説明

ポリオレフィン系接着剤組成物

【課題】自動車内装材の構成部材であるポリオレフィン成形品と、ポリウレタンフォーム付きファブリック等との接着に好適に使用可能な接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂と、(B)該変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して反応性を有する官能基および反応性シリル基を有する化合物とを含んでなるか、および/または該変性ポリオレフィン樹脂(A)と該化合物(B)との反応生成物を含んでなる、接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系接着剤組成物、さらに詳細には、自動車内装材の構成部材であるポリオレフィン成形品と、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォーム付きファブリック等とを接着する場合に特に有用なポリオレフィン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車内装材(例えば、天井、ドアトリム、インパネ、ダッシュサイレンサー、センターコンソール、ピラー、オーナメント、リアパーセル、座席シート等)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの成形品と、ポリオレフィン表皮材、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォーム付きファブリック等の加飾材とを、真空成形工法、プレス圧着工法等を用いて、接着剤で接着することにより製造されている。従来、このような接着には、ポリクロロプレン系接着剤が使用されていた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、環境安全性の観点から、ポリクロロプレン系接着剤からハロゲン非含有接着剤への代替が望まれている。
【0003】
ポリクロロプレン系接着剤の代替として、シラン変性したスチレン共重合体をベースポリマーとしたスチレン樹脂系接着剤が開発されている(例えば、特許文献2参照)。このようなスチレン樹脂系接着剤は、ハロゲンを含有しないが、ポリオレフィンに対する耐熱接着性が十分ではなく、耐熱接着性を改良すべくオレフィン系密着剤を添加した場合、相分離が起こる等の問題があった。さらに、このような接着剤は、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォーム付きファブリック等に対する接着性に乏しいという問題があった。
【0004】
一方、ポリオレフィン系接着剤組成物として、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂をベースポリマーとした接着剤組成物が開発されている(例えば、特許文献3および4参照)。しかしながら、これらのポリオレフィン系接着剤組成物は、ホットメルト接着剤組成物であり、接着剤のベースポリマーに使用した場合、接着剤をスプレーおよび刷毛等で被着体へ塗布するとき、および接着剤を塗布した被着体を貼り合わせるときに、被着体を加熱する必要があることから、被着体の材質が制限されたり、溶剤等を溶媒に用いた接着剤組成物の場合でも加熱しなければならず、危険な作業を強いられたりする問題があった。
【特許文献1】特開平5−140522号公報
【特許文献2】特開2000−303047号公報
【特許文献3】特開2001−131250号公報
【特許文献4】特開2004−292716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ポリオレフィン材料ばかりでなく、ポリウレタン材料に対しても優れた接着性を示し、かつ、優れた耐熱性も示す、自動車内装材の構成部材であるポリオレフィン成形品と、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォーム付きファブリック等との接着に好適に使用することができる接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を進めたところ、(A)不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂と、(B)該変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して反応性を有する官能基および反応性シリル基を有する化合物とを含んでなるか、および/または該変性ポリオレフィン樹脂(A)と該化合物(B)との反応生成物を含んでなる接着剤組成物によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明には、以下の実施態様が含まれる。
〔1〕(A)不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂と、
(B)該変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して反応性を有する官能基および反応性シリル基を有する化合物と
を含んでなるか、および/または
該変性ポリオレフィン樹脂(A)と該化合物(B)との反応生成物
を含んでなる、接着剤組成物。
〔2〕変性ポリオレフィン樹脂(A)のガラス転移温度が、−50〜80℃である、上記〔1〕に記載の接着剤組成物。
〔3〕化合物(B)が、反応性シリル基を有するラジカル重合性化合物である、上記〔1〕または〔2〕に記載の接着剤組成物。
〔4〕不飽和カルボン酸および/またはその誘導体が、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸誘導体である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の接着剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接着剤組成物は、ポリオレフィン材料ばかりでなく、ポリウレタン材料に対しても優れた接着性を示し、かつ、優れた耐熱性も示すので、自動車内装材の構成部材であるポリオレフィン成形品と、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォーム付きファブリック等との接着に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いる不飽和カルボン酸およびその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を、ラジカル重合性の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体でグラフト変性することにより得られるものが挙げられる。
【0010】
上記変性ポリオレフィン樹脂(A)におけるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ヘキサジエン−スチレン共重合体、スチレン−ペンタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(RPDM)等が挙げられ、好ましくは、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
なかでも、オレフィン樹脂への接着性の点から、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等が特に好ましい。
また、上記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された後(変性ポリオレフィン樹脂(A))の重量平均分子量が後述する範囲になるようなものであることが好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量測定法により決定される値を意味する。
【0011】
上記変性ポリオレフィン樹脂(A)における不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、カルボン酸基を分子中に1つ以上有するラジカル重合性の不飽和化合物およびその誘導体等が挙げられ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基等のラジカル重合性基が挙げられる。該不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。また、該不飽和化合物の誘導体としては、例えば、酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクルリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、Nーブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム、酢酸ビニル等が挙げられる。これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。なかでも、オレフィン以外の被着体、例えば、ポリウレタン等への接着性の点から、(メタ)アクリル酸およびその誘導体が好ましく、特に2−エチルヘキシルアクリレート、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0012】
上記変性ポリオレフィン樹脂(A)中の不飽和カルボン酸および/またはその誘導体の変性量(含有量)は、樹脂全体を基準にして、好ましくは1〜95重量%、特に好ましくは10〜90重量%である。変性量が1重量%未満である場合、溶剤への溶解性の低下からスプレーにて塗布するときのスプレー性が低下し、接着剤の分離が発生する虞があり、さらに、オレフィンに対する接着性の低下、および被着体への粘着性、濡れ性の低下を招く虞がある。一方、95重量%を超える場合、被着体としてのポリオレフィン樹脂への接着性の著しい低下を招く虞がある。
なお、上記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体の含有量(変性量)は、重合時の配合比率によって決定することができる値を意味する。
【0013】
上記変性ポリオレフィン樹脂(A)は、例えば、ポリオレフィン樹脂のグラフト変性に用いる公知の方法、例えば、溶融法または溶液法等で製造することができる。
溶融法では、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸を有機過酸化物と混練し、溶融混合して反応させることにより得られる。これは、例えば、押出機、ブラベンダー、ニーダー、インテンシブミキサー、ブラストミル等を用いて行うことができる。混練温度は、使用するポリオレフィンの融点以上ないし300℃以下の温度範囲が好ましい。
溶液法では、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸を有機溶媒に溶解し、有機過酸化物を添加して加熱することにより得ることができる。使用する有機溶媒としては、炭素数6〜12の炭化水素、または、炭素数6〜12のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。また、反応温度は、使用するポリオレフィンが溶解する温度が好ましい。
【0014】
上記変性ポリオレフィン樹脂(A)は、好ましくは−50〜80℃、特に好ましくは−30〜70℃のガラス転移温度(Tg)を有する。Tgが−50℃未満である場合、接着剤として使用したときに、凝集破壊により接着性の低下を招く虞があり、一方、80℃を超える場合、接着剤として使用したときに、被着体の濡れ性の低下から接着強度の低下を招き、特に貼り合わせまでのオープンタイムが長くなると接着力の著しい低下を招く虞がある。
なお、本発明におけるガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性による測定によって決定することができる値を意味する。
【0015】
上記変性ポリオレフィン樹脂(A)は、好ましくは5000以上、特に好ましくは10000以上の重量平均分子量を有する。重量平均分子量が5000未満である場合、耐熱性が著しく低下する虞がある。一方、重量平均分子量の上限は、特に限定されないが、100000を超える場合、溶剤への溶解性の低下および本発明の接着剤の被着体への濡れ性の低下を招く虞があり、好ましくは70000以下である。
【0016】
本発明に用いる上記変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して反応性を有する官能基および反応性シリル基を有する化合物(B)は、上記変性ポリオレフィン樹脂(A)と反応することによって、該変性ポリオレフィン樹脂(A)に湿気架橋基を付与するために使用される。
上記化合物(B)としては、上記変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して反応性を有する官能基および反応性シリル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、反応性シリル基を有するラジカル重合性化合物等が挙げられ、具体的には、ビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、スチリルシラン(例えば、p−スチリルトリメトキシシラン等)、メタクリロキシシラン(例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロキシシラン(例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)等が挙げられる。これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
なかでも、上記変性ポリオレフィン樹脂(A)との反応性の点から、メタクリロキシシランが好ましい。
【0017】
本発明の接着剤組成物中の上記化合物(B)の含有量は、上記変性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部(固形分)に対して、好ましくは5重量部以上、特に好ましくは20重量部以上である。上記変性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、上記化合物(B)が5重量部未満の場合、接着剤の耐熱性能の低下を招く虞がある。(B)の含有量に特に上限はないが、100重量部を超える場合、沈降物が発生する虞がある。
【0018】
本発明の接着剤組成物において、上記変性ポリオレフィン樹脂(A)および上記化合物(B)は、それらの一部または全部が、それらの反応生成物として含まれていてもよい。
本発明の接着剤組成物において、好ましくは、上記化合物(B)の少なくとも一部、例えば、上記化合物(B)全体の5〜100重量%、好ましくは20〜100重量%が上記変性ポリオレフィン樹脂(A)との反応生成物として含まれていることが好ましい。この場合、湿気硬化性が可能となり耐熱性も付与できる。また、この場合、接着剤組成物のコストの点で有利になる。
【0019】
上記反応生成物は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂(A)と化合物(B)を、重合開始剤を使用して、加熱(例えば60〜90℃)攪拌条件下、60〜360分間反応させることにより得ることができる。
上記重合開始剤は、例えば、加熱によりラジカルを生成する化合物であればよく、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシケタール等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
なかでも、重合性と取り扱い時の安全性の点から、60〜100℃で半減期を有する重合開始剤、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等が好ましい。
上記反応における重合開始剤の使用量は、反応速度の観点から、上記変性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部(固形分)に対して、好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。
【0020】
本発明の接着剤組成物は、特に未反応の変性ポリオレフィン樹脂(A)および化合物(B)を含む場合、上記のような重合開始剤をさらに含んでいてもよい。この場合、該接着剤組成物中の重合開始剤の含有量は、上記反応における使用量と同様である。
【0021】
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて、反応停止剤、脱水剤、老化防止剤、溶剤、粘着付与樹脂、着色剤等の当該分野で既知の各種添加剤を、本発明の接着剤組成物の目的を達成することができる範囲内の量で含有していてもよい。
上記反応停止剤としては、例えば、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、フェノチアジン、ビス−α−メチルベンジルフェノチアジン、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、t−ブチルカテコール等が挙げられる。
上記脱水剤としては、例えば、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物が挙げられる。
上記老化防止剤としては、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、チオカルボニル系老化防止剤、ジアニール−P−フェニレンジアミン系老化防止剤、フェニルイソプロピル−P−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤等が挙げられる。
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
上記粘着付与樹脂としては、例えば、石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの樹脂の変性物等が挙げられる。
上記着色剤としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染顔料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、酸性染料、塩基性染料等が挙げられる。
【0022】
本発明の接着剤組成物は、上記成分(A)および(B)並びに他の成分(重合開始剤、添加剤等)を常法にしたがって順次添加し、混合することによって製造することができる。ここで、成分(A)および(B)は、必要に応じて、他の成分を混合する前に予め反応させておいてもよく、他の成分(特に重合開始剤)を混合した後に反応させてもよい。
【0023】
本発明の接着剤組成物は、通常、これを常法(例えば、スプレー法)にしたがって被着体上に塗布し、乾燥(通常、室温〜120℃にて数秒間〜10分間)し、空気中の湿気により硬化(通常、5〜100%RH(相対湿度)、−10〜100℃にて2〜48時間)させることができる。
【0024】
本発明の接着剤組成物は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン材料ばかりでなく、ポリウレタンフォーム等のポリウレタン材料に対しても優れた接着性を有し、かつ、耐熱性にも優れているので、自動車内装材、例えば、天井、ドアトリム、インパネ、ダッシュサイレンサー、センターコンソール、ピラー、オーナメント、リアパーセル、座席シート等、の構成部品であるポリオレフィン成形品と、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンフォーム付きファブリック等とを真空成形法、圧着工法等を用いて接着するのに特に適している。
【実施例】
【0025】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例および比較例の接着剤組成物の評価項目および評価方法を以下に示す。
〔評価項目および評価方法〕
(1)初期クリープ
下記の条件にて接着剤組成物を塗布および乾燥して基材と表皮材とを貼り合せ、60℃にて5分間(荷重:200g)後の剥離長さ(mm)を測定した。
(2)常態剥離
下記の条件にて接着剤組成物を塗布および乾燥して基材と表皮材とを貼り合せ、20℃、65%RH(相対湿度)にて24時間養生した後の剥離強度(N/25mm)を測定し、次のように評価した。
CF:接着剤の凝集破壊
FAF:表皮側からの界面破壊
FMB:表皮材の材料破壊
BAF:基材側からの界面破壊
(3)耐熱クリープ
下記の条件にて接着剤組成物を塗布および乾燥して基材と表皮材とを貼り合せ、20℃、65%RH(相対湿度)にて24時間養生し、80℃にて24時間(荷重:50g、100g、150g)後の剥離長さ(mm)を測定した。
(貼り合せ条件)
被着体:基材PP(ポリプロピレン)×表皮材ポリウレタンフォーム付きファブリック
接着剤組成物の塗布量:150g/m
乾燥:80℃×2分間
オープンタイム:室温×1分間
圧締:0.2MPa×10秒間
【0026】
〔実施例1〜3並びに比較例1および2〕
下記表1に示す各成分(重量部)を配合し、各接着剤組成物を製造した。得られた各接着剤組成物について、上記のように評価を行った。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表中、
(A1)アクリル変性オレフィン樹脂:東洋化成工業(株)製「NP−1000」(メチルメタクリレート(MMA)(75重量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)(25重量%)で変性されたプロピレン−ブテン共重合体;アクリル変性量85重量%、Tg:40〜50℃、重量平均分子量60000、樹脂固形分30重量%)
(A2)アクリル変性オレフィン樹脂:東洋化成工業(株)製「NP−1001」(MMA(50重量%)/EHA(50重量%)で変性されたプロピレン−ブテン共重合体;アクリル変性量85重量%、Tg:20〜30℃、重量平均分子量60000、樹脂固形分30重量%)
(A3)アクリル変性オレフィン樹脂:東洋化成工業(株)製「NP−3001」(MMA(75重量%)/EHA(25重量%)で変性されたプロピレン−ブテン共重合体;アクリル変性量70重量%、Tg:0〜10℃、重量平均分子量60000、樹脂固形分30重量%)
(A4)塩素変性オレフィン樹脂:日本製紙ケミカル(株)製「892LS」(塩素で変性されたポリプロピレン;塩素変性量22重量%、Tg:15〜25℃)
(B)シランカップリング剤:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業会社製「KBM−503」
(C)過酸化物:ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂(株)製「ナイパーFF」
(D)反応停止剤:ハイドロキノン
(E)安定剤:メチルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「KBM−13」
(F)溶剤:酢酸エチル
(G)粘着付与樹脂:重合ロジンエステル、荒川化学工業(株)製「ペンセルD−160」
(H)着色剤:オリエント化学工業(株)製「オイルブルー2N」。
【0029】
上記表1に示されるように、実施例の接着剤組成物においては、ポリオレフィン材料ばかりでなく、ポリウレタン材料に対しても優れた接着性を示し、かつ、優れた耐熱性も示すことが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性された変性ポリオレフィン樹脂と、
(B)該変性ポリオレフィン樹脂(A)に対して反応性を有する官能基および反応性シリル基を有する化合物と
を含んでなるか、および/または
該変性ポリオレフィン樹脂(A)と該化合物(B)との反応生成物
を含んでなる、接着剤組成物。
【請求項2】
変性ポリオレフィン樹脂(A)のガラス転移温度が、−50〜80℃である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
化合物(B)が、反応性シリル基を有するラジカル重合性化合物である、請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
不飽和カルボン酸および/またはその誘導体が、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸誘導体である、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−59319(P2010−59319A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227077(P2008−227077)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】