説明

ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータ及び電池

【課題】透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜並びにそれを用いた電池用セパレータ及び電池を提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂と、230℃の温度及び歪み速度25sec-1におけるトルートン比が15以上のポリプロピレンとを含有するポリオレフィン微多孔膜は、透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性のバランスに優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度な透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性をバランス良く有するポリオレフィン微多孔膜、かかるポリオレフィン微多孔膜からなる電池用セパレータ、及びかかるセパレータを有する電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜は、一次及び二次電池用のセパレータとして有用である。このようなセパレータには、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛電池等が含まれる。ポリオレフィン微多孔膜を、特にリチウムイオン電池用セパレータとして用いる場合、その膜の特性は電池の性能に大きく影響する。特にポリオレフィン微多孔膜の透過性、機械的特性、寸法安定性、シャットダウン特性、メルトダウン特性等が、一般的に電池の性能、生産性及び安全性に影響する。
【0003】
電池に対して比較的低いシャットダウン温度及び比較的高いメルトダウン温度を有することが望まれているが、これにより一般的に電池、特に保管及び/又は使用中に高温に曝される高容量電池に対して安全性が改善される。高い電池容量を得るために高いセパレータ透過性が望まれている。セパレータ強度の改善は、電池の組立て性及び製造効率の改善をもたらすことができるので、比較的高い機械的強度を有するセパレータが望まれている。
【0004】
一般にポリエチレンのみからなるポリオレフィン微多孔膜は約150℃の比較的低いメルトダウン温度及び約140℃のシャットダウン温度を有し、またポリプロピレンのみからなるポリオレフィン微多孔膜は約155℃の比較的高いシャットダウン温度及び約165℃〜約170℃のメルトダウン温度を有する。さらにポリエチレン及びポリプロピレンの両方からなる微多孔膜が提案されている。ポリエチレン及びポリプロピレンの両方を含むポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン及びポリプロピレンの混合樹脂を用いて形成することができる。
【0005】
特開平04-126352号は、適度なシャットダウン特性及び機械的強度を有する電池用セパレータを開示している。この微孔性セパレータは、粘度平均分子量が30万以下のポリエチレン、粘度平均分子量が100万以上のポリエチレン及びポリプロピレンを含む混合物からなる。この粘度平均分子量はASTM D 4020で定義されたものである。
【0006】
特開平7-268118号は、適度な透過性、機械的強度、シャットダウン特性及びメルトダウン特性を有する微孔性二軸延伸フィルムを開示している。この二軸延伸されたフィルムは、極限粘度[η]が10 dl/g以上の高分子量ポリエチレン20〜80重量%と、極限粘度[η]が3〜15 dl/gの高分子量ポリプロピレン80〜20重量%とを含有する組成物からなる。
【0007】
特開2005-200578号は、適度な透過性、機械的強度、シャットダウン特性、耐熱性及び耐酸化性を有するポリオレフィン微多孔膜を開示している。この参照文献は、高温でも元のままの状態を維持する膜を開示している。このポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン及びポリプロピレンからなり、ポリエチレンが粘度平均分子量(Mv)5万以上30万以下の成分を含む。ポリプロピレンの含有率は7wt%以上50 wt%未満である。
【0008】
成膜性や平滑性を改善するために、上記3つの参照文献に開示されているポリオレフィン微多孔膜のポリオレフィン(特にポリプロピレン)の特性を最適化するのが望ましい。成膜性が悪いポリオレフィン微多孔膜は、スリットした時に脱落したポリプロピレン粉により膜の表面に擦傷が生じるという望ましくない性質を有する。平滑性が悪いポリオレフィン微多孔膜は、電池セパレータとして用いた場合に短絡が発生し易い。耐圧縮性及び電池生産性もまた悪影響を受ける。
【0009】
参照文献特開2002-194132号は、重量平均分子量/数平均分子量が8〜100のポリエチレン、及びMFR(Melt Flow 速度)が2.0以下のポリプロピレンからなり、ポリプロピレンの含有量が20重量%以下のポリオレフィン組成物からなるポリオレフィン微多孔膜を開示している。MFRは、ASTM D 1238に従い、230℃及び2.16kgで測定したものである。この膜は、適度な平滑性及び圧縮特性を有する。
【0010】
参照文献特開2004-196870号は、ポリエチレンと、重量平均分子量が5×105以上で、融解熱(走査型示差熱量計により測定)が90 J/g以上のポリプロピレンとからなり、ポリプロピレンの含有量が20質量%以下であるポリオレフィン微多孔膜を開示している。参照文献特開2004-196871号は、ポリエチレン及びポリプロピレンからなるポリオレフィン微多孔膜を開示している。このポリプロピレンは、5×105以上の重量平均分子量、及び163℃以上の融点(走査型示差熱量計により3〜20℃/minの昇温速度で測定)を有する。このポリプロピレンの、膜における含有量は、20質量%以下である。これらの参照文献に開示されている膜は、従来と同様の耐熱性、透過性、シャットダウン温度及びメルトダウン温度を有する。しかし特開2002-194132号、特開2004-196870号及び特開2004-196871号に開示されているポリオレフィン微多孔膜はいずれも、望まれている透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性を有していない。WO2005/103127は、特定のトルートン比を有するポリプロピレンのみからなるポリオレフィン微多孔膜を開示しているが、この膜はポリエチレンからなるポリオレフィン微多孔膜に比較してシャットダウン温度が劣っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、ポリエチレンとポリプロピレンとを含み、透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性をバランス良く有する電池用セパレータ用のポリオレフィン微多孔膜が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施態様において、本発明は透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性が改善されたポリオレフィン微多孔膜の発見に関する。
【0013】
一実施態様において、本発明は、ポリエチレン系樹脂と、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が少なくとも約15、又は少なくとも約20、又は少なくとも約30のポリプロピレン系樹脂とから、ポリオレフィン微多孔膜を製造する方法に関する。この方法は、適度な透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜を提供する。ここで用語「バランスに優れた」は、これらの性質のうちの一つを最適化することが、他の性質の重大な低下をもたらさないことを意味する。
【0014】
別の実施態様において、本発明は、ポリエチレンと、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が15以上のポリプロピレンとからなるポリオレフィン微多孔膜に関する。
【0015】
このポリプロピレンは、例えば230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において50,000 Pa・sec以上の伸長粘度を有してもよい。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、上記ポリオレフィン微多孔膜からなる電池用セパレータに関する。
【0017】
さらに別の実施態様において、本発明は、負極、正極及びこれらの間に配置される上記セパレータからなる電池に関する。
【0018】
さらに別の実施態様において、本発明は、このような電池を、例えば充電用のソース又はシンクとして使用する方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレンとを含み、透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性のバランスに優れている。かかるポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして用いることにより、容量、サイクル特性、放電特性、耐熱性及び生産性に優れた電池が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[1] ポリオレフィン微多孔膜の製造に使用する材料の構成
一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン溶液を押し出すことにより製造する。ポリオレフィン溶液は、ポリオレフィン組成物及び少なくとも一種の成膜用溶剤からなる。ポリオレフィン組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン等を、ドライブレンド、溶融混練等の慣用の方法により、混合することにより調製する。ポリオレフィン溶液中のポリプロピレンは、一般的に少なくとも約15のトルートン比を有する。ポリオレフィン溶液は、予めポリオレフィン組成物を調製せずに、各樹脂と一種又は多種の成膜用溶剤とを混合することにより調製してもよい。一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレンと、トルートン比が少なくとも約15のポリプロピレンとからなる一つの微多孔層を構成する。一実施態様において、ポリオレフィン多層微多孔膜は二層からなる。第一の層(例えば上層)は第一の微多孔層用材料からなり、第二の層(例えば下層)は、ポリエチレンと、トルートン比が少なくとも約15のポリプロピレンとからなる第二の微多孔層用材料からなる。第一の微多孔層用材料は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンからなる。さらに別の実施態様において、ポリオレフィン多層微多孔膜は三層以上からなる。これらの層は、第一の微多孔層用材料からなる外層(「表面」又は「スキン」層ともよぶ)、及びポリエチレンと少なくとも約15のトルートン比を有するポリプロピレンとからなる第二の微多孔層用材料からなる中間(又は内側)に位置する少なくとも一つの層である。ポリオレフィン多層微多孔膜の内層は、両表面層の間に位置し、少なくとも一つの内層が少なくとも一方の表面層と平面接触している。三層以上からなるポリオレフィン多層微多孔膜の別の実施態様において、表面層は第二の微多孔層用材料からなり、少なくとも一つの中間層は第一の微多孔層用材料からなる。ポリオレフィン多層微多孔膜が三層以上有する場合、第一の微多孔層用材料からなる層を少なくとも一つ、及び第二の微多孔層用材料からなる層を少なくとも一つ有する。当業者にとっては自明であるが、ポリオレフィン多層微多孔膜は、積層、共押し出し等の慣用の膜製造プロセスにより製造することができる。
【0021】
(1) ポリエチレン系樹脂
ポリオレフィン溶液を調製するために用いるポリエチレンは、一般的に一種以上のポリエチレン系樹脂により形成される。一実施態様において、ポリエチレン系樹脂は、(a) 超高分子量ポリエチレン、又は(b) 超高分子量ポリエチレンより低分子量の第二のポリエチレンからなる。ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は制限されないが、例えば約1×104〜約1×107か、約1×105〜約5×106か、約2×105〜約3×106でよい。一実施態様において、ポリエチレン系樹脂は、主としてポリエチレンからなる。別の実施態様において、ポリエチレン系樹脂は、本質的にポリエチレンからなる。さらに別の実施態様において、ポリエチレン系樹脂はポリエチレンからなる(すなわち、ポリエチレンのみを含む)。
【0022】
(a) 超高分子量ポリエチレン
一実施態様において、超高分子量ポリエチレンは約1×106以上のMwを有する。超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、第三のα-オレフィンを少量(最大5モル%)含有するエチレン・α-オレフィン共重合体でもよい。第三のα-オレフィン(エチレン以外)としては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、及びスチレンが好ましい。超高分子量ポリエチレンのMwは制限されないが、約1×106〜約15×106か、約1×106〜約5×106か、約1×106〜約3×106でよい。
【0023】
(b) 第二のポリエチレン
第二のポリエチレンのMwは制限されない。一実施態様において、第二のポリエチレンは約1×104〜約5×105のMwを有する。第二のポリエチレンは、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン及び鎖状低密度ポリエチレン、及びこれらの混合物でよい。例えば第二のポリエチレンは、高密度ポリエチレンでよい。高密度ポリエチレンのMwは約1×105〜約5×105か、約2×105〜約4×105でよい。第二のポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、第三のα-オレフィンを少量(最大5モル%)含有する共重合体でも良い。このような共重合体はシングルサイト触媒により製造することができる。
【0024】
(c) 超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンの両方
一実施態様において、ポリオレフィン溶液は、超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンの両方を含む。超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンは上記(a)及び(b)で述べた通りである。超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンの両方を用いる場合、ポリオレフィン溶液中の混合ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、慣用の方法、例えば量比及び各々の樹脂のMw/Mnを設定する方法により制御することができる。Mw/Mnは下記セクション(d)で定義されている。一実施態様において、第二のポリエチレンは高密度ポリエチレンである。超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンの量比は制限されない。例えば超高分子量ポリエチレンの含有量は、超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンの合計を基準として、例えば約1質量%以上か、約1質量%〜約60質量%でよい。
【0025】
(d) 分子量分布Mw/Mn
Mw/Mnは分子量分布の尺度であり、この値が大きいほど分子量分布の幅は大きい。ポリエチレン系樹脂のMw/Mnは限定的でないが、約5〜約300か、約5〜約100か、約5〜約30でよい。限定的でないが、Mw/Mnが約5未満だと、押出が困難なことがあり、許容できる膜厚均一性(すなわち平滑性)を有するポリオレフィン微多孔膜の製造が困難なことがある。一方Mw/Mnが約300超だと、十分な強度を有するポリオレフィン微多孔膜の製造が困難なことがある。ポリエチレン(単独重合体又はエチレン・α-オレフィン共重合体)のMw/Mnは、多段重合により適宜調整することができる。例えば、一段目で高分子量ポリマー成分を生成し、二段目で低分子量ポリマー成分を生成する二段重合を用いることができる。超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンの両方を用いる場合、Mw/Mnが大きいほど超高分子量ポリエチレンと第二のポリエチレンとのMwの差が大きく、またその逆も真である。
【0026】
(2) ポリプロピレン系樹脂
ポリオレフィン溶液はまたポリプロピレンを含む。第一段階で、ポリエチレンにポリプロピレンを混合してポリオレフィン組成物を形成すればよい場合、次の段階で、ポリオレフィン組成物に一種以上の成膜用溶剤を混合してポリオレフィン溶液を形成する。その代わりに、ポリオレフィン溶液は、ポリオレフィン組成物を形成せずに、一種以上の樹脂に一種以上の成膜用溶剤を混合することにより調製してもよい。ポリプロピレン系樹脂は、約230℃の温度及び歪み速度25 sec-1で測定した場合のトルートン比が少なくとも約15のポリプロピレンからなる。上記測定条件でのトルートン比が約15未満であると、優れた平滑性及び成膜性を有するポリオレフィン微多孔膜の製造が困難なことがある。一実施態様において、ポリプロピレンのトルートン比は、少なくとも約25か、少なくとも約30である。一般的にポリプロピレンが、(i) 少なくとも約15のトルートン比、及び(ii) 230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において少なくとも約50,000 Pa・secの伸長粘度を有する場合、ポリオレフィン微多孔膜は改善された平滑性及び成膜性を有する。例えば伸長粘度は少なくとも約60,000 Pa・secでもよい。一実施態様において、ポリプロピレン系樹脂は、主としてポリプロピレンからなる。別の実施態様において、ポリプロピレン系樹脂は、本質的にポリプロピレンからなる。さらに別の実施態様において、ポリプロピレン系樹脂はポリプロピレンからなる。
【0027】
トルートン比及び伸長粘度は、例えば流入圧力損失法を用い、コッグスウェル(Cogswell)の理論(「ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polymer Engineering and Science)」,1972年,第12巻,第64頁〜第73頁)に従って測定することができる。その方法では、直径が等しく、長さが異なる二本のダイを具備するツインキャピラリーレオメータ(型番:RH-2200、Rosand社製)を用いて、230℃での溶融ポリプロピレンの圧力損失を、剪断速度 10〜1,800 sec-1の範囲で測定する。低剪断速度域(10〜300 sec-1)では内径2.0 mm×長さ0.25 mmのダイ及び内径2.0 mm×長さ32 mmのダイを用い、高剪断速度域(300〜1,800 sec-1)では内径1.0 mm×長さ0.25 mmのダイ及び内径1.0 mm×長さ16 mmのダイを用いる。ポリプロピレンサンプルをホルダー内に静置し、230℃で3分間保持した後、各ダイにおける溶融ポリプロピレンの圧力損失を測定する。剪断速度に対しては、ラビノビッチ補正[例えば、JIS K 7199(1991)、日本レオロジー学会編「講座・レオロジー」,高分子刊行会(1993),第68頁等に記載されている]を行う。
【0028】
長さ0の仮想ダイの両剪断速度域における溶融ポリプロピレンの圧力損失p0を、下記式(1):



(ただしp1は長いダイでの圧力損失であり、p2は短いダイでの圧力損失であり、L1は長いダイの長さであり、L2は短いダイの長さである。)により算出する。
【0029】
伸長粘度ηEは、両剪断速度域において、Cogswellの理論による下記式(2):



[ただしγaは剪断速度であり、ηSは剪断粘度であり、nは式:ηS=cγan-1(cは定数である)で定義され、p0は式(1)と同じである。]により求める。剪断粘度は上記ツインキャピラリーレオメータを用いて求める。
【0030】
歪み速度εは、両剪断速度域において、下記式(3):



(ただしηS、γa及びnは式(2)と同じであり、p0は式(1)と同じである)により求める。
【0031】
剪断粘度と剪断速度(10〜1,800 sec-1)の関係を最小二乗法により下記式(4):



で近似し、伸長粘度と歪み速度(2〜180 sec-1)の関係を最小二乗法により下記式(5):



で近似する。
【0032】
式(3)及び式(4)を用いて、歪み速度25 sec-1での剪断粘度[ηS(25)(単位:Pa・sec)]を求め、式(5)を用いて、歪み速度25 sec-1での伸長粘度[ηE(25)(単位:Pa・sec)]を求める。ηE(25)及びηS(25)から、トルートン比[ηE(25)/ηS(25)]を求める。トルートン比を5回測定し、平均した値を、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるポリプロピレンのトルートン比とする。
【0033】
一実施態様において、ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体、プロピレンと第四のα-オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物のいずれでも良い。限定的ではないが、第一のポリプロピレン系樹脂中のポリプロピレンのMwは、約1×104〜約4×106か、約3×105〜約3×106でよい。第一のポリプロピレン系樹脂中のポリプロピレンのMwは、少なくとも約1.8×106でもよい。限定的ではないが、第一のポリプロピレン系樹脂中のポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は約1.01〜約100か、約1.1〜約50でよい。ポリプロピレンの結晶性が低い場合、適した空孔率の膜の製造が困難なことがあるので、ポリプロピレンの結晶性は比較的高いのが望ましい。共重合体としてはランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれも用いることができる。第四のα-オレフィンとしては、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。限定的ではないが、JIS K 6758に従って測定したポリプロピレンのMFR(Melt Flow 速度)は、例えば約0.01〜約1.0か、約0.05〜約0.4でよい。一実施態様において、ポリプロピレンは以下の性質のうち少なくとも一つを有する。
(i) Mwが少なくとも約6.5×105か、少なくとも約8×105である。
(ii) 分子量分布(Mw/Mn)が約1から約100か、5を超えないか、4を超えないか、2.5を超えない。
(iii) 融解熱ΔHmが少なくとも約90 J/gか、少なくとも約95 J/gか、少なくとも約100 J/gである。
(iv) 230℃の温度及び歪み速度25 sec-1における伸長粘度が50,000 Pa・sec以上である。
【0034】
一実施態様において、ポリプロピレンは比較的高い融点及び長い分岐鎖を有するアイソタクチックポリプロピレンである。そのようなポリプロピレンの市販品として、例えばBasell社の商品名Pro-fax PF611TM及びPro-fax HS746STMが挙げられる。
【0035】
別の実施態様において、ポリプロピレンは、例えば特開昭62-121704号、特許第2869606号等に記載の方法により製造することができる。特開昭62-121704号に記載の方法を利用すると、活性酸素存在下で直鎖状の結晶性ポリプロピレンに放射線を照射し、ポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入することにより、トルートン比が少なくとも約15のポリプロピレンを製造できる。特許第2869606号に記載の方法を利用すると、直鎖状の結晶性ポリプロピレン100 gに対して、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート1〜10 mmolを70〜150℃で10分間〜3時間反応させた後、溶融混練することにより製造できる。
【0036】
以上のようなポリプロピレンの市販品として、例えばプライムポリプロE111G、同E105GM(以上商品名、株式会社プライムポリマー製)、サンアロマーPS201A(商品名、サンアロマー株式会社製)、ニューストレンSB8000、同SH9000(以上商品名、日本ポリプロ株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
限定的ではないが、ポリプロピレンの含有量は、ポリエチレン及びポリプロピレンの重量を基準として、一般的に約2重量%〜約98重量%か、約3重量%〜約50重量%か、約5重量%〜約40重量%である。ポリプロピレンの含有量を2質量%未満とすると、十分に高いメルトダウン温度を有するポリオレフィン膜の製造が困難になることがある。
【0038】
(3) 第五のポリオレフィン
ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂に加えて、ポリオレフィン溶液は第五のポリオレフィンを含んでもよい。第五のポリオレフィンは、ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びエチレン・α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種を含有しても良い。これらは約1×104〜約4×106のMwを有するのが好ましい。ポリオレフィン溶液はまた、例えば約1×103〜約1×104のMwを有するポリエチレンワックスを含んでもよい。第五のポリオレフィン及びワックスの含有量は、ポリオレフィン微多孔膜の性能を大きく低下させない限り制限されない。例えば、ポリエチレンワックスの含有量は、第五のポリオレフィンを含むポリオレフィン溶液中のポリオレフィンを100質量%として、約20質量%未満でよい。一実施態様において、ポリエチレンワックスの含有量は10%未満である。ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル及びポリスチレンは単独重合体のみならず、第四のα-オレフィンを含有する共重合体であってもよい。
【0039】
[2] ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、(1) ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及び少なくとも一種の成膜用溶剤(プロセス溶剤又は希釈剤ともよぶ)を混合してポリオレフィン溶液を調製し、(2)ポリオレフィン溶液をダイより押し出してゲル状成形体(押出物ともよぶ)を形成し、(3) 一般的にシート形状のゲル状成形体を冷却してゲル状シート(冷却した押出物ともよぶ)を形成し、(4) 任意にゲル状シートを延伸して延伸されたゲル状シートを形成し、(5) ゲル状シート又は延伸されたゲル状シートから成膜用溶剤を除去して溶剤を除去したゲル状シートを形成し、(6) 溶剤を除去したゲル状シートを乾燥してポリオレフィン微多孔膜を形成する工程を有する。工程(6)の後に、任意の工程、例えばポリオレフィン微多孔膜を再延伸する工程(7)、ポリオレフィン微多孔膜を熱処理する工程(8)、電離放射による架橋工程(9)、親水化処理工程(10)等を行ってもよい。任意の工程(6)〜(10)の順は制限されない。これらの工程について以下詳細に説明する。
【0040】
(1) ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び成膜用溶剤を混合し、ポリオレフィン溶液を調製する工程
ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を、少なくとも一種のプロセス溶剤(希釈剤又は成膜用溶剤ともよぶ)とともに混合、例えば溶融混合し、ポリオレフィン溶液を調製する。樹脂及び溶剤は、連続して、同時に、又はこれらを組合せて添加することができる。ポリオレフィン溶液は、まず少なくとも一部の樹脂を混合してポリオレフィン組成物を調製し、次いでポリオレフィン組成物と少なくとも一種の成膜用溶剤と(任意で、残りの樹脂及び/又は追加する樹脂と)を混合することにより調製してもよい。ポリオレフィン溶液に、酸化防止剤、微粉珪酸(孔形成剤)等のような一種以上の添加剤を添加しても良い。そのような添加剤の含有量は制限されないが、膜の特性に悪影響を及ぼさない程度とする。一般的に、添加剤の含有量は、ポリオレフィン溶液の重量を基準として、合計で1重量%を超えないようにする。
【0041】
液体の成膜用溶剤を用いることにより比較的高倍率の延伸が可能となる。液体溶剤としては、例えばノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いることにより、液体溶剤の含有量が安定なゲル状成形体(ゲル状シート)を得るのが容易となる。一実施態様において、溶融混練状態ではポリオレフィン組成物と混和するが室温では固体の一種以上の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、例えばステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。固体溶剤を液体溶剤なしで使用することができるが、この場合、工程(4)においてゲル状シートを均一に延伸するのが困難になることがある。
【0042】
一実施態様において、液体溶剤の粘度は25℃で測定したときに約30 cSt〜約500 cStか、約30 cSt〜約200 cStである。粘度は特に制限されないが、25℃における粘度が約30 cSt未満では発泡し易く、混練が困難である。一方約500 cSt超では、工程(5)において液体溶剤の除去が困難なことがある。
【0043】
限定的ではないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及び成膜用溶剤は、比較的高濃度のポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン溶液を調製するために、例えば二軸押出機中で溶融混練することにより、混合することができる。成膜用溶剤は混練開始前に添加しても、混練中に添加してもよい。例えば、溶剤は、混練中に二軸押出機の途中から添加することができる。樹脂は溶融混練前にドライ混合してもよく、溶剤はドライ混合の前、途中又は後に添加することができる。
【0044】
一実施態様において、溶融混練温度はポリプロピレンのほぼ融点(Tmp)〜Tmpより約80℃上(Tmp+約80℃と表記する)か、約160℃〜約250℃か、約180℃〜約230℃である。融点は、例えばJIS K7121に基づき示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
【0045】
二軸押出機のスクリュの長さ(L)と直径(D)の比(L/D)は制限されない。一実施態様において、L/Dは約20〜約100か、約35〜約70である。L/Dを約20未満にすると、ポリオレフィン溶液の溶融混練が困難になることがある。L/Dを約100超にすると、押出機中でのポリオレフィン溶液の滞留時間が増大し過ぎることに起因する過剰な剪断による分子量の低下を防止するのが困難になることがある。二軸押出機のシリンダ内径は制限されない。一実施態様において、シリンダ内径は約40 mm〜約100 mmである。
【0046】
ポリオレフィン溶液中のポリオレフィン(超高分子量ポリエチレン、第二のポリエチレン、ポリプロピレン等)の含有量は、制限されない。一実施態様において、ポリオレフィン溶液を100質量%として、ポリオレフィンの含有量は約1質量%〜約75質量%か、約20質量%〜約70質量%である。ポリオレフィン溶液中のポリオレフィンの含有量が約1質量%未満では、ゲル状成形体の形成中におけるダイス出口でのスウェルやネックインを防止するのが困難なことがあり、そのためゲル状成形体の成形性及び自己支持性が低下することがある。一方ポリオレフィン溶液中のポリオレフィンの含有量が約75質量%を超えると、ゲル状成形体の成形が困難になることがある。
【0047】
(2) ポリオレフィン溶液をダイより押し出し、ゲル状成形体を形成する工程
一実施態様において、少なくとも一部のポリオレフィン溶液をダイから押し出し、押出物を形成する。例えばポリオレフィン溶液を押し出し、ダイから第一の押出機に直接導けばよい。別の実施態様において、別に付加した押出機(第二の、第三の等)を用いてもよい。別の押出機は、第一の押出機に直列及び/又は並列に接続すればよい。第一の押出機からの生成物は、冷却し、ペレット化してもよい。次いで、ペレットを、例えば溶融混練し、第二の押出機及びダイから押し出し、ゲル状成形体又はシートを形成することができる。ダイの形状は限定的ではない。例えばダイは、長方形の口金を有するシート用ダイ、二重円筒状の中空状ダイ、ホローダイ、インフレーションダイ等でよい。ダイのギャップは限定的ではない。シート用ダイの場合、一般的にダイのギャップは約0.1 mm〜約5mmである。押出中のポリオレフィン溶液の温度(すなわち押出温度)は限定的ではないが、一般的に約140℃〜約250℃である。押し出し速度は限定的ではないが、一般的に約0.2 m/分〜約15 m/分である。
【0048】
(3) 一般的にシート状のゲル状成形体を冷却する工程
一実施態様において、押出物(ゲル状成形体)を冷却し、ゲル状シートを形状する。冷却は、押出物が少なくともゲル化温度(すなわち、押出シートがゲル化を開始する温度)に到達するまでは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。一実施態様において、押出物を約25℃以下まで冷却する。いかなる理論又はモデルにも拘束されることは望まないが、冷却により、成膜用溶剤によって分離されたポリオレフィン領域からなるミクロ相が形成されると考えられる。一般に冷却速度が遅いと得られるゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成する擬似細胞単位も大きくなると考えられる。一方冷却速度が速いと密な細胞単位となる。冷却速度が50℃/分未満では、おそらく結晶化度の上昇により、ゲル状シートの延伸が困難になることがある。冷却方法は限定的ではない。冷却方法として、例えば冷風、冷却水等の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等を用いることができる。
【0049】
(4) ゲル状シートを延伸して延伸ゲル状シートを形成する工程
一実施態様において、得られたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸し、延伸ゲル状シートを形成する。この工程は任意でよい。いかなる理論又はモデルにも拘束されることは望まないが、ゲル状シートは成膜用溶剤を含むと、均一に延伸できると考えられる。延伸方法及び延伸倍率はいずれも特に制限されない。例えば延伸方法は、(任意での加熱を伴い又は伴わずに)シートの平面軸に沿って予め決めた倍率にゲル状シートを延伸可能ないかなる方法でもよい。一実施態様において、延伸はテンター延伸、ロール延伸又はインフレーション延伸(例えば空気を用いる)のいずれかにより行う。限定的ではないが、延伸は一軸又は二軸で行うことができる。一軸延伸は、機械(すなわち長手)方向又は横手方向への延伸を意味する。二軸延伸は、機械方向及び横手方向への逐次又は同時の延伸を意味する。ここで機械方向は、フィルム(この場合ゲル状シート)面において、フィルム形成時の移動方向にほぼ沿って配向した方向であり、すなわち製造中のフィルムの長軸方向である。横手方向は、フィルム面において、機械方向とフィルムの厚さ方向にほぼ平行な第三の軸との両方に対して直角に延びる方向である。
【0050】
一実施態様において、二軸延伸を用いる。二軸延伸(二軸配向ともよぶ)の場合、同時二軸延伸、一軸及び他の軸に沿って行う逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。一実施態様において、同時二軸延伸を用いる。
【0051】
延伸倍率は限定的ではない。一実施態様において、一軸延伸の場合、直線的な延伸の倍率は約2倍以上か、約3〜約30倍でよい。一実施態様において、二軸延伸の場合、直線的な延伸の倍率は、2つの平面方向、すなわち機械方向及び横手方向において、例えば少なくとも約3倍である。二軸延伸における面積倍率は、例えば少なくとも約9倍か、少なくとも約16倍か、少なくとも約25倍でよい。限定的ではないが、面積倍率を少なくとも約9倍とすると、比較的高い突刺強度を有するポリオレフィン微多孔膜の製造が容易となる。面積倍率を400倍超とすると、ゲル状シートの裂けを伴わないで延伸装置を操作するのが困難になることがある。
【0052】
限定的ではないが、延伸中のゲル状シートの温度(延伸温度)は、ポリオレフィン溶液の調製に用いたポリエチレンの融点を約10℃超えた温度、(Tme + 10℃)と表記することができる温度以下でよい。延伸温度は、Tcd超〜Tme未満の範囲でもよい。Tme及びTcdは、ポリオレフィン溶液の調製に用いたポリエチレンの融点及び結晶分散温度である。延伸温度が大体Tme+10℃を超えると、延伸中にゲル状シート中のポリオレフィンの分子鎖を配向するのが困難になることがある。一方延伸温度が大体Tcd未満では、破れや裂けを伴わずにゲル状シートを延伸するのが困難になり、所望の延伸倍率を達成するのに失敗することがある。一実施態様において、延伸温度は約90℃〜約140℃か、約100℃〜約130℃である。
【0053】
超高分子量ポリエチレン、第二のポリエチレン、又はポリエチレン組成物のTmeは一般的に約130℃〜約140℃であり、Tcdは約90℃〜約100℃である。TcdはASTM D4065による動的粘弾性の温度特性から求めることができる。
【0054】
いかなる理論又はモデルにも拘束されることは望まないが、以上のような延伸によりポリエチレン結晶ラメラ間及びポリプロピレン結晶ラメラ間の開裂が起こり、ポリエチレン相及びポリプロピレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成されると考えられる。その結果、延伸により、比較的大きな細孔径を有し、比較的高い機械的強度を有するポリオレフィン微多孔膜を容易に製造できる。このようなポリオレフィン微多孔膜は、電池用セパレータ用途に特に適していると考えられる。
【0055】
延伸は、厚さ方向(すなわち、ポリオレフィン微多孔膜の表面にほぼ直角な方向)に温度分布が存在する条件で行ってもよい。この場合、機械的強度が改善されたポリオレフィン微多孔膜の製造が容易となる。その方法の詳細は日本国特許第3347854号に記載されている。
【0056】
(5) 延伸したゲル状シートから成膜用溶剤を除去し、溶剤を除去したゲル状シートを形成する工程
一実施態様において、ゲル状シート(工程(4)を行った場合、延伸したゲル状シート)から、成膜用溶剤を除去(置換)し、溶剤を除去したゲル状シートを形成する。成膜用溶剤を除去(洗浄又は置換)するために、置換用(洗浄用)溶媒を用いてもよい。いかなる理論又はモデルにも拘束されることは望まないが、ゲル状シート中に生成したポリオレフィン相は、成膜用溶剤相から分離されているので、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔を有する多孔質の膜が得られると考えられる。
【0057】
成膜用溶剤を溶解又は置換することができる限り、洗浄溶媒は制限されない。適した洗浄溶媒として、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン,C6F14,C7F16等の鎖状フルオロカーボン、C5H3F7等の環状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3,C4F9OC2H5等のハイドロフルオロエーテル、C4F9OCF3,C4F9OC2F5等のパーフルオロエーテル等の易揮発性溶媒が挙げられる。
【0058】
成膜用溶剤の除去方法は制限されず、慣用の溶剤除去方法を含めて、溶剤の大部分を除去することができる限りいずれの方法でも用いることができる。例えば、延伸後のゲル状シートは、洗浄溶媒に浸漬する方法、洗浄溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せにより洗浄することができる。洗浄溶媒の使用量は限定的ではないが、一般的に成膜用溶剤の除去に用いる方法による。例えば、洗浄溶媒は、延伸後のゲル状シートの重量を基準として、約300〜約30,000質量部使用することができる。そうするのが一般に望ましいが、必ずしも延伸後のゲル状シートから全ての成膜用溶剤を除去する必要はない。溶剤除去工程後に、延伸後のゲル状シート中にかなりの量の溶剤が残留すると、所望の空孔率を有する膜の製造が困難になることがある。従って、一実施態様において、延伸後のゲル状シート中に残留する成膜用溶剤の量が、延伸後のゲル状シートの重量を基準として、約1重量%未満になるまで、延伸後のゲル状シートから成膜用溶剤を除去する。
【0059】
(6) 溶剤除去後のゲル状シートを乾燥し、ポリオレフィン微多孔膜を形成する工程
洗浄溶媒を除去することができるいずれかの方法により、ゲル状シートを乾燥することができる。例えば、膜を、加熱乾燥法又は風乾法等により乾燥することができる。乾燥中のゲル状シートの温度(すなわち、乾燥温度)は限定的ではない。例えば、乾燥温度は結晶分散温度Tcd以下でよい。例えば、乾燥温度はTcdより5℃以上低くてもよい。一実施態様において、ポリエチレンは約90℃〜約100℃の範囲の結晶分散温度を有する。
【0060】
限定的ではないが、乾燥は、乾燥後を基準として、すなわち乾燥後のポリオレフィン微多孔膜の重量を基準として、残存洗浄溶媒が約5重量%以下になるまで行うことができる。別の実施態様において、乾燥後を基準として、約3重量%以下になるまで行ってもよい。乾燥が不十分であると、一般的に微多孔膜の空孔率の望ましくない低下を招くと考えられる。乾燥が不十分であるなら、乾燥温度及び/又は乾燥時間を増加すべきである。乾燥又は他の方法により、洗浄溶媒を除去することにより、ポリオレフィン微多孔膜が形成される。
【0061】
(7) ポリオレフィン微多孔膜の再延伸
必須ではないが、透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性に重大な低下を及ぼさない範囲で、乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を少なくとも一軸に再延伸してもよい。
【0062】
必須ではないが、工程(6)で乾燥したポリオレフィン微多孔膜を延伸してもよい。延伸は、例えば一軸又は二軸で行えばよい。延伸方法は限定的ではなく、慣用の方法(例えばテンタークリップを用いるドライ延伸)を用いることができる。工程(6)の延伸を工程(4)の延伸と区別するために、工程(6)の延伸を「再延伸」、「ドライ延伸」又は「第二の延伸」と呼ぶ。工程(4)では、再延伸によりポリオレフィン微多孔膜中のポリオレフィンの分子配向が起こるので、「ドライ延伸」等の代わりに、用語「ドライ配向」を用いてもよい。
【0063】
限定的ではないが、延伸は一軸又は二軸でおこなうことができる。二軸延伸の場合、延伸は、平面的にほぼ直交する方向(例えば機械方向及び横手方向)に同時に行うか、平面上の一方向及び他の方向に逐次に行うことができる。一実施態様において、同時二軸延伸を用いる。再延伸倍率は限定的ではない。一実施態様において、一軸再延伸の場合、直線的な再延伸の倍率は、一般的に約1.1倍〜約2.5倍である。一実施態様において、二軸延伸の場合、直線的な延伸の倍率は、少なくとも平面上の二方向、例えば機械方向及び横手方向において、一般的に約1.1〜約2.5 倍である。ドライ延伸は、膜を加熱しながら(ドライ延伸温度で)行ってもよい。ドライ延伸温度は限定的ではないが、ポリオレフィン溶液の調製に用いたポリエチレンの融点Tmeとほぼ同じかそれ以下でよい。一実施態様において、ドライ延伸温度は約Tcdから約Tmeである。ドライ延伸温度がTmeより高い場合、特に乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を横手方向に延伸すると、比較的高い耐圧縮性及び比較的均一な空気透過性を有するポリオレフィン微多孔膜の製造が困難になることがある。ドライ延伸温度をTcdより低くした場合、ポリオレフィン微多孔膜中のポリオレフィンを軟化するのが困難になり、ドライ延伸中に破れを生じたり、ドライ延伸中の倍率均一性が悪化したりする。一実施態様において、ドライ延伸温度は約90℃〜約135℃か、約95℃〜約130℃である。
【0064】
一実施態様において、乾燥後の微多孔膜を熱処理してもよい。熱処理により、乾燥後のポリオレフィン微多孔膜中のポリオレフィンの結晶が安定化し、均一なラメラが形成されると考えられる。熱固定処理(HS)又は熱緩和処理のような慣用的な熱処理を用いることができる。これらは一方のみでもよいし、組合せてもよい。HSの場合、例えばテンタークリップ又はロールを用いて行うことができる。熱固定処理中の膜の温度(すなわち、「HS温度」)は約Tcd〜約Tmeでよい。一実施態様において、ドライ延伸の場合、HS温度は、例えばドライ延伸温度±5℃又はドライ延伸温度±3℃でよい。
【0065】
熱緩和処理を、HSに代えて、又はHSに加えて用いてもよい。熱緩和処理は、ポリオレフィン微多孔膜に応力(例えば張力)をかけない熱処理である点において、HSと異なる。熱緩和処理の方法は限定的ではないが、例えばベルトコンベアを有する加熱炉又はエアフローティング方式の加熱炉を用いて行うことができる。また熱固定処理後テンタークリップを緩めて、そのまま熱緩和処理を施しても良い。熱緩和処理中のポリオレフィン微多孔膜の温度(すなわち、熱緩和処理温度)は限定的ではない。一実施態様において、熱緩和処理温度は約融点Tme以下の温度か、約60℃〜約(Tme−10℃)である。用いるHS及び熱緩和処理のような熱処理により、比較的高い透過性及び強度を有するポリオレフィン微多孔膜が容易に製造できると考えられる。
【0066】
(8) 架橋処理
一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜に対して、例えばα線、β線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋処理を施してもよい。電子線の照射の場合、約0.1〜100 Mradの電子線量でよく、約100〜約300 kVの加速電圧でよい。架橋処理により、比較的高いメルトダウン温度を有するポリオレフィン微多孔膜が容易に得られる。
【0067】
(9) 親水化処理
一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜に親水化処理、すなわちポリオレフィン微多孔膜をより親水化することができる処理を施してもよい。親水化処理は、例えばモノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行えばよい。
【0068】
一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜に親水化処理を施してもよい(すなわちポリオレフィン微多孔膜をより親水化することができる処理)。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行えばよい。
【0069】
一実施態様において、界面活性剤処理の場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両イオン系界面活性剤のうちの少なくとも一種を用いることができる。一実施態様において、ノニオン系界面活性剤を用いる。界面活性剤の使用方法は限定的ではない。例えば、界面活性剤を水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールに溶解してなる溶液中に微多孔膜を浸漬するか、微多孔膜にドクターブレード法により溶液を塗布する。
【0070】
[3] ポリオレフィン微多孔膜の物性及び組成
(1) 物性
一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜は以下の物性のうちの少なくとも一つを有する。例えば、ポリオレフィン微多孔膜は、以下の物性の全てを有することができる。
【0071】
(a) 約25〜80%の空孔率
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率が約25%未満では、良好な透気度を有するポリオレフィン微多孔膜の製造が困難になることがある。一方約80%を超えると、十分に低い電気抵抗を有し、十分長持ちするバッテリーの製造が困難になることがある。
【0072】
(b) 約20〜400秒/100 cm3の透気度(膜厚20μmに換算)
ポリオレフィン微多孔膜の透気度(王研式透気度計により測定)が約20〜400秒/100 cm3であると、大容量及び良好なサイクル特性を有する電池の製造が容易である。透気度が約20秒/100 cm3未満では、良好なシャットダウン特性を有する電池の製造が困難になることがある。すなわち、電池が、例えば140℃超の過剰な運転温度でリチウムイオンの伝導をサポートできない。
【0073】
(c) 少なくとも約2,000 mN以上の突刺強度
ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度(膜厚20μmに換算)は、先端が球面(曲率半径R:0.5 mm)の直径1mmの針を2mm/秒の速度で多層微多孔膜に突刺したときの最大荷重により表される。突刺強度が約2,000 mN/20μm未満では、内部短絡を防止するのに十分な機械的保全性を有する電池の製造が困難になることがある。
【0074】
(d) 少なくとも約80,000 kPa以上の引張破断強度
ポリオレフィン微多孔膜の引張破断強度(ASTM D882により測定)が長手方向(MD)及び横手方向(TD)のいずれにおいても少なくとも約80,000 kPa以上であると、十分長持ちするバッテリーの製造が容易である。
【0075】
(e) 10%以下の熱収縮率
ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮率(膜を105℃に8時間保持した後)が長手方向及び横手方向ともに10%を超えると、特にセパレータの端部での内部短絡に対して十分に耐えうる電池の製造が困難なことがある。一実施態様において、熱収縮率は長手方向及び横手方向ともに約8%未満である。
【0076】
(f) 少なくとも約165℃以上のメルトダウン温度
一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度は約165℃〜約190℃である。メルトダウン温度は、機械方向(長手方向ともよぶ)が3mmで、横手方向が10 mmの膜の試験片を、室温での試験片の長さ(10 mm)を100%として、50%伸ばしたときの温度である。試験片は、2gの重りを付けて機械方向に引っ張りながら、ほぼ周囲の温度(又は室温)から5℃/分の速度で加熱する。
【0077】
(g) 膜厚変動率
膜厚変動率が約3μmを超えると、比較的低い耐電池短絡圧縮性のために、内部短絡に十分に耐え得る電池の製造が困難なことがある。膜厚変動率は、TD方向に30 cmの長さにわたって5mm間隔で接触厚さ計によりポリオレフィン微多孔膜の厚さを測定することにより求める。
【0078】
(h) 約2g以下のポリプロピレン粉脱落量
所望の幅の膜を得るためには、ポリオレフィン微多孔膜を機械方向に切断するのが有利である。この操作は一般的にスリッティングと呼ばれる。スリッティング中、少量のポリオレフィン粉が膜上に付着することがある。ポリプロピレン粉脱落量は、長さ500 mの微多孔膜を50 m/分の速度で半分にスリットし、各スリット膜を固定バーに摺接させたときに、固定バーに付着したポリプロピレン粉の重量である。ポリプロピレン粉脱落量が20 g超の場合、ポリオレフィン微多孔膜中に許容できないほど多い不純物を含有していることの兆候であるピンホールや黒点(不純物)のような欠陥がないかどうか調べるべきである。ポリプロピレン粉脱落量は、より高純度のポリオレフィン樹脂及び成膜用溶剤を用いたり、押し出しの前にろ過する工程を設けたり、これらを組合せることにより、改善することができる。
【0079】
(i) 厚さ
一実施態様において、微多孔膜の厚さは約3μm〜約200μmか、約5μmから約50μmである。
【0080】
(2) ポリオレフィン微多孔膜の組成
(a) ポリオレフィン
微多孔膜は、一般的にポリオレフィン溶液を形成するのに用いたポリオレフィンからなる。ポリオレフィン微多孔膜の重量を基準として、一般的に1重量%未満の少量の洗浄溶媒及び/又は成膜用溶剤も有する。製造過程で、少量のポリオレフィンの分子量が減少することがあるが、これは許容できるものである。一実施態様において、製造過程での分子量の減少があったとしても、膜中のポリオレフィンのMw/Mnとポリオレフィン溶液のMw/Mnとの差は約10%未満か、約1%未満か、約0.1%未満である。一実施態様において、ポリオレフィン微多孔膜は、(i) ポリエチレンと、(ii) 230℃及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が15以上のポリプロピレンとからなる。
【0081】
(b) ポリエチレン
ポリオレフィン微多孔膜中のポリエチレンは、(a) 超高分子量ポリエチレン又は(b) 超高分子量ポリエチレンより低い分子量を有する第二のポリエチレンの少なくとも一方からなる。一実施態様において、ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、約1×104〜約1×107か、約1×105〜約 5×106か、約2×105〜約3×106である。製造過程中のポリエチレンに化学的又は物理的な変化が起こったとしても、それは小さいものであるので、膜中の超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンは、ポリオレフィン溶液の調製について述べたものと一般的に同じである。微多孔膜中のポリエチレン量は、ポリオレフィン重量を基準として、約2重量%〜約98重量%か、約50重量%〜約97重量%か、約60重量%〜約95重量%である。
【0082】
(c) ポリプロピレン
ポリオレフィン微多孔膜中のポリプロピレンの230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比は一般的に15以上である。一実施態様において、ポリプロピレンのトルートン比は少なくとも約25か、少なくとも約30である。一実施態様において、ポリプロピレンの230℃の温度及び歪み速度25 sec-1における伸長粘度は50,000 Pa・sec以上である。別の実施態様において、伸長粘度は少なくとも約60,000 Pa secである。製造過程中にポリプロピレンの物理的及び/又は化学的な性質の変化が起こったとしても、小さいので、膜中のポリプロピレンの性質及び組成は、ポリオレフィン溶液の調製について述べたものと一般的に同じである。微多孔膜中のプロピレン量は、ポリオレフィンの重量を基準として、約2重量%〜約98重量%か、約3重量%〜約50重量%か、約5重量%〜約40重量%である。
【0083】
(3) その他のポリオレフィン
ポリエチレン及びポリプロピレンに加えて、ポリオレフィン微多孔膜は、任意で、ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びエチレン・α-オレフィン共重合体のいずれかを含んでもよい。これらは約1×104〜約4×106のMwを有するのが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜はまた、好ましくは約1×103〜約1×104のMwを有するポリエチレンワックスを含んでもよい。その他のポリプロピレン及びワックスの量は限定的ではないが、ポリオレフィン微多孔膜の物性に重大な悪化をもたらさない量であるべきである。ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル及びポリスチレンは、第四のα-オレフィンを含む単独重合体又は共重合体でもよい。微多孔膜中のその他のポリオレフィンの量は、ポリオレフィンの重量を基準として、約20重量%未満か、約10重量%未満でよい。
【0084】
[4] 電池用セパレータ
上記ポリオレフィン微多孔膜からなる電池用セパレータは、電池の種類に応じて適宜選択しうるが、約3〜約200μmの膜厚を有するのが好ましく、約5〜約50μmの膜厚を有するのがより好ましい。
【0085】
[5] 電池
一実施態様において、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、リチウムイオン電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル−水素二次電池、ニッケル−カドミウム二次電池、ニッケル−亜鉛二次電池、銀−亜鉛二次電池等の一次及び二次電池用のセパレータとして使用することができる。以下リチウムイオン二次電池を説明する。
【0086】
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、及び負極と正極との間に位置するセパレータからなる。セパレータは一般的に電解液(電解質)を含有している。電極の構造は特に限定されず、慣用の構造でよい。例えば、円盤状の正極及び負極が対向するように配設された電極構造(コイン型)、平板状の正極及び負極が、これらの間に少なくとも一枚のセパレータを介して交互に積層された電極構造(積層型)、積層された帯状の正極及び負極が巻回された電極構造(捲回型)等にすることができる。
【0087】
正極は、通常集電体と、その表面に形成され、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む層とを有する。正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物(リチウム複合酸化物)、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられ、遷移金属としては、V、Mn、Fe、Co、Ni等が挙げられる。一実施態様において、リチウム複合酸化物の好ましい例としては、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、α-NaFeO2型構造を母体とする層状リチウム複合酸化物等が挙げられる。負極は、通常集電体と、その表面に形成され、負極活物質を含む層とを有する。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック等の炭素質材料が挙げられる。
【0088】
電解液はリチウム塩を有機溶媒に溶解することにより得られる。溶媒及び/又はリチウム塩は限定的ではないが、慣用的な溶媒及びリチウム塩を使用することができる。リチウム塩としては、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、Li2B10Cl10、LiN(C2F5SO2)2、LiPF4(CF3)2、LiPF3(C2F5)3、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。有機溶媒としては、比較的高沸点(電池のシャットダウン温度に比べて)及び高誘電率の有機溶媒でよい。適した有機溶媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン等や、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低沸点及び低粘度の有機溶媒、及びこれらの混合物を含む類似のものが挙げられる。高誘電率の有機溶媒は通常粘度が高く、その逆も真であるので、高粘度及び低粘度の溶媒の混合物を用いてもよい。
【0089】
電池を組み立てる際、通常セパレータに電解液を含浸させる。これによりセパレータ(ポリオレフィン微多孔膜)にイオン透過性を付与することができる。含浸方法は限定的ではなく、慣用の含浸方法を用いることができる。例えば、含浸処理は微多孔膜を常温で電解液に浸漬することにより行えばよい。
【0090】
電池の組み立て方法は限定的ではなく、慣用の電池の組み立て方法を用いることができる。例えば円筒型電池を組み立てる場合、例えば正極シート、微多孔膜からなるセパレータ、及び負極シートをこの順に積層し、巻回して捲回型の電極組立体にする。捲回型の電極組立体の短絡を防止するため、第二のセパレータが必要なことがある。得られた捲回型の電極組立体を、電池缶に挿入し、電解液を含浸させ、次いで安全弁を備えた正極端子を兼ねる電池蓋をガスケットを介してかしめる。
【0091】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0092】
実施例1
ポリオレフィン樹脂を以下のようにドライブレンドした。重量平均分子量(Mw)が2.0×106の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)2質量%、Mwが3.5×105の高密度ポリエチレン(HDPE)88質量%、並びに230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が36で、伸長粘度が67,000 Pa・secで、MFR(JIS K 6758)が0.3のプロピレン単独重合体(PP)10質量%からなるポリオレフィン(PO)組成物100質量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン1.0質量部をドライブレンドした。ただし、UHMWPE及びHDPEからなるポリエチレン組成物について測定した融点Tmeは135℃であり、結晶分散温度は90℃であった。
【0093】
UHMWPE及びHDPEのMw及びMw/Mnは以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Waters Corporation製GPC-150C
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 wt%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
【0094】
得られた混合物35質量部を強混練タイプの二軸押出機(内径58 mm、L/D=52.5)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[50 cst(40℃)]65質量部を供給し、230℃及び250 rpmの条件で溶融混練して、ポリオレフィン溶液を調製した。このポリオレフィン溶液を二軸押出機に設けたTダイから押し出した。押し出した成形体を、10℃に温調された冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。
【0095】
テンター延伸機を用いて、115℃で長手方向(フィルムを搬送した方向)及び横手方向ともに5倍に、同時二軸延伸した。得られた延伸膜を20 cm×20 cmのアルミニウム製の枠に固定し、25℃に温調された塩化メチレン[表面張力27.3 mN/m(25℃)、沸点40.0℃]に浸漬し、100 rpmで3分間揺動しながら洗浄した。得られた膜を室温で風乾した後、テンターに固定し、125℃で10分間熱固定処理し、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0096】
実施例2
PO組成物の組成を、UHMWPE2質量%、HDPE68質量%及びPP30質量%とした以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0097】
実施例3
PO組成物の組成を、HDPE90質量%及びPP10質量%とした以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0098】
実施例4
PO組成物の組成を、HDPE70質量%及びPP30質量%とした以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0099】
比較例1
PO組成物の組成を、HDPE90質量%、及び230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が10で、伸長粘度が19,000 Pa・secで、MFR(JIS K 6758)が0.5のPP10質量%とした以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0100】
比較例2
PO組成物の組成を、HDPE70質量%、及び比較例1と同じPP30質量%とした以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0101】
比較例3
PO組成物の組成を、UHMWPE2質量%、HDPE88質量%、及び比較例1と同じPP10質量%とした以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0102】
比較例4
PO組成物の組成を、UHMWPE5質量%、HDPE90質量%、及び比較例1と同じPP5質量%とした以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0103】
比較例5
PO組成物の組成を、UHMWPE2質量%及びHDPE98質量%とし、ポリプロピレンを添加しなかった以外実施例1と同様にして、ポリオレフィン微多孔膜を作製した。
【0104】
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたポリオレフィン微多孔膜の物性を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0105】
(1) 平均膜厚(μm)
微多孔膜の30 cmの幅にわたって5mmの長手方向間隔で接触厚さ計により膜厚を測定し、平均することにより求めた。
【0106】
(2) 透気度(sec/100 cm3/20μm)
膜厚T1の微多孔膜に対してJIS P8117に準拠して測定した透気度P1を、式:P2=(P1×20)/T1により、膜厚を20μmとしたときの透気度P2に換算した。
【0107】
(3) 空孔率(%)
慣用の質量法により測定した。
【0108】
(4) 突刺強度(mN/20μm)
先端が球面(曲率半径R:0.5 mm)の直径1mmの針で、膜厚T1の微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定した。最大荷重の測定値L1を、式:L2=(L1×20)/T1により、膜厚を20μmとしたときの最大荷重L2に換算し、突刺強度とした。
【0109】
(5) 引張破断強度及び引張破断伸度
幅10 mmの短冊状試験片を用いてASTM D882により測定した。
【0110】
(6) 熱収縮率(%)
ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮率は、膜を105℃の温度に8時間保持した後、機械方向及び横手方向の収縮率をそれぞれ3回ずつ測定し、平均することにより求めた。
【0111】
(7) メルトダウン温度(℃)
ポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度は150℃以上であり、好ましくは150〜190℃である。メルトダウン温度は以下のようにして求めた。図1に示すように、MD及びTDの延伸方向に対してそれぞれ3mm及び10 mmとなるサイズの試験片TPをポリオレフィン微多孔膜1から切り出し、熱機械的分析装置(セイコーインスツル株式会社製、TMA/SS6000)を用い、試験片TPの上端部1aをホルダー2で把持し、下端部1bに2gの重りを付け、5℃/分の速度で室温から昇温する。試験片TPの延びが室温での長さ(100%)の50%に達したときの温度をメルトダウン温度とする。
【0112】
(8) 膜厚変動量
微多孔膜のTD方向に30 cmの長さにわたって5mm間隔で接触厚さ計により厚さを測定し、最大値と最小値の差を求め、膜厚変動量(μm)とした。
【0113】
(9) 成膜性
ポリオレフィン微多孔膜(長さ500 m)を50 m/分の速度で半分にスリットし、各スリット膜を固定バーに摺接させた後、リールに巻き取った。固定バーに付着した粉を回収し、その重量を測定した。付着した粉の多少により成膜性を評価した。一般に粉の付着量が少ないほど、成膜性は良好である。
【0114】
【表1】

【0115】
表1(続き)

【0116】
表1(続き)

【0117】
注:(1) 230℃の温度及び歪み速度25 sec-1での剪断粘度に対する伸長粘度の比。
(2) 230℃の温度及び歪み速度25 sec-1で測定。
【0118】
表1に示すように、実施例1〜4のポリオレフィン微多孔膜は透過性、突刺強度、平滑性及び成膜性のバランスに優れており、さらに引張破断強度、引張破断伸度、耐熱収縮性及びメルトダウン特性にも優れていた。一方、比較例1〜4のポリオレフィン微多孔膜は、いずれもポリプロピレンのトルートン比が15未満であるため、実施例1〜4のポリオレフィン微多孔膜より、成膜性及び平滑性が劣っていた。また比較例5のポリオレフィン微多孔膜は、ポリプロピレンを含まないため、実施例1〜4のポリオレフィン微多孔膜よりメルトダウン特性が劣っていた。
【0119】
最後に、本発明の実施態様について記載する。
[1] (1) (a) 230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が少なくとも約15のポリプロピレン系樹脂と、(b) (i) 少なくとも1×106のMwを有する超高分子量ポリエチレン及び/又は(ii) 超高分子量ポリエチレンより低い分子量を有する第二のポリエチレンからなるポリエチレン系樹脂とからなるポリオレフィン樹脂、及び成膜用溶剤を混合してポリオレフィン溶液を調製する工程を有するポリオレフィン物品の製造方法。
【0120】
[2] [1]の方法において、さらに(2) ポリオレフィン溶液を押し出して押出物を形成する工程、及び(3) 押出物を冷却して冷却押出物を形成する工程を有する方法。
【0121】
[3] [2]の方法において、さらに(4) 冷却押出物を少なくとも一平面方向に延伸する工程を有する方法。
【0122】
[4] [2]又は[3]の方法において、さらに(5) 冷却押出物から成膜用溶剤の少なくとも一部を除去してポリオレフィン微多孔膜を形成する工程、及び(6) ポリオレフィン微多孔膜を乾燥する工程を有する方法。
【0123】
[5] [1]〜[4]のいずれかの方法において、プロセス溶剤が、25℃の温度で測定したときに30〜500 cStの粘度を有する、脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、及び鉱油留分、並びにフタル酸エステルから選択される一種以上の成膜用溶剤、及び/又は固体溶剤である方法。
【0124】
[6] [4]の方法において、プロセス溶剤が流動パラフィンである方法。
【0125】
[7] [6]の方法において、下記条件(a)〜(f)を満たす方法。
(a) 工程(1)の溶融混練を、融点Tmp〜Tmp + 80℃の範囲の温度で、二軸押出機中で行う。
(b) ポリオレフィン溶液中のポリオレフィン含有量を、ポリオレフィン溶液の質量を基準として1〜75質量%の範囲とする。
(c) 長方形の口金を有し、約0.1 mm〜約5mmのギャップを有するシート用ダイであって、押し出し中に140〜250℃に加熱され、ポリオレフィン溶液の押出速度が0.2〜15 m/分の範囲である少なくとも一つのダイに、ポリオレフィン溶液を導く。
(d) 冷却工程(3)を、少なくとも50℃/分の冷却速度で行う。
(e) 延伸工程(4)を、約9倍〜約400倍の範囲の倍率で二軸に行う。
(f) 塩素化炭化水素、エステル、ケトン、鎖状フルオロカーボン、環状ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロエーテル及びこれらの混合物から一種以上選択される易揮発性溶媒からなる洗浄溶媒により、プロセス溶剤を延伸成形物から除去する。
【0126】
[8] [4]又は[6]の方法において、以下の工程のうちの少なくとも一つを任意の順で行う方法。
(7)(a) 乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を、約90℃〜約135℃の範囲の温度で再延伸する工程。
(7)(b) 乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を熱処理する工程。
(8) 熱処理後のポリオレフィン微多孔膜に電離放射線を照射することにより架橋処理を施す工程。
(9) ポリオレフィン微多孔膜を親水化処理する工程。
【0127】
[9] [1]〜[8]のいずれかの方法において、ポリオレフィン組成物を用いてポリオレフィン溶液を調製する方法。ポリオレフィン組成物は、(a) ポリエチレン系樹脂が1×104〜1×107の範囲の重量平均分子量を有し、(b) ポリプロピレン含有量が、ポリオレフィン組成物の質量を基準として、約2〜約98質量%の範囲であり、(c) ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びエチレン・α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む。
【0128】
[10] [4]、[6]又は[8]のいずれかのプロセスにより製造されたポリオレフィン微多孔膜。
【0129】
[11] ポリエチレンと、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が少なくとも約15のポリプロピレンとを含有するポリオレフィン。
【0130】
[12] [11]のポリオレフィンにおいて、(a) 押出物、(b) 冷却押出物又は(c) ポリオレフィン微多孔膜のいずれかの形になっているポリオレフィン。
【0131】
[13] [11]又は[12]のポリオレフィンにおいて、下記条件(a)及び/又は(b)を満たすポリオレフィン。
(a) ポリプロピレンが、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において15以上のトルートン比、及び230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において50,000 Pa・sec以上の伸長粘度を有する。
(b) ポリエチレンが、重量平均分子量が約1×104〜約1×107で、かつ(i) 超高分子量ポリエチレン、(ii) 超高分子量ポリエチレンより低い分子量を有する第二のポリエチレン、又は(iii) 超高分子量ポリエチレン及び第二のポリエチレンの混合物からなるポリエチレン系樹脂からなる。
【0132】
[14] [13]の膜において、下記条件を満たす膜。
(a) 超高分子量ポリエチレンが、少なくとも約1×106の重量平均分子量を有し、エチレン単独重合体及び/又はエチレン・α-オレフィン共重合体を含む。
(b) 第二のポリエチレンが約1×105〜約5×105の範囲の重量平均分子量を有し、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン及び鎖状低密度ポリエチレンのうちの少なくとも一種を含む。
(c) ポリエチレンが、1×106以上のMwを有する超高分子量ポリエチレン及び高密度ポリエチレンからなり、このポリエチレン組成物中の超高分子量ポリエチレン含有量が、ポリエチレンの質量を100質量%として、約1質量%〜約60質量%の範囲である。
【0133】
[15] [14]の膜において、下記条件(a)及び(b)のいずれか又は両方を満たす膜。
(a) ポリエチレンのMw/Mnが約5〜約300の範囲である。
(b) ポリプロピレンが、以下の特性(i)〜(iv)の少なくとも一つを有する。
(i) 分子量(Mw)が少なくとも約6.5×105である。
(ii) 分子量分布(Mw/Mn)が約1〜約100の範囲である。
(iii) 融解熱ΔHmが少なくとも約90 J/gである。
(iv) 230℃の温度及び歪み速度25 sec-1における伸長粘度が50,000 Pa・sec以上である。
【0134】
[16] [14]の膜において、ポリプロピレンが、プロピレン単独重合体、プロピレンと第二のα-オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物のいずれかからなる。
【0135】
[17] ポリエチレンと、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において約15以上のトルートン比を有するポリプロピレンとからなる少なくとも一層を構成する多層膜。
【0136】
[18] [17]の多層膜において、二層構成であるポリオレフィン多層微多孔膜。
【0137】
[19] [17]の多層膜において、三層構成であるポリオレフィン多層微多孔膜であって、以下の条件(i)及び(ii)のいずれか又は両方を満たす膜。
(i) ポリオレフィン多層微多孔膜の少なくとも一つの表面層がポリエチレンと230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において約15以上のトルートン比を有するポリプロピレンとからなる。
(ii) ポリオレフィン多層微多孔膜の少なくとも一つの内部層がポリエチレンと230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において約15以上のトルートン比を有するポリプロピレンとからなる。
【0138】
[20] [10]〜[19]のいずれかの膜からなる電池用セパレータ。
【0139】
[21] 電解質、負極、正極、及び負極と正極との間に位置するセパレータからなり、セパレータがポリエチレンと230℃の温度及び歪み速度25 sec-1において15以上のトルートン比を有するポリプロピレンとからなり、電解質が負極、正極及びセパレータに接触している電池。
【0140】
[22] [21]の電池において、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル−水素二次電池、ニッケル−カドミウム二次電池、ニッケル−亜鉛二次電池又は銀−亜鉛二次電池である電池。
【0141】
[23] [21]又は[22]の電池において、正極が、集電体と、その表面に形成され、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質層とからなる電池。
【0142】
[24] [21]〜[23]のいずれかの電池において、電解質が、有機溶媒に溶解したリチウム塩からなる電池。
【0143】
[25] [21]〜[24]のいずれかの電池の使用方法であって、電池を充電又は放電する使用方法。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】メルトダウン温度の測定方法を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂と、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1におけるトルートン比が15以上のポリプロピレンとを含有することを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜において、230℃の温度及び歪み速度25 sec-1における前記ポリプロピレンの伸長粘度は50,000 Pa・sec以上であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリオレフィン微多孔膜からなることを特徴とする電池用セパレータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリオレフィン微多孔膜からなるセパレータを具備することを特徴とする電池。

【図1】
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【公開番号】特開2009−84300(P2009−84300A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−227012(P2007−227012)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000221627)東燃化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】