説明

ポリオキシアルキレン誘導体およびその製造方法

【課題】水溶液中、pH5〜7の条件下で生理活性物質のアミノ基と反応が可能なポリオキシアルキレン誘導体および、このポリオキシアルキレン誘導体を得る製造方法および、このポリオキシアルキレン誘導体で修飾された生理活性物質とその修飾化方法を提供する。
【解決手段】式(1)で示されるポリオキシアルキレン誘導体。


[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または特定の基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレン誘導体、その製造方法、該ポリオキシアルキレン誘導体を用いて修飾した生理活性物質およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、タンパク質、ポリペプチド、抗癌剤、抗真菌剤、リン脂質などの生理活性物質の修飾等に用いられるポリオキシアルキレン誘導体およびその製造方法、またこのポリオキシアルキレン誘導体を用いて修飾した生理活性物質およびその活性を低下させずに修飾を行なう製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生理活性を有するタンパク質、ポリペプチド、合成化合物、及び天然資源より抽出された化合物等が数多く発見されており、それらの医薬品への応用が盛んに研究されている。しかし、これらの生理活性物質は、生体内に投与された際の血中半減期が短く、十分な薬理効果を得ることは難しい。これは、通常生体内へ投与された生理活性物質が、腎臓における糸球体濾過や、肝臓や脾臓などにおけるマクロファージの取り込みにより、生体内から消失するためである。このため、これらの生理活性物質をリポソームやポリマーミセル中へ封入したり、ポリオキシアルキレン誘導体のなかでも両親媒性高分子であるポリエチレングリコールを化学修飾させて分子量を増大させることで、生体内挙動を改善する試みがなされている。ポリエチレングリコールは、その立体反発効果のために他の生体成分との相互作用が低いことから、ポリエチレングリコールで修飾したタンパク質や酵素等のポリペプチドは、生体内へ投与された場合、腎臓における糸球体濾過や免疫反応等の生体反応を回避させる効果があり、非修飾のものより長い血中半減期を達成する。また、
毒性や抗原性も低下し、更には、疎水性の高い難水溶性の化合物の溶解性を高める効果もある。
【0003】
工業的に合成されているポリエチレングリコール誘導体は、一方の末端にメトキシ基などの非反応性の基、他方の末端に水酸基を有するもの、あるいは両末端に水酸基を有するものがほとんどである。水酸基はたんぱく質等の表面の官能基に対して反応性が低いので、タンパク質の修飾剤として利用するために、メトキシポリエチレングリコール誘導体の片末端の水酸基をより反応性の高い官能基に変換する試みが行われている。
【0004】
ポリエチレングリコール誘導体の両端に種々の異なるタンパク質等の物質を選択的に結合させる場合には、両末端に相異なる官能基を有するポリエチレングリコール誘導体が必要となる。しかしながら、上記のようなポリエチレングリコールの両末端に存在する水酸基を反応性の高い官能基に変換する方法では、未反応の水酸基末端が残る可能性がある。また、反応性生成物は両末端に同一の官能基を有するものと、両末端に相異なる官能基を有するものとの混合物として得られる。このため、カラムクロマトグラフィーなどの方法により精製する必要があり、収率や純度の面で問題がある。
【0005】
ところで、高反応性の官能基の中で、アルデヒド基はタンパク質等のアミノ基と選択的に反応するため、可溶性または不溶性ポリマー表面へのポリエチレングリコール修飾や、タンパク質へのポリエチレングリコール修飾に用いられている。アルデヒド基と1級アミノ基との反応では、2級アミンが形成されるため、溶液中においてタンパク質の荷電があまり変わらず、このためタンパク質の活性が低下したり、あるいはコンフォメーションが変化するなどの問題が生じにくいという利点がある。
【0006】
アルキルアセタール基を有する化合物を開始剤としてアルデヒド基を有するポリエチレングリコールを製造する方法は知られている(例えば特許文献1参照)。また、アルデヒド基を有する水溶性ポリマーを酸性条件下でタンパク質またはその類似体に結合させる方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、アルキルアセタール基を加水分解してアルキルアルデヒド基に変換する際には、反応溶液を酸性にする必要があり、また、アルキルアルデヒド基をアミノ基と反応させる際にも、酸性条件が必須である。このため、このような酸性条件下で不安定なタンパク質や薬物等への修飾は、タンパク質や薬物が変性し、薬理活性が低下するといった問題がある。また、アルキルアルデヒド基は水中での安定性が低くアルドール縮合をおこし、純度が低下する反応といった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07−316285号公報
【特許文献2】特開平11−310600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、水溶液中、pH5〜7の条件下で生理活性物質のアミノ基と反応が可能なポリオキシアルキレン誘導体および、このポリオキシアルキレン誘導体を得る製造方法および、このポリオキシアルキレン誘導体で修飾された生理活性物質とその修飾化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、一方の末端にpH5〜7の条件下でアミノ基と反応が可能なフェニルアセタール基を、他方の末端に水酸基、アルキル基、または、アミノ基、メルカプト基、不飽和結合、カルボキシル基と反応可能な基を有する、高純度であり、反応性に優れた生理活性物質等の修飾に用いられるポリオキシアルキレン誘導体、このポリオキシアルキレン誘導体を得る製造方法および修飾された生理活性物質とその修飾化方法を見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示す発明である。
(A) 式(1)で示されるポリオキシアルキレン誘導体。
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【0014】
【化2】

【0015】
(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
(B) 式(2)で示されるポリオキシアルキレン誘導体。
【0016】
【化3】

【0017】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Qは炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【0018】
【化4】

【0019】
(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
(C) 式(4)
【0020】
【化5】

【0021】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
で示される化合物を還元して式(5)
【0022】
【化6】

【0023】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す]
で示される化合物を得た後、式(5)の化合物をアルカリ金属触媒存在下、アルキレンオキシドの付加重合反応により式(6)
【0024】
【化7】

【0025】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Mはアルカリ金属を示す。]
の反応中間体とした後、この中間体のアルコキシ末端を化学修飾することを特徴とする式(2)で示されるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
【0026】
【化8】

【0027】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Qは炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【0028】
【化9】

【0029】
(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
(D) 式(3)の化合物の水酸基を化学修飾することを特徴とする式(2)で示されるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
群(I)
【0033】
【化12】

【0034】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Qは炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。]
(E) 分子中の少なくとも1個のアミノ基に式(1)のポリオキシアルキレン誘導体を結合させた生理活性物質。
【0035】
【化13】

【0036】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【0037】
【化14】

【0038】
(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
(F) 式(1)のポリオキシアルキレン誘導体と生理活性物質を、pH5〜7の条件下で反応させることを特徴とする前記の生理活性物質の修飾方法。
【0039】
【化15】

【0040】
[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【0041】
【化16】

【0042】
(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
【発明の効果】
【0043】
本発明のポリオキシアルキレン誘導体は、水溶液中pH5〜7の中性に近い条件下で生理活性物質と反応が可能であり、反応性に優れている。本発明のポリオキシアルキレン誘導体は、フェニルアセタール基を有することにより、水中でアルドール縮合等を起こしにくく安定であり、また、中性に近い条件下で生理活性物質のアミノ基と反応することができるため、修飾された生理活性物質は、ポリオキシアルキレンとの反応の際の構造変化、活性の低下が少なく、かつポリオキシアルキレンにより修飾されることにより生体内挙動が改善され、優れた薬理活性等を発現するポリオキシアルキレン修飾化生理活性物質を提供することができる。また、本発明の製造方法を用いることにより、本発明のポリオキシアルキレン誘導体を容易に得ることができる。
【0044】
本発明のポリオキシアルキレン誘導体を用いることにより、タンパク質、ポリペプチド、抗癌剤、抗真菌剤、リン脂質等の生体内挙動が改善され、高い薬理効果を示す製剤の開発が可能となると同時に、上記薬物等水溶性の改善、貯蔵安定性の増大、免疫原性の減少、酵素分解特性の向上が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明を詳しく説明する。
式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)および式(6)において、Rは炭素数1〜8の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはエチル基である。
【0046】
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1、2−ジメチルエチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。オキシアルキレン基は1種または2種以上の組み合わせであってもよく、またはランダム状に付加していてもブロック状に付加していてもよい。オキシアルキレン基の炭素数の少ない方がより親水性が高く、好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、10〜2000であり、好ましくは10〜800、更に好ましくは20〜500である。
【0047】
式(1)において、Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または群(I)で示される基である。炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。また、Xは、好ましくは水素原子、または群(I)で示される基である。
群(I)
【0048】
【化17】

【0049】
アミノ基と反応させる場合は、(a)、(b)、(d)、(f)、(h)、(i)、(k)で示される基が好ましく、メルカプト基と反応させる場合は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(h)、(i)、(j)で示される基が好ましく、不飽和結合と反応させる場合は、(c)で示される基が好ましく、カルボキシル基と反応させる場合は(c)、(g)で示される基が好ましい。
【0050】
群(I)におけるZはオキシアルキレン基と反応性官能基との間のリンカーであり、共有結合であれば特に制限は無いが、好ましくはアルキレン基、及びエステル結合、カーバメート結合、アミド結合、ウレア結合、カーボネート結合、スルフィド結合、2級アミノ基を含んだアルキレン基等が挙げられる。アルキレン基として好ましいものは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基等が挙げられ、更に好ましくは下記(z1)のような構造が挙げられる。エステル結合を含んだアルキレン基として更に好ましいものは、下記(z2)のような構造が挙げられる。アミド結合を含んだアルキレン基として更に好ましいものは、下記(z3)のような構造が挙げられる。エーテル結合を含んだアルキレン基として更に好ましいものは、下記(z4)のような構造が挙げられる。カーバメート結合を含んだアルキレン基として更に好ましいものは、下記(z5)のような構造が挙げられる。2級アミノ基を含んだアルキレン基として更に好ましいものは、下記(z6)のような構造が挙げられる。
【0051】
【化18】

【0052】
Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、4−(トリフルオロメトキシ)フェニル基等が挙げられるが、好ましくはメチル基、ビニル基、4−メチルフェニル基、2,2,2−トリフルオロエチル基の場合である。
【0053】
式(2)において、QはXより水素原子を除いた基である。
【0054】
式(1)で示されるポリオキシアルキレン誘導体により、生理活性物質を修飾する場合、用途等によって、式(2)および式(3)で示されるポリオキシアルキレン誘導体を適宜使用することができる。また、式(3)で示される化合物は式(2)で示される化合物の中間体としても有用である。
【0055】
本発明の式(2)で示されるポリオキシアルキレン誘導体は例えば次のようにして製造することができる。
【0056】
まず式(4)で表されるアセタール基を有するベンズアルデヒド誘導体を還元して、式(5)で表されるアセタール基を有するベンジルアルコール誘導体を得た後、アルカリ金属触媒下、この化合物の水酸基にアルキレンオキシドを付加重合させ、式(6)のポリオキシアルキレン誘導体とした後、更に、このようにして得られたポリオキシアルキレン誘導体の末端アルコキシ基を、群(I)に示した各種反応性基へ変性させることで本発明のポリオキシアルキレン誘導体を製造することができる。
【0057】
また、式(6)で表されるポリオキシアルキレン誘導体の末端アルコキシル基を、水で処理することにより、式(3)で表されるポリオキシアルキレン誘導体とした後、末端水酸基を、群(I)に示した各種反応性基へ変性させることで本発明のポリオキシアルキレン誘導体を製造することが出来る。
【0058】
式(4)で表されるアセタール基を有するベンズアルデヒド誘導体としては、4−(ジメトキシメチル)ベンズアルデヒド、4−(ジエトキシメチル)ベンズアルデヒド、4−(ジプロポキシメチル)ベンズアルデヒド、4−(ジブチロキシメチル)ベンズアルデヒド等が挙げられるが、好ましくは4−(ジエトキシメチル)ベンズアルデヒドである。
【0059】
式(5)で表されるアセタール基を有するベンジルアルコール誘導体は、式(4)の化合物を、パラジウムカーボン触媒、水素もしくはNaBH4等の水素供与体を用いた公知の還元反応にて製造することができる。
【0060】
式(6)で表される化合物は式(5)で表されるアセタール基を有するベンジルアルコール誘導体の1級水酸基残基へアルキレンオキシドを付加重合することにより得られる。アルキレンオキシド付加重合は有機溶媒もしくは無溶媒中、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を触媒とし、公知の方法にて行うことができる。有機溶媒は重合反応を妨害しないものであれば特に限定されず、例えばトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0061】
式(3)で表される化合物は、式(6)で表される化合物を水で処理することにより得
られる。添加する水の量は式(6)の化合物に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルの範囲で反応させるのが好ましい。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜50℃である。
【0062】
続いて、式(3)の水酸基または式(6)のアルコキシル基へのアルキル基または反応性基の導入について説明する。
<Xが炭素数1〜4のアルキルである式(1)の製造方法>
一般に知られる水酸基またはアルコキシル基のアルキルエーテル化の反応を用いることができる。
<(b)、(d)、(h)、(i)の製造方法>
トルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t−ブチルーメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基、もしくは炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基と下記式(b1)、(d1)、(h1)、(i1)で示される化合物のいずれかと反応させることで、それぞれ(b)、(d)、(h)、(i)を製造することができる。また、上記有機塩基、無機塩基は用いなくとも良い。有機塩基、無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、式(2)に対して等モル以上が好ましい。また、有機塩基を溶媒として用いてもよい。
【0063】
(b1)、(d1)、(h1)、(i1)におけるWはCl、Br、Iより選択されるハロゲン原子であり、好ましくはClである。式(b1)、(d1)、(h1)、(i1)で示される化合物の使用割合は、特に制限はないが、式(2)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルの範囲で反応させるのが好ましい。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。生成した化合物は、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0064】
【化19】

【0065】
(WはCl、Br、Iより選択されるハロゲン原子)
<(a)、(k)の製造方法>
式(3)を無水コハク酸や無水グルタル酸等のジカルボン酸無水物と反応させてカルボキシル体(k)を得た後、縮合剤存在下、N−ヒドロキシコハク酸イミドと縮合反応させることで、(a)のコハク酸イミド体を得ることができる。式(3)とジカルボン酸無水物との反応は、上述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行う。ジカルボン酸無水物の使用割合は、特に制限はないが、式(3)に対して等モル以上が好ましく、更に好まし
くは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。反応にはトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機塩基や炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム等の無機塩基を触媒として用いてもよい。触媒の使用割合は0.1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20重量%である。このようにして生成したカルボキシル体(k)は、前述の精製手段にて精製してもよいし、そのまま次の縮合反応に用いても良い。
【0066】
続く縮合反応も同様に上記非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中で行う。縮合剤としては、特に制限は無いが、好ましくはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドである。N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドの使用割合は式(3)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。N−ヒドロキシコハク酸イミドの使用割合は式(3)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0067】
<(g)の製造方法>
式(3)を水、アルコール、アセトニトリル等の溶媒中、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基を触媒とし、アクリロニトリル等を付加させてニトリル体を得たあと、オートクレーブ中でニッケルやパラジウム触媒下でニトリル基の水素添加反応を行うことで(g)のアミン体を得ることができる。ニトリル体を得る際の無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、式(3)に対して0.01〜50重量%が好ましい。アクリロニトリル等の使用割合は、特に制限はないが、式(3)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜100モルの範囲で反応させるのが好ましい。また、アクリロニトリルを溶媒として用いても良い。反応温度としては、−50〜100℃が好ましく、更に好ましくは、−20〜60℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。続くニトリル体の水素添加反応における反応溶媒は、反応に関与しない溶媒であれば特に制限は無いが、好ましくはトルエンである。ニッケル、もしくはパラジウム触媒の使用割合は、特に制限は無いが、ニトリル体に対して0.05〜30重量%であり、好ましくは0.5〜5重量%である。反応温度は20〜200℃が好ましく、更に好ましくは、50〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。水素圧は2〜10MPaが好ましく、更に好ましくは3〜6MPaである。また、2量化を防ぐために反応系中にアンモニアを加えてもよい。アンモニアを加える場合の使用割合は、特に制限は無いが、好ましくはニトリル体に対して1〜100重量%であり、更に好ましくは5〜50重量%である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0068】
上記アミン体(g)、(j)は、(b)をアンモニア水で加水分解させることでも得ることができる。反応は、アンモニア水中で行い、アンモニアの濃度は特に制限は無いが、好ましくは10〜40重量%の範囲である。アンモニア水の使用割合は、含有アンモニアが(b)の等モル以上であれば特に制限は無いが、好ましくは、等モル〜50000倍モルである。反応温度としては、0〜100℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0069】
<(e)の製造方法>
更に、得られた(g)のアミンを、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、無水マレイン酸と反応させてマレアミド体を得たあと、無水酢酸及び酢酸ナトリウムを触媒として、閉環反応させることで(e)のマレイミド体を得ることができる。マレアミド化反応における無水マレイン酸の使用割合は、特に制限はないが、式(3)に対して等モル以
上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜120℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成したマレアミド体は、前述の精製手段にて精製してもよいし、そのまま次の閉環反応に用いても良い。
【0070】
続く閉環反応における反応溶媒は水、アルコール、アセトニトリルが好ましく、無水酢酸を反応溶媒としてもよい。酢酸ナトリウムの使用割合は、特に制限はないが、マレアミド体に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0071】
上記マレイミド体は、下記式(e1)と、上述の(g)のアミンを反応させることでも得ることができる。反応は、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行い、化合物(e1)を(g)のアミンに対して等モル以上加えて反応させる。(e1)の使用割合は(g)の等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜5モルである。反応温度としては、0〜200℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜12時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0072】
【化20】

【0073】
(Qは炭素数1〜7の炭化水素基を示す。)
【0074】
<(f)の製造方法>
化合物(b)を(f1)のアセタール化合物と反応させてアセタール体を得た後、酸性条件にて加水分解を行うことで、アルデヒド体(f)を得ることができる。化合物(b)の製造は上述の通りである。アセタール化反応は前述の非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中、(b)と等モル以上、好ましくは等モル〜50モルの(f1)を反応させることで得ることができる。(f1)は相当するアルコールから、金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド等を用いて調製することができる。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。
【0075】
(f2)を用いる場合は、式(3)の水酸基を上述の方法でアルコラートとした後、前述の非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中、(f2)を等モル以上、好ましくは等モル〜100モルの割合で反応を行うことでアセタール体を得ることができる。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。
【0076】
(f3)を用いる場合は、(a)、(b)、(d)、(h)、(i)または(k)と(f3)を反応させることでアセタール体を得ることができる。(a)、(b)、(d)、(h)、(i)または(k)の製造については前述の通りである。(f3)との反応では、溶媒は特に制限されないが、好ましくは前述の非プロトン性溶媒中で行う。(a)、(b)、(d)、(h)、(i)もしくは(k)に対する(f3)の仕込み割合は、等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜10モルである。反応温度としては、−30〜200℃が好ましく、更に好ましくは、0〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。(k)を用いる場合は、適宜縮合剤を用いても良い。
【0077】
このようにして得られたアセタール体は前述の精製手段にて精製してもよいし、精製を行わずにそのまま次のアルデヒド化反応に用いても良い。
【0078】
アルデヒド化は、アセタール体を酢酸、リン酸、硫酸、塩酸等の酸にて酸性に調整した水溶液中で加水分解させ、製造することができる。反応温度としては、−20〜100℃が好ましく、更に好ましくは、0〜80℃である。反応時間は10分〜24時間が好ましく、更に好ましくは30分〜10時間である。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0079】
【化21】

【0080】
(式中、R1、R2は炭素数1〜3の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。また相互に環を形成していても良い。M1はナトリウムもしくはカリウムであり、WはCl、Br、Iより選択されるハロゲン原子であり、tは1〜5の整数である。)
【0081】
<(c)(j)の製造方法>
(c)のメルカプト体は、化合物(b)とチオウレア等のチア化剤と反応させることで得ることができる。化合物(b)の製造は前述の通りである。チア化反応は水、アルコール、アセトニトリル等の溶媒中もしくは無溶媒中で行う。チオウレアの使用割合は、化合物(b)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルの範囲である。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜150℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。反応後、生成したチアゾリウム塩をアルカリ加水分解し、メルカプト体を得ることができる。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0082】
また、上記メルカプト体は、化合物(b)を下記化合物(c1)と反応させ、1級アミンにて分解させることでも得ることができる。(b)と(c1)との反応は、前述の非プロトン性溶媒中、もしくは無溶媒中で行う。(c1)の使用割合は、式(2)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルの範囲である。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。続く1級アミンによるアルカリ分解は、前述の非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中で行う。用いる1級アミンとしては特に制限は無いが、好ましくはアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等が挙げられる。当然、これらの1級アミンを溶媒として用いても良い。生成した化合物は前述の精製手段にて精製してもよい。
【0083】
【化22】

【0084】
また、化合物(j)は(c)の化合物を得た後、2−メルカプトピリジンを反応させることにより得ることができる。2−メルカプトピリジンの使用割合は、化合物(c)に対して等モル以上が好ましく、更に好ましくは等モル〜50モルの範囲である。反応温度としては、0〜300℃が好ましく、更に好ましくは、20〜80℃である。反応時間は10分〜48時間が好ましく、更に好ましくは30分〜24時間である。
【0085】
本発明のポリオキシアルキレン誘導体は、特に生理活性物質の修飾に有用な化合物である。生理活性物質は、特にその種類を限定されるものではないが、本発明のポリオキシアルキレン誘導体とアミノ基を介して反応するものであればよく、タンパク質、ポリペプチド、抗癌剤、抗真菌剤、リン脂質が挙げられる。
【0086】
これらの生理活性物質がアミノ基を持たない場合は、一般に知られる方法で生理活性物質の他の官能基をアミノ基に変換してもよい。
【0087】
より具体的なタンパク質、ポリペプチドとしては、例えば以下に挙げられるものである。ヘモグロビン、血液因子等の血清タンパク質;IgG、IgE、IgM、IgA、IgD等の免疫グロブリン;インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11およびIL12サブタイプ)、インターフェロン(―α、−β、−γ)、顆粒球コロニー刺激因子(αおよびβ型)、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子、血小板由来増殖因子、ホスホリパーゼ活性化タンパク質、インシュリン、グルカゴン、レクチン、リシン、腫瘍壊死因子、上皮細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子(―α、−β)、繊維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、神経成長因子、骨増殖因子、インスリン様増殖因子、ヘパリン結合増殖因子、腫瘍増殖因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、マクロファージ分化因子、分化誘導因子、白血病阻害因子、アンフィレグリン、ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、ヘモポエチン、トロンボポエチン、カルシトニン等のサイトカインおよびそのフラグメント;タンパク質分解酵素、オキシドリダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、エラスターゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼ、ビリルビンオキシターゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルコウロニダーゼ等の酵素;モノクロナール及びポリクロナール抗体およびそれらのフラグメント;ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン等のポリアミノ酸;B型肝炎ワクチン、マラリアワクチン、メラノーマワクチン、HIV−1ワクチン等のワクチンおよび抗原;また、糖タンパクも含まれる。また、これらの生理活性物質と同様の生理活性を有する類似構造物質もこれに含まれる。また、これらのタンパク質、ポリペプチドは、それらの天然源または遺伝子工学的処理を受けた細胞から単離されるか、あるいは種々の合成法を経て作り出されたものでも良い。
【0088】
抗癌剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、パクリタキセル、アドリアマイシン、ドキソルビシン、シスプラチン、ダウノマイシン、マイトマイシン、ビンクリスチン、エピルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、アクラシノマイシン、イダマイシン、ブレオマイシン、ピラルビシン、ペプロマイシン等が挙げられる。具体
的な抗真菌剤としては、特に限定されるものではないが、アンホテリシンB、ナイスタチン、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾールおよびペプチド性抗真菌剤が挙げられる。
【0089】
具体的なリン脂質としては、特に限定されるものではないが、フォスファチジルエタノールアミンが挙げられ、これらは卵黄あるいは大豆等の天然物由来のものでも良いし、合成物でも良い。脂肪酸組成としては、特に限定されるものではないが、炭素数12〜22の脂肪酸が挙げられ、より好ましくは炭素数12〜22の脂肪酸が挙げられる。これらの脂肪酸は飽和脂肪酸でも良いし、不飽和結合を含んだものでも良い。
【0090】
本発明における式(1)のポリオキシアルキレン誘導体より修飾された生理活性物質の製造方法について説明すると、生理活性物質の使用割合の1モルに対して式(1)のポリオキシアルキレン誘導体を1モルもしくはそれ以上の使用割合において反応させればよい。好ましくは、生理活性物質の活性を失わない範囲で製品の要求性能により選択されるが、生理活性物質のアミノ基1等量に対して1〜100モルの式(1)のポリオキシアルキレン誘導体を用い、好ましくは1〜20モル、より好ましくは1〜5モルである。
【0091】
反応溶媒としては、反応に関与しない溶媒であれば特に制限されないが、例えばリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液などの緩衝液が好ましい溶媒として挙げられる。また生理活性物質を失活させることなく、反応に関与しないアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を添加しても良い。
【0092】
このとき、反応溶液のpHは5〜7であり、好ましくは5.5〜6.5である。
【0093】
この条件下で式(1)と生理活性物質を混合することにより、式(1)のフェニルアセタール基はアルデヒド基に変換し、生理活性物質のアミノ基と反応する。また、一旦、式(1)の化合物をpHは5〜7の条件下で、中間体としてフェニルアルデヒド基を有するポリオキシアルキレン体を生成させた後、生理活性物質を添加して反応させても良い。
【0094】
反応温度は生理活性物質が変性しない温度であればよいが、0〜40℃が好ましい。
反応時間は通常0.5〜72時間であり、通常は1〜24時間程度で反応は十分に進行する。
【0095】
反応後は、透析、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動などの通常の精製方法で精製し、目的とするポリオキシアルキレンで修飾された生理活性物質を得ることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中の化合物の分析、同定には1H−NMRおよびGPCを用いた。
1H−NMRの分析方法>
1H−NMR分析では、日本電子データム(株)製JNM−ECP400を用いた。
<GPCの分析方法>GPC分析では、SHODEX GPC SYSTEM−11を用い、下記条件にて測定を行った。
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1ml/min
カラム:SHODEX KF−801,KF−803,KF−804(I.D.
8mmX30cm)
カラム温度:40℃
検出器:RI
サンプル量:1mg/g,100μl
【0097】
(実施例1)α−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−2−(2−ピリジルジチオ)エチルポリオキシエチレンの合成
(実施例1−1)
アルゴンガス存在下、脱水エタノール300mLに4−(ジエトキシメチル)ベンズアルデヒド15g(72mmol)を溶解させ温度を0℃にした。そして、NaBH41.40g(79.3mmol)を少しずつ加えて反応させた。このとき、TLC(シリカゲル)にて反応時間の確認を行った(ジエチルエーテル/ヘキサン=1:1)。1時間ほど攪拌した後、100mLの純水を加えて未反応の還元剤を失活させた。目的物は、塩化メチレンにて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。最後に、減圧蒸留にて精製し、下記式(7)で示される4−(ジエトキシメチル)ベンジルアルコールを得た(留分;138〜140℃/mmHg)。
【0098】
【化23】

【0099】
1H−NMR(CDCl3,内部標準TMS) δ(ppm):1.12(6H,m,C3CH2O−)、3.40−3.60(4H,m,CH32O−),4.45(2H,s,Ph−C2)、5.20(1H,m,-O)5.45(1H,m,C)、7.27−7.38(4H,m,−Ph−) ※Phはベンゼン環を示す。
【0100】
(実施例1−2)
アルゴンガス存在下、ナスフラスコ中において、脱水THF30mLに重合開始剤として実施例1−1で精製して得られた4−(ジエトキシメチル)ベンジルアルコール0.19g(0.90mmol)を加えた。そして、カリウムナフタレン等モル量を用いてアルコキシドを形成させた後、エチレンオキシド4.2g(96mmol)を加え2日間室温下で重合した。そして、トリエチルアミン0.82g(8.1mmol)とカリウムナフタレン0.4mmolをポリマー溶液に加えた。さらに、停止反応として、メタンスルホニルクロリド0.72g(6.3mmol)を脱水THF10mLに溶解させたところへ、このポリマー溶液を滴下することによって、停止末端へのメタンスルホニル基の導入を行った。その後、クロロホルムと飽和食塩水にて抽出し、有機層は無水硫酸マグネシウムを用いて脱水した。ロータリーエバポレーターにて濃縮後、エーテル再沈、吸引ろ過にてポリマーを回収し、最後に減圧乾燥にて白色固体のα−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−メタンスルフォニルポリオキシエチレン(8)を得た。
【0101】
【化24】

【0102】
1H−NMR(CDCl3,内部標準TMS) δ(ppm):1.12(6H,m,C3CH2O−)、3.20(3H,s,OSO2−C3),3.20−3.80(480H,m,CH32O,−OC22O−),4.25(2H,m,C2−OSO2−),4.45(2H,s,Ph−C2),5.45(1H,m,C)、7.27−7.38(4H,m,−Ph−)
【0103】
(実施例1−3)
減圧乾燥したO−エチルジチオ炭酸カリウム0.043g(0.27mmol)に脱水THF30mLとジメチルホルムアミド(DMF)1.0mLを加え攪拌した。この溶液を実施例1−2で得られたα−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−メタンスルフォニルポリオキシエチレン0.15gに加えて、室温にて4時間反応させた。その後、クロロホルムと飽和食塩水にて抽出し、有機層は無水硫酸マグネシウムを用いて脱水した。ロータリーエバポレーターにて濃縮後、エーテル再沈、吸引ろ過にてポリマーを回収し、最後に減圧乾燥にてポリオキシアルキレン誘導体を得た後、この誘導体の80mg(0.0138mmol)と2−メチルカプトピリジン(2−PDS)304mg(1.38mmol)は、アルゴン下にて脱水THFに溶解させた。そして、n−プロピルアミン1.75mLをゆっくり滴下して室温で3時間反応させた。精製は、メタノール透析後に溶媒を除去し、クロロホルム(2mL)からエーテル再沈を行った。最後に減圧乾燥にて式(9)で示されるα−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−(2−ピリジルジチオ)エチルポリオキシエチレンを得た(収率:66mg(82.5%))。
1H−NMR(CDCl3,内部標準TMS) δ(ppm):1.12(6H,m,C3CH2O−)、3.02(2H,s,−CH22−SS),3.20−3.80(480H,m,CH32O,−OC22O−),4.45(2H,s,Ph−C2),5.45(1H,m,C)、7.27−7.38(4H,m,−Ph−),7.1,7.7,7.8.8.5(4H,ピリジン環−
数平均分子量:5630(GPCにより測定)
【0104】
【化25】

【0105】
(実施例2)α−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−メチルポリオキシエチレンの合成
アルゴンガス存在下、ナスフラスコ中において、脱水THF30mLに重合開始剤として実施例1−1で精製して得られた4−(ジエトキシメチル)ベンジルアルコール0.19g(0.90mmol)を加えた。そして、カリウムナフタレン等モル量を用いてアルコキシドを形成させた後、エチレンオキシド4.0g(91mmol)を加え2日間室温下で重合した。そして、トリエチルアミン0.82g(8.1mmol)とカリウムナフタレン0.4mmolをポリマー溶液に加えた。さらに、停止反応として、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液1.22g(6.3mmol)を、このポリマー溶液に滴下することによって、停止末端へのメチル基の導入を行った。その後、クロロホルムと飽和食塩水にて抽出し、有機層は無水硫酸マグネシウムを用いて脱水した。ロータリーエバポレーターにて濃縮後、エーテル再沈、吸引ろ過にてポリマーを回収し、最後に減圧乾燥にて白色固体のα−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−メチルポリオキシエチレン(10)を得た。
【0106】
【化26】

【0107】
1H−NMR(CDCl3,内部標準TMS) δ(ppm):1.12(6H,m,C3CH2O−)、3.20−3.80(442H,m,CH32O,−OC22O−),3.38(3H,s,CH2CH2O−C3),4.45(2H,s,Ph−C2),5.45(1H,m,C)、7.27−7.38(4H,m,−Ph−)
数平均分子量:5,200(GPCにより測定)
【0108】
(実施例3)α−4−(ジエトキシメチル)ベンジルポリオキシエチレンの合成
アルゴンガス存在下、ナスフラスコ中において、脱水THF30mLに重合開始剤として実施例1−1で精製して得られた4−(ジエトキシメチル)ベンジルアルコール0.19g(0.90mmol)を加えた。そして、カリウムナフタレン等モル量を用いてアルコキシドを形成させた後、エチレンオキシド2.5g(57mmol)を加え2日間室温下で重合した。さらに、停止反応として、水1.22g(6.3mmol)を、このポリマー溶液に滴下することによって、停止末端への水酸基の導入を行った。その後、クロロホルムと飽和食塩水にて抽出し、有機層は無水硫酸マグネシウムを用いて脱水した。ロータリーエバポレーターにて濃縮後、エーテル再沈、吸引ろ過にてポリマーを回収し、最後に減圧乾燥にて白色固体のα−4−(ジエトキシメチル)ベンジルポリオキシエチレン(11)を得た。
【0109】
【化27】

【0110】
1H−NMR(CDCl3,内部標準TMS) δ(ppm):1.12(6H,m,C3CH2O−)、3.20−3.80(272H,m,CH32O,−OC22O−),4.45(2H,s,Ph−C2),5.45(1H,m,C)、7.27−7.38(4H,m,−Ph−)
数平均分子量:3120(GPCにより測定)
【0111】
(実施例4)α−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−メチルポリオキシエチレンによるOVAの修飾
pH6.0に調整したリン酸緩衝溶液1mLへOVA(ALBUMIN, CHIKEN EGG
分子量約4万)5.0mg(0.1μmol)、実施例2で得られたα−4−(ジエトキシメチル)ベンジル−ω−メチルポリオキシエチレン20mgを加え、室温で12時間攪拌した。反応液をイオン交換水にて5倍希釈し、この希釈液20μLとトリスSDSサンプル処理液20μLを混合後、沸騰水浴中で2分30秒加温した。この処理液をドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミドゲル電気泳動(4−20%)分析した。染色はCBB染色で行った。比較としてOVAのみ、およびマーカー(Bio-rad Broad range SDS-PAGE standards、分子量201000,130000,94000,48600,36400,29800,20600,6600)についても同時に分析を行った。これらの結果、上記のOVAとの反応物において、原料OVAのバンドは残存せず、OVA1分子あたり1〜15個所の修飾を受けた場合に相当する分子量のバンドが観察された。
【0112】
(比較例1)α−メチル−ω−オキソプロピルポリオキシエチレン(化合物(12))によるOVAの修飾
CH3O(CH2CH2O)nCH2CH2CHO (12)
n≒110
実施例4と同様に、pH6.0に調整したリン酸緩衝溶液1mlへOVA(ALBUMIN, CHIKEN EGG 分子量約4万)5.0mg(0.1μmol)、α−メチル−ω−オキソプロピルポリオキシエチレン(日本油脂(株)製、分子量約5000)20mgを加え、室温で12時間攪拌した。反応液をイオン交換水にて5倍希釈し、この希釈液20μLとトリスSDSサンプル処理液20μLを混合後、沸騰水浴中で2分30秒加温した。この処理液をドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミドゲル電気泳動(4−20%)分析した。染色はCBB染色で行った。比較としてOVAのみ、およびマーカー(Bio-rad Broad range DS-PAGE standards、分子量201000,130000,94000,48600,36400,29800,20600,6600)についても同時に分析を行った。これらの結果、上記のOVAと化合物(12)の反応物において、原料OVAおよび化合物(12)のバンドはみられたが、化合物(12)で修飾を受けた場合に相当する分子量のバンドはほとんど観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)で示されるポリオキシアルキレン誘導体。
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Qは炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【化2】

(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
【請求項2】
式(4)
【化3】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す。]
で示される化合物を還元して式(5)
【化4】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す]
で示される化合物を得た後、式(5)の化合物をアルカリ金属触媒存在下、アルキレンオキシドの付加重合反応により式(6)
【化5】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Mはアルカリ金属を示す。]
の反応中間体とした後、この中間体のアルコキシ末端を化学修飾することを特徴とする式(2)で示されるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
【化6】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Qは炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【化7】

(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Y
は炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
【請求項3】
式(3)の化合物の水酸基を化学修飾することを特徴とする式(2)で示されるポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
【化8】

【化9】

群(I)
【化10】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Qは炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。]
【請求項4】
分子中の少なくとも1個のアミノ基に式(1)のポリオキシアルキレン誘導体を結合させた生理活性物質。
【化11】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【化12】

(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)
【請求項5】
式(1)のポリオキシアルキレン誘導体と生理活性物質を、pH5〜7の条件下で反応させることを特徴とする請求項4記載の生理活性物質の修飾方法。
【化13】

[式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、10〜2000である。Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または群(I)で示される基を示す。]
群(I)
【化14】

(群(I)中、Zはオキシアルキレンと反応性官能基とのリンカーで共有結合を示す。Yは炭素数1〜10のフッ素原子を含んでも良い炭化水素基を示す。)

【公開番号】特開2010−31282(P2010−31282A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195257(P2009−195257)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【分割の表示】特願2003−120859(P2003−120859)の分割
【原出願日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【出願人】(593064629)
【Fターム(参考)】