説明

ポリオレフィン微多孔膜

【課題】蓄電デバイスのサイクル特性を向上させ得るセパレータとして好適なポリオレフィン微多孔膜を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン及びポリエチレンを含む第一の微多孔層と、当該第一の微多孔層に積層された第二の微多孔層とを含み、前記第一の微多孔層が表面層を形成すると共に、前記ポリプロピレンの融解熱が90J/g以上であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜、及び蓄電デバイス用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、非水系リチウム蓄電素子などと呼ばれるものも含む)の開発が活発に行われている。蓄電デバイスには通常、微多孔膜(セパレータ)が正負極間に設けられている。このようなセパレータは、正負極間の接触を防ぎ、イオンを透過させる機能を有する。
ここで、セパレータには、蓄電デバイスの安全性をより向上させる観点から、繰り返しの充放電の間に破膜しない一定以上の機械的特性以外に、異常加熱した場合には速やかに電池反応が停止される特性(シャットダウン特性)や高温になっても形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する性能(耐熱破膜性)等も要求される。
【0003】
このような事情のもと、例えば特許文献1には、約80℃乃至150℃の温度において寸法を実質的に保ちつつ、実質的に無孔性の膜状シートに変形する第1種層と、常温乃至上記第1種層の変成温度より少なくとも約10℃高い温度において微細孔構造ならび寸法を実質的に保つ第2種層とからなる積層シートが開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜は、ポリプロピレンおよびポリエチレンを含む第一の微多孔層と、当該第一の微多孔層に積層され、当該第一の微多孔層とは異なる第二の微多孔層とを含んで形成される。前記第一の微多孔層、及び第二の微多孔層はいずれも、ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン樹脂組成物にて形成されることが好ましい。なお、上記「異なる」とは、原料の相違であっても良いし、気孔率など、構造の相違であっても良い。
【0010】
本実施の形態において使用するポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のモノマーを重合して得られる重合体(ホモ重合体や共重合体、多段重合体等)が挙げられる。これら重合体は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
また、前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。なお、前記ポリオレフィン樹脂組成物は、前記ポリオレフィン樹脂を主成分として含むことが好ましい。本実施の形態において「主成分」とは、特定成分が、当該特定成分を含むマトリックス成分中にもある割合が好ましくは5質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよいことを意味する。
また、前記第二の微多孔層としては、ポリエチレンを主成分として含むことが好ましい。
【0011】
ポリオレフィン微多孔膜の融点を低下させる観点、又は突刺し強度を向上させる観点から、前記ポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
高密度ポリエチレンが、前記ポリオレフィン樹脂中に占める割合としては、好ましくは10質量%以上、更により好ましくは30質量%以上である。
ここで、ポリオレフィン微多孔膜の耐熱性を向上させる観点から、前記第一微多孔層を形成する前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレンを含むことが好ましい。
ポリプロピレンが、前記ポリオレフィン樹脂中に占める割合としては、好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、上限として好ましくは95質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。当該割合を40質量%以上とすることは、ポリオレフィン微多孔膜の耐熱性(又は寸法安定性)を向上させる観点から好ましい。一方、当該割合を95質量%以下とすることは、延伸性が良好であり、高突刺強度な微多孔膜を実現する観点から好ましい。
【0012】
前記ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量(後述する実施例における測定法に準じて測定される。なお、複数のポリオレフィン樹脂が用いられる場合には、各々のポリオレフィン樹脂について測定される値を意味する。)としては、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上であり、上限として好ましくは1000万以下、より好ましくは300万以下である。当該粘度平均分子量を5万以上とすることは、溶融成形の際のメルトテンションを高く維持し良好な成形性を確保する観点、又は、十分な絡み合いを付与し微多孔膜の強度を高める観点から好ましい。一方、粘度平均分子量を1000万以下とすることは、均一な溶融混練を実現し、シートの成形性、特に厚み安定性を向上させる観点から好ましい。粘度平均分子量を300万以下とすることは、より成形性を向上させる観点から好ましい。
【0013】
特に、ポリプロピレン樹脂の分子量は、良好な成形性の確保、シートの成形性、透過性の確保の観点から10万以上、60万以下がより好ましく、10万以上、50万以下がさらに好ましい。
また、ポリプロピレン樹脂の融解熱ΔHは、微多孔膜の結晶化度を高くし、孔径を均一にする観点から、70J/g以上であることが好ましく、80J/g以上がより好ましく、90J/g以上がさらに好ましい。
【0014】
前記第一の微多孔層又は第二の微多孔層に用いられる前記ポリオレフィン樹脂組成物には必要に応じて、フェノール系やリン系やイオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の各種添加剤、並びに無機充填材を混合して使用できる。
前記無機充填材としては、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、チタニウムがより好ましい。特にシリカが好ましい。
【0015】
前記無機充填材としては、分散性の観点から無機粒子が好ましく用いられる。ここで、前記無機粒子の平均粒径としては、好ましくは1nm以上、より好ましくは6nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、上限として好ましくは100nm以下、好ましくは80nm以下、更に好ましくは60nm以下である。
平均粒径を100nm以下とすることは、延伸等を施した場合でもポリオレフィン樹脂と無機粒子間での剥離が生じにくい傾向となり、マクロボイドの発生を抑制する観点から好ましい。ここで、ポリオレフィン樹脂と無機粒子間での剥離が生じにくいことは、微多孔膜を構成するフィブリル自身の高硬度化の観点から好ましく、ポリオレフィン微多孔膜の局所領域での耐圧縮性能に優れる傾向、又は耐熱性に優れる傾向が観察されるため好ましい。また、ポリオレフィン樹脂と無機粒子間とが密着していることは、蓄電デバイス用セパレータの非水電解液との親和性を向上させ、出力保持性能、サイクル保持性能等に優れたセパレータを実現する観点から好ましい。
【0016】
一方、平均粒径を1nm以上とすることは、無機粒子の分散性を確保し、局所領域における耐圧縮性を向上させる観点から好ましい。
なお、本実施の形態における平均粒径は、コールター方法により測定される値である。
また、前記無機粒子の可塑剤(後述)の吸油量としては、好ましくは150ml/100g以上であり、上限として好ましくは1000ml/100g以下、より好ましくは500ml/100g以下である。当該吸油量を150ml/100g以上とすることは、ポリオレフィン樹脂、無機粒子、可塑剤を含む混練物中に凝集物が生じることを抑制し、良好な成形性を確保する観点から好ましい。また、ポリオレフィン微多孔膜を蓄電デバイス用セパレータとして使用した場合の、非水電解液の含浸性、保液性に優れ、蓄電デバイス生産性や長期使用における性能維持を確保する観点から好ましい。一方、当該吸油量を1000ml/100g以下とすることは、ポリオレフィン微多孔膜を生産する際の、無機粒子の取り扱い性の観点から好ましい。
【0017】
なお、本実施の形態における吸油量は、FRONTEX S410可塑剤吸油量測定器により測定される値である。無機粒子5gを投入し、混練しながら可塑剤を滴下した。混練時のトルクが上昇し、最大トルクの70%に減少するときの可塑剤添加量(ml)を求め、それと無機粒子重量(g)より、次式を用いて計算した。
可塑剤吸油量(ml/100g)=可塑剤添加量/無機粒子重量×100
【0018】
前記無機粒子が、前記ポリオレフィン樹脂と当該無機粒子との総量中に占める割合としては、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、上限として通常60質量%以下、好ましくは40質量%以下である。当該割合を5質量%以上とすることは、ポリオレフィン微多孔膜を高気孔率に成膜する観点や非水電解液の含浸性の観点から好ましい。一方、当該割合を60質量%以下とすることは、高延伸倍率での成膜性を向上させ、また、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度を向上させる観点から好ましい。
【0019】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、例えば、下記(1)〜(5)の各工程を含む製造方法を用いることができる。
(1)所望の構成に応じて、各層の原料となるポリオレフィン樹脂、無機粒子、及び可塑剤を混練して混練物を形成する混練工程。
(2)前記混練工程の後、2種類以上の前記混練物を積層して、冷却固化させ、シート状積層成形体に加工する成形工程。
(3)前記成形工程の後、前記シート状成形体を面倍率が20倍以上200倍以下で二軸延伸し、延伸物を形成する延伸工程。
(4)前記延伸工程の後、前記延伸物から可塑剤を抽出して多孔体を形成する多孔体形成工程。
(5)前記多孔体形成工程の後、前記多孔体に対し、前記ポリオレフィン樹脂の融点以下にて熱処理を行い、幅方向に延伸を行う熱処理工程。
【0020】
前記(1)の工程で用いられる可塑剤としては、ポリオレフィン樹脂と混合した際にポリオレフィン樹脂の融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒であることが好ましい。また、常温において液体であることが好ましい。
前記可塑剤としては、例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジエチルヘキシルやフタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコールやステアリルアルコール等の高級アルコール類;等が挙げられる。
特にポリオレフィン樹脂にポリエチレンが含まれる場合、可塑剤として流動パラフィンを用いることは、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との界面剥離を抑制し、均一な延伸を実施する観点、又は高突刺強度を実現する観点から好ましい。また、フタル酸ジエチルヘキシルを用いることは、混練物を溶融押出しする際の負荷を上昇させ、無機粒子の分散性を向上させる(品位の良い膜を実現する)観点から好ましい。
【0021】
前記可塑剤が、前記混練物中に占める割合としては、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、上限として好ましくは80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。当該割合を80質量%以下とすることは、溶融成形時のメルトテンションを高く維持し、成形性を確保する観点から好ましい。一方、当該割合を30質量%以上とすることは、成形性を確保する観点、及び、ポリオレフィンの結晶領域におけるラメラ晶を効率よく引き伸ばす観点から好ましい。ここで、ラメラ晶が効率よく引き伸ばされることは、ポリオレフィン鎖の切断が生じずにポリオレフィン鎖が効率よく引き伸ばされることを意味し、均一かつ微細な孔構造の形成や、ポリオレフィン微多孔膜の強度乃至結晶化度の向上に寄与し得る。
【0022】
ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤とを混練する方法としては、例えば、以下の(a),(b)の方法が挙げられる。
(a)ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを押出機、ニーダー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂を加熱溶融混練させながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
(b)予めポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤を、ヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練する工程を経て、該混練物を押出機に投入し、加熱溶融させながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
【0023】
前記(b)の方法における事前混練に際しては、無機粒子の分散性を向上させ、高倍率の延伸を破膜することなく実施する観点から、ポリオレフィン樹脂と無機粒子に対し、下式(1)の範囲で設定される量の可塑剤を配合して事前混練することが好ましい。
0.6≦可塑剤重量/(可塑剤吸油量×無機粒子重量×可塑剤密度)×100≦1.2 (1)
【0024】
前記(2)の工程は、例えば、前記混練物をTダイ等を介してシート状に押し出し、熱伝導体に接触させて冷却固化させ、ゲルシートを得る工程である。当該ゲルシートは、それぞれの押出機から各層を構成するゲルシートを一体化させて一つのダイで共押出する方法、各層を構成するゲルシートを重ね合わせて熱融着する方法のいずれでも作製できる。共押出の方が、高い層間接着強度を得やすく、層間に連通孔を形成しやすいために高透過性を維持しやすく、生産性にも優れるためにより好ましい。当該熱伝導体としては、金属、水、空気、あるいは可塑剤自身等が使用できる。また、冷却固化をロール間で挟み込むことにより行なうことは、シート状成形体の膜強度を増加させる観点や、シート状成形体の表面平滑性を向上させる観点から好ましい。
【0025】
前記(3)の工程における延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等の方法が挙げられる。中でも、同時二軸延伸方法を採用することは、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度増加や膜厚均一化の観点から好ましい。
また、前記(3)の工程における面倍率としては、好ましくは20倍以上、好ましくは25倍以上であり、上限として好ましくは200倍以下、より好ましくは100倍以下である。当該面倍率を20倍以上とすることは、セパレータとして十分な強度を確保する観点から好ましい。
【0026】
前記(3)の工程における延伸温度としては、ポリオレフィン樹脂の融点温度を基準温度として、好ましくは融点温度−50℃以上、より好ましくは融点温度−30℃以上、更に好ましくは融点温度−20℃以上であり、上限として好ましくは融点温度−2℃以下、より好ましくは融点温度−3℃以下である。延伸温度を融点温度−50℃以上とすることは、ポリオレフィン樹脂と無機粒子との界面、もしくはポリオレフィン樹脂と可塑剤との界面を良好に密着させ、ポリオレフィン微多孔膜の局所的かつ微小領域での耐圧縮性能を向上させる観点から好ましい。例えば、ポリオレフィン樹脂として高密度ポリエチレンを用いた場合、延伸温度としては115℃以上132℃以下が好適である。複数のポリエチレンを混合し用いた場合は、その融解熱量が大きい方のポリエチレンの融点を基準とすることができる。
【0027】
前記(4)の工程は、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度を向上させる観点から、前記(3)の工程の後に行うことが好ましい。抽出方法としては、前記可塑剤の溶剤に対して前記延伸物を浸漬する方法が挙げられる。なお、抽出後の微多孔膜中の可塑剤残存量としては1質量%未満にすることが好ましい。
前記(5)の工程は、熱固定、及び/又は熱緩和をおこなう工程であることが好ましい。
【0028】
ここで、(5)の工程における延伸倍率としては、面倍率として好ましくは4倍未満、より好ましくは3倍未満である。面倍率を4倍未満とすることは、マクロボイドの発生や突刺強度低下を抑制する観点から好ましい。
また、熱処理温度としては、ポリオレフィン樹脂の融点温度を基準として、好ましくは100℃以上であり、上限として好ましくはポリエチレンの融点温度以下である。熱処理温度を100℃以上とすることは、膜の破れ等の発生を抑制する。一方、ポリエチレンの融点温度℃以下とすることは、ポリオレフィン樹脂の収縮を抑制し、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮率を低減する観点から好適である。
なお、前記(5)の工程の後、得られたポリオレフィン微多孔膜に対して後処理を施しても良い。このような後処理としては、例えば、界面活性剤等による親水化処理や、電離性放射線等による架橋処理、等が挙げられる。
【0029】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜について、その突刺し強度(後述する実施例における測定法に準じて測定される)は、240g/20μm以上、好ましくは400g/20μm以上であり、上限として好ましくは2000g/20μm以下、より好ましくは1000g/20μm以下である。突刺し強度を240g/20μm以上とすることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点から好ましい。また、充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制し得る。一方、2000g/20μm以下とすることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。
なお、上記突刺し強度は、延伸倍率、延伸温度を調整する等により調節可能である。
【0030】
前記微多孔膜の気孔率(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、20%以上、好ましくは35%以上であり、上限として好ましくは90%以下、好ましくは80%以下である。気孔率を20%以上とすることは、セパレータの透過性を確保する観点から好適である。一方、90%以下とすることは、突刺し強さを確保する観点から好ましい。
なお、気孔率は、延伸倍率の変更等により調節可能である。
【0031】
前記微多孔膜の、最終的な膜厚さ(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。膜厚さを2μm以上とすることは、機械強度を向上させる観点から好適である。一方、100μm以下とすることは、セパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
【0032】
前記微多孔膜のポリプロピレン及びポリエチレンを含む第一の微多孔層の膜厚さは、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは2.0μm以上であり、上限として好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下である。膜厚さを0.5μm以上とすることは、耐熱性の観点から好適である。一方、5μm以下とすることは、突刺し強さを確保する観点から好ましい。
なお、第一の微多孔層の膜厚さは、共押出し法を用いて微多孔膜を作製する場合には、押出し量を変更する等により調節可能である。また、第二の微多孔層が第一の微多孔層に狭持される2種3層構成の場合、第一の微多孔層の膜厚さとは、片面に位置する微多孔層の膜厚さを意味する。
【0033】
前記微多孔膜の透気度(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは10秒以上、より好ましくは50秒以上であり、上限として好ましくは1000秒以下、さらに好ましくは500秒以下である。透気度を10秒以上とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制する観点から好適である。一方、1000秒以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。
なお、上記透気度は、延伸温度、延伸倍率の変更等により調節可能である。
【0034】
前記微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱(後述する実施例における測定法に準じて測定される)は、好ましくは90J/g以上、より好ましくは95J/g以上であり、さらに好ましくは100J/g以上であり、上限として好ましくは165J/g以下、さらに好ましくは150J/g以下である。本実施の形態においては微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱を規定しているが、押出後の冷却条件を調整し、当該微多孔膜中のプロピレンの融解熱を特定値以上に規定することにより、ラメラ層が適度に厚くなるものと考えられる。そして、適度な厚さのラメラ層が多数生じると、延伸工程、抽出工程、熱処理工程にて孔構造骨格を維持し、膜厚方向への不均一な潰れを抑制するため、微多孔膜を形成する際に均一な大きさを有する孔部が多数生じることになるものと考えられる。そのため、微多孔膜を形成する際に均一な大きさを有する孔部が多数生じることになるものと考えられる。そのような均一な大きさの孔部を多数有する微多孔膜を電池内部に配置した場合、イオンの透過流路が粗密無く均質に存在することとなり、繰り返し充放電の際に目詰まりが生じ難く、電池としてのサイクル特性が向上するものと推察される。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱を90J/g以上とすることは、サイクル特性、耐熱性の向上の観点から好適である。一方、165J/g以下とすることは、突刺し強度を確保する観点から好ましい。
なお、上記微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱は、混練条件を調整する方法、混練後の冷却条件を調整する方法等により調節可能である。
【0035】
前記微多孔膜は、特に非水電解液を用いるような蓄電デバイス用セパレータとして有用である。また、本実施の形態の蓄電デバイスは、上述したポリオレフィン微多孔膜をセパレータに用い、正極と、負極と、電解液とを含む。
前記蓄電デバイスは、例えば、前記微多孔膜を幅10〜500mm(好ましくは80〜500mm)、長さ200〜4000m(好ましくは1000〜4000m)の縦長形状のセパレータとして調製し、当該セパレータを、正極―セパレータ―負極―セパレータ、または負極―セパレータ―正極―セパレータの順で重ね、円または扁平な渦巻状に巻回して巻回体を得、当該巻回体を電池缶内に収納し、更に電解液を注入することにより製造することができる。
なお、前記蓄電デバイスは、正極―セパレータ―負極―セパレータ、または負極―セパレータ―正極―セパレータの順に平板状に積層し、袋状のフィルムでラミネートし、電解液を注入する工程を経て製造することもできる。
【0036】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜をセパレータとして用いた蓄電デバイスは、セパレータの表面層に特定の融解熱量のポリプロピレンを含有するため、サイクル特性を向上させることができる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
【0038】
(1)粘度平均分子量(Mv)
ASRM−D4020「に基づき、デカリン溶剤における135℃での極限粘度[η]を求め、ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=0.00068×Mv0.67
ポリプロピレンのMvは次式より算出した。
[η]=1.10×Mv0.80
層のMvはポリエチレンの式を用いて算出した。
【0039】
(2)膜厚(μm)
微小測厚器(東洋精機製 タイプKBM)を用いて室温23℃で測定した。
【0040】
(3)気孔率(%)
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/混合組成物の密度)/体積×100
なお、混合組成物の密度は、用いたポリオレフィン樹脂と無機粒子の各々の密度と混合比より計算で求められる値を用いた。
【0041】
(4)透気度(sec/100cc)
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製)にて測定した。
【0042】
(5)突刺強度(g)
カトーテック製、商標、KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度(N)とした。
【0043】
(6)ポリプロピレン融解熱(J/g)
島津製作所社製DSC60を使用し測定した。ポリオレフィン微多孔膜から表層を剥離し、直径5mmの円形に打ち抜き、数枚重ね合わせて3mgとしたのを測定サンプルとして用いた。これを直径5mmのアルミ製オープンサンプルパンに敷き詰め、クランピングカバーを乗せサンプルシーラーでアルミパン内に固定した。窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで30℃から200℃までを測定し、融解吸熱曲線を得た。得られた融解吸熱曲線について、85℃〜175℃の範囲に直線ベースラインを設定し、係る直線ベースラインと吸熱融解曲線とで囲まれる部分の面積から熱量を算出し、これを試料質量当たりに換算して、さらに微多孔膜中のポリプロピレンの含有率から微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱を算出した。また、同様にしてポリプロピレン樹脂の融解熱ΔHと吸熱融解曲線における極小値の温度を融点としてポリプロピレンの融点を測定した。
微多孔膜中に複数のポリオレフィン樹脂が存在し、ピークが一部重なる場合には、島津製作所製解析ソフトTA−60を用いて、85℃〜175℃の範囲における吸熱融解曲線の極大値と極大値、または極大値と吸熱融解曲線とベースラインが接する点を直線で結び、その直線と吸熱融解曲線で囲まれる部分の面積から熱量を算出し、同様に微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱を算出した。このとき、微多孔膜の吸熱融解曲線にて、極小値における温度がポリプロピレン樹脂の融点により近い値を持つもので、上記解析方法から求められる面積から算出された融解熱を微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱とした。
【0044】
(7)表面層膜厚(μm)
全層の膜厚に表面層の全層に対する押出量の割合を掛けて算出した。
【0045】
(8)サイクル特性(%/100回)
エチレンカーボネート(EC):メチレンカーボネート(MEC)=1:2(重量比)からなる溶媒にLiPF1Mを添加した電解液を調整し、負極に炭素電極及び正極にLiCoOを用いたリチウムイオン電池を作製した。この電池を4.2Vに充電し、その後放電させる操作を25℃で100回繰り返すサイクル試験を行い、サイクル試験後の電池容量変化を調べた。
【0046】
(9)熱破膜温度(℃)、耐熱破膜性
厚さ10μmのニッケル箔を2枚(A、B)用意し、一方のニッケル箔Aをスライドガラス上に、縦10mm、横10mmの正方形部分を残してテフロン(登録商標)テープでマスキングすると共に固定する。
熱電対を繋いだセラミックスプレート上に、別のニッケル箔Bを載せ、この上に規定の電解液で3時間浸漬させた、測定試料の微多孔膜を置き、その上からニッケル箔を貼りつけたスライドガラスを載せ、更にシリコンゴムを載せる。
これをホットプレート上にセットした後、油圧プレス機にて1.5MPaの圧力をかけた状態で、2℃/minの速度で昇温した。この際のインピーダンス変化を交流1V、1kHzの条件下で測定した。この測定において、インピーダンスが1000Ωに達した時点の温度を孔閉塞温度とし、孔閉塞状態に達した後、再びインピーダンスが1000Ωを下回った時点の温度を熱破膜温度とした。
【0047】
なお、規定の電解液の組成比は以下の通りである。
溶媒の組成比(体積比):炭酸プロピレン/炭酸エチレン/δ−ブチルラクトン=1/1/2
溶質の組成比:上記溶媒にてLiBF4を1mol/リットルの濃度になるように溶解させる。
熱破膜温度が200℃以上のものを耐熱破膜性○、170℃以上200℃未満のものを△、170℃未満のものを×とした。
【0048】
(10)製膜性
製膜中に膜250mを目視で観察し、無機粒子の凝集物やゲル状物がなく、延伸時に破断が起きないものを○、無機粒子の凝集物やゲル状物は見られるが延伸時に破断が起きないものを△、無機粒子の凝集物やゲル状物が見られ、延伸時に破断が起きるものを×とした。
【0049】
[実施例1]
表面層の原料として、ポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)25.6質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)6.4質量部、シリカ(吸油量200mL/100g、平均粒径15nm)8質量部、核剤としてビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトールを0.3質量部、酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2質量部、可塑剤として、流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.90cSt、密度0.868)9.6質量部をミキサーで攪拌し原料を調整した。中間層の原料として、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)42質量部、酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2質量部配合し原料を調整した。各配合物は2台の口径25mm、L/D=48の二軸押出機フィーダーを介して投入した。
さらに、表面層には、表面層に用いられる前記ポリプロピレン25.6質量部に対して流動パラフィン45質量部、中間層には、中間層に用いられる前記高密度ポリエチレン42質量部に対して流動パラフィン58質量部を、サイドフィードでそれぞれの押出機に注入し、両表面層、中間層の押出量がそれぞれ、1時間当たり4kg、16kgとなるように調整し、200℃、200rpmの条件で混練した後、押出機先端に取り付けた共押出(二種三層)が可能なTダイから240℃の条件で押出した。ただちに、70℃に調温したキャストロールで冷却固化させ、厚さ1.4mmのシートを成形した。このシートを同時二軸延伸機で126℃の条件で7×7倍に延伸した後、塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後乾燥し、テンター延伸機により125℃の条件で横方向に1.7倍延伸した。その後、この延伸シートを127℃で23%幅方向に緩和して熱処理を行い、表面層の二層が同一の組成で、中間層が異なる組成の二種三層構造を有する微多孔膜を得た。得られた微多孔膜は膜厚23.5μm、気孔率47.4%、透気度256sec/100cc、突刺強度450gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0050】
[実施例2]
表面層の原料のポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)を19.2質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)を12.8質量部とした以外は実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚17.6μm、気孔率44.0%、透気度257sec/100cc、突刺強度432gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0051】
[実施例3]
表面層の原料のポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)を9.6質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)を22.4質量部とした以外は実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚16.8μm、気孔率43.1%、透気度240sec/100cc、突刺強度487gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0052】
[実施例4]
表面層の原料のポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)を11.2質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)を2.8質量部、シリカ(吸油量200mL/100g、平均粒径15nm)を26質量部とした以外は実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚16.5μm、気孔率48.0%、透気度205sec/100cc、突刺強度462gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0053】
[実施例5]
ポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)25.6質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)6.4質量部、シリカ(吸油量200mL/100g、平均粒径15nm)8質量部、核剤としてビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトールを0.3質量部、酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2質量部、可塑剤として、流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.90cSt、密度0.868)54.6質量部をミキサーで攪拌し原料を調整した。配合物をバッチ式溶融混練機(東洋精機社製:ラボプラストミル)を用いて200℃・50rpmで10分間混練した。得られた混練物を200℃、5MPaの過熱プレスで成形し3分間そのまま熱処理をした後、水冷プレスで5Mpaにて冷却・プレスし、厚さ150μmのシート(A)を作製した。
同様に、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)42質量部、酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2質量部、流動パラフィン58質量部を配合し原料を調整した。配合物をバッチ式溶融混練機(東洋精機社製:ラボプラストミル)を用いて200℃・50rpmで10分間混練した。得られた混練物を200℃、5MPaの過熱プレスで成形し3分間そのまま熱処理をした後、水冷プレスで5Mpaにて冷却・プレスし、厚さ1100μmのシート(B)を作製した。
シートAおよびBをA/B/Aとなるように積層し、ヒートシール温度130℃、ヒートシール圧力5MPaの条件にて圧力接合した。得られた積層膜を同時2軸延伸機(東洋精機社製)を用いて7×7倍に126℃で延伸し、その後塩化メチレンでパラフィン油を抽出除去し、乾燥させた後、同時2軸延伸機により125℃の条件で横方向に1.7倍延伸した。その後、この延伸シートを127℃で23%幅方向に緩和して熱処理を行い、表面層の二層が同一の組成で、中間層が異なる組成の二種三層構造を有する微多孔膜を得た。得られた微多孔膜は膜厚23.1μm、気孔率46.8%、透気度266sec/100cc、突刺強度470gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0054】
[実施例6]
表層原料を、ポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)を32.0質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)を8.0質量部、核剤としてビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトールを0.3質量部、酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2質量部、可塑剤として、流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.90cSt、密度0.868)9.6質量部をミキサーで攪拌し原料を調整した以外は実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚21.1μm、気孔率45.4%、透気度302sec/100cc、突刺強度460gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0055】
[実施例7]
表層原料をポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量30万、ΔH:80J/g)25.6質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)6.4質量部、(吸油量200mL/100g、平均粒径15nm)8質量部、中間層原料を、高密度ポリエチレン(密度:0.95g/cm、粘度平均分子量25万)19.0質量部、高密度ポリエチレン(密度:0.95g/cm、粘度平均分子量70万)19.0質量部、ポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)2.0質量部として調整し、押出時のサイドフィードからの流動パラフィン注入量を中間層に65質量部とした以外は、実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚23.6μm、気孔率48.4%、透気度255sec/100cc、突刺強度490gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0056】
[実施例8]
表層原料を高密度ポリエチレン(密度:0.95g/cm、粘度平均分子量25万)19質量部、高密度ポリエチレン(密度:0.95g/cm、粘度平均分子量70万)19質量部、ポリプロピレン(密度:0.95g/cm、粘度平均分子量40万)2質量部、中間層原料をポリプロピレン(密度0.90g/cm、粘度平均分子量40万、ΔH:92J/g)9.6質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量25万)2.6質量部、高密度ポリエチレン(密度0.95g/cm、粘度平均分子量200万)3.8質量部、シリカ(吸油量200mL/100g、平均粒径15nm)24質量部、可塑剤として、流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.90cSt、密度0.868)9.6質量部をミキサーで攪拌し原料を調整し、さらに、押出時のサイドフィードからの流動パラフィン注入量を表面層に75質量部、中間層に40質量部として、両表面層、中間層の押出量がそれぞれ、1時間当たり6kg、8kgとなるように調整した以外は、実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚18.0μm、気孔率68.0%、透気度230sec/100cc、突刺強度320gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0057】
[実施例9]
80℃に調温したキャストロールで冷却固化させ、シートを作製する以外は、実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚23.0μm、気孔率48.5%、透気度236sec/100cc、突刺強度420gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0058】
[比較例1]
Tダイから押出す条件を220℃、キャストロールの温度を30℃とした以外は実施例1と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚17.6μm、気孔率44.4%、透気度321sec/100cc、突刺強度477gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0059】
[比較例2]
Tダイから押出す条件を220℃、キャストロールの温度を30℃とした以外は実施例2と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚17.0μm、気孔率44.4%、透気度279sec/100cc、突刺強度479gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0060】
[比較例3]
Tダイから押出す条件を220℃、キャストロールの温度を30℃とした以外は実施例6と同様に微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜は膜厚20.3μm、気孔率42.4%、透気度402sec/100cc、突刺強度430gであった。微多孔膜中のポリプロピレンの融解熱、サイクル特性、耐熱破膜性、製膜性については、表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1の結果から、本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜は、表層に含まれるポリプロピレンの融解熱が特定範囲であるため、当該微多孔膜を用いた電池のサイクル特性は良好であり、実用性に富むものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン及びポリエチレンを含む第一の微多孔層と、当該第一の微多孔層に積層され、当該第一の微多孔層とは異なる第二の微多孔層とを含み、
前記第一の微多孔層が表面層を形成すると共に、
前記微多孔層中のポリプロピレンの融解熱が90J/g以上であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
前記ポリプロピレンが前記第一の微多孔層に用いられるポリオレフィン樹脂の総量中に占める割合が、40〜95質量%である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
前記第一の微多孔層が更に無機粒子を含むと共に、当該無機粒子が前記第一の微多孔層に用いられるポリオレフィン樹脂と無機粒子との総量中に占める割合が5〜60質量%である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項4】
前記第一の微多孔層の層厚が、0.2μm以上5μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項5】
前記第二の微多孔層が、ポリエチレンを主成分として含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を用いてなる蓄電デバイス用セパレータ。

【公開番号】特開2009−266808(P2009−266808A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63987(P2009−63987)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】