説明

ポリエーテルおよびその製造方法

【課題】新規な分子構造を有するポリエーテルおよびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】ポリエーテルは、特定の構造を有する繰り返し単位により構成されていることを特徴とする。また、ポリエーテルの製造方法は、特定のトリエポキシ化合物と、特定のジオール化合物とを反応させる工程を経ることにより分岐骨格を有するポリエーテルを得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐骨格を有するポリエーテルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学部材、例えば光ファイバーとしては、透明性が高く、長距離通信においても生じる伝送損失が少ないことから、石英ファイバーなどの無機系材料よりなるものが主として用いられているが、一方で家庭内および構内LANのような短距離通信に用いられる光ファイバーの材料としては、光ファイバーの分岐や接続などの作業の容易性の観点から、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)などのプラスチック材料が用いられている。
しかしながら、プラスチック材料は、安価であり、優れた耐衝撃性および成形加工性を有するものの、その光学特性が無機系材料に比して大きく劣るものであるため、光学部材の材料として用いるために有用とされる性能の付与、すなわち更なる高性能化されたプラスチック材料の開発が求められている。
【0003】
而して、近年、光ファイバーなどの光学部材用のプラスチック材料としては、化学構造中にフッ素原子を有する構成のポリマー(以下、「含フッ素ポリマー」ともいう。)が用いられてきている。
この含フッ素ポリマーは、その化学構造中にフッ素原子が含有されていることに基づいて優れた光学特性を得ること、具体的には、高透明性と共に低屈折率を図ることができるものであることから、特に光学材料の分野において活発に研究がなされている。
なお、含フッ素ポリマーは、フッ素原子の特性に基づく種々の性質(例えば、低粘着性、撥水撥油性および熱的・化学的安定性など)が得られることからも、光学材料の他、例えば工業材料、自動車材料、電気・電子材料、医療・農薬材料などとして、多くの分野に広く利用されている。
【0004】
含フッ素ポリマーが優れた光学特性を得ることのできる理由、具体的には、高透明化が図られる理由は、当該含フッ素ポリマーの化学構造中において水素原子がフッ素原子に置換されることに伴ってプラスチック材料の透明性を低下させる原因となるC−H結合の存在が少なくなるためであり、また、低屈折率化が図られる理由は、フッ素原子およびC−F結合の分極率が小さいことから、分子屈折の値を小さくすることができるためである。 ここに、ポリマーの屈折率は、ローレンツ−ローレンスの式に基づくものであり、ポリマーの屈折率を調整するためには、分子屈折の値を制御すること、具体的には、高屈折率のポリマーを得るためには、その化学構造中にベンゼン環やフッ素原子以外のハロゲン原子、イオン原子を導入することによって分子屈折の値を大きくし、一方、低屈折率のポリマーを得るためには、その化学構造中に原子屈折の値の小さいフッ素原子を導入することによって分子屈折の値を小さくする手法が広く用いられている。しかしながら、前述のローレンツ−ローレンスの式によって明らかなように、ポリマーの密度も、分子屈折率と同様にポリマーの屈折率を制御するためのファクターであり、分子密度の小さいポリマーほど低屈折率を示すこととなる。
【0005】
一方、近年、分岐骨格を有するポリマーと、デンドリマーとに大別される多分岐骨格を有する高分子に関しては、特に樹木状の枝分かれ構造を有する分岐骨格を有するポリマーに関する研究が活発になされてきている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
このような分岐骨格を有するポリマーは、同一分子量の直鎖状のポリマーと比して溶液粘度が低く、また種々の有機溶媒に対する溶解性が高く、非晶性であると共に、多数の末端反応性基を有することから多くの機能性基の導入が可能である、などの特性を有するものである。また、分岐骨格を有するポリマーについては、骨格構造上、その分子密度が小さいことが予測され、よって、同一分子量の直鎖状のポリマーに比して低屈折率となる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Y.H.Kim,O.W.Webster,J.Am.Chem.Soc.,F.,Macromolecules,25.3450(1992).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情に基づいて、屈折率が低いという特性を有する高分子の合成を目的として研究を重ねた結果、完成されたものであって、その目的は、新規な分子構造を有するポリエーテルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリエーテルは、下記化学式(1)で表される繰り返し単位により構成されていることを特徴とする。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、R1 は、アルキル基またはパーフルオロアルキル基を示す。〕
【0012】
本発明のポリエーテルは、下記化学式(2)で表される繰り返し単位により構成されていることを特徴とする。
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を示す。〕
【0015】
本発明のポリエーテルは、下記化学式(3)で表される繰り返し単位により構成されていることが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
本発明のポリエーテルは、化学構造中にフッ素原子が含有されていることが好ましい。
【0018】
本発明のポリエーテルは、末端にオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基またはアントリル基を有することが好ましい。
【0019】
本発明のポリエーテルの製造方法は、下記化学式(4)で表されるトリエポキシ化合物と、下記化学式(5)〜化学式(7)のいずれかで表されるジオール化合物とを反応させる工程を経ることにより分岐骨格を有するポリエーテルを得ることを特徴とする。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
〔式中、R1 は、アルキル基またはパーフルオロアルキル基を示す。〕
【0023】
【化6】

【0024】
〔式中、R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を示す。〕
【0025】
【化7】

【0026】
本発明のポリエーテルの製造方法においては、トリエポキシ化合物と、上記化学式(7)で表されるジオール化合物とを反応させる工程において、トリエポキシ化合物に対する当該ジオール化合物のモル比が1/2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、低屈折率などの優れた特性を有する、新規な分子構造のポリエーテルを提供することができる。
本発明のポリエーテルとしては、特にその化学構造中にフッ素原子が含有されてなるものは、より一層低い屈折率を得ることができる。
【0028】
本発明のポリエーテルは、その構造上、多くの末端反応性基を有しているため、多くの機能性基を導入することができ、特にオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基またはアントリル基を導入することによって得られる、末端にオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基またはアントリル基を有する構造のものは、光反応性を有するものとなる。
【0029】
本発明のポリエーテルの製造方法によれば、原料として、2官能性分子(A2 型モノマー)であるジオール化合物と、3官能性分子(B3 型モノマー)であるトリエポキシ化合物とを用い、これらを反応させることによってA2 +B3 型の分岐骨格を有するポリエーテルを合成することができるため、上記化学式(1)〜化学式(3)で表される繰り返し単位のいずれかにより構成される、新規な分子構造を有するポリエーテルを容易に製造することができる。
【0030】
本発明のポリエーテルの製造方法であって、特にトリエポキシ化合物と、上記化学式(7)で表されるジオール化合物とを反応させる工程を経ることによって得られるポリエーテルを得るための方法においては、反応に供するトリエポキシ化合物とジオール化合物との割合(仕込み比)とを調整することによって得られるポリエーテルの末端基(末端官能基)を制御することができ、その結果、得られるポリエーテルを、末端基のすべてがエポキシ基なるよう制御することによって光反応性を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ポリエーテル(1)およびポリエーテル(2)の各々に係るフッ素原子の含有割合と屈折率との関係を示すグラフである。
【図2】実施例4において得られたポリエーテル(1)に係る温度と屈折率との関係を示すグラフである。
【図3】実施例16において得られたオキセタニル基が導入されてなるポリエーテルに係る光照射時間とオキセタニル基の転化率との関係、および実施例において得られたポリエーテルに係る光照射時間とオキセタニル基の転化率との関係を示すグラフである。
【図4】実施例17において得られたメタクリロイル基が導入されてなるポリエーテルに係る光照射時間とメタクリロイル基の転化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0033】
本発明のポリエーテルには、上記化学式(1)で表される繰り返し単位により構成される分岐骨格を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(1)」ともいう。)と、上記化学式(2)で表される繰り返し単位により構成される分岐骨格を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(2)」ともいう。)と、上記化学式(3)で表される繰り返し単位により構成される分岐骨格を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(3)」ともいう。)との3種が包含される。
【0034】
<ポリエーテル(1)>
ポリエーテル(1)を構成する繰り返し単位を示す化学式(1)において、R1 は、アルキル基またはパーフルオロアルキル基を示す。
1 を示すアルキル基の好ましい例としては、メチル基、また、パーフルオロアルキル基の好ましい例としては、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0035】
このポリエーテル(1)は、同一の構成を有する繰り返し単位よりなるものに限られず、各繰り返し単位におけるR1 が異なったものであってもよい。
【0036】
ポリエーテル(1)の好ましい具体例は、化学式(1)においてR1 がパーフルオロメチル基である繰り返し単位を有する構成のポリエーテル(以下、「特定ポリエーテル(1)」ともいう。)である。
この特定ポリエーテル(1)は、化学式(1)においてR1 がパーフルオロメチル基である繰り返し単位を有すると共に、化学式(1)においてR1 がメチル基である繰り返し単位を有するものであってもよい。
【0037】
この特定ポリエーテル(1)は、その化学構造中にフッ素原子が含有されてなるものであるが、当該特定ポリエーテル(1)において、フッ素原子の含有割合は、5〜70%であることが好ましい。
フッ素原子の含有割合が70%を超える場合には、良好な製膜性が得られなくなるおそれがある。
ここに、フッ素原子の含有割合は、例えば 1H NMR測定によって得られる 1H NMRスペクトルの芳香族プロトンの積分比に基づいて算出することができる。
【0038】
また、ポリエーテル(1)の数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算で、通常、1500〜4000である。
また、ポリエーテル(1)の重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnで示される分子量分布は、特に限定されるものではないが、比較的小さいことが好ましい。
【0039】
このようなポリエーテル(1)は、例えば上記化学式(4)で表されるトリエポキシ化合物(以下、「原料トリエポキシ化合物」ともいう。)と、上記化学式(5)で表されるジオール化合物(以下、「原料ジオール化合物(1)」ともいう。)とを反応させる反応工程(重付加反応工程)を経ることにより合成することができる。
【0040】
この反応工程において、反応に供する、原料トリエポキシ化合物と、原料ジオール化合物(1)との割合(仕込み比)は、原料ジオール化合物(1)のモル数が原料トリエポキシ化合物のモル数以上であることが好ましく、特に高い収率が得られることから、仕込み比(原料トリエポキシ化合物:原料ジオール化合物(1))が2:3(モル比)であることが好ましい。
ここに、合成目的物であるポリエーテル(1)が同一の構成を有する繰り返し単位よりなるものではない場合には、原料ジオール化合物(1)として2種類、具体的には、化学式(5)においてR1 がアルキル基であるものと、化学式(5)においてR1 がパーフルオロアルキル基であるものとが組み合わされて用いられることとなり、これらの2種類の化合物のモル数の合計が原料ジオール化合物(1)のモル数となる。
【0041】
また、この反応工程においては、触媒として、例えばテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドなどを用いることができ、また、溶媒として、例えばジクロロベンゼンなどを用いることができる。
触媒の使用量は、5mol%であることが好ましい。
溶媒の使用量は、例えば反応に供する原料トリエポキシ化合物の量が0.2mmolである場合には、0.6ミリリットルである。
【0042】
また、原料トリエポキシ化合物と、原料ジオール化合物(1)とは、窒素雰囲気下において反応させることが好ましく、その反応温度は、例えば100℃であり、反応時間は例えば2時間である。
【0043】
このような反応工程において合成物として得られるポリエーテル(1)は、通常、末端に下記化学式(A)で表される基および/または下記化学式(B)で表される基を有する構造のものであるが、反応に供する原料トリエポキシ化合物と原料ジオール化合物(1)とのモル比(仕込み比)を調整することにより、末端基(末端官能基)を制御することができる。
【0044】
【化8】

【0045】
更に、このような構造のポリエーテル(以下、「反応性基末端ポリエーテル(1)」ともいう。)には、例えばオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基およびアントリル基などの機能性基を導入することができる。
【0046】
反応性基末端ポリエーテル(1)に対するオキセタニル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(1)と、3−カルボキシ−3−エチルオキセタンとを、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(1)における末端基の一部または全部がオキセタニル基に変換され、末端にオキセタニル基を有するポリエーテル(以下、「オキセタニル基末端ポリエーテル(1)」ともいう。)が得られる。 このようにして得られるオキセタニル基末端ポリエーテル(1)は、反応性基末端ポリエーテル(1)の末端基がオキセタニル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0047】
また、反応性基末端ポリエーテル(1)に対する(メタ)アクリロイル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(1)と、メタクリル酸またはアクリル酸とを、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(1)における末端基の一部または全部が(メタ)アクリロイル基に変換され、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル(以下、「(メタ)アクリロイル基末端ポリエーテル(1)」ともいう。)が得られる。
このようにして得られる(メタ)アクリロイル基末端ポリエーテル(1)は、反応性基末端ポリエーテル(1)の末端基が(メタ)アクリロイル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0048】
更に、反応性基末端ポリエーテル(1)に対するアントリル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(1)と、1−アントラセンカルボン酸とを、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(1)における末端基の一部または全部がアントリル基に変換され、末端にアントリル基を有するポリエーテル(以下、「アントリル基末端ポリエーテル(1)」ともいう。)が得られる。
このようにして得られるアントリル基末端ポリエーテル(1)は、反応性基末端ポリエーテル(1)の末端基がアントリル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0049】
<ポリエーテル(2)>
ポリエーテル(2)を構成する繰り返し単位を示す化学式(2)において、R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を示す。
【0050】
このポリエーテル(2)は、同一の構成を有する繰り返し単位よりなるものに限られず、各繰り返し単位におけるR2 およびR3 が異なったものであってもよい。
【0051】
ポリエーテル(2)の好ましい具体例は、化学式(2)においてR2 およびR3 の少なくともいずれか一方がフッ素原子である繰り返し単位を有する、すなわち化学式(2)においてR2 およびR3 が共にフッ素原子である繰り返し単位および/または化学式(2)においてR2 およびR3 のいずれか一方がフッ素原子である繰り返し単位を有する構成のポリエーテル(以下、「特定ポリエーテル(2)」ともいう。)である。
この特定ポリエーテル(2)は、化学式(2)においてR2 およびR3 の少なくともいずれか一方がフッ素原子である繰り返し単位を有すると共に、化学式(2)においてR2 およびR3 が共に水素原子である繰り返し単位を有するものであってもよい。
【0052】
この特定ポリエーテル(2)は、その化学構造中にフッ素原子が含有されてなるものであるが、当該特定ポリエーテル(2)において、フッ素原子の含有割合は、5〜70%であることが好ましい。
フッ素原子の含有割合が70%を超える場合には、良好な製膜性が得られなくなるおそれがある。
【0053】
また、ポリエーテル(2)の数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算で、通常、1400〜4500である。 また、ポリエーテル(2)の重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnで示される分子量分布は、特に限定されるものではないが、比較的小さいことが好ましい。
【0054】
このようなポリエーテル(2)は、例えば原料トリエポキシ化合物と、上記化学式(6)で表されるジオール化合物(以下、「原料ジオール化合物(2)」ともいう。)とを反応させる反応工程(重付加反応工程)を経ることにより合成することができる。
【0055】
この反応工程において、反応に供する、原料トリエポキシ化合物と、原料ジオール化合物(2)との割合は、原料ジオール化合物(2)のモル数が原料トリエポキシ化合物のモル数以上であることが好ましく、特に高い収率が得られることから、仕込み比(原料トリエポキシ化合物:原料ジオール化合物(2))が2:3(モル比)であることが好ましい。
ここに、合成目的物であるポリエーテル(2)が同一の構成を有する繰り返し単位よりなるものでない場合には、原料ジオール化合物(2)として2種類以上、具体的には、化学式(6)においてR2 およびR3 が共に水素原子であるもの、化学式(6)においてR2 およびR3 のいずれか一方が水素原子であって他方がフッ素原子であるもの、および化学式(6)においてR2 およびR3 が共にフッ素原子であるもののうちの少なくとも2種類以上が組み合わせられて用いられることとなり、これらの複数種類の化合物のモル数の合計が原料ジオール化合物(2)のモル数となる。
【0056】
また、この反応工程においては、触媒として、例えばテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドなどを用いることができ、また、溶媒として、例えばジクロロベンゼンなどを用いることができる。
触媒の使用量は、5mol%であることが好ましい。
溶媒の使用量は、例えば反応に供する原料トリエポキシ化合物の量が0.4mmolである場合には、1.2ミリリットルである。
【0057】
また、原料トリエポキシ化合物と、原料ジオール化合物(2)とは、窒素雰囲気下において反応させることが好ましく、その反応温度は、例えば100℃であり、反応時間は例えば6時間である。
【0058】
このような反応工程において合成物として得られるポリエーテル(2)は、通常、末端に上記化学式(A)で表される基および/または上記化学式(B)で表される基を有する構造のものであるが、反応に供する原料トリエポキシ化合物と原料ジオール化合物(2)とのモル比(仕込み比)を調整することにより、末端基(末端官能基)を制御することができる。
【0059】
更に、このような構造のポリエーテル(以下、「反応性基末端ポリエーテル(2)」ともいう。)には、例えばオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基およびアントリル基などの機能性基を導入することができる。
【0060】
反応性基末端ポリエーテル(2)に対するオキセタニル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(2)と、3−カルボキシ−3−エチルオキセタンとを、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(2)における末端基の一部または全部がオキセタニル基に変換され、末端にオキセタニル基を有するポリエーテル(以下、「オキセタニル基末端ポリエーテル(2)」ともいう。)が得られる。 このようにして得られるオキセタニル基末端ポリエーテル(2)は、反応性基末端ポリエーテル(2)の末端基がオキセタニル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0061】
また、反応性基末端ポリエーテル(2)に対する(メタ)アクリロイル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(2)と、メタクリル酸またはアクリル酸とを、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(2)における末端基の一部または全部が(メタ)アクリロイル基に変換され、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル(以下、「(メタ)アクリロイル基末端ポリエーテル(2)」ともいう。)が得られる。
このようにして得られる(メタ)アクリロイル基末端ポリエーテル(2)は、反応性基末端ポリエーテル(2)の末端基が(メタ)アクリロイル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0062】
更に、反応性基末端ポリエーテル(2)に対するアントリル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(2)と、1−アントラセンカルボン酸とを、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(2)における末端基の一部または全部がアントリル基に変換され、末端にアントリル基を有するポリエーテル(以下、「アントリル基末端ポリエーテル(2)」ともいう。)が得られる。
このようにして得られるアントリル基末端ポリエーテル(2)は、反応性基末端ポリエーテル(2)の末端基がアントリル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0063】
<ポリエーテル(3)>
ポリエーテル(3)は、その化学構造中にフッ素原子が含有されてなるものであるが、当該ポリエーテル(3)において、フッ素原子の含有割合は、5〜70%であることが好ましい。
フッ素原子の含有割合が70%を超える場合には、良好な製膜性が得られなくなるおそれがある。
【0064】
また、ポリエーテル(3)の数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算で、通常、1000〜8000である。
また、ポリエーテル(3)の重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnで示される分子量分布は、特に限定されるものではないが、比較的小さいことが好ましい。
【0065】
このようなポリエーテル(3)は、例えば原料トリエポキシ化合物と、上記化学式(7)で表されるジオール化合物(以下、「原料ジオール化合物(3)」ともいう。)とを反応させる反応工程(重付加反応工程)を経ることにより合成することができる。
【0066】
この反応工程において、反応に供する、原料トリエポキシ化合物と、原料ジオール化合物(3)との割合は、原料ジオール化合物(3)のモル数が原料トリエポキシ化合物のモル数以上であることが好ましく、特に、原料トリエポキシ化合物に対するジオール化合物(3)のモル比が1/2倍であることが好ましい。
【0067】
また、この反応工程においては、触媒として、例えばテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドなどを用いることができ、また、溶媒として、例えばジクロロベンゼンなどを用いることができる。
触媒の使用量は、5mol%であることが好ましい。
溶媒の使用量は、例えば反応に供する原料トリエポキシ化合物の量が0.4mmolである場合には、1.2ミリリットルである。
【0068】
また、原料トリエポキシ化合物と、原料ジオール化合物(3)とは、窒素雰囲気下において反応させることが好ましく、その反応温度は、例えば100℃であり、反応時間は例えば2〜5時間である。
【0069】
このような反応工程において合成物として得られるポリエーテル(3)は、通常、末端に上記化学式(B)で表される基を有する構造のものであるが、反応に供する原料トリエポキシ化合物と原料ジオール化合物(3)とのモル比(仕込み比)を調整することにより、末端基(末端官能基)を制御することができる。
具体的には、例えば原料トリエポキシ化合物に対するジオール化合物(3)のモル比を1/2倍とすることにより、得られるポリエーテル(3)のすべての末端を上記化学式(B)で表される基とすること、すなわちすべての末端基をエポキシ基とすることができる。
ここに、ポリエーテル(3)は、末端基のすべてをエポキシ基とすることにより光反応性を有するものとなる。
【0070】
更に、このような構造のポリエーテル(以下、「反応性基末端ポリエーテル(3)」ともいう。)には、例えばオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基およびアントリル基などの機能性基を導入することができる。
なお、反応性基末端ポリエーテル(3)は、フェノール性水酸基を有さないものであることから、前述の反応性基末端ポリエーテル(1)および反応性基末端ポリエーテル(2)に比して、機能性基の導入された分岐構造を有するポリエーテルを得るための基材として好適なものである。
【0071】
反応性基末端ポリエーテル(3)に対するオキセタニル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(3)の末端の殆どがエポキシ基となるように調整し、その後、3−カルボキシ−3−エチルオキセタンと、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(3)における末端基の一部または全部がオキセタニル基に変換され、末端にオキセタニル基を有するポリエーテル(以下、「オキセタニル基末端ポリエーテル(3)」ともいう。)が得られる。
このようにして得られるオキセタニル基末端ポリエーテル(3)は、反応性基末端ポリエーテル(3)の末端基がオキセタニル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0072】
また、反応性基末端ポリエーテル(3)に対する(メタ)アクリロイル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(3)の末端の殆どがエポキシ基となるように調整し、その後、メタクリル酸またはアクリル酸と、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(3)における末端基の一部または全部が(メタ)アクリロイル基に変換され、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル(以下、「(メタ)アクリロイル基末端ポリエーテル(3)」ともいう。)が得られる。
このようにして得られる(メタ)アクリロイル基末端ポリエーテル(3)は、反応性基末端ポリエーテル(3)の末端基が(メタ)アクリロイル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0073】
更に、反応性基末端ポリエーテル(3)に対するアントリル基の導入は、例えば反応性基末端ポリエーテル(3)と、1−アントラセンカルボン酸とを、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミドの存在下、N−メチル−2−ピロリドン中において反応させることによって行うことができ、これにより、反応性基末端ポリエーテル(3)における末端基の一部または全部がアントリル基に変換され、末端にアントリル基を有するポリエーテル(以下、「アントリル基末端ポリエーテル(3)」ともいう。)が得られる。
このようにして得られるアントリル基末端ポリエーテル(3)は、反応性基末端ポリエーテル(3)の末端基がアントリル基に変換されてなる構造を有し、光反応性を有するものである。
【0074】
以上のような本発明のポリエーテルは、その分子構造(分岐骨格を有する構造)に起因して、同一分子量の直鎖状のポリマーと比して屈折率が低いという優れた特性を有するものであり、特にその化学構造中にフッ素原子が含有されてなるものは、より一層低屈折率となる。
【0075】
また、本発明のポリエーテルは、多分岐構造を有する高分子であり、多くの末端反応性基を有するものであることから、多くの機能性基を導入することができ、特にオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基およびアントリル基を導入することによって得られる、末端にオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基またはアントリル基を有する構造のものは、光反応性を有するものとなる。
【0076】
また、本発明のポリエーテルは、原料として、2官能性分子(A2 型モノマー)である特定のジオール化合物(具体的には、原料ジオール化合物(1)〜(3))と、3官能性分子(B3 型モノマー)である原料トリエポキシ化合物とを用い、これらを反応させることによって得ることができるため、その製造が容易である。
そして、特に原料トリエポキシ化合物と、原料ジオール化合物(3)とを反応させる工程を経ることによって得られるポリエーテル(3)を得るための方法においては、反応に供する原料トリエポキシ化合物と原料ジオール化合物(3)との割合(仕込み比)とを調整することによって得られるポリエーテル(3)の末端基(末端官能基)を制御することができ、その結果、得られるポリエーテル(3)を、末端基のすべてがエポキシ基となるよう制御することによって光反応性を有するものとすることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
〔実施例1〕
(原料トリエポキシ化合物の合成例1)
容積200ミリリットルの3つ口ナスフラスコに、4,4’,4”−トリヒドロキシフェニルメタン(THPM)5.85g(20mmol)と、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.97g(3mmol)と、炭酸セシウム26.06g(80mmol)とを仕込み、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)40ミリリットル中に溶解させ、60℃で4時間にわたって撹拌した後、エピブロモヒドリン(EBH)10.95gを滴下し、50℃の温度条件において、14時間にわたって反応させた。
反応終了後、塩をろ別し、反応溶液を酢酸エチルによって希釈し、飽和食塩水を用いて3回洗浄を行い、有機層を乾燥剤として無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。その後、乾燥剤をろ別し、酢酸エチルを減圧留去した後、酢酸エチルとクロロホルムとの混合液(酢酸エチル:クロロホルム=1:4)を展開溶媒として用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって単離し、更に得られた生成物をクロロホルムとn−ヘキサンとの混合液(クロロホルム:n−ヘキサン=1:1)を溶媒として用いて再結晶処理することによって精製し、収率65%で5.98gの反応生成物を得た。
【0079】
得られた反応生成物について、IR測定および 1H NMR測定を行ったところ、下記式(a)で表される、すなわち化学式(4)で表されるトリエポキシ化合物(以下、「原料トリエポキシ化合物(A)」ともいう。)であることが確認された。
【0080】
【化9】

【0081】
・IR(bulk,cm-1):
1607,1508(νC=C aromatic),1300,1034(νC−O−C ether),914(νC−O−C cyclic ether)
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS):δ(ppm):
2.75(dd,J=3.0,4.8Hz,3.0H,Ha ),2.89(dd,J=4.8,4.8Hz,3.0H,Hb ),3.33(m,3.0H,Hc ),3.93(dd,J=6.0,11.4Hz,3.0H,Hd ),4.18(dd,J=3.6,11.4Hz,3.0H,He ),5.39(s,1.0H,Hh ),6.82(d,J=8.4Hz,6.0H,Hg ),6.98(d,J=8.4Hz,6.0H,Hf
【0082】
(ポリエーテルの合成例1)
すり付き試験管に、TBAB0.0097g(5mol%)と、原料トリエポキシ化合物(A)0.092g(0.2mmol)と、化学式(5)で表される原料ジオール化合物(1)であってR1 がメチル基であるジオール化合物(以下、「原料ジオール化合物(1A)」ともいう。)0.068g(0.3mmol)とを仕込み、o−ジクロロベンゼン0.6ミリリットル中に溶解させ、三方コックを取り付けて系を窒素で置換し、100℃の温度条件において、2時間にわたって撹拌することによって反応させた。
反応終了後、反応溶液をテトラヒドロフラン(THF)によって希釈し、n−ヘキサン中に滴下することによって白色固体を析出させた。得られた固体をTHF中に溶解し、貧溶媒として水およびn−ヘキサンを用いてそれぞれ1回ずつ再沈精製を行い、その後、沈殿物をろ別して減圧乾燥することにより、収率76%で白色固体0.12gを得た。
【0083】
得られた白色固体について、IR測定および 1H NMR測定を行ったところ、下記式(b)で表される、すなわち化学式(1)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(1)であってR1 がメチル基である繰り返し単位を有し、末端に下記式(b−1)および式(b−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(1A)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(1A)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が2000であって分子量分布(Mw/Mn)が2.2であった。
なお、このポリエーテル(1A)において、芳香族環の割合(芳香環含有率)をモノマーの仕込み比(原料トリエポキシ化合物と原料ジオール化合物との仕込み比)に基づいて算出したところ、53.8%であった。
【0084】
【化10】

【0085】
・IR(KRS,cm-1):
3401(νOH),1608,1508(νC=C aromatic),1299,1041(νC−O−C ether)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
1.54(s,6.0H,Hc ),2.65−2.70(m,0.9H,Ho ),2.79−2.85(m,0.9H,Hp ),3.27−3.32(m,1.0H,Hn ),3.75−3.81(m,1.0H,Hm ),3.92−4.04(m,5.2H,Hd ,Hf ),4.14−4.22(m,1.3H,He ),4.22−4.30(m,0.9H,Hl ),5.31−5.37(m,1.3H,OH),5.38−5.46(m,0.7H,Hi ),6.61−6.66(m,1.3H,Hj ),6.80−6.84(m,2.8H,Hb ),6.84−6.90(m,4.3H,Hh ),6.92−7.00(m,5.7H,Hg ,Hk ),7.05−7.12(m,2.7H,Ha ),9.11−9.18(m,0.7H,Ph−OH
【0086】
〔実施例2〕
(ポリエーテルの合成例2)
実施例1において、原料ジオール化合物(1A)の使用量を0.046g(0.2mmol)とすると共に、すり付き試験管に、化学式(5)で表される原料ジオール化合物(1)であってR1 がトリフルオロメチル基であるジオール化合物(以下、「原料ジオール化合物(1B)」ともいう。)0.034g(0.1mmol)をも仕込んだこと以外はポリエーテルの合成例1と同様にして収率83%で白色固体0.14gを得た。
【0087】
得られた白色固体について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、下記式(c)で表される、すなわち化学式(1)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(1)であってR1 がメチル基である繰り返し単位と、R1 がトリフルオロメチル基である繰り返し単位とを有し、末端に下記式(c−1)および式(c−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(1B)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(1B)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が2400であって分子量分布(Mw/Mn)が4.2であった。
なお、このポリエーテル(1B)において、フッ素原子の含有割合(フッ素原子含有率)および芳香環含有率をモノマーの仕込み比に基づいて算出したところ、それぞれ6.7%、50.4%であった。
【0088】
【化11】

【0089】
・IR(KRS,cm-1):
3404(νOH),1609,1508(νC=C aromatic),1299,1041(νC−O−C ether),1243,1208,1175(νC−F)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
1.49−1.59(s,4.0H,Hc ),2.63−2.71(m,0.9H,Ho ),2.77−2.85(m,0.9H,Hp ),3.25−3.33(m,1.0H,Hn ),3.73−3.82(m,1.0H,Hm ),3.88−4.19(m,8.3H,Hd ,He ,Hf ),4.22−4.32(m,1.0H,Hl ),5.31−5.47(m,2.5H,Hi ,OH),6.60−6.84(m,3.0H,Hj ,Hb ),6.84−6.91(m,5.1H,Hh ),6.93−7.00(m,6.1H,Hg ,Hk ),7.01−7.19(m,2.7H,Ha ),7.19−7.26(m,1.7H,Hb ),9.11−9.19(m,0.5H,Ph−OH
19F NMR(564.6MHz,DMSO−d6 ,C6 6 ):δ(ppm):
−63.8(s,CF3
【0090】
〔実施例3〕
(ポリエーテルの合成例3)
実施例2において、TBABの使用量を0.019g(5mol%)、原料トリエポキシ化合物(1A)の使用量を0.184g(0.4mmol)および原料ジオール化合物(1B)の使用量を0.134g(0.4mmol)とすると共に、o−ジクロロベンゼンの使用量を1.2ミリリットルとしたこと以外はポリエーテルの合成例2と同様にして収率73%で白色固体0.27gを得た。
【0091】
得られた白色固体について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、上記式(c)で表される、すなわち化学式(1)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(1)であってR1 がメチル基である繰り返し単位と、R1 がトリフルオロメチル基である繰り返し単位とを有し、末端に下記式(c−1)および式(c−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(1C)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(1C)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が3200であって分子量分布(Mw/Mn)が4.0であった。
なお、このポリエーテル(1C)において、フッ素原子含有率および芳香環含有率をモノマーの仕込み比に基づいて算出したところ、それぞれ12.5%、47.4%であった。
【0092】
・IR(KRS,cm-1):
3415(νOH),1609,1508(νC=C aromatic),1299,1041(νC−O−C ether),1245,1208,1174(νC−F)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
1.47−1.59(m,2.0H,Hc ),2.63−2.71(m,1.0H,Ho ),2.75−2.85(m,1.0H,Hp ),3.25−3.33(m,1.0H,Hn ),3.73−3.81(m,1.0H,Hm ),3.87−4.18(m,9.5H,Hd ,He ,Hf ),4.21−4.32(m,1.0H,Hl ),5.31−5.48(m,2.9H,Hi ,OH),6.60−6.83(m,1.8H,Hj ,Hb ),6.83−6.90(m,5.8H,Hh ),6.92−7.00(m,6.3H,Hg ,Hk ),7.00−7.13(m,4.6H,Ha ),7.17−7.27(m,3.1H,Hb
19F NMR(564.6MHz,DMSO−d6 ,C6 6 ):δ(ppm):
−63.9(s,CF3
【0093】
〔実施例4〕
(ポリエーテルの合成例4)
実施例1において、原料ジオール化合物(1A)に代えて原料ジオール化合物(1B)0.101g(0.3mmol)を用いたこと以外はポリエーテルの合成例1と同様にして収率88%で白色固体0.17gを得た。
【0094】
得られた白色固体について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、下記式(d)で表される、すなわち化学式(1)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(1)であってR1 がトリフルオロメチル基である繰り返し単位を有し、末端に下記式(d−1)および式(d−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(1D)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(1D)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が3800であって分子量分布(Mw/Mn)が4.8であった。
なお、このポリエーテル(1D)において、フッ素原子含有率および芳香環含有率をモノマーの仕込み比に基づいて算出したところ、それぞれ17.8%、44.8%であった。
【0095】
【化12】

【0096】
・IR(KRS,cm-1):
3389(νOH),1610,1509(νC=C aromatic),1299,1042(νC−O−C ether),1245,1208,1174(νC−F)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
2.65−2.71(m,0.3H,HO ),2.77−2.85(m,0.3H,Hp ),3.27−3.32(m,0.3H,Hn ),3.74−3.82(m,0.3H,Hm ),3.95−4.13(m,2.7H,Hd ,Hf ),4.13−4.19(m,0.7H,He ),4.23−4.30(m,0.3H,Hl ),5.12−5.73(m,0.9H,Hi ,OH),6.80−6.84(m,0.5H,Hj ),6.84−6.91(m,2.0H,Hh ),6.90−7.00(m,2.0H,Hg ),7.01−7.07(m,1.3H,Ha ),7.08−7.13(m,0.5H,Hk ),7.20−7.26(m,1.3H,Hb
19F NMR(564.6MHz,DMSO−d6 ,C6 6 ):δ(ppm):
−63.9(s,CF3
【0097】
〔実施例5〕
(ポリエーテルの合成例5)
すり付き試験管に、TBAB0.019g(5mol%)と、原料トリエポキシ化合物(A)0.184g(0.4mmol)と、化学式(6)で表される原料ジオール化合物(2)であってR2 およびR3 が水素原子であるジオール化合物(以下、「原料ジオール化合物(2A)」ともいう。)0.112g(0.6mmol)とを仕込み、NMP1.2ミリリットル中に溶解させ、三方コックを取り付けて系を窒素で置換し、100℃の温度条件において、6時間にわたって撹拌することによって反応させた。
反応終了後、反応溶液をTHFによって希釈し、n−ヘキサン中に滴下することによって白色固体を析出させた。得られた固体をTHF中に溶解し、貧溶媒として水およびn−ヘキサンを用いてそれぞれ1回ずつ再沈精製を行い、その後、沈殿物をろ別して減圧乾燥することにより、収率91%で白色固体0.27gを得た。
【0098】
得られた白色固体について、IR測定および 1H NMR測定を行ったところ、下記式(e)で表される、すなわち化学式(2)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(2)であってR2 およびR3 が水素原子である繰り返し単位を有し、末端に下記式(e−1)および式(e−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(2A)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(2A)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が1600であって分子量分布(Mw/Mn)が1.7であった。
なお、このポリエーテル(2A)において、芳香環含有率をモノマーの仕込み比に基づいて算出したところ、58.4%であった。
【0099】
【化13】

【0100】
・IR(KRS,cm-1):
3378(νOH),1608,1501(νC=C aromatic),1290,1045(νC−O−C ether)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
2.57−2.65(m,1.2H,Ho ),2.71−2.77(m,1.1H,Hn ),3.18−3.25(m,1.2H,Hm ),3.64−3.75(m,1.5H,Hk ),3.79−4.05(m,8.1H,Hc ,He ),4.05−4.12(m,2.1H,Hd ),4.15−4.26(m,1.3H,Hl ),5.34(br,3.0H,OH,Hh ),6.71−6.76(m,1.4H,Hj ),6.77−6.84(m,6.3H,Hg ),6.86−6.98(m,10.1H,Hb ,Hf ),7.28−7.50(m,5.2H,Ha ,Hi ),8.53−9.82(br,0.5H,Ph−OH
【0101】
〔実施例6〕
(ポリエーテルの合成例6)
実施例5において、原料ジオール化合物(2A)の使用量を0.074g(0.4mmol)とすると共に、すり付き試験管に、化学式(6)で表される原料ジオール化合物(1)であってR2 およびR3 がフッ素原子であるジオール化合物(以下、「原料ジオール化合物(2B)」ともいう。)0.066g(0.2mmol)をも仕込んだこと以外はポリエーテルの合成例5と同様にして収率84%で白色固体0.27gを得た。
【0102】
得られた白色固体について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、下記式(f)で表される、すなわち化学式(2)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(2)であってR2 およびR3 が水素原子である繰り返し単位と、R2 およびR3 がフッ素原子である繰り返し単位とを有し、末端に下記式(f−1)および式(f−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(2B)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(2B)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が2400であって分子量分布(Mw/Mn)が3.9であった。
なお、このポリエーテル(2B)において、フッ素原子含有率および芳香環含有率をモノマーの仕込み比に基づいて算出したところ、それぞれ9.4%、53.2%であった。
【0103】
【化14】

【0104】
・IR(KRS,cm-1):
3377(νOH),1608,1508(νC=C aromatic),1300,1045(νC−O−C ether),1241(νC−F)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
2.68−2.71(m,2.1H,Ho ),2.80−2.85(m,1.9H,Hn ),3.26−3.34(m,2.0H,Hm ),3.74−3.81(m,2.1H,Hk ),3.81−4.83(m,14.4H,Hc ,Hd ,He ,Hl ),5.01−5.88(m,3.7H,OH,Hh ),6.74−7.05(m,24.1H,Hb ,Hf ,Hg ,Hj ),7.35−7.59(m,5.1H,Ha ,Hi ),8.50−10.10(br,1.0H,Ph−OH
19F NMR(564.6MHz,DMSO−d6 ,C6 6 ):δ(ppm):
−156.2(s,Fb ),−140.9(s,Fa
【0105】
〔実施例7〕
(ポリエーテルの合成例7)
実施例5において、原料ジオール化合物(2A)の使用量を0.037g(0.2mmol)とし、原料ジオール化合物(2B)の使用量を0.132g(0.4mmol)としたこと以外はポリエーテルの合成例5と同様にして収率85%で白色固体0.30gを得た。
【0106】
得られた白色固体について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、上記式(f)で表される、すなわち化学式(2)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(2)であってR2 およびR3 が水素原子である繰り返し単位と、R2 およびR3 がフッ素原子である繰り返し単位とを有し、末端に上記式(f−1)および式(f−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(2C)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(2C)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が3900であって分子量分布(Mw/Mn)が5.8であった。
なお、このポリエーテル(2C)において、フッ素原子含有率および芳香環含有率をモノマーの仕込み比に基づいて算出したところ、それぞれ17.2%、48.9%であった。
【0107】
・IR(KRS,cm-1):
3368(νOH),1609,1508(νC=C aromatic),1300,1048(νC−O−C ether),1243(νC−F)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
2.64−2.71(m,1.0H,Ho ),2.78−2.86(m,1.0H,Hn ),3.26−3.32(m,1.1H,Hm ),3.39−4.98(m,23.7H,Hc ,Hd ,He ,Hk ,Hl )3.39−4.98,5.27−5.63(m,4.7H,OH,Hh ),6.72−6.81(m,2.1H,Hb ,Hj ),6.81−6.90(m,18.0H,Hf ,Hg ),7.01−7.42(m,2.1H,Ha ,Hi ),9.39(s,0.8H,Ph−OH
19F NMR(564.6MHz,DMSO−d6 ,C6 6 ):δ(ppm):
−156.2(s,Fb ),−140.9(s,Fa
【0108】
〔実施例8〕
(ポリエーテルの合成例8)
実施例5において、原料ジオール化合物(2A)に代えて原料ジオール化合物(2B)0.198g(0.6mmol)を用いたこと以外はポリエーテルの合成例5と同様にして収率81%で白色固体0.31gを得た。
【0109】
得られた白色固体について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、下記式(g)で表される、すなわち化学式(2)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(2)であってR2 およびR3 がフッ素原子である繰り返し単位を有し、末端に下記式(g−1)および式(g−2)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(2D)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(2D)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が3000であって分子量分布(Mw/Mn)が2.8であった。
なお、このポリエーテル(2D)において、フッ素原子含有率および芳香環含有率をモノマーの仕込み比に基づいて算出したところ、それぞれ23.9%、45.2%であった。
【0110】
【化15】

【0111】
・IR(KRS,cm-1):
3365(νOH),1608,1495(νC=C aromatic),1300,1044(νC−O−C ether),1249(νC−F)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
2.67−2.71(m,0.4H,Ho ),2.79−2.86(m,0.3H,Hn ),3.29−3.34(m,0.5H,Hm ),3.52−4.63(m,12.2H,Hc ,Hd ,He ,Hk ,Hl ),5.07−5.97(m,2.1H,OH,Hh ),6.66−7.11(m,12.0H,Hf ,Hg ,Hi ,Hj
19F NMR(564.6MHz,DMSO−d6 ,C6 6 ):δ(ppm):
−155.7(s,Fb ),−140.3(s,Fa
【0112】
〔実施例9〕
(ポリエーテルの合成例9)
すり付き試験管に、TBAB0.019g(5mol%)と、原料トリエポキシ化合物(A)0.184g(0.4mmol)と、化学式(7)で表される原料ジオール化合物(3)(以下、「原料ジオール化合物(3A)」ともいう。)0.246g(0.6mmol)とを仕込み、o−ジクロロベンゼン1.2ミリリットル中に溶解させ、三方コックを取り付けて系を窒素で置換し、100℃の温度条件において、2時間にわたって撹拌することによって反応させた。
反応終了後、反応溶液をTHFによって希釈し、n−ヘキサン中に滴下することによって白色固体を析出させた。得られた固体をTHF中に溶解し、貧溶媒として水およびn−ヘキサンを用いてそれぞれ1回ずつ再沈精製を行い、その後、沈殿物をろ別して減圧乾燥することにより、収率63%で白色固体0.29gを得た。
【0113】
得られた白色固体について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、下記式(h)で表される、すなわち化学式(3)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(3)であって末端に下記式(h−1)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(3A)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(3A)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定したところ、数平均分子量(Mn)が5300であって分子量分布(Mw/Mn)が2.4であった。
なお、このポリエーテル(3A)において、フッ素原子含有率および芳香環含有率を 1H NMRスペクトルの芳香族プロトンの積分比により算出したところ、それぞれ30.0%、31.0%であった。
【0114】
【化16】

【0115】
・IR(KRS,cm-1):
3393(νOH),1609,1584,1509(νC=C aromatic),1298,1049(νC−O−C ether),1222,1198(νC−F)
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS):δ(ppm):
2.67−2.76(m,0.8H,Ho ),2.81−2.92(m,0.7H,Hn ),3.28−3.36(m,0.8H,Hm ),3.48−4.37(m,12.8H,Hc ,Hd ,He ,Hk ,Hl ),5.39(m,2.1H,OH,Hh ),6.61−7.08(m,12.0H,Hf ,Hg ),7.54−7.82(m,5.3H,Ha
19F NMR(564.6MHz,CDCl3 ,C6 6 ):δ(ppm):
−76.4(s,−C(CF3 2 −OH),−70.4(d,J=339.9Hz,CF3
【0116】
〔実施例10〕
(ポリエーテルの合成例10)
実施例9において、各々、原料ジオール化合物(3A)を表1に示す使用量で用い、反応時間を表1に示す時間としたこと以外はポリエーテルの合成例9と同様にして白色固体を得た。
【0117】
得られた白色固体の各々について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、上記式(h)で表される、すなわち化学式(3)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(3)であって末端に上記式(h−1)で表される基を有するポリエーテル(以下、「ポリエーテル(3B)」ともいう。)であることが確認された。
また、このポリエーテル(3B)について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定した。結果を表1に示す。
更に、このポリエーテル(3B)において、フッ素原子含有率を 1H NMRスペクトルの芳香族プロトンの積分比により算出し、また、 1H NMR測定の結果に基づいて末端におけるエポキシ基の割合を確認した。結果を表1に示す。
【0118】
また、得られたポリエーテル(3B)0.09g(90質量%)と、光酸発生剤として2−ビス{[4−(2−ヒドロキシ)エトキシ]ジフェニルスルフォニオフェニル}スルフィド(「sp−150」)0.01g(10質量%)とを、アセトンとクロロホルムとの混合液(アセトン:クロロホルム=1:1)よりなる混合溶媒0.2ミリリットルに溶解することによって膜形成材料液を得、この膜形成材料液をKBr(臭化カリウム)板上に塗布し、室温で12時間かけて減圧乾燥することによって薄膜を形成した。
そして、この薄膜に対して消費電力250Wの水銀灯を用い、波長254nmの光の照射強度が6.0mW/cm2 となる条件で15分間光照射を行ったところ、図3にも示すように、エポキシ基の転化率が64%に達し、硬化膜が形成された。この結果から、その末端のすべてがエポキシ基である構造のポリエーテルは、光反応性を有するものであることが確認された。
【0119】
また、この光照射前後において、屈折率測定装置「エリプソメーター DHA−OLX/S4」((株)溝尻工学工業所製)を用いて波長632.8nmの光の屈折率(nD )を測定したところ、光照射前の屈折率nD は1.558、光照射後の屈折率nD は1.575であって光照射前後における屈折率の変化量ΔnD が0.017であった。
【0120】
〔実施例11〜実施例15〕
(ポリエーテルの合成例11〜15)
実施例9において、各々、原料ジオール化合物(3A)を表1に示す使用量で用い、反応時間を表1に示す時間としたこと以外はポリエーテルの合成例9と同様にして白色固体を得た。
【0121】
得られた白色固体の各々について、IR測定、 1H NMR測定および19F NMR測定を行ったところ、上記式(h)で表される、すなわち化学式(3)で表される繰り返し単位により構成されてなるポリエーテル(3)であって末端に上記式(h−1)で表される基を有するポリエーテル(以下、各々、「ポリエーテル(3C)〜ポリエーテル(3G)」ともいう。)であることが確認された。
また、これらのポリエーテル(3C)〜(3G)の各々について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量、および分子量分布を測定した。結果を表1に示す。
更に、これらのポリエーテル(3C)〜(3G)の各々において、フッ素原子含有率を 1H NMRスペクトルの芳香族プロトンの積分比により算出し、また、 1H NMR測定の結果に基づいて末端におけるエポキシ基の割合を確認した。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
以上の表1に示す実施例10〜実施例15の結果から、反応に供する原料ジオール化合物の量が小さくなるに従って得られるポリエーテル(3)の末端のエポキシ基の割合が大きくなり、原料トリエポキシ化合物および原料ジオール化合物の使用量のモル比(原料トリエポキシ化合物:原料ジオール化合物)が2:1である場合に末端のすべてがエポキシ基となることが明らかとなった。
従って、単量体の仕込み比、すなわち原料トリエポキシ化合物および原料ジオール化合物の使用量により、得られるポリエーテル(3)の末端官能基を制御することができる、ということが確認された。
【0124】
以上の実施例1〜実施例15の各々において得られたポリエーテル(1A)〜(3G)について、下記の手法によってガラス転移温度を測定したところ、実施例1〜実施例4に係るポリエーテル(1)、実施例5〜実施例8に係るポリエーテル(2)および実施例9〜実施例15に係るポリエーテル(3)のいずれにおいても、フッ素原子含有率が大きくなるに従ってガラス転移温度が上昇する傾向を示すことが確認された。
その理由は、ポリエーテル(1)については、その化学構造中のフッ素原子の含有割合が大きくなるに伴ってメチル基がパーフルオロメチル基に置き換えられることとなること、また反応に供される単量体(モノマー)として、その化学構造中にフッ素原子を含有し、高い反応性を有するものの割合が大きくなることに起因して得られる分岐骨格を有するポリエーテルの分子量が大きくなることが原因であると考えられる。
また、ポリエーテル(2)については、前述のポリエーテル(1)と同様に得られる分岐骨格を有するポリエーテルの分子量が大きくなることが原因であると考えられると共に、その他、当該分岐骨格を有するポリエーテルの分子内で部分的に架橋が生じている可能性があることが示唆されており、このことも原因の一つであると考えられる。
ここに、実施例1〜実施例9の各々において得られたポリエーテルに係るガラス転移温度の測定結果を表2に示す。
【0125】
また、実施例1〜実施例15の各々において得られたポリエーテル(1A)〜(3G)について、下記の手法によって屈折率を測定したところ、ポリエーテル(1)、ポリエーテル(2)およびポリエーテル(3)のいずれにおいても、フッ素原子含有率が大きくなり、芳香族環含有率が小さくなるに従って屈折率が直線的に小さくなることが確認された。
その理由は、フッ素原子含有率および芳香環含有率の変化に伴って分子屈折が変化するためであると考えられる。
ここに、実施例1〜実施例9の各々において得られたポリエーテルに係る屈折率の測定結果を表2に示す。また、ポリエーテル(1)およびポリエーテル(2)については、各々、フッ素原子含有率と屈折率との関係を図1に示す。図1において、線(1)は、ポリエーテル(1)に係る測定結果のプッロット「▲」に基づく直線であり、線(2)は、ポリエーテル(2)に係る測定結果のプロット「■」に基づく直線である。
【0126】
(ガラス転移温度の測定)
測定対象であるポリエーテル3mgを、簡易密閉アルミニウムパン(Seiko Instrument社製)に量り取り、測定装置「Seiko Instrument EXSTAR 6000/DSC 6200」を用い、窒素気流下において昇温速度10℃/minの条件でガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0127】
(屈折率の測定)
測定対象であるポリエーテル10mgを、サンプルピンに量り取り、キャスト溶媒としてTHF0.5ミリリットルを加えて溶解させ、得られた溶液をシリコンウエハ上に滴下し、スピンコーター「1H−D7」(ミカサ(株)製)を用いて2000rpm、53秒間の条件でスピンコートを行なうことにより、膜厚0.1μmの薄膜を形成し、この薄膜を室温にて2時かけて乾燥した後、更に24時間かけて減圧乾燥し、屈折率測定装置「エリプソメーター DHA−OLX/S4」((株)溝尻工学工業所製)を用いて波長632.8nmの光の屈折率(nD )を測定した。
【0128】
【表2】

【0129】
また、フッ素原子含有率が0%である実施例1に係るポリエーテルおよび実施例5に係るポリエーテルは、各々、その屈折率を類似の繰り返し単位を有する直鎖状ポリマー、具体的には、各々、下記式(I)で表される繰り返し単位よりなる直鎖状ポリマーおよび下記式(II)で表される繰り返し単位よりなる直鎖状ポリマーと比較したところ、直鎖状ポリマーよりも高い芳香環含有率を有するにもかかわらず、低い屈折率を有することが確認された。
その理由は、実施例1および実施例5に係るポリエーテルが分岐骨格を有するものであって分子内に空隙を有していることから、直鎖状ポリマーに比して分子密度が小さいためであると考えられる。
ここに、表2には、直鎖状ポリマーの屈折率の値を、各々、実施例1に係るポリエーテルに類似の繰り返し単位を有する直鎖状ポリマーの値を参照例1として、また 実施例5に係るポリエーテルに類似の繰り返し単位を有する直鎖状ポリマーの値を参照例2として示す。
【0130】
【化17】

【0131】
【化18】

【0132】
また、実施例4において得られたポリエーテルに関して、前述の屈折率の測定方法と同様の手法により、加熱装置を用いて薄膜を加熱することによって40〜140℃の温度範囲における屈折率を測定した。結果を図2に示す。
この図2には、実施例4に係るポリエーテルと類似のフッ素含有割合を有する、下記式(III)で表される繰り返し単位よりなる直鎖状ポリマーについて上記の測定条件によって測定した屈折率の結果を併せて示し、同図において、線(1)は、実施例4に係るポリエーテル(1)の測定結果のプロット「■」に基づく線であり、線(2)は、下記式(III)で表される繰り返し単位よりなる直鎖状ポリマーの測定結果のプロット「●」に基づく線である。
【0133】
【化19】

【0134】
〔式中、R4 は、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。〕
【0135】
ここに、式(III)で表される繰り返し単位よりなる直鎖状ポリマーは、式(III)においてR4 がメチル基である繰り返し単位と、R4 がトリフルオロメチル基である繰り返し単位とを有するものである。
【0136】
図2の結果から、実施例に係る分岐骨格を有するポリエーテルの屈折率は温度が上昇するに従って直線的に減少し、ガラス転移温度付近において変曲点(図2において、各々、丸で囲んで示す。)を示すこと、およびこの変曲点以降の屈折率の減少が直鎖状ポリマーに比して小さいことが確認された。
実施例に係るポリエーテルにおいて屈折率が温度上昇に伴って減少する理由は、温度上昇によって当該ポリエーテルの分子運動性が上がり、自由体積が大きくなるためであると考えられ、更に、ガラス転移温度以上の温度範囲においてはその影響が顕著となるために変曲点を示したと考えられる。
【0137】
〔実施例16〕
(オキセタニル基の導入例1)
実施例10において得られたポリエーテル(3B)0.200gと、3−カルボキシ−3−エチルオキセタン(CEO)0.260g(2.0mmol)と、TBAB0.015g(0.045mmol)とをすり付試験管に仕込み、NMP2.0ミリリットル中に溶解させ、窒素雰囲気中において60℃の温度条件によって36時間にわたって撹拌することによって反応させた。
反応終了後、反応溶液をTHFによって希釈し、水とメタノールとの混合液(水:メタノール=1:1)中に滴下することによって白色固体を析出させた。得られた固体をTHF中に溶解し、貧溶媒としてn−ヘキサンを用いて再沈精製を行い、その後、沈殿物をろ別して減圧乾燥することにより、白色固体を得た。
【0138】
得られた白色固体について、IR測定および 1H NMR測定を行ったところ、下記式(i)で表される繰り返し単位を有し、末端に下記式(i−1)で表されるオキセタニル基を有しており、ポリエーテル(3B)の末端に導入率91%でオキセタニル基が導入されてなる構造、すなわち、末端のエポキシ基の殆どがオキセタニル基に置換されてなる構造を有するポリエーテルであることが確認された。
【0139】
【化20】

【0140】
・IR(KRS,cm-1):
3417(νOH),1734(C=O ester),1608,1584,1509,(νC=C aromatic),1222,1198(νC−F),977(νC−O−C cyclic ether)
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS):δ(ppm):
0.82−0.92(m,3.0H,Hi ),1.98−2.08(m,2.3H,Hj ),3.51−4.41(m,10.8H,Hc ,Hd ,He ),4.41−5.39(m,1.9H,Hk ),4.82−4.93(m,1.9H,Hk ),5.25−5.43(m,0.8H,Hh ,OH),6.75−7.03(m,8.9H,Hf ,Hg ),7.60−7.68(m,1.9H,Ha
【0141】
また、得られたポリエーテル0.09g(90質量%)と、光酸発生剤として2−ビス{[4−(2−ヒドロキシ)エトキシ]ジフェニルスルフォニオフェニル}スルフィド(「sp−150」)0.01g(10質量%)とを、アセトンとクロロホルムとの混合液(アセトン:クロロホルム=1:1)よりなる混合溶媒0.2ミリリットルに溶解することによって膜形成材料液を得、この膜形成材料液をKBr板上に塗布し、室温で12時間かけて減圧乾燥することによって薄膜を形成した。
そして、この薄膜に対して消費電力250Wの水銀灯を用い、波長254nmの光の照射強度が6.0mW/cm2 となる条件で15分間光照射を行ったところ、オキセタニル基の転化率が24%に達し、硬化膜が形成された。結果を図3に示す。この結果から、その末端にオキセタニル基が導入されてなる構造のポリエーテルは、光反応性を有するものであることが確認された。
なお、図3には、実施例10に係るエポキシ基の転化率の測定結果が併せて示されており、同図において、曲線(1)が実施例16に係る測定結果であり、曲線(2)が実施例10に係る測定結果である。
【0142】
また、この光照射前後において、屈折率測定装置「エリプソメーター DHA−OLX/S4」((株)溝尻工学工業所製)を用いて波長632.8nmの光の屈折率(nD )を測定した。結果を表3に示す。
【0143】
〔実施例17〕
((メタ)アクリロイル基の導入例1)
実施例10において得られたポリエーテル(3B)0.100gと、メタクリル酸(MAA)0.039g(0.45mmol)と、TBAB0.0075g(0.023mmol)とをすり付試験管に仕込み、NMP2.0ミリリットル中に溶解させ、窒素雰囲気中において60℃の温度条件によって24時間にわたって撹拌することによって反応させた。
反応終了後、反応溶液をTHFによって希釈し、水中に滴下することによって白色固体を析出させた。得られた固体をTHF中に溶解し、貧溶媒としてn−ヘキサンを用いて再沈精製を行い、その後、沈殿物をろ別して減圧乾燥することにより、白色固体を得た。
【0144】
得られた白色固体について、IR測定および 1H NMR測定を行ったところ、下記式(j)で表される繰り返し単位を有し、末端に下記式(j−1)で表されるメタクリロイル基を有しており、ポリエーテル(3B)の末端に導入率91%でメタクリロイル基が導入されてなる構造、すなわち、末端のエポキシ基の殆どが(メタ)アクリロイル基に置換されてなる構造を有するポリエーテルであることが確認された。
【0145】
【化21】

【0146】
・IR(KRS,cm-1):
3432(νOH),1719(C=O ester),1638(νC=C vinyl),1609,1586,1509(νC=C aromatic),1222,1198(νC−F)
1H NMR(600MHz,DMSO−d6 ,TMS):δ(ppm):
1.79−2.02(m,3.0H,Hi ),3.55−4.38(m,10.5H,Hc ,Hd ,He ),5.33−5.52(m,1.6H,Hh ,OH),5.52−5.61(m,0.9H,Hk ),5.61−5.72(m,1.0H,OH),6.00−6.13(m,0.9H,Hj ),6.71−7.21(m,8.6H,Hf ,Hg ),7.74−7.96(m,1.5H,Ha
【0147】
また、得られたポリエーテル0.194g(97質量%)と、光ラジカル重合開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(「Irgacure907」)0.006g(3質量%)とを、THF0.4ミリリットルに溶解することによって膜形成材料液を得、この膜形成材料液をKBr板上に塗布し、室温で12時間かけて減圧乾燥することによって薄膜を形成した。そして、この薄膜に対して消費電力250Wの水銀灯を用い、波長254nmの光の照射強度が6.0mW/cm2 となる条件で15分間光照射を行ったところ、メタクリロイル基の転化率が92%に達し、硬化膜が形成された。結果を図4に示す。
この結果から、その末端に(メタ)アクリロイル基が導入されてなる構造のポリエーテルは、光反応性を有するものであることが確認された。
【0148】
また、この光照射前後において、屈折率測定装置「エリプソメーター DHA−OLX/S4」((株)溝尻工学工業所製)を用いて波長632.8nmの光の屈折率(nD )を測定した。結果を表3に示す。
【0149】
〔実施例18〕
(アントリル基の導入例1)
実施例10において得られたポリエーテル(3B)0.150gと、1−アントラセンカルボン酸を0.448g(2.0mmol)と、TBAB0.0033g(0.10mmol)とをすり付試験管に仕込み、NMP2.0ミリリットル中に溶解させ、窒素雰囲気中において60℃の温度条件によって48時間にわたって撹拌することによって反応させた。
反応終了後、反応溶液を酢酸エチルによって希釈し、それを飽和重曹水で洗浄した。次いで酢酸エチル層を分液し、この酢酸エチル層に硫酸マグネシウムを加えることによって乾燥させ、更に硫酸マグネシウムをろ別した後、その酢酸エチル層を濃縮した。その後、得られた酢酸エチル層の濃縮液を、エタノール/n−ヘキサン(体積比:1/20)溶液中に滴下することにより、白色固体を得た。
【0150】
得られた白色固体について、IR測定を行ったところ、末端にアントリル基を有しており、ポリエーテル(3B)の末端に導入率99%でアントリル基が導入されてなる構造、すなわち、末端のエポキシ基の殆どがアントリル基に置換されてなる構造を有するポリエーテルであることが確認された。
【0151】
・IR(KRS,cm-1):
3401(νOH),3057(νC- H aromatic),2973,2875(νC- H aliphatic),1714(νC=O),1609,1584,1508(νC=C aromatic),1259(νC−F),1153(νC- O- C)
【0152】
【表3】

【0153】
この表3には、実施例16および実施例17の結果と共に、光反応性基としてエポキシ基を有する実施例10に係るポリエーテル(3B)の屈折率の測定結果および屈折率の変化量を示す。
【0154】
表3の結果から、光反応性基、具体的にはエポキシ基、オキセタニル基および(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテルは、光照射によってその屈折率が大きくなることが確認された。
また、光反応性基としてエポキシ基を有するポリエーテルは、他の光反応性基を有するポリエーテルに比して屈折率の変化が大きいことが確認された。
その理由は、オキセタニル基を有するポリエーテルについては、このオキセタニル基が4員環構造のものであることから、3員環構造のエポキシ基に比して架橋に伴う密度変化が小さいことが原因であると考えられる。一方、(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテルについては、架橋反応によって結合屈折の大きいC=C結合が開裂し、結合屈折の小さいC−C結合に転化したことに起因して分子屈折が小さくなったことが原因であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明のポリエーテルは、同一分子量の直鎖状ポリマーに比して屈折率が低いという優れた特性を有するものであり、かつ多くの機能性基を導入することができることから、種々の分野において用いることができ、例えば光ファイバーの材料などの光学材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表される繰り返し単位により構成されていることを特徴とするポリエーテル。
【化1】

〔式中、R1 は、アルキル基またはパーフルオロアルキル基を示す。〕
【請求項2】
下記化学式(2)で表される繰り返し単位により構成されていることを特徴とするポリエーテル。
【化2】

〔式中、R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を示す。〕
【請求項3】
下記化学式(3)で表される繰り返し単位により構成されていることを特徴とするポリエーテル。
【化3】

【請求項4】
化学構造中にフッ素原子が含有されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリエーテル。
【請求項5】
末端にオキセタニル基、(メタ)アクリロイル基またはアントリル基を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のポリエーテル。
【請求項6】
下記化学式(4)で表されるトリエポキシ化合物と、下記化学式(5)〜化学式(7)のいずれかで表されるジオール化合物とを反応させる工程を経ることにより分岐骨格を有するポリエーテルを得ることを特徴とするポリエーテルの製造方法。
【化4】

【化5】

〔式中、R1 は、アルキル基またはパーフルオロアルキル基を示す。〕
【化6】

〔式中、R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を示す。〕
【化7】

【請求項7】
トリエポキシ化合物と、上記化学式(7)で表されるジオール化合物とを反応させる工程において、トリエポキシ化合物に対する当該ジオール化合物のモル比が1/2であることを特徴とする請求項6に記載のポリエーテルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate