説明

ポリオレフィン系樹脂押出発泡シート

【課題】 本発明は、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの精密電子機器の包装材料として好適なものであって、精密電子機器に異物が転写しても水洗いや、水を含んだ布で拭う等の精密電子機器表面の汚染物質洗浄時に優れた洗浄性能を付与することができる、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、厚みが0.2〜2.0mm、見掛け密度が15〜180g/Lのポリオレフィン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートには、ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される1以上の添加剤が発泡シートを構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して総添加量0.5〜9重量部の割合で添加されており、且つ表面抵抗率が1×1012(Ω)未満の高分子型帯電防止剤が該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜30重量部の割合で添加されており、該発泡シートの表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂押出発泡シートに関し、詳しくは電子精密機器等の被包装物表面の汚染物質洗浄時に優れた洗浄性を発現させることができる、電子精密機器の緩衝材、包装材として好適に使用可能なポリオレフィン系樹脂押出発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリオレフィン系樹脂押出発泡シート(以下、単に発泡シートともいう。)は、柔軟性及び緩衝性に富み、被包装物の損傷、傷つきを防止できることから、家電製品、ガラス器具、陶器等の包装材料として広く使用されてきた。また、近年、薄型テレビの開発、需要拡大に伴いディスプレイ用ガラス基板の包装材料として使用されるようになったことにより、新たな技術課題創出、様々な技術改良が該発泡シートになされてきている。このような発泡シートとしては、例えば、特許文献1に記載されたガラス基板用間紙がある。
【0003】
前記ディスプレイ用ガラス基板等の電子精密機器は、非常に高いレベルの表面非汚染性が必要である。しかし、該ガラス基板の包装材料として使用される発泡シートにおいては、発泡シート製造に使用される添加剤や原材料が原因のブリードアウト物質が発泡シート表面にブリードアウトすることがあり、発泡シートにて電子精密機器を包装した場合に該ブリードアウト物質が電子精密機器に転写されると、電子精密機器表面を汚染してしまう虞がある。また、発泡シートは静電気を蓄えて帯電し易いため、空気中の塵や埃を発泡シート表面に引き寄せでしまう性質が高く、発泡シートにて電子精密機器を包装した場合にその引き寄せられた塵や埃も電子精密機器に転写されると、電子精密機器表面を汚染してしまう虞がある。
このような技術課題を解決するために、発泡シートの帯電防止性能を高めて、空気中の塵や埃の付着を防ぎ、電子精密機器の表面の汚染防止性能を向上させるために、高分子型帯電防止剤を発泡シートに添加することが行われて効果を上げているが、電子精密機器表面の汚染原因をすべて取り除くに至らず、未だ改善の余地を残すものである。
【0004】
一方、電子精密機器の場合、其の表面非汚染性を高めるために、発泡シート等の包装材料を取り外した後の表面洗浄工程は欠かすことはできず、該表面を水で洗浄したり、水を含有するシートで拭くことにより、付着した塵、埃、ブリードアウト物質などの異物を除去することが行われている。従って、電子精密機器に前記異物が付着しても、水で洗浄等するだけで除去できれば、電子精密機器の表面非汚染性を保つことができる。ところが、異物の種類、洗浄方法によっては、異物の除去が十分できない場合もあり、そのことが後工程での問題発生、或いは製品不良の原因となり、電子精密機器等の表面非汚染性の課題は十分な解決をみていない。
【0005】
【特許文献1】特開2007−262409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの精密電子機器の包装材料として好適なものであって、精密電子機器に異物が転写しても水洗いや、水を含んだ布で拭う等の精密電子機器表面の汚染物質洗浄時に優れた洗浄性能を付与することができる、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、ポリアルキレンオキサイドおよび/またはポリアルキレンオキサイド系界面活性剤をポリオレフィン系樹脂押出発泡シートに含有させると、該発泡シートにより包装された精密電子機器表面への異物の転写量は多くなるものの、後工程で欠かせない洗浄工程において、精密電子機器に対する水等による洗浄性が向上し、電子精密機器に簡易な洗浄ではおとし難い異物が転写しても、水等で洗浄するだけで容易に除去できることを見出し、本発明に到達した。本発明によれば、以下に示すポリオレフィン系樹脂押出発泡シートが提供される。
〔1〕 厚みが0.2〜2.0mm、見掛け密度が15〜180g/Lのポリオレフィン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートには、ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される1以上の添加剤が発泡シートを構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して総添加量0.5〜9重量部の割合で添加されており、且つ表面抵抗率が1×1012(Ω)未満の高分子型帯電防止剤が該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜30重量部の割合で添加されており、該発泡シートの表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
〔2〕 前記ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤が、温度20℃で液状である前記〔1〕に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
〔3〕 前記ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤の数平均分子量が1000以下である前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
〔4〕 前記ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される1以上の添加剤が、ポリエチレンオキサイドである前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、ポリアルキレンオキサイドおよび/またはポリアルキレンオキサイド系界面活性剤からなる添加剤が特定量添加されているので、発泡シートから塵、埃、ブリードアウト物質などの異物が、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器表面に転写された場合であっても、異物と共に該添加剤が電子精密機器表面に転写されることにより、電子精密機器を水で洗浄したり、水を含有するシートで拭くなどの簡易な洗浄工程だけで、異物を該添加剤と共に容易に除去することができる。特に、電子精密機器表面に転写した場合に、厳密な洗浄を必要とするナトリウムイオン等の金属イオンやオリゴマー物質などの洗浄が困難な異物が発泡シートから、電子精密機器表面に転写するようなことがあっても、該添加剤の存在により洗浄工程において電子精密機器表面から容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートについて詳細に説明する。
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート(以下、発泡シートともいう。)は、ポリオレフィン系樹脂と、これに添加された高分子型帯電防止剤とからなる発泡体である。
【0010】
上記発泡シートを構成するポリオレフィン系樹脂は、オレフィン成分単位が50モル%以上の樹脂である。該ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、表面硬度が低く柔軟性に優れ、被包装物の表面保護性に優れることから好ましく用いられる。特にポリエチレン系樹脂が、より柔軟性に優れ、被包装体の表面保護性により優れているので好ましい。
【0011】
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレン成分単位が50モル%以上の樹脂が挙げられ、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、さらにそれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0012】
これらのポリエチレン系樹脂の中でも、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を主成分とするものが好ましい。具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を用いることが好ましく、発泡性が良好な低密度ポリエチレンがより好ましい。
尚、密度が935g/L以下のポリエチレン系樹脂を「主成分」とするとは、該ポリエチレン樹脂の含有量が発泡シートの全重量の50重量%以上であることをいう。また、ポリエチレン系樹脂の密度の下限は概ね890g/Lである。
【0013】
また、前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィン等の成分との共重合体が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体等であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。なお、上記共重合体中のプロピレンと共重合可能な他の成分は、25重量%以下、特に15重量%以下の割合で含有されていることが好ましい。なお、該共重合可能な他の成分の含有量の下限値としては共重合体を選択する理由等を勘案して概ね0.3重量%である。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
上記のポリプロピレン系樹脂の中でも好適な押出発泡性を有することから、一般のポリプロピレン系樹脂と比較して溶融張力が高いポリプロピレン系樹脂が好ましい。具体的には、例えば、特開平7−53797号公報に記載されているような、(1)1未満の枝分かれ指数と著しい歪み硬化伸び粘度とを有するポリプロピレンや、(2)(a)Z平均分子量(Mz)が1.0×10以上であるか、またはZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が3.0以上であり、(b)かつ平衡コンプライアンスJが1.2×10−3Pa−1以上であるか、または単位応力当たりの剪断歪み回復Sr/Sが毎秒5Pa−1以上であるポリプロピレンを含むポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、本発明においては、(3)スチレン等のラジカル重合性単量体およびラジカル重合開始剤や添加剤などを含む配合物を、ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつラジカル重合開始剤の分解温度において溶融混練することによって改質されたポリプロピレン系樹脂、あるいは(4)ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0015】
また、上記ポリオレフィン系樹脂の融点は概ね100〜170℃である。該ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K7121−1987に準拠する方法により測定することができる。即ちJIS K7121−1987における試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度は10℃/分)により前処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合には、主融解ピーク(最も面積の大きいピーク)の頂点の温度とする。尚、最も大きな面積を有するピークのピーク面積に対して80%以上のピーク面積を有するピークが他に存在する場合には、該ピークの頂点温度と最も面積の大きいピークの頂点の温度との相加平均値を融点として採用する。
【0016】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂には、本発明の発泡シートの目的及び効果を阻害しない範囲で、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレンプロピレンゴム等のエラストマー、ポリブテン等のブテン系樹脂等を添加することができる。その場合の添加量は40重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、10重量%以下が特に好ましい。
【0017】
また、ポリオレフィン系樹脂には、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の機能性添加剤、無機充填剤等を含有していても良い。
【0018】
本発明の発泡シートの厚みは0.2〜2.0mmである。
発泡シートの厚みが薄すぎると、電子精密機器に対する緩衝性、表面保護性が不十分になり、厚みが厚すぎると電子精密機器の積載量が損なわれる。このような観点から、0.3〜1.0mmが好ましく、より好ましくは0.3〜0.7mmであり、更に好ましくは0.3mm〜0.5mmである。
【0019】
本発明の発泡シートの見掛け密度は15〜180g/Lである。発泡シートの見掛け密度は高すぎると表面保護性が低下するので、発泡体を使用する意味がなくなる。一方、該見掛け密度が低すぎると発泡シートの垂れ下がりに関連するコシの強さが低下する。なお、コシの強い発泡シートは発泡シートを片持ち梁で支持した際の垂れ下がりが小さいものである。このような観点から、該見掛け密度は30〜150g/Lが好ましく、より好ましくは40〜120g/L、更に好ましくは50〜100g/Lである。
【0020】
なお、本発明の発泡シートの厚みは、発泡シートの全幅に亘って幅方向に1cm間隔で測定される発泡シートの厚み(mm)の算術平均値である。例えば、株式会社山文電気製オフライン厚み測定機TOF−4Rを使用して、発泡シート全幅について1cm間隔で厚みの測定を行い、各測定値を算術平均することにより、求めることができる。
【0021】
本発明の発泡シートの見掛け密度は、以下の通り測定される値である。
発泡シートから縦25mm×横25mm×発泡シートの厚みの試験片を任意に10枚以上切り出して、各々の試験片の重量(g)を測定し、該重量を1600倍して、単位換算することで各試験片の坪量(g/m)を求める。次いで、坪量の各測定値を算術平均して発泡シートの坪量を求める。次に、求められた発泡シートの坪量(g/m)を前記発泡シートの厚み(mm)で除した値を単位換算し、発泡シートの見掛け密度(g/L)とする。
【0022】
本発明の発泡シートの坪量は10〜80g/mが好ましく、より好ましくは12〜60g/m、更に好ましくは15〜50g/mである。該坪量が10g/m以上であればコシの強さが確保され、80g/m以下であれば、表面保護性が確保され、過大なコストアップに繋がることもない。
【0023】
本発明の発泡シートには、ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤(以下、単にポリアルキレンオキサイド等ともいう。)から選択される1以上の添加剤が、発泡シートを構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.5〜9重量部の割合で添加されており、好ましくは、1〜8重量部、更に好ましくは、2〜7重量部の割合で添加される。なお、高分子型帯電防止剤にポリアルキレンオキサイド等が含まれることがあるが、高分子型帯電防止剤に含まれるポリアルキレンオキサイド等は、共重合体成分等として高分子型帯電防止剤に少量含有されるものであって、帯電防止性を高めるために用いられているものであり、本発明におけるポリアルキレンオキサイド等の添加剤として発泡シートに添加される添加量と比較して微量であり、本発明で特定する該添加剤の添加量の範囲に影響する量ではなく、本発明の目的、効果である被包装物の洗浄性を大きく高める効果が期待できるものではない。
【0024】
ポリアルキレンオキサイド等の含有量が0.5重量部未満では、洗浄性が不十分であり、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器の表面に付着した汚染物を容易には除去することができない虞がある。一方、該含有量が9重量部超では、発泡シートの独立気泡率や発泡倍率が低下して、厚み0.2〜2.0mm、見掛け密度15〜180g/Lのポリオレフィン系樹脂押出発泡シートであって、緩衝材、包装材として用いることができるものを得ることができない虞がある。
【0025】
前記ポリアルキレンオキサイドを構成するアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド(エチレングリコール)、プロピレンオキサイド(プロピレングリコール)、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、ブチレンオキサイド(ブチレングリコール)、ペンチルオキサイド(ペンチルグリコール)、ヘキシルオキサイド(ヘキシルグリコール)等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイドとしては、2種以上のアルキレンオキサイドが併用されているものでもよい。
ポリアルキレンオキサイドの中では、入手しやすく、取扱いやすいことから、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)が好ましい。
【0026】
ポリアルキレンオキサイド系界面活性剤としては、前記ポリアルキレンオキサイドを始めとして、アルキレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤が好ましく用いられ、その具体例としては、オキシアルキレンアルキルエ−テル(例えば、オクチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、オレイルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック付加物など);ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル(例えば、ステアリル酸エチレンオキサイド付加物、ラウリル酸エチレンオキサイド付加物など);ポリオキシアルキレン多価アルコ−ル高級脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールのラウリン酸ジエステル、ポリエチレングリコールのオレイン酸ジエステル、ポリエチレングリコールのステアリン酸ジエステルなど);ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエ−テル(例えば、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ノニルフェノールエチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック付加物、オクチルフェノールエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ジノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールエチレンオキサイド付加物など);ポリオキシアルキレンアルキルアミノエ−テルおよび(例えば、ラウリルアミンエチレンオキサイド付加物,ステアリルアミンエチレンオキサイド付加物など);ポリオキシアルキレンアルキルアルカノ−ルアミド(例えば、ヒドロキシエチルラウリン酸アミドのエチレンオキサイド付加物、ヒドロキシプロピルオレイン酸アミドのエチレンオキサイド付加物、ジヒドロキシエチルラウリン酸アミドのエチレンオキサイド付加物など)が挙げられる。
【0027】
本発明におけるポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンオキサイド系界面活性剤は、温度20℃で液状であることが好ましい。20℃で固体のポリアルキレンオキサイド等もオリゴマーや金属イオンを水で除去する際に優れた洗浄性を発揮することができるが、20℃で液状のポリアルキレンオキサイド等は、発泡シートからよりブリードアウトしやすく、より水等に溶けやすいことから、水等で精密電子機器を洗浄する際に洗浄が難しいオリゴマーや金属イオン等の異物に対してより優れた洗浄性を発揮することができる。かかる観点から、10℃で液状であることがより好ましく、0℃で液状であることが更に好ましく、−10℃で液状であることが更に好ましく、−20℃で液状であることが特に好ましい。
【0028】
同様の理由から、ポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンオキサイド系界面活性剤の数平均分子量は1000以下、更に600以下が好ましい。また、其の下限は、概ね150である。
【0029】
なお、ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、水酸基価から算出される周知の方法で求められる。また、ポリアルキレンオキサイド等の数平均分子量が該水酸基価から算出することが難しい場合には、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いる方法にて求められる。
【0030】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)の値を示すものであり、好ましくは1×10〜5×1013(Ω)、より好ましくは1×10〜1×1013(Ω)の表面抵抗率を示すもので良好な帯電防止性能を有する。また、本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、エタノール水溶液による超音波洗浄後の表面抵抗率も上記の値と概ね同様の値をしめす。エタノール水溶液による超音波洗浄後の表面抵抗率が上記の値を示すということは、帯電防止機能が使用環境によって容易に失われことがないことを意味し、本発明の発泡シートは、長期間に亘って相応の帯電防止性能を発現するものであることを示している。このような帯電防止性に優れる発泡シートは、ガラス基板等の電子精密機器の包装材や間紙として使用した場合に、被包装物への塵や埃の付着を抑制するものであり、被包装物から発泡シートを除去する場合の剥離帯電も防止できるものである。
【0031】
発泡シートの表面抵抗率は、下記の試験片の状態調整を行ったのち、JIS K6271(2001)に準拠して測定される。すなわち、測定対象物である発泡シートから縦100mm×横100mm(厚さは発泡シートの厚み)の大きさに切り出した試験片を温度30℃、相対湿度30%の雰囲気下に36時間放置することにより試験片の状態調整を行ってから、JIS K6271(2001)に準拠して印加電圧500Vの条件で、表面抵抗率が求められる。
また、発泡シートのエタノール水溶液による超音波洗浄後の表面抵抗率は、下記の試験片の状態調整を行ったのち、JIS K6271(2001)に準拠して測定される。すなわち、測定対象物である発泡シートから縦100mm×横100mm(厚さは発泡シートの厚み)の大きさに切り出した試験片を23℃のエタノール40重量%水溶液中に沈めて超音波洗浄を24時間行った後、試験片を乾燥(温度30℃、相対湿度30%の雰囲気下に36時間放置する)することにより試験片の状態調整を行ってから、JIS K6271(2001)に準拠して印加電圧500Vの条件で、表面抵抗率が求められる。
【0032】
なお、本発明の発泡シートの永久帯電防止性は、ポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤と発泡剤からなる発泡性混練溶融物の押出発泡に際して、ポリオレフィン系樹脂中に高分子型帯電防止剤が良好なネットワークを形成して分散することにより発現していると推測される。
【0033】
本発明の発泡シートは、前記のように帯電防止性に優れているものであるが、更に発泡シートの坪量(g/m)と、該発泡シートの飽和電圧(kV)との積が75kV・g/m以下であることが好ましく、より好ましくは60kV・g/m以下である。この坪量(g/m)と飽和電圧(kV)との積は、発泡シートにおける帯電圧減衰性能の指標であり、この値が小さい発泡シートは帯電圧減衰性に優れていることを意味し、被包装物に発泡シートが纏わりつく現象が起き難くなる。
【0034】
なお、発泡シートの厚みや坪量が大きくなると飽和電圧(kV)は小さくなり、厚みや坪量が小さくなると飽和電圧が大きくなる傾向がある。したがって、飽和電圧を小さくするには厚みや坪量を大きくすればよいが、本発明の発泡シートは、厚み2mm以下、見掛け密度180g/L以下であることから、厚みや坪量を大きくすることには限界がある。この限界の下で、坪量(g/m)と飽和電圧(kV)との積が75kV・g/m以下であることは、本発明の極めて薄く、見掛け密度も小さい発泡シートの帯電防止性が、ガラス基板等の電子精密機器の包装シート又は間紙として使用するのに十分なものであることを意味する。
【0035】
本明細書において、発泡シートの飽和電圧(kV)の測定方法は、株式会社宍戸商会製のスタティック・オネストメーターTYPE S−5109装置を使用して、JIS L1094(1988)に基づいて測定される。具体的には、縦45mm、横45mmの正方形の試験片を測定面が上になるように測定装置上の試験片取付枠に取付け、印加部の針電極の先端から試験片上面までの距離を20mm、受電部の電極から試験片までの距離を15mmに各々調整する。次に、ターンテーブルを回転させながら(+)10kVの電圧を印加し、最大帯電圧に達し安定した電圧の値を当該飽和電圧とする。なお、測定は5回以上行いその平均値を採用する。
【0036】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートにおいては、発泡シートに対して前記帯電防止性を付与するために、表面抵抗率が1×1012(Ω)未満の高分子型帯電防止剤が、ポリオレフィン系樹脂に添加される。
【0037】
本発明における前記高分子型帯電防止剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜30重量部である。高分子型帯電防止剤の添加量が30重量部を超えると発泡が阻害され、連続気泡率が高くなって90%を超えるようになり、さらに気泡が粗大になって、表面保護性が低下し、被包装物の表面へのフィット性が大きく低下する虞がある。かかる観点から、其の上限は25重量部が好ましく、20重量部がより好ましい。一方、2重量部未満では、表面固有抵抗率1×1014(Ω)以下にすることが難しくなる。よって、高分子型帯電防止剤の添加量の下限は、好ましくは5重量部、より好ましくは8重量部である。
【0038】
上記高分子型帯電防止剤は、表面抵抗率が1×1012(Ω)未満、好ましくは1×1011(Ω)未満、より好ましくは1×1010(Ω)未満の樹脂からなるものである。具体的には、金属イオンとしてカリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれたアルカリ金属を含むアイオノマー樹脂、あいはポリエーテルエステルアミドやポリエーテル等の親水性樹脂を主成分とするものが好ましく挙げられる。また高分子型帯電防止剤は、発泡シートを構成するポリオレフィン系樹脂との相溶性を向上させ、優れた帯電防止効果を付与すると共に、帯電防止剤を添加することによる物性低下を抑制する効果を得るために、ポリオレフィン系樹脂をブロック共重合させた樹脂を用いることが更に好ましい。
【0039】
特に好ましい高分子型帯電防止剤としては、特開平3−103466号公報、特開2001−278985号公報に記載されている組成物が挙げられる。
特開平3−103466号公報記載の組成物は、(I)熱可塑性樹脂、(II)ポリエチレンオキサイドまたは50重量%以上のポリエチレンオキサイドブロック成分を含有するブロック共重合体、及び(III)上記(II)中のポリエチレンオキサイドブロック成分と固溶する金属塩からなるものであり、特開2001−278985号公報記載の組成物は、ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗値が1×10〜1×1011Ω・cmの親水性樹脂(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有する数平均分子量(Mn)が2000〜60000のブロック共重合体である。上記(a)のブロックと(b)のブロックとは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有するものである。尚、このような高分子型帯電防止剤は、例えば三井・デュポンポリケミカル株式会社製「SD100」、三洋化成工業株式会社製「ペレスタット300」という商品名で市販されている。
【0040】
但し、本発明で用いられる高分子型帯電防止剤は、ポリアルキレンオキサイドがブロック共重合体を構成する成分として含有することがあっても、或いは、ポリアルキレンオキサイド及び/又はポリアルキレンオキサイド系界面活性剤そのものを含有するような場合であっても、前述の通り、本発明で特定する該添加剤の添加量の範囲に影響する量で発泡シートに含まれることはなく、本発明の目的、効果である被包装物の洗浄性を大きく高める効果が期待できるものではない。一方、ポリアルキレンオキサイド等が帯電防止性を示す場合もあるが、そのようなポリアルキレンオキサイド等を単にポリオレフィン系樹脂に添加しても、本発明の目的とする帯電防止性能は発揮されず、表面抵抗率が1×1012(Ω)未満の高分子型帯電防止剤をなりえず、両者は区別するすることができる。
【0041】
本発明において使用される高分子型帯電防止剤の数平均分子量としては、2000以上が好ましく、より好ましくは2000〜100000、更に好ましくは5000〜60000、特に好ましくは8000〜40000であり、界面活性剤からなる帯電防止剤とは区別される。尚、該高分子型帯電防止剤の数平均分子量の上限は概ね500000である。高分子型帯電防止剤の数平均分子量を上記の範囲とすることにより、帯電防止性能が湿度等の環境に左右されずより安定的に発現され、また被包装体へ帯電防止剤が移行して被包装体表面を汚染することも抑制される。
【0042】
上記数平均分子量は、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求められる。例えば、高分子型帯電防止剤がポリエーテルエステルアミドやポリエーテルを主成分とするものの場合にはオルトジクロロベンゼンを溶媒として試料濃度3mg/mlとし、ポリスチレンを基準物質としてカラム温度135℃の条件にて測定される値である。なお、上記溶媒の種類、カラム温度は、高分子型帯電防止剤の種類に応じて適宜変更される。
【0043】
また、高分子型帯電防止剤の融点は、好ましくは70〜270℃、より好ましくは80〜230℃、特に好ましくは80〜200℃であることが、帯電防止機能の発現性の観点から望ましい。
【0044】
高分子型帯電防止剤の融点は、JIS K7121−1987に準拠する方法により測定することができる。即ちJIS K7121−1987における試験片の状態調節(2)の条件(但し、冷却速度は10℃/分)により前処理を行い、10℃/分にて昇温することにより融解ピークを得る。そして得られた融解ピークの頂点の温度を融点とする。尚、融解ピークが2つ以上現れる場合には、主融解ピーク(最も面積の大きいピーク)の頂点の温度とする。尚、最も大きな面積を有するピークのピーク面積に対して80%以上のピーク面積を有するピークが他に存在する場合には、該ピークの頂点温度と最も面積の大きいピークの頂点の温度との相加平均値を融点として採用する。
【0045】
上記高分子帯電防止剤はそれぞれ単独で使用することができるが、組み合わせて使用してもよい。
【0046】
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの製造例について説明する。
本発明の発泡シートは、ポリオレフィン系樹脂に高分子型帯電防止剤、気泡調整剤等を配合し押出機内で溶融混練し、該溶融混練物に物理発泡剤を圧入し、混練したのち、押出機出口部に付設された円環状ダイから押出発泡し冷却用円筒を通したのち切り開いてシート状とすることにより製造される。
【0047】
前記ポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンオキサイド系界面活性剤は、液状のものであれば物理発泡剤と同様に圧入することができる。また、固体状のものであれば、ポリオレフィン系樹脂を用いて濃度5〜20重量%のマスターバッチを作製し、マスターバッチとして添加すればよい。
【0048】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡シートは、電子精密機器の包装シート、包装袋や間紙として使用されることが多く、その場合、コシの強さが要求される場合もある。十分なコシの強さを有する良好な発泡シートを得るためには、押出機先端に取付けられるダイの構造と使用するポリオレフィン系樹脂原料が重要である。
【0049】
ダイの構造に関しては、ポリオレフィン系樹脂の発熱を極力抑える形状とすることが必要であり、樹脂流路の断面積を大きくする設計をする、樹脂流路の内面を鍍金処理するなどしてすべり性を向上させる等、周知の低発熱ダイの技術を採用することができる。発熱が大きい状況で得られる発泡シートは、発泡シートを構成している気泡が収縮して、気泡壁の張りがなくなってしまう。また発泡シート表面に細かな裂けが発生する場合もある。この様な発泡シートはコシの強さが低下する。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂原料は、溶融張力が3〜40cN、メルトマスフローレイトが0.2〜10g/10分のものを使用することが好ましい。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂の溶融張力が3cN未満の場合やメルトマスフローレイトが10g/10分を超える場合は、発泡性が低下し、目的の見掛け密度の発泡シートが得られ難く、仮に得られたとしても発泡シートの独立気泡率が極めて低く(10%未満)、気泡扁平率も小さくなる虞がある。従って発泡シートのコシの強さも低下し、電子精密機器の包装用資材としての取扱い難いものになる。また、発泡シート幅方向の厚み精度にも悪影響を及ぼす可能性もあり、ガラス基板の間紙として使用される場合、厚み精度が悪いと、積み重ねて搬送する際の積載効率が低下する等の問題が発生する虞もあり、電子精密機器の包装用資材としての性能が低下する虞がある。一方、ポリオレフィン系樹脂の溶融張力が40cNを超える場合やメルトマスフローレイトが0.2g/10分未満の場合は、前述したようにダイ内での発熱が大きくなり、発泡シートを構成している気泡が収縮して気泡壁に張りがなくなり、発泡シート幅方向の厚み精度が低下する虞があり、発泡シート表面に細かな裂けが発生する場合もある。よって、前述同様にコシの強さも低下し、電子精密機器の包装用資材として取扱いが困難になる虞がある。
【0052】
前記溶融張力は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定される。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を、基材樹脂を構成しているポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合には230℃、ポリエチレン系樹脂の場合は190℃とし、試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、4分で引き取り速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の張力の極大値を得る。ここで、引取り速度が0m/分から200m/分に達するまでの時間を4分とした理由は、樹脂の熱劣化を抑えるとともに得られる値の再現性を高めるためである。上記操作を異なる試料を使用し、計10回の測定を行い、10回で得られた極大値の最も大きな値から順に3つの値と、極大値の最も小さな値から順に3つの値を除き、残った中間の4つの極大値を相加平均して得られた値を溶融張力(cN)とする。
【0053】
但し、上記した方法で溶融張力の測定を行い、引取り速度が200m/分に達しても紐状物が切れない場合には、引取り速度を200m/分の一定速度にして得られる溶融張力(cN)の値を採用する。詳しくは、上記測定と同様にして、溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を張力検出用プーリーに掛け、4分間で0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーを回転させ、回転速度が200m/分になるまで待つ。回転速度が200m/分に到達してから溶融張力のデータの取り込みを開始し、30秒後にデータの取り込みを終了する。この30秒の間に得られたテンション荷重曲線から得られたテンション最大値(Tmax)とテンション最小値(Tmin)の平均値(Tave)を本発明方法における溶融張力とする。
ここで、上記Tmaxとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたピーク(山)値の合計値を検出された個数で除した値であり、上記Tminとは、上記テンション荷重曲線において、検出されたディップ(谷)値の合計値を検出された個数で除した値である。
尚、当然のことながら上記測定において溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出す際には該紐状物に、できるだけ気泡が入らないようにする。また、発泡シートから測定試料を調整する場合、発泡シートを真空オーブンにて加熱し脱泡したものを試料とし、その際の真空オーブンでの脱泡条件は、発泡シートの基材樹脂を構成しているポリオレフィン系樹脂の融点以上の温度、かつ減圧下とする。
【0054】
前記メルトマスフローレイトは、JIS K7210−1999に従って、基材樹脂を構成しているポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂の場合には条件コードMを、ポリエチレン系樹脂の場合には条件コードDを採用して測定される値である。
【0055】
基材樹脂の溶融張力が3〜40cN、メルトマスフローレイトが0.2〜10g/10分のポリオレフィン系樹脂を用いると、気泡構造等の他の構成と相俟って、軽量性、厚み精度、外観に優れ、十分なコシの強さを有する発泡シートとなる。
【0056】
前記物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2−テトラフロロエタン、1,1−ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルエーテル等のエーテル類、その他、ジメチルカーボネート、メタノール、エタノール等の有機系物理発泡剤、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系物理発泡剤が挙げられる。これらの物理発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。これらのうち、ポリオレフィン系樹脂との相溶性、発泡性の観点から有機系物理発泡剤が好ましく、中でもノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好適である。なお、物理発泡剤ではないがアゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤も使用することができる。
【0057】
上記発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする発泡シートの見掛け密度に応じて調整する。特に、本発明では気泡膜の形成による延伸効果が帯電防止性に関連があるため発泡剤の注入量は重要である。即ち、発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%とのブタン混合物などの物理発泡剤を用いた場合、基材樹脂100重量部当たり4〜35重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは6〜25重量部である。
【0058】
また、発泡シートを製造する際には、前記押出機に供給されるポリオレフィン系樹脂中には、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
上記気泡調整剤の添加量は、目的とする発泡シートの気泡径に応じて調節され、通常、基材樹脂100重量部当たり、0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部である。
【0060】
また、その他所望により、ポリオレフィン系樹脂押出発泡シートの製造には、着色剤、紫外線防止剤、酸化防止剤など一般に使用される種々の添加剤を配合することもできる。
上記の通り、本発明の発泡シートは、電子製品、精密機器、回路基盤、シリコン半導体、ディスプレイ用ガラス基板などの電子精密機器の緩衝材、包装材として好適に使用できるものである。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例の結果は、両者の対比によって本発明の有意性を開示するものであって、本発明の権利範囲が当該結果によって制限されるものではない。
【0062】
実施例、比較例におけるポリオレフィン系樹脂として、以下に示すものを用いた。
(1)日本ユニカー株式会社製低密度ポリエチレン「NUC8321」(溶融張力:6.8cN、密度:922g/L、 MFR:2.4g/10分)
【0063】
高分子型帯電防止剤として、三洋化成工業株式会社製ポリエーテル−ポリプロピレンブロック共重合体「商品名;ぺレスタット300」(融点136℃、数平均分子量14000、密度990g/L、MFR:32〜42g/10分)を用いた。なお、ぺレスタット300は、そのMFRが商品ロット番号毎に異なっていたために、同じぺレスタット300であってもMFRが32〜42g/10分となっている。
【0064】
気泡調整剤としては、低密度ポリエチレン80重量%に対してタルクを20重量%配合してなるマスターバッチを用いた。
【0065】
発泡シート製造用の装置として、直径115mmと直径150mmの2台の押出機からなるタンデム押出機を使用し、直径150mmの押出機の出口にダイリップ径195mmのダイを取り付け、冷却装置として直径840のマンドレルを用いた(ブローアップ比4.3)。
【0066】
実施例1〜7、比較例1〜4
表1に示すポリエチレン系樹脂と、高分子帯電防止剤「ぺレスタット300」と、表1に示すポリアルキレンオキサイド等と、気泡調整剤マスターバッチとを表1に示す配合で押出機に供給し、加熱混練し樹脂溶融物とした。該樹脂溶融物に物理発泡剤としてノルマルブタン70重量%とイソブタン30重量%の混合ブタンを表1に示す量圧入して発泡性樹脂溶融物とし、次いで表1に示す押出樹脂温度に冷却して発泡性溶融樹脂とし、該発泡性溶融樹脂を環状ダイから表1に示す吐出量で押出し、押出された筒状発泡体を冷却されたマンドレルに沿わせて、表1に示す引取速度で引き取りながら切開いて、発泡シートを得た。
【0067】
なお、ポリアルキレンオキサイド等は、液状のものは物理発泡剤と同様に圧入して添加し、固体状のものはマスターバッチを作製し、所定量添加した。
【0068】
得られた発泡シートの厚み、見掛け密度、独立気泡率、表面抵抗率、エタノールを用いた超音波洗浄後の表面抵抗率、洗浄性の評価等を表2に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表2における洗浄性の評価は次の通り行った。
洗浄性の評価方法
平均表面租度0.2μmの鏡面のステンレス板に硬質クロムメッキ処理した鋼板を、発泡シートで挟み、その上から50g/cmの荷重をかけ、60℃の雰囲気下に48時間放置した。その後、鋼板を純水中に浸漬、洗浄した。洗浄乾燥後、鋼板表面に呼気を吹きかけ汚れ(曇り)具合を目視にて観察し以下の基準にて評価した。
◎:汚れ(曇り)が全くない。
○:汚れ(曇り)が僅かに点在する。
×:汚れ(曇り)が多数存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.2〜2.0mm、見掛け密度が15〜180g/Lのポリオレフィン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートには、ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される1以上の添加剤が発泡シートを構成しているポリオレフィン系樹脂100重量部に対して総添加量0.5〜9重量部の割合で添加されており、且つ表面抵抗率が1×1012(Ω)未満の高分子型帯電防止剤が該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜30重量部の割合で添加されており、該発泡シートの表面抵抗率が1×10〜1×1014(Ω)であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項2】
前記ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤が、温度20℃で液状である請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項3】
前記ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤の数平均分子量が1000以下である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。
【請求項4】
前記ポリアルキレンオキサイドおよびポリアルキレンオキサイド系界面活性剤から選択される1以上の添加剤が、ポリエチレンオキサイドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡シート。

【公開番号】特開2009−185210(P2009−185210A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27877(P2008−27877)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】