μm)2重量部とを配合し、ポリエチレン系樹脂組成物を得た。
【0032】
次に、ラボプラストミル(東洋精機製作所社製)を用いて、得られたポリエチレン系樹脂組成物を160℃で6分間混練し、有機過酸化物を分解させるとともにシリカを分散させ、ポリエチレン系樹脂材料を得た。210℃に温調されたプレス成形機を用いて、得られたポリエチレン系樹脂材料を厚さ4mmのスペーサーとともに圧力4.9MPaで3分間加圧することにより、厚さ4mmのポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0033】
(実施例2)
ポリエチレン系樹脂の種類を、高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.73個)に変更したこと、並びにシリカの添加量を2重量部から0.3重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0034】
(実施例3)
有機過酸化物の添加量を0.2重量部から0.1重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0035】
(実施例4)
ポリエチレン系樹脂の種類を、高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.15個)に変更したこと、並びに無機フィラーの種類を、層状ケイ酸塩(コープケミカル社製、ME100)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0036】
(実施例5)
ポリエチレン系樹脂の種類を、高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.15個)に変更したこと、並びに無機フィラーの種類を、鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、鱗片状黒鉛V−10F)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0037】
(実施例6)
無機フィラーの種類を、層状ケイ酸塩(コープケミカル社製、ME100)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0038】
(実施例7)
無機フィラーの種類を、鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、鱗片状黒鉛V−10F)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0039】
(実施例8)
無機フィラーの種類を、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、Actifort700)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0040】
(実施例9)
ポリエチレン系樹脂の種類を、高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.15個)に変更したこと、無機フィラーの種類を、鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、鱗片状黒鉛V−10F)に変更したこと、並びに無機フィラーの添加量を2重量部から20重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0041】
(実施例10)
ポリエチレン系樹脂である高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.15個)100重量部と、有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日油社製、パーヘキシン25B、1分半減期温度194.3℃)0.1重量部と、無機フィラーである鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、鱗片状黒鉛V−10F)5重量部とを配合し、ポリエチレン系樹脂組成物を得た。得られたポリエチレン系樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0042】
(実施例11)
ポリエチレン系樹脂である高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.15個)100重量部と、有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(日油社製、パーヘキシン25B、1分半減期温度194.3℃)0.5重量部と、無機フィラーである鱗片状黒鉛(伊藤黒鉛工業社製、鱗片状黒鉛V−10F)5重量部とを配合し、ポリエチレン系樹脂組成物を得た。得られたポリエチレン系樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0043】
(比較例1)
ポリエチレン系樹脂の種類を、高密度ポリエチレン(融点132℃、末端二重結合量1000カーボン中0.059個)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0044】
(比較例2)
有機過酸化物の添加量を0.2重量部から0.025重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0045】
(比較例3)
シリカの添加量を2重量部から0.2重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂成形体を得た。
【0046】
(評価)
(1)全ノッチ付クリープ試験
ISO DIS 16770に従って、全ノッチ付クリープ試験(full notch creep test:FNCT)により、長期機械的物性を評価した。試料として4mm×11mmの大きさの断面を有し、かつ周囲にカミソリ刃にてノッチが付けられた検体を用意した。温度60℃の上水中で、9.6MPaに相当する引張応力を検体に与え、検体が破断するまでの時間を計測した。それぞれの配合での性能向上を把握するために、組成物を用いた成形体とは別に樹脂単体を用いた成形体を用意して、同様にして破断時間を測定した。組成物を用いた成形体の破断時間T1と樹脂単体を用いた成形体の破断時間T2とを比較し、破断時間T1,T2から性能向上率(T1/T2)を算出して、性能を把握した。
【0047】
(2)ポリエチレン系樹脂における末端二重結合量の測定
文献(Macromol.Symp.2003,202,97−115)に従い赤外吸収ピークを測定し、ピーク面積から末端二重結合量を評価した。試料として、500μm厚みのポリエチレンサンプルを作製し、測定に用いた。
【0048】
結果を下記の表1に示す。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂100重量部と、1分半減期温度が140〜220℃の範囲内である有機過酸化物0.03〜2.0重量部と、無機フィラー0.3〜20重量部とを含み、
前記ポリエチレン系樹脂が、末端二重結合を1000カーボン中0.1〜0.9個有する、ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機フィラーが、シリカ、層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、黒鉛、タルク、モンモリロナイト及びカーボンブラックからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂組成物を加熱及び混練し、成形することにより得られたポリエチレン系樹脂成形体。

【公開番号】特開2012−162645(P2012−162645A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23800(P2011−23800)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】