説明

ポリエーテル−ブロックコポリアミドを含む熱可塑性組成の添加剤としての使用

【課題】ポリエーテル-ブロックコポリアミドを含む組成物の加工助剤として使用。
【解決手段】ポリオレフィンと、加工助剤と、任意成分の紫外線安定剤とを含む組成物の回転成形またはスラッシュ成形での使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工助剤を含む(任意成分として紫外線安定剤をさらに含むことができる)ポリオレフィン組成物の回転成形(rotomoldingまたはrotational molding)またはスラッシュ(slush molding、中空成形)成形での使用に関するものである。
上記ポリオレフィン組成物は上記以外の物品製造方法、例えば射出成形、フィルムキャスト成形、フィルムブロー成形、カレンダー加工、シート押出し成形等でも使用できる。
【背景技術】
【0002】
本発明は主として回転成形による物品の製造に関するものである。回転成形では一定量のポリマーを金型一方の割型に入れ、金型を閉じた後に加熱してポリマーを溶融する。金型を回転して金型内にポリマーを一様に分布させる。金型は1軸回転または2軸回転(すなわち2つの互いに直角な軸線の周りに同時に回転)できるが、一般には2軸回転が広く行なわれている。むしろ好まれる。次いで、金型を冷却し、型開きして成形された物品を金型から取り出す。回転成形は多層成形、例えば複数のポリマーを順番に使用して成形する方法でも使用できる。回転成形を用いることで肉厚分布に優れ、機械特性に優れた中空物品を製造することができる。
スラッシュ成形は回転成形に近いプロセスである。従って、以下の説明では回転成形という用語を用いるが、本発明は回転成形およびスラッシュ成形の両方の用途に適用できる。
【0003】
回転成形で最も広く使われているポリマーはポリエチレンであり、回転成形用ポリエチレンの加工性を改善するために多くの努力がなされてきた。下記文献には94重量%以下の一つまたは複数の熱可塑性ポリマーと、6重量%以下の一つまたは複数の加工助剤とから成る回転成形に適したポリマー組成物が開示されている。
【特許文献1】米国特許第US 6,362,270号明細書
【0004】
熱可塑性ポリマーはエチレンとスチレンのコポリマー、エチレンおよび/またはC3-C20−α−オレフィンのホモ−またはコポリマー、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリスチレンおよびこれらポリマーの混合物の中から選択できる。また、加工助剤は芳香族または脂肪族の炭化水素オイル、エステル、アミド、アルコール、酸およびこれらの有機または無機の塩と、シリコーン油、ポリエーテルポリオール、グリセロールモノステアレート(GMS)、ペンタエリスリトールモノオレアート、エルカアミド、ステアラアミド、アジピン酸、セバシン酸、スチレン−α-メチル−スチレン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタラートおよびこれらの混合物が含まれる。これらの加工助剤はゼロまたは低剪断速度時の組成物の溶融粘度および/または弾性度を下げて焼結時間、サイクル時間および/または最高金型温度を下げるものが好ましい。
【0005】
最近のレポートである下記文献には回転成形物品中の気泡数とその衝撃性能との間の相関関係が記載されている。
【非特許文献1】LT. Pick, E. Harkin-Jones, Third Polymer Processing Symposium, 28-29.01.2004, Belfast, p. 259-268
【0006】
気泡数が多くなると衝撃性能が低下するだけでなく、得られた物品の光学特性に悪影響がでるという結果が示されている。
従って、回転成形物品中の気泡数を減らすというニーズあるいは回転成形物品の光学特性を良くするというニーズがある。さらに、回転成形物品の機械特性を良くするというニーズもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、回転成形時の加工性に優れたポリオレフィン組成物で作られた回転成形物品を提供することにある。
本発明の他の目的は、回転成形時の焼結(sintering) プロセスおよび濃縮(densification)プロセスに優れたかポリオレフィン組成物で作られた回転成形物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、回転成形時の気泡形成を減らすことができるポリオレフィン組成物で作られた回転成形物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、回転成形で作った時に光学特性に優れた回転成形物品となるポリオレフィン組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、回転成形で作った時に機械特性に優れた回転成形物品となるポリオレフィン組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、回転成形時のサイクル時間が短いポリオレフィン組成物で作られた回転成形物品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、優れた特性を有する物品を回転成形によって製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高密度化プロセスおよび/または焼結プロセスに優れた回転成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(a)〜(c):
(a) 下記(i)または(ii)の99〜99.999重量%:
(i) ポリオレフィン、
(ii) 50〜99重量%の第1ポリオレフィンと1〜50重量%のそれと異なるポリマーとから成るポリオレフィン組成物
(b) 0.001〜1重量%のポリエーテル-ブロックコポリアミドから成る高濃度化助剤(densification aid)、
(c) 0.025〜0.500重量%の一つまたは複数の紫外線安定剤(任意成分)
から成るポリオレフィン組成物を用いて回転成形またはスラッシュ成形された物品を提供する。
【0009】
本発明はさらに、上記ポリオレフィン組成物の回転成形およびスラッシュ成形での使用にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
高濃度化助剤(densification aid)はポリエーテル-ブロックコポリアミドから成り、場合によってはポリエーテル-ブロックコポリアミドを主(メジャー)成分とし、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエチレングリコールおよびフルオロポリマーから成る群の中から選択される成分をマイナー成分とした混合物から成ることができる。
主成分とは50重量%以上を形成するの成分を意味し、マイナー成分とは50重量%未満を形成する成分を意味する。
【0011】
ポリエーテルブロックコポリアミドは下記一般式(I)で表される:
HO-[C(O)-PA-C(O)-O-PEth-O]n-H (I)
(ここで、PAはポリアミドセグメントを表し、PEthはポリエーテルセグメントを表す)
【0012】
ポリアミドセグメントの例はPA6、PA66、PA11またはPA12にすることができる。ポリエーテルセグメントは例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)にすることができる。ポリアミド単位の分子量Mnは一般に300〜15,000、ポリエーテル単位の分子量Mnは一般に100〜6,000である。この材料は例えばペパックス(Pebax、登録商標)の名称でアトフィナ(Atofina)社から市販されている。
【0013】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは一般に反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの重縮合で得られ、特に、下記の重縮合で得られる:
(1) ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックとジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとの重縮合、
(2) ポリエーテルジオールとよばれるジヒドロキシ化された脂肪族α、ω−ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化および水素化で得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとの重縮合、
(3) ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックとポリエーテルジオールとの重縮合、この特定の場合の生成物がポリエーテルエステルアミドである。
【0014】
ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖停止剤のカルボキシル二酸の存在下でのポリアミド先駆物質の縮合で得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖停止剤のジアミンの存在下でのポリアミド先駆物質の縮合で得られる。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分布した単位をさらに含むことができる。これらのポリマーはポリエーテルおよびポリアミドブロックの先駆物質の同時反応で製造することができる。例えば、ポリエーテルジオール、ポリアミド先駆物質および連鎖停止剤の二酸を一緒に反応させる。得られるポリマーは基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとからなり、ランダムに反応した各種反応物がポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。
【0015】
また、ポリエーテルジアミン、ポリアミド先駆物質および連鎖停止剤の二酸を一緒に反応させることもできる。得られるポリマーは基本的に種々の長さを有するポリエーテルブロックとポリアミドブロックとから成り、さらに、ランダムに反応した各種の反応物がポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するこれらコポリマーのポリエーテルブロックの比率は10〜70重量%、好ましくは35〜60重量%であるのが好ましい。
【0016】
ポリエーテルジオールブロックはそのまま使用し、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合するか、アミン化してポリエーテルジアミンにしてからカルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと縮合することができる。さらに、ポリエーテルジオールブロックをポリアミド先駆物質および二酸の連鎖停止剤と混合してポリアミドブロックとポリエーテルブロックの単位がランダムに分布したポリマーにすることもできる。第2のタイプのポリアミドブロック以外の場合、一般にポリアミドブロックの数平均モル質量Mnは300〜15,000である。ポリエーテルブロックの数平均モル質量Mnは一般に100〜6000である。
【0017】
ポリエーテルエステルはポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーである。これらは一般にポリエーテルジオールの残基である柔らかいポリエーテルブロックと、一般に少なくとも一種のジカルボン酸と少なくとも一種の鎖伸長用の短いジオール単位との反応で得られるハードセグメント(ポリエステルブロック)とから成る。一般にポリエステルブロックまポリエーテルブロックとは酸の酸官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応で生じるエステル結合で連結される。鎖伸長用の短いジオールは、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、式:HO(CH2nOHの脂肪族グリコール(nは2〜10の整数)から成る群の中から選択できる。二酸は8〜14の炭素原子数を有する芳香族ジカルボン酸にするのが好ましい。芳香族ジカルボン酸の50mol%までを8〜14の炭素原子数を有する少なくとも一種の他の芳香族ジカルボン酸に代えることができ、および/または20mol%までを2〜12の炭素原子数を有する脂肪酸ジカルボン酸に代えることができる。
【0018】
芳香族ジカルボン酸の例としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ジベンゾイック酸、ナフタリンジカルボン酸、4,4'-ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン酸、エチレンビス(p-安息香酸、1,4-テトラメチレンビス(p-オキシ安息香酸)、エチレンビス(パラオキシ安息香酸)、1,3-トリメチレンビス(p-オキシ安息香酸)を挙げることができる。グリコールの例としてはエチレングリコール、1,3-トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,8-オクタメチレングリコール、1,10-デカメチレングリコールそして、1,4-シクロヘキシレンジメタノールを挙げることができる。ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの例は、ポリエーテルジオール、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリテトラメチレングリコール(PTMG)と、ジカルボン酸単位、例えばテレフタル酸と、グリコール(エタンジオール)または1,4-ブタンジオール単位とから得られるポリエーテルブロックを有するコポリマーにすることができる。ポリエーテルと二酸の鎖結合で柔らかいセグメントが形成され、グリコールまたはブタンジオールと二酸との鎖連結でコポリエーテルエステルのハードセグメントが形成される。この形のコポリエーテルエステルは下記文献に記載されている。
【特許文献2】欧州特許EP 4,02,883号公報
【特許文献3】欧州特許EP 4,05,227号公報
【0019】
これらのポリエーテルエステルは熱可塑性エラストマであり、可塑剤を含むことができる。ポリエーテルエステルは例えばデュポン社からハイトレル(Hytrel、登録商標)の名称で入手できる。
【0020】
ポリウレタンは一般にポリエーテルジオールの残基からなる柔らかいポリエーテルブロックと、一般に少なくとも一種のジイソシアナートと少なくとも一種の短いジオールとの反応から得られるハードブロック(ポリウレタン)とからなる。短鎖伸長用ジオールはポリエーテルエステルの説明で記載した上記グリコールの中から選択できる。ポリウレタンブロックとポリエーテルブロックはイソシアネート官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応で得られる結合で連結される。熱可塑性ポリウレタンは例えばElastogran社からエラストラン(Elastollan、登録商標)の名称で入手でき、また、ダウ・ケミカル社からペレタン(Pellethane、登録商標)の名称で入手できる。
【0021】
ポリエチレングリコールは下記一般式を有する:
H-(OCH2-CH2-)nOH (I)
ポリエチレングリコールは分子量および粘性が広範囲のものが市販されている。ポリエチレングリコールはその分子量によって液体または固体である。本発明で通常使用するポリエチレングリコールの平均分子量は100〜2000グラム/モル、好ましくは150〜700グラム/モルである。適したポリエチレングリコールの例はダウケミカル社またはBASFから市販のカーボワックス(Carbowax、登録商標)およびプルリオール(Pluriol E、登録商標)である。
【0022】
本発明の加工助剤として適したフルオロポリマーの例はビニリデンフルオライド(H2C=CF2)のポリマーおよび/またはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレン(F2C=CF-CF3)とのコポリマーである。ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーはエラストマ特性を有しないが、一般に「フッ素エラストマー」とよばれている。フッ素エラストマー中のコモノマーのヘキサフルオロプロピレンの含有量は一般に30〜40重量%の範囲内である。本発明の加工助剤として適したフルオロポリマーは例えばDyneon社、DuPont-Dow Elastomers社またはAtofina社から市販のダイナマール(Dynamar、登録商標)ビトン(Viton、登録商標)およびキナール(Kynar、登録商標)である。
【0023】
回転成形用途では一般にチーグラー−ナッタ、メタロセン触媒または高性能(late)遷移金属触媒系を用いて製造したポリエチレンが使われる。他の原料、例えばポリプロピレンも使用できる。好ましく使用できるのは例えば下記文献に記載の直鎖低密度ポリエチレンである。
【非特許文献2】D. Annechini, E. Takacs and J. Vlachopoulos in ANTEC, vol. 1, 2001、「メタロセンポリエチレンの回転成形におけるいくつかの新しい結果」
【0024】
本発明組成物で使用するのに適したポリオレフィンはシリカ/アルミナ担体に支持されたメタロセン触媒を用いて製造したエチレンのホモポリマーまたはコポリマーである。特に好ましいメタロセン成分はエチレン-ビス−テトラヒドロインデニルジルコニウムジクロライド、ビス-(n-ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドまたはジクロロ−(ジメチルシリレン)ビス(2-メチル-4-フェニル−インデニリデン)ジルコニウムジクロライドである。最も好ましいメタロセン成分はエチレン-ビステトラヒドロインデニルジルコニウムジクロライドである。
【0025】
コポリマーという用語は一つのモノマーと一つまたは複数のコモノマーとの重合生成物を意味する。このモノマーおよび一つまたは複数のコモノマーは2〜10の炭素原子を有するα−オレフィンで、モノマーおよびコモノマーは互いに異なるα−オレフィンであるのが好ましい。モノマーがエチレンまたはプロピレンで、一つまたは複数のコモノマーが2〜8つの炭素原子を有するα−オレフィンであるのが好ましい。最も好ましいのは、モノマーがエチレンで、コモノマーが1−ブテンまたは1−ヘキセンの場合である。
【0026】
本発明で好ましく使用されるポリエチレンまたはポリプロピレン樹脂のメルトインデックスは以下の範囲内にある:
(1)本発明のポリオレフィンがエチレンのホモポリマーまたはコポリマーの場合には、そのメルトインデックスMI2は0.1〜25dg/分、好ましくは0.5〜15dg/分、さらに好ましくは1.5〜10dg/分の範囲にある。メルトインデックスMI2は、ASTM D1283規格で19O℃の温度および2.16kgの荷重下で測定する。
(2)本発明のポリオレフィンがプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーの場合には、そのメルトフローインデックス(MFI)が0.1〜40dg/分、好ましくは0.5〜30dg/分、さらに好ましくは1〜25dg/分の範囲にある。このメルトフローインデックスMFIはASTM D1283規格で23O℃の温度および2.16kgの荷重下で測定する。
【0027】
本発明で使用可能なエチレンのホモポリマーおよびコポリマーの密度は一般に0.910〜0.975 g/ml、好ましくは0.915〜0.955 g/ml、さらに好ましくは0.925〜0.945g/mlの範囲内にある。この密度はASTM D1505の規格で23℃で測定する。
【0028】
本発明のポリオレフィンはビモダル(bimodal)またはマルチモダル(multimodal)な分子量分布を有することができる。すなわち、本発明のポリオレフィンは異なる分子量分布を有する2種以上のポリオレフィンを物理的または化学的(例えば、2つまたはそれ以上の反応装置でシーケンシャルに製造する)に混合したブレンドにすることができる。
【0029】
本発明で使用するポリオレフィンの多分散性D(数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mnで定義される)は2〜20、好ましくは2〜8の範囲、好ましくは5以下、最も好ましくは4以下である。後者の範囲は一般に好ましいメタロセン触媒で作ったポリエチレンの場合である。
【0030】
本発明のポリオレフィンは上記以外の添加剤、例えば抗酸化剤、酸スカベンジャ、帯電防止剤、充填剤、滑り用添加剤またはブロッキング防止剤等をさらに含むことができる。
【0031】
ポリオレフィン組成物を原料とした場合、下記の組成物から成る:
(1)50〜99重量%の第1のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、
(2)1〜50重量%の第2のポリマー(この第2のポリマーは加工助剤とは異なり、好ましくはポリアミド、コポリアミド、第1のポリオレフィンとは異なる第2のポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニールのコポリマー(EVA)、エチレンとビニールアルコールのコポリマー(EVOH)、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびポリ塩化ビニール(PVC)から成る群の中から選択される)
【0032】
さらに、回転成形された多層物品の一つまたは複数の層として高濃度化助剤を含むポリオレフィンを使用することもできる。この多層物品の他の層はポリアミド、コポリアミド、第1のポリオレフィンとは異なる第2のポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニール(EVA)のコポリマー、エチレンとビニールアルコールのコポリマー(EVOH)、ポリスチレン、ポリカーボネートおよびポリ塩化ビニール(PVC)から成る群の中から選択できる。
【0033】
一種または複数の紫外線安定剤は公知の任意のUV-安定化剤の中から選択できる。好ましい紫外線安定剤はヒンダードアミン光安定剤(HALS)で、このHALSは例えばCiba Specialty Chemicals社からチマソルブ(Chimassorb 944、登録商標)、チヌバン(Tinuvin 622、登録商標)またはチヌバン(Tinuvin 783、登録商標)の名称で市販されている。
【0034】
驚くことに、0.001重量%〜1重量%の加工助剤を添加することで、焼結挙動および高密度化挙動が変化し、回転成形時のポリオレフィンの加工性が改善するということが分かった。また、本発明の加工助剤を使用することでサイクル時間は少なくとも10%、さらには少なくとも20%短くなる。回転成形物品中の気泡数が同じにするのにピーク内部空気温度(PIAT)を少なくとも10℃下げることができる。
【0035】
さらに驚くことに、0.001重量%〜1重量%の加工助剤を含む上記組成物に、0.025重量%〜0.500重量%の一種または複数の紫外線安定剤をさらに添加することでポリオレフィンの回転成形の加工性がさらに改善する。
加工助剤とUV−安定化剤との間には相乗効果があると思われ、従って、両方を使用するのが好ましい。
【0036】
回転成形では金型の一方の割型に所定量のポリマーを入れ、金型を閉じ、加熱して、ポリマーを溶融する。ポリマーが金型中に均一に分布するように金型を回転する。金型は一軸または二軸の周りに回転できるが、2つの互いに直角な軸線の周りを同時に回転する二軸回転が広く用いられている。その後、金型を冷却し、開き、成形された物品を金型から取り出す。
【0037】
回転成形のサイクルは下記の主用な3つステップから成り、各ステップがサイクル時間と成形された物品の性質に大きな影響を与える:
(1)焼結またはコアレッセンス(合体)、
(2)高密度化または気泡除去、
(3)結晶化
【0038】
[図1]は典金型的な成形サイクルで金型内の空気温度(℃)を時間(分)の関数で表したものである。カーブの最初の屈曲(Aの位置)はポリマー粒子の焼結開始またはコアレッセンス(合体)を表す。回転成形では焼結とはポリマー粒子のコアレッセンスを意味する。カーブの次の屈曲(Bの位置)は溶融したポリマーの高密度化プロセスの開始を表す。回転成形では高密度化とは気泡除去を意味する。焼結および高密度化は回転成形全体を通じて2つの別々のプロセスとして見られ、これらは回転成形パラメータと樹脂の特性に応じてそれぞれ独立して変化する。
【0039】
カーブ上の先端位置Cはピーク内部空気温度(Peak Internal Air Temperature、PIAT)を表し、それに続くDの位置は結晶化プロセスの開始点を示す。Eの位置は回転成形された物品が完全に固化し、金型壁から離れ始める時間を表す。Fの位置は型開き時、すなわち回転成形サイクルの終わりを表す。
【0040】
本発明は主として回転成形サイクルおよびスラッシュ成形サイクルの焼結(コアレッセンス)期および高密度化(気泡除去)期のポリマー挙動を改善するものである。焼結は例えば下記文献に記載の方法で測定できる:
【非特許文献3】Bellehumeur et al. (CT. Bellehumeur, M. K. Bisaria, J. Vlachopoulos, Polymer Engineering and Science, 36, 2198, 1996)
【0041】
高密度化と気泡形成に関しては下記文献に記載されている:
【非特許文献4】Kontopoulo et al. (M. Kontopoulo, E. Takacs, J. Vlachopoulos, Rotation, 28, January 2000)
【0042】
溶融中にエアポケットができ、気泡が閉じ込められると均一な溶融物の形成が遅れ、最終成形品の審美的および/または機械的特性に影響がでる。
【0043】
回転成形サイクル中または焼結および/または高密度化シミュレーション時のポリオレフィン粉末の性質を特徴付けるために本発明ではCCD(charge-coupled)カメラを使用した。
【実施例】
【0044】
プロセス挙動の下記特徴のキャラクタリゼーション分析をコダック社から市販のメガピクセルプログレッシブ走査式のインターラインCCD(オンチップ回路付)を用いて行なった:
1)アーキテクチャ:インターラインCCD、プログレッシブ走査式、ノンインタレース、
2)カウントピクセル:1000(H) × 1000(V)
3)ピクセルサイズ:7.4 μm(H) × 7.4μm(V)
4)感光面積:7.4 mm(H) × 7.4mm(V)
5)出力感度:12μV/電子
6)彩度信号:40,000電子
【0045】
7)暗ノイズ:40電子平方二乗平均、
8)暗電流(典型):< 0.5 nA/cm2
9)ダイナミックレンジ:60dB
10) 量子効果(500、540、600nm):36%、33%、26%
11)ブルーミング:10OX
12) 画像遅れ: <10電子
13) スミア: < 0.03%
14) 最大データ速度:40MHz/チャネル(2チャネル)
15) 統合垂直クロックドライバ、
16) 統合相関ダブルサンプリング(CDS)
17) 統合電子シャッタドライバ
【0046】
透明ゲート電極付き15−ビット(16ビット−制御用1ビット)高性能CCDセンサーのグレーアンシグナルレベルは32,768で約10,000フレーム/秒が得られ、400〜1000ナノメートの広いスペクトルをカバーする。
【0047】
[図2]は焼結挙動および高密度化挙動を研究するために用いたカメラの設置方法を示しており、(1)はCCDカメラ、(2)はIRプローブ、(3)はコンピュータ、(4)は加熱装置、(5)は環状照明装置を示す。[図3]は典型的な焼結の例を示し、[図4]は典型的な高密度化または気泡除去の例を示す。
【0048】
時間および温度を関数で気泡が順次消えること、それが瞬時に起きることは明らかである。視覚の観点に加えてコンピュータで写真解析して瞬時のパラメータ群を取った。そのパラメータ群は[表1]に示してある。
【0049】
【表1】

【0050】
2つの気泡間の平均距離Davは下記で定義される:
av=4(1−Aa)/Sv
ここで、
Sv=4π((Deq/2)2*Aa((4π/3)(Deq/2)3)
気泡の等価直径Deqは一つの気泡Sの平均表面を用いて下記式で定義される:
S=4π(Deq/2)2
【0051】
ベースとなるポリエチレンはペレットの形で供給される。このペレットを商用粉砕機、例えばWedco Series SE機械を用いて40〜80°で粉砕して粒径が100〜800μmの粉末にした。加工助剤または加工助剤と紫外線安定剤との混合物または紫外線安定剤または紫外線安定剤の混合物の粉末への添加は市販の混合装置で行なった。
【0052】
イルガノックス(Irganox B 215、登録商標)はCiba Specialty Chemicals社から市販のイルガフォス(Irgafos 168、登録商標)とイルガノックス(Irganox 1010、登録商標)との混合物である。
チヌバン(Tinuvin 783、登録商標)はCiba Specialty Chemicals社から市販の紫外線安定剤である。
シアソーブ(Cyasorb THT 4611、登録商標)およびCyasorb THT 4802、登録商標)はCytec Industries社から市販の紫外線安定剤である。
ペパックス(Pebax MV 1074 SN01、登録商標)はAtofina社から市販のポリエーテル-ブロックコポリアミドポリマーである。
【0053】
実施例1:2と比較例A、B
実施例1、2と比較例A、Bで使用したポリエチレンは担体に支持されたメタロセン触媒系を使用して作られたモノモダルなポリエチレンで、そのMI2は8.0dg/分、密度は0.934グラム/ミリリットルである。これはAtofina社からフィナセン(Finacene M3582、登録商標)の名称で市販されている。
加工助剤、紫外線安定剤、その他の添加剤とその添加量は[表2]に示してある。
商用回転成形機を用いた回転成形で作った10Lキャニスター(缶)のサンプルで評価した。全ての場合でピーク内部空気温度(PIAT)は21O℃であった。
【0054】
ポリエーテル-ブロックコポリアミドポリマー(ここではPebax MV 1074 SN01、登録商標)の効果およびポリエーテル-ブロック・コポリアミド・ポリマーと紫外線安定剤(ここではTinuvinR 783、登録商標)との組合せの効果によって、回転成形物品における高密度化が改良され、すなわち気泡除去が行なわれて単位mm2当りの気泡数が劇的に減少していることが分る。
【0055】
【表2】

【0056】
テーブルIlは、加工助剤を使用する追加の効果および組合せの紫外線安定剤を明らかに示す。
【0057】
実施例3〜6と比較例C、D
実施例3〜6と比較例C、Dで使用したポリエチレンは担体に支持されたメタロセン触媒系を使用して作られたMI2が4.0dg/分で、密度が0.940グラム/ミリリットルであるモノモダル(monomodal)なポリエチレンである。これはフィナティン(Finathene ER2296、登録商標)の名称でAtofina社から市販されている。
加工助剤、紫外線安定剤、その他の添加剤とその使用量は[表3]に示してある。
【0058】
【表3】

【0059】
実施例3〜6および比較例CとDは上記CCDカメラを使用して高密度化度を解析した。
[図5]および[図6]は実施例3〜6および比較例C、Dの結果で、温度(℃)を関数とした単位mm2当りの気泡数Naを示している。この結果から、ポリエーテルブロックアミドの添加でポリエチレンの加工性が改善し、気泡の除去をより低温度で達成できるということは明らかに示している。
【0060】
ポリエーテル-ブロックコポリアミドポリマーと紫外線安定剤とを一緒に添加すると、ポリエチレンの加工性がさらに改善する。実施例3および比較例Cの焼結時間を下記文献に記載の方法を用いて決定した。
【非特許文献5】Bellehumeur et al, C.T. Bellehumeur、M.K。Bisaria、J. Vlachopoulos、Polymer Engineering and Science(36)2198、1996)
【0061】
比較例Cの焼結時間は520秒、実施例3の焼結時間は340秒である。この結果もポリエーテル-ブロックコ−ポリアミドポリマーの添加でサイクル時間が短くなり、回転成形の加工性が改善することを従って、示している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】回転成形の完全一サイクルでの金型内部の空気温度(℃で表示)を時間(分で表示)の関数で表したグラフ。
【図2】焼結および高密度化の挙動を研究するのに使用したカメラのセット法を示す図。
【図3】コアレッセンス(会合)プロセスを示す一連の写真。
【図4】気泡除去プロセスを示す一連の写真。
【図5】実施例3、4および比較例Cの研究室での回転成形シミュレーションでの温度の関数としたmm2当りの気泡数を表すグラフ。
【図6】実施例4、5および比較例Cの研究室での回転成形シミュレーションでの温度の関数としたmm2当りの気泡数を表すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c):
(a) 下記(i)または(ii)の99〜99.999重量%:
(i)ポリオレフィン、
(ii) 50〜99重量%の第1ポリオレフィンと1〜50重量%の第1ポリオレフィンとは異なるポリマーとから成るポリオレフィン組成物、
(b) 0.001〜1重量%のポリエーテル-ブロックコポリアミドから成る高濃度化助剤、
(c) 任意成分としての0.025〜0.500重量%の一種または複数の紫外線安定剤、
を基本とした回転成形またはスラッシュ成形用ポリオレフィン組成物でのポリエーテル-ブロックコポリアミドの高濃度化助剤成分としての使用。
【請求項2】
高濃度化助剤が、主成分がポリエーテル-ブロックコポリアミドで、マイナー成分がフルオロポリマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルエステルおよびポリエチレングリコールから成る群の中から選択される成分との混合物である請求項1に記載のポリエーテル-ブロックコポリアミドの使用。
【請求項3】
ポリオレフィンがエチレンまたはプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーである請求項2に記載のポリエーテル-ブロックコポリアミドの使用。
【請求項4】
ポリオレフィンがメタロセン触媒系を用いて製造したエチレンのホモポリマーまたはコポリマーである請求項3に記載のポリエーテル-ブロックコポリアミドの使用。
【請求項5】
同じポリオレフィンを用い、同じ処理条件下で実行した同じプロセスで高濃度化助剤および任意成分の紫外線安定剤を添加しない場合に比べて、同じmm2当りの気泡数となるピーク内部空気温度が少なくとも1O℃低下する請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエーテル-ブロックコポリアミドの使用。
【請求項6】
同じポリオレフィンを用い、同じ処理条件下で実行した同じプロセスで高濃度化助剤および任意成分の紫外線安定剤を添加しない場合に比べて、サイクル時間が少なくとも10%短くなる請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエーテル-ブロックコポリアミドの使用。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエーテル-ブロックコポリアミドを回転成形およびスラッシュ成形で使用して得られる物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−501053(P2008−501053A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513954(P2007−513954)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052459
【国際公開番号】WO2005/118708
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】