説明

ポリエーテル系調製物及びそれらの使用

本発明は、重合性ポリエーテル材料及び流動性向上剤をベースにした調製物並びに歯科用材料、特に印象材の製造におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、硬化性ポリエーテル類をベースにした調製物及び歯科用材料、特に印象材の製造におけるそれらの使用に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、欧州特許出願第06015830.0号(2006年6月28日出願)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
好適な印象材を使用して、患者の口の内部で特定の特徴を持つ印象材を作製することは、ぴったりフィットする義歯、クラウン(crown)及びブリッジ(bridge)、インレイ(inlay)及びオンレイ(onlay)の製造のための必要条件である。既知の印象材のうちで、アジリジノポリエーテル類をベースにした材料は、それらが本来的に親水性でありかつ硬化状態で流動性であるがゆえに優れており、その結果、高精度の印象材が得られる。
【0004】
患者の口の中での歯の状況の印象材を取ることは通常、用いた印象材を、このような高精度の印象材とする必要があり、このような印象材の特徴を向上させるために多くの努力がなされてきた。しかし、これらの試みのほとんどは、例えば、印象材の硬化時間、流動性又は親水性を変更することによって、取得した印象材の精度向上を目的とするものであった。
【0005】
欧州特許第0 480 238 A1号は、重付加反応によって硬化される親水性歯科用印象材に関する。
【0006】
PCT国際公開特許WO 2004/058196A1は、ポリビニルシロキサン及び界面活性剤を含む歯科用印象材に関し、該界面活性剤は湿潤性を組成物へ付与し、約15秒後に材料が水との表面接触角約10度未満を有するようにする。
【0007】
欧州特許第0 268 347 A1号(カナダ特許第1294946号に対応)は、好ましくは親水性界面活性剤を含有する触媒ペーストを含む、ポリビニルシロキサンエラストマーをベースにした2成分歯科用印象材に関する。
【0008】
米国特許第4,877,845号は、末端アルカニル基を有する不飽和ポリエーテル、末端ポリオルガノシロキサン残基類を有する直鎖又は分枝鎖シロキサン置換ポリエーテル及び少なくとも2つのSiH基を分子内に含む硬化性組成物に関する。
【0009】
米国特許第5,859,812号は、非分枝又は分枝シロキサン置換ポリエーテルを含有することができる添加架橋ポリエーテル印象材に関する。
【0010】
米国特許第2003/109596号において、環式ポリエーテル内容物を5.0重量%未満で有するポリエーテル系調製物を使用して、歯科用印象材の除去性及び石こう模型の離型性を向上することができること並びにそれらの使用について記載されている。
【0011】
PCT国際公開特許WO 02/43670は、温度感度を低減させた歯科用化合物類に関する。記載された成分は、1,000個の炭素原子及び酸素原子当たり、10〜250個のメチル側基を有するポリエーテル部分を含有する。
【0012】
先行技術で既知の印象材の欠点は、未硬化の塊の取扱いが満足できるものではなかったことであり、これは歯科医に対して個々のペーストの形態で、通常はベースペースト及び触媒ペーストで提供される。特に、タイプ1、2又は3の材料を処理する場合(用語は、ISO4823:2000に従う)、ベースペーストと触媒ペーストとを混合する場合、手動ギアにてペーストを混合しようとする場合、複雑な電動混合ギア又は強い力の使用のいずれかを多くの場合必要とする。時には、歯科作業を行う人間は、ペーストを手動で混合するために必要な力を提供するのが困難である。
【0013】
手動混合ギアの使用が便利であると分かっているので、歯科用材料、特に2つ以上の成分の形態で、特に2成分ダブルシリンジのためのディスペンサーなどの一般的手動ディスペンサーによって混合することができるベースペースト及び触媒ペーストの形態で提供される印象材を製造するためには、硬化性ポリエーテル類をベースにした調製物を有するのが好ましい。従って、手動式ディスペンサーによって分配することができる印象材の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、手動式ディスペンサーでの使用に適合する材料は、患者の口の中の歯の状況からの高精度の印象材を可能にするという点に関して、欠点を示してはならない。従って、更に、手動式ディスペンサーによって分配することができるにもかかわらず、許容可能な機械的特性及び良好な長期安定性に加えて、未硬化状態での許容可能な性質を有する印象材への必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題は、本発明によって提供された、調製物及びそれから製造された歯科用材料によって解決される。
【0016】
本発明は、
a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び金属カルベンを有するポリエーテルとからなる群から選択される重合性ポリエーテル材料、
及び約0.1重量%〜約15重量%のエチレンオキシドのランダムコポリエーテル(random copolyether)及びエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシド、流動性向上剤(fluidity improver)としてのエチレンオキシドからの構造成分を少なくとも約50%含むコポリマーを含む歯科用印象材に関する。
【0017】
流動性向上剤はテンサイド(tenside)でないことが好ましい場合があり、かつ流動性向上剤が主として線状ポリマー主鎖を有する場合、場合によってはそれが好都合であることが判明しており、これが好ましい。流動性向上剤は、約100〜約3,800未満の分子量Mを有することができる。本発明の別の実施形態では、流動性向上剤は、少なくとも約200の分子量及び少なくとも1つのOH末端基を有する線状ランダムコポリマーである。
【0018】
流動性向上剤は、1以上の次の特徴を有する場合、更に好都合であり得る。
− 流動性向上剤は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド若しくはブチレンオキシド又はそれらの混合物をベースにした反復基を含む。
− 流動性向上剤は、1つ若しくは2つのC〜Cアルキルエーテル末端基、又は1つ若しくは2つのC〜Cアルキルエステル末端基、又は1つのC〜Cアルキルエーテル末端基及び1つのC〜Cアルキルエステル末端基を有する、線状ランダムコポリマーである。
− 流動性向上剤は、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド又はエチレンオキシド及びブチレンオキシドからの線状ランダムコポリマーである。
− 流動性向上剤は、23℃かつ101325Paにて、液体である。
【0019】
本発明による歯科用印象材は、好ましくは流動性向上剤を、全組成物を基準として、約0.5重量%〜約12重量%の量で含むことができる。
【0020】
流動性向上剤を含む歯科用材料の初期接触角は、流動性向上剤を用いない同一歯科用材料の初期接触角より、好ましくは少なくとも約8%少ない。
【0021】
一実施形態では、本発明による歯科用印象材は、好ましくは2つ以上のアジリジノ基を有する少なくとも1つのポリエーテルを含み、ポリエーテル主鎖は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー又はエチレンオキシドとブチレンオキシドとのコポリマーである。本発明による歯科用印象材内の場合、2つ以上のアジリジノ基を有するポリエーテルは、約3,000超の分子量Mを有するか、あるいは印象材が2つ以上のオレフィン系不飽和基を有する少なくとも1つのポリエーテルを含み、かつポリエーテル主鎖がエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー又はエチレンオキシドとブチレンオキシドとのコポリマーであることが、好ましいことがあり得る。
【0022】
別の実施形態では、本発明による歯科用印象材は、少なくとも1つのオレフィン系不飽和基を有する少なくとも1つのポリエーテル及び少なくとも1つのSiH基を有する少なくとも1つの化合物又は少なくとも1つのオレフィン系不飽和基を有するポリエーテル及び少なくとも1つのSiH基を含み、そして、少なくとも1つのポリエーテルのポリエーテル主鎖が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー又はエチレンオキシドとブチレンオキシドとのコポリマーであるポリマー主鎖を有する。
【0023】
本発明による歯科用印象材は、触媒、可塑剤、充填剤、柔軟剤、染料、顔料、溶媒、消毒剤、希釈剤(thinner)、香味剤、着臭剤、レオロジー添加剤(rheological additive)、乳化剤、又は安定剤からなる群から選択される、1種以上の補助剤を含有することができる。
【0024】
本発明による歯科用印象材は、少なくとも2種の個々の成分として供給されることが好ましい場合もあり得る。歯科用印象材が、2つの個々の成分で供給される場合、成分の1つはベースペーストであり、1つの成分が触媒ペーストであることが好ましく、該ベースペーストは、
a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基を有するポリエーテルと、からなる群から選択される少なくとも1つの重合性ポリエーテル材料を含有し、
該触媒ペーストが、少なくとも1つの重合性ポリエーテル材料の反応を開始させ又は触媒するための、少なくとも1種の反応開始剤又は触媒又はその両方を含有する。
【0025】
本発明による歯科用材料が、2成分にて存在する場合、1つはベースペーストであり、もう1つは触媒ペーストであり、流動性向上剤がベースペースト又は触媒ペースト内にあるいはベースペースト及び触媒ペースト内に含有されている。ベースペーストは、好ましくは約40重量%〜約70重量%の少なくとも1種の重合性ポリエーテル材料、約0.11重量%〜約60重量%の流動性向上剤又は2種以上の流動性向上剤の混合物、及び0〜約59.89重量%の補助剤を含み、該ベースペーストは、触媒ペーストと共に、約1:9〜約9:1の比で混合される。触媒ペーストは、好ましくは約0.01重量%〜約30重量%の反応開始剤又は触媒あるいは両方、0〜約60重量%の充填剤又は2種以上の充填剤の混合物、0〜約99.99重量%の流動性向上剤又は2種以上の流動性向上剤の混合物、及び0〜約99.99重量%の補助剤を含み、該ベースペーストは、触媒ペーストと共に、約1:9〜約9:1の比で、好ましくは約1:1〜約5:1の比で混合される。
【0026】
本発明はまた、本発明による歯科用印象材を硬化させることにより得ることが可能な硬化歯科用印象材にも関する。
【0027】
本発明の更なる態様は、歯科用印象材を得るための方法に関し、ここで、
A)重合性ポリエーテル材料であって、
a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び金属カルベンを有するポリエーテルとからなる群から選択される、重合性ポリエーテル材料と、
B)約0.01重量%〜約15重量%のエチレンオキシドのランダムコポリエーテル及びエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシド、少なくとも約50%のエチレンオキシドからの構造成分を流動性向上剤として含むコポリマーと、
所望により、触媒、可塑剤、充填剤、柔軟剤、染料、顔料、溶媒、消毒剤、希釈剤、香味剤、着臭剤、レオロジー添加剤、乳化剤、又は安定剤からなる群から選択される、1種以上の補助剤と、を混合する。
【0028】
本発明の別の実施形態では、成分は、ベースペースト及び触媒ペーストにて、混合前に又は手動式ディスペンサーによって混合されてあるいはその両方で供給される。
【0029】
更なる態様では、本発明は、哺乳類又は人間(患者)の歯科用印象を得るための方法に関し、本発明による歯科用印象材又は本発明により得られる歯科用印象材は、患者の口の中の箇所へ投与され、歯科用印象材として機能させ、少なくとも部分的に硬化させ、該歯科的印象材は患者の口から回収される。印象材は、好ましくは患者の口の中の箇所に接触し残され、約1分間〜約10分間印象材として機能させ、患者の口から回収した後、洗浄又は消毒又はその両方を行う。
【0030】
本発明はまた、哺乳類又は人間(患者)の口の中の歯の状況の石こう模型を調製する方法にも関し、本発明に従って歯科用印象材を取り、該歯科用印象材を石こうで充填して、硬化させ、該歯科用印象材から回収される。
【0031】
本発明の別の態様は、哺乳類又は人間の口から歯科用印象材を取るための歯科用印象材の使用であって、
a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び金属カルベンを有するポリエーテルと、からなる群から選択される重合性ポリエーテル材料、
及び約0.1重量%〜約15重量%のエチレンオキシドのランダムコポリエーテル及びエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシド、少なくとも約50%のエチレンオキシドからの構造成分を流動性向上剤として含むコポリマー、を含む歯科用印象材の使用である。
【0032】
本発明について、より詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書において、「組成物」とは、2種以上の化合物の混合物であると理解される。本明細書において、用語「重合性」及び「硬化性」とは、取り換え可能に使用され、両方とも重合反応による高分子量の材料の形成に関連する。
【0034】
本明細書による「重合反応」とは、一般に、重付加反応(polyaddition reaction)又は重縮合反応又はメタセシス反応(metathesis reaction)であることが可能である。
【0035】
本明細書では、用語「分子量」とは、確定分子量の標準に対してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって、個々の部類のポリマーについて通常決定されるような、分子量の重量平均を指す。好適な測定法は、当業者にとって既知である。
【0036】
更に、重合ポリオールの、分子量及び分子量分布の決定は、例えば、末端基の同定を例えば核磁気共鳴(NMR)法によって実施可能である。また、分子量の測定及び重合ポリオールの分子量の分配に適しているのは、例えばホーベン−ヴェイル(Houben-Weyl)の「有機化学の方法(Methoden der organischen Chemie)」(14/2、17ページ、ゲオルグ・チーメ出版社(Georg Thieme Verlag)、シュツットガルト、1963年)に記載されていているように、ヒドロキシル値の測定である。ASTM D2849−方法Cに記載されている処置もまた適している。
【0037】
有機ジオールの、分子量(M及びM)及び分子量分布を同定するための特に好適な方法は、例えば、8×300mmのカラム寸法及び粒径5μmを有するカラムの組み合わせPSS SDV10,000オングストローム+PSS SDV500オングストローム+PSS SDV100オングストロームを使用したGPCによって実施することができる。プレカラム(pre-column)として、8×50mmのカラム寸法及び粒径10μmを有するPSS SDV100オングストロームが使用される。1.0mL/分の流速で、200ppmのイオノールによって安定化されるTHFは、特に移動相として好適である。検出器として、屈折率(RI)検出器が使用され;試料(移動相中で1%w/wの重さ)のための注入容量は100μLである。標準溶液として、ポリスチレン標準シリーズ(移動相中で0.1%w/wの重さ)が使用される。評価は、溶出されたポリスチレン標準シリーズの容量によって溶出される試料の容量の比較によって、自動の評価用モジュール(ターボSECソフトウェア(TurboSEC Software))を使用する相対的なGPCの原理により実行される。M、M及び多分散性が評価される。
【0038】
本発明による「重合性ポリエーテル」材料は、少なくとも2つのエステル結合を分子内に含む任意の材料であることができる。一般に、任意の、必要量のエーテル基を有するオリゴマー又はポリマー材料を、本発明による重合性ポリエーテル材料のオリゴマー主鎖又はポリマー主鎖のために使用することができる。
【0039】
一実施形態では、重合性ポリエーテルは、主鎖からぶら下がる側鎖、特にメチル基、エチル基又はプロピル基を含む非反応性側鎖を有しない線状主鎖を有する。即ち、重合性ポリエーテルの主鎖は、主として−CH−などの基及びN、O及びSを包含するヘテロ原子を含む。主鎖は、重合性基を有する重合性ポリエーテルの一部として定義される。
【0040】
本発明による重合性ポリエーテル材料のポリマー主鎖は、重縮合により得られる主鎖であることができ、以下で重縮合生成物と呼ばれる。原則として、重付加法又は重縮合法によって調製可能な全てのポリマーは、それらが歯科用材料としての好ましい使用に関する組成物の必要条件を満たすのであれば、本発明との関係において重縮合生成物として好適である。例えば、好適な重縮合生成物は、ポリエステル、ポリアセタール又はポリシロキサンである。
【0041】
既知のさまざまに構成されたポリエステルのうち、ジカルボン酸のジオールとの重縮合により又はオキシカルボン酸の重縮合により得ることが可能なもの及びほぼ線状の構造体を有するようなものが、出発材料の調製のために特に好ましい。少量の三官能性若しくは四官能性アルコール類又はカルボン酸を重縮合中に併用することが可能であり、多くの場合、歯科用材料としてのそれらの使用に関して、ポリエステルから得ることが可能な組成物の機械的特性の点で更に有利である。
【0042】
多数のポリオールは、上記のポリエステルの調製のためのポリオールとして使用することができる。例えば、それらは1分子当たり2〜4個のOH基を有する脂肪族アルコールである。OH基は、一級又は二級のどちらであってもよい。好適な脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、及び同業者が炭化水素鎖を1つのCH基のステップにおいて段階的に延長することによって、又は炭素鎖に分枝を導入することによって得るような、その高同族体又は異性体が挙げられる。例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの高機能性アルコール類も適しており、上述の物質のオリゴマーエーテル類単独又は2種以上のエーテル類との混合物もまた適している。
【0043】
アルキレンオキシドと低分子量多官能アルコールとの反応生成物、いわゆるポリエーテルもまた、ポリオールとして使用することができる。アルキレンオキシドは、好ましくは2〜4個の炭素原子を有する。例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンオキシドを有するブタンジオール又はヘキサンジオール、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド、又はこれらのうちで2つ以上のものの混合物が、好適である。更に、多官能性アルコールの反応生成物、例えばグリセロール、トリメチロールエタン若しくはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール若しくは糖アルコール、又はこれらのうちで2つ以上のものと、前述のアルキレンオキシド、発泡ポリエーテルポリオールとの混合物もまた好適である。
【0044】
適切なポリエーテルは、反応性水素原子を有する出発化合物と、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン若しくはエピクロロヒドリン、又はそれらの2つ以上の混合物との反応によって、当業者にとって既知の方法でもたらされる。
【0045】
好適な出発化合物は、例えば、水、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール若しくは1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール若しくは1,3−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、又はこれらのうちで2つ以上のものの混合物である。
【0046】
適切なポリエステルの調製のためには、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水テトラクロロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、脂肪酸二量体又は脂肪酸三量体又はこれらのうちで2つ以上のものの混合物が好適である。必要に応じて、少量の単官能脂肪酸が、反応混合物内に存在してよい。不飽和ジカルボン酸、例えば、マレイン酸又はフマル酸及び芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸異性体、例えばフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸も、同様に好適である。トリカルボン酸としては、例えば、クエン酸又はトリメリット酸が好適である。前述の酸類は、単独で使用しても、あるいはこれらのうちで2つ以上のものの混合物の形態で使用されてもよい。
【0047】
ポリエステルは、必要に応じて、少ない割合のカルボキシル末端基を有してよい。また、ラクトン、例えば、ε−カプロラクトン又はヒドロキシカルボン酸、例えば、ω−ヒドロキシカプロン酸から得ることが可能なポリエステルが使用されてもよい。
【0048】
ポリアセタールもまた、ポリオール縮合生成物として好適である。ポリアセタールは、ホルムアルデヒドと共にグリコール、例えば、ジエチレングリコール若しくはヘキサンジオール又はこれらの混合物から得ることが可能な化合物であると考えられている。本発明との関係において使用可能なポリアセタールはまた、環式アセタールの重合により得てもよい。
【0049】
原則として、歯科用材料としての使用に好ましい材料特性の点からの必要条件を満たす全てのポリシロキサンが、ポリシロキサンとして好適である。しかし、本発明との関係においては、例えば、独国特許出願公開第100 26 852 A1号(米国特許第6,867,246号に対応)の2ページ55行目〜8ページ20行目に記載の、アジリジノ基を担持しているポリシロキサンのポリシロキサン基本構造が特に好ましい。前述の記載の開示は、本明細書の開示の一部として考えられる。
【0050】
歯科用材料としての使用に好ましい組成物の必要条件を満たすのであれば、重付加法により調製することができる全てのポリマーが、基本的には本発明との関係において重付加生成物として好適である。好適な重付加生成物は、例えば、ポリウレタン又はポリエーテルである。
【0051】
原則として、ポリオール又はポリカルボン酸とイソシアネートとの反応により調製することができる全てのポリマーは、ポリウレタンとして好適である。適切な調製法は、当業者にとって既知であり、好適なポリオールは、本明細書との関係において上記ポリエステル調製のための出発物質として記載済みである。
【0052】
本発明の好ましい実施形態との関係では、本発明による組成物の成分としては、重付加生成物が使用され、これらは、好ましくはポリエーテルである。
【0053】
原則として、歯科用材料としての使用に好ましい材料特性の点からの必要条件を満たす全てのポリエーテル化合物が、ポリエーテルとして好適である。例えば、本明細書中にて上述した、それらの調製のための好適なポリエーテル及びプロセスが記載されている。特に好適なものは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド若しくはテトラヒドロフランの重付加により得ることが可能なポリエーテル化合物、又は好適な出発化合物及び好適な触媒を用いた前述の化合物のうちの2つ以上の混合物である。
【0054】
しかしながら、本発明との関係においては、1,2−プロピレングリコールから誘導される少なくとも1つの繰り返し単位の成分をポリエーテル鎖内に有するポリエーテル化合物が特に好ましい。それゆえに、本発明による組成物中に含有される、アジリジノ基担持ポリマーのための基本ポリエーテル・フレームワーク(basic polyether framework)としては、例えば、ポリプロピレングリコール若しくはエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー若しくはテトラヒドロフラン/プロピレングリコールコポリマー若しくはテトラヒドロフラン/エチレングリコールコポリマー又はこれらのうちで2つ以上のものの混合物、特にポリプロピレングリコール若しくはエチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー若しくはテトラヒドロフラン/エチレングリコールコポリマーが好適である。
【0055】
例えば、テトラヒドロフランとエチレンオキシドとを、約10:1〜約1:1、好ましくは約3:1のモル比で、強酸、例えば、三フッ化ホウ素エーテラートの存在下で共重合することにより調製されるポリエーテルポリオールが、好適である。
【0056】
重合性ポリエーテル材料の調製のために使用可能なポリエーテルポリオールは、平均して少なくとも2個のヒドロキシル基を有することができるが、1分子当たり約20個以下のヒドロキシル基、例えば、平均して約3個、約4個、約5個、約8個、約10個又は約15個のヒドロキシル基を有してもよい。
【0057】
ポリエーテルポリオールの分子量(M)は通常、約600グラム/モル〜約20,000グラム/モルの範囲内、好ましくは約1,000グラム/モル〜約10,000グラム/モルの範囲内である。
【0058】
異なるモノマーをベースにしたポリマー内の構造単位の分布は、ランダムに又はブロックにて組織化されることができる。
【0059】
更に、好適なポリエーテルが、独国特許出願公開(DE PS)第1 745 810号(米国特許第3,453,242号に対応)に記載されており、その点に関する開示は、本明細書の開示の一部として考えられる。
【0060】
本発明に従って使用される重合性ポリエーテル材料は一般に、上記のように重合反応によって重合することができる任意の官能基を含むことができる。本発明による印象材が、例えば、
− 反応開始剤としてのスルホニウム塩を有するカチオン開環重合によって、
− 酸類及び/又は反応開始剤としての酸類の塩類との縮合反応によって、
− 反応開始剤としての白金化合物とのヒドロシリル化反応によって、あるいは
− 反応開始剤としての金属カルベンとの開環メタセシス反応によって、硬化性であるポリエーテル化合物を含むことが好ましい可能性がある。
【0061】
アジリジノポリエーテル類
本発明の更に別の態様では、重合性ポリエーテルは、平均して少なくとも2個のアジリジノ基(以下、アジリジノポリエーテル類と称する)を担持する。
【0062】
用語「平均して」とは、本明細書との関係では、多数の、アジリジノポリエーテル化合物の混合物は、2個未満のアジリジノ基を有する化合物とまた2個超のアジリジノ基を有する化合物の両方を含んでよいが、成分Z1の化合物の完全性について見た場合、全分子の平均官能性は、アジリジノ基に関して2以上であると解釈される。
【0063】
重付加生成物又は重縮合生成物の上記全てのタイプは、当業者に既知の任意の所望の後続反応によってアジリジノ基と共に提供されることができる。例えば、適切なポリマー内へ、好適なアジリジン誘導体と順次反応可能な置換基をまず導入することが可能である。
【0064】
アジリジノ基を有するポリマーを提供するための好適で可能な方法は、例証として、独国特許出願公開(DE PS)第1 745 810号又は同第100 26 852 A1号に記載されており、これらは参照として本明細書に明確に組み込まれ、その開示は、アジリジノ基を有する機能化ポリマーとの関係で、本明細書の開示の一部であると理解される。
【0065】
好適なアジリジノポリエーテルは、アジリジノ基を末端にて又は側面にて、あるいは末端にてかつ側面にて担持することができるが、好ましくは末端にて担持することができる。
【0066】
アジリジノポリエーテルは、好ましくは、約10Pa・s〜約500Pa・sの動的粘度η、特に約15Pa・s〜約300Pa・s(23℃、フォルツハイムのボーリン・インストゥルメンツ社(Bohlin Instruments GmbH Pforzheim)からのCVO 120 HRタイプの回転粘度計によって、23℃、板の直径が20mmの板−板形状、又は板−円すい形状、せん断速度20s−1で測定された)を有するべきである。好ましい粘度範囲は、23℃にて、約20Pa・s〜約180Pa・sである。
【0067】
アジリジノ当量は、約250グラム/等量〜約25,000グラム/等量、特に約400グラム/等量〜約10,000グラム/等量であるべきである。
【0068】
本発明にて使用可能な重合性ポリエーテルは、1つのタイプのみのアジリジノポリマーを含んでよい。しかし、2つ以上の異なるタイプのアジリジノポリマー、例えば3つ、4つ、又は5つの異なるタイプを含むことが可能である。
【0069】
本発明との関係においては、「ポリマーのタイプ」とは、選択された反応条件下での選択されたモノマーの重付加反応又は重縮合反応又はメタセシス反応によって得られるポリマーであると理解される。従って、ポリマーのタイプは、選択された反応条件に応じて、異なる化学構造及び異なる分子量のポリマー分子を含むことができる。しかし、同一モノマー組成物を使用して、同一反応条件下にて、実施された2種の反応によって、本発明では、同一タイプのモノマーが常に得られる。同一のモノマーを使用するが異なる反応状態の下で実行される2種の反応により、同一のタイプのポリマーが得られるが、これは必須でなくてよい。その中の重要な要因は、化学構造、分子量及び測定可能な更なるパラメータ(材料特性に関連する)に関して、特定可能な差があるかどうかである。異なるモノマー組成物を使用して実施される2つの反応によって、本発明では、異なるタイプのポリマーが常に得られる。
【0070】
上述したアジリジノポリマーは通常、調製過程にてそれらが得られる形態にて使用することが可能であるが、それらはまた特に明るい色でかつ高品質の生成物を得るために精製されてもよい。その目的のために、慣習的方法、例えば、濾過(所望により溶液にして、珪藻土、酸化アルミニウム上にて)、イオン交換装置による処理、水、水性アルコール、食塩水などを使用した、有機溶剤中での溶液の洗浄、かつまた、所望により、例えば、芳香族溶媒又はアルコールから繰り返し再沈殿させることを考慮する。更に、通常の方法で分留することによって、精製効果を得ることができる。加えて、結果として、より均一な分子量を有する生成物を得ることが可能である。
【0071】
本発明による歯科用材料は、基本フレームワークとして、調製方法に関係なく、ポリエーテル、好ましくはポリテトラヒドロフラン(ポリ−THF)をベースにしたポリエーテル、又はプロピレングリコール/エチレングリコールコポリマー、又はエチレングリコール/テトラヒドロフランコポリマーを有する少なくとも1つのアジリジノポリマーを含む。
【0072】
更なる好適なポリアジリジノ化合物は、例えば、独国特許出願公開第1544837号の3〜14ページ(米国特許第3,453,242号に対応)に記載されている。
【0073】
トリアルキルスルホニウム塩は、例えば、米国特許第4,167,618号(例えば、カラム2、ライン36〜カラム4、ライン32及び実施例)に記載されているように、反応開始剤物質として特に適している。前述のトリアルキルスルホニウム塩は、本明細書の開示の一部として理解されている。
【0074】
独国特許出願公開第914,325号の特許明細書において、反応開始剤物質としての、オキソニウム、アンモニウム及びスルホニウム塩の使用が提案されており(例えば:2ページ77行目〜3ページ100行目及び実施例)、そこに記載されている反応開始剤物質は、同様に本明細書の開示の一部であると考えられる。
【0075】
米国特許出願第2003/0153726号において、ほんの低い酸価を触媒成分に付与し、かつ直ちに調整されることが可能な反応開始剤が記載されており、基本成分及び触媒成分の混合後に、比較的長い処理時間が実行された。その中で言及される化合物は明確に参照され、その中で言及される開始剤物質は、同様に本明細書の開示の一部と考えられる。
【0076】
米国特許第4,176,618号に記載の反応開始化合物もまた好適である。反応開始剤物質に関するその刊行物の開示は、本明細書の開示の一部と考えられる。
【0077】
このタイプの反応開始剤系が、本発明による基本成分を必要な速度で硬化させるのに適している。それらを使用することによって、弾力的固体の所望の性質を達成することができる。
【0078】
米国特許第6,894,144 A1号は、増大した伸張性によって区別される改良された触媒成分を有するエラストマー材料について記載する。その発明によれば、ホウ酸錯体は、反応開始剤として使用される。これらの反応開始剤は、同様に、N−アルキルアジリジノポリマーを硬化させるのに好適であることが判明しており、かつ本発明との関係において使用することが可能である。
【0079】
本発明との関係において、好ましくは、次の反応開始化合物が使用される:p−トルエンスルホン酸の亜鉛塩、β−(S−ラウリル−S−エチルスルホニウム)ブチロニトリルテトラフルオロボレート、ドデシルベンゼンスルホン酸亜鉛塩、β−(S−ラウリル−S−エチルスルホニウム)−β−フェニルアクリル酸ブチルエステルテトラフルオロボレート。
【0080】
ROMPによって重合可能なポリエーテル
本発明による歯科用材料はまた、重合性ポリエーテルとして、開環メタセシス重合(ROMP)によって重合可能な材料を含むこともできる。このような材料は、好ましくは、開環メタセシス重合(ROMP)によって重合可能な、少なくとも1つのポリエーテル化合物及びROMPの反応を開始させるための少なくとも1種の反応開始剤を含む。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は、ROMPによって重合可能なモノマーを含有し、かつ少なくとも1つのC−C二重結合を環式構造内に含む。
【0082】
一般に、全てのタイプのポリエーテル化合物は、ROMPによって重合可能な部分を少なくとも1つ又は好ましくは2つ以上有する、本発明による歯科用材料の一部であることができる。
【0083】
一般に、好適なモノマー類は、一般式B−Anに従うことができ、AはROMPによって重合可能な部分、好ましくはシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル又は多くの場合好ましいノルボルネニル及び7−オキサ−ノルボルネニル基のような二環式構造(bicyclic ring systems)であり、BはROMPによって重合可能な1個〜約100個、例えば1個〜約10個又は1個〜約5個又は1個〜約4個の部分、例えばROMPによって重合可能な2個又は3個の部分を有するポリエーテル系有機又はケイ素−有機主鎖が結合しており、nは約1〜約100である。本発明による組成物は、一般式B−Aに従う、1つのタイプのみのモノマー類を含有することができる。本発明による組成物が、一般式B−Aに従う、2つ以上の異なるタイプのモノマーを含有することも可能である。本発明による組成物は、好ましくは、一般式B−Aに従う、少なくとも1つのモノマーを含有し、これはROMPによって硬化可能な、1つ又は好ましくは2つのオレフィン系不飽和二重結合を有する。
【0084】
本発明に従って使用可能な二環式環系は、好ましくは(メタ)アクリレート基のような環外C−C二重結合を有しておらず、それにより組成物の硬化が、少なくとも主として開環メタセシス重合(ROMP)によって生じる。更に、場合によっては、ビニル基又はアリル基はROMP中に連鎖停止剤として機能することがあるため、二環式環系(bicyclic ring system)がこれらの基も含有しなければ、場合によっては有利となる可能性がある。しかし、それにもかかわらず、重合を調節するための連鎖停止剤の添加が好ましい場合がある。
【0085】
本発明による組成物は、1個又は2個の環内二重結合を有する二環式系を含有することができる。酸素置換環系と同様に、炭素環式環系が特に好ましい。
【0086】
顕著な環ひずみを有する炭素環式及び複素環式ビシクロ[x.y.z.]炭化水素は多くの場合、x、y及びzが1〜6の値を有する場合に特に好適である。xは、約2に等しく、yは、約2に等しく、そしてZは1に等しい。
【0087】
本組成物の部類の好ましい代表例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン又は7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプテンの誘導体、特に、環の5位が不飽和であるもの及び環の2−又は2,3−位が置換されているようなものである。環の2−又は2,3−位における置換基は、好ましくは炭素官能性、ケイ素官能性、又は酸素官能性であり、かつ2つ、3つ、4つあるいはそれ以上のROM−重合性基の間を架橋する、非反応性残基又は有機若しくは有機金属スペーサーに結合する。
【0088】
ヒドロシリル化による架橋ポリエーテル
本発明による歯科用材料はまた、
(a)少なくとも2つの任意に置換されたビニル及び/又はアリル末端基を有する少なくとも1つのポリエーテルと、
(b)SiH成分と、
(c)少なくとも1つの白金触媒と、所望により、
(d)通常の添加剤と、所望により、
(e)少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとをベースにした重合性ポリエーテル材料としての付加架橋材料を含有することもできる。
【0089】
本材料は、2成分形態にて提供されることができ、そこでは、所望により、ペーストベースとしての成分(e)をいわゆる触媒ペースト内に含む白金触媒(c)は、許容可能な長期保存安定性を有し、そしてそこでは、ポリエーテル(a)の分離及び白金触媒(c)の分離が生じ得る。
【0090】
本発明による歯科用印象材の好ましい2成分バージョン(version)の場合、成分(a)及び(b)は、いわゆるベースペースト内に存在し、これに対して、成分(c)及び所望により成分(e)は、触媒ペースト内に存在する。しかし、任意成分(e)の少なくとも一部が、ベースペースト内に存在し、又は成分(a)の少なくとも一部が触媒ペースト内に存在することもまた考えられる。しかし、本発明による印象材は、全ての成分(a)、(b)、(c)及び所望により(e)が、空間的に離れて存在するように構成されることもできる。更に、成分(b)及び成分(c)が空間的に分離して存在している、全ての3成分バージョンもまた考えられる。成分(d)に従って所望により存在する通常の添加剤は、任意のその他の成分に加えたり、又はその上に分散させたりすることができる。
【0091】
ポリエーテルジ−又はポリオールのジ−又はポリアリルエーテルを、例えば不飽和ポリエーテル(a)として使用することができる。エチレン及びプロピレンオキシドのポリマー、エチレン及びプロピレンオキシドのコポリマー並びにエチレンオキシド及びテトラヒドロフランのコポリマーは、例えばポリエーテル中間部分として使用することができる。次に、これから得られたポリエーテルジオールを、例えばアリル又はまた塩化ビニルと、それ自身既知である方法によって反応させて、不飽和ポリエーテル(a)を得ることができる。不飽和ポリエーテルは、好ましくは約1,000〜約20,000、特に好ましくは約1,500〜約10,000、極めて好ましくは約2,000〜約7,000の平均分子量を有する。好適な不飽和ポリエーテルは、上記の独国公開特許第3741575号(その開示は、この関係においては、本明細書に包含される)に記載されている。
【0092】
前述したように、歯科用印象材の成分(B)は、炭化水素又はポリエーテル化合物であり、少なくとも2つのSiH基を分子内に有するシロキサンラジカルによって置換されている。これら化合物の構造及び製造方法は、とりわけ独国公開特許第3838587号(米国特許第5,086,148号に対応)及び、独国公開特許第3741575号(米国特許第4,877,854号に対応)に記載されている。この関係でのこれらの出版物の開示は、本明細書に包含される。好ましい成分(b)は、独国公開特許第3838587号(米国特許第5,086,148号に対応)に記載されているSiH成分であり、それは、それらは少なくとも二官能性のアリル又はビニル炭化水素化合物を反応させることによって得ることが可能であり、その内の炭化水素ラジカルについて、アリル基又はビニル基及び所望により存在するアルキレンエーテル基が、炭素原子約6個〜約30個を有し、かつ少なくとも1つの芳香族不飽和、複素環式又は脂環式環を、少なくとも式I又は式IIの二官能性SiH化合物のビニル基又はアリル基当たり少なくとも1モルで含有することが考慮されないことを特徴とする。
【0093】
流動性向上剤
本発明による歯科用印象材は、約0.1重量%〜約15重量%のエチレンオキシドのランダムコポリエーテル及びエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシドを流動性向上剤として含む。コポリマーは、エチレンオキシドからの構造成分を少なくとも約50%含む。
【0094】
本発明との関係において、用語「ランダム」とは、ポリマー主鎖にわたってランダムに分布するか、又は少なくともポリマー主鎖の一部が2つ以上のこのような構造成分を含む異なるモノマーからの、少なくとも2つの異なるタイプの構造成分を含むコポリマーに関する。ランダムコポリマーは多くの場合、コポリマーとして説明され、そこでは、異なるモノマーからの構造成分の連続が、交互コポリマーの間の分配スキームを示し、このような構造成分が、お互いに交互に続いており、そしてブロックコポリマーでは、ある種のモノマーからの構造成分が、2つ以上のこのような構造成分から成るブロックを構築し、この構築されたブロックが順次、ポリマー主鎖内で交互に続いていることを示す。
【0095】
本発明による流動性向上剤は、2つ以上のモノマーからの構造成分を含み、一方で、ポリマー主鎖内の構造成分のベースとなるモノマーの少なくとも1つがエチレンオキシドであり、流動性向上剤に対する、このような構造成分の重量パーセントは、少なくとも約40重量%でなければならない。
【0096】
流動性向上剤のポリマー主鎖が、ランダムコポリマーであることの結果として、該ポリマー主鎖は、ブロック様の構造成分の連続を示すランダム構造成分を含むことができる。しかし、本発明による流動性向上剤が、テンサイドのような振る舞い(tensidic behaviour)を流動性向上剤に与える(即ち、流動性向上剤はテンサイドではない)、構造成分のブロック様配列を有しない場合、それは有利であることができる。
【0097】
流動性向上剤が、「レンプ化学辞典(Rompp Chemielexikon)」(1995年)に与えられている定義に従うテンサイドのような構造体を形成するために、互いに明確に分離された分子の疎水性部分及び親水性部分を有しないことが、更に好ましくあり得る。流動性向上剤が、境界面への配向吸着を示さず、又は凝集してミセルを形成したり、離液性の相を形成したりせず、又はこれらの特徴の2種以上の組み合わせを示さない場合は、更に好ましくあり得る。別の実施形態では、本発明による流動性向上剤は、主として線状ポリマー主鎖を有する。流動性向上剤の分子量Mが、約100〜約3,800未満の範囲、約150〜約3,400の範囲、約200〜約3,000の範囲、約500〜約2,000の範囲、又は約500〜約1,900の範囲である場合は、更に好ましくあり得る。
【0098】
本発明による流動性向上剤は、0個、1個、2個以上のOH末端基を有することができ、それは、オリゴマー主鎖又はポリマー主鎖のタイプ及び主鎖の直鎖性又は分枝性に依存する。0個、1個又は2個のOH末端基、好ましくは0個又は1個のOH末端基を有する流動性向上剤が使用される場合は、有利であり得る。
【0099】
本発明による流動性向上剤は、異なるタイプの重合から得られる構造成分を有するオリゴマー主鎖又はポリマー主鎖を有することができる。流動性向上剤は、ポリマー主鎖内に重縮合反応により得られる構造成分、即ちポリエステル構造及びポリ付加反応により得られる構造成分、例えば、ポリエーテル構造を有することができる。流動性向上剤が、ポリエーテル主鎖を有する歯科用印象材の一部として使用される場合は、好ましいことがあり得る。
【0100】
本発明の別の態様では、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド若しくはブチレンオキシド又はそれらの混合物をベースにしたポリマー主鎖中に構造成分を含む流動性向上剤を使用し得る。エチレンオキシドの量は、約30重量%超でなければならず、かつ約35重量%〜約80重量%、又は40重量%〜約60重量%の範囲であることができる。
【0101】
本発明の更なる実施形態では、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドをベースにした構造成分を含むポリマー主鎖を有する流動性向上剤を使用する。
【0102】
本発明による歯科用材料中の流動性向上剤は、好ましくは、1個又は2個のC〜C−アルキルエーテル末端基又は1個又は2個のC〜C−アルキルエステル末端基又は1個のC〜Cアルキルエーテル末端基及び1個のC〜Cアルキルエステル末端基を有することができる。
【0103】
従って、好ましい実施形態によれば、本発明の流動性向上剤は、重合性ポリエーテル材料と反応性の基を含まない。しかし、本発明の別の実施形態によれば、流動性向上剤は、重合性ポリエーテル材料、例えば、ビニル基又はアリル基類様の不飽和基と反応性の基を含むことができる。
【0104】
一般に、固体中の又は流体状態にある流動性向上剤を使用することができるが、場合によっては、23℃及び圧力101.325Paにて液体である流動性向上剤を使用する場合が有利であることが分かっている。
【0105】
流動性向上剤は、本発明による歯科用印象材中、約0.1重量%〜約15重量%の量で有用であるが、流動性向上剤を、約0.5重量%〜約12重量%又は約1重量%〜約8重量%の量で使用するのが有利であり得る。材料が、ベースペースト及び触媒ペーストから成る2成分形態にて提供される場合、流動性向上剤は、触媒ペーストの一部であることができ、又はベースペーストの一部であることができ、あるいはその両方であることができる。しかし、流動性向上剤がベースペーストのみの一部として使用する場合、好ましくあり得る。この場合、ベースペースト中の流動性向上剤の量は、約0.5重量%〜約30重量%の範囲、好ましくは約1重量%〜約20重量%の範囲又は約5重量%〜約15重量%の範囲であり得る。
【0106】
本発明の別の実施形態によれば、歯科用印象材のベースペーストは、後述のトリアシルグリセリドを包含する可塑剤と共に流動性向上剤を含む。ある種の理論に束縛されるものではないが、ベースペースト中のこの成分の組み合わせが、押出成形力を更に低減する手助けをする場合がある。本発明の更なる実施形態では、ベースペーストは、500未満の分子量を有する柔軟剤又は可塑剤を実質的に含まない。
【0107】
本発明による流動性向上剤の必要条件の1つは、好ましくはその材料特性、例えば成分混合後に歯科用材料の初期接触角が劣化しないことである。
【0108】
市販されている有用な流動性向上剤の例は、アッカイム(Acclaime)3201(リオンデル(Lyondell))又はブレオックス(Breox)50 A 20、ブレオックス50 A 50、ブレオックス50 A 75、ブレオックス50 A 140、ブレオックス50 A 225、ブレオックス50 A 380、ブレオックス50 A 480、ブレオックス50 A 680、ブレオックス50 A 1000、ブレオックス75 W 270、ブレオックス75 W 2050、ブレオックス75 W 18000、ブレオックス75 W 30000、ブレオックス75 W 55000(ラポルテ(Laporte))などのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドからのランダムコポリマーである。
【0109】
有用な流動性向上剤の更なる例は、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、特に、PEG−350モノメチルエーテル(フルカ(Fluka))、プルリオール(Pluriol)A 350 E(BASF社)、プルリオールA 500 E(BASF社)、プルリオールA 750 E(BASF社)、プルリオールA 1000 E(BASF社)、プルリオールA 2000 E(BASF社)、PEG−550モノメチルエーテル(フルカ)などのポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0110】
補助剤
本発明による歯科用印象材組成物は、触媒、可塑剤、充填剤、柔軟剤、染料、顔料、溶媒、消毒剤、希釈剤、香味剤、着臭剤、レオロジー添加剤、乳化剤、又は安定剤からなる群から選択される、1種以上の補助剤(以下添加剤とも呼ばれる)を含むことができる。
【0111】
好適な添加剤は、例えば、硬化された歯科用材料組成物の可塑化を生じさせる化合物である。このような化合物は典型的可塑剤であり得、また、他のポリマー系及びポリカルボン酸、多環芳香族化合物及びスルホン酸エステル又は化合物のエステルに対しても提供され、可塑化の他に、他の影響、例えば界面活性作用、構造強度向上及び流動性の改善をもたらす。
【0112】
典型的な可塑剤は、例えば、C12〜C15−アルキルラクタート、クエン酸又はアセチルクエン酸のエチル又はブチルエステル、比較的長いフタル酸エステル、分枝アルコール、例えばビス(2−エチルヘキシル)フタレート又はフタル酸ポリエステル、C〜C−ジカルボン酸、例えばビス(2−エチルヘキシル)アジパートのC〜C22−ジアルキルエステル、ジオクチルマレアート、ジイソプロピルアジパート、芳香族及び脂肪族スルホン酸エステル、例えばフェノール又はC〜C22−アルカノールのC〜C20アルキルスルホン酸エステル、又は、典型的な芳香族可塑剤、例えば、エステルタイプ及び芳香族タイプの可塑剤の混合物の使用を優先する、例えばモンサント・カンパニーから得ることが可能なC20〜C40芳香族化合物のジベンジルトルエン異性体混合物のような蝋状のポリフェニルを含む広い粘性範囲のポリフェニル、等のエステル型の化合物である。
【0113】
好適な可塑剤混合物の例は、アセチルクエン酸トリブチル及びジベンジルトルエンの混合物である。
【0114】
非動物起源のグリセロールのトリアシルエステルは、添加剤として同様に適切である。例えば、好適な添加剤は、水素添加パーム油又は大豆油又は合成脂肪などの植物性加工油脂を含むことができる。
【0115】
好適な脂肪は、独国特許出願公開第197 11 514 A1号(例えば、2ページ65行目〜3ページ22行目;米国特許第6,395,801号に対応)に記載され、その全ての内容が本明細書に参考として参照される。問題の脂肪が使用の前に水素化されたと仮定するならば、アボガド油、綿実油、落花生油、カカオバター、カボチャシード油、亜麻仁油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、パーム油、米油、菜種油、紅花油、胡麻油、大豆油、ヒマワリ油、グレープシード油、小麦麦芽油、ボルネオ脂、フルワ(fulwa)バター、大麻油、イリペバター、ルピナス油、キャンドルナッツ油、カポック油、カチュ(katiau)脂肪、ケナフシード油、ケクナ(kekuna)油、ポピーシード油、モーラーバター、オクラ油、荏油、サルバター、シアバター及び桐油が特に適切である。適切な水素化された脂肪は、よう素価が20未満であると考えられる(DGF(脂肪化学ドイツ協会;German Society for Fat Science)の標準規格C−V 11 Z2で測定した)。脂肪水素添加処置は例えば、「ウルマンズの工業化学百科事典(Ullmanns Enzyklopadie der industriellen Chemie)」第4版、11巻、469ページ以降に記載されている。
【0116】
それらの自然に生じている脂肪、及び合成的に調製された脂肪、例えばソフティサン(Softisan)154又はダイナサン(Dynasan)118(ハルス(Huls)製)の混合物は、同様に使用されることができる。このような合成的トリアシルグリセリドの調製は、当業者には比較的容易であり、グリセロール及び適当な脂肪酸メチルエステルからの開始により実行可能である。特にこのようなエステル化反応は「ホーベン−ヴァイル、有機化学の方法(Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie)」E5巻/パート1、に記載されているVol.E5/パート1、659ページ以降に記載されている。
【0117】
好適なトリアシルグリセリドは、以下の式に相当する:
−O−CH−CH(OR)−CH−O−R
式中、各々独立して他の中で、R、R及びRは、各々独立したC1123CO、C1327CO、C1531CO又はC1735COを意味する。このようなトリアシルグリセリドの混合物も考慮に入れる。
【0118】
同様に添加剤として好適なものは、約2,000グラム/モル超の分子量を有する液体重合化合物であり、例えば、末端基として好適なヒドロキシル基、エーテル基、アルキル基及びアシル基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート又はポリオレフィンなどのタイプの化合物である。
【0119】
液体ポリマーの特別な化合物の部類は、ポリエーテルタイプのもので表される。
【0120】
歯科用印象材中で使用される重合性ポリエーテルと同じか類似した分子量を有するポリエーテルは、添加剤としても使用することができる。例えば、4:1〜3:1の比でオキシテトラメチレン単位及びオキシジメチレン単位を含み、分子量が約3,000〜約8,000グラム/モルの範囲のジヒドロキシポリエーテル又はジアセチルポリエーテルが添加剤として適している。
【0121】
ヒドロキシル末端基又はアセチル末端基を有するエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのポリプロピレンオキシドポリオール及び/又は共重合生成物及び/又はブロック共重合生成物を、前述のポリエーテルとの混合物で、又はそれら自体を、添加剤として使用することもできる。
【0122】
約2,000グラム/モルより大きい分子量を有するブロック共重合生成物の場合、それら界面活性剤様化合物の溶解度促進作用を更に利用することができる。
【0123】
更に、上記のポリエーテル誘導体を選択及び混合した結果として、混合調製物の流動性並びに親水性及び疎水性の必要な調整が、決定的に影響され得る。
【0124】
本発明による組成物はまた、添加剤として、約5重量%〜約40重量%又は約10重量%〜約30重量%又は約15重量%〜約25重量%の好ましくは補強作用を有する充填剤を含んでもよい。
【0125】
その目的のために、本発明による組成物中にて、保管中に望ましくない反応を生じず、その後、別個に保管した成分の混合後に、設定中に悪影響を与えない、有機固体及び無機固体を使用してもよい。例えば、ケイ酸、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、バリウムサルフェート、石英粉末、重スパー(heavy spar)、蛍石、リン酸カルシウム又はカオリンが、その目的に適している。
【0126】
その意味で、約50重量%超、例えば、少なくとも約90重量%のSiO含有量を有する充填剤、例えば、合成又は天然起源の石英粉末及び微粒子ケイ酸が、有利であることが判明している。
【0127】
例えば、表面改質形態にて使用される発熱性ケイ酸及び沈殿ケイ酸、並びにまた各種供給源からの珪藻土も好ましい。
【0128】
5%水性懸濁液中にて、約8〜約10のpHを有する処理された珪藻土の混合物及び約100〜約600m/グラムのBET表面積を有する発熱性表面改質ケイ酸が特に好ましい。
【0129】
本発明による調製物はまた、染料及び着色顔料、消毒剤、芳香剤又は香味剤などの添加剤を更に含んでもよい。
【0130】
出発物質中に存在する、酸、酸性基又は酸開裂(acid-cleaving)物質を完全に中和する酸捕捉剤もまた添加剤として使用してよい。例えば、アミン、特に三級アミンが、この目的に適している。
【0131】
添加剤としては、独国特許第32 45 052(4〜6ページ、米国特許第4,532,268号に対応)(そこに記載されている改質剤が、参照として本明細書に明確に組み込まれ、本明細書の開示の一部と理解される)に記載されているように、改質剤がまた使用されてもよい。
【0132】
上記添加剤は、通常0〜約60重量%、例えば、約10〜約40重量%の量で、本発明による組成物中に含有される。
【0133】
本発明による組成物は、原則として、当業者に既知の任意の方法で入手可能である。本発明による歯科用印象材を得るための好ましい方法は、
(A)重合性ポリエーテル材料であって、
(a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
(b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
(c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
(d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
(e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び金属カルベンを有するポリエーテルとからなる群から選択される重合性ポリエーテル材料と、
(B)約0.01重量%〜約15重量%のエチレンオキシドとエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシドとのランダムコポリエーテルであり、コポリマーが、少なくとも約50%のエチレンオキシドからの構造要素を流動性向上剤として含み、
所望により、触媒、可塑剤、充填剤、柔軟剤、染料、顔料、溶媒、消毒剤、希釈剤、香味剤、着臭剤、レオロジー添加剤、乳化剤、又は安定剤からなる群から選択される、1種以上の補助剤と、
が混合されるということを特徴とする。
【0134】
成分を一般に、任意の成分数にて供給することできるが、混合前に、ベースペースト及び触媒ペーストを含む2成分材料として成分が供給される場合が好ましくあり得る。ベースペースト及び触媒ペーストを、ヘラによる単純な手動混合、手動式ディスペンサーによる混合又は電動ディスペンサーによる混合を包含する、当業者に既知の任意の手段によって混合することができる。成分を手動式ディスペンサーで混合する場合が有利であり得る。好ましいシステムは、いわゆるダブルシリンジ・ディスペンサー、例えば、MIXPACシステムズAG(スイス、ロートクロイツ(Rotkreuz)6343、グルントシュトラーセ(Grundstrasse)12)入手可能なものをベースにしている。典型的な分配装置としては、約50mLの総容量を有する2コンパートメント・カートリッジ(compartment cartridge)(2:1)、分配ガン(dispensing gun)及び静的混合チップ(static mixing tip)が挙げられる。従って、このようなシステムは、約50mLの混合組成物の押出しを可能にする。
【0135】
本発明による組成物は、約30〜約40mm、特に約32〜約38mmの稠度(ISO4823:2000に従う)、タイプ1の材料として分類される約32〜約35mmの稠度を有する材料及びタイプ2の材料として分類される約35〜約38mmの稠度を有する材料を有していなければならない。
【0136】
流動性向上剤が、本発明による組成物中に存在する場合、通常の手動式ディスペンサーが、例えば前述のディスペンサーを、約40〜約50回の手動の加圧サイクルによって、約60秒未満、例えば約30〜40秒にて、空にすることができることが好ましくあり得る。
【0137】
使用したポリエーテル材料が、米国特許第2003/0109596号に記載されているような、少量の環式ポリエーテルを有さない場合、本発明の成分を本発明に係る流動性向上剤と共に、手動式ディスペンサーを使用することにより混合することもできることが見出された。
【0138】
本発明による組成物は、歯科用材料を製造するのに適している。
【0139】
本発明で使用される触媒成分はまた、上記の化合物の1つ又はその2つ以上の混合物に加えて、1つ以上の添加剤を含んでもよい。本明細書中において既に上述した添加剤は、添加剤として適している。
【0140】
触媒成分の反応開始化合物は、例えば低粘性液体又は固体の形態であってよく、より粘稠な又はより粘稠でないベース成分の塊の中へ均一に組み込むこと困難な場合がある。この欠点を避けるために、例えばコロイダルシリカなどの広い表面積を持つ充填剤を組み込むことによって、反応開始化合物を特定の意図した用途領域に対応した粘稠形態にしてもよい。
【0141】
また、触媒成分として好適な可塑剤中で反応開始化合物の溶液を使用することが多くの場合有利であり、それにより、極端な混合比の防止を可能にするだけでなく、室温で固体である橋架剤、例えばアセチルトリブチルシトレートが、触媒成分中に都合良く組み込まれることも可能となる。
【0142】
例えば、本発明による好適な触媒成分は、硬化された歯科用材料の可塑化を生じさせる、以下の部類の化合物、すなわち、
A 約500グラム/モル未満の分子量を有する典型的な可塑剤と、
B 室温で固体の、約500〜約2,000グラム/モルの範囲の分子量を有するトリアシルグリセリド、又は
C 室温で液体の、約2,000グラム/モル超の分子量を有するポリマー、
又はこれらの2つ以上のものの混合物、の少なくとも1つを含むことができる。
【0143】
重合性ポリエーテル化合物の重合反応を開始させるための反応開始化合物は、一般に、約0.5重量%〜約90重量%、例えば、約2重量%〜約80重量%、又は約5重量%〜約50重量%の量で触媒成分中に含有される。
【0144】
本発明による歯科用印象材を製造するために、好適な定量的比率にて、ベース成分と触媒成分とを共に混合する。
【0145】
混合は、前述したように、有利に実施される。
【0146】
通常、ポリエーテル系歯科用材料について言えば、触媒成分とベース成分との間の容積混合比又は重量比は、約3:1〜約1:10、特に好ましくは約1:2〜約1:5の調整、特に約1:2又は約1:5の値に調整される。
【0147】
重合性ポリエーテル材料を形成するアジリジノ化合物の場合は、反応開始化合物のアジリジノ基対アニオンのモル比は、本発明による歯科用材料との関係においては、約3:1〜約0.9:1、例えば約2:1〜約1:1、特に約1.8:1〜約1.2:1である。
【0148】
記載した値から、触媒成分及びベース成分の組成物は、反応開始剤化合物の又は2つ以上の反応開始化合物の混合物の、反応性アジリジノ基対アニオンの所望のモル比に応じて、広範囲で変化できると考えることができる。
【0149】
流動性の向上した本発明によるポリエーテル系歯科用印象材が、例えば、全体として約
− 30重量%〜約80重量%、好ましくは、約45重量%〜約71重量%のアジリジノ基担持化合物と、
− 約0.1重量%〜約15重量%の流動性向上剤と、
− 約8重量%〜約40重量%、好ましくは約10重量%〜約25重量%の硬化された歯科用材料の可塑化を生じさせる化合物と、
− 約4重量%〜約25重量%、好ましくは約9重量%〜約16重量%の充填剤と、
− 約4重量%〜約20重量%、好ましくは約4重量%〜約16重量%の更なる活性成分、例えば、染色剤、芳香剤、反応開始剤、遅延剤、促進剤、レオロジー添加剤、稠度付与剤及び界面活性剤と、を含有する調製物から得られる。
【0150】
本発明による調製物を、歯科医学又は歯科技術にて用いられる非常に異なる歯科用材料にて使用することができる。このような歯科用材料の好ましい使用領域は、歯科医学における単一相及び二相の印象取得並びに咬合調整(bite registration)である。
【0151】
本発明はまた、本発明による調製物から製造される材料、特に、歯科用材料、例えば、カートリッジ、袋、印象材用トレイ、静的及び動的なミキサー及び混合装置を含有する容器及び混合装置にも関する。
【0152】
本発明はまた、重合性ポリエーテル材料を含む少なくとも1つのベース成分及び重合性ポリエーテル材料の少なくとも一部を架橋させるための触媒を含む少なくとも1つの触媒成分を含む歯科用材料を製造するためのキットにも関し、ここで、ベース成分又は触媒成分又はその両方が、約0.1重量%〜約15重量%のエチレンオキシドとエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシドとのランダムコポリエーテル、少なくとも約40%のエチレンオキシドからの構造成分を流動性向上剤として含むコポリマーを含み、ここでベース成分及び触媒成分が、互いに独立して存在している。
【0153】
更に、本発明は、コーティング材、印象材、シール又は歯科用成型材料のためのベース成分Bとしての、本発明による組成物の使用に関する。
【0154】
本発明は、実施例を用いて、本明細書中以下において更に詳細に説明する。
【実施例】
【0155】
試験方法
稠度
稠度を、ドイツ工業品標準規格(DIN)法又は欧州規格(EN)法4823:2000に従って測定した。
【0156】
変形からの回復性
変形からの回復性を、ドイツ工業品標準規格(DIN)法又は欧州規格(EN)法4823:2000に従って測定した。検査用サンプルを水浴中に3分間置いてから、測定を行った。
【0157】
引張り強度(Mpa)及び破断点伸び(%)
引張り強度及び破断点伸びは、ドイツ工業品標準規格(DIN)法53504(形状S2、200mm/分)に従い、ユニバーサル・プルフマシン(Universalprufmaschine)ズウィック(Zwick)Z020(ズウィック社(Zwick GmbH &Co)(ドイツ、ウルム(Ulm)))を使用して測定した。
【0158】
ショアA硬度
時間依存性ショアA硬度を、ドイツ工業品標準規格(DIN)法53505に従って測定した。硬化性組成物は、所与の時間、23℃にて、約50%の相対湿度で硬化させてから、ショアA硬度を測定した。
【0159】
接触角
ドイツ工業品標準規格(DIN)法又は欧州規格(EN)法4823:2000に記載されているような検査用サンプルを使用して、線形寸法変化を決定した。硬化性組成物を、24時間、23℃にて、約50%の相対湿度にて、硬化させた。硬化した組成物は、市販の水滴形状分析システム(Drop Shape Analysis System)DSA 10(クルス社(Kruss GmbH)(ドイツ、ハンブルグ))を使用して、それらの水接触角について分析した。ビデオ分析によって、毎秒25個のデータポイントを収集した。測定及びデータ収集の開始から、遅れはなかった。データを、約12秒間収集してよい。液滴直径を、カニューレの厚さによって決定し、5μLを選択した。接触角を、サークルフィット法を使用して計算した。試験を、23℃に設定した部屋で実施した。脱イオン水を流体として使用した。装置の較正は、測定前に、製造業者の指示に従って、ヤング−ラピラス(Young-Laplace)式フィッティングについて行った。初期接触角(水の液滴が置かれた直後に得られる接触角)及び10秒間接触角(液滴が置かれた10秒後に得られる接触角)を記録した。
【0160】
環式押出し(Cyclic Extrusion)試験
50mLの容量を有し、下記に述べるように触媒ペーストとベースペーストとを含有する2:1カートリッジを、手動式ディスペンサー内に入れた。混合用チップを取り付けた。詳細については、「混合(Mixing)」のところで説明する。5kNロードセルを装着したユニバーサル・プルフマシン(Universalprufmaschine)(ツヴィック社(Fa. Zwick)、型式:Z020)のホルダー内に、混合用チップを取り付けたカートリッジを入れた。印象材を押し出すために、手動式ディスペンサーの駆動プレートに力を及ぼすように、押出器を置いた。押出器の速度は、100mm/分であった。力が、>2N(ソフトウェア、テストエックスペット(testXpet)V8.1)で記録された場合、押出器の速度は、150mm/分まで向上し、データ開始を記録した。力が700Nであると記録された場合、300mm/分の速度で押出器を後ろに動かすことによって、圧力は、500Nまで減少した。駆動プレート/押出器が、全体で30mm、カートリッジ内にて前進した時に、測定が終了した。時間と同様に、必要サイクル数を測定した。
【0161】
処方:
【表1】


【表2】


【表3】

【0162】
混合
ベースペースト1を、ベースペースト2と同様に、以下の方法で触媒ペーストと反応させた。
【0163】
2部のベースペーストと1部の触媒ペーストを、2:1カートリッジ(カートリッジシステムS−50、型式CS 050−02−09、ミックスパック(Mixpac))の別個のチャンバ内に入れ、ストッパー(2容量:PSA 53−02−EP、1容量:PSB 53−02−EP、ミックスパック)で密封した。手動式ディスペンサー(DS 53−01−00、ミックスパック)及び混合用チップ(MBT−7,5 12D、ミックスパック)を使用してペーストを混合した。

【表4】

【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースペースト及び触媒ペーストを含む歯科用印象材であって、
前記ベースペーストが、
a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基を有するポリエーテルと、
約0.1重量%〜約15重量%の流動性向上剤と、からなる群から選択される、側鎖を有しない線状主鎖を有する少なくとも1つの重合性ポリエーテル材料を含み、
前記流動性向上剤が、エチレンオキシド及びエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシドのランダムコポリエーテルであり、コポリマーが少なくとも約50%の、エチレンオキシドからの構造成分を流動性向上剤として含み、前記流動性向上剤が好ましくは約100〜約2,000の範囲の分子量Mを有し、
前記触媒ペーストが、少なくとも1つの重合性ポリエーテル材料の反応を開始させ又は触媒するための、少なくとも1種の反応開始剤又は触媒又はその両方を含む、歯科用印象材。
【請求項2】
前記流動性向上剤がテンサイドではない、請求項1に記載の歯科用印象材。
【請求項3】
前記流動性向上剤が、100〜2,000未満の分子量Mを有する、請求項1又は2に記載の歯科用印象材。
【請求項4】
前記流動性向上剤が、
少なくとも200の分子量及び少なくとも1つのOH末端基を有する線状ランダムコポリマーと、
1つ若しくは2つのC〜Cアルキルエーテル末端基、又は1つ若しくは2つのC〜Cアルキルエステル末端基、又は1つのC〜Cアルキルエーテル末端基及び1つのC〜Cアルキルエステル末端基を有する、線状ランダムコポリマーと、からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用印象材。
【請求項5】
前記流動性向上剤が、23℃かつ101325Paにて液体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の歯科用印象材。
【請求項6】
前記印象材が、2つ以上のアジリジノ基を有する少なくとも1つのポリエーテルを含み、かつポリエーテル主鎖がエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー又はエチレンオキシドとブチレンオキシドとのコポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用印象材。
【請求項7】
2つ以上のアジリジノ基を有するポリエーテルが、3,000超の分子量Mを有する、請求項6に記載の歯科用印象材。
【請求項8】
前記印象材が、少なくとも1つのオレフィン系不飽和基を有する少なくとも1つのポリエーテル及び少なくとも1つのSiH基を有する少なくとも1つの化合物又は少なくとも1つのオレフィン系不飽和基を有するポリエーテル及び少なくとも1つのSiH基を含み、そして、少なくとも1つのポリエーテルのポリエーテル主鎖が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー又はエチレンオキシドとテトラヒドロフランとのコポリマーであるポリマー主鎖を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用印象材。
【請求項9】
前記印象材が、ROMPによって重合可能な少なくとも1つのオレフィン系不飽和基を有する少なくとも1つのポリエーテルを含み、少なくとも1つのポリエーテルのポリエーテル主鎖が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー又はエチレンオキシドとテトラヒドロフランとのコポリマーであるポリマー主鎖を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用印象材。
【請求項10】
触媒、可塑剤、充填剤、柔軟剤、染料、顔料、溶媒、消毒剤、希釈剤、香味剤、着臭剤、レオロジー添加剤、乳化剤、又は安定剤からなる群から選択される、1種以上の補助剤を含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の歯科用印象材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の歯科用印象材を硬化することにより得られる硬化歯科用印象材。
【請求項12】
A)側鎖を有しない線状主鎖を有する重合性ポリエーテル材料であって、
a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び金属カルベンを有するポリエーテルとからなる群から選択される、重合性ポリエーテル材料と、
B)約0.01重量%〜約15重量%の流動性向上剤であって、前記流動性向上剤が、エチレンオキシドとエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシドとのランダムコポリエーテルであり、コポリマーが、エチレンオキシドからの構造成分を少なくとも約50%含み、前記流動性向上剤が、好ましくは、約100〜約2,000の範囲の分子量Mを有する、流動性向上剤と、
所望により、触媒、可塑剤、充填剤、柔軟剤、染料、顔料、溶媒、消毒剤、希釈剤、香味剤、着臭剤、レオロジー添加剤、乳化剤、又は安定剤からなる群から選択される、1種以上の補助剤と、を混合する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の歯科用印象材を得るための方法。
【請求項13】
成分が、混合前に、ベースペースト及び触媒ペーストにて供給される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯科用印象材又は請求項12若しくは13に従って得られた歯科用印象材が、患者の口の中の箇所へと投与され、歯科用印象材として機能させ、少なくとも部分的に硬化させ、前記歯科用印象材が患者の口から回収される、哺乳類又は人間(患者)の歯科用印象材を得るための方法。
【請求項15】
哺乳類又は人間(患者)の口の中の歯の状況の石こう模型を調製する方法であって、請求項14に従って歯科用印象材を取り、歯科用印象材を石こうで充填して、硬化させ、歯科用印象材から回収する方法。
【請求項16】
哺乳類又は人間の口から歯科用印象材をとるための歯科用印象材の使用であって、
a)少なくとも1つのアジリジノ基を有するポリエーテルと、
b)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有する化合物を有するポリエーテルと、
c)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び少なくとも1つのSiH基を有するポリエーテルと、
d)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するポリエーテルと、
e)少なくとも1つのオレフィン系不飽和基及び金属カルベンを有するポリエーテルと、からなる群から選択される、側鎖を有しない線状主鎖を有する重合性ポリエーテル材料、
及び
約0.1重量%〜約15重量%の流動性向上剤であって、前記流動性向上剤が、エチレンオキシドとエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシドとのランダムコポリエーテルであり、コポリマーが、エチレンオキシドからの構造成分を少なくとも約50%含み、前記流動性向上剤が、好ましくは、約100〜約2,000の範囲の分子量Mを有する、流動性向上剤を含む、歯科用印象材の使用。
【請求項17】
歯科用材料を製造するためキットであって、
少なくとも1種のベース成分及び少なくとも1種の触媒成分を含み、
前記ベース成分が、側鎖を有しない線状主鎖を有する重合性ポリエーテル材料及び約0.1重量%〜約15重量%の流動性向上剤を含み、前記流動性向上剤は、エチレンオキシドとエチレンオキシドではない少なくとももう1つのアルキレンオキシドとのランダムコポリエーテルであって、コポリマーが少なくとも約50%のエチレンオキシドからの構造成分を含み、前記流動性向上剤が、好ましくは、約100〜約2,000の範囲の分子量Mを有し、
少なくとも1種の前記触媒成分が、重合性ポリエーテル材料の少なくとも一部を架橋させるための触媒を含み、
前記ベース成分と前記触媒成分とが互いに独立して存在している、キット。

【公表番号】特表2009−544725(P2009−544725A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521939(P2009−521939)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/074162
【国際公開番号】WO2008/014224
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】