説明

ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子及びその製造方法

【課題】 他の界面活性剤に比べ安全性が高いが通常湿度雰囲気下での帯電防止性能に劣るいわゆる高級脂肪酸のグリセリンエステルを用いながらも、通常型内発泡成形体を使用すると考えられる50%程度の湿度雰囲気下で安定的に良好な帯電防止性能を発揮するポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得ることのできるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を提供すること。
【解決手段】 炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルと炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを含有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、良好な帯電防止性能を有する型内発泡成形体に好適に使用しうるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡体は緩衝性、断熱性等の物性に優れる事から、包装材、緩衝材、断熱材、建築部材など様々な分野で使用されている。特にポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を金型に充填し、水蒸気などで加熱して予備発泡粒子同士を融着せしめて所定形状の発泡体を得る型内発泡成形法は、複雑な形状の製品を比較的容易に得ることができるため、多くの用途に用いられている。
【0003】
これら用途の一つであるOA機器などの電子部品や機械部品の緩衝包装材には、埃や静電気を嫌う場合があり、この用途向けには帯電防止性能を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子からなる型内発泡成形体が用いられている。
【0004】
型内発泡成形体に帯電防止性能を付与する一般的な方法としては、型内発泡成形体表面に界面活性剤を塗布する方法や、あらかじめ樹脂に界面活性剤を練りこんだものから型内発泡成形体を製造する方法が代表的である。
【0005】
後者の、あらかじめ樹脂に界面活性剤を練りこんだものから型内発泡成形体を製造する方法は、型内発泡成形体表面に界面活性剤を塗布する方法に比べ、帯電防止性能の持続性に優れ、作業方法が簡略化しやすいことから良く用いられている。
【0006】
帯電防止性能を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子として、帯電防止能を有する平均分子量200〜1000のノニオン系界面活性剤を0.1〜5重量%含有する無架橋ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂として使用する技術が開示されている(特許文献1)。
【0007】
また帯電防止能を有する平均分子量200から1000のノニオン系界面活性剤を0.1〜5重量%含有し、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線に10〜30J/gの熱量の高温ピークが現れるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する技術が開示されている(特許文献2)。
【0008】
これら技術では、特定のノニオン系界面活性剤を用いることにより、帯電防止性能を有する界面活性剤が多量にブリードすることなく、必要な帯電防止性能を有する型内発泡成形体を得ることができるとし、そのノニオン系界面活性剤の一例として高級脂肪酸のグリセリンエステルなどが示されている。
【0009】
高級脂肪酸のグリセリンエステルは、他の界面活性剤に比べ比較的安全性が高く、ノニオン系界面活性剤としてよく用いられているが、他のノニオン系界面活性剤、例えば高級アルキルアミンなどに比べ帯電防止性能に劣る傾向がある。このため特許文献1,2に記載されているような湿度65%程度の高湿度雰囲気下では十分な帯電防止性能の目安とされる、1012Ω以下の表面固有抵抗値を発揮するものの、通常発泡成形体を使用すると考えられる湿度50%程度の環境下では安定的に1012Ω以下の十分な帯電防止性能を得られないという欠点があった。
【0010】
一方で、ポリオレフィン系樹脂組成物への帯電防止剤として高級脂肪酸のグリセリンエステルに種々の添加剤を加え、その性能を改善する技術は旧来より開示されている。
【0011】
たとえばグリセリン脂肪酸エステル、縮合脂肪酸エステル、飽和脂肪族アルコールの混合物からなる帯電防止剤を熱可塑性樹脂に配合してなる樹脂組成物に関する技術が開示されている(特許文献3)。
【0012】
また、ポリプロプレン系樹脂組成物に結晶核剤と多価アルコールと脂肪酸モノグリセリドを配合してなるポリプロピレン系樹脂組成物に関する技術が開示されている(特許文献4)。
【0013】
しかしこれら技術は射出成形用途など非発泡のポリオレフィン系樹脂に関するものであり、発泡樹脂とは技術内容が異なる。すなわち樹脂を発泡する場合、発泡剤の存在下にて樹脂を溶融、もしくは半溶融する工程を経るため、帯電防止剤の樹脂中への分散挙動、樹脂表面への溶出状態が変わり、さらには帯電防止剤が変質してしまう場合もある。
【0014】
特に型内発泡成形に好適に用いられるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、耐圧容器内で水系分散媒と共に加熱溶融させて製造することが多く、加熱条件や分散媒種によっては帯電防止剤が水系分散媒中に溶出し、必要な帯電防止性能が発現しない。また帯電防止剤が水系分散媒中に溶出する過程で、該ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の表層付近に帯電防止剤が集中してしまい、型内発泡成形時に該予備発泡粒子同士の相互融着を阻害し、良好な成形体が得られない。
【0015】
事実、特許文献5記載の技術において比較例3にグリセリンエステルであるモノグリセリドと高級アルコール複合系帯電防止剤を練りこんだ処方は外観や成形性が劣るとの記載がある。
【0016】
また特許文献6には、親水性に優れ水濡れが速やかで、水が成型体に接触した当初から良好な通水性を呈する連通した空隙を有する通水性発泡成型体を提供することを目的として、発泡樹脂粒子を互いに結合一体化してなる連通した空隙を有する発泡成型体に、親水性付与剤が含有又は塗布されていることが開示されており、詳細な説明において、グリセリンエステルである多価アルコール脂肪酸エステルに高級アルコール等を併用して用いることも出来ると記載されているが、実施例などに具体的な記載はない。また、高級アルコールと記載されていても、その構成炭素数については様々な定義がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平3−28239号公報
【特許文献2】特開平7−304895号公報
【特許文献3】特開平11−21547号公報
【特許文献4】特開平9−59444号公報
【特許文献5】特開昭63−275648号公報
【特許文献6】特開平8−59875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、他の界面活性剤に比べ安全性が高いが、通常湿度雰囲気下での帯電防止性能に劣るいわゆる高級脂肪酸のグリセリンエステルであっても、一般的に型内発泡成形体を使用すると考えられる50%程度の湿度雰囲気下で安定的に良好な帯電防止性能を発揮するポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得ることのできるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルを用いながらも通常湿度雰囲気下で十分な帯電防止性能を発現する技術に関し鋭意研究した結果、炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルと、炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを併用することで、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子が高い帯電防止性能を発揮しうることを見出した。また、グリセリンを重合したポリグリセリンの脂肪酸エステルについても検討したところ、同様に効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
さらにポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得る製造方法として、耐圧容器を用い、使用する原料樹脂に応じた特定の温度範囲で樹脂と水系分散物を加温、加圧し、耐圧容器内圧より低圧雰囲気下に放出することにより、含有させた帯電防止剤が変質することなく、表面固有抵抗性能を発揮しうる適度な溶出状態になることを見出した。
【0021】
即ち、本発明の第1は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、(A)炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルを0.1重量部以上5重量部以下と、(B)炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを0.1重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物を基材樹脂とすることを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0022】
好ましい態様としては、炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルを構成するポリグリセリンが、下記化1に示す、2以上10以下のグリセリンが重合したものであること、
【0023】
【化1】

【0024】
を特徴とする前記記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0025】
本発明の第2は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、(A)炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルを0.1重量部以上5重量部以下と、(B)炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを0.1重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内に水、分散剤、発泡剤と共に仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出してえられることを特徴とする前記記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、通常湿度雰囲気下でも安定的に良好な帯電防止性能を発揮するポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂は、主モノマーとしてオレフィン系単量体を含んでなるものであり、たとえば、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−1−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−1−プロピレンランダム3元共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ホモポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂;ポリブテン、ポリペンテンなどがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
これらのうちでも、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−1−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−1−プロピレンランダム3元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも1種以上が型内発泡成形に好適に使用しうるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を容易に得られるという点から好ましい。
【0029】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂は、メルトインデックス(以下、MIと表記する場合がある)が、好ましくは0.1〜50g/10分の樹脂である。MIが前記の範囲であるとビーズ発泡性、型内発泡性が優れる点で好ましい。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルと、炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを含有する。
【0031】
本発明における炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルは、化2で表される化合物であり、帯電防止性能を有している。
【0032】
【化2】

【0033】
(式中R1、R1’は少なくとも1つのメチル基と5から23個のメチレン基及び、またはメチン基からなるアルキル基である。)
【0034】
本発明のグリセリンエステルおよび/またはポリグリセリンエステルを構成する脂肪酸の炭素数は、6以上24以下である。少ない場合は分子量が低いため樹脂表層へ溶出しやすい一方で融点が低くなり加工時の取り扱いに注意を要する傾向があり、また多い場合は樹脂表層への溶出に時間がかかる傾向があるなどの特色があるが、一般には炭素数18前後のものが自然界に多数存在するため安価であり、よく用いられる。
【0035】
ポリグリセリンは、グリセリンが2個以上重合したものであり、本発明においては、下記化3に示す、2以上10以下のグリセリンが重合したものを用いる。炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルで、重合度が低いものはグリセリンエステルと同様の性質を持つ。2以上10以下のグリセリンが重合したポリグリセリンと炭素数が6以上24以下の脂肪酸のエステルは、重合度1に相当する炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルと同様に良好な帯電防止性能を持つことから本発明に好適に用いられる。
【0036】
【化3】

【0037】
炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルは、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上5重量部以下含まれ、好ましくは0.1重量部以上3重量部以下含まれる。前記炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルの添加量が0.1重量部未満の場合、型内発泡して得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の帯電防止性能が不十分となる。一方、5重量部をこえると型内発泡成形に用いる際、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子表面へ必要以上にブリードし、型内発泡成形時の加工性が悪化する。
【0038】
本発明で使用する炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールは、化4で表される化合物で、帯電防止性能向上のメカニズムは詳細には不明であるが、前記炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルの、前記ポリオレフィン系樹脂中からのブリード性を調整していると考えられる。
【0039】
【化4】

【0040】
(式中R2は少なくとも1つのメチル基と5から19個のメチレン基及び、またはメチン基からなるアルキル基である。
【0041】
本発明の脂肪族アルコールは、グリセリンエステルおよび/またはポリグリセリンエステルを構成する脂肪酸との相溶性を合わせるほうが、ポリオレフィン系樹脂中への分散や、樹脂表層への溶出促進などの効率が良いと推測されるため、脂肪酸と炭素数を合わせて使用することが好ましい。
【0042】
一般に高級アルコールとは炭素数が6以上の脂肪族アルコールを称すが、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に用いる場合は、炭素数が20以下の高級アルコールを用いた場合に帯電防止性能の向上効果が見られる。
【0043】
炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールは、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上5重量部以下含まれ、好ましくは0.1重量部以上3重量部以下含まれる。前記脂肪族アルコールの添加量が0.1重量部未満の場合、型内発泡して得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の帯電防止性能が不十分となる。一方、5重量部をこえると型内発泡成形に用いる際、予備発泡粒子表面へ必要以上にブリードし、型内発泡成形時の加工性が悪化する。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂と炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステル、炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールとの混合順序、混合の仕方などには特に限定はないが、ポリオレフィン系樹脂の一部と炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルや炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールとから、まず含有率の高いマスターバッチ、たとえば含有率が5〜40重量%のマスターバッチを調製し、これと残りのポリオレフィン系樹脂とを混合する方法や、二軸押し出し機での共押出しする方法などが、炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルや炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールをポリオレフィン系樹脂中に均一に分散させやすいという点から好ましい。
【0045】
本発明における炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルと炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを含有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子には、必要に応じて有機顔料を加えてもよい。
【0046】
前記有機顔料としては、たとえば、ペリレン系、ポリアゾ系、キナクリドン系の有機顔料が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
前記有機顔料の含有量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.001重量部以上0.1重量部以下であることが分散性や帯電防止性の点から好ましい。含有量が0.1重量部をこえるとポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の気泡径が微細となり、該ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子から得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面性が劣り、見栄えが悪くなる傾向にある。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいように、あらかじめ押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状などの所望の粒子形状で、その粒子の平均粒径が0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、平均重量が0.1〜100mg、好ましくは0.3〜10mg程度になるように成形加工される。その際、炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルや炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコール、有機顔料などの添加剤は、通常、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
【0049】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、(A)炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルを0.1重量部以上5重量部以下と、(B)炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを0.1重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内に水、分散剤、発泡剤とともに仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出してポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を得ることを特徴とする。
【0050】
前記耐圧容器には、とくに限定はなく、使用する圧力および温度に耐えられるものであればいずれのものでも使用しうる。前記耐圧容器の具体例としては、たとえばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0051】
前記分散剤は特に限定はないが、第三リン酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、酸化チタン、燐酸マグネシウムなど難水溶性の無機系物質を用いることが多い。これらの中でも、第三リン酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウムが少ない使用量でも水系分散物を安定的に放出させることができるため好ましい。
【0052】
また、少量のドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどの、一般に分散助剤として使用されているアニオン界面活性剤を分散助剤として併用しうる。
【0053】
また、分散剤の使用量についても一般に使用される量であり、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下であることが好ましい。また、分散助剤の使用量も、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.001重量部以上0.3重量部以下が好ましい。
【0054】
さらに、水系分散物中におけるポリオレフィン系樹脂粒子の割合も、一般に採用される割合である水100重量部に対して20重量部以上100重量部以下であることが好ましく、得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の品質安定性、生産性などの観点から、適宜決められる。
【0055】
前記発泡剤は特に限定はなく、環境面から水、無機ガスとして空気、窒素、炭酸ガス、高い発泡倍率が得られ易いという面から、n−ブタン、iso−ブタン、ペンタン等の揮発性発泡剤などが挙げられる。
【0056】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子の融点は、示差走査熱量計(たとえばセイコー電子工業(株)製のDSC6200型)を用いてポリオレフィン系樹脂粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事により樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで冷却することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度として求められる。
【0057】
また、耐圧容器内の水系分散物はポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲とするが、製造するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の原料樹脂種、添加剤、発泡倍率、使用する発泡剤種により、当該範囲内において適宜決められ、当該温度にて加圧して発泡剤が含浸せしめられる。一般に揮発性発泡剤を用いる場合は、加熱温度は低く、無機ガスなどでは加熱温度は高い傾向がある。また高温であるほど得られる予備発泡粒子の発泡倍率が高くなる傾向がある。
【0058】
また、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下とは、一般に予備発泡粒子を製造する際に、耐圧容器中の水系分散物を放出する低圧の雰囲気として採用される条件であるかぎりとくに制限はないが、たとえば大気中に放出する際には大気下、揮発性発泡剤を回収するために密閉系内に放出する場合には密閉系内の雰囲気下などのことである。
【0059】
以上のようにして得られる本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の大きさは0.3〜10mg/粒であることが好ましい。また、本発明の製造方法によって得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、2〜60倍であることが好ましく、より好ましくは3〜40倍である。ここでいう発泡倍率とは、発泡前の樹脂粒子の密度、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量と水没体積から算出できる真倍率である。
【0060】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の密度は、使用される充填剤の有無、樹脂密度などによっても異なるが、0.015〜0.5g/cm3であることが好ましく、さらには0.022〜0.3g/cm3であることが好ましい。
【0061】
本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、型内発泡成形することによってポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体となる。
【0062】
前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形に用いる場合には、イ)そのまま用いる方法、ロ)あらかじめ予備発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、発泡能を付与する方法、ハ)予備発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し成形する方法など、従来既知の方法が使用しうる。
【0063】
本発明で製造されるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子からポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を製造する方法としては、たとえば閉鎖しうるが密閉し得ない成形金型内に前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填し、水蒸気などを加熱媒体として0.05〜0.5MPa−G程度の加熱水蒸気圧で3〜30秒程度の加熱時間で成形しポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子同士を融着させ、このあと成形金型を水冷により型内発泡成形体取り出し後の型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却した後、金型を開き型内発泡成形体とする方法などが挙げられる。
【0064】
得られた型内発泡成形体は帯電防止性能を有し、通常使用される湿度50%程度の雰囲気下でも、1012Ω以下の良好な帯電防止性能を安定して発揮する。
【実施例】
【0065】
次に本発明を実施例および比較例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
また実施例及び比較例における評価は下記の方法で行った。
【0067】
(予備発泡粒子の発泡倍率)
嵩体積約50cm3のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm3)を求め、発泡前の樹脂粒子の密度d(g/cm3)から次式により求める。
予備発泡粒子の発泡倍率=d×v/w
【0068】
(型内発泡成形体の発泡倍率)
型内発泡成形体の重量W(g)と型内発泡成形体の体積V(cm3)を求め次式により求める。
型内発泡成形体の発泡倍率=d×V/W
【0069】
(表面固有抵抗)
型内発泡成形体を温度23℃、湿度50%の室内に24時間、もしくは温度20℃、湿度65%の室内に24時間保存し、状態を調節したのち、JIS−K6911に準拠し、三菱油化(株)製のハイレスタMCP−HT201を用いて測定した。
【0070】
(実施例1、2、3、9)
エチレン含有率3.6重量%、MI6.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステルもしくは炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステル、脂肪族アルコール、有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0071】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.7重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.04重量部とを仕込み、さらに、炭酸ガスを10重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0072】
次に、得られた予備発泡粒子を1m3の耐圧容器に仕込み、0.5MPa−Gに加圧し、8時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPa−Gに高めたのち400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.3MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
(実施例4)
エチレン含有率3.6重量%、MI6.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪族アルコールと、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0075】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.7重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.04重量部とを仕込み、さらに、炭酸ガスを10重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。
【0076】
得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0077】
次に、得られた予備発泡粒子を1m3の耐圧容器に仕込み、0.5MPa−Gに加圧し、8時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPa−Gに高めたのち400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.3MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例5)
エチレン含有率2.8重量%、MI8.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪族アルコール、有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、含水剤としてメラミン0.5重量部、タルク0.3重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0079】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.5重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.02重量部とを仕込み、撹拌下、表1に示す温度とし、さらに空気で加圧することにより表1記載の内圧とした上で30分間保持し、含水させたのち、耐圧容器内を空気で前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を圧力0.05MPa−Gの飽和水蒸気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0080】
次に、得られた予備発泡粒子を1m3の耐圧容器に仕込み、0.5MPa−Gに加圧し、3時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPa−Gに高めたのち400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.3MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例6)
密度0.93g/cm3、MI2.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪族アルコール、有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(210℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(3.0mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0082】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム2.0重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.05重量部とを仕込み、さらに、イソブタンを15重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた5mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0083】
次に、得られた予備発泡粒子を400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.08MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を80℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例7、8)
エチレン含有率3.6重量%、MI6.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪族アルコール、有機顔料(商品名:キナクリドンレッド)と、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0085】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.7重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.04重量部とを仕込み、さらに、炭酸ガスを10重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0086】
次に、得られた予備発泡粒子を1m3の耐圧容器に仕込み、0.5MPa−Gに加圧し、8時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPa−Gに高めたのち400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.3MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例1)
エチレン含有率3.6重量%、MI6.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0088】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.7重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.04重量部とを仕込み、さらに、炭酸ガスを10重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0089】
次に、得られた予備発泡粒子を1m3の耐圧容器に仕込み、0.5MPa−Gに加圧し、8時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPa−Gに高めたのち400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.3MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
エチレン含有率2.8重量%、MI8.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、含水剤としてメラミン0.5部、タルク0.3重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0091】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.5重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.02重量部とを仕込み、撹拌下、表1に示す温度とし、さらに空気で加圧することにより表1記載の内圧とした上で30分間保持し、含水させたのち、耐圧容器内を空気で前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を圧力0.05MPa−Gの飽和水蒸気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0092】
次に、得られた予備発泡粒子を1m3の耐圧容器に仕込み、0.5MPa−Gに加圧し、3時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPa−Gに高めたのち400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.3MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
(比較例3)
密度0.93g/cm3、MI2.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(210℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(3.0mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0094】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム2.0重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.05重量部とを仕込み、さらに、イソブタンを15重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた5mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0095】
次に、得られた予備発泡粒子を400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.08MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を80℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例4)
エチレン含有率3.6重量%、MI6.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量の脂肪酸のグリセリンエステル、炭素数が22の高級アルコールであるベヘニルアルコール、有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は表1に示すとおりであった。
【0097】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.7重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.04重量部とを仕込み、さらに、炭酸ガスを10重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。得られた予備発泡粒子の発泡倍率は表1に示す通りであった。
【0098】
次に、得られた予備発泡粒子を1m3の耐圧容器に仕込み、0.5MPa−Gに加圧し、8時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPa−Gに高めたのち400mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.3MPa−Gの水蒸気にて加熱、融着させ、型内発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した型内発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、型内発泡成形体の物性を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
実施例1〜9に示す通り、炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルに、炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを加えたものを帯電防止剤として使用した場合、無添加の比較例と対比して表面固有抵抗値が低く、良好な帯電防止性能を有する。また高級アルコールと称される物質でも炭素数22の脂肪族アルコールであるベヘニルアルコールを用いた比較例4では、炭素数が20以下である実施例に比べ表面固有抵抗値が高く、無添加の場合と変わらない帯電防止性能しか有さない。
【0100】
特に、JIS−K6911に記載された温度20℃、湿度65%の高湿度雰囲気ではなく、通常発泡体を使用する温度23℃、湿度50%の通常湿度雰囲気条件において、本特許記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を用いて得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体は、表面固有抵抗値1012Ω以下の良好な帯電防止性能を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、(A)炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルを0.1重量部以上5重量部以下と、(B)炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを0.1重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物を基材樹脂とすることを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項2】
炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルを構成するポリグリセリンが、下記化5に示す、2以上10以下のグリセリンが重合したものであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子。
【化5】

【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、(A)炭素数が6以上24以下の脂肪酸のグリセリンエステルおよび/または炭素数が6以上24以下の脂肪酸のポリグリセリンエステルを0.1重量部以上5重量部以下と、(B)炭素数が6以上20以下の脂肪族アルコールを0.1重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物からなるポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内に水、分散剤、発泡剤と共に仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出してえられることを特徴とする請求項1〜2何れか一項に記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−159388(P2010−159388A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86731(P2009−86731)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】